(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172989
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】発熱装置
(51)【国際特許分類】
F24V 30/00 20180101AFI20221110BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20221110BHJP
F28F 23/00 20060101ALI20221110BHJP
F25B 17/12 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F24V30/00 302
F28D20/00 H
F28F23/00 B
F25B17/12 N
F25B17/12 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079381
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】512261078
【氏名又は名称】株式会社クリーンプラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔一
(72)【発明者】
【氏名】大畑 豊治
(72)【発明者】
【氏名】岩村 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 英樹
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN05
3L093PP16
3L093RR01
(57)【要約】
【課題】熱を効率良く発生し、発生した熱を熱媒体によって効率良く回収するとともに、小型・コンパクト化を図ることができる発熱装置を提供する。
【解決手段】発熱装置は、水素の吸蔵と放出によって熱を発生する発熱体5と、水素を含む水素系ガスが導入され、発熱体5に水素を供給する第1流路6と、発熱体5を透過した水素を含む透過ガスが流通する第2流路7と、第2流路7を流れる透過ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流通する第3流路8とを有し、第3流路8の両側に、第3流路8から順に第2流路7、発熱体5、第1流路6を順次対称的に積層して構成される積層構造体4と、発熱体5を加熱する加熱手段としての電気ヒータ9と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の吸蔵と放出によって熱を発生する発熱体と、前記水素を含む水素系ガスが導入され、前記発熱体に前記水素を供給する第1流路と、前記発熱体を透過した前記水素を含む透過ガスが流通する第2流路と、前記第2流路を流れる前記透過ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流通する第3流路とを有し、前記第3流路の両側に、前記第3流路から順に前記第2流路、前記発熱体、前記第1流路を順次対称的に積層して構成される積層構造体と、
前記発熱体を加熱する加熱手段と、
を備える発熱装置。
【請求項2】
複数の前記積層構造体を多段に重ねて発熱モジュールを構成した請求項1に記載の発熱装置。
【請求項3】
前記発熱モジュールの隣接する2つの前記積層構造体の相対面する2つの前記第1流路の間に前記加熱手段を配置した請求項2に記載の発熱装置。
【請求項4】
前記発熱モジュールの隣接する2つの前記積層構造体の相対面する2つの前記第1流路の間に前記加熱手段と前記第3流路を配置した請求項2または3に記載の発熱装置。
【請求項5】
前記加熱手段を前記第3流路の両側に配置した請求項4に記載の発熱装置。
【請求項6】
前記発熱モジュールは、前記第1流路に前記水素系ガスを導入する方向と、前記第2流路から前記透過ガスが流出する方向と、前記第3流路に前記熱媒体を導入する方向と、前記第3流路から前記熱媒体が流出する方向とが互いに異なる請求項2~5のいずれか1項に記載の発熱装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、平板状のベースと、前記ベースに設けられた加熱ワイヤーまたはリボン状の面ヒータとにより構成された電気ヒータである請求項1~4のいずれか1項に記載の発熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱と熱交換とを同時に行う発熱・熱交換一体式の発熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵金属または水素吸蔵合金は、一定の反応条件の下で多量の水素を繰り返して吸蔵及び放出する特性を有し、この水素の吸蔵と放出時にかなりの反応熱を伴うことが知られている。この反応熱を利用したヒートポンプシステム、熱輸送システム、冷熱(冷凍)システムなどの熱利用システムや水素貯蔵システムが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、本出願人などは、水素吸蔵金属などを用いた発熱体を備える発熱装置において、発熱体を、支持体とこの支持体に支持された多層膜とで構成することによって、当該発熱体への水素の吸蔵時と当該発熱体からの水素の放出時に熱が発生する知見を得た。そして、本出願人などは、このような知見に基づいて発熱装置及び熱利用システムを先に提案した(特許文献3参照)。
【0004】
具体的には、発熱体の支持体は、多孔質体、水素透過膜、及びプロトン誘電体のうち少なくともいずれかで構成されている。発熱体の多層膜は、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金で構成された厚さ1000nm未満の第1層と、第1層とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、又はセラミックスで構成された厚さ1000nm未満の第2層とを交互に積層することによって構成されている。ここで、特許文献3において提案された発熱装置の一例を
図19に示す。
【0005】
図19は特許文献3において提案された発熱装置201の基本構成を示すブロック図である。発熱装置201は、制御部202と、密閉容器203と、発熱体205と、加熱手段である電気ヒータ209と、温度調整部Tと、水素循環ラインL0とを備えている。
【0006】
発熱体205は、密閉容器203内に収容されている。密閉容器203は、断熱材224によって断熱された格納容器225内に収容されている。電気ヒータ209は、密閉容器203の周囲に巻装されている。電気ヒータ209の出力は、温度調整部Tによって制御される。温度調整部Tは、発熱体205の温度を検出する温度センサ211と、この温度センサ211によって検出された発熱体205の温度に基づいて電源210の出力を制御する制御部202とによって構成されている。
【0007】
密閉容器203内は、発熱体205によって第1室R1と第2室R2とに区画されている。第1室R1には、水素循環ラインL0の導入配管213が接続されている。第2室R2には、水素循環ラインL0の回収配管219が接続されている、水素循環ラインL0には、循環ポンプ212と、バッファタンク215と、圧力調整弁216と、フィルタ217とが接続されている。循環ポンプ212と圧力調整弁216は、制御部202に電気的に接続されて当該制御部202によってその動作が制御される。
【0008】
格納容器225には、発熱装置201によって発生する熱によって加熱された熱媒体を不図示の熱利用装置(熱負荷)へと供給するための供給配管226と、熱利用装置に熱を供給した後の熱媒体を回収するための回収配管227とが接続されている。
【0009】
以上のように構成された発熱装置201において、制御部202によって出力が制御される電気ヒータ209によって発熱体205を最適温度に加熱しつつ、循環ポンプ212を駆動して水素系ガスを水素循環ラインL0の導入配管213から密閉容器203の第1室R1へと導入すると、この水素系ガスに含まれる水素が発熱体205を透過して第2室R2へと移動する。このように水素が発熱体205を透過(吸蔵と放出)することによって、発熱体205は、電気ヒータ209で発熱体205を加熱する熱量よりも大きな熱量の熱(過剰熱)を発生する。
【0010】
上述のように発熱体205において過剰熱が発生すると、格納容器225内に供給される熱媒体が過剰熱によって加熱される。加熱された熱媒体が供給配管226を経て不図示の熱利用装置に供給されることによって、熱利用装置が過剰熱を熱源として所要の仕事(例えば、発電)を行う。そして、熱利用装置に熱を与えることによって温度が低下した熱媒体は、回収配管219を経て格納容器225へと戻されて回収される。
【0011】
上記動作が連続的に繰り返されて、発熱装置201において発生した熱が、熱媒体を介して熱利用装置へと供給され、発電などの所要の仕事に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭56-100276号公報
【特許文献2】特開昭58-022854号公報
【特許文献3】特許第6749035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献3において提案された
図19に示す発熱装置201においては、熱を発生する発熱体205が高密度で集積した状態で組み込まれていないため、発熱体205が効率良く熱を発生することができず、改善の余地が残されている。
【0014】
また、発熱体205が発生した熱は、密閉容器203内の水素系ガス及び密閉容器203を介して、格納容器225内の熱媒体に伝達され、当該熱媒体を加熱する。このため、発熱体205から熱媒体への熱の伝達経路が長く、発熱体205が発生した熱を熱媒体によって効率良く回収することができず、この点においても改善の余地が残されている。
