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  • 特開-非水電解質蓄電素子 図1
  • 特開-非水電解質蓄電素子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172877
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】非水電解質蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20221110BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20221110BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20221110BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/134
H01M10/0569
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079201
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 克行
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ07
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM06
5H029AM07
5H029BJ02
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ08
5H050AA13
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB12
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】充放電の繰り返しに伴う体積増加が抑制された非水電解質蓄電素子を提供する。
【解決手段】金属リチウムを有する負極、及び下記式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する非水溶媒を含む非水電解質を備える非水電解質蓄電素子である。
COOR・・・(1)
式(1)中、Rは、置換又は非置換の炭素数2以上の炭化水素基である。Rは、置換又は非置換の炭化水素基である。但し、R及びRの少なくとも一方はフッ素原子を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属リチウムを有する負極、及び
下記式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する非水溶媒を含む非水電解質
を備える非水電解質蓄電素子。
COOR ・・・(1)
式(1)中、Rは、置換又は非置換の炭素数2以上の炭化水素基である。Rは、置換又は非置換の炭化水素基である。但し、R及びRの少なくとも一方はフッ素原子を含む。
【請求項2】
上記フッ素化エステルの密度が1.24g/cm未満である請求項1に記載の非水電解質蓄電素子。
【請求項3】
上記非水溶媒における上記フッ素化エステルの含有量が30体積%以上である請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極と、この電極間に介在する非水電解質とを有し、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、非水電解質二次電池以外の非水電解質蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。非水電解質蓄電素子に用いられる高エネルギー密度を有する負極活物質として、金属リチウムが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-100065号公報
【特許文献2】特開平7-245099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負極活物質として金属リチウムを有する負極を備える非水電解質蓄電素子は、充放電の繰り返しに伴ってガスが発生しやすく、体積増加が顕著に生じる。
【0005】
本発明の目的は、金属リチウムを有する負極を備える非水電解質蓄電素子であって、充放電の繰り返しに伴う体積増加が抑制された非水電解質蓄電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、金属リチウムを有する負極、及び下記式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する非水溶媒を含む非水電解質を備える。
COOR ・・・(1)
式(1)中、Rは、置換又は非置換の炭素数2以上の炭化水素基である。Rは、置換又は非置換の炭化水素基である。但し、R及びRの少なくとも一方はフッ素原子を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、金属リチウムを有する負極を備える非水電解質蓄電素子であって、充放電の繰り返しに伴う体積増加が抑制された非水電解質蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、非水電解質蓄電素子の一実施形態を示す透視斜視図である。
図2図2は、非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
初めに、本明細書によって開示される非水電解質蓄電素子の概要について説明する。
【0010】
本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子は、金属リチウムを有する負極、及び下記式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する非水溶媒を含む非水電解質を備える。
COOR ・・・(1)
式(1)中、Rは、置換又は非置換の炭素数2以上の炭化水素基である。Rは、置換又は非置換の炭化水素基である。但し、R及びRの少なくとも一方はフッ素原子を含む。
【0011】
