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特開2022-172961化粧シートの製造方法及び化粧シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172961
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】化粧シートの製造方法及び化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/29 20190101AFI20221110BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20221110BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20221110BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20221110BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221110BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
B29C48/29
B29C48/08
B29C48/395
B29C48/285
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079328
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 純
(72)【発明者】
【氏名】大窪 翔
(72)【発明者】
【氏名】源嶋 慎也
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
【Fターム(参考)】
4F071AA24
4F071AA46
4F071AB18
4F071AE09
4F071AF34
4F071AH03
4F071AH07
4F071AH12
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F207AA24
4F207AB12
4F207AB16
4F207AB19
4F207AC01
4F207AC05
4F207AG01
4F207AG02
4F207AH26
4F207AH48
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KF03
(57)【要約】
【課題】着色作業の負荷を軽減することができるとともに、色替えを行う際の作業性に優れた化粧シートの製造方法及び化粧シートを提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂と白色顔料とを混合して第1の樹脂組成物を形成する工程と、第1の樹脂組成物を押出機に供給するとともに、押出機に供給された第1の樹脂組成物に液体の着色剤を滴下して、第1の樹脂組成物と着色剤からなる第2の樹脂組成物を形成する工程と、押出機により、第2の樹脂組成物をシート状に押し出して成形する工程とを少なくとも含む化粧シートの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と白色顔料とを混合して第1の樹脂組成物を形成する工程と、
前記第1の樹脂組成物を押出機に供給するとともに、前記押出機に供給された前記第1の樹脂組成物に液体の着色剤を滴下して、前記第1の樹脂組成物と前記着色剤からなる第2の樹脂組成物を形成する工程と、
前記押出機により、前記第2の樹脂組成物をシート状に押し出して成形する工程と
を少なくとも含むことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂と、白色顔料と、前記白色顔料以外の着色剤とを少なくとも含む化粧シートであって、
前記白色顔料の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5質量部~15質量部であり、
前記着色剤は液体であることを特徴とする化粧シート。
【請求項3】
前記着色剤は、無機顔料または有機顔料を含む液体であることを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記着色剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して9質量部以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記白色顔料の平均粒子径が50nm~500nmであることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれ1項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤により着色された化粧シートの製造方法及び化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
壁面材、造作材、建具等の建装材、家具等の表面装飾、自動車内装・弱電の表装等の様々な用途で、表面装飾を施して意匠性を高めるために化粧シートが用いられている。この化粧シートとしては、例えば、着色剤により単一に着色され、意匠性を高めたものが知られている。
【0003】
