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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172973
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電解還元装置および電解還元方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 3/02 20060101AFI20221110BHJP
   C22B 5/02 20060101ALI20221110BHJP
   G21C 19/44 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C25C3/02 A
C25C3/02 B
C22B5/02
G21C19/44 250
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079353
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 要
(72)【発明者】
【氏名】可児 祐子
(72)【発明者】
【氏名】笹平 朗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中原 宏尊
【テーマコード(参考)】
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4K001BA05
4K058AA21
4K058BA02
4K058BA04
4K058BB06
4K058CB04
4K058CB05
4K058CB17
4K058EB04
4K058FC07
(57)【要約】
【課題】微小化した金属酸化物でも保持することができる陰極構造を有する電解還元装置および電解還元方法を提供する。
【解決手段】内周面が電極となる円筒状の陰極2と、陽極3と、塩浴4と、塩浴4を収容する反応容器7と、陰極2および陽極3の間に電流を通電する直流電源6と、陰極2の軸方向を鉛直方向にした状態で、軸方向を中心に陰極2を回転させる回転駆動用モータ12と、を備え、還元対象である金属酸化物5を遠心力により塩浴4内の陰極2の内周面に押し付けて金属酸化物5と陰極2が接し通電することにより、金属酸化物5を還元するものである。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が電極となる円筒状の陰極と、
陽極と、
塩浴と、
前記塩浴を収容する容器と、
前記陰極および前記陽極の間に電流を通電する直流電源と、
前記陰極の軸方向を鉛直方向にした状態で、前記軸方向を中心に前記陰極を回転させる回転機器と、を備え、
還元対象である金属酸化物を遠心力により前記塩浴内の前記陰極の内周面に押し付けて前記金属酸化物と前記陰極が接し通電する
ことを特徴とする電解還元装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解還元装置において、
前記金属酸化物を前記電解還元装置の上部側から前記塩浴内に供給する酸化物供給管を更に備えた
ことを特徴とする電解還元装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電解還元装置において、
鉛直方向、あるいは水平方向のうち少なくともいずれか1方向に前記酸化物供給管を駆動させる駆動機構を更に有する
ことを特徴とする電解還元装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電解還元装置において、
前記酸化物供給管は、前記塩浴内に前記金属酸化物を供給する供給口を複数有する
ことを特徴とする電解還元装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電解還元装置において、
前記塩浴は、アルカリ金属のハロゲン化物、及びアルカリ土類金属のハロゲン化物から選択される少なくとも一種類を含み、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びシリコンの酸化物から選択される少なくとも一種を含む塩からなる
ことを特徴とする電解還元装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電解還元装置において、
前記塩浴に添加される還元剤供給塩を更に備え、
前記還元剤供給塩は、Li、K、Ca、Mgのいずれか1つ以上を含む塩からなる
ことを特徴とする電解還元装置。
【請求項7】
内周面が電極となる円筒状の陰極を軸方向を鉛直方向にした状態で、前記軸方向を中心に回転させ、
金属酸化物を遠心力により塩浴内の前記陰極の前記内周面に押し付けて前記金属酸化物と前記陰極が接した状態で前記陰極と陽極との間に通電する
