(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173021
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】トランス水平搬出入介助リフター
(51)【国際特許分類】
B66C 1/10 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
B66C1/10 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021101204
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】521264730
【氏名又は名称】有限会社新富重機
(72)【発明者】
【氏名】上原 保
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA40
3F004KA00
(57)【要約】
【課題】 キュービクル建屋内部のトランスをクレーン車で直接吊り揚げて搬出入するトランス水平搬出入介助リフターを提供する。
【解決手段】 主にコの字状鉄骨材で成るリフター体であって、垂直基軸の上端から直交的に伸びるアーム片がクレーン車に吊り掛けられる吊掛けアームを成し、下端から吊掛けアームに平行して伸びるアーム片がトランスに係着される係着アームを成し、吊掛けアームと接合する垂直基軸の上端にスプリングバランサーを備え、吊掛けアーム先端から伸びてクレーンフックに吊り掛けるクレーン吊掛けワイヤーを備え、キュービクル建屋扉側から差し込む係着アームでトランスを係着し、吊掛けアームを介し、スプリングバランサーでコの字体を水平に保ちつつ、直接クレーン車で持ち上げ、水平移動させてトランスを搬出入することを特徴とするトランス水平搬出入介助リフター。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に強固な材質で成る略コの字状のリフター体であって、垂直基軸の上端から直交的に伸びるアーム片は、クレーン車に吊り掛けられる吊掛けアームを成し、下端から吊掛けアームに平行して伸びるアーム片は、トランスに係着される係着アームを成し、
吊掛けアームにおいて、
根元即ち垂直基軸の上端面に、クレーン車のフックに向かってバランサーワイヤーを伸ばすスプリングバランサーを備え、先端上面に、クレーンフックに向かって伸びるクレーン吊掛けワイヤーが固定されており、
吊掛けアームは係着アームより幾分長めで、トランスが納まっているキュービクル建屋内部の奥行幅に準じており、
以上を特徴とするトランス水平搬出入介助リフター。
【請求項2】
係着アームにおいて、先端域にトランスにしっかり係着される係着ベースを設けてあることを特徴とする請求項1に記載のトランス水平搬出入介助リフター。
【請求項3】
吊掛けアームと係着アームは、共に根元域で補強プレートによって垂直基軸と強固に接合してあることを特徴とする請求項1に記載のトランス水平搬出入介助リフター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場、銀行、店舗等に設置してある受変電設備(以下、キュービクル)建屋内部に設置される変圧器(以下、トランス)をキュービクル建屋の屋根に接触せずにクレーン車で直接吊り揚げて交換する際に使用されるトランス吊り揚げ用機器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キュービクル建屋内部の殆ど余地の無い窮屈な空間に納めてある1t近くもの重いトランスを多数の人力と時間を使い、何とか建屋外部に引っ張り出し、クレーン車で吊り揚げ可能な状態まで持って行く方法であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法では、キュービクル建屋内にあるトランスの交換を行う際、
図4のようにクレーン車で直接トランスを吊り揚げようとするとキュービクル建屋の屋根にクレーン車の吊りワイヤーが接触する為、クレーン車で建屋内部にあるトランスを直接吊る事ができなかった。その為、予めトランスを建屋内部から外部へ人力で引っ張り出す必要があった。その際、キュービクル建屋内部床面と外部床面との段差を無くす為、鉄板や角材等を用いて仮設架台を設置し、トランスをチェーンブロック等を用いて吊り揚げ、空いたスペース下にパイプを並べて外部に転がすように引っ張り出すのだが、もし、キュービクル床面と仮設架台の床面に段差が少しでもある場合、トランスが転倒する恐れがあり非常に危険な為、慎重に動かす事が求められ、相当な時間を要していた。人力でトランスをなんとか仮設架台に載せ、こうして初めてクレーン車でトランスを吊り揚げ可能な状態を作り出す事ができた。この重量物を人力で移動する作業は中腰の作業姿勢を強いられ、身体的にも精神的にも多大な負荷を避けられないものである。やっと終えた搬出工程は次に新品トランスの搬入工程へ移行して同じ作業が逆進反復する。この間、建物全体が停電するので、迅速かつ正確な作業が求められる。それにより作業者のストレスは付加される重労働となりこの過程に投入される労力、時間、重量物専門の職人の手配等の手間とコストは相当な負担であった。
