(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172953
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造、ブレーキ付きモータ、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法、およびブレーキ付きモータ組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H02K 7/106 20060101AFI20221110BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H02K7/106
H02K15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079319
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】臼田 伊織
(72)【発明者】
【氏名】平 浩之
【テーマコード(参考)】
5H607
5H615
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE08
5H607EE10
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アキシャル荷重印加時であってもブレーキロータを軸に締め付けているネジ固定部のずれとそれによるブレーキトルク低下を有効に防止でき、安全性を向上することのできる、ブレーキ付きモータにおけるブレーキロータ固定技術を提供する。
【解決手段】ブレーキロータ固定方法は、ロータに対するブレーキロータ固定位置を調整するためのスラスト押さえリングを、該スラスト押さえリングが備えている内ねじに合う外ねじを備えているブレーキロータに取り付けるリング取り付け工程P1と、吸引時におけるブレーキロータのライニング材とアーマチュアとの隙間を設定した状態で該ブレーキロータを軸に固定する対軸固定工程P2と、スラスト押さえリングを回してロータ端面と隙間のないように密着させた状態にする位置調整工程P3とから構成されるブレーキロータ固定工程P10である。
【選択図】図p1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ付きモータの組み立て時においてロータに対するブレーキロータ固定位置を調整するためのブレーキロータ固定構造であって、
内ねじを備えているスラスト押さえリングと、
該スラスト押さえリングが取り付けられるブレーキロータからなり、
該ブレーキロータは該スラスト押さえリングの内ねじと合う外ねじを備えていることを特徴とする、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキロータ固定構造を備えている、ブレーキ付きモータ。
【請求項3】
ブレーキ付きモータの組み立て時におけるブレーキロータ固定方法であって、ロータに対するブレーキロータ固定位置を調整するためのスラスト押さえリングを、該スラスト押さえリングが備えている内ねじに合う外ねじを備えているブレーキロータに取り付けるリング取り付け工程と、
吸引時における該ブレーキロータのライニング材とアーマチュアとの隙間を設定した状態で該ブレーキロータを軸に固定する対軸固定工程と、
該スラスト押さえリングを回して該ロータ端面と隙間のないように密着させた状態にする位置調整工程とを備えてなり、
これにより該ロータに対して隙間なくブレーキロータを固定できることを特徴とする、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキロータ固定方法によりブレーキロータを軸およびロータに対して固定するブレーキロータ固定工程と、
該ブレーキロータ固定工程に続く所定の後工程とからなり、
これによりブレーキ付きモータが組み立てられる、ブレーキ付きモータ組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造、ブレーキ付きモータ、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法、およびブレーキ付きモータ組み立て方法に係り、特に組み立て性の向上、およびブレーキ性能低下防止の可能なブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ付きモータの製造技術については従来、特許出願等も多数なされている。たとえば後掲特許文献1には、従来の無励磁作動形単板ブレーキではアーマチュア・摩擦板・ハブプレートなど各構成要素を分解して納入し、納入先で組み立て、ギャップ調整を行う必要があったことを踏まえ、 取付け時のギャップ調整を不要とした無励磁作動形単板ブレーキとして、磁極体とアーマチュア間のギャップを設定した後に設定済みギャップを保持するためのギャップ保持手段、すなわち仮止め用ねじを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-90364号公報「無励磁作動形単板ブレーキ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、ブレーキ付きモータにおいては従来、アキシャル荷重印加時に、ブレーキロータを軸に締め付けているイモネジ固定部がずれることがあり、これによってブレーキトルクが低下する危険性があった。
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、アキシャル荷重印加時であってもブレーキロータを軸に締め付けているネジ固定部のずれとそれによるブレーキトルク低下を有効に防止でき、安全性を向上することのできる、ブレーキ付きモータにおけるブレーキロータ固定技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は上記課題について検討した結果、外ねじを持ったブレーキロータと内ねじを持ったリングの組み合わせによって、ブレーキロータと軸の隙間をなくす調整を行うことができ、それによってブレーキトルク低下を防止できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0007】
