(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173013
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】振動処理装置
(51)【国際特許分類】
F26B 3/092 20060101AFI20221110BHJP
F26B 3/347 20060101ALI20221110BHJP
F26B 3/22 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F26B3/092
F26B3/347
F26B3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021100522
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】390008084
【氏名又は名称】中央化工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千賀 昭
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 孝嘉
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB05
3L113AB06
3L113AC13
3L113AC16
3L113AC24
3L113AC64
3L113BA02
3L113BA36
3L113CA10
3L113CB08
3L113CB11
3L113CB16
3L113DA02
3L113DA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロ波発振器(マグネトロン)寿命が短くなる恐れがなく、また、処理容器内に回転テーブルやスタラファン等の装備を必要としない振動乾燥機を提供すること。
【解決手段】処理容器11を振動させる加振手段13を備えた振動乾燥機VUであって、マイクロ波発信装置Mが付設され、該マイクロ波発振装置M(マイクロ波発振器39)のマイクロ波放出口47を、可撓性導波管37を介して処理容器に形成されたマイクロ波照射口Rと接続する。さらに、処理容器11は、集塵部D及び蒸気吸引手段35を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器を振動させる加振手段を備えた振動処理装置であって、
原料を粉粒体又はスラリー状若しくはペースト状の粉粒体含有原料とするとともに、加振手段が、前記処理容器に投入された原料が壁面上昇落下流動させるものである振動処理装置において、
マイクロ波発信装置が付設され、該マイクロ波発振装置のマイクロ波放出口が、可撓性導波部材を介して前記処理容器に形成されたマイクロ波照射口と接続され、さらに、
前記処理容器が蒸気吸引手段を備えている、
ことを特徴とする振動処理装置。
【請求項2】
前記可撓性導波部材が導波ケーブルであることを特徴とする請求項1記載の振動処理装置。
【請求項3】
前記蒸気吸引手段の吸引口が前記マイクロ波照射口の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の振動処理装置。
【請求項4】
前記振動処理装置を竪型振動乾燥機とし、前記処理容器が底部に中央隆起部(へそ部)を有して環状処理空間を備え、前記環状処理空間に保持された前記原料が旋回流動可能とされているとともに、前記マイクロ波照射口を環状処理空間の一部に対するものとすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の振動処理装置。
【請求項5】
前記振動処理装置を連続式横型振動乾燥機とし、前記処理容器の底部側に1個以上の溢流堰を配して複数個の原料保持空間を形成し、前記原料の連続的投入により投入側から排出側に向かって溢流移動可能とされているとともに、前記マイクロ波照射口を前記原料保持空間の1つ以上に対するものとする、ことを特徴とする請求項1又は2記載の振動処理装置。
【請求項6】
前記振動処理装置を、前記処理層の底部側に整流多孔板を備え、該整流多孔板の下側から気体を吹き込み可能とした振動流動装置とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の振動処理装置。
【請求項7】