天井を閉じられ、上下の余地スペースの殆ど無いキュービクル建屋の扉側から直接クレーン車でトランスを水平移動する方法手段が見出されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
クレーン車に掛け吊るして、トランス等の重量物を移動する時に使用されるもので、主にコの字状鉄骨体で成る特殊なリフターであって、クレーン車に取り付けて掛け吊るされた状態において以下説明する。
コの字体において、凡そ1700mm長の垂直基軸の上端から直交的に伸びるアーム片は、クレーン車に吊り掛けられる吊掛けアームを成し、下端から吊掛けアームに平行して伸びるアーム片は、トランスに係着される係着アームを成し、吊掛けアームにおいて、根元即ち垂直基軸の上端面にクレーンフックに向かってバランサーワイヤーを伸ばすスプリングバランサーを備え、先端上面に、クレーンフックに向かって伸びるクレーン吊掛けワイヤーが固定されており、係着アームにおいて、先端域にトランスにしっかり係着される係着ベースを設けてあり、吊掛けアームと係着アームは共に根元域で補強プレートによって垂直基軸と強固に接合してあり、吊掛けアームが凡そ850mm長の場合、係着アームはそれより幾分長めで、トランスが納まっているキュービクル建屋内の奥行幅に準じる長さとなる。
この様に構成されたリフター体をクレーン車に吊り掛け、キュービクル建屋内に設置されたトランスの搬出作業を行う時、キュービクル建屋の開かれた扉から係着アームが屋内に差し込まれて係着ベースを介してトランスの頭部を係着し、その時吊掛けアームはキュービクル建屋の屋根の外真上にあって、クレーン吊掛けワイヤーとバランサーワイヤーを介してクレーンフックに吊り掛けられており、その状態で直接クレーン車の力でキュービクル建屋内の僅かな上下余地スペースを利用してリフトし、スプリングバランサーでコの字体を水平状態に保持しつつ、キュービクル建屋の外に難なく搬出する。こうして搬出が終わった旧品トランス据え付け跡に、今度は新品トランスを搬出作業の逆進プロセスで直接クレーン車で楽に搬入することができる。
従来であれば時間に切迫された過酷なストレスの下で、多大な労力、危険性、重量物専門の職人の手配等の手間、コストを費やして人力で行うしかなかったトランス交換の搬出入作業が、最初から最後までクレーン車を使用して進行~完了させる事ができる。
以上を特徴とするトランス水平搬出入介助リフターである。
【発明の効果】
【0006】
トランス交換作業を行うにあたり、工場、銀行、店舗等の稼働しない休日、又は営業時間外の深夜や早朝に停電をして交換作業が行われる事が多い。その為、稼働する時間までにトランス交換工事を迅速に完了させる必要がある。キュービクル建屋内部のトランス交換の搬出入作業をクレーン車で直接吊り揚げる事ができれば以下のような効果を生むことが可能となる。
(イ)搬出入に要した仮設架台の設置や狭い余地スペースの中で人力による搬出入作業が省略でき、重量物を動かす際の怪我等のリスクや中腰による姿勢で起こる腰痛等身体的に過酷なストレスが軽減される。従来の方法に比し格段に安全に、楽に、迅速に搬出入作業の工程を進めることができる。
(ロ)停電する時間を考慮して、時間に切迫された中での作業による精神的に過酷なストレスも作業時間の大幅な短縮により軽減される。
(ハ)搬出入に係わる事前の設営作業に要した重量物専門の職人の削減により人員に係わるコストも削減する事が可能となる。
(二)全体工程の中で従来の工程より大幅に作業時間を短縮出来、なお且つ安全に作業を完了させられることから発注者の信頼も獲得でき、信頼が高まることにより今後の受注にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】 クレーン車に掛け吊るされた状態における本発明の外観側面図
【
図2】 本発明を利用してトランスをクレーンで吊り揚げた状態を示すイメージ図
【
図3】 本発明の主要な一部であるコの字状鉄骨体を示す斜視図
【
図4】 本発明を使用せずに直接クレーン車で搬出入したらどのような状況になるのかを示し、直接クレーン車ではキュービクル建屋の屋根に邪魔されて搬出入が不可能であることを表しているイメージ図