ことを特徴とする電解還元方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電解還元方法において、
前記金属酸化物を前記塩浴内に連続的に供給する
ことを特徴とする電解還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩浴に浸した陽極と還元対象である金属酸化物を保持する陰極との間に電流を通電して金属酸化物を還元する電解還元装置および電解還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操業温度を下げられると共に使用済酸化物燃料を還元する場合に後段の電解精製工程との間での廃棄物発生量を少なくできる技術の一例として、特許文献1には、還元対象である酸化物を保持する陰極と、陽極と、酸化物および陽極が浸される溶融塩と、溶融塩を収容する容器と、陰極および陽極に電流を通電して酸化物を還元する直流電源とを備える電解還元装置において、溶融塩を塩化リチウム-塩化カリウム共晶塩とする、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-166094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所から発生する使用済み燃料中には、ウラン、超ウラン元素の他に、核分裂生成物であるアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類等が含まれており、再処理工程を経て燃料として再利用することができる。
【0005】
従来からの再処理方法として、使用済み酸化物燃料と混合酸化物燃料(MOX燃料)を還元対象物として金属に還元し、金属燃料とする方法として、電解還元方法が知られている。
【0006】
このような技術の一つである特許文献1では、還元対象である金属酸化物を保持する陰極と、陽極を塩浴に浸漬し、陰極と陽極に電流を通電し、金属酸化物を固体のまま還元し、金属ウランとする還元設備が開発されている。
【0007】
上述の特許文献1では、ペレット状に成形した金属酸化物をバスケット状の陰極に保持して還元している。金属酸化物の還元速度は、金属酸化物の大きさに依存するため、ペレット状の金属酸化物では還元速度が遅いという課題がある。
【0008】
ここで、金属酸化物の粒径と還元速度との関係式から陰極表面からの距離に関わる金属酸化物の粒径と還元速度との関係を計算した結果を図1に示す。図1からわかるように、金属酸化物の還元速度を向上させるためには、金属酸化物を微小化することが有効である。しかし、特許文献1のようなバスケット状の陰極では、微小化した金属酸化物でも保持することが困難なため、微小化した金属酸化物であっても保持することができる構造を備えた電解還元装置が待たれている。
【0009】
本発明では、微小化した金属酸化物でも保持することができる陰極構造を有する電解還元装置および電解還元方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、内周面が電極となる円筒状の陰極と、陽極と、塩浴と、前記塩浴を収容する容器と、前記陰極および前記陽極の間に電流を通電する直流電源と、前記陰極の軸方向を鉛直方向にした状態で、前記軸方向を中心に前記陰極を回転させる回転機器と、を備え、還元対象である金属酸化物を遠心力により前記塩浴内の前記陰極の内周面に押し付けて前記金属酸化物と前記陰極が接し通電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微小化した金属酸化物でも保持することができる陰極構造を有する電解還元装置および電解還元方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】平均還元速度と金属酸化物の粒径の関係を示す図。
図2】本発明の実施例1に係る電解還元装置の概略図。
図3】UO粒子の粒子径と陰極表面到達時間の関係を示す図。
図4】UO粒子の粒子径と陰極上の通過時間の関係を示す図。
図5】本発明の実施例2に係る電解還元装置の概略図。
図6図5の領域Aの部分拡大図。
図7】本発明の実施例3に係る電解還元装置の概略図。
図8図7の領域Bの部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の電解還元装置および電解還元方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、以下の実施例は本発明の好適な実施の一例にすぎず、これに限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0014】
また、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
<実施例1>
本発明の電解還元装置および電解還元方法の実施例1について図2乃至図4を用いて説明する。
【0016】
最初に、電解還元装置の全体構成について図2を用いて説明する。図2に本実施例の電解還元装置1の概略図を示す。