そして、このような着色された化粧シートの製造方法として、例えば、カラーマスター樹脂ペレット(顔料もしくは染料をベース樹脂に均一に練り込んだもの)とベース樹脂ペレットとをブレンドし、押出機によりシート状に押し出す方法が提案されている。そして、このような構成により、各ペレットの分離を防止して、色調の良好な成形品を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-81200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の製造方法においては、色調毎に調色配合した着色済みのカラーマスター樹脂ペレットを作製する必要があり、また、余剰の着色剤を準備するとともに、余った着色剤を除去するという作業が必要となるため、着色作業の負荷が大きいという問題があった。
【0006】
さらに、着色済みのカラーマスター樹脂ペレットを押出機に供給する構成であるため、着色剤を変更して色替えを行う際に、押出機に対してカラーマスター樹脂ペレットを供給する設備を清掃する必要があるとともに、押出機全体の清掃が必要であるため、色替えを行う際の作業の負荷が大きいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、着色作業の負荷を軽減することができるとともに、色替えを行う際の作業性に優れた化粧シートの製造方法及び化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の化粧シートの製造方法は、熱可塑性樹脂と白色顔料とを混合して第1の樹脂組成物を形成する工程と、第1の樹脂組成物を押出機に供給するとともに、押出機に供給された第1の樹脂組成物に液体の着色剤を滴下して、第1の樹脂組成物と着色剤からなる第2の樹脂組成物を形成する工程と、押出機により、第2の樹脂組成物をシート状に押し出して成形する工程とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂と、白色顔料と、白色顔料以外の着色剤とを少なくとも含む化粧シートであって、白色顔料の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5質量部~15質量部であり、着色剤は液体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれは、着色作業の負荷を軽減することができるとともに、色替えを行う際の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の化粧シートについて具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して適用することができる。
【0012】
本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂と、白色顔料と、白色顔料以外の着色剤とを含有するシート状の成形体である。
【0013】
<熱可塑性樹脂>
本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂を主成分としており、この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(PETG)、非晶状態の結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(APET)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、非晶状態の結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(APET)としては、PETボトルなどを原料としたリサイクルポリエチレンテレフタレート(RPET)が挙げられる。なお、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
また、熱可塑性樹脂としては、二次曲面加工が容易であり、三次元成形性に優れるとの観点から、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の一種であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂のグリコール成分がエチレングリコールであるのに対し、グリコール成分として、エチレングリコールの他、エチレングリコール以外のジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール)が含まれている非結晶性ポリエステル樹脂である。
【0015】
また、熱可塑性樹脂を主成分とする本発明の化粧シートの厚みは、特に限定されないが、50~500μmが好ましく、100~400μmがより好ましい。化粧シートの厚みが50μm以上であれば、機械強度と隠蔽性を十分に向上させることができる。また、化粧シートの厚みが500μm以下であれば、三次元成形性がより優れ、また、可撓性と印刷適性を確保し易くなる。
【0016】
<白色顔料>