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、熱を効率良く発生し、発生した熱を熱媒体によって効率良く回収するとともに、小型・コンパクト化を図ることができる発熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る発熱装置は、水素の吸蔵と放出によって熱を発生する発熱体と、前記水素を含む水素系ガスが導入され、前記発熱体に前記水素を供給する第1流路と、前記発熱体を透過した前記水素を含む透過ガスが流通する第2流路と、前記第2流路を流れる前記透過ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流通する第3流路とを有し、前記第3流路の両側に、前記第3流路から順に前記第2流路、前記発熱体、前記第1流路を順次対称的に積層して構成される積層構造体と、前記発熱体を加熱する加熱手段と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発熱装置は、熱媒体が流通する第3流路の両側に、当該第3流路から順に、発熱体を透過した水素を含む透過ガスが流通する第2流路、発熱体、発熱体に水素を供給する水素系ガスが導入される第1流路を順次対称的に積層することにより構成された積層構造体を備えている。積層構造体は、発熱体、第1流路、第2流路、及び第3流路が高密度に積層されている。したがって、本発明によれば、熱を効率良く発生し、発生した熱を熱媒体によって効率良く回収するとともに、小型・コンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る発熱装置の基本構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る発熱モジュールの分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る積層構造体の分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る電気ヒータの平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る発熱体の構成を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る発熱体における過剰熱の発生のメカニズムを説明する模式図である。
【
図9】第1実施形態に係る熱利用システムの構成を示すブロック図である。
【
図10】第2実施形態に係る発熱装置の基本構成を示すブロック図である。
【
図11】第2実施形態に係る積層構造体の分解斜視図である。
【
図12】第3実施形態に係る発熱装置の基本構成を示すブロック図である。
【
図13】第3実施形態に係る積層構造体の分解斜視図である。
【
図14】第4実施形態に係る発熱装置の基本構成を示すブロック図である。
【
図15】第4実施形態に係る積層構造体の分解斜視図である。
【
図16】発熱モジュールの変形例1を示す模式的平面図である。
【
図17】発熱モジュールの変形例2を示す模式的平面図である。
【
図18】発熱モジュールの変形例3を示す模式的平面図である。
【
図19】特許文献3において提案された発熱装置の基本構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
1.第1実施形態
[発熱装置]
図1は第1実施形態に係る発熱装置1の基本構成を示すブロック図である。発熱装置1は、発熱モジュールM1と、温度調整部Tと、水素循環ラインL1と、制御部2と、密閉容器3とを備えている。
図1において、黒丸の接続点は、部材同士の接続を示している。
【0021】
発熱モジュールM1は、密閉容器3の内部に収容されている。発熱モジュールM1は、2つの積層構造体4と、1つの電気ヒータ9とを備えている。積層構造体4は、水素の吸蔵と放出によって熱を発生する発熱体5と、水素を含む水素系ガスが導入され、発熱体5に水素を供給する第1流路6と、発熱体5を透過した水素(以下、透過水素と称する)を含む透過ガスが流通する第2流路7と、第2流路7を流れる透過ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流通する第3流路8とを有し、第3流路8の両側に、当該第3流路8から順に第2流路7、発熱体5、第1流路6を順次対称的に積層して構成されている。電気ヒータ9は、発熱体5を加熱する加熱手段の一例である。ここで、水素系ガスには水素の同位体が含まれる。水素系ガスとしては、軽水素ガスと重水素ガスとの少なくともいずれかが使用される。軽水素ガスは、天然に存在する軽水素と重水素との混合物、すなわち、軽水素の割合が99.985%、重水素の割合が0.015%である混合物を含む。
図1では、発熱体5に水素を供給する水素系ガスを「水素」、発熱体5を透過した透過水素を含む透過ガスを「透過水素」と記載している。なお、発熱モジュールM1の製作においては、各部材を拡散接合することが望ましい。発熱モジュールM1の詳細な構成は後述する。
【0022】
温度調整部Tは、発熱体5の温度を調整して当該発熱体5を発熱可能な温度(例えば、50℃~1500℃)に維持する。温度調整部Tは、電気ヒータ9と、電気ヒータ9に電力を供給する電源10と、電気ヒータ9の温度を検出する熱電対などの温度センサ11と、温度センサ11によって検出された温度に基づいて電源10の出力を制御する制御部2とによって構成されている。
【0023】
水素循環ラインL1は、発熱モジュールM1の積層構造体4に設けられた第1流路6に水素を含む水素系ガスを導入するとともに、第1流路6から発熱体5を透過することによって当該発熱体5の発熱に供されて第2流路7へと移動した透過水素を含む透過ガスを回収して第1流路6へと戻す動作を繰り返すものである。
【0024】
水素循環ラインL1は、発熱モジュールM1の積層構造体4に設けられた第1流路6に水素系ガスを導入する導入配管12と、発熱モジュールM1の積層構造体4に設けられた第2流路7から透過ガスを回収する回収配管13と、導入配管12と回収配管13とに接続された循環ポンプ14とを有している。発熱装置1では、発熱モジュールM1と水素循環ラインL1とにより、ガスが循環する閉ループが構成されている。
【0025】
導入配管12は、循環ポンプ14の吐出口と接続している。導入配管12は、発熱モジュールM1の各積層構造体4に設けられた各第1流路6にそれぞれ接続された分岐管15を有している。導入配管12の水素系ガスは、分岐管15を介して第1流路6へ導入される。
【0026】
回収配管13は、循環ポンプ14の吸入口と接続している。回収配管13は、発熱モジュールM1の各積層構造体4に設けられた各第2流路7にそれぞれ接続された分岐管16を有している。第2流路7の透過ガスは、発熱体5により加熱されて高温となり、各分岐管16を介して回収配管13へ回収され、発熱体5に水素を供給するための水素系ガスとして再利用される。
【0027】
循環ポンプ14は、閉ループを構成する発熱モジュールM1と水素循環ラインL1との間で水素系ガスを循環させる。循環ポンプ14としては、例えば、メタルベローズポンプが使用される。循環ポンプ14は、制御部2と電気的に接続しており、制御部2からの制御信号によって動作が制御される。
【0028】
導入配管12の途中には、バッファタンク17、圧力調整弁18、及びフィルタ19が設けられている。バッファタンク17は、水素系ガスを貯留して当該水素系ガスの流量の変動を吸収するためのものである。圧力調整弁18は、制御部2と電気的に接続しており、制御部2からの制御信号によって開度が調整されることによって、バッファタンク17から供給される水素系ガスの圧力を調整する機能を果たす。
【0029】
フィルタ19は、水素系ガスに含まれる不純物を除去するためのものである。ここで、発熱体5を透過する水素の量(水素透過量)は、発熱体5の温度、発熱体5の両面側における圧力差、発熱体5の表面状態に依存するが、水素に不純物が含まれている場合には、不純物が発熱体5の表面に付着して当該発熱体5の表面状態を悪化させることがある。発熱体5の表面状態が悪化した場合には、当該発熱体5の表面における水素分子の吸着及び解離が阻害されて水素透過量が減少するという不具合が発生する。発熱体5の表面における水素分子の吸着及び解離を阻害するものとしては、例えば、水(水蒸気を含む)、炭化水素(メタン、エタン、メタノール、エタノールなど)、C、S、Siなどが考えられる。このため、フィルタ19は、不純物として、水(水蒸気を含む)、炭化水素、C、S、及び、Siを少なくとも除去する。水素系ガスに含まれる不純物をフィルタ19が除去することによって、発熱体5における水素透過量の減少が抑制される。
【0030】
制御部2は、発熱装置1の各部と電気的に接続しており、各部の動作を制御する。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部などを備えている。CPUにおいては、ROMやRAMに格納されているプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理が実行される。
【0031】
密閉容器3は、例えばステンレス鋼(SUS)の中空容器として構成されている。密閉容器3の材料は、耐熱性及び耐圧性を有する材料、例えば、炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、耐熱性非鉄合金鋼などが好ましい。また、密閉容器3の材料は、後述する発熱体5が発生する輻射熱を反射する材料、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)などでも良い。密閉容器3の形状は、本実施形態では四角筒状であるが、これに限定されず、四角筒状以外の角筒状、円筒状、楕円筒状などでも良い。
【0032】
(発熱モジュール)
発熱モジュールM1の構成を
図2~
図5に基づいて以下に説明する。
図2は発熱モジュールM1の分解斜視図、
図3は積層構造体4の分解斜視図、
図4は電気ヒータ9の平面図である。
【0033】
図2に示すように、発熱モジュールM1は、2つの積層構造体4を上下方向(
図2のZ軸方向)に2段に重ねて構成されている。上側の積層構造体4の最下部の第1流路6と下側の積層構造体4の最上部の第1流路6とは相対面している。発熱モジュールM1は、
図2に示す例では四角柱状に形成されている。発熱装置1、及び発熱装置1を構成する各部材において、Z軸方向における上側の面を平面、Z軸方向における下側の面を底面、Y軸方向における左側の面を正面、Y軸方向における右側の面を背面、X軸方向における右側の面を右側面、X軸方向における左側の面を左側面とする。
【0034】
図3に示すように、第1流路6は、平板状に形成された平板部6aと、平板部6aに設けられた壁部6bとにより構成されている。平板部6a及び壁部6bは、例えばステンレス鋼で形成されている。平板部6aは、平面視において四角形状に形成されている。壁部6bは、平板部6aの4辺の縁部分のうち、3辺の縁部分に設けられている。