【0017】
図2に示す電解還元装置1は、陰極2、陽極3、塩浴4、直流電源6、反応容器7、酸化物供給管8、温度調節機構9、バルブ10、回転駆動用モータ12等を備えている。
【0018】
陰極2および陽極3は、塩浴4に電流を流すために用いられる電極であり、例えば陰極2はTi製、陽極3は白金製とすることができるが、これらに限定されない。
【0019】
例えば、陽極3は白金以外にも、Ni、炭素、La、Zr、Bi、Tiのいずれか一つを含む材料から成る電極とすることができる。陽極3が炭素製の場合は、陽極3からは二酸化炭素が発生するため、この二酸化炭素の発生に備えた対策を取ることが望まれる。
【0020】
本実施例では、陽極3は棒状であり、陰極2は、内周面が電極となる円筒状の回転体であり、その中心軸部分に陽極3が配置される。陰極2の上端側や下端側には底が存在してもしなくてもよく、特に限定されない。
【0021】
直流電源6は、陰極2および陽極3の間に電流を通電する電源である。
【0022】
酸化物供給管8は、バルブ10の開閉によって金属酸化物貯槽11に貯留された金属酸化物5を電解還元装置1の上部側から塩浴4内に供給する配管であり、鉛直方向下方側の端部の開口が塩浴4内に配置される。金属酸化物5は酸化物供給管8を介して電解還元装置1の上方側から塩浴4に供給される。
【0023】
なお、酸化物供給管8の下端面の鉛直方向位置は塩浴4内である必要はないが、金属酸化物5の投入のしやすさを鑑みると塩浴4内であることが望ましい。
【0024】
また、酸化物供給管8の下端面と陰極2との高さ方向の関係も特に限定されないが、投入される金属酸化物5が陰極2の上端側へより多く移動するように、酸化物供給管8の下端の鉛直方向位置は陰極2の上端側と略同じかそれより高い位置であることが望ましい。
【0025】
更に、酸化物供給管8の円周方向位置も特に限定されないが、投入される金属酸化物5が均一に陰極2の内周面側に分布するように均等、かつ長い距離を取るために、中心軸付近に位置することが望まれる陽極3に近い位置であることが望ましい。
【0026】
本実施例では、金属酸化物5として例えば原子力発電所の使用済み酸化物燃料であるUOを例に挙げるがもちろんこれに限定されず、UO以外にも様々な混合酸化物燃料や鉱物などとすることができる。
【0027】
塩浴4は、還元対象である金属酸化物5が浸される液体であり、ガラス製の反応容器7に収容される。反応容器7はガラス製の容器に限らずステンレス製やセラミック製などの容器を使用することができる。
【0028】
温度調節機構9は、反応容器7に保持された塩浴4の温度を塩浴4の融点以上の温度に調節するヒーターなどである。
【0029】
塩浴4は、好適には、アルカリ金属のハロゲン化物、及びアルカリ土類金属のハロゲン化物から選択される少なくとも一種類を含み、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びシリコンの酸化物から選択される少なくとも一種を含む塩からなり、例えばLiClが用いられる。
【0030】
この塩浴4には、還元剤供給塩を添加・溶解させることができる。この場合、陰極2と陽極3の間に電位差を与えることで、還元材供給塩を溶解して生成した還元材供給イオンを陰極2で還元して還元剤を生成し、生成した還元剤と金属酸化物5を接触させることで金属酸化物5を固体のまま還元することができる。
【0031】
塩浴4に添加する還元剤供給塩は例えば酸化リチウムを使用できるが、これには限定されず、Li、K、Ca、Mgのいずれか1つ以上を含む塩を使用することができる。
【0032】
回転駆動用モータ12は、円筒形状の陰極2に接続された回転軸を有しており、陰極2の軸方向を鉛直方向にした状態で、軸方向を中心に陰極2を回転させる駆動源である。
【0033】
この回転駆動用モータ12によって陰極2を回転させ、この回転によって発生した遠心力によって陰極2の内周面に金属酸化物5を押し付けた状態を保ち、陰極2と陽極3との間に直流電源6によって通電することにより、金属酸化物5を還元する。
【0034】
上述のように、使用する陰極2は円筒状であり、円筒形の陰極2が回転することで遠心力が加わる。金属酸化物5は陰極2の内側から酸化物供給管8の下端側の開口より塩浴4内に投入される。
【0035】
図3には、UO粒子の粒子径と陰極2表面への到達時間の関係と陰極2の回転速度の影響を示している。図4には、UO粒子が陰極2上に滞留する時間、すなわちUO粒子が陰極2上を通過する時間とUO粒子の粒子径の関係を示す。
【0036】
図3および図4に示すように、UO粒子が小さくなるほど陰極2の表面への到達速度が遅くなるが、陰極2の通過時間も遅くなる。
【0037】
ここで、金属酸化物5の粒径は特に限定されないが、従来のような直径10mm、高さ10mm程度のペレット状の金属酸化物よりは小さいことが望ましい。例えば、平均粒径20μm程度とすることができ、還元終了タイミングが予期しやすいことから粒径のバラツキは小さく、均一に近いほど望ましい。なお、本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0038】
