(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172944
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】段鼻部材、床材およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/16 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
E04F11/16 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079308
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 友有子
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301DD43
2E301DD50
(57)【要約】
【課題】梱包が嵩張らず、かつ施工が容易な段鼻部材を提供する。
【解決手段】階段の踏み面端部の出隅部分に滑落防止を目的として設置される段鼻部材であって、前記段鼻部材は、上板部、下板部および前記上板部と前記下板部とを連結する連結部を含む断面略⊃字状または略>字状の形状を有し、前記段鼻部材を階段に設置するときは、前記上板部の下面は踏み面に対向するように設置され、前記下板部の上面は蹴上げ面に対向するように設置され、前記上板部の下面と前記下板部の上面とは略平行または前記上板部の下面と前記下板部の上面とがなす角度が45°以下であり、前記連結部は、ショアA硬度が65~90の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の踏み面端部の出隅部分に滑落防止を目的として設置される段鼻部材であって、
前記段鼻部材は、上板部、下板部および前記上板部と前記下板部とを連結する連結部を含む断面略⊃字状または略>字状の形状を有し、
前記段鼻部材を階段に設置するときは、前記上板部の下面は踏み面に対向するように設置され、前記下板部の上面は蹴上げ面に対向するように設置され、
前記上板部の下面と前記下板部の上面とは略平行または前記上板部の下面と前記下板部の上面とがなす角度が45°以下であり、
前記連結部は、ショアA硬度が65~90の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから構成されている、段鼻部材。
【請求項2】
前記上板部の上面が、略⊃字状断面または略>字状断面に垂直な方向に延びる複数の畝部を有する、請求項1に記載の段鼻部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の段鼻部材、および前記段鼻部材の上板部に接合された階段被覆部材を含む床材。
【請求項4】
請求項1または2に記載の段鼻部材または請求項3に記載の床材を階段に設置する施工方法であって、前記段鼻部材を断面形状が略L字状になるように開き、前記上板部の下面が踏み面に対向するように、かつ前記下板部の前記上面が蹴上げ面に対向するように設置することを特徴とする施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段鼻部材、床材およびその施工方法に関する。より詳しくは、階段の踏み面端部の出隅部分に滑落防止を目的として設置される段鼻部材、前記段鼻部材を含む床材、および前記段鼻部材または前記床材を階段に設置する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
階段には、滑落防止を目的として、踏み面端部の出隅部分に段鼻部材が設置される場合がある。
特許文献1には、階段蹴上げ部と段鼻部とを有する略L字形状の階段用ステップ材と、階段踏み面部としての上記階段用ステップ材と同材質の床材とからなる熱可塑性樹脂製の階段用表面被覆材が開示されている。
特許文献2には、段部の上面を被覆する上面被覆部と、段部の上端コーナーを被覆する折り曲げ加工が予定された上端コーナー被覆帯部と、段部の垂下面を被覆する垂下面被覆部とを有する略平坦な段部被覆床材であって、上端コーナー被覆帯部の略全長にわたって線状もしくは細帯状の導電性抵抗体が埋設されており、階段の形状にあわせて現場で容易に折り曲げ加工して施工することができるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4355472号公報
