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特開2022-172923COVID-19患者の死亡リスクを予測する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172923
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】COVID-19患者の死亡リスクを予測する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20221110BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221110BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20221110BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20221110BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALN20221110BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 M
G01N33/569 L
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/6888 Z
C12N15/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079273
(22)【出願日】2021-05-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「COVID-19患者層別化による医療資源の最適分配とアウトカム向上」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一郎
(72)【発明者】
【氏名】西井 基継
(72)【発明者】
【氏名】佐治 龍
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和也
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
2G045JA01
2G045JA03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ10
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】COVID-19の長期的な臨床経過、特に重症COVID-19患者の劇症化を早期に予測することを可能にする手段を提供すること。
【解決手段】本発明によるCOVID-19患者の死亡リスクを予測する方法は、人工呼吸器挿管前、挿管時又は挿管直後のCOVID-19患者から分離された血液サンプルを、血中IL-6を定量的に検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び、前記血液サンプルを、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べることを含む。血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出される場合に、前記患者は人工肺治療が必要になるリスクが高いことが示される。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)患者の死亡リスクを予測する方法であって、
人工呼吸器挿管前、挿管時又は挿管直後のCOVID-19患者から分離された血液サンプルを、血中インターロイキン6(IL-6)を定量的に検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び
前記血液サンプルを、血中SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2) RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、
を含み、血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出される場合に、前記患者が人工呼吸器による治療開始後に重症化して死亡するリスクが高いことが示される、方法。
【請求項2】
COVID-19患者が、人工肺治療が必要になるリスクを予測する方法であって、
人工呼吸器挿管前、挿管時又は挿管直後のCOVID-19患者から分離された血液サンプルを、血中IL-6を定量的に検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び
前記血液サンプルを、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、
を含み、血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出される場合に、前記患者は人工肺治療が必要になるリスクが高いことが示される、方法。
【請求項3】
前記血液サンプルは、人工呼吸器挿管前又は挿管直後のCOVID-19患者から分離された血液サンプルである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記COVID-19患者は、人工呼吸器治療を要する重症度に分類される重症患者である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
SARS-CoV-2 RNAが、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質遺伝子RNAである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
IL-6のカットオフ値が、30 pg/mL~200 pg/mLの範囲内に設定された値である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
COVID-19治療薬又は治療薬候補の効果を判定する方法であって、
前記治療薬又は治療薬候補を投与されたCOVID-19患者より分離された血液サンプルを、血中IL-6を定量的に検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び
前記血液サンプルを、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、
を含み、血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値以下であり、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出されない場合に、前記治療薬又は治療薬候補がCOVID-19に有効であることが示される、方法。
【請求項8】