白色顔料は、化粧シートにおける隠蔽性を向上させるためのものであり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リトボン等が挙げられる。このうち、特に、隠蔽力の高い酸化チタンを使用することが好ましい。この酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン等が挙げられ、触媒としての活性が低いとの観点から、ルチル型酸化チタンが好ましい。なお、これらの白色顔料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、白色顔料の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5質量部~15質量部が好ましい。これは、0.5質量部未満の場合は、隠蔽性が低下する場合があり、15質量部よりも多い場合は、溶融樹脂粘度が著しく低下することにより、化粧シートの成形性が低下する場合があるためである。
【0018】
また、白色顔料の平均粒子径は、50nm~500nmであることが好ましい。これは、50nm未満の場合は、化粧シートの透明性が高くなるため、隠蔽性が低下する場合があり、500nmよりも大きい場合は、着色度(白色度)が低下する場合があるためである。
【0019】
なお、ここで言う「平均粒子径」とは、50%粒径(D50)を指し、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック(登録商標)粒度分布測定装置MT3200)等により体積平均粒子径として測定できる。
【0020】
<着色剤>
着色剤は、化粧シートにおける意匠性を向上させるためのものであり、本発明においては、無機顔料または有機顔料を含む液体の着色剤が使用される。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、ウルトラマリン、チタンブラック等が挙げられ、有機顔料としては、例えば、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン等が挙げられる。なお、これらの着色剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、有機着色染料は退色し易く、耐候性に乏しいため、本発明の化粧シートにおける着色剤としては使用されない。
【0021】
また、着色剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して9質量部以下であることが好ましい。これは、9質量部よりも多い場合は、溶融樹脂粘度が著しく低下することにより、化粧シートの成形性が低下する場合があるためである。
【0022】
<製造方法>
次に、本発明の化粧シートの製造方法について説明する。本発明の化粧シートを製造する際には、まず、熱可塑性樹脂と白色顔料とを混合して第1の樹脂組成物を形成する。このような構成により、液体の着色剤に分散し難い白色顔料を確実に分散させることが可能になるため、化粧シートにおける隠蔽性を向上させることが可能になる。
【0023】
次に、第1の樹脂組成物を押出機に供給するとともに、押出機に供給された第1の樹脂組成物に液体の着色剤を滴下して、第1の樹脂組成物と着色剤からなる第2の樹脂組成物を形成する。
【0024】
より具体的には、第1の樹脂組成物の配合を行った設備から、配管等の供給設備を介して、押出機に対して第1の樹脂組成物を供給するとともに、例えば、押出機のフィード部に、予め準備した液状の着色剤を供給して、押出機に供給された第1の樹脂組成物に液体の着色剤を滴下することにより、第1の樹脂組成物と着色剤からなる第2の樹脂組成物を形成する。
【0025】
従って、色調毎に液状の着色剤を準備して滴下すればよく、上記従来技術のごとく、色調毎に調色配合した着色済みのカラーマスター樹脂ペレットを作製する必要がないため、着色作業の負荷を軽減することが可能になる。
【0026】
また、液状の着色剤を必要な量のみ滴下すればよく、上記従来技術のごとく、余剰の着色剤を準備するとともに、余った着色剤を除去するという作業が不要となるため、着色作業の負荷を軽減することが可能になる。
【0027】
また、着色済みのカラーマスター樹脂ペレットを押出機に供給する上記従来技術とは異なり、押出機のフィード部に液状の着色剤を供給して滴下する構成であるため、第1の樹脂組成物の配合から押出機への第1の樹脂組成物の供給まで固定色となる。従って、着色剤を変更する際に第1の樹脂組成物を配合する設備、および押出機に対して第1の樹脂組成物を供給する設備の清掃が不要になり、色替えを行う際の作業性を向上することができる。
【0028】
さらに、押出機のフィード部に液状の着色剤を供給して滴下する構成であるため、着色剤を変更する際に押出機のフィード部以降の設備のみを清掃すればよく、上記従来技術のごとく、押出機の全体の清掃が不要になるため、色替えを行う際の作業性を向上することができる。
【0029】
そして、押出機により、第2の樹脂組成物をシート状に押し出すことにより、熱可塑性樹脂を主体とする着色された化粧シートが製造される。
【0030】
以上に説明したように、本発明の化粧シートの製造方法においては、隠蔽性とシートの成形性に優れた化粧シートを製造する際に、着色作業の負荷を軽減することができるとともに、色替えを行う際の作業性を向上させることができる。
【実施例0031】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0032】
(実施例1)
(化粧シートの作製)