当該非水電解質蓄電素子は、金属リチウムを有する負極を備える非水電解質蓄電素子であって、充放電の繰り返しに伴う体積増加が抑制されている。この理由は定かではないが、以下の理由が推測される。一般的に負極活物質として金属リチウムを有する負極を備える非水電解質蓄電素子においては、充電の際に負極表面で金属リチウムが樹枝状に析出することがある(以下、樹枝状の形態をした金属リチウムを「デンドライト」という。)。充放電の繰り返しにより、デンドライトが成長し続けることにより金属リチウムと非水電解質の接触面積が増大し、非水溶媒等の分解が継続的に生じ、その反応生成物として発生するガスにより、非水電解質蓄電素子の体積増加が生じる。一方、本発明の一側面に係る非水電解質蓄電素子においては、非水溶媒が式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する。このフッ素化エステルは、フッ素化されていることなどにより、分解した場合も比較的分子量が大きい化合物が生成しガス化し難いことなどにより、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加が抑制されていると推測される。
【0012】
なお、非水電解質蓄電素子に備わる負極は、少なくとも充電状態において金属リチウムを有していればよく、放電状態において金属リチウムを有していなくてもよい。例えば、充電時に金属リチウムが負極表面の少なくとも一部の領域に析出することで、充電状態において負極は金属リチウムを有しており、放電時に負極表面の金属リチウムがリチウムイオンとして非水電解質中に実質的に全て溶出することで、放電状態において負極は金属リチウムを実質的に有しないように構成された非水電解質蓄電素子であってもよい。
【0013】
上記フッ素化エステルの密度が1.24g/cm未満であることが好ましい。このように密度の低いフッ素化エステルを用いることで、非水電解質蓄電素子の軽量化を図り、非水電解質蓄電素子の質量あたりのエネルギー密度を高めることができる。
【0014】
なお、上記フッ素化エステルの密度は、25℃における密度とする。
【0015】
上記非水溶媒における上記フッ素化エステルの含有量が30体積%以上であることが好ましい。このような場合、特定のフッ素化エステルを用いることによる効果が特に十分に奏され、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加がより抑制される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子、蓄電装置、非水電解質蓄電素子の製造方法、及びその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0017】
<非水電解質蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子(以下、単に「蓄電素子」ともいう。)は、正極、負極及びセパレータを有する電極体と、非水電解質と、上記電極体及び非水電解質を収容する容器と、を備える。電極体は、通常、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して積層された積層型、又は、正極及び負極がセパレータを介して積層された状態で巻回された巻回型である。非水電解質は、正極、負極及びセパレータに含浸した状態で存在する。非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
【0018】
(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層とを有する。
【0019】
正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cmを閾値として判定する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H-4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
【0020】
正極基材の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、非水電解質蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0021】
中間層は、正極基材と正極活物質層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
【0022】
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層は、必要に応じて、導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。正極活物質層は、正極活物質及びその他の任意成分を含む正極合剤から形成されていることが好ましい。
【0023】
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄、LiO等が挙げられる。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LiNi(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγCo(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiCo(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγMn(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LiNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LiMn、LiNiγMn(2-γ)等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物(α-NaFeO型結晶構造又はスピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物等)が好ましく、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。このような正極活物質を用いることで、非水電解質蓄電素子の容量密度、エネルギー密度等を高めることができる。