金属酸化物5の形状についても特に限定は無く、真球に近くても平板状でもよく、特に限定されない。
【0039】
陰極2の回転速度、すなわち回転駆動用モータ12の回転速度は特に限定されないが、金属酸化物5が投入されてから陰極2に到達する時間(T1)と投入された金属酸化物5が陰極2の表面上において重力方向へ移動する時間(T2)との関係は、塩浴4に投入した金属酸化物5の大半がすべて陰極2表面に到達し、金属に還元される確率をより上げるために、T1<T2になる条件とすることが望ましい。
【0040】
但し、回転駆動用モータ12の回転速度の条件がT1>T2となってもよい。なお、この場合は金属酸化物5の供給口となる酸化物供給管8の下端面を陰極2より上部にすることで、投入された金属酸化物5の多くを陰極2の上端側の表面に到達するように調整することが望ましい。
【0041】
更に、陰極2に到達した金属酸化物5をより効率的に還元するために、金属酸化物5が陰極2の表面に摩擦力により保持されるように、摩擦力>重力になる条件が望ましい。摩擦力<重力の場合は、重力による落下時間(T3)と還元時間(T4)がT3<T4の関係になる条件が望ましい。
【0042】
回転駆動用モータ12は還元中は常に駆動することが望ましい。回転速度については固定でもよいし、可変としてもよい。還元が進んで陰極2の内周面に金属が堆積して陽極3との距離が最初の設計値より短くなり、その影響が無視できない水準に達した場合には回転速度を低下させることもできる。
【0043】
陰極2において還元された金属の回収方法は特に限定は無く、陰極2の内周面に付着したままの金属をかき出してもよいし、回転速度を低下もしくは停止させて陰極2の底、あるいは反応容器7の底に自然沈降した金属を回収する形態でもよい。
【0044】
次に、上述した好適に上述の電解還元装置1によって行われる、本実施例の金属酸化物5を電解還元する方法について説明する。
【0045】
まず、還元剤供給塩として酸化リチウムを1wt%以上添加・溶解した塩浴4のLiClを反応容器7に入れ、温度調節機構9によって塩浴4を650℃に調整する。塩浴4に添加された還元剤供給塩の酸化リチウムが塩浴4に溶解して還元剤供給イオンであるリチウムイオンが生じる。また、陽極3および陰極2に直流電源6を接続しておく。
【0046】
溶解後に、回転駆動用モータ12によって内周面が電極となる円筒状の陰極2を軸方向を中心に回転させる。また、バルブ10を開き金属酸化物貯槽11から酸化物供給管8を通して金属酸化物5としてUOを塩浴4に投入する。この際、金属酸化物貯槽11内の金属酸化物5を全量速やかに塩浴4内に供給するのではなく、バルブ10の開口面積を調整するなどの方法により連続的に供給することが望ましい。
【0047】
塩浴4に投入されたUOは、遠心力により陰極2の表面に到達し、陰極2の表面上に押し付けられる。また、陽極3と陰極2との間に直流電源6によって3.1ボルトの電圧を印加する。電圧の印加により、UOが金属ウランに還元される。または、酸化リチウムから溶解したリチウムイオンが還元剤である金属リチウムに還元される。この還元剤である金属リチウムが陰極2の表面上でUOと接触し、UOを金属Uに還元する。
【0048】
陽極3および陰極2への電圧の印加の時期は、金属酸化物5が陰極2の表面に到達する前でも後でも構わず、特に限定されない。
【0049】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0050】
上述した本発明の実施例1の電解還元装置1は、内周面が電極となる円筒状の陰極2と、陽極3と、塩浴4と、塩浴4を収容する反応容器7と、陰極2および陽極3の間に電流を通電する直流電源6と、陰極2の軸方向を鉛直方向にした状態で、軸方向を中心に陰極2を回転させる回転駆動用モータ12と、を備え、還元対象である金属酸化物5を遠心力により塩浴4内の陰極2の内周面に押し付けて金属酸化物5と陰極2が接し通電することにより、金属酸化物5を還元するものである。
【0051】
これによって、遠心力により金属酸化物5を陰極2の表面に押し付けることで陰極2表面上に保持されるため、従来に比べて微小化した金属酸化物5を使用することができるようになる。このため、従来のようなペレット状の金属酸化物を使用する場合よりも還元速度を向上させることができ、ペレット状の金属酸化物と同等量を処理するのに要する時間を従来に比べて短縮することができる。従って、原子力発電所の酸化物燃料や混合酸化物燃料、鉱物の金属への還元に適した電解還元装置や電解還元方法を提供することができる。
【0052】
また、金属酸化物5を電解還元装置1の上部側から塩浴4内に供給する酸化物供給管8を更に備えたため、連続して金属酸化物5を安定して塩浴4内に供給することができ、還元の効率化を図ることができる。