前記処理容器は、温調ジャケットを備えていることを特徴とする請求項1~6いずれか記載の振動処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動乾燥機、振動流動装置等の振動処理装置であって、処理容器に投入する原料が、粉粒体又はスラリー状若しくはペースト状の粉粒体含有原料である振動処理装置に係る発明である。なお、本発明における原料は主として誘電体とするが、水分等の液成分を蒸発させる乾燥処理の場合、金属等の非誘電体(導体)でも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ここでは、振動処理装置として、振動乾燥機を、特に竪型振動乾燥機を主として例にとり説明するが、横型振動乾燥機や振動流動装置(例えば、特許文献1・2)でも同様である。
【0003】
振動乾燥機として、本願出願人から、竪型である「バッチ式VU型」、「振動蒸発機」や「振動流動分散機」として、また、横型である「バッチ式VH型」、「連続式VHC型」、「スラリーフィードVHS」として、粉粒体原料からスラリー状、ペースト状の粉粒体原料まで多様な形態原料の処理が可能な装置が上市されている(非特許文献1)。なお、本願出願人が出願した竪型振動乾燥機に係る特許文献として特許文献3~6等がある。
【0004】
これらの振動乾燥機や振動流動装置において、積極的に、処理容器内に導波管を介してマイクロ波を照射可能なマイクロ波発信装置が付設されている装置は、本発明者らは寡聞にして知らない。なお、特許文献6[0028]には、加熱手段として、実施形態のジャケット加熱に限られず、マイクロ波発振器(マグネトロン)を処理容器の天井に取り付けてマイクロ波加熱併用できる旨記載されている。しかし、マイクロ波発振器(マグネトロン)を天井に直接取り付けることを意図しており、本発明の導波管からのマイクロ波を原料特定部位に照射することを予定しておらず異質的である。なお、マイクロ波発振器を直接処理容器の天井に取り付けるとマグネトロン寿命が短くなると推定され実用化されていない。
【0005】
また、マイクロ波発振器が付設され乾燥処理容器内にマイクロ波を照射可能なマイクロ波(減圧)乾燥機が記載された公知文献として特許文献7・8等がある。しかし、当該両文献においては、処理容器が静置型であり、また、原料(被乾燥物)は、いずれも食品である(野菜や果物、さらには、海藻や肉等(特許文献7[請求項9]、特許文献8[0032])。本願発明におけるような振動処理を予定しておらず、また、原料として粉粒体ないしスラリー状若しくはペースト状の粉粒体含有原料を想定していない。さらに、マイクロ波の原料に対する均一照射のために、乾燥トレイを回転させる回転テーブルやスタラファンを必要としている(特許文献7[0052]、特許文献8[0031])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-95437号公報
【特許文献2】特開平7-4834号公報
【特許文献3】特開2017-90029号公報
【特許文献4】特開2011-7368号公報
【特許文献5】特開2009-68740号公報
【特許文献6】特開平11-153384号公報
【特許文献7】特開2020-190338号公報
【特許文献8】特開2013-194966号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】中央化工機,「振動乾燥機Vibration Dryer」,中央化工機カタログ,p3,6-11、2018年6月(中央化工機ホームページ<https://www.chuokakohki.co.jp>からも入手可能)
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記にかんがみて、発振器(マグネトロン)寿命が短くなるおそれがなく、また、回転テーブルやスタラファン等の装備を必要とせず、さらには、マイクロ波照射効率の格段の向上が期待できる新規な振動処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果下記構成の振動処理装置に想到した。
【0011】
処理容器を振動させる加振手段を備えた振動処理装置であって、原料を粉粒体又はスラリー状若しくはペースト状の粉粒体含有原料とするとともに、加振手段が、処理容器に投入された原料が壁面上昇落下流動させるものである振動処理装置において、
マイクロ波発信装置が付設され、該マイクロ波発振装置のマイクロ波放出口が、可撓性導波部材を介して前記処理容器に形成されたマイクロ波照射口と接続され、さらに、前記処理容器が蒸気吸引手段を備えている、ことを特徴とする。
【0012】
ここで、マイクロ波発振器(マグネトロン)は、直接処理容器に取り付けないため、寿命が短くなるおそれがない。また、粉粒体原料を加振(振動)させることにより、該粉粒体原料は、壁面上昇落下流動、すなわち、底部側湾曲面に沿って法線位置より上側まで移動後拡散落下するパターンの循環流動を繰り返す(非特許文献1第3頁「VU型の流動パターン」及び「VH型の流動パターン」参照)。このため、原料は混合されながら、拡散落下するため、マイクロ波吸収効率が向上して均一加熱が促進されるとともに付着液滴も蒸発しやすくなり乾燥が促進される。なお、原料がスラリー状若しくはペースト状の場合、震とうされながら粉粒体原料と同様に壁面上昇落下流動を繰り返して、液相の加熱が促進される。結果的に蒸発乾燥が促進されるとともにダマも発生しがたくなる。たとえ、ダマが発生してもマイクロ波の内部加熱作用により内部液の蒸発作用(水粒子貫通)と加振が協働により解砕される。