図3では、壁部6bは、平板部6aの4辺の縁部分のうち、X軸方向における左右の縁部分、及びY軸方向における右側の縁部分に設けられている。下側の第1流路6を構成する壁部6bはZ軸方向の上側に向けて突出し、上側の第1流路6を構成する壁部6bはZ軸方向の下側に向けて突出している。第1流路6の正面(Y軸方向における左側の面)、すなわち平板部6aの4辺の縁部分のうち壁部6bが設けられていない1辺の縁部分には、水素導入口6cが設けられている。水素導入口6cは、水素循環ラインL1の分岐管15と接続する(
図1参照)。第1流路6の背面(Y軸方向における右側の面)は壁部6bで構成されている。
【0035】
第2流路7は、平板状に形成された平板部7aと、平板部7aに設けられた壁部7bとにより構成されている。平板部7a及び壁部7bは、例えばステンレス鋼で形成されている。平板部7aは、平面視において四角形状に形成されている。壁部7bは、平板部7aの4辺の縁部分のうち、3辺の縁部分に設けられている。
図3では、壁部7bは、平板部7aの4辺の縁部分のうち、X軸方向における左右の縁部分、及びY軸方向における左側の縁部分に設けられている。下側の第2流路7を構成する壁部7bはZ軸方向の下側に向けて突出し、上側の第2流路7を構成する壁部7bはZ軸方向の上側に向けて突出している。第2流路7の背面(Y軸方向における右側の面)、すなわち平板部7aの4辺の縁部分のうち壁部7bが設けられていない1辺の縁部分には、水素回収口7cが設けられている。
図3では、下側の第2流路7の背面に設けられている水素回収口7cが、紙面奥側に隠れている。水素回収口7cは、水素循環ラインL1の分岐管16と接続する(
図1参照)。
【0036】
第3流路8は、平板状に形成され、互いに隙間をあけて配置された2つの平板部8aと、2つの平板部8aの間に設けられ、互いに隙間をあけて配置された2つの壁部8bとにより構成されている。平板部8a及び壁部8bは、例えばステンレス鋼で形成されている。平板部8aは、平面視において四角形状に形成されており、Z軸方向の上下に配置されている。壁部8bは、平板部8aの4辺の縁部分のうち、互いに対向する2辺の縁部分に設けられている。
図3では、壁部8bは、平板部8aの4辺の縁部分のうち、Y軸方向における左右の縁部分に設けられている。第3流路8の右側面(X軸方向における右側の面)には熱媒体導入口8cが設けられ、第3流路8の左側面(X軸方向における左側の面)には熱媒体回収口8dが設けられている。熱媒体導入口8cは、後述する熱媒体循環ラインL2の分岐管31e(
図1参照)と接続する。熱媒体回収口8dは、後述する熱媒体循環ラインL2の分岐管31f(
図1参照)と接続する。第3流路8は、熱媒体循環ラインL2の一部を構成している。
【0037】
電気ヒータ9は、上下に重ねられた2つの積層構造体4の相対面する2つの第1流路6の間、つまり、上側の積層構造体4の最下部の第1流路6と下側の積層構造体4の最上部の第1流路6との間に設けられている(
図2参照)。電気ヒータ9は、第1流路6を介して発熱体5を発熱可能な温度(例えば、50℃~1500℃)に加熱する。本実施形態では、発熱モジュールM1の上下方向の中心部分に電気ヒータ9が設けられているため、発熱モジュールM1全体の温度が効率的に上昇する。
【0038】
図4に示すように、電気ヒータ9は、平板状のベース9aと、ベース9aに設けられた加熱ワイヤー9bとにより構成されている。ベース9aは、耐熱温度の高い、モリブデン、ニッケルなどの金属や高耐熱合金、または高耐熱かつ水素と反応性のないアルミナ、炭化ケイ素などのセラミックスによって構成された矩形平板状に形成されている。加熱ワイヤー9bは、ベース9aの両面に、繰り返し屈曲させた状態で取り付けられている。ベース9aの素材が金属など導電性の場合、加熱ワイヤー9bは、絶縁性セラミックスを介してベース9aに取り付けられる。加熱ワイヤー9bは、電気抵抗の高い材料、例えばモリブデンやタングステンなどの金属によって構成されている。加熱ワイヤー9bを繰り返し屈曲させた状態でベース9aに取り付けることによって、電気ヒータ9の発熱面積が増えて発熱量が高められる。なお、電気ヒータ9は、本実施形態ではベース9aの両面に加熱ワイヤー9bを取り付けて構成したが、加熱ワイヤー9bをベース9aの片面のみに取り付けて構成しても良い。
図4には図示していないが、ベース9aには温度センサ11(
図1参照)が設けられており、加熱ワイヤー9bには電源10(
図1参照)が接続されている。なお、本実施の形態では、電気ヒータ9を、加熱ワイヤー9bに代えて薄いリボン状の面ヒータをベース9aに配置することによって構成してもよい。
【0039】
<発熱体の構成>
発熱体5の構成を
図5に基づいて説明する。
図5は発熱体5の構成を示す断面図である。
【0040】
図5に示すように、発熱体5は、支持体5Aと多層膜5Bとを有している。支持体5Aは、水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはプロトン誘電体によって構成されている。水素吸蔵金属としては、例えば、Ni、Pd、V、Nb、Ta、Tiなどが用いられる。水素吸蔵合金としては、例えば、LaNi
5、CaCu
5、MgZn
2、ZrNi
2、ZrCr
2、TiFe、TiCo、Mg
2Ni、Mg
2Cuなどが用いられる。プロトン誘電体としては、例えば、BaCeO
3系(例えば、Ba(Ce
0.95Y
0.05)O
3-6)、SrCeO
3系(例えば、Sr(Ce
0.95Y
0.05)O
3-6)、CaZrO
3系(例えば、Ca(Zr
0.95Y
0.05)O
3ーα)、SrZrO
3系(例えば、Sr(Zr
0.9Y
0.1)O
3ーα)、βAl
2O
3、βGa
2O
3などが用いられる。
【0041】
支持体5Aは、多孔質体または水素透過膜によって構成しても良い。多孔質体は、水素系ガスの通過を許容する大きさの多数の孔を有する。多孔質体は、例えば、金属、非金属、セラミックスなどの材料で構成されている。多孔質体は、水素と多層膜5Bとの発熱反応を阻害しない材料で構成されることが好ましい。水素透過膜は、水素を透過させる材料で構成されている。水素透過膜の材料としては、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金が好ましい。水素透過膜にはメッシュ状のシートを有するものも含まれる。
【0042】
多層膜5Bは、支持体5Aに形成されている。多層膜5Bは、本実施形態では支持体5Aの両面(
図5の左端面及び右端面)に形成されている。
図5では、支持体5Aの一方の面(
図5の左端面)に形成されている多層膜5Bのみを図示し、支持体5Aの他方の面(
図5の右端面)に形成されている多層膜5Bの図示を省略している。なお、多層膜5Bは、支持体5Aの両面に形成する場合に限られず、支持体5Aの一方の面のみ、または支持体5Aの他方の面のみに形成しても良い。
【0043】
多層膜5Bは、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金によって構成された第1層51と、第1層51とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスによって構成された第2層52とを有している。第1層51と第2層52との間には異種物質界面53が形成されている。
【0044】
図5に示す例では、多層膜5Bは、各5つの第1層51と第2層52とがこの順に交互に積層された計10層の膜構造として、支持体5Aに形成されている。第1層51と第2層52の数は任意である。多層膜5Bは、複数の第2層52と第1層51とがこの順に交互に積層された多層の膜構造として、支持体5Aに形成しても良い。多層膜5Bとしては、第1層51と第2層52をそれぞれ少なくとも1層以上有し、第1層51と第2層52との間に形成される異種物質界面53を1つ以上有していれば良い。
【0045】
第1層51は、例えば、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Co、及びこれらの合金のうちのいずれかによって構成されている。第1層51を構成する合金としては、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coのうちの2種以上から成るものが好ましい。第1層51を構成する合金としては、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加したものを用いても良い。
【0046】
第2層52は、例えば、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Co、及びこれらの合金、或いはSiCのうちのいずれかによって構成されている。第2層52を構成する合金としては、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coのうちの2種以上から成るものが好ましい。第2層52を構成する合金としては、Ni、Pd、Cu、Mn、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加したものを用いても良い。
【0047】
第1層51と第2層52との組み合わせとしては、元素の種類を「第1層-第2層」として表示すると、Pd-Ni、Ni-Cu、Ni-Cr、Ni-Fe、Ni-Mg、Ni-Coの組み合わせが好ましい。なお、第2層52をセラミックで構成する場合には、Ni-SiCの組み合わせが好ましい。
【0048】
発熱体5の多層膜5Bを構成する第1層51と第2層52の厚さは、各々1000nm未満であることが好ましい。第1層51と第2層52の各厚さが1000nm未満であると、第1層51と第2層52は、バルク特性を示すことのないナノ構造を維持することができる。因みに、第1層51と第2層52の各厚さが1000nm以上である場合には、水素が多層膜5Bを透過しにくくなる。第1層51と第2層52の各厚さは、500nm未満であることが好ましい。第1層51と第2層52の各厚さが500nm未満であると、第1層51と第2層52は、バルク特性を全く示さないナノ構造を維持することができる。
【0049】
発熱体5は、
図5に示すように、多層膜5B内を水素がホッピングしながら透過するように構成されている。すなわち、第1層51と第2層52との間に形成された異種物質界面53は、水素を透過させる。