【0025】
α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属としてニッケル又はマンガンを含むことが好ましく、ニッケル及びマンガンの双方を含むことがより好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト等の他の遷移金属をさらに含んでいてもよい。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物においては、遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/Me)が1.0超であることが好ましく、1.1以上さらには1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましい。このようなリチウム遷移金属複合酸化物を用いることで、放電容量を大きくすることなどができる。遷移金属に対するリチウムのモル比(Li/Me)の上限としては、1.6が好ましく、1.5がより好ましい。
【0026】
α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
Li1+αMe1-α ・・・(2)
式(2)中、MeはNi又はMnを含む遷移金属である。0<α<1である。
【0027】
式(2)中のMeは、Ni及びMnを含むことが好ましい。Meは、実質的にNi及びMnの二元素、又はNi、Mn及びCoの三元素から構成されていることが好ましい。Meは、その他の遷移金属が含有されていてもよい。
【0028】
式(2)中、Meに対するNiのモル比(Ni/Me)の下限としては、0.1が好ましく、0.2がより好ましい。一方、このモル比(Ni/Me)の上限としては、0.5が好ましく、0.45がより好ましい。モル比(Ni/Me)を上記範囲とすることにより、エネルギー密度等が向上する。
【0029】
式(2)中、Meに対するMnのモル比(Mn/Me)の下限としては、0.5が好ましく、0.55がより好ましく、0.6がさらに好ましい。一方、このモル比(Mn/Me)の上限としては、0.75が好ましく、0.7がより好ましい。モル比(Mn/Me)を上記範囲とすることにより、エネルギー密度等が向上する。
【0030】
式(2)中、Meに対するCoのモル比(Co/Me)の上限としては、0.3が好ましく、0.2がより好ましく、0.1がさらに好ましい。このモル比(Co/Me)又はこのモル比(Co/Me)の下限は0であってもよい。
【0031】
式(2)中、Meに対するLiのモル比(Li/Me)、即ち、(1+α)/(1-α)は、1.0超(α>0)が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.3以上がよりさらに好ましい。一方、このモル比(Li/Me)の上限としては、1.6が好ましく、1.5がより好ましい。モル比(Li/Me)を上記範囲とすることで、放電容量が大きくなる。
【0032】
上記遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/Me)が1.0超であるリチウム遷移金属複合酸化物は、CuKα線を用いたエックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在しないものであることが好ましい。遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/Me)が1.0超であるリチウム遷移金属複合酸化物は、一般的に正極電位が例えば4.5V(vs.Li/Li)以上に至るまでの初期充電を経ることにより電気容量が大きくなる。また、このような初期充電の際の結晶構造の変化により、初期充電前に存在した上記20°以上22°以下の範囲に回折ピークが消失する。すなわち、遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/Me)が1.0超であるリチウム遷移金属複合酸化物であって、上記エックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在しない正極活物質は、電気容量が大きい。
【0033】
なお、本明細書におけるリチウム遷移金属複合酸化物の組成比は、次の方法により完全放電状態としたときの組成比をいう。まず、非水電解質蓄電素子を、0.05Cの充電電流で通常使用時の充電終止電圧となるまで定電流充電し、満充電状態とする。30分の休止後、0.05Cの放電電流で通常使用時の下限電圧まで定電流放電する。解体し、正極を取り出し、金属リチウム電極を対極とした試験電池を組み立て、正極合剤1gあたり10mAの放電電流で、正極電位が2.0V(vs.Li/Li)となるまで定電流放電を行い、正極を完全放電状態に調整する。ここでの金属リチウム電極には、純金属リチウムを用いる。再解体し、正極を取り出す。ジメチルカーボネートを用いて、取り出した正極に付着した非水電解質を十分に洗浄し、室温にて一昼夜乾燥後、正極活物質のリチウム遷移金属複合酸化物を採取する。採取したリチウム遷移金属複合酸化物を測定に供する。非水電解質蓄電素子の解体からリチウム遷移金属複合酸化物の採取までの作業は露点-60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。なお、「通常使用時」とは、当該非水電解質蓄電素子について推奨され、又は指定される充放電条件を採用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合であり、当該非水電解質蓄電素子のための充電器が用意されている場合は、その充電器を適用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合をいう。
【0034】
リチウム遷移金属複合酸化物に対するエックス線回折測定は、上記方法により完全放電状態としたリチウム遷移金属複合酸化物に対して行う。具体的には、エックス線回折測定は、エックス回折装置(Rigaku社の「MiniFlex II」)を用いた粉末エックス線回折測定によって、線源はCuKα線、管電圧は30kV、管電流は15mAとして行う。このとき、回折エックス線は、厚さ30μmのKβフィルターを通り、高速一次元検出器(D/teX Ultra 2)にて検出される。また、サンプリング幅は0.02°、スキャンスピードは5°/min、発散スリット幅は0.625°、受光スリット幅は13mm(OPEN)、散乱スリット幅は8mmとする。