IL-6のカットオフ値が、30 pg/mL~200 pg/mLの範囲内に設定された値である、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COVID-19患者の死亡リスクを予測する方法、特に、重症のCOVID-19患者が劇症化して死亡するリスクないしは人工肺治療の必要が生じるリスクを予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおいて、コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群に代表される気道感染症を引き起こす(非特許文献1、2)。2019年12月、病因不明の肺炎症例が、ウイルス性肺炎に似た臨床像を呈して、中華人民共和国湖北省の武漢で出現した。下気道検体の配列解析により、新型コロナウイルス、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)が同定された(非特許文献3、4)。SARS-CoV-2によって引き起こされるこの疾患は、公式には「新型コロナウイルス感染症2019」(COVID-19)と命名された。COVID-19は世界中に急速に蔓延し、世界的なパンデミックに分類された(非特許文献5)。初期の研究では、罹患患者の約30%が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、不整脈、ショックなどの合併症により集中治療室に搬送されたことが明らかになった。COVID-19の全死亡率は4~15%であり(非特許文献6~8)、患者の層別化が不十分で医療システムが混乱したため、COVID-19の死亡率が上昇した。特に、重症呼吸不全に対して人工呼吸器(MV)を装着した患者に母集団研究を限定すると、死亡率がさらに上昇した(非特許文献6~8)。このようなMVを必要とする重症COVID-19患者は、院内死亡に至る重症ARDSに対して、体外式膜型人工肺(ECMO)などの救済療法をさらに検討する可能性が高い。このように、ECMO使用が必要になる症例やMVの使用にもかかわらず院内死亡となる症例を含む致死的転帰のリスク層別化は、医療システムを効率的に運営し、死亡率の改善に寄与するであろう。
【0003】
インターロイキン6(IL-6)は、代表的な炎症性サイトカインであり、以前よりMV管理を要するARDSの重症度や臨床経過と末梢血IL-6値との関連性が報告されてきた(非特許文献9)。これまで、IL-6値に臨床的背景やいくつかの一般的なバイオマーカーを組み合わせることにより、SARS-CoV-2感染に伴うARDSの疾患予後を予測し、患者を層別化することが試みられてきた(非特許文献10~12)。しかしながら、これらの多変数モデルの精度は、切迫した短期リスクの予測に限定されており、例えば挿管後の死亡リスクを挿管前より予測するという長期的な予測は不可能であった。さらに、これらの多変数モデルは重症化の病態生理ではなくその時点での疾患重症度を反映するものであったため、治療指標としての有用性も乏しかった。
【0004】
また、これまでウイルス感染症における感染力や病原性の指標としてウイルス価の測定が一般的であったが、SARS-CoV-2感染症の極めて重篤な患者(critically ill patients)において、その循環血液中のウイルスRNA量がIL-6値と正相関していること、IL-6値と血清ウイルスRNA値の組み合わせが切迫した有害事象を予測するマーカーとなりうることが報告されている(非特許文献13)。この報告も、直近の切迫した臨床経過の予測に限定されており、長期的な臨床経過の予測を教示していない。我々の知る限り、臨床転帰の予測のために免疫学的マーカーとウイルスRNA量を組み合わせることは、ウイルス性疾患においてさえ一般的ではなく、その臨床的有用性は依然として解明されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Drosten C, Gunther S, Preiser W, van der Werf S, Brodt H-R, Becker S, et al. N Engl J Med. 2003;348: 1967-1976. doi:10.1056/nejmoa030747
【非特許文献2】Zaki AM, van Boheemen S, Bestebroer TM, Osterhaus ADME, Fouchier RAM. N Engl J Med. 2012;367: 1814-1820. doi:10.1056/nejmoa1211721
【非特許文献3】Zhou P, Yang X Lou, Wang XG, Hu B, Zhang L, Zhang W, et al. Nature. 2020;579: 270-273. doi:10.1038/s41586-020-2012-7
【非特許文献4】Lu R, Zhao X, Li J, Niu P, Yang B, Wu H, et al. Lancet. 2020;395: 565-574. doi:10.1016/S0140-6736(20)30251-8
【非特許文献5】Wu JT, Leung K, Leung GM. Lancet. 2020;395: 689-697. doi:10.1016/S0140-6736(20)30260-9
【非特許文献6】Wang D, Hu B, Hu C, Zhu F, Liu X, Zhang J, et al. J Am Med Assoc. 2020;323: 1061-1069. doi:10.1001/jama.2020.1585
【非特許文献7】Huang C, Wang Y, Li X, Ren L, Zhao J, Hu Y, et al. Lancet. 2020;395: 497-506. doi:10.1016/S0140-6736(20)30183-5
【非特許文献8】Chen N, Zhou M, Dong X, Qu J, Gong F, Han Y, et al. Lancet. 2020;395: 507-513. doi:10.1016/S0140-6736(20)30211-7
【非特許文献9】Meduri et al. Chest. 1995 Apr; 107(4):1062-73
【非特許文献10】Herold T, Jurinovic V, Arnreich C, Lipworth BJ, Hellmuth JC, von Bergwelt-Baildon M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2020;146: 128-136.e4. doi:10.1016/j.jaci.2020.05.008
【非特許文献11】Vultaggio A, Vivarelli E, Virgili G, Lucenteforte E, Bartoloni A, Nozzoli C, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8: 2575-2581.e2. doi:10.1016/j.jaip.2020.06.013
【非特許文献12】Laguna-Goya R, Utrero-Rico A, Talayero P, Lasa-Lazaro M, Ramirez-Fernandez A, Naranjo L, et al. J Allergy Clin Immunol. 2020;146: 799-807.e9. doi:10.1016/j.jaci.2020.07.009