図5では、多層膜5B内を水素がホッピングしながら透過する様子を、点線の矢印で示している。
【0050】
発熱体5を水素が透過する際の発熱(過剰熱の発生)のメカニズムを
図6に基づいて説明する。
【0051】
図6は発熱体5における過剰熱の発生のメカニズムを説明する模式図である。
図6は、発熱体5の多層膜5Bの第1層51及び第2層52が面心立法構造を有する水素吸蔵金属によって構成されており、第1層51の金属格子中の水素が、異種物質界面53を透過して、第2層52の金属格子中に移動する様子を示している。発熱体5に水素が供給されると、支持体5Aと多層膜5Bが水素を吸蔵する。ここで、発熱体5は、水素の供給が停止しても、支持体5Aと多層膜5Bによって水素を吸蔵した状態を維持する。
【0052】
そして、電気ヒータ9による発熱体5の加熱が開始されると、支持体5Aと多層膜5Bに吸蔵されている水素が放出される。ここで、水素は軽く、ある物質Aと物質Bの水素が占めるサイト(オクタヘドラルサイトやテトラヘドラルサイト)を水素がホッピングしながら量子拡散することが知られている。発熱体5は、異種物質界面53を水素が量子拡散によって透過し、或いは、異種物質界面53を水素が拡散によって透過することで、電気ヒータ9による加熱量以上の熱量の熱(過剰熱)を発生する。
【0053】
本実施形態では、発熱体5の一方の面(表面)が第1流路6と対面し、発熱体5の他方の面(裏面)が第2流路7と対面するように、第1流路6、発熱体5、及び第2流路7がこの順に積層されている。このため、第1流路6が水素系ガスの導入により昇圧され、第2流路7が透過ガスの回収により減圧される。これにより、第1流路6の水素の圧力(「水素分圧」と称する)が第2流路7の水素分圧よりも高くなり、発熱体5の両側に水素の圧力差(「水素分圧の差」と称する)が生じる。発熱体5の両側に水素分圧の差が生じると、第1流路6に導入された水素系ガスに含まれる水素分子が発熱体5の一方の面(表面)に吸着し、この水素分子が2つの水素原子に解離し、解離した水素原子が発熱体5の内部へ浸入する。すなわち、発熱体5に水素が吸蔵される。発熱体5の内部に侵入した水素原子は、異種物質界面53を量子拡散によって透過し、或いは、異種物質界面53を拡散によって透過する。発熱体5の低圧側に配された他方の面(裏面)では、発熱体5を透過した水素原子が再結合し、水素分子となって第2流路7へ放出される。すなわち、発熱体5から水素が放出される。このように、発熱体5は、高圧側の第1流路6から低圧側の第2流路7へ水素を透過させることにより、過剰熱を発生する。第1流路6が第2流路7よりも高圧の状態を維持することにより、発熱体5の表面での水素の吸蔵と、発熱体5の裏面での水素の放出とが同時に行われる状態を維持することができる。なお、同時とは、完全に同時であることに限られず、実質的に同時とみなせる程度に僅かな時間内を意味する。水素の吸蔵と放出とが同時に行われることにより、水素が発熱体5を連続的に透過するので、発熱体5から効率的に過剰熱を発生させることができる。
【0054】
<発熱体の製造方法>
ここで、発熱体5の製造方法の一例について説明する。
【0055】
発熱体5は、板状の支持体5Aを準備し、蒸着装置を用いて、第1層51や第2層52となる水素吸蔵金属または水素吸蔵合金を気相状態とし、この気相状態の水素吸蔵金属または水素吸蔵合金を支持体5Aの表面に付着させ、第1層51と第2層52を交互に成膜することによって製造される。この場合、第1層51と第2層52を真空状態で連続的に成膜することが好ましい。これにより、第1層51と第2層52との間に、自然酸化膜が形成されることなく、異種物質界面53のみが形成される。支持体5Aとしては、例えばNi板が使用される。
【0056】
蒸着装置としては、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金を物理的な方法で支持体5Aの表面に蒸着させる物理蒸着装置や水素吸蔵金属または水素吸蔵合金を化学的な方法で支持体5Aの表面に蒸着させる化学蒸着装置などが用いられる。物理蒸着装置としては、スパッタリング装置や真空蒸着装置などが使用される。化学蒸着装置としては、ALD(Atomic Layer Deposition)装置などが使用される。また、溶射法、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、電気めっき法を用いて、支持体5Aの表面に第1層51と第2層52を交互に成膜しても良い。
【0057】
本実施形態に係る発熱体5は、
図5に示すように、支持体5Aに対し第1層51と第2層52を交互に積層することによって多層膜5Bを構成しているが、発熱体の構成はこれに限られない。発熱体の変形例1及び変形例2を
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0058】
<発熱体の変形例1>
図7に示すように、発熱体60は、支持体60Aと多層膜60Bとを有する。支持体60Aの構成は支持体5Aと同じであるため、支持体60Aの説明は省略する。
【0059】
多層膜60Bは、支持体60Aに形成されている。多層膜60Bは、第1層61と第2層62に加えて、第1層61及び第2層62とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金、またはセラミックスによって構成された第3層63をさらに有している。第1層61の構成は第1層51と同じであり、第2層62の構成は第2層52と同じであるため、第1層61及び第2層62の説明は省略する。第1層61と第2層62との間には異種物質界面64が形成されている。第1層61と第3層63との間には異種物質界面65が形成されている。異種物質界面64及び異種物質界面65は、異種物質界面53と同様に、水素を透過させる。発熱体60は、異種物質界面64及び異種物質界面65を、水素が量子拡散により透過し、或いは、異種物質界面64及び異種物質界面65を水素が拡散することにより、過剰熱を発生する。
【0060】
多層膜60Bは、第2層62と第3層63との間に第1層61を設けた多層の膜構造として、支持体60Aに形成されている。
図7に示す例では、多層膜60Bは、支持体60Aの一方の面(
図7の上端面)に、第1層61、第2層62、第1層61、第3層63がこの順に交互に積層されている。多層膜60Bは、
図7に示す例とは異なる膜構造、すなわち、支持体60Aの一方の面(
図7の上端面)に、第1層61、第3層63、第1層61、第2層62がこの順に交互に積層された多層の膜構造として形成しても良い。多層膜60Bは、支持体60Aの一方の面(
図7の上端面)に形成される場合に限られず、支持体60Aの他方の面(
図7の下端面)、または支持体60Aの両面(
図7の上端面及び下端面)に形成しても良い。なお、第1層61、第2層62、第3層63の数は任意である。多層膜60Bとしては、第3層63を1つ以上有していれば良い。
【0061】
第3層63は、例えば、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Co、及びこれらの合金、或いはSiC、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成されている。第3層63を構成する合金としては、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coのうちの2種以上から成るものが好ましい。第3層63を構成する合金として、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加したものを用いても良い。
【0062】
特に、第3層63は、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかにより構成されることが好ましい。CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成された第3層63を有する発熱体60は、水素の吸蔵量が増加し、異種物質界面64及び異種物質界面65を透過する水素の量が増加するため、当該発熱体60が発生する過剰熱の高出力化を図ることができる。
【0063】
第3層63の厚さは、1000nm未満であることが好ましい。第3層63の厚さが1000nm未満であると、第3層63は、バルク特性を示すことのないナノ構造を維持することができる。特に、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成される第3層63は、厚さが10nm以下であることが好ましい。第3層63の厚さが10nm以下であると、多層膜60Bは、水素を容易に透過させることができる。
【0064】
CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成される第3層63は、完全な膜状に形成されることなく、アイランド状に形成されても良い。
【0065】
第1層61と第3層63は、真空状態で連続的に成膜されることが好ましい。これにより、第1層61と第3層63との間に、自然酸化膜が形成されることなく、異種物質界面65のみが形成される。
【0066】
第1層61、第2層62、及び第3層63の組み合わせとしては、元素の種類を「第1層-第3層-第2層」として表示すると、Pd-CaO-Ni、Pd-Y2O3-Ni、Pd-TiC-Ni、Pd-LaB6-Ni、Ni-CaO-Cu、Ni-Y2O3-Cu、Ni-TiC-Cu、Ni-LaB6-Cu、Ni-Co-Cu、Ni-CaO-Cr、Ni-Y2O3-Cr、Ni-TiC-Cr、Ni-LaB6-Cr、Ni-CaO-Fe、Ni-Y2O3-Fe、Ni-TiC-Fe、Ni-LaB6-Fe、Ni-Cr-Fe、Ni-CaO-Mg、Ni-Y2O3-Mg、Ni-TiC-Mg、Ni-LaB6-Mg、Ni-CaO-Co、Ni-Y2O3-Co、Ni-TiC-Co、Ni-LaB6-Co、Ni-CaO-SiC、Ni-Y2O3-SiC、Ni-TiC-SiC、Ni-LaB6-SiCのいずれかであることが好ましい。
【0067】
<発熱体の変形例2>
図8に示すように、発熱体70は、支持体70Aと多層膜70Bとを有する。支持体70Aの構成は支持体5Aと同じであるため、支持体70Aの説明は省略する。
【0068】