〔1〕 ブレーキ付きモータの組み立て時においてロータに対するブレーキロータ固定位置を調整するためのブレーキロータ固定構造であって、内ねじを備えているスラスト押さえリングと、該スラスト押さえリングが取り付けられるブレーキロータからなり、該ブレーキロータは該スラスト押さえリングの内ねじと合う外ねじを備えていることを特徴とする、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造。
〔2〕 〔1〕に記載のブレーキロータ固定構造を備えている、ブレーキ付きモータ。
〔3〕 ブレーキ付きモータの組み立て時におけるブレーキロータ固定方法であって、ロータに対するブレーキロータ固定位置を調整するためのスラスト押さえリングを、該スラスト押さえリングが備えている内ねじに合う外ねじを備えているブレーキロータに取り付けるリング取り付け工程と、吸引時における該ブレーキロータのライニング材とアーマチュアとの隙間を設定した状態で該ブレーキロータを軸に固定する対軸固定工程と、該スラスト押さえリングを回して該ロータ端面と隙間のないように密着させた状態にする位置調整工程とを備えてなり、これにより該ロータに対して隙間なくブレーキロータを固定できることを特徴とする、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法。
〔4〕 〔3〕に記載のブレーキロータ固定方法によりブレーキロータを軸およびロータに対して固定するブレーキロータ固定工程と、該ブレーキロータ固定工程に続く所定の後工程とからなり、これによりブレーキ付きモータが組み立てられる、ブレーキ付きモータ組み立て方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造、ブレーキ付きモータ、ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法、およびブレーキ付きモータ組み立て方法は上述のように構成されるため、これらによれば、アキシャル荷重印加時であってもブレーキロータを軸に締め付けているネジ固定部のずれとそれによるブレーキトルク低下を有効に防止でき、安全性を向上することができる。
【0009】
つまり本発明のブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造等によれば、ブレーキロータの固定位置を、組み立て時においてフレキシブルに調整可能であり、その後の製品完成時には、ブレーキロータを完全に固定することができる。本発明は、サーボモータを初めとするあらゆるモータに対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図p1】本発明ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法およびブレーキ付きモータ組み立て方法の構成を示すフロー図である。
【
図1】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順1の断面視説明図である。
【
図2】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順2の説明図である。
【
図2-2】
図2示した手順2完了状態の説明図である。
【
図3】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順3の説明図である。
【
図4】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順4、5の説明図である。
【
図5】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順6の説明図である。
【
図6】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順7、8、9、10の説明図である。
【
図7】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順11の説明図である。
【
図8】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順12の説明図である。
【
図9】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順13、14、15の説明図である。
【
図10】実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順16の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、図面および実施例により詳細に説明する。
図p1は、本発明ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定方法およびブレーキ付きモータ組み立て方法の構成を示すフロー図である。図示するように本発明ブレーキロータ固定方法は、ロータに対するブレーキロータ固定位置を調整するためのスラスト押さえリングを、スラスト押さえリングが備えている内ねじに合う外ねじを備えているブレーキロータに取り付けるリング取り付け工程P1と、吸引時におけるブレーキロータのライニング材とアーマチュアとの隙間を設定した状態でブレーキロータを軸に固定する対軸固定工程P2と、スラスト押さえリングを回してロータ端面と隙間のないように密着させた状態にする位置調整工程P3とから構成されるブレーキロータ固定工程P10である。
【0012】