【0035】
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
【0036】
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0037】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0038】
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛、非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
【0039】
正極活物質層における導電剤の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
【0040】
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子;アラミド等が挙げられる。
【0041】
正極活物質層におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
【0042】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。本発明の一態様においては、増粘剤は正極活物質層に含有されていないことが好ましい場合もある。
【0043】
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。本発明の一態様においては、フィラーは正極活物質層に含有されていないことが好ましい場合もある。
【0044】
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0045】
正極活物質層の単位面積あたりの容量密度の下限としては、4mAh/cmが好ましく、5mAh/cmがより好ましく、6mAh/cmがさらに好ましい。正極活物質層の単位面積あたりの容量密度が上記下限以上であることにより、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度を高めることなどができる。一方、一般的に正極活物質層の容量密度が大きい場合、非水電解質蓄電素子は充放電の繰り返しに伴う体積増加が生じ易くなる傾向にある。従って、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子が、容量密度が大きい正極活物質層を備える場合、充放電の繰り返しに伴う体積増加が抑制されるという利点を特に効果的に享受できる。正極活物質層の単位面積あたりの容量密度の上限としては、例えば、20mAh/cmであってもよく、15mAh/cmであってもよく、10mAh/cmであってもよい。正極活物質層の単位面積あたりの容量密度は、正極活物質層における正極活物質の含有量、正極活物質の種類、正極活物質層の厚さ等によって調整することができる。
【0046】
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で例示した構成から選択することができる。
【0047】
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はこれらの合金、炭素質材料等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0048】
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、非水電解質蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0049】
負極活物質層は、金属リチウムを有する。すなわち、負極活物質層は、金属リチウムを含む層である。金属リチウムは、負極活物質として機能する成分である。金属リチウムは、実質的にリチウムのみからなる純金属リチウムとして存在してもよいし、他の金属成分を含むリチウム合金として存在してもよい。リチウム合金としては、リチウム銀合金、リチウム亜鉛合金、リチウムカルシウム合金、リチウムアルミニウム合金、リチウムマグネシウム合金、リチウムインジウム合金等が挙げられる。リチウム合金は、リチウム以外の複数の金属元素を含有していてもよい。
【0050】
負極活物質層は、実質的に金属リチウムのみからなる層であってもよい。負極活物質層における金属リチウムの含有量は、90質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0051】
負極活物質層は、リチウム箔又はリチウム合金箔であってもよい。負極活物質層は、無孔質の層(中実の層)であってもよい。また、負極活物質層は、金属リチウムを含む粒子を有する多孔質の層であってもよい。金属リチウムを含む粒子を有する多孔質の層である負極活物質層は、例えば樹脂粒子、無機粒子等をさらに有していてもよい。
【0052】
負極活物質層、すなわち金属リチウムを含む層は、放電状態においても存在している層であること、すなわち充電状態から放電状態の全ての状態において存在する層であることが好ましい。放電状態における負極活物質層の平均厚さとしては、5μm以上1,000μm以下が好ましく、10μm以上500μm以下がより好ましく、30μm以上300μm以下がさらに好ましい。なお、負極活物質層の平均厚さは、任意の5ヶ所で測定した厚さの平均とする。放電状態においても金属リチウムを含む負極活物質が存在し、好ましくはその平均厚さが上記下限以上である場合、十分な量な金属リチウムが存在するため、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の放電容量維持率の低下が十分に抑制される。
【0053】
なお、充電時に金属リチウムが負極表面の少なくとも一部に析出し、放電時に負極表面の金属リチウムがリチウムイオンとして非水電解質中に実質的に全て溶出するように構成された非水電解質蓄電素子の場合など、負極は、放電状態においては負極活物質層を実質的に有していなくてもよい。
【0054】