多層膜70Bは、支持体70Aに形成されている。多層膜70Bは、第1層71、第2層72、及び第3層73に加えて、第1層71、第2層72、及び第3層73とは異なる水素吸蔵金属、水素吸蔵合金またはセラミックスによって構成された第4層74をさらに有している。第1層71の構成は第1層51と同じであり、第2層72の構成は第2層52と同じであり、第3層73の構成は第3層63と同じであるため、第1層71、第2層72、及び第3層73の説明は省略する。第1層71と第2層72との間には異種物質界面75が形成されている。第1層71と第3層73との間には異種物質界面76が形成されている。第1層71と第4層74との間には異種物質界面77が形成されている。異種物質界面75、異種物質界面76、及び異種物質界面77は、異種物質界面53と同様に、水素を透過させる。発熱体70は、異種物質界面75、異種物質界面76、及び異種物質界面77を、水素が量子拡散により透過し、或いは、異種物質界面75、異種物質界面76、及び異種物質界面77を水素が拡散することにより、過剰熱を発生する。
【0069】
多層膜70Bは、第2層72、第3層73、第4層74を任意の順に積層するとともに、第2層72、第3層73、第4層74のそれぞれの間に第1層71を設けた多層の膜構造として、支持体70Aに形成されている。
図8に示す例では、多層膜70Bは、支持体70Aの一方の面(
図8の上端面)に、第1層71、第2層72、第1層71、第3層73、第1層71、第4層74がこの順に交互に積層されている。多層膜70Bは、
図8に示す例とは異なる膜構造、すなわち、支持体70Aの一方の面(
図8の上端面)に、第1層71、第4層74、第1層71、第3層73、第1層71、第2層72がこの順に交互に積層された多層の膜構造として形成しても良い。多層膜70Bは、支持体70Aの一方の面(
図8の上端面)に形成される場合に限られず、支持体70Aの他方の面(
図8の下端面)、または支持体70Aの両面(
図8の上端面及び下端面)に形成しても良い。なお、第1層71、第2層72、第3層73、第4層74の数は任意である。多層膜70Bとしては、第4層74を1つ以上有し、第1層71と第4層74との間に異種物質界面77を1つ以上有していれば良い。
【0070】
第4層74は、例えば、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Co、及びこれらの合金、或いはSiC、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成されている。第4層74を構成する合金としては、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coのうちの2種以上から成るものであることが好ましい。第4層74を構成する合金として、Ni、Pd、Cu、Cr、Fe、Mg、Coに添加元素を添加したものを用いても良い。
【0071】
特に、第4層74は、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成されることが好ましい。CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成される第4層74を有する発熱体70は、水素の吸蔵量が増加し、異種物質界面75、異種物質界面76、及び異種物質界面77を透過する水素の量が増加するため、当該発熱体70が発生する過剰熱の高出力化を図ることができる。
【0072】
第4層74の厚さは、1000nm未満であることが好ましい。第4層74の厚さが1000nm未満であると、第4層74は、バルク特性を示すことのないナノ構造を維持することができる。特に、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成される第4層74は、厚さが10nm以下であることが好ましい。第4層74の厚さが10nm以下であると、多層膜70Bは、水素を容易に透過させることができる。
【0073】
SiC、CaO、Y2O3、TiC、LaB6、SrO、BaOのうちのいずれかによって構成される第4層74は、完全な膜状に形成されることなく、アイランド状に形成されても良い。
【0074】
第1層71と第4層74は、真空状態で連続的に成膜されることが好ましい。これにより、第1層71と第4層74との間に、自然酸化膜が形成されることなく、異種物質界面77のみが形成される。
【0075】
第1層71、第2層72、第3層73、及び第4層74の組み合わせとしては、元素の種類を「第1層-第4層-第3層-第2層」として表示すると、Ni-CaO-Cr-Fe、Ni-Y2O3-Cr-Fe、Ni-TiC-Cr-Fe、Ni-LaB6-Cr-Feの組み合わせが好ましい。
【0076】
(発熱装置の作用)
次に、以上のように構成された発熱装置1の作用について説明する。
【0077】
制御部2からの制御信号によって循環ポンプ14が駆動されると、当該循環ポンプ14から吐出される水素系ガスは、水素循環ラインL1の導入配管12と当該導入配管12から分岐する4本の分岐管15とを流通し、発熱モジュールM1の各積層構造体4に形成された各第1流路6へと導入される。水素系ガスは、導入配管12を流れる過程においてバッファタンク17によって圧力変動が抑制されるとともに、圧力調整弁18によって圧力が所定値に調整される。
【0078】
発熱モジュールM1の電気ヒータ9は、電源10から供給される電力によって発熱し、第1流路6内の水素系ガスを介して発熱体5を発熱可能な温度(例えば、50℃~1500℃)に加熱する。発熱体5の温度は、温度センサ11によって検出される温度に基づいて、制御部2によって電源10の出力が制御されることによって、適正な値に調整される。ここで、2つの積層構造体4の対面する第1流路6の間に電気ヒータ9が設けられているため、電気ヒータ9の熱が密閉容器3からの放熱によって周囲に散逸することがない。また、発熱モジュールM1の中心部分に電気ヒータ9が設けられているため、発熱モジュールM1全体が効率的に加熱される。このため、発熱体5が効率良く適正温度に加熱され、発熱体5の加熱に伴う消費電力が低く抑えられる。
【0079】
発熱モジュールM1の各第1流路6へと導入された水素系ガスに含まれる水素は、前述のように発熱体5を透過して第2流路7へと流入する。発熱体5は、第1流路6から第2流路7へ水素を透過させることによって発熱する。
【0080】
発熱モジュールM1の各発熱体5を透過して当該発熱体5の発熱に供された水素(透過水素)を含む透過ガスは、各第2流路7から各分岐管16へと流出して回収配管13で合流した後、循環ポンプ14に吸引されて回収され、各発熱体5に水素を供給するための水素系ガスとして再利用される。以下、同様の動作が繰り返されて、水素系ガスが水素循環ラインL1を循環する課程で、水素系ガスに含まれる水素が発熱モジュールM1の各発熱体5の発熱に供される。このように、本実施形態においては、閉ループを構成する水素循環ラインL1を水素系ガスが連続して循環するため、発熱体5の発熱に供する水素の補給が抑えられて経済的である。また、透過水素を含む高温の透過ガスを回収し、水素循環ラインL1を循環させて各発熱体5に水素を供給する水素系ガスとして再利用するため、各発熱体5の過冷却が抑制され、各発熱体5の発熱が維持または促進される。
【0081】
発熱モジュールM1の各第3流路8を流れる熱媒体は、第3流路8の両側に配置された2つの第2流路7を流れる高温の透過ガスとの間で熱交換して加熱される。熱媒体は、2つの第2流路7を流れる高温の透過ガスから熱を奪って効率的に加熱されるため、熱回収効率が高められている。したがって、発熱モジュールM1は、発熱体5に水素を透過させることにより発熱を行う発熱機能と、発熱体5を透過した透過水素含む透過ガスと熱媒体との間で熱交換を行う熱交換機能とを兼ね備えている。発熱モジュールM1を備える発熱装置1は、発熱・熱交換一体式の形態を備えている。
【0082】
各第3流路8を流れる過程において第2流路7の高温の透過ガスとの熱交換によって加熱された熱媒体は、各第3流路8から分岐管31fを経て第1配管31aで合流した後、この第1配管31aを経て後述の熱利用装置30へと供給される。熱利用装置30は、熱媒体から供給される熱を利用して発電などの所要の仕事を行う。すなわち、発熱装置1で加熱された熱媒体は、熱利用装置30の熱源としての利用に供される。そして、熱利用装置30に熱を供給して温度の下がった熱媒体は、第4配管31dを経て発熱モジュールM1へと戻され、発熱モジュールM1において再び加熱される。以後、同様の動作が連続的に繰り返されて、熱利用装置30が連続的に駆動される。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る発熱装置1は、熱媒体が流通する第3流路8の両側に、当該第3流路8から順に、第2流路7、発熱体5、第1流路6を順次対称的に積層して構成される積層構造体4と、発熱体5を加熱する電気ヒータ9とを備えている。各積層構造体4は、発熱体5、第1流路6、第2流路7、及び第3流路8が高密度に積層されて構成されている。このため、本実施形態に係る発熱装置1によれば、熱を効率良く発生することができるとともに、小型・コンパクト化を図ることができる。
【0084】
積層構造体4においては、発熱体5が発生する熱は、第3流路8を流れる熱媒体と、第3流路8を挟んでこれの両側に配置された第2流路7を流れる高温の透過ガスとの熱交換によって、熱媒体に効率良く与えられる。このため、発熱装置1は、発熱体5において発生した熱を熱媒体によって効率良く回収することができる。
【0085】
なお、発熱装置1は、本実施形態では2つの積層構造体4を備えているが、積層構造体4を1つ以上備えるものであれば良く、3つ以上の複数の積層構造体4を多段に重ねて構成しても良い。発熱装置1は、積層構造体4の数を増やすことによって、一層効率良く熱を発生し、高出力化を図ることができる。
【0086】
電気ヒータ9は、本実施形態では、板状に構成され、2つの積層構造体4の間に設けられているが、例えば筒状の電気炉として構成し、発熱モジュール全体を覆うように設けても良い。
【0087】
[熱利用システム]
図9は本実施形態に係る熱利用システム20の構成を示すブロック図である。
【0088】
図9に示すように、熱利用システム20は、発熱装置1と熱利用装置30とを備えている。ここで、熱利用装置30は、発熱装置1において発生する熱によって加熱された熱媒体を熱源として発電する装置の一例である。熱利用装置30は、熱媒体循環ラインL2と、ガスタービン32と、蒸気発生器33と、蒸気タービン34と、スターリングエンジン35と、熱電変換部36とを備えている。熱媒体循環ラインL2と、ガスタービン32と、蒸気発生器33と、蒸気タービン34と、スターリングエンジン35と熱電変換部36について以下にそれぞれ説明する。