【非特許文献13】Chen X, Zhao B, Qu Y, Chen Y, Xiong J, Feng Y, et al. Clin Infect Dis. 2020;71: 1937-1942. doi:10.1093/cid/ciaa449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、これまでに報告されているCOVID-19のバイオマーカーの有用性は、直近の切迫した臨床経過の予測に限定されており、長期的な臨床経過を予測できるバイオマーカーは知られていない。本発明は、COVID-19の長期的な臨床経過、特に重症COVID-19患者の劇症化を早期に予測することを可能にする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、血中IL-6値と血中SARS-CoV-2 RNA量の組み合わせにより、長期的な臨床経過を予測可能となること、すなわち、人工呼吸器導入後の重症患者の死亡ないしは人工肺治療の必要性を、例えば挿管前という早期の当該患者の血中IL-6値及び血中SARS-CoV-2 RNAの有無に基づいて予測可能となることを見出し、本願発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)患者の死亡リスクを予測する方法であって、人工呼吸器挿管前、挿管時又は挿管直後のCOVID-19患者から分離された血液サンプルを、血中インターロイキン6(IL-6)を検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び、前記血液サンプルを、血中SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2) RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、を含み、血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出される場合に、前記患者が人工呼吸器による治療開始後に重症化して死亡するリスクが高いことが示される、方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、COVID-19患者が、人工肺治療が必要になるリスクを予測する方法であって、人工呼吸器挿管前、挿管時又は挿管直後のCOVID-19患者から分離された血液サンプルを、血中IL-6を検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び、前記血液サンプルを、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、を含み、血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出される場合に、前記患者は人工肺治療が必要になるリスクが高いことが示される、方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、COVID-19治療薬又は治療薬候補の効果を判定する方法であって、前記治療薬又は治療薬候補を投与されたCOVID-19患者より分離された血液サンプルを、血中IL-6を検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び、前記血液サンプルを、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、を含み、血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値以下であり、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出されない場合に、前記治療薬又は治療薬候補がCOVID-19に有効であることが示される、方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、COVID-19の長期的な臨床経過、特に重症COVID-19患者の劇症化を早期に予測可能となる。従来技術は直近の切迫した臨床経過の予測に限定されており、医療資源を適切に再分配して医療体制のひっ迫を改善することには貢献できない。本発明によれば、例えば人工呼吸器挿管前という早い段階でCOVID-19患者が重症化(劇症化)して死亡してしまうリスクを予測できるので、体外式膜型人工肺(ECMO)を適用すべき患者を早期に同定でき、医療資源の適切な再分配による医療体制ひっ迫の改善に大いに貢献する。また、本発明の技術を応用し、COVID-19治療薬又は治療薬候補の効果判定(効果判定の補助)も可能となるので、本発明は治療薬開発にも大いに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】挿管前の入院時のIL-6、インターフェロン(IFN)-γ、及びIL-10並びにSARS-CoV-2 RNAの血漿レベルを、人工呼吸器を必要としたCOVID-19患者(MV)と必要としなかった患者(非MV)で比較した。閉じた丸はサイトカインとSARS-CoV-2 RNAの個々のレベルを示す。非MVとMVにおけるサイトカインレベルとSARS-CoV-2 RNAコピー数の平均±標準誤差は以下の通りである(IL-6: それぞれ27.2±3.5 pg/mLと187.2±47.2 pg/mL; IFN-γ: それぞれ6.2±1.7 pg/mLと8.7±2.4 pg/mL; IL-10: それぞれ16.3±4.0 pg/mLと15.9±4.9 pg/mL; SARS-CoV-2 RNA: それぞれ0.2±0.1コピー/μLと18.6±9.4コピー/μL)。
図1B】挿管前の入院時における、年齢、吸入酸素分圧に対する末梢血酸素飽和度の比(SpO2/FiO2)、IL-6、D-dimer、乳酸脱水素酵素(LDH)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、C反応性蛋白(CRP)、SARS-CoV-2 RNA等の変数のROC曲線。
図2A】入院時のIL-6レベルとSARS-CoV-2 RNAコピー数を、ECMO使用および病院内死亡を含む致死的転帰のCOVID-19患者(致死的群)と致死的転帰のない患者(非致死的群)の間で比較した。閉じた丸は血漿中のIL-6またはSARS-CoV-2 RNAの個々のレベルを示す。非致死的群および致死的群におけるIL‐6レベルおよびSARS-CoV-2 RNAコピー数の平均±標準誤差は以下の通りである(IL-6: それぞれ49.5±14.8 pg/mLおよび330.4±85.3 pg/mL、P<0.0001; SARS-CoV-2 RNA: それぞれ0.5±0.2コピー/μLおよび38.5±19.2コピー/μL、P <0.0001)。
図2B】挿管前入院時における、IL-6およびSARS-CoV-2 RNAの組み合わせに対するROC曲線。
図2C】IL-6レベルの至適カットオフ値(49.0 pg/mL)およびSARS-CoV-2 RNAコピー数の至適カットオフ値(1.5コピー/μL)を上回るか否かでグループ分けした患者群の、ECMO使用と院内死亡の複合イベントの無イベント生存曲線。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で対象とする患者は、一般に新型コロナウイルスと呼ばれるSARS-CoV-2に感染し、COVID-19を罹患した患者である。本発明において、新型コロナウイルス感染症患者、SARS-CoV-2感染症患者、及びCOVID-19患者という語は、同義の語として用いる。
【0014】
本発明が提供する予測法は、COVID-19患者について、その死亡リスク、又は人工肺治療が必要になるリスクを予測する方法である。該予測法では、COVID-19患者から分離された血液サンプルを用いて、血中IL-6を定量的に検出するアッセイと、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイを行なう。血中IL-6の定量検出アッセイでは、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比する。血中SARS-CoV-2 RNAの検出アッセイでは、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べる。検出された血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出される場合に、当該患者が人工呼吸器による治療開始後に重症化して死亡するリスクが高いこと、又は、当該患者は人工肺治療が必要になるリスクが高いことが示される。
【0015】