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形状としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの形状の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
【0055】
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、室温から800℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。すなわち、耐熱層は、無機粒子(無機化合物の粒子)を含む層であってもよい。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、チタン酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
【0056】
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
【0057】
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
【0058】
(非水電解質)
非水電解質は、非水溶媒を含む。非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む非水電解液であってもよい。
【0059】
非水溶媒は、下記式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する。
COOR ・・・(1)
式(1)中、Rは、置換又は非置換の炭素数2以上の炭化水素基である。Rは、置換又は非置換の炭化水素基である。但し、R及びRの少なくとも一方はフッ素原子を含む。
【0060】
で表される非置換の炭素数2以上の炭化水素基としては、炭素数2以上の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0061】
炭素数2以上の脂肪族炭化水素基としては、炭素数2以上の脂肪族鎖状炭化水素基及び炭素数3以上の脂環式炭化水素基を挙げることができる。炭素数2以上の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。炭素数3以上の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等を挙げることができる。
【0062】
炭素数6以上の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等を挙げることができる。
【0063】
で表される炭素数2以上の炭化水素基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲンを挙げることができる。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。
【0064】
としては、置換又は非置換の炭素数2以上の脂肪族炭化水素基が好ましく、置換又は非置換の炭素数2以上の脂肪族鎖状炭化水素基がより好ましく、置換又は非置換の炭素数2以上のアルキル基がさらに好ましい。また、Rとしては、フッ素原子で置換された又は非置換の炭素数2以上の脂肪族炭化水素基が好ましく、フッ素原子で置換された又は非置換の炭素数2以上の脂肪族鎖状炭化水素基がより好ましく、フッ素原子で置換された又は非置換の炭素数2以上のアルキル基がさらに好ましい。Rの炭素数の上限としては、10が好ましく、5がより好ましく、3がさらに好ましい。
【0065】
の好ましい具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基等を挙げることができる。
【0066】
で表される非置換の炭化水素基としては、炭素数1以上の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0067】
炭素数1以上の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上の脂肪族鎖状炭化水素基及び炭素数3以上の脂環式炭化水素基を挙げることができる。炭素数1以上の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0068】
炭素数3以上の脂環式炭化水素基及び炭素数6以上の芳香族炭化水素基の具体例は、Rで表される基の例として上記したものが挙げられる。
【0069】
で表される炭化水素基の置換基としては、Rで表される炭素数2以上の炭化水素基の置換基の例として上記したものが挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0070】
としては、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基が好ましく、置換又は非置換の脂肪族鎖状炭化水素基がより好ましく、置換又は非置換のアルキル基がさらに好ましい。また、Rとしては、フッ素原子で置換された又は非置換の脂肪族炭化水素基が好ましく、フッ素原子で置換された又は非置換の脂肪族鎖状炭化水素基がより好ましく、フッ素原子で置換された又は非置換のアルキル基がさらに好ましい。Rの炭素数の上限としては、10が好ましく、5がより好ましく、3がさらに好ましく、2が特に好ましい。Rの炭素数の下限は、1であり、2が好ましい場合もある。
【0071】
の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等を挙げることができる。
【0072】
及びRの双方がフッ素原子を含む炭化水素基であってもよい。但し、R及びRの一方のみがフッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましく、一方がフッ素原子を含む炭化水素基であり且つ他方が非置換の炭化水素基であることがより好ましい。
【0073】
非水溶媒が式(1)で表されるフッ素化エステルを含有することにより、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加が抑制される。
【0074】