【特許文献2】特開2014-227718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の段鼻部材は、断面がL字形状のために、出荷時や施工現場への輸送時に、商品の破損を防ぐためには、複雑な形状の梱包が必要になり、梱包資材の価格が高くなり、在庫や流通の段階で嵩張り、商品の開封時に廃棄物が多くなるというデメリットがある。
一方、特許文献2に記載の段鼻部材は、略平坦な形状のため、嵩の低い簡易な包装容器に包装して効率良く保管、輸送できるが、金属パーツが内蔵されているので、金属を起点とした経時劣化(錆など)、コストアップ、製造工程の複雑化、廃棄物の分別などのデメリットがあるばかりでなく、施工時に現場で折り曲げ加工しなければならず、折り曲げ加工時に出隅の形状に合わせるために治具が必要となるが、その治具は熱加工するための特殊な装置なので、施工者の負担になる。
本発明は、梱包が嵩張らず、かつ施工が容易な段鼻部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件第1発明は、階段の踏み面端部の出隅部分に滑落防止を目的として設置される段鼻部材であって、
前記段鼻部材は、上板部、下板部および前記上板部と前記下板部とを連結する連結部を含む断面略⊃字状または略>字状の形状を有し、
前記段鼻部材を階段に設置するときは、前記上板部の下面は踏み面に対向するように設置され、前記下板部の上面は蹴上げ面に対向するように設置され、
前記上板部の下面と前記下板部の上面とは略平行または前記上板部の下面と前記下板部の上面とがなす角度が45°以下であり、
前記連結部は、ショアA硬度が65~90の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから構成されていることを特徴とする。
本件第2発明は、本件第1発明の段鼻部材、および前記段鼻部材の上板部に接合された階段被覆部材を含む床材である。
本件第3発明は、本件第1発明の段鼻部材または本件第2発明の床材を階段に設置する施工方法であって、前記段鼻部材を断面形状が略L字状になるように開き、前記上板部の下面が踏み面に対向するように、かつ前記下板部の前記上面が蹴上げ面に対向するように設置することを特徴とする。
【0006】
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]階段の踏み面端部の出隅部分に滑落防止を目的として設置される段鼻部材であって、
前記段鼻部材は、上板部、下板部および前記上板部と前記下板部とを連結する連結部を含む断面略⊃字状または略>字状の形状を有し、
前記段鼻部材を階段に設置するときは、前記上板部の下面は踏み面に対向するように設置され、前記下板部の上面は蹴上げ面に対向するように設置され、
前記上板部の下面と前記下板部の上面とは略平行または前記上板部の下面と前記下板部の上面とがなす角度が45°以下であり、
前記連結部は、ショアA硬度が65~90の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから構成されている、段鼻部材。
[2]前記上板部の上面が、略⊃字状断面または略>字状断面に垂直な方向に延びる複数の畝部を有する、[1]に記載の段鼻部材。
[3][1]または[2]に記載の段鼻部材、および前記段鼻部材の上板部に接合された階段被覆部材を含む床材。
[4][1]または[2]に記載の段鼻部材または[3]に記載の床材を階段に設置する施工方法であって、前記段鼻部材を断面形状が略L字状になるように開き、前記上板部の下面が踏み面に対向するように、かつ前記下板部の前記上面が蹴上げ面に対向するように設置することを特徴とする施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の段鼻部材は、出荷時や施工現場への輸送時の梱包の際に2つ折りにして重ね合わせることができるので、梱包が嵩張らず、梱包材の省資源化およびコストダウンに寄与し、かつ階段出隅の形状にフィットさせやすいので、施工が容易であり、施工の不備を減らし、安全かつ堅牢な段鼻部材を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図3は、本発明の段鼻部材の別の実施形態の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の段鼻部材が設置された階段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を説明するが、本発明は図面に示されたものに限定されない。
図1は本発明の段鼻部材の斜視図であり、
図2は本発明の段鼻部材の断面図であり、