なお、本明細書において、「本発明の方法」といった場合には、特に断りがない場合及び文脈上そうではないことが明らかな場合を除き、COVID-19患者の死亡リスクを予測する方法、COVID-19患者が、人工肺治療が必要になるリスクを予測する方法、及び後述するCOVID-19治療薬又は治療薬候補の効果を判定する方法を包含する。
【0016】
COVID-19患者は、その重症度に従い、軽症(治療介入不要)、中等症(酸素投与を要する)、重症(人工呼吸器治療を要する)、劇症(人工肺治療を要する)に分類することができる。本発明の予測法は、重症患者が人工呼吸器治療を開始した後により重症化・悪化して死亡するリスクないしは人工肺治療が必要となるリスクを、その重症患者が人工呼吸器挿管前すなわち人工呼吸器による治療を開始する前に予測できる方法である。従って、本発明の予測法で対象とするCOVID-19患者は、人工呼吸器治療を要する重症度に分類される重症患者である。
【0017】
COVID-19患者は、典型的にはヒト患者である。
【0018】
COVID-19患者の血液サンプルは、人工呼吸器の挿管前、挿管時、又は挿管直後(例えば、挿管後1時間以内、30分以内又は10分以内)に患者より採取したものを使用する。血液サンプルは、例えば、挿管前若しくは挿管直後に採取したもの、挿管前若しくは挿管時に患者より採取したもの、又は、挿管前に採取したものであってよい。本発明において、血液サンプルをアッセイに付すという語は、血液サンプルより分離した血漿又は血清を用いてアッセイを行なうことを包含する。
【0019】
血中IL-6レベルは、血液サンプルより血漿又は血清を分離し、血漿又は血清中のIL-6濃度(pg/mL)として定量検出することができる。血中IL-6レベルを定量検出するアッセイ方法としては、サンプル中のタンパク質を定量検出できる方法であれば特に限定されない。タンパク質を定量検出する手法としては、免疫測定法や質量分析等を挙げることができるが、免疫測定法は大掛かりな機器類が不要であり測定操作も簡便なので、本発明においても好ましく用いることができる。すなわち、本発明の方法において、血中IL-6を定量的に検出するアッセイとしては、IL-6の免疫測定法を特に好ましく用いることができる。IL-6を定量的に検出可能な抗IL-6ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びに免疫測定法によりIL-6を測定するためのキットが公知であり、種々の市販品も存在する。本発明では、そのような公知の抗IL-6抗体やIL-6免疫測定キットを好ましく使用することができる。
【0020】
また、IL-6タンパク質のアミノ酸配列及びこれをコードする塩基配列もデータベースに登録され公知であるので、常法により血中IL-6を定量検出するための抗IL-6抗体又はその抗原結合性断片を調製して使用してもよい。NCBIのGenBankにアクセッション番号NP_000591.1で登録されているヒトIL-6タンパク質前駆体のアミノ酸配列を配列番号2に、これをコードする塩基配列(NM_000600.5)を配列番号1に、それぞれ示す。ヒトIL-6は、212個のアミノ酸からなる前駆体として生産された後、N末端のシグナルペプチド(配列番号2の第1番~第29番アミノ酸)が切断され成熟型(配列番号2の第30番~第212番アミノ酸)となり、細胞外に分泌される。従って、血中IL-6レベルを測定するための抗IL-6抗体は、配列番号2に示したアミノ酸配列のうちの第30番~第212番アミノ酸の領域(成熟タンパク質)の全長又は適当な断片を免疫原として用いて作製することができる。
【0021】
例えば、抗IL-6ポリクローナル抗体は、IL-6成熟タンパク質の全長又は適当な断片を適宜アジュバントと共に非ヒト動物に免疫し、該非ヒト動物から採取した血液から抗血清を得て、該抗血清中のポリクローナル抗体を精製することで得ることができる。免疫は、被免疫動物中での抗体価を上昇させるため、通常数週間かけて複数回行なう。抗血清中の抗体の精製は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿や陰イオンクロマトグラフィーによる分画、アフィニティーカラム精製等により行なうことができる。
【0022】
抗IL-6モノクローナル抗体は、例えば、上記のようにIL-6成熟タンパク質の全長又は適当な断片を免疫した非ヒト動物より、脾細胞やリンパ球のような抗体産生細胞を採取し、これをミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを調製し、IL-6成熟タンパク質と結合する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、これを増殖させて培養上清から得ることができる。
【0023】
非ヒト動物の免疫に用いるIL-6成熟タンパク質の全長又はその断片は、本願配列表にも記載した公知のIL-6の塩基配列及びアミノ酸配列常法に基づき、化学合成や遺伝子工学的手法等の常法により作製できる。あるいは、新鮮ヒト血漿等からIL-6を抽出・精製して得ることもできる。
【0024】
化学合成法の具体例としては、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等を挙げることができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。化学合成の場合は、アミノ酸配列のみに基づいて所望のポリペプチドを合成できる。
【0025】
遺伝子工学的手法でIL-6成熟タンパク質又はその断片を製造する場合は、例えば、ヒトcDNAライブラリーからIL-6 cDNAの所望の領域を増幅し、これを適当なベクターに組み込み、適当な発現系にてポリペプチドを発現させ、このポリペプチドを回収すればよい。用いるベクターや各種の発現系(細菌発現系、酵母細胞発現系、哺乳動物細胞発現系、昆虫細胞発現系、無細胞発現系など)も周知であり、種々のベクターや宿主細胞、試薬類、キットが市販されているため、当業者であれば適宜選択して使用することができる。ヒト由来培養細胞も市販・分譲されており、入手は容易である。
【0026】
「抗原結合性断片」は、もとの抗体の対応抗原に対する結合性(抗原抗体反応性)を維持している限り、いかなる抗体断片であってもよい。具体例としては、Fab、F(ab')2、scFv等を挙げることができるが、これらに限定されない。FabやF(ab')2は、周知の通り、モノクローナル抗体をパパインやペプシンのようなタンパク分解酵素で処理することにより得ることができる。scFv(single chain fragment of variable region、単鎖抗体)の作製方法も周知であり、例えば、上記の通りに作製したハイブリドーマのmRNAを抽出し、一本鎖cDNAを調製し、免疫グロブリンH鎖及びL鎖に特異的なプライマーを用いてPCRを行なって免疫グロブリンH鎖遺伝子及びL鎖遺伝子を増幅し、これらをリンカーで連結し、適切な制限酵素部位を付与してプラスミドベクターに導入し、該ベクターで大腸菌を形質転換してscFvを発現させ、これを大腸菌から回収することにより、scFvを得ることができる。
【0027】
免疫測定自体はこの分野において周知である。免疫測定法を反応形式に基づいて分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法等があり、また、標識に基づいて分類すると、酵素免疫分析、放射免疫分析、蛍光免疫分析等がある。本発明においては、定量的検出が可能な免疫測定方法のいずれを用いてもよい。特に限定されないが、例えば、サンドイッチELISA等のサンドイッチ法を好ましく用いることができる。サンドイッチ免疫測定法の具体例を挙げると、酵素結合免疫吸着法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay; ELISA)、化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA)、電気化学発光免疫測定法(electrochemiluminescent immunoassay; ECLIA)、ラジオイムノアッセイ等の各種の手法があり、本発明においてはいずれの手法でも好ましく使用できる。