【0013】
上記構成において、可撓性導波部材を同軸ケーブルとすることにより、処理容器の振動の影響をマイクロ波発振装置が受けない構成とすることが容易となる。導波管の方が同軸ケーブルに比して減衰を抑制できるが、導波管は実体的な剛体であり、処理容器の接続部を蛇腹接続する結果、マイクロ波の制御が困難となりさらには該接続部で大きなマイクロ波減衰が発生するおそれがある。
【0014】
上記構成において、前記吸引手段の吸引口をマイクロ波照射口の近傍に形成することにより、蒸気(特に誘電損失が大なる水分)によるマイクロ波減衰が低減され乾燥効率が向上する。
【0015】
上記各構成において、前記振動処理装置を竪型振動乾燥機とし、前記処理容器が底部に中央隆起部(へそ部)を有して環状処理空間を備え、前記環状処理空間に保持された前記原料が旋回流動可能とされているとともに、前記マイクロ波照射口を環状処理空間の一部に対するものとすることができる。
この構成の場合、原料が環状処理空間を循環移動するため、上記効果に加えてマイクロ波による均一加熱性がより良好となる。すなわち、従来の均一加熱のための回転テーブルやスタラファン等の装備が不要となる。
【0016】
同上記各構成において、前記振動処理装置を連続式横型振動乾燥機とし、前記処理容器の底部側に1個以上の溢流堰を配して複数個の原料保持空間を形成し、前記原料の連続的投入により投入側から排出側に向かって溢流移動可能とされているとともに、前記マイクロ波照射口を前記原料保持空間の1つ以上に対するものとすることができる。
この構成の場合、原料の乾燥処理が連続運転可能となるとともに、マイクロ波による内部加熱が最適な工程においてマイクロ波照射が可能となり、さらに乾燥効率を向上させることができる。
【0017】
同上記各構成において、前記振動処理装置を、前記処理層の底部側に整流多孔板を備え、該整流多孔板の下側から気体を吹き込み可能とした振動流動装置とすることができる。流動乾燥したナノ粒子を浮遊させて集塵回収できる等多様な用途に展開できる。
【0018】
上記各構成において、前記振動処理装置は、さらに、温調ジャケットを備えているものとすることができる。外部加熱と内部加熱(誘電加熱)との併用ができ、乾燥(加熱)促進を図ることができ処理工程を短縮できる。
【0019】
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明における竪型振動乾燥機の一例における組み立て状態の縦断面図(断面表示一部省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を竪型振動乾燥機に適用した一形態を、
図1に基づいて説明する。本発明は、本実施形態に限られることなく、請求の範囲の及ぶ技術範囲内で種々の態様に及び、当然、横型振動乾燥機や振動流動層にも適用できる。
【0022】
本実施形態は、基本的には竪型振動乾燥機VUにマイクロ波発振装置Mが付設されたものである。
竪型振動乾燥機VUは、筒状竪型の処理容器11と、該処理容器11を振動させる発振機(加振手段)13と、処理容器11を囲繞する温調ジャケット(温調手段)15とを備えている。
【0023】
具体的には、処理容器11は、架台17に配設された圧縮コイルばね(弾性体)18で支持されている。
【0024】
ここで、圧縮コイルばね18は、振動モータ13の出力及び種類に応じて、板ばね、さらには、防振ゴム等の弾性体でもよい。
【0025】
処理容器11は、中心部側底部に温調効率の見地から温調壁面を形成する中央隆起部(へそ部)21を有して環状処理空間Tを備えている。また、温調ジャケット15は、処理容器11の底部から周面を囲繞して、スチームや熱水・温水等の温調流体通路を形成するようになっている。なお、23はスチーム入り口、25はドレン排出口である。ここでは、スチームを温調ジャケット15に供給し随時ドレン抜きをしながら加熱する構成である。
また、温調手段は、本願発明において必須のマイクロ波加熱以外に、温調ジャケットに限らず、抵抗加熱、誘導加熱温調用のコイルを処理容器11に巻付けたりすることができる。更には、面状の化学反応発熱体等を処理容器11に巻付けてもよい。
【0026】