かかる構成の本ブレーキロータ固定工程P10では、まずリング取り付け工程P1において、スラスト押さえリングが備えている内ねじに合う外ねじを備えているブレーキロータに対して当該スラスト押さえリングが取り付けられ、ロータに対するブレーキロータ固定位置調整のための準備がなされる。ついで、対軸固定工程P2において、吸引時におけるブレーキロータのライニング材とアーマチュアとの隙間が設定された状態で、ブレーキロータが軸に固定される。そして、位置調整工程P3において、スラスト押さえリングが回されてロータ端面と隙間のないように密着させた状態が形成される。本フローを経ることによって、ロータに対して隙間なくブレーキロータが固定される。
【0013】
図示するように、本発明ブレーキ付きモータ組み立て方法に係るブレーキ付きモータ組み立て工程P100は、上述のブレーキロータ固定工程P10と、これに続く所定の後工程P20とから構成される。かかる構成により本ブレーキ付きモータ組み立て工程P100によれば、ブレーキロータ固定工程P10においてブレーキロータが軸およびロータに対して固定され、特に後者に対してはその端面に隙間なく密着した状態で固定され、ついで所定の後工程P20によって事後の必要な作業がなされて、ブレーキ付きモータの組み立てが完了する。
【0014】
次に、ブレーキ付きACサーボモータの一例における単板ブレーキ組み立て手順説明中に含む形で、本発明実施例を説明する。
(手順1)
図1は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順1の断面視説明図である。なお以下の図は、
図7-2を除き全て断面視の説明図である。図示するように手順1は、キー溝14へのキー(図示せず)の取り付けである。すなわち、ロータASSY10上のブレーキ取付け部のキー溝14へ、ライニング材回り止め用のキーがソフトタッチブライヤー等によって取り付けられる。
【0015】
(手順2)
図2は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順2の説明図である。また、
図2-2は、
図2示した手順2完了状態の説明図である。これらに図示するように手順2は、ブレーキロータ21へのスラスト押さえリング30の取り付けである。すなわち、ブレーキASSY20を構成するブレーキロータ21のねじ部止まりまで、スラスト押さえリング30を取り付ける手順である。スラスト押さえリング30には内ねじ31が切られており、これが取り付けられるブレーキロータ21の端部には、内ねじ31と螺合する外ねじ22が切られている構造とする。
【0016】
この、内ねじ31を備えているスラスト押さえリング30と、内ねじ31に合う外ねじ22を備えているブレーキロータ21とによって、本発明のブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造2130が構成される。つまり、スラスト押さえリング30がブレーキロータ21に既に取り付けられている形態(
図2-2)が本発明ブレーキロータ固定構造2130に該当することはもちろんのこと、これらが内ねじ31―外ねじ22によって螺合する前のいわば「ブレーキロータ固定用の構造」として分離している形態(
図2)も、本発明ブレーキロータ固定構造2130に該当する。
【0017】
かかる構成の本発明ブレーキロータ固定構造2130によれば、ブレーキ付きモータの組み立て時において、ロータ12に対するブレーキロータ21固定位置を、ロータ12端面との隙間がないように自在に調整することができる。つまり、スラスト押さえリング30がブレーキロータ21端部に螺合され固定された状態で、ブレーキASSY20がロータASSY10に挿入された後の手順において、ロータ12端面との隙間を埋めるようにこれと対向しているスラスト押さえリング30を回して当接させ、固定させればよいのである。これは手順15において改めて説明する。
【0018】
(手順3)
図3は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順3の説明図である。図示するように手順3は、ロータASSY10へのブレーキASSY20の挿入である。
【0019】
(手順4、5)
図4は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順4、5の説明図である。図示するように手順4、5は、出力側ベアリング40の取り付けである。まず手順4にて出力側ベアリング40を所定の圧入用の治具(図示せず)に装着し、ついで手順5にて、出力側ベアリング取り付け用位置に保持したロータASSY10を、圧入治具50を用いて出力側ベアリング40方向へ押圧し、出力側ベアリング40にロータASSY10を圧入し、固定する。
【0020】
(手順6)
図5は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順6の説明図である。図示するように手順6は、反出力側ベアリング49の取り付けである。手順4、5同様に反出力側ベアリング49も、圧入治具50を用いてロータASSY10のロータ軸11に圧入、固定する。
【0021】
(手順7、8)
図6は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順7、8、9、10の説明図である。まず手順7にてロータASSY10を圧入治具50から外した後、手順8にて位置決め治具60へのロータASSY10の挿入を行う。図示するように、反出力側ベアリング49から位置決め治具60へとロータASSY10を挿入する。
【0022】
(手順9)
ついで手順9にてブレーキ仮固定ねじ61を用い、適宜の締め付けトルクにて、ブレーキASSY20と位置決め治具60を固定する。仮固定ねじ61締め付け後、軸固定ねじ62を適宜の締め付けトルクにて締め付ける。
【0023】
(手順10)
ブレーキ線へ適宜の電圧を印加する。これにより、ブレーキは、ブレーキロータ21のライニング材23とアーマチュア24との間に隙間が生じる吸引状態となる。
【0024】
(手順11)
図7は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順11の説明図である。また、