【0028】
サンドイッチ法では、IL-6成熟タンパク質に結合する抗IL-6抗体を固相に不動化し(固相化抗体)、試料と反応させ、洗浄後、固相化抗体と同時にIL-6に結合できる抗IL-6抗体(典型的には、固相化抗体とは異なる部位でIL-6に結合する抗IL-6抗体)に標識を付した標識抗体を反応させ、洗浄後、固相に結合した標識抗体を測定する。固相化抗体と標識抗体は、いずれもポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。抗体に代えて該抗体の抗原結合性断片を用いることもできる。
【0029】
固相化抗体と標識抗体の両者をモノクローナル抗体とする場合、モノクローナル抗体の組み合わせが好ましいかどうかは、実際に免疫測定を行なってみることで容易に調べることができる。所望により、抗体の認識部位の同定を行なって、異なるエピトープを認識するかどうかを調べてもよい。抗体の認識部位の同定は、この分野で周知の常法により行なうことができる。簡潔に説明すると、例えば、対応抗原であるIL-6成熟タンパク質をトリプシン等のようなタンパク質分解酵素により部分消化し、認識部位を調べるべき抗体を結合させたアフィニティーカラムに部分消化物溶液を通じて消化物を結合させ、次いで結合した消化物を溶出させて常法の質量分析を行なうことにより、抗体の認識部位を同定することができる。
【0030】
固相に結合した標識抗体の測定は、標識物質からのシグナルを測定することにより行なうことができる。シグナルの測定方法は、標識物質の種類に応じて適宜選択される。例えば、酵素標識の場合、該酵素の基質を反応系内に添加し、酵素反応により生じる発色や発光の量を吸光光度計やルミノメータを用いて測定すればよい。IL-6成熟タンパク質を種々の濃度で含む濃度既知の標準試料について、抗IL-6抗体又はその抗原結合性断片を用いて免疫測定を行ない、標識からのシグナルの量と標準試料中のIL-6濃度との相関関係をプロットして検量線(標準曲線)を作成しておき、IL-6濃度が未知の血液サンプル(血漿、又は血清)について同じ操作を行なって標識からのシグナル量を測定し、測定値をこの検量線に当てはめることにより、当該血液サンプル中のIL-6を定量することができる。
【0031】
検出した血中IL-6レベルは、IL-6のカットオフ値と対比する。血中IL-6量として血漿中のIL-6濃度を定量測定した場合、IL-6カットオフ値は30 pg/mL~200 pg/mLの範囲内に設定することができ、例えば、30 pg/mL~150 pg/mL、30 pg/mL~120 pg/mL、30 pg/mL~100 pg/mL、30 pg/mL~90 pg/mL、30 pg/mL~80 pg/mL、30 pg/mL~70 pg/mL、30 pg/mL~65 pg/mL、30 pg/mL~60 pg/mL、30 pg/mL~55 pg/mL、35 pg/mL~200 pg/mL、35 pg/mL~150 pg/mL、35 pg/mL~120 pg/mL、35 pg/mL~100 pg/mL、35 pg/mL~90 pg/mL、35 pg/mL~80 pg/mL、35 pg/mL~70 pg/mL、35 pg/mL~65 pg/mL、35 pg/mL~60 pg/mL、35 pg/mL~55 pg/mL、40 pg/mL~200 pg/mL、40 pg/mL~150 pg/mL、40 pg/mL~120 pg/mL、40 pg/mL~100 pg/mL、40 pg/mL~90 pg/mL、40 pg/mL~80 pg/mL、40 pg/mL~70 pg/mL、40 pg/mL~65 pg/mL、40 pg/mL~60 pg/mL、40 pg/mL~55 pg/mLのいずれかの範囲内に設定された値であってよい。
【0032】
血中SARS-CoV-2 RNAは、血中に存在することが重症化ないしは人工肺治療のリスクが高いことの指標となる。従って、本発明の方法においては、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かの定性的な評価を行なえばよいが、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイは定量的な手法により実施してよい。SARS-CoV-2はRNAウイルスであるので、逆転写反応と定量PCR(リアルタイムPCR)を組み合わせた、定量逆転写PCR(quantitative reverse transcription PCR; RT-qPCR)(リアルタイムRT-PCRとも呼ばれる)により、血中SARS-CoV-2 RNAを検出することができる。
【0033】
血中SARS-CoV-2 RNAの検出では、血液サンプルより血漿又は血清を分離し、血漿又は血清中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べればよい。RT-qPCRのような定量的検出方法の場合、血清又は血漿中のSARS-CoV-2 RNA濃度(コピー/μL)を測定することができる。
【0034】
血中SARS-CoV-2 RNAの検出の際にターゲットとするウイルス遺伝子の好ましい例として、N遺伝子(ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子)及びORF1ab遺伝子、特にN遺伝子を挙げることができる。NCBIのGenBankにNC_045512.2で登録されているSARS-CoV-2のゲノム配列(MN908947.3のSARS-CoV-2ゲノム配列と同一である)中のN遺伝子領域を配列番号3に、ORF1ab遺伝子領域を配列番号4に、それぞれ示す。RT-qPCRで使用するプライマー及びプローブは、これらの配列情報に基づいて適宜設計できる。SARS-CoV-2は変異株の出現も報告されているが、変異株においても保存されている領域にプライマー及びプローブを設定することにより、変異株に感染したCOVID-19患者もカバーして本発明を実施できる。
【0035】
N遺伝子をRT-qPCRにより増幅するためのプライマー及びプローブの具体例として、Shiratoらが報告し(Shirato et al., Japanese Journal of Infectious Diseases, 2020, Volume 73, Issue 4, Pages 304-307)、国立感染症研究所「病原体検出マニュアル2019-nCoV Ver.2.9.1」にも記載されている2種類のプライマー・プローブのセット(下記)が挙げられる。本発明においても、このような公知のプライマー・プローブセットを使用することができる。もっとも、上記したとおり、SARS-CoV-2のN遺伝子をRT-qPCRにより増幅するためのプライマー及びプローブは、本願配列表にも記載した公知の配列情報に基づいて適宜設計できるので、本発明の範囲はこのような具体例に限定されるものではない。
【0036】
【表1】
【0037】