図5は本発明の段鼻部材が設置された階段の断面図である。
本発明の段鼻部材1は、階段21の踏み面22端部の出隅部分23に滑落防止を目的として設置される段鼻部材1である。段鼻部材1は、上板部2、下板部3および上板部と下板部とを連結する連結部4を含む断面略⊃字状の形状を有し、上板部2の下面5と下板部3の上面6とは略平行である。段鼻部材1を階段21に設置するときは、上板部2の下面5は踏み面22に対向するように設置され、下板部3の上面6は蹴上げ面24に対向するように設置される。
【0010】
段鼻部材1が、断面略⊃字状の形状を有し、上板部2の下面5と下板部3の上面6とが略平行であることにより、出荷時または施工現場への輸送時に、隙間なく積み重ねて梱包することができるので、梱包を小さくすることができ、輸送費用を低減することができる。
【0011】
図3は本発明の段鼻部材の別の実施形態の断面図である。
図3の段鼻部材1は、断面略>字状の形状を有し、上板部2の下面5と下板部3の上面6とがなす角度が45°以下である。
図3の段鼻部材1は、断面略>字状の形状を有し、上板部2の下面5と下板部3の上面6とがなす角度が45°以下である点以外は、
図1および
図2の段鼻部材と同一である。
【0012】
図4は、本発明の床材10の断面図である。床材10は、段鼻部材1および階段被覆部材11を含む。階段被覆部材11は、段鼻部材1の上板部2に接合されている。
図4の床材10では、階段被覆部材11の端を段鼻部材1の上板部2の端に突き付けて接合しているが、階段被覆部材11の端部の上に段鼻部材1を重ねて接合してもよく、逆に、段鼻部材1の端部の上に階段被覆部材11の端部を重ねて接合してもよい。接合の方法は、限定するものではないが、加熱溶接でもよいし、接着剤による接着でもよい。
【0013】
連結部4は、ショアA硬度が65~90の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから構成されている。連結部4のショアA硬度は、好ましくは70~80である。連結部4のショアA硬度をこの範囲にすることにより、連結部4を屈曲させて上板部2の下面5と下板部3の上面6とがなす角度(以下「段鼻部材の入隅角」ともいう。)を増減する(以下「段鼻部材を開閉する」ともいう。)ことができ、施工時に、段鼻部材1を開いて(段鼻部材の入隅角を広げて)、段鼻部材1を階段の出隅に形状を追従させて設置することができるとともに、段鼻部材1の開閉に伴う連結部4の破断を防止することができる。ショアA硬度が低すぎると、形状が保てなくなり、弾性が働かず鋭角に成形して階段の出隅に形状追従するという用途を満たさなくなる。ショアA硬度が高すぎると、可動が悪くなり、鋭角に成形して階段の出隅に形状追従するという用途を満たさなくなる。元の鋭角形状に復元する作用を利用して、階段の形状に追従させる。無理やり開いて裂けるなどの不具合も生じる。また、段鼻部材1が、
図3に示すように、連結部4の入隅角が45°以下である場合は、連結部4のショアA硬度を上記の範囲にすることにより、出荷時または施工現場への輸送時に、下板部3の上面6を上板部2の下面5に近接する位置まで折り畳み、上板部2の下に下板部3が収納される形(
図2に示す形)にすることができる。上板部2の下に下板部3が収納される形にすることにより、梱包を小さくすることができ、輸送費用を低減することができる。
【0014】
ショアA硬度は、デュロメーターによって測定する。
【0015】
連結部4を構成する熱可塑性樹脂としては、軟質塩化ビニル樹脂が好ましい。ビニル床材の原料として利用される塩化ビニル樹脂と接着剤や熱溶接で接合することを考慮すると、同じ塩化ビニル樹脂が好ましく、加工もしやすいし、リサイクルもしやすい。
連結部4を構成する熱可塑性エラストマーについても同様の理由から、塩ビ系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0016】
段鼻部材1は、連結部4の屈曲性に影響がない範囲において、複数の材料により構成することができる。たとえば、上板部2を構成する材料と下板部3を構成する材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上板部2を構成する材料および下板部3を構成する材料は、連結部4を構成する材料と同一であってもよいし異なっていてもよい。さらに、上板部2は複数の材料で構成してもよい。たとえば、踏み面22と接する上板部2の下面5は硬質の樹脂を使用して強度を担保し、滑り止め機能が必要な上板部2の上面は軟質の樹脂を用いてもよい。また、段差視認性のためのラインを主材料とは異なる色の樹脂で設けてもよい。