【0089】
(熱媒体循環ライン)
熱媒体循環ラインL2は、発熱装置1の発熱モジュールM1、ガスタービン32、蒸気発生器33、蒸気タービン34、スターリングエンジン35、及び熱電変換部36の間で熱媒体を循環させる閉ループを構成している。具体的には、この熱媒体循環ラインL2は、発熱モジュールM1の第3流路8の熱媒体回収口8d(
図3参照)から延びてガスタービン32に接続された第1配管31aと、ガスタービン32と蒸気発生器33とを接続する第2配管31bと、蒸気発生器33とスターリングエンジン35とを接続する第3配管31cと、スターリングエンジン35から延びて発熱モジュールM1の第3流路8の熱媒体導入口8cに接続された第4配管31dとを備えている。ここで、第1配管31aの途中には、循環ポンプ37と流量制御弁38とが設けられている。循環ポンプ37には、メタルベローズポンプなどが用いられる。流量制御弁38には、バリアブルリークバルブなどが用いられる。本実施形態では、熱媒体循環ラインL2は、発熱モジュールM1を構成する2つの第3流路8の各熱媒体導入口8c(
図3参照)と第4配管31dとを接続する2つの分岐管31eと、発熱モジュールM1を構成する2つの第3流路8の各熱媒体回収口8d(
図3参照)と第1配管31aとを接続する2つの分岐管31fとを更に備えている。
【0090】
(ガスタービン)
ガスタービン32は、同軸によって連結されたコンプレッサ32aとタービン32bを備えている。ガスタービン32は、第1配管31aから導入された熱媒体により駆動する。タービン32bの出力軸には発電機40が連結されている。
【0091】
(蒸気発生器)
蒸気発生器33は、第2配管31bに接続された内部配管33aと、この内部配管33aに対向する熱交換配管33bと、熱交換配管33bと蒸気タービン34の入口とを接続する蒸気配管33cと、熱交換配管33bと蒸気タービン34の出口とを接続する給水配管33dとを備えている。蒸気発生器33は、内部配管33aを流れる熱媒体と熱交換配管33bを流れる缶水との熱交換により缶水を加熱し、高温・高圧の蒸気を発生する。給水配管33dには、図示しない復水器と給水ポンプが設けられている。給水配管33dは、蒸気タービン34の出口から排出された蒸気を復水器で冷却して缶水に戻し、この缶水を給水ポンプで熱交換配管33bへ戻す。
【0092】
(蒸気タービン)
蒸気タービン34は、蒸気発生器33で発生した高圧・高圧の蒸気により駆動する。蒸気タービン34の出力軸には発電機50が接続されている。
【0093】
(スターリングエンジン)
スターリングエンジン35は、シリンダ35aと、ディスプレーサピストン35bと、パワーピストン35cと、流路35dと、クランク部35eとを備えている。ここで、シリンダ35aの内部は、ディスプレーサピストン35bによって膨張空間S1と圧縮空間S2とに区画されている。膨張空間S1と圧縮空間S2には作動流体が封入されている。作動流体としては、ヘリウムガス、水素系ガス、空気などが用いられるが、本実施形態では、ヘリウムガスを用いている。
【0094】
流路35dは、シリンダ35aの外部に設けられており、膨張空間S1と圧縮空間S2とを連通させている。流路35dは、膨張空間S1と圧縮空間S2との間で作動流体を流通させる。流路35dは、高温部35fと、低温部35gと、再生器35hとを備えている。膨張空間S1の作動流体は、高温部35f、再生器35h、低温部35gを順次通過して圧縮空間S2へと流入する。圧縮空間S2の作動流体は、低温部35g、再生器35h、高温部35fを順次通過して膨張空間S1に流入する。
【0095】
高温部35fは、作動流体を加熱するための熱交換器である。高温部35fの外部には伝熱管35iが設けられている。伝熱管35iは、第3配管31cと第4配管31dとを接続しており、第3配管31cから第4配管31dへと熱媒体を流通させる。第3配管31cから伝熱管35iへと熱媒体が流れることによって、熱媒体の熱が高温部35fへと伝達され、高温部35fを通過する作動流体が加熱される。
【0096】
低温部35gは、作動流体を冷却するための熱交換器である。低温部35gの外部には冷却管35jが設けられている。冷却管35jは、水などの冷却媒体を供給する不図示の冷却媒体供給部に接続されており、冷却媒体供給部から供給される冷却媒体を流通させる。冷却管35jに冷却媒体が流れることによって、低温部35gを通過する作動流体が冷却媒体に熱を奪われて冷却される。
【0097】
再生器35hは、蓄熱用の熱交換器である。再生器35hは、高温部35fと低温部35gとの間に設けられている。再生器35hは、作動流体が膨張空間S1から圧縮空間S2へと移動する際に、高温部35fを通過した作動流体から熱を受け取って蓄積する。また、再生器35hは、作動流体が圧縮空間S2から膨張空間S1へと移動する際に、低温部35gを通過した作動流体に対して、蓄積している熱を与えて作動流体を加熱する。
【0098】
クランク部35eは、シリンダ35aの他端に設けられており、不図示のクランクケースに回転可能に支持されたクランクシャフト、ディスプレーサピストン35bに接続されたロッド、パワーピストン35cに接続されたロッド、各ロッドとクランクシャフトとを連結する連結部材などを備えている。クランク部35eは、ディスプレーサピストン35bとパワーピストン35cの往復直線運動を回転運動に変換する。スターリングエンジン35のクランクシャフトには発電機80が接続されている。
【0099】
(熱電変換部)
熱電変換部36は、第4配管31dを流通する熱媒体の熱をゼーベック効果を利用して電力に変換する。熱電変換部36は、例えば、300℃以下の熱媒体の熱を電力に変換する。熱電変換部36は、筒状に形成されており、第4配管31dの外周を覆うように配置されている。熱電変換部36は、内面に設けられた熱電変換モジュール36aと、外面に設けられた冷却部36bとを備えている。熱電変換モジュール36aは、第4配管31dに対向する受熱基板、受熱基板に設けられた受熱側電極、冷却部36bに対向する放熱基板、放熱基板に設けられた放熱側電極、p型半導体によって形成されたp型熱電素子、n型半導体によって形成されたn型熱電素子などを備えている。本実施形態では、熱電変換モジュール36aは、p型熱電素子とn型熱電素子とが交互に配列され、隣接するp型熱電素子とn型熱電素子とが受熱側電極と放熱側電極によって電気的に接続されている。また、熱電変換モジュール36aは、一端に配置されたp型熱電素子と他端に配置されたn型熱電素子に対して、リードが放熱側電極を介して電気的に接続されている。冷却部36bは、例えば、冷却水が流通する配管によって構成されている。熱電変換部36は、内面と外面との間に発生する温度差に応じた電力を発生する。
【0100】
(熱利用システムの作用)
次に、以上のように構成された熱利用システム20の作用について説明する。
【0101】
発熱装置1において、前述のように発熱モジュールM1の各発熱体5を水素が透過することによって発生した熱が各第3流路8を流れる熱媒体に与えられて、熱媒体が所定の温度に加熱される。そして、熱利用装置30の第1配管31aに設けられた循環ポンプ37が駆動されると、加熱された熱媒体は、閉ループを構成する発熱モジュールM1の各第3流路8、各分岐管31f、第1配管31a、第2配管31b、第3配管31c、第4配管31d、及び各分岐管31eを循環する。この結果、熱媒体からの熱の供給を受けてガスタービン32、蒸気タービン34、スターリングエンジン35及び熱電変換部36が順次駆動されて所要の発電がなされる。このとき、流量制御弁38は、温度センサ11によって検出された温度に基づいて熱媒体の流量を制御する。すなわち、流量制御弁38は、温度センサ11によって検出される発熱体5の温度が適正な上限温度を超えた場合には、熱媒体の循環流量を増やして発熱体5の温度上昇を抑える。また、流量制御弁38は、温度センサ11によって検出される発熱体5の温度が適正な下限温度未満である場合には、熱媒体の循環流量を減らして発熱体5の温度低下を抑える。
【0102】
発熱装置1の発熱モジュールM1によって加熱されて各第3流路8から各分岐管31fを経て第1配管31aへと流れる高温(例えば、600℃~1500℃)の熱媒体は、ガスタービン32に導入され、ガスタービン32のコンプレッサ32aによって圧縮される。そして、圧縮された熱媒体が膨張しながらタービン32bを流れることによって、当該タービン32bが回転駆動され、タービン32bの出力軸に連結された発電機40が回転駆動されて所要の発電がなされる。すなわち、熱媒体が有する熱の一部がガスタービン32の運動エネルギーに変換され、この運動エネルギーが発電機40によって電気エネルギーに変換される。
【0103】
ガスタービン32から第2配管31bへと吐出された熱媒体は、蒸気発生器33の内部配管33aを流れる過程で、熱交換配管33bを流れる缶水との間で熱交換して缶水を加熱する。これにより、缶水から高温(300℃~700℃)・高圧の蒸気が発生し、この蒸気が蒸気配管33cを経て蒸気タービン34に供給される。この結果、蒸気タービン34が蒸気によって回転駆動され、この蒸気タービン34の回転によって発電機50も同時に回転駆動されて所要の発電がなされる。すなわち、熱媒体が有する熱の一部が蒸気タービン34の運動エネルギーに変換され、この運動エネルギーが発電機50によって電気エネルギーに変換される。なお、蒸気タービン34の駆動に供されて温度の下がった蒸気は、不図示の復水器において冷却されて缶水に戻される。この缶水は、給水配管33dから蒸気発生器33の熱交換配管33bへと流れ、内部配管33aを流れる熱媒体との熱交換によって加熱されて再び蒸気となる。
【0104】
蒸気発生器33の内部配管33aを流れる過程で蒸気の発生に供された温度300℃~1000℃の熱媒体は、内部配管33aから第3配管31cを経てスターリングエンジン35へと供給され、前述の作用によってスターリングエンジン35の駆動に供される。この結果、スターリングエンジン35のクランクシャフトが回転駆動され、クランクシャフトに連結された発電機80も回転駆動されて所要の発電がなされる。すなわち、熱媒体が有する熱の一部がスターリングエンジン35の運動エネルギーに変換され、この運動エネルギーが発電機80によって電気エネルギーに変換される。
【0105】