RT-qPCRにより血中SARS-CoV-2 RNAの検出を行なう場合、血液サンプルから血漿又は血清を分離し、血漿又は血清よりRNAを抽出、精製し、精製後のRNAを鋳型としてRT-qPCR反応液を調製し、逆転写反応及び増幅反応を行えばよい。qPCRでは一般にインターカレーション法又はクエンチャー媒介蛍光検出法により増幅産物の検出・モニタリングが行われるが、本発明の方法ではいずれの方法を採用してもよい。なお、上記した国立感染症研究所のマニュアルに記載されているプライマー・プローブセットは、クエンチャー媒介蛍光検出法の一例であるTaqMan(登録商標)プローブ法にて検出するためのセットである。逆転写酵素、PCR酵素及び反応バッファーがプレミックス化されたRT-qPCR用の試薬が種々市販されており、そのような市販品を使用することができる。鋳型RNA、酵素類及びプライマー・プローブを全て混合した反応液を調製し、1ステップでRT-qPCR反応を実施することができる。熱サイクル反応は、市販されている種々のリアルタイムPCR装置のいずれかを使用して実施することができる。1ステップでRT-qPCR反応を実施する場合には、逆転写反応(使用する逆転写酵素に応じて温度及び反応時間を設定する)の後に熱変性し、次いで熱変性と伸長反応のサイクルを40~50サイクル程度行えばよい。また、自動化された定量PCRシステムも各種のものが知られており、市販の装置も知られている。そのような全自動のシステムを使用してもよい。商業的に提供されている臨床検査サービスも利用可能である。
【0038】
患者サンプルから抽出・精製したRNAを鋳型とするRT-qPCR反応と同時に、適当な陽性コントロールRNAを鋳型とするRT-qPCR反応、及び陰性コントロール反応(鋳型RNAを添加しない反応液にてRT-qPCR反応を行う)を実施する。陽性コントロールRNAとしては、使用するプライマー・プローブセットで増幅及び検出できる標的遺伝子領域からなるRNA(コンタミネーションを生じた場合に判別できるよう、チェックプローブがハイブリダイズするための配列や制限酵素サイト等の任意の外来塩基配列を内部に挿入してもよい)を使用できる。そのようなRNAは、標的遺伝子の配列情報に基づき、化学合成や遺伝子工学的手法により合成できる。また、Nセット専用及びN2セット専用の陽性コントロールとして株式会社日本遺伝子研究所より市販されている製品や、国立感染症研究所から分配されている陽性コントロールRNAを使用することも可能である。公知の陽性コントロールRNAの一例として、Shiratoらが報告したNセット用及びN2セット用の陽性コントロールRNAの塩基配列を配列番号12、13にそれぞれ示す。
【0039】
本発明においては、上述したとおり、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かの定性的な評価を行なえばよいが、血中ウイルスRNAのコピー数を定量できるように検量線(標準曲線)を作成してもよい。標準物質(検量線作成用の鋳型)としては、上記した陽性コントロールRNAを使用することができる。内部に外来塩基配列を挿入した陽性コントロールRNAを使用する場合、挿入した配列が逆転写効率やPCR効率に悪影響を与えないよう、30塩基程度以内の短い配列とすることが好ましい。あるいは、挿入配列のないRNAを検量線作成用の標準物質として使用してもよい。標準物質を種々の濃度で含む濃度既知のウイルスRNA標準試料を調製し、血液サンプルで血中ウイルスRNA量を測定するときと同じプライマー・プローブセット及び同じ反応条件を使用して標準試料のRT-qPCRを実施し、Ct値と標準物質濃度(コピー数/μL)との相関関係をプロットして検量線を作成することができる。患者由来の血液サンプルについてRT-qPCRを実施し、Ct値を検量線に当てはめることにより、当該血液サンプル中のSARS-CoV-2 RNAを定量することができる。
【0040】
従来のリアルタイムPCRシステムでは、検出限界は0.1コピー/μL程度である。RT-qPCRなどの定量的検出法により血中SARS-CoV-2 RNAの検出アッセイを行なった場合、ウイルスRNAが0.1コピー/μL以上で検出されたときに、血中にSARS-CoV-2 RNAが検出されたと判定してよい。この判定基準は、例えば、0.3コピー/μL以上、0.5コピー/μL以上、0.7コピー/μL以上、1コピー/μL以上、1.2コピー/μL以上、1.5コピー/μL以上、2コピー/μL以上、2.5コピー/μL以上、3コピー/μL以上などのように設定してもよい。すなわち、血中SARS-CoV-2 RNAの検出においても、IL-6と同様にカットオフ値(ウイルスカットオフ値)を設定し、検出された血中SARS-CoV-2 RNAレベル(コピー数/μL)をウイルスカットオフ値と対比し、該カットオフ値を超えた場合に血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出されたこととしてもよい。
【0041】
標的ウイルス遺伝子をN遺伝子とし、血中SARS-CoV-2 RNAとして血漿中のN遺伝子RNAを定量検出した場合、ウイルスカットオフ値は0.1コピー/μL~10コピー/μLの範囲内に設定することができ、例えば、0.1~9コピー/μL、0.1~8コピー/μL、0.1~7コピー/μL、0.1~6コピー/μL、0.1~5コピー/μL、0.1~4コピー/μL、0.1~3コピー/μL、0.1~2.5コピー/μL、0.3~10コピー/μL、0.3~9コピー/μL、0.3~8コピー/μL、0.3~7コピー/μL、0.3~6コピー/μL、0.3~5コピー/μL、0.3~4コピー/μL、0.3~3コピー/μL、0.3~2.5コピー/μL、0.5~10コピー/μL、0.5~9コピー/μL、0.5~8コピー/μL、0.5~7コピー/μL、0.5~6コピー/μL、0.5~5コピー/μL、0.5~4コピー/μL、0.5~3コピー/μL、0.5~2.5コピー/μL、1~10コピー/μL、1~9コピー/μL、1~8コピー/μL、1~7コピー/μL、1~6コピー/μL、1~5コピー/μL、1~4コピー/μL、1~3コピー/μL、1~2.5コピー/μLのいずれかの範囲内に設定された値であってよい。他のウイルス遺伝子を標的として測定した場合も、ウイルスカットオフ値は上記いずれかの範囲内に設定されていてよい。
【0042】
なお、IL-6カットオフ値及びウイルスカットオフ値を新たに設定したい場合には、重症から劇症に悪化する経過を辿ったCOVID-19患者の血液サンプル(該患者が人工呼吸器治療を開始する前、開始時又は開始後1時間程度以内に採取されたもの)を多数集め、これら血液サンプルを用いて血中IL-6量及び血中SARS-CoV-2 RNA量を定量測定し、劇症への悪化の有無を目的変数、血中IL-6量及び血中SARS-CoV-2 RNA量を説明変数として多変量ROC解析を行なえばよい。ROC曲線上で感度と特異度の間に最も妥協性がある値を血中IL-6量及び血中SARS-CoV-2 RNA量の最適カットオフ値として選択することができる。
【0043】
検出した血中IL-6レベルがIL-6カットオフ値を超え、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出された場合に、当該COVID-19患者が高リスク患者であること、すなわち、人工呼吸器による治療開始後に重症化して死亡するリスクが高いこと、又は人工肺治療が必要になるリスクが高いことが示される。高リスクという結果が得られた患者は、体外式膜型人工肺(ECMO)等による人工肺治療に早期に切り替えることが望まれる。
【0044】
本発明の技術は、COVID-19治療薬又は治療薬候補の効果判定にも応用できる。本発明の技術を応用したCOVID-19治療薬又は治療薬候補の効果を判定する方法は、COVID-19治療薬又は治療薬候補を投与されたCOVID-19患者より分離された血液サンプルを、血中IL-6を定量的に検出するアッセイに付し、検出された血中IL-6レベルをIL-6のカットオフ値と対比すること、及び、上記血液サンプルを、血中SARS-CoV-2 RNAを検出するアッセイに付し、血中にSARS-CoV-2 RNAが存在するか否かを調べること、を含む。血中IL-6レベルがIL-6のカットオフ値以下であり、かつ、血中にSARS-CoV-2 RNAの存在が検出されない場合(ウイルスカットオフ値を設定する場合は、検出された血中SARS-CoV-2 RNAレベルがウイルスカットオフ値以下である場合)に、上記治療薬又は治療薬候補がCOVID-19に有効であることが示される。