式(1)で表されるフッ素化エステルの密度は、例えば1.30g/cm以下であってもよいが、1.24g/cm未満が好ましく、1.22g/cm以下がより好ましく、1.20g/cm以下がさらに好ましい。このように低密度のフッ素化エステルを用いることで、非水電解質蓄電素子が軽量化され、非水電解質蓄電素子の質量あたりのエネルギー密度を高めることができる。式(1)で表されるフッ素化エステルの密度は、例えば1.10g/cm以上であることが好ましい。
【0075】
非水溶媒における式(1)で表されるフッ素化エステルの含有量としては、30体積%以上95体積%以下が好ましく、50体積%以上90体積%以下がより好ましく、60体積%以上80体積%以下がさらに好ましい。非水溶媒における式(1)で表されるフッ素化エステルの含有量を上記範囲とすることで、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加がより抑制される。
【0076】
非水溶媒は、式(1)で表されるフッ素化エステル以外の他の非水溶媒をさらに含んでいてもよい。他の非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、式(1)で表されるフッ素化エステル以外のカルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。他の非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
【0077】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、4-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-オン)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0078】
環状カーボネートとしては、FEC、DFEC、4-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-オン)等、フッ素化環状カーボネートが好ましい。
【0079】
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート(FDEC)等が挙げられる。これらの中でもDMC及びEMCが好ましい。
【0080】
他の非水溶媒の中でも、環状カーボネートを用いることが好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。非水溶媒における環状カーボネートの含有量としては、5体積%以上70体積%以下が好ましく、10体積%以上50体積%以下がより好ましく、20体積%以上40体積%以下がさらに好ましい。
【0081】
また、他の非水溶媒として、鎖状カーボネートを用いることが好ましい場合もある。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。鎖状カーボネートを用いる場合、非水溶媒における鎖状カーボネートの含有量は、例えば1体積%以上40体積%以下とすることができる。また、非水溶媒における式(1)で表されるフッ素化エステルと鎖状カーボネートとの合計含有量は、30体積%以上95体積%以下が好ましく、50体積%以上90体積%以下がより好ましく、60体積%以上80体積%以下がさらに好ましい。
【0082】
非水溶媒における式(1)で表されるフッ素化エステルと環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計含有量は、90体積%以上が好ましく、95体積%以上がより好ましく、99体積%以上がさらに好ましい。このように非水溶媒を式(1)で表されるフッ素化エステルと環状カーボネートと鎖状カーボネートとで主に構成することで、非水電解液のイオン伝導度、粘度等が好適化されると共に、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加がより抑制される。
【0083】
非水溶媒におけるフッ素化溶媒の合計含有量は、50体積%以上が好ましく、70体積%以上がより好ましく、90体積%以上がさらに好ましく、99体積%以上がよりさらに好ましい。非水溶媒におけるフッ素化溶媒の合計含有量は、100体積%であってもよい。フッ素化溶媒とは、フッ素化カーボネート(フッ素化鎖状カーボネート及びフッ素化環状カーボネート)、フッ素化エーテル等、分子内にフッ素原子を有する非水溶媒をいい、式(1)で表されるフッ素化エステルも含まれる。非水溶媒におけるフッ素化溶媒の合計含有量が上記下限以上であることにより、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加がより抑制される。
【0084】
電解質塩としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。オキサレート基(C 2-)を含まないLiPFは、充放電の繰り返しに伴うガス発生による非水電解質蓄電素子の体積増加をより抑制することができる。また、同じリチウムイオン濃度で非水電解液を調製する場合、分子量の小さいリチウム塩を用いることで、非水電解液を低密度化し、非水電解質蓄電素子の軽量化及び質量あたりのエネルギー密度を高めることができる。このような点から、リチウム塩の分子量は、200以下が好ましく、160以下がより好ましい。
【0085】
非水電解液における電解質塩の濃度は、0.1mol/kg以上2.5mol/kg以下であると好ましく、0.3mol/kg以上2.0mol/kg以下であるとより好ましく、0.5mol/kg以上1.7mol/kg以下であるとさらに好ましく、0.7mol/kg以上1.5mol/kg以下であると特に好ましい。電解質塩の濃度を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
【0086】
非水電解液は、非水溶媒と電解質塩以外に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
【0088】
非水電解質には、ポリマーゲル電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。ポリマーとしては、例えば上記セパレータで例示した中から選択することができる。
【0089】