【0053】
更に、塩浴4は、アルカリ金属のハロゲン化物、及びアルカリ土類金属のハロゲン化物から選択される少なくとも一種類を含み、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びシリコンの酸化物から選択される少なくとも一種を含む塩からなることで、還元速度の更なる向上を図ることができる。
【0054】
また、塩浴4に添加される還元剤供給塩を更に備え、還元剤供給塩は、Li、K、Ca、Mgのいずれか1つ以上を含む塩からなることにより、従来の塩化リチウムのようなハロゲン塩を使用しないため、ハロゲンガスの発生は無く、これに起因するハロゲンガスによる容器や電極材料の腐食が生じることも抑制することができる。
【0055】
更に、金属酸化物5を塩浴4内に連続的に供給することで、安定した還元を実現し還元速度の更なる短縮を図ることができる。
【0056】
<実施例2>
本発明の実施例2の電解還元装置および電解還元方法について図5および図6を用いて説明する。図5は本実施例2に係る電解還元装置の概略図、図6図5の領域Aの部分拡大図である。
【0057】
図5に示す本実施例の電解還元装置1Aは、図2に示した実施例1の電解還元装置1の構成と概ね同等であるが、酸化物供給管8Aを鉛直方向、あるいは水平方向のうち少なくともいずれか1方向に駆動させる駆動機構13を更に有する点が異なる。これにより、図6に示すように、酸化物供給管8Aが垂直方向や陰極2の表面方向へ移動し、陰極2の表面への距離を変更することができる。
【0058】
駆動機構13は、酸化物供給管8Aを保持する部材と、その部材を鉛直方向、あるいは水平方向のうち少なくともいずれか1方向に駆動させるモータ等からなり、好適には鉛直方向および水平方向のいずれの方向にも駆動可能とすることが望ましい。
【0059】
酸化物供給管8Aの鉛直方向、あるいは水平方向の移動速度、すなわち駆動機構13の駆動制御量は特に限定されないが、陰極2の内周側表面の同じ個所に金属酸化物5が堆積することを避けるために、酸化物供給管8Aの動作速度と陰極2の回転速度とがシンクロしない設定とすることが望まれる。
【0060】
その他の構成・動作は前述した実施例1の電解還元装置および電解還元方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0061】
本発明の実施例2の電解還元装置および電解還元方法においても、前述した実施例1の電解還元装置および電解還元方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0062】
また、鉛直方向、あるいは水平方向のうち少なくともいずれか1方向に酸化物供給管8Aを駆動させる駆動機構13を更に有することにより、金属酸化物5が陰極2に到達する時の重力方向の位置を簡易に変動させることができ、陰極2の表面積を有効に使用した還元が可能になり、1回あたりの還元量を向上させることができる。
【0063】
<実施例3>
本発明の実施例3の電解還元装置および電解還元方法について図7および図8を用いて説明する。図7は本実施例3に係る電解還元装置の概略図、図8図7の領域Bの部分拡大図である。
【0064】
図7に示す本実施例の電解還元装置1Bは、図2に示した実施例1の電解還元装置1の構成と概ね同等であるが、図8に示すように、酸化物供給管8Bは、塩浴4内に金属酸化物5を供給する供給口を複数有している点が異なる。酸化物供給管8Bの複数の開口の面積比や開口位置に特に限定はない。
【0065】
その他の構成・動作は前述した実施例1の電解還元装置および電解還元方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0066】
本発明の実施例3の電解還元装置および電解還元方法においても、前述した実施例1の電解還元装置および電解還元方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0067】
また、酸化物供給管8Bは、塩浴4内に金属酸化物5を供給する供給口を複数有することにより、金属酸化物5の投入位置を重力方向に複数設定することができ、金属酸化物5が陰極2の表面に到達する高さ方向の位置を分散させることができる。このため、実施例2に示した電解還元装置の酸化物供給管8Aが備えた駆動機構を不要としつつ、陰極2の表面積を効率良く使用した還元が可能になり、簡便な装置構成で実施例2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,1B…電解還元装置
2…陰極
3…陽極
4…塩浴
5…金属酸化物
6…直流電源
7…反応容器
8,8A,8B…酸化物供給管
9…温度調節機構(ヒーター)
10…バルブ
11…金属酸化物貯槽
12…回転駆動用モーター(回転機器)
13…駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8