【0045】
本発明の効果判定方法は、COVID-19患者、特に重症患者において、投与されたCOVID-19治療薬が有効であるかどうかの判定に利用できる。有効という結果が得られた場合には、その治療薬による治療を継続すればよい。有効という結果が得られなかった場合には、異なるCOVID-19治療薬や人工肺治療に切り替える、等の対応を検討すればよい。
【0046】
また、本発明の効果判定方法は、COVID-19治療薬候補の臨床試験(特に、重症のCOVID-19患者を対象とした臨床試験)における効果判定にも利用できる。この態様でも、有効という結果が得られた場合には、そのCOVID-19患者に当該治療薬候補の投与を継続することができ、有効という結果が得られなかった場合には、異なるCOVID-19治療薬や人工肺治療に切り替える、等の対応を検討すればよい。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0048】
材料及び方法
研究デザイン
本研究は、横浜市立大学医学部附属病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、国立病院機構横浜医療センターを含む日本の3病院にわたる前向き観察研究であった。2020年2月~9月の間のCOVID-19の連続85名の患者を本研究に登録した。登録患者は、臨床転帰を評価するため、登録後30日または死亡まで観察された。主要転帰は、重症ARDSに由来する、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用と人工呼吸器(MV)使用後の院内死亡であった。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)以外の原因による死亡例は評価から除外した。なお、本研究は横浜市立大学附属病院研究倫理委員会の承認を得て行った(B200200048号)。
【0049】
臨床手順
COVID-19は、SARS-CoV-2に対する逆転写PCRアッセイ(国立感染症研究所「病原体検出マニュアル2019-nCoV Ver.2.9.1」に従い、N2セット(フォワードプライマーNIID_2019-nCoV_N_F2, 0.5μM; リバースプライマーNIID_2019-nCoV_N_R2, 0.7μM; プローブNIID_2019-nCoV_N_P2(レポーターはFAM, クエンチャーはBHQを使用))を使用して喀痰検体、鼻腔スワブ又は咽頭スワブを検査した)および胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより診断した。鼻腔および咽頭スワブも、イムノクロマトグラフィーアッセイを用いてインフルエンザウイルスを除外するために検査した。ルーチンの細菌および真菌検査を実施した。最初の臨床検査には、全血球計算、凝固プロファイル、および血清生化学検査が含まれた。
【0050】
治療手順
入院時の呼吸機能は、吸入酸素分圧に対する末梢血酸素飽和度の比(SpO2/FiO2)を測定することにより評価した。最初にSpO2/FiO2が443未満の患者に酸素サポート(鼻カニューレなど)を行った。MVまたはECMOの必要性は、動脈血酸素分圧とFiO2の比(PaO2/FiO2)に従って決定した。酸素投与にもかかわらずPaO2/FiO2が200未満であればMVを適用した。また、MV使用下でもPaO2/FiO2が150未満の場合はECMOの提供を考慮した。
【0051】
データと検体の収集
電子カルテから臨床、検査、放射線、治療、転帰データを得た。また、2名の研究者が独自にデータ収集用紙を見直し、収集したデータをダブルチェックした。研究者らはまた、疫学的データおよび症状データを確認するために、患者またはその家族と直接連絡をとった。入院後2時間以内および治療前に血液サンプルを採取した。採取直後に臨床検査を実施した。さらに、サイトカインレベルおよびSARS-CoV-2 RNA量の測定のために、血漿を同じ血液サンプルから分離し、アッセイまで-80℃で保存した。
【0052】
IL-6レベルの測定のため、MV導入後72時間以内に重症患者(n=10)より気管支肺胞洗浄液(BALF)サンプルを採取した。血漿も、気管支肺胞洗浄と同時に採取した血液検体から分離した。BALFサンプルは左肺の舌葉から得た。気管支肺胞洗浄は、滅菌した非静菌性生理食塩水溶液150mLを肺サブセグメントに導入し、一定分量に分割したその各々に再び吸引して戻すことにより実施した。最初の20mL分量(気管支分画)の返却は廃棄した。BALFサンプルはアッセイまで-80℃で保存した。
【0053】
サイトカイン評価
サイトカインレベルは、IFN-γ(Invitrogen社)、IL-6(R&D社)、IL-10(Invitrogen社)など製造元の説明書に従ってELISAキットを用いて評価した。
【0054】
血漿中のウイルスRNA量の定量
COVID-19患者血漿からのRNA抽出は、製造業者の説明書に従ってQIAamp Viral RNA Mini Kit (QIAGEN)により実施した。ウイルスRNAの定量は、国立感染症研究所「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1、4. TaqManプローブを用いたリアルタイムone-step RT-PCR法」に従い行った。リアルタイムRT-PCR用プライマーおよびプローブはNセット No.2 (N2セット)を選択し、表2の組成からなるPrimer/Probe N2 (2019-nCoV)(タカラバイオ)を使用した。
【0055】
【表2】
【0056】
リアルタイムRT-PCR試薬はTaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix(Applied Biosystems)を使用し、表3のように各試薬・抽出済RNAを調整した。
【0057】
【表3】
【0058】
リアルタイムPCR装置はCFX96 Touch Deep Well リアルタイムPCRシステムを使用し、表4の設定で抽出済RNAのCt値を定量した。
【0059】
【表4】
【0060】
Ct値からウイルスRNA量への換算は、まず100000 copies/μLの新型コロナウイルス陽性コントロールRNA(株式会社日本遺伝子研究所)を段階希釈し、上記と同様にリアルタイムone-step RT-PCR法を施行し各Ct値を求めた。これからウイルスRNA量とCt値の対応を示す検量線を作成し、それを用いて抽出済RNAから得られたCt値をウイルスRNA量へと換算した。
【0061】
定義
ARDSはベルリンの定義に準じて認めた(Ranieri VM, Rubenfeld GD, Thompson BT, Ferguson ND, Caldwell E, Fan E, et al. J Am Med Assoc. 2012;307: 2526-2533. doi:10.1001/jama.2012.5669)。
【0062】
統計解析
データ解析はJMP ver. 12.2ソフトウェアを用いて行った。各値は平均値±標準誤差で、カテゴリー変数は頻度(%)で示した。サブグループ間の差をフィッシャーの正確確率検定(カテゴリーデータについて)またはMann-Whitney U検定(連続データについて)で分析した。変数間の相関はSpearmanの順位検定により分析した。パラメータの曲線下面積(AUC)とカットオフ値を評価するために、受信者動作特性(ROC)曲線を作成した。最適カットオフ値はROC曲線上の転帰を予測するための感度と特異度の間に最も妥協性がある値と定義した。異なる変数を組み合わせてリスク層別化を試験するために、血漿中のIL-6およびSARS-CoV-2 RNAの最適カットオフ値を上回るか下回るかによるイベントフリー生存曲線を作成した。サブグループ間の無イベント生存率の比較はLog-rank検定で行った。統計学的有意性はP<0.05とした。