まず、主成分であるA-PET樹脂(華潤社製、商品名:CR8816)100質量部に対して、酸化チタン(石原産業製、商品名:CR-60、平均粒子径:0.21μm)15質量部を添加し、第1の樹脂組成物を形成した。次に、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)に第1の樹脂組成物を供給するとともに、押出機のフィード部に、予め準備した液状の着色剤1(L*:96.32、a*:-0.32、b*:3.65)をA-PET樹脂100質量部に対して0.3質量部を滴下することにより、第1の樹脂組成物と着色剤1からなる第2の樹脂組成物を形成し、上述の押出機を使用して、温度が265℃、スクリュー回転速度が44rpmの条件下で、第2の樹脂組成物をシート状に押し出し、A-PET樹脂を主体とする着色された化粧シート(幅:340mm、厚さ:0.2mm)を作製した。
【0033】
なお、「L*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)において定義される明度の相関量である。また、「a*」および「b*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)において定義される色座標である。
【0034】
(調色作業性の評価)
調色作業性について、色調毎に調色配合したマスターバッチを作製する必要がなく、作業負荷が低い場合を〇、色調毎に調色配合したマスターバッチを作製する必要があり、作業負荷が高い場合を×とした。以上の結果を表1に示す。
【0035】
(着色剤の準備に関する評価)
必要量の着色剤のみを準備すればよい場合を〇、必要量以上の着色剤の準備が必要な場合を×とした。以上の結果を表1に示す。
【0036】
(清掃性の評価)
色調を変更する場合、第1の樹脂組成物を配合する設備、および押出機に対して第1の樹脂組成物を供給する設備を清掃する必要がない場合を〇、清掃する必要がある場合を×とした。以上の結果を表1に示す。
【0037】
(色替え性の評価)
着色剤を変更する際に、押出機の一部の清掃のみでよい場合を〇、押出機の全体の清掃が必要な場合を×とした。以上の結果を表1に示す。
【0038】
(隠蔽性の評価)
作製した化粧シートについて、MDF(Medium Density Fiberboard)(L*:66.03、a*:9.24、b*:21.90)を測色台とした色度と、白基材(MDF白色塗装品、L*:93.38、a*:-0.85、b*:4.99)を測色台とした色度との色差ΔEが0.6以内である場合を〇、それ以外を×とした。より具体的には、分光光度計(CCM)(クラボウ社製、商品名:COLOR-7)を用い、光源D65、視野角10°、測色範囲φ28mmの条件にて、試料の任意の3ヶ所を測定し、その平均値を測色した色座標とした。以上の結果を表1に示す。
【0039】
(シート成形性の評価)
作製した化粧シート(幅:340mm)において、化粧シート全体におけるシート幅の変動値に基づいて評価した。より具体的には、化粧シートの全体におけるシート幅の変動値が10mm未満の場合(すなわち、化粧シートの全体におけるシート幅が、330mmよりも大きく350mm未満の場合)を○、シートの変動幅が10mm以上(すなわち、化粧シートの全体において、シート幅が330mm以下、または350mm以上の部分がある場合)を×とした。以上の結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2)
(化粧シートの作製)
まず、主成分であるPVC樹脂(大洋塩ビ製、商品名:TH700)に100質量部に対し、酸化チタン(石原産業製、商品名:CR-60、平均粒子径:0.21μm)1.5質量部を添加し、第1の樹脂組成物を形成した。次に、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)に第1の樹脂組成物を供給するとともに、押出機のフィード部に、予め準備した液状の着色剤2(明度L*:75.86、色度a*:1.32、色度b*:5.45)をPVC樹脂100質量部に対して2質量部を滴下することにより、第1の樹脂組成物と着色剤2からなる第2の樹脂組成物を形成し、上述の押出機を使用して、温度が190℃、スクリュー回転速度が44rpmの条件下で、第2の樹脂組成物をシート状に押し出し、PVC樹脂を主体とする着色された化粧シート(幅:340mm、厚さ:0.2mm)を作製した。
【0041】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
(化粧シートの作製)
まず、主成分であるA-PET樹脂(華潤社製、商品名:CR8816)100質量部に対して、酸化チタン(石原産業製、商品名:CR-60、平均粒子径:0.21μm)2.4質量部を添加し、第1の樹脂組成物を形成した。次に、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)に第1の樹脂組成物を供給するとともに、押出機のフィード部に、予め準備した液状の着色剤2(明度L*:75.86、色度a*:1.32、色度b*:5.45)をA-PET樹脂100質量部に対して3質量部を滴下することにより、第1の樹脂組成物と着色剤2からなる第2の樹脂組成物を形成し、上述の押出機を使用して、温度が265℃、スクリュー回転速度が44rpmの条件下で、第2の樹脂組成物をシート状に押し出し、A-PET樹脂を主体とする着色された化粧シート(幅:340mm、厚さ:0.2mm)を作製した。
【0043】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0044】
(実施例4)
酸化チタンの添加量を1.2質量部に変更し、着色剤2の滴下量を5質量部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして化粧シートを作製した。