図7-2は、
図7の平面視説明図である。これらに図示するように手順11は、吸引時のライニング材―アーマチュア間隔調整手順である。ブレーキロータ21を上方に持ち上げ、ライニング材23とアーマチュア24との間に、厚さ調整用のシムテープ7を挿入する。シムテープ7は適宜の厚さのものを用いる。なお、
図7-2に示すようにシムテープ7は2枚挿入すれば十分である。
【0025】
(手順12)
図8は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順12の説明図である。図示するように手順12は、スラスト押さえリング30の予備的調整および軸11へのブレーキロータ21の固定手順である。手順11で吸引時の隙間調整すなわちブレーキロータ21のアーマチュア側端部の高さ調整を終えたのを受け、本手順12では、かかる隙間が保持されている状態でのブレーキロータ21のロータ12側に対向する端部の高さを予備的に調整するのである。
【0026】
まず、シムテープ70が挟められてライニング材23―アーマチュア24間の隙間がている状態、すなわち手順10での電圧印加による吸引とシムテープ70によって適正回転時の姿勢が形成された状態で、それまで持ち上げていたブレーキロータ21を下に降ろし、ブレーキロータ21に取り付けられているスラスト押さえリング30をCCW方向に回転させ、対向するロータ12の下端面まで上昇させ、軸端面止まり、つまりロータ12の下端面に当接したらそこで手締めする。
【0027】
次に、軸11に対するブレーキロータ21の固定を行う。固定は止めねじ80を用いて行うことができる。たとえば、止めねじ80に適宜の接着剤を塗布し、適宜の締め付けトルクにて締め付ける。
【0028】
本手順12では、軸11に対するブレーキロータ21の固定がなされ、ブレーキロータの定位置が確定するとともに、ライニング材23―アーマチュア24間の隙間の適正が担保される。また、本手順12により、製品完成後の使用時において、ブレーキの吸引・釈放の繰り返しによっても、イモネジのずれ発生が防止される。
【0029】
(手順13)
図9は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順13、14、15の説明図である。図示するように、まず手順13にてシムテープ70が抜き取られ、さらに手順10で行った電圧印加が解除される。
【0030】
(手順14)
吸引電圧・釈放電圧が設計通りであることを確認し、記録する。また、吸引時のアーマチュア24とライニング材23とのギャップを隙間ゲージにて確認する。たとえば、
条件:0.07mm隙間ゲージでは通り、0.15mm隙間ゲージでは止まり
等である。
【0031】
(手順15)
図9に示すように手順15は、スラスト押さえリング30の最終調整・固定手順である。ロータASSY10をカップリング等で掴み、固定した状態にて、スラスト抑えリング30をCCW方向に適宜の締め付けトルクにて、軸11に対して締め付ける。固定は止めねじ90を用いて行うことができる。たとえば、止めねじ90へ適宜の接着剤を塗布して、適宜の締め付けトルクにて締め付ける。
【0032】
つまり本手順15は、ロータAssy10(軸11)を固定した状態でスラスト押さえリング30をロータ12端面方向に進行するように締め付け、これによってロータ12の端面にスラスト押さえリング30の上端面を確実に当てた状態にして、スラスト押さえリング30を軸11に固定する手順である。
【0033】
いわばブレーキロータ21の高さ調整シロの役をしているスラスト押さえリング30がロータ12端面と隙間のない状態で固定されることによって、釈放の時の制動力が確実かつ適切にロータ12にも伝わる。これにより、吸引・釈放の繰り返しによるイモネジのずれ発生も有効に防止される。
【0034】
(手順16)
図10は、実施例に係る単板ブレーキ組み立て手順16の説明図である。図示するように手順16では、仮固定ねじ61、軸固定ねじ62が外されて、ロータASSY10が位置決め治具60から取り外され、ブレーキロータ固定済みのロータASSY100が得られる。
【0035】
(手順17)
手順17は工程は所定の後工程であり、通常の組み立て手順と同じである。すなわち、たとえば下記のような各手順がなされる。
a) ブレーキロータ固定済みのロータASSYを後蓋へ取付ける。
b) a)に前蓋・ステータを組み付ける。
c) 後蓋を取り付ける。
d) 角度センサを組み付ける。
e) 後蓋へセンサカバーを取付ける。
【0036】
なお、以上のようにして組み立てられる、本発明ブレーキロータ固定構造を備えているブレーキ付きモータ自体もまた本発明の範囲内であり、適用可能な範囲はモータ全般である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造等によれば、アキシャル荷重印加時であってもブレーキロータを軸に締め付けているネジ固定部のずれとそれによるブレーキトルク低下を有効に防止でき、安全性を向上できる。したがって、ブレーキ付きモータ製造、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0038】
10…ロータASSY
11…軸
12…ロータ
13…マグネット
14…キー溝
20…ブレーキASSY
21…ブレーキロータ
22…外ねじ
23…ライニング材
24…アーマチュア
30…スラスト押さえリング
31…内ねじ
40…出力側ベアリング
49…反出力側ベアリング
50…圧入治具
60…位置決め治具
61…仮固定ねじ
62…軸固定ねじ
70…シムテープ
80…止めねじ(ブレーキロータ用)
90…止めねじ(スラスト押さえリング用)
100…ブレーキロータ固定済みのロータASSY
2130…ブレーキ付きモータのブレーキロータ固定構造
P1…リング取り付け工程
P2…対軸固定工程
P3…位置調整工程
P10…ブレーキロータ固定工程
P20…後工程
P100…ブレーキ付きモータ組み立て工程