【0063】
結果
臨床的特徴
誤嚥性肺炎または感染性動脈瘤による死亡の2例は本研究から除外した。したがって、残りの83例(83名の患者)を評価した。入院時のベースラインの臨床データを表5に示す。67%は男性で、年齢は30~91歳(63.0±1.8)であった。患者は発病後6.0±0.4日で入院した。われわれの試験対象集団の半数以上(66%)は、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、高血圧、心疾患、慢性腎疾患などの併存疾患を有していた。全患者は、入院時に、Chinese National Health Commission(Chen G, Wu D, Guo W, Cao Y, Huang D, Wang H, et al. J Clin Invest. 2020;130: 2620-2629. doi:10.1172/JCI137244)の定義による中等度から重度のCOVID-19に分類された。
【0064】
【表5】
【0065】
治療と臨床転帰
治療および臨床転帰を表5に示す。抗ウイルス剤は殆どの患者(77%)に投与されていた。さらに、吸入ステロイドまたは全身性ステロイドは、全集団のそれぞれ48%または31%で投与されていた。あるいは、IL-6受容体に対する組換えヒト化モノクローナル抗体であるトシリズマブを投与した患者はわずか2例であった。臨床転帰との関連では、入院後1.1±0.7日のMVを必要とした患者は26例であったが(MV群)、残りの57例は観察中では必要なかった(非MV群)。続いて、MV群のうち5名は、入院後4.8±1.1日(3~9日の範囲)の進行性難治性呼吸不全のためECMOを必要とした。1例はARDSで死亡したが、残りの4例はARDSから回復し生存した。MV群の別の7名は入院後13.6±1.6日(7~21日の範囲)にARDSで死亡した。全体で、12名の患者は重症ARDS (致死的群)に由来する院内死亡とECMO使用で構成される主要転帰に達したが、残りの71名は30日では達しなかった(非致死的群)。
【0066】
MVの必要性の予測
最初にMVの必要性に関連するパラメータを求めた。入院時の臨床および検査データをMV群と非MV群で比較した(表6)。年齢は非MV群と比較してMV群で有意に高かった。MV群では非MV群と比較して、併存疾患、特に糖尿病を有する患者が多かった。投薬に関しては、MV群では非MV群と比較して、抗ウイルス剤とステロイドで治療された患者が多かった。入院時の臨床検査に関して、C反応性蛋白質(CRP)、乳酸脱水素酵素(LDH)、D-ダイマー、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の循環レベルは、非MV群と比較してMV群で有意に高かったが、SpO2/FiO2比はMV群で低かった。サイトカインのうち、IL-6の血漿中濃度は非MV群と比較してMV群で有意に高かったが、IFN-γとIL-10は2群間で有意差を示さなかった(図1A)。血漿中のSARS-CoV-2 RNAのコピー数は、非MV群と比較してMV群で有意に増加した(図1A)。その後、これらの変数の予測値をROC解析で評価した。MVの切迫した必要性を予測するバイオマーカーとしてSpO2/FiO2比、CRP、LDH、IL-6、SARS-CoV-2 RNA、ASTを同定した(表7)。また、SpO2/FiO2比は他のバイオマーカーと比較して精度が高く(AUC: 0.93、95%信頼区間[CI]:0.83-0.97)、至適カットオフ値は感度0.88、特異度0.89であった(表7、図1B)。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
致死的転帰の早期予測
MV使用後の致死的転帰を早期に予測するバイオマーカーを探索した。はじめに、致死的群と非致死的群の臨床・検査・治療情報を比較した(表8)。非致死的群と比較して致死的群で年齢が高い傾向にあり、有意差はなかった。さらに、2群間で性別と発症から入院までの期間に有意差はなかった。あるいは、致死的群では非致死的群と比較して糖尿病を有する患者が多かった。治療に関しては、非致死的群と比較して致死的群でステロイドや抗ウイルス剤を投与された患者が多かった。治療前の入院時の臨床検査データの中で、CRP、LDH、およびASTの血清レベルは非致死的群と比較して致死的群で有意に高かったが、SpO2/FiO2およびD-ダイマーの血清レベルは致死的群で低下した。さらに、IL-6レベルと血漿中のSARS-CoV-2 RNAのコピー数は、致死的群では非致死的群と比較して有意に増加した(図2A)。次に、これらの有意な変数に対するROC解析の結果、IL-6、SpO2/FiO2比、SARS-CoV-2 RNA、CRPは高精度で致死的転帰を予測する因子であることが示された(AUCIL-6: 0.94、AUCSpO2/FiO2: 0.93、AUCRNA: 0.83、AUCCRP: 0.80)(表9)。さらに、これらの変数を組み合わせてリスク予測の精度を評価した(表9)。IL-6レベルとSARS-CoV-2 RNAコピー数を組み合わせると、最も精度が高く(AUC: 0.95、95%CI: 0.86-0.98)、0.92の感度と0.89の特異度の間の最良の妥協点であった (表9および図2B)。
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
リスク層別化における入院時のIL-6レベルとウイルスRNA量を組み合わせることの臨床的有用性を、至適カットオフ値を上回るか下回るかに従って作成したKaplan-Meier無イベント生存曲線で検定した(図2C)。高IL-6 (>49 pg/mL)およびRNA血症 (>1.5 copies/μL)の患者では、RNA血症でないにもかかわらず高IL-6の患者、または高IL-6でなくかつRNA血症でない患者と比較して、30日間の追跡期間における無イベント生存率が有意に低下した(それぞれ27% [n = 3/11]対79% [n = 11/14]、P = 0.0085または98% [n = 54/55]、P<0.0001)。まとめると、末梢血中のIL-6レベルとSARS-CoV-2 RNAコピー数を組み合わせることにより、ECMO使用および院内死亡を含むMV使用後の致死的転帰の高リスクのCOVID-19患者を挿管前に特定することが可能となった。
【0073】
本研究では、血中ウイルスRNAコピー数についても至適カットオフ値を設定した。しかしながら、図2Aに示すように、非致死的群では血中ウイルスRNAが検出されない患者が大多数を占めており、血中ウイルスRNAというファクターは、一定のカットオフ値を超えるかどうかよりもむしろ血中にウイルスRNAが存在するか否かがリスク層別化に重要である。従って、血中IL-6及び血中SARS-CoV-2 RNAという2つの変数を用いたMV使用後の致死的転帰のリスク予測においては、血中SARS-CoV-2 RNAは定性的な(血中に存在するか否かの)評価で差し支えない。
【0074】
罹患肺の免疫状態の指標としての血漿IL-6
疾患肺の免疫状態が末梢情報による評価を可能にするかどうかを試験するために、我々は重症患者(n=10)由来の血漿およびBALF中のIL-6レベルの相関分析を行った。血漿IL-6レベルはBALF中のレベルと正に相関した(r = 0.93,P = 0.001) (データ示さず)。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
【配列表】
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