【
図5】
図2に示された本発明の使用状態をキュービクル建屋との関連でわかりやすく示したイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
コの字状鉄骨体において、凡そ1700mm長、50mm幅の垂直基軸(1)の上端から直交的に伸びるアーム片は、クレーン車に吊り掛けられる吊掛けアーム(2)を成し、下端から吊掛けアーム(2)に平行して伸びるアーム片は、トランスに係着される係着アーム(3)を成し、吊掛けアーム(2)において、根元即ち垂直基軸(1)の上端面に、クレーンフック(A)に向かってバランサーワイヤー(6)を伸ばすスプリングバランサー(5)を備え、先端上面に、クレーンフック(A)に向かって伸びるクレーン吊掛けワイヤー(7)が固定されており、係着アーム(3)においては、先端域にトランス(B)にしっかり係着される、凡そ500mm長、300mm幅の係着ベース(4)を設けてあり、吊掛けアーム(2)と係着アーム(3)は共に根元域で補強プレート(8)によって垂直基軸(1)と強固に接合してあり、吊掛けアーム(2)が凡そ850mm長、50mm幅の場合、係着アーム(3)はそれより幾分長めで、トランス(B)が納まっているキュービクル建屋(C)内部の奥行幅に準じる長さとなる。
本発明は以上のような構成である。
主に工場、銀行、店舗等に設置してあるキュービクル(一般的に高さ2400mm、幅1800、奥行1800)内に重量約300kg~1tあるトランスが設置してある。この旧品トランスを外部に搬出する作業から始まる。
図4に示すようにキュービクル建屋(C)内部のトランス(B)を外部にあるクレーンフック(A)で吊り揚げようとすると、クレーンワイヤー(D)がキュービクル建屋(C)の屋根に接触してしまう。従来の方法でキュービクル建屋(C)外部に搬出するには、キュービクル建屋(C)内部と外部の床の段差を鉄板や角材等を用いて仮設架台(E)を設置して無くし、トランス(B)の上部には配線等がある為、中腰の状態で作業を行うことになり、トランス(B)をチェーンブロックを用いて吊り揚げ、空いた下のスペースにパイプを並べて外部に転がすように引っ張り出す。この際、キュービクル建屋(C)内部と仮設架台(E)の床に段差がある場合トランスが転倒する恐れがあり非常に危険な為、慎重に動かすことが求められ、相当な時間を要していた。
以下、本発明の使用法を説明する。
本発明でキュービクル建屋内に設置されたトランス(B)の搬出作業を行う時、
図1に示すようにリフター体のバランサーワイヤー(6)とクレーン吊掛けワイヤー(7)をクレーン車のクレーンフック(A)に吊り掛ける。
図1に示す状態で水平を保ったまま、
図5に示すように、
キュービクル建屋(C)の開かれた扉から係着アーム(3)が屋内に差し込まれて係着ベース(4)を介してトランス(B)の頭部を係着する。この時、吊掛けアーム(2)はキュービクル建屋(C)の屋根の外真上にあり、垂直基軸(1)はキュービクル建屋(C)の屋根に接触しない位置まで寄せることができる。その状態で直接クレーン車の力でキュービクル建屋内の僅かな上下余地スペースを利用してリフトし、トランスの重量が加わっても、スプリングバランサー(5)のバランサーワイヤー(6)が伸びてコの字体を水平状態に保持しつつ、キュービクル建屋(C)の外部に水平移動する。この時、作業者は移動中のリフター体を指の力で軽く介助する程度で楽に方向を変えることができる為、安全に搬出する事ができる。搬出したトランス(B)をそのまま吊り揚げてトラックに載せれば搬出作業完了となる。
次に搬出が終わった旧品トランスの据え付け跡に、新品トランスを搬入する。従来の方法では、万が一トランスに傷をつけたり破損をさせると大変な為、新品トランスを搬入する作業の方がより慎重に行われなければならず、搬出時以上に時間を掛けて搬入を行っていた。リフター体を使い、これまでの搬出作業の逆進プロセスで直接トランス(B)をクレーン車で吊り揚げ、安全に、なお且つ時間を掛けず搬入することができる。新品トランスを設置し、トランスの頭部を係着ベース(4)から係脱し、キュービクル建屋(C)外部へリフター体を水平移動し、搬入作業完了となる。
斯くして、トランス交換工事は、作業中に停電状態にあった当該施設内の始業時間に余裕をもって間に合わせられ、より安全に、より楽に、より迅速に、よりコストを抑えて完遂できるようになった。
【符号の説明】
【0009】
1 垂直基軸、 2 吊掛けアーム、 3 係着アーム、 4 係着ベース
5 スプリングバランサー、 6 バランサーワイヤー
7 クレーン吊掛けワイヤー、 8 補強プレート
A クレーンフック、 B トランス、 C キュービクル建屋
D クレーンワイヤー、 E 仮設架台