スターリングエンジン35の駆動に供された熱媒体は、第4配管31dを経て熱電変換部36へと供給され、この熱媒体の熱の一部が前述のようにゼーベック効果によって電力に変換される。すなわち、熱媒体が有する熱の一部が熱電変換部36によって電気エネルギに変換される。
【0106】
そして、熱電変換部36において発電に供されて温度が低下した熱媒体は、第4配管31dから各分岐管31eを経て発熱モジュールM1の各第3流路8へと戻される。以後、同様の作用が連続的に繰り返され、発熱モジュールM1において発生した熱が熱媒体によって回収され、その熱エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0107】
本実施形態では、熱媒体によって回収された熱によってガスタービン32と蒸気タービン34及びスターリングエンジン35を駆動し、その運動エネルギーを発電機40,50,80によって電気エネルギーに変換するとともに、熱電変換部36によって熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する構成を採用したが、ガスタービン32、蒸気タービン34、スターリングエンジン35、及び熱電変換部36を任意に組み合わせて熱利用装置30を構成しても良い。
【0108】
以上の実施形態では、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱利用装置30について説明したが、発熱装置1によって発生する熱は、発電以外の他の用途、例えば、ボイラーに供給される燃焼用空気の予熱、化学吸収法によってCO2を吸収した吸収液の加熱、メタン製造装置におけるCO2とH2を含む原料ガスの加熱などの他、ヒートポンプシステム、熱輸送システム、冷熱(冷凍)システムなどに利用することができる。
【0109】
2.第2実施形態
上記第1実施形態では、上下2つの積層構造体4の相対面する2つの第1流路6の間に電気ヒータ9を配置したが、第2実施形態では、
図10及び
図11に示すように、上下2つの積層構造体4の相対面する2つの第1流路6の間に2つの電気ヒータ9と1つの第3流路8を配置している。第3流路8は、発熱モジュールM1の上下方向中央に配置されている。ここで、計2つの電気ヒータ9は、第3流路6を上下に挟むように該第3流路8の両側(上下面)に配置されている。そして、上下2つの電気ヒータ9によって挟まれるように配置された第3流路8の入口側には、分岐管31eを介して第4配管31dが接続され、第3流路8の出口側には、分岐管31fを介して第1配管31aが接続されている。
【0110】
図10は第2実施形態に係る発熱装置1’の基本構成を示すブロック図、
図11は第2実施形態に係る積層構造体4の分解斜視図であり、これらの図においては、
図1及び
図2において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、同一要素についての再度の説明は省略する。
【0111】
上記第1実施形態に係る発熱装置1においては、各積層構造体4の第3流路8を流れる熱媒体と第3流路8の両側に配置された第2流路7を流れる高温の透過水素との熱交換によって、各発熱体5において発生した熱が熱媒体によって回収(抜熱)される。この場合、各第2流路7は低圧であるために発熱体5において発生した熱が伝わりにくく、第3流路8を流れる熱媒体による熱回収効率が低いと考えられる。
【0112】
他方、第1流路6は高圧であるために発熱体5において発生した熱がより伝わり易い。本実施形態においては、前述のように、上下2つの積層構造体4の相対面する2つの第1流路6の間に2つの電気ヒータ9と1つの第3流路8を配置したため、上下2つの第2流路6の間に配置された上下方向中央の第3流路8を流れる熱媒体に上下の第1流路6と電気ヒータ9を介して発熱体5の熱が伝わり易い。したがって、上下方向中央の第3流路8を流れる熱媒体による熱回収効率が高くなり、結果的に、熱交換器としても機能する発熱装置1’の熱交換効率が高くなる。
【0113】
なお、発熱装置1’の立ち上がり時(起動時)においては電気ヒータ9をONし、発熱体5が発熱した後には理想的には電気ヒータ9をOFFするが、発熱体5の温度調節のために電気ヒータ5をONのままとして該電気ヒータ9の発熱量を調整するようにしても良い。また、本実施形態では、各発熱体5に対する加熱のバランスを取るために第3流路8の上下に電気ヒータ9をそれぞれ配置したが、1つの電気ヒータ9を第3流路8の上下いずれか一方のみに配置しても良い。
【0114】
3.第3実施形態
前記第1実施形態では、発熱体5を透過した透過水素を含む透過ガスを回収しているが、第3実施形態では、透過ガスに加え、発熱体を透過しなかった水素(非透過水素)を含む水素系ガス(以下、非透過ガスと称する)を回収する。
【0115】
図12は第3実施形態に係る発熱装置90の基本構成を示すブロック図である。発熱装置90は、発熱モジュールM2と、温度調整部Tと、水素循環ラインL1と、非透過水素回収ラインL3と、制御部2と、密閉容器3とを備えている。上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0116】
発熱モジュールM2は、2つの積層構造体94と、1つの電気ヒータ9とを備えている。各積層構造体94は、水素の吸蔵と放出によって熱を発生する発熱体5と、水素を含む水素系ガスが導入され、発熱体5に水素を供給する第1流路96と、発熱体5を透過した水素(透過水素)を含む透過ガスが流通する第2流路7と、第2流路7を流れる透過ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流通する第3流路8とを有し、第3流路8の両側に、当該第3流路8から順に第2流路7、発熱体5、及び第1流路96を順次対称的に積層して構成されている。発熱モジュールM2は、この例では四角柱状に形成されている。
【0117】
発熱モジュールM2は、2つの積層構造体94を上下方向に2段に重ねて構成されている。上側の積層構造体94の最下部の第1流路96と下側の積層構造体94の最上部の第1流路96とは相対面している。電気ヒータ9は、上下に重ねられた2つの積層構造体94の相対面する2つの第1流路96の間、つまり、上側の積層構造体94の最下部の第1流路96と下側の積層構造体94の最上部の第1流路96との間に設けられている。
【0118】
非透過水素回収ラインL3は、発熱モジュールM2の各積層構造体94において、各第1流路96へと導入される水素系ガスのうち、各発熱体5を透過しないで当該発熱体5の発熱に供せられなかった非透過水素を含む非透過ガスを第1流路96から回収し、回収した非透過ガスを第1流路96へと戻すためのものである。
図12では、発熱体5を透過しない非透過水素を含む非透過ガスを「非透過水素」と記載している。
【0119】
非透過水素回収ラインL3は、発熱モジュールM2の積層構造体94に設けられた第1流路96から非透過ガスを回収する回収配管97を有している。回収配管97は、水素循環ラインL1を構成する回収配管13とを接続している。回収配管97は、
図12では回収配管13の循環ポンプ14よりも上流側(吸入側)に接続されているが、回収配管13の循環ポンプ14よりも下流側(吐出側)に接続しても良い。
【0120】
回収配管97は、発熱モジュールM2の各積層構造体94に設けられた各第1流路96にそれぞれ接続された分岐管98を有している。第1流路96の非透過ガスは、発熱体5により加熱されて高温となり、分岐管98を介して回収配管97へ回収され、水素循環ラインL1を構成する回収配管13を流れる透過ガスと合流した後、導入配管12及び分岐管15から再び各第1流路96へと導入され、発熱体5に水素を供給するための水素系ガスとして再利用される。
【0121】
積層構造体94は、第1流路96の構成が異なること以外は、上記第1及び第2実施形態の積層構造体4と同じ構成を有する。第1流路96の構成について以下に説明する。
【0122】
図13は積層構造体94の分解斜視図である。
図13に示すように、第1流路96は、平板状に形成された平板部96aと、平板部96aに設けられた壁部96bとにより構成されている。平板部96a及び壁部96bは、例えばステンレス鋼で形成されている。平板部96aは、平面視において四角形状に形成されている。壁部96bは、平板部96aの4辺の縁部分のうち、互いに対向する2辺の縁部分に設けられている。
図13では、壁部96bは、平板部96aの4辺の縁部分のうち、X軸方向における左右の縁部分に設けられている。下側の第1流路96を構成する壁部96bはZ軸方向の上側に向けて突出し、上側の第1流路96を構成する壁部96bはZ軸方向の下側に向けて突出している。第1流路96の正面(Y軸方向における左側の面)には、水素導入口96cが設けられ、第1流路96の背面(Y軸方向における右側の面)には、水素回収口96dが設けられている。水素導入口96cは、水素循環ラインL1の分岐管15(
図12参照)と接続する。水素回収口96dは、非透過水素回収ラインL3の分岐管98(
図12参照)と接続する。
図13では、上側の第1流路96の背面に設けられている水素回収口96dが、紙面奥側に隠れている。
【0123】
以上のように、第3実施形態に係る発熱装置90は、発熱体5、第1流路96、第2流路7、及び第3流路8が高密度に積層されて構成された積層構造体94を備えている。このため、第3実施形態に係る発熱装置90によれば、上記第1及び第2実施形態に係る発熱装置1,1’と同様に、熱を効率良く発生することができるとともに、小型・コンパクト化を図ることができる。
【0124】
発熱装置90は、閉ループを構成する水素循環ラインL1を水素系ガスが連続して循環するため、発熱体5の発熱に供する水素の補給が抑えられて経済的である。また、非透過水素回収ラインL3が水素循環ラインL1に接続されていることにより、透過水素を含む高温の透過ガスと非透過水素を含む高温の非透過ガスとを回収し、水素循環ラインL1を循環させて各発熱体5に水素を供給する水素系ガスとして再利用するため、各発熱体5の過冷却が抑制され、各発熱体5の発熱が維持または促進される。
【0125】
また、積層構造体94においては、発熱体5が発生する熱は、第3流路8を流れる熱媒体と、第3流路8を挟んでこれの両側に配置された第2流路7を流れる高温の透過ガスとの熱交換によって、熱媒体に効率良く与えられる。このため、発熱装置90は、発熱体5において発生した熱を熱媒体によって効率良く回収することができる。
【0126】