そして、図例では、温調ジャケット15の底部側切り欠き部に製品排出バルブ29を介して製品排出パイプ31を備えている。また、後述のマイクロ波照射部(照射口)R以外に、天井側上面には原料投入口(図示せず)、内蔵フィルター33及び蒸気排出口35を備えた集塵部Dを備えている。なお、集塵部Dの入り口にはマイクロ波漏洩防止のためのパンチングプレート31が取り付けられている。なお、図示しないが、蒸気排出口35には真空吸引配管が接続され、該蒸気排出配管は蒸気回収容器等を介して真空ポンプが接続されている。
【0027】
上記構成において、本実施形態は、マイクロ波発振装置Mから発信されるマイクロ波は可撓性導波部材であるマイクロ波用同軸ケーブル37を介してアプリケータである処理容器11のマイクロ波照射部Rと接続されている。マイクロ波照射部Rは同軸ケーブル37の先端側と接続される真空シール部43とマイクロ波を出力する照射アンテナ45とからなる。マイクロ波減衰は導波管に比して大きいが、同軸ケ―ブル37の方が導波管に比して柔軟性があり、耐振動性に優れている。
【0028】
マイクロ波発振装置Mは、一部構成は図示しないが、発振器(マグネトロン)が電源操作盤Eと接続され、発振器の出口側に装置導波管39を介してアイソレータ等の制御機構が接続され、導波管39の出口には、モード変換器41を備えたものである。モード変換器は導波管モードを同軸ケーブルモードに切り替得るものである。
当該変換器41には、同軸ケーブル37の元部側が接続される。
【0029】
次に、上記竪形振動乾燥機の使用態様を、図例に基づいて説明するが、他の実施形態でも同様である。
【0030】
まず、原料投入口(図示せず)から、粉粒体等の被処理物を、処理容器11の容量の10~80容量%、望ましくは、15~50容量%を投入する。
【0031】
次に、振動モータ13を駆動させ、処理容器11を加振するとともに、所定温度の蒸気(スチーム)をスチーム入り口23からジャケット15に流入させる。更に、図示しないが、真空ポンプ等を作動させて、真空吸引を行うとともに、全工程にわたって、又は、一部工程(サブ工程)のみ若しくは間歇的にマイクロ波加熱をおこなって乾燥処理工程を完了する。
【0032】
このとき、原料は加振されながら循環移動するため、原料である粉粒体の見掛け嵩が大きくなる。このため、マイクロ波出力の減衰が相対的に少なくなる。また、蒸発粒子(水粒子)が照射部から吸引されるため水粒子によるマイクロ波出力の減衰もさらに少なくなる。これらの結果、マイクロ波加熱が効率よく行われて粉粒体の均一加熱が、回転テーブルやスタラファンがなくても可能となる。ジャケット加熱等の外部加熱を併用した場合は、さらに短時間の乾燥処理が可能となる。
【0033】
なお、下記仕様の処理容器を用いて、容器本体容量 (処理容器:内径300mm×高さ250mm)、へそ部高さ80mm、外径90mmの場合を例に採り説明する。
【0034】
下記構成の原料(被処理物)を、処理容器11内にテスト原料 セラミックスラリー(シリカ粉体「メディアン径0.3μm」300g+エタノール450g+水1050g)を投入し、下記条件で、通常のジャケット加熱のみの乾燥処理<従来試験例>と、ジャケット加熱にマイクロ波照射を加えた乾燥処理<本発明試験例>を実施し比較を行った。
【0035】
<運転条件>振動数:24.2Hz,振幅:3mm、ジャケットスチーム加熱温度:130℃、初期設定真空度:44Torr(5.8kPa)
【0036】
<従来試験例>スチーム加熱105℃の静置乾燥で運転し、スラリー状から塊状態になるところで、振動とスチーム加熱温度を130℃に変更し、減率乾燥期の開始時間とし、運転時間のカウントを開始し、乾燥完了まで(乾燥室内真空度52Torrに到達)109分であった。乾燥製品は凝集した塊と本体付着が多く、回収した粉粒体は6.5%で、含液率は1.12wt%だった。
【0037】
<本発明試験例>スチーム加熱105℃の静置乾燥で運転し、スラリー状から塊状態になるところで、振動とスチーム加熱温度を130℃に変更して減率乾燥期の開始時間とし、運転時間のカウントを開始し、600Wのマイクロ波を照射、2分後1000Wのマイクロ波に変更、乾燥完了まで(乾燥室内真空度52Torrに到達)14分であった。乾燥製品は凝集した塊は<従来試験例>と比べ若干少ない程度だが、本体付着が減り、34.1%の粉粒体を回収した、含液率は1.21wt%で同程度だった。
【0038】
上記において、<従来試験例>の従来型のジャケット加熱式での減率乾燥時間は109分掛かり<本発明試験例>では、ジャケット加熱+マイクロ波加熱での減率乾燥時間は14分と<従来試験例>従来型の7.8分の1で処理ができた。
【符号の説明】
【00】
11 処理容器
13 振動モータ(加振手段)
15 加熱ジャケット(加熱手段)
21 中央隆起部(へそ部)
35 蒸気排出口
37 同軸ケーブル(可撓性導波部材)
39 発振器(マグネトロン)
VU 竪型振動乾燥機
D 集塵部
M マイクロ波発振装置
E 電源・制御盤
T 環状処理空間
R マイクロ波照射部