たとえば、上層をショアA硬度70~80、下層をショアA硬度90~95の塩化ビニル樹脂で2層に構成することにより、防滑機能と下地の不陸やゆがみを緩衝しうる剛性とを両立することができる。
【0017】
上板部2の上面は、好ましくは、略⊃字状断面または略>字状断面に垂直な方向に延びる複数の畝部7を有する。畝部7を有することにより、滑り止め機能を発揮することができる。
畝部7は、同一の形状および高さを有する複数の畝部で構成してもよいし、異なる2種以上の形状および高さを有する複数の畝部で構成してもよい。
図2の段鼻部材では、大きい畝部7aと小さい畝部7bを有する。大きい畝部7aの高さは、好ましくは0.5~2.0mmであり、より好ましくは0.7~1.5mmであり、さらに好ましくは1.0±0.1mmである。大きい畝部7aの高さが小さすぎると、防滑の効果が薄い。大きすぎると、逆につまづきやすくなったり、ゴミが溜まったりする。小さい畝部7bの高さは、好ましくは0.2~1.0mmであり、より好ましくは0.3~0.8mmであり、さらに好ましくは0.5±0.1mm程度である。小さい畝部7bの高さが小さすぎると、摩耗に耐えられない。大きすぎると、応力が集中してすり減り易くなったりする。畝部7を構成する材料は、滑り止め機能を有する材料であれば限定されないが、軟質塩化ビニル樹脂が好ましい。グリップ感を出すためには、連結部4同様、硬度を低めに設定するのが好ましい。畝部7を構成する材料は、上板部2を構成する材料と異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。多色押出成形で製造する場合は、接合部の密着度を考慮すると、同素材であることが好ましい。
【0018】
段鼻部材1の幅W(
図1参照)は、長めに成形し、現場で階段の幅に合せて調整できるようにしておくことが好ましい。段鼻部材1を押出成形により製造する場合は、連続した状態で製造されるため、現場によって異なる幅Wに合せてカットして、段鼻部材を提供することができる。したがって、段鼻部材1の幅Wは、限定されないが、たとえば1400~2000mmであり、好ましくは1700~1900mmであり、より好ましくは1800~1850mmである。
【0019】
上板部2の長さL
2(
図2参照)は、限定するものではないが、たとえば20~100mmであり、好ましくは30~70mmであり、より好ましくは40±5mmである。上板部2の長さL
2が短すぎると、十分な防滑機能を果たせない。一方、長すぎると、踏み面の床材に対しての比率が高くなり、意匠的におかしくなる。グリップ性の高い材料が平場に広がると、つんのめり易くなり、かえって危険になる。通常段鼻と床材は、段差を認識しやすくする目的で、輝度比(明度差)を付ける。段鼻の巾が広いと、上段から見て、段差が認識しにくくなるため、危険になる。
上板部2の厚さT
2は、限定するものではないが、階段被覆部材11の厚さT
11と同じ厚さとし、大きな段差が生じないようにすることが好ましい(
図4参照)。たとえば、ビニル床材では2.0~3.5mm程度の商品が汎用品としてあるので、これらの商品と組み合わせるのであれば、T
2は2.0~3.5mmにすることが好ましい。階段被覆部材11とT
2を合せることで、段差によるつまづきや、汚れの堆積を防ぐことができる。
上板部2の下面5の端部に近い位置に固定のための両面テープを付けることが好ましい。両面テープを付けたときは、両面テープ厚み分で段差が生じないように、端部の厚みを調整することが好ましい。
上板部2の上面には、階段の進行方向と同方向に、水ハケや清掃性向上を目的とした溝を設けてもよい。
【0020】
下板部3は、施工後、階段21の蹴上げ面24に貼付された階段被覆部材11の端部の目隠しとしての役割を果たす(
図5参照)。下板部3は、直接人が踏み、力がかかることがほぼないため、踏み面のような耐久性は要らないので、下板部3の厚さT
3は、上板部2の厚さT
2よりも薄くてもよく、たとえば0.5~2.0mmであり、好ましくは0.7~1.5mmであり、より好ましくは1.0±0.1mmである。硬度とのバランスにもよるが、薄すぎると、輸送時の変形が生じる。適度な張りがあった方が施工しやすい。接着剤の不陸を拾い、凹凸ができると見栄えが悪くなる。不用意に厚くするとコストアップにつながる。
下板部3の長さL
3は、限定するものではないが、たとえば2.0~6.0cmであり、好ましくは4.0cm程度である。短すぎると、接着剤がはみ出したり、下段から巻きあげた蹴上を被覆する床材の端部が隠れない/隠しにくいといった不具合が生じ、長すぎると、意匠的に見栄えが悪い。