正極活物質の含有質量(g)に対する非水電解質の含有体積量(cm)の上限としては、2cm/gが好ましく、1.5cm/gがより好ましく、1.1cm/gがさらに好ましく、1.0cm/gがよりさらに好ましい。正極活物質の含有質量に対する非水電解質の含有体積量を少なくすることで、非水電解質蓄電素子の軽量化を図り、非水電解質蓄電素子の質量あたりのエネルギー密度を高めることができる。正極活物質の含有質量(g)に対する非水電解質の含有体積量(cm)の下限としては、0.1cm/gが好ましく、0.2cm/gがより好ましく、0.3cm/gがさらに好ましい。
【0090】
当該非水電解質蓄電素子においては、通常使用時の充電終止電圧における正極電位の下限が4.2V(vs.Li/Li)であることが好ましく、4.3V(vs.Li/Li)であることがより好ましく、4.4V(vs.Li/Li)であることがさらに好ましく、4.5V(vs.Li/Li)であることがよりさらに好ましく、4.6V(vs.Li/Li)であることがよりさらに好ましい。通常使用時の充電終止電圧における正極電位を上記下限以上とすることで、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度や電圧を高めることができ、放電容量を大きくすることもできる。また、当該非水電解質蓄電素子は、このように通常使用時の充電終止電圧における正極電位を高く設定しても、充放電の繰り返しに伴う体積増加が抑制されている。
【0091】
当該非水電解質蓄電素子の通常使用時の充電終止電圧における正極電位の上限としては、例えば5.0V(vs.Li/Li)であってもよく、4.8V(vs.Li/Li)であってもよく、4.7V(vs.Li/Li)であってもよい。
【0092】
本実施形態の非水電解質蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
【0093】
図1に角型電池の一例としての非水電解質蓄電素子1を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角型の容器3に収納される。正極は正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極は負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
【0094】
<蓄電装置>
本実施形態の非水電解質蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の非水電解質蓄電素子1を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電ユニットに含まれる少なくとも一つの蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
【0095】
図2に、電気的に接続された二以上の非水電解質蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の非水電解質蓄電素子1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の非水電解質蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0096】
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本実施形態の非水電解質蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備することと、非水電解質を準備することと、電極体及び非水電解質を容器に収容することと、を備える。電極体を準備することは、正極及び負極を準備することと、セパレータを介して正極及び負極を積層又は巻回することにより電極体を形成することとを備える。
【0097】
正極を準備することは、正極を作製することであってもよい。正極の作製は、例えば正極基材に直接又は中間層を介してペースト状の正極合剤(正極合剤ペースト)を塗布し、乾燥させることによって正極活物質層を形成すること等によって行うことができる。
【0098】
負極を準備することは、負極を作製することであってもよい。準備する負極は、金属リチウムを有する負極、又は充電時に金属リチウムが析出可能な表面領域を有する負極が挙げられる。金属リチウムを有する負極は、負極基材に直接又は中間層を介して金属リチウムを含む負極活物質層を積層し、プレス等すること等により作製することができる。金属リチウムを含む負極活物質層は、リチウム箔又はリチウム合金箔であってもよい。充電時に金属リチウムが析出可能な表面領域を有する負極は、例えば負極基材のみからなる負極であってもよい。充電時に金属リチウムが析出可能な表面領域を有する負極を準備する場合、正極には予めリチウムイオンを含む正極活物質を有する正極を準備する。
【0099】
非水電解質を準備することは、非水電解質を調製することであってよい。非水電解質の調製は、例えば電解質塩及び非水溶媒等を混合することにより行うことができる。
【0100】
当該非水電解質蓄電素子の製造方法は、組み立てた未充放電蓄電素子に対して初期充放電することをさらに備えていてよい。例えば当該非水電解質蓄電素子の正極活物質に遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/Me)が1.0超であるリチウム遷移金属複合酸化物が用いられている場合、初期充放電を経ることで容量が大きくなる。初期充放電における充放電の回数は1回又は2回であってもよく、3回以上であってもよい。当該非水電解質蓄電素子の正極活物質に遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/Me)が1.0超であるリチウム遷移金属複合酸化物が用いられている場合、初期充放電における充電終止電圧における正極電位(正極到達電位)は、4.5V(vs.Li/Li)以上4.7V(vs.Li/Li)以下であることが好ましい。
【0101】
<その他の実施形態>
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
【0102】