発熱装置90は、発熱モジュールM2の中心部分に電気ヒータ9が設けられているため、発熱モジュールM2全体が効率的に加熱される。このため、発熱装置90によれば、発熱体5が効率良く適正温度に加熱され、発熱体5の加熱に伴う消費電力が低く抑えられる。
【0127】
4.第4実施形態
上記2実施形態では、第2流路7から透過ガスを回収しているが、第4実施形態では、第2流路に熱媒体を導入し、第2流路から透過ガス及び熱媒体を回収する。
【0128】
図14は第4実施形態に係る発熱装置100の基本構成を示すブロック図である。発熱装置100は、発熱モジュールM3と、温度調整部Tと、水素循環ラインL4と、制御部2と、密閉容器3とを備えている。上記第1及び第2実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0129】
発熱モジュールM3は、2つの積層構造体104と、1つの電気ヒータ9とを備えている。各積層構造体104は、水素の吸蔵と放出によって熱を発生する発熱体5と、水素を含む水素系ガスが導入され、発熱体5に水素を供給する第1流路6と、発熱体5を透過した水素(透過水素)を含む透過ガスが流通する第2流路107と、第2流路107を流れる透過ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流通する第3流路8とを有し、第3流路8の両側に、当該第3流路8から順に第2流路107、発熱体5、及び第1流路6を順次対称的に積層して構成されている。発熱モジュールM3は、この例では四角柱状に形成されている。
【0130】
発熱モジュールM3は、2つの積層構造体104を上下方向に2段に重ねて構成されている。上側の積層構造体104の最下部の第1流路6と下側の積層構造体104の最上部の第1流路6とは相対面している。電気ヒータ9は、上下に重ねられた2つの積層構造体104の相対面する2つの第1流路6の間、つまり、上側の積層構造体104の最下部の第1流路6と下側の積層構造体104の最上部の第1流路6との間に設けられている。
【0131】
第4実施形態では、熱媒体循環ラインL2は、第4配管31dから6つの分岐管31eが分岐している。6つの分岐管31eのうち、2つの分岐管31eは2つの第3流路8の各熱媒体回収口8dと接続し、4つの分岐管31eは4つの第2流路107と接続している。このため、第4配管31dを流れる熱媒体は、各分岐管31eを介して第2流路107と第3流路8とに導入される。第2流路107に導入される熱媒体を「第1熱媒体」と言い、第3流路8に導入される熱媒体を「第2熱媒体」と言う。したがって、第4実施形態においては、第2流路107は、第1熱媒体が導入され、発熱体5を透過した透過水素を含む透過ガスとともに第1熱媒体が流通する。第3流路8は、第2流路107を流れる透過ガス及び第1熱媒体との間で熱交換を行う第2熱媒体が流通する。
【0132】
水素循環ラインL4は、導入配管12と、回収配管13と、循環ポンプ14と、回収配管13の途中に設けられた水素分離部108とを有している。水素分離部108は、第2流路107から分岐管16を介して回収配管13へ回収された透過ガスと第1熱媒体とを分離するためのものである。
【0133】
水素分離部108は、回収配管13から分岐し、熱媒体循環ラインL2の第4配管31dと接続する接続配管109と、回収配管13と接続配管109との接続部に設けられた水素透過膜110と有している。接続配管109は、水素透過膜110を透過しない第1熱媒体を熱媒体循環ラインL2の第4配管31dへ流入させる。水素透過膜110は、透過ガスを透過させる。
【0134】
積層構造体104は、第2流路107の構成が異なること以外は、上記第1及び第2実施形態の積層構造体4と同じ構成を有する。第2流路107の構成について以下に説明する。
【0135】
図15は積層構造体104の分解斜視図である。
図15に示すように、第2流路107は、平板状に形成された平板部107aと、平板部107aに設けられた壁部107bとにより構成されている。平板部107a及び壁部107bは、例えばステンレス鋼で形成されている。平板部107aは、平面視において四角形状に形成されている。壁部107bは、平板部107aの4辺の縁部分のうち、互いに対向する2辺の縁部分に設けられている。
図15では、壁部107bは、平板部107aの4辺の縁部分のうち、X軸方向における左右の縁部分に設けられている。下側の第2流路107を構成する壁部107bはZ軸方向の下側に向けて突出し、上側の第2流路107を構成する壁部107bはZ軸方向の上側に向けて突出している。第2流路107の正面(Y軸方向における左側の面)には、熱媒体導入口107cが設けられ、第2流路107の背面(Y軸方向における右側の面)には、水素及び熱媒体回収口107dが設けられている。熱媒体導入口107cは、熱媒体循環ラインL2の分岐管31e(
図12参照)と接続する。水素及び熱媒体回収口107dは、水素循環ラインL4の分岐管16と接続する(
図14参照)。
図15では、下側の第2流路107の背面に設けられている水素及び熱媒体回収口107dが、紙面奥側に隠れている。
【0136】
以上のように、第4実施形態に係る発熱装置100は、発熱体5、第1流路6、第2流路107、及び第3流路8が高密度に積層されて構成された積層構造体104を備えている。このため、第4実施形態に係る発熱装置100によれば、上記第1実施形態に係る発熱装置1と同様に、熱を効率良く発生することができるとともに、小型・コンパクト化を図ることができる。
【0137】
発熱装置100は、閉ループを構成する水素循環ラインL4を水素系ガスが連続して循環するため、発熱体5の発熱に供する水素の補給が抑えられて経済的である。
【0138】
また、積層構造体104においては、発熱体5が発生する熱は、第3流路8を流れる第2熱媒体と、第3流路8を挟んでこれの両側に配置された第2流路107を流れる高温の透過ガス及び高温の第1熱媒体との熱交換によって、第2熱媒体に効率良く与えられる。このため、発熱装置100は、発熱体5において発生した熱を熱媒体によって効率良く回収することができる。
【0139】
本発明は、以上説明した各実施形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0140】
上記各実施形態に係る発熱モジュールM1,M2,M3は、四角柱状に形成されているが、発熱モジュールの形状はこれに限定されない。発熱モジュールは、例えば、四角柱状以外の多角柱状、円柱状、楕円柱状に形成しても良い。
【0141】
発熱モジュールは、第1流路に水素系ガスを導入する方向と、第2流路から透過ガスが流出する方向と、第3流路に熱媒体を導入する方向と、第3流路から熱媒体が流出する方向とが互いに異なるように構成することが好ましい。これにより、第1流路、第2流路、及び第3流路と接続する配管同士を離して配置することができ、発熱モジュールに対する配管が容易化する。上記の各方向が互いに異なるように構成した発熱モジュールを以下に説明する。
【0142】
<発熱モジュールの変形例1>
図16に示すように、発熱モジュールM4は、上記第1実施形態の発熱モジュールM1と同様に、水素系ガスを第1流路に導入し、発熱体を透過した透過水素を含む透過ガスが第2流路から流出し、熱媒体を第3流路に導入するように構成されている。発熱モジュールM4は、八角柱状に形成されており、八角柱の相対向する一対の辺を1組として異なる3組の辺に直交する互いに異なる方向に、第1流路の水素系ガスと、第2流路の透過ガスと、第3通路の熱媒体とが流れる。このように、発熱モジュールM4は、第1流路に水素系ガスを導入する方向と、第2流路から透過ガスが流出する方向と、第3流路に熱媒体を導入する方向と、第3流路から熱媒体が流出する方向とが互いに異なる。
【0143】
<発熱モジュールの変形例2>
図17に示すように、発熱モジュールM5は、上記第3実施形態の発熱モジュールM2と同様に、水素系ガスを第1流路に導入し、発熱体を透過した透過水素を含む透過ガスが第2流路から流出し、発熱体を透過しなかった非透過水素を含む非透過ガスが第1流路から流出し、熱媒体を第3流路に導入するように構成されている。発熱モジュールM5は、八角柱の相対向する一対の辺を1組として異なる3組の辺に直交する互いに異なる方向に、第1流路の水素系ガス及び非透過ガスと、第2流路の透過ガスと、第3通路の熱媒体とが流れる。このように、発熱モジュールM5は、第1流路に水素系ガスを導入する方向と、第1流路から非透過ガスが流出する方向と、第2流路から透過ガスが流出する方向と、第3流路に熱媒体を導入する方向と、第3流路から熱媒体が流出する方向とが互いに異なる。
【0144】
<発熱モジュールの変形例3>
図18に示すように、発熱モジュールM6は、上記第4実施形態の発熱モジュールM3と同様に、水素系ガスを第1流路に導入し、第1熱媒体を第2流路に導入し、発熱体を透過した透過水素を含む透過ガス及び第1熱媒体が第2流路から流出し、第2熱媒体を第3流路に導入するように構成されている。発熱モジュールM6は、八角柱の相対向する一対の辺を1組として異なる3組の辺に直交する互いに異なる方向に、第1流路の水素系ガスと、第2流路の透過ガス及び第1熱媒体と、第3通路の第2熱媒体とが流れる。このように、発熱モジュールM6は、第1流路に水素系ガスを導入する方向と、第2流路に第1熱媒体を導入する方向と、第2流路から透過ガス及び第1熱媒体が流出する方向と、第3流路に熱媒体を導入する方向と、第3流路から熱媒体が流出する方向とが互いに異なる。
【0145】
図示しないが、発熱モジュールは、水素系ガスを第1流路に導入し、第1熱媒体を第2流路に導入し、発熱体を透過した透過水素を含む透過ガス及び第1熱媒体が第2流路から流出し、発熱体を透過しなかった非透過水素を含む非透過ガスが第1流路から流出し、第2熱媒体を第3流路に導入するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0146】
1,1’,90,100 発熱装置
4,94,104 積層構造体
5,60,70 発熱体
5A,60A,70A 支持体
5B,60B,70B 多層膜
51,61,71 第1層
52,62,72 第2層
6,96 第1流路
7,107 第2流路
8 第3流路
9 電気ヒータ(加熱手段)
30 熱利用装置
63,73 第3層
74 第4層
L1,L4 水素循環ライン
L2 熱媒体循環ライン
L3 非透過水素回収ライン
M1,M2,M3,M4,M5,M6 発熱モジュール
T 温度調整部