【0045】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0046】
(実施例5)
酸化チタンの添加量を0.6質量部に変更し、着色剤2の滴下量を8質量部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして化粧シートを作製した。
【0047】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
酸化チタンの添加量を18質量部に変更し、着色剤1の滴下量を0.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0049】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0050】
(比較例2)
酸化チタンの添加量を18質量部に変更し、着色剤1の滴下量を2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0051】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0052】
(比較例3)
酸化チタンの添加量を0.12質量部に変更し、着色剤2の滴下量を10質量部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして化粧シートを作製した。
【0053】
そして、上述の実施例1と同様にして、調色作業性の評価、着色剤の準備に関する評価、清掃性の評価、色替え性の評価、隠蔽性の評価、及びシート成形性の評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
酸化チタンを使用しなかったこと以外は、比較例3と同様にして化粧シートを作製した。より具体的には、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)にA-PET樹脂(華潤社製、商品名:CR8816)100質量部を供給するとともに、押出機のフィード部に、予め準備した液状の着色剤2(明度L*:75.86、色度a*:1.32、色度b*:5.45)をA-PET樹脂100質量部に対して10質量部を滴下することにより、A-PET樹脂と着色剤2からなる樹脂組成物を形成し、上述の押出機を使用して、温度が265℃、スクリュー回転速度が44rpmの条件下で、樹脂組成物をシート状に押し出し、A-PET樹脂を主体とする着色された化粧シート(幅:340mm、厚さ:0.2mm)を作製した。
【0055】
(比較例5)
まず、A-PET樹脂(華潤社製、CR8816)と着色剤2を用いて、明度L*:75.86、色度a*:1.32、色度b*:5.45に調色した着色済ペレットを作製した。次に、長田製作所社製の押出機(OSE-35φmm押出機)にA-PET樹脂(華潤社製、CR8816)100質量部に対し、酸化チタンを2.4質量部、および作製した着色済ペレットを3質量部、供給するとともに、この押出機を使用して、温度が265℃、スクリュー回転速度が44rpmの条件下で、成形加工を行い、A-PET樹脂を主体とする着色された化粧シート(幅340mm、厚さ0.200mm)を作製した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、実施例1~5においては、色調毎に液状の着色剤を準備すればよく、比較例5のごとく、色調毎に調色配合した着色済みマスターバッチを作製する必要がないため、着色作業の負荷が低いことが分かる。
【0058】
また、実施例1~5においては、液状の着色剤を必要な量のみ滴下すればよく、比較例5のごとく、余剰の着色剤を準備するとともに、化粧シートの作製後に余った着色剤を除去するという作業が不要であるため、着色剤の準備に関する作業が簡素化でき、着色作業の負荷が低いことが分かる。
【0059】
また、実施例1~5においては、着色ペレットを押出機に供給する比較例5とは異なり、押出機のフィード部に液状の着色剤を滴下する構成であるため、第1の樹脂組成物を配合する設備、および押出機に対して第1の樹脂組成物を供給する設備の清掃が不要となり、色替えを行う際の作業性に優れていることが分かる。
【0060】
また、実施例1~5においては、押出機のフィード部に液状の着色剤を滴下する構成であるため、押出機のフィード部以降の設備のみを清掃すればよく、比較例5のごとく、押出機の全体の清掃が不要であるため、色替えを行う際の作業性に優れていることが分かる。
【0061】
また、実施例1~5の化粧シートにおいては、色差ΔEが0.6以内であり、隠蔽性に優れていることが分かる。一方、比較例3の化粧シートにおいては、酸化チタンの含有量が0.5質量部未満(0.12質量部)と少なく、また、比較例4の化粧シートにおいては、酸化チタンを含有しないため、色差が0.6よりも大きく、隠蔽性に乏しいことが分かる。
【0062】
また、実施例1~5の化粧シートにおいては、着色剤の含有量が9質量部以下であるため、シート成形性に優れていることが分かる。一方、比較例1~2の化粧シートにおいては、酸化チタン(粉体)の含有量が15質量部よりも多い(18質量部)ため、シート成形性に乏しいことが分かる。また、比較例3~4においては、着色剤の含有量が9質量部よりも多い(10質量部)ため、シート成形性に乏しいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、着色剤により着色された化粧シートの製造方法及び化粧シートに適している。