上記実施形態では、非水電解質蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウム二次電池)として用いられる場合について説明したが、非水電解質蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。また、本発明の非水電解質蓄電素子は、リチウム空気電池にも適用することができる。
【0103】
上記実施形態では、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極体について説明したが、電極体は、セパレータを備えなくてもよい。例えば、正極又は負極の活物質層上に導電性を有さない層が形成された状態で、正極及び負極が直接接してもよい。
【実施例0104】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質として、α―NaFeO型結晶構造を有し、Li1+αMe1-α(Meは遷移金属)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。ここで、LiとMeのモル比Li/Meは1.33であり、Meは、Ni及びMnからなり、Ni:Mn=1:2のモル比で含んでいるものであった。
【0106】
N-メチルピロリドン(NMP)を分散媒とし、上記正極活物質、導電剤であるアセチレンブラック(AB)、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びホスホン酸(HPO)を固形分として92.25:4.5:3.0:0.25の質量比率で含有する正極合剤ペーストを作製した。正極基材であるアルミニウム箔の片面に、上記正極合剤ペーストを塗布し、乾燥後プレスし、正極活物質層が配置された正極を作製した。なお、正極は、1Cでの電流密度が6mA/cmとなるように設計して作製した。
【0107】
(負極の作製)
負極基材である銅箔の片面に、純金属リチウムからなるリチウム箔を積層後プレスし、負極活物質層(平均厚さ100μm)が配置された負極を作製した。
【0108】
(非水電解質の調製)
FEC(フルオロエチレンカーボネート)及びCFCHCHCOOCHCH(4,4,4-トリフルオロブタン酸エチル)を30:70の体積比で混合した非水溶媒にLiPFを1.0mol/kgの濃度で溶解させ、非水電解質とした。
【0109】
(セパレータの準備)
セパレータとして、多孔質樹脂フィルムである基材層の片面に無機粒子を含む層が積層されたセパレータを準備した。
【0110】
(非水電解質蓄電素子の作製)
上記セパレータを介して、上記正極と上記負極とを積層することにより電極体を作製した。なお、セパレータにおける無機粒子を含む層が負極と対向するように配置した。電極体を金属樹脂複合フィルム製の容器に収納し、内部に上記非水電解質0.38gを注入した後、熱溶着により封口し、実施例1の非水電解質蓄電素子(リチウム電池)を得た。非水電解質蓄電素子における正極活物質の含有質量に対する非水電解質の含有体積量は、0.964cm/gであった。
【0111】
[実施例2から8及び比較例1から5]
非水溶媒の組成及び正極活物質の含有量に対する非水電解質の含有量を表1に記載のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2から8及び比較例1から5の各非水電解質蓄電素子を得た。表1には、各非水電解質蓄電素子における正極活物質の含有質量に対する非水電解質の含有体積量もあわせて示す。
なお、用いた各非水溶媒の密度を以下に示す。
(環状カーボネート)
FEC :1.50g/cm
(式(1)で表されるフッ素化エステル)
CFCHCHCOOCHCH:1.16g/cm
CFCHCOOCH:1.24g/cm
CHCHCHCOOCHCF:1.13g/cm
CFCHCOOCHCH:1.19g/cm
CHCHCOOCHCF:1.20g/cm
(その他の非水溶媒)
DMC(CHOCOOCH) :1.07g/cm
CHCOOCHCF:1.26g/cm
CHCOOCH:0.93g/cm
CHCOOCHCH:0.90g/cm
CHCHCOOCHCH:0.89g/cm
【0112】
(初期充放電)
実施例1から8及び比較例1から5の各非水電解質蓄電素子について、以下の条件にて初期充放電を行った。25℃において、0.1Cの電流で充電終止電圧4.6Vとして定電流定電圧充電した。充電の終了条件は、電流が0.05Cとなるまでとした。その後、10分間の休止期間を設けた。その後、0.1Cの電流で放電終止電圧2.0Vとして定電流放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。この充放電を2サイクル行った。
【0113】
(充放電サイクル試験)
次いで、実施例1から8及び比較例1から5の各非水電解質蓄電素子について、以下の充放電サイクル試験を行った。25℃において、0.2Cの電流で充電終止電圧4.6Vとして定電流定電圧充電した。充電の終了条件は、電流が0.05Cとなるまでとした。その後、10分間の休止期間を設けた。その後、0.1Cの電流で放電終止電圧2.0Vとして定電流放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。この充放電を10サイクル行い、充放電サイクル試験前の非水電解質蓄電素子の体積に対する、10サイクル後の体積の増加量を測定した。比較例1の非水電解質蓄電素子の体積の増加量に対する各非水電解質蓄電素子の体積の増加量の百分率を「体積増加率」とした。結果(体積増加率)を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
上記表1に示されるように、式(1)で表されるフッ素化エステルを含有する非水溶媒を含む非水電解質を備える実施例1から8の各非水電解質蓄電素子は、体積増加率が71%以下であり、充放電の繰り返しに伴う非水電解質蓄電素子の体積増加が抑制されていることが確認できる。また、実施例1から4の対比から、非水溶媒における式(1)で表されるフッ素化エステルの含有量が多いほど、体積増加がより抑制されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される非水電解質蓄電素子などに適用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 非水電解質蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
図1
図2