下板部3の上面6(蹴上げ面24に対向する面)には、階段被覆部材11と重ならない部分に外観から見て凹みが生じないように、階段被覆部材11と同じ厚さの段差を設けることが好ましい。
【0021】
連結部4は、構造的に、薄肉にする必要がある。階段を降りる際、踏み面と出隅部は靴底が当たり、摩耗しやすい。連結部4は、階段昇降時に強い圧力がかからないように、昇降時に靴底が当たらない部分に設置しなければならない。すなわち、連結部4が出隅部分23よりも少し下にくるように段鼻部材1を配置することが好ましい。
連結部4の入隅角は45°以下なので、施工時に段鼻部材1を階段の出隅に嵌め込んだときに、連結部4の復元力によって、段鼻部材1が階段の形状に追従することができる。
段鼻部材1の開閉時、連結部4を構成する材料へのストレスを極力小さくするために、連結部4の入隅内部断面はカーブを設け、肉厚を薄くすることが好ましい。
連結部4の厚さは、段鼻部材1の開閉によって破断することがない限り、限定されないが、たとえば0.3~2.0mmであり、好ましくは0.5~1.5mmであり、より好ましくは1.0±0.1mmである。硬度とのバランスにもよるが、薄すぎると、形状が保てなくなり、弾性が働かず鋭角に成形して階段の出隅に形状追従するという用途を満たさなくなる。元の鋭角形状に復元する作用を利用して、階段の形状に追従させる。厚すぎると、可動が悪くなり、鋭角に成形して階段の出隅に形状追従するという用途を満たさなくなる。
【0022】
段鼻部材の製造方法は、限定するものではないが、段鼻部材を構成する材料である熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを押出成形または射出成形することにより、段鼻部材を製造することができる。押出成形で製造すると、連続生産ができ、現場ごとに異なる寸法に対応しやすくなる。連結部4を構成する材料と上板部2および下板部3を構成する材料とが異なる場合など、段鼻部材が複数の材料で構成される場合は、多色成形によって段鼻部材を製造することができる。
本発明の床材10は、段鼻部材1の上板部2に階段被覆部材11の端部を接合することにより、製造することができる。接合の方法は、限定するものではないが、加熱溶接、接着剤による接着などによって接合することができる。
【0023】
本件第3発明の施工方法は、本件第1発明の段鼻部材または本件第2発明の床材を階段に設置する施工方法であって、段鼻部材1を断面形状が略L字状になるように開き、上板部2の下面5が踏み面22に対向するように、かつ下板部3の上面6が蹴上げ面24に対向するように設置することを特徴とする。
段鼻部材1のより具体的な施工方法は、次のとおりであるが、本発明は次の方法に限定されない。
段鼻部材1設置部の下地は、事前に平らにならし、段鼻部材1を設置する領域にプライマー処理を施してもよい。階段の形状に合わせて、段鼻部材1をカットする。不陸などの問題があるため、施工は寸法合せではなく、現場合せを基本とする。段鼻部材1の被さりを考慮し、下板部3は短めにカットする。下板部3をめくり、段鼻部材入隅部に接着剤を充填する。階段形状に合せて段鼻部材1を押し込み、両面テープで段鼻部材1を踏み面22に固定する。ローラーなどを用いて、段鼻部材1を圧着する。段鼻部材1にあらかじめ階段被覆部材11が接合されていない場合において、階段被覆部材11を貼るときは、段鼻部材1を施工した後、上板部2の端部に階段被覆部材11を突き付けで合わせ施工を行う。段鼻部材1の浮き上がりなどの問題を考慮すると、階段被覆部材11の接合部分は、樹脂(溶接棒)で加熱溶接するのが好ましい。階段被覆部材11は、必要に応じて、踏み面22のみならず、蹴上げ面24まで延ばして貼り付け、階段被覆部材11の端を段鼻部材1の下板部3で隠す。
段鼻部材1にあらかじめ階段被覆部材11が接合されている床材10を施工する場合は、段鼻部材1と同時に階段被覆部材11の踏み面22および蹴上げ面24への貼り付けを行う。段鼻部材1および階段被覆部材11の貼り付け前に、階段21の踏み面22と蹴上げ面24への糊入れを行う。この場合、加熱溶接は要らない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の段鼻部材は、階段の踏み面端部の出隅部分に滑落防止を目的として設置するのに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 段鼻部材
2 上板部
3 下板部
4 連結部
5 上板部の下面
6 下板部の上面
7 畝部
7a 大きい畝部
7b 小さい畝部
10 床材
11 階段被覆部材
21 階段
22 踏み面
23 出隅部分
24 蹴上げ面