(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173030
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109165
(22)【出願日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021079194
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 栄彦
(72)【発明者】
【氏名】藤生 卓
(72)【発明者】
【氏名】小山 貴裕
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB12
3C011BB15
3C011BB21
3C011BB22
3C011BB25
(57)【要約】
【課題】加工装置1000と集塵機300との位置関係によらず、集塵ダクト110と集塵機300のホース301との接続を行い易くする。
【解決手段】加工装置1000は、ワークを加工する主軸と、主軸を収容する外装カバー101と、主軸による加工で生じた切粉を集塵機300により集塵すべく、集塵機300のホース301に接続される集塵ダクト110とを備える。集塵ダクト110は、加工で生じた切粉を受ける覆い部112と、集塵機300のホース301に接続される接続口111と、覆い部112と接続口111とを連通させるダクト部114とを有する。そして、集塵ダクト110は、集塵機300のホース301に接続される接続口111の位置を、切り換え可能に覆い部112が外装カバー101の下側に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する主軸と、
前記主軸を収容する筐体と、
前記主軸による加工で生じた切粉を集塵機により集塵すべく、前記集塵機のホースに接続される集塵ダクトと、を備え、
前記集塵ダクトは、
加工で生じた切粉を受ける受け部と、
前記集塵機のホースに接続される接続口と、
前記受け部と前記接続口とを連通させるダクト部と、を有し、
前記集塵機のホースに接続される接続口の位置を、切り換え可能に前記受け部が前記筐体の下側に接続されていることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記集塵ダクトは、前記筐体を支持する複数の脚部の間を通るように配置され、
前記集塵機のホースに接続される接続口が、上方から見た前記筐体よりも少なくとも一部が突出するように設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記集塵ダクトは、前記筐体を前面から見て左右の何れかの方向に切り換え可能であり、前記集塵機のホースに接続可能な接続口が前記前面から見て前後の両方向に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記ホースが前後の前記接続口のうちの何れか一方の接続口に接続されると共に、他方の接続口が塞ぎ部材により塞がれていることを特徴とする、請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記集塵ダクトは、前記接続口が回動可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項6】
工具により加工するワークを保持する保持装置と、前記主軸と前記保持装置が収容され、工具により加工が行われる加工空間を形成する収容部とを有し、
前記収容部の底面には、前記受け部が接続される集塵口及び前記受け部を取り付ける取付部が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし5の何れか1項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記収容部の底面には、前記収容部の端部から前記集塵口に向けて下方に傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の加工装置。
【請求項8】
前記集塵口は、ホームポジションにある前記保持装置と鉛直方向から見て少なくとも一部が重なる位置に設けられていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の加工装置。
【請求項9】
前記主軸に設けられ、前記保持装置に向けてエアーを吹き出すエアーブロー部と、
前記保持装置を回動させる回動装置と、を備え、
前記エアーブロー部により前記保持装置にエアーを吹き付ける清掃動作時に、前記保持装置を前記回動装置により水平方向に対して傾斜させることを特徴とする、請求項6ないし8の何れか1項に記載の加工装置。
【請求項10】
前記保持装置に隣接して配置され、複数の工具を収容する工具マガジンを備え、
前記清掃動作時に前記保持装置を傾ける方向は、前記工具マガジンと反対側が下となる方向であることを特徴とする、請求項9に記載の加工装置。
【請求項11】
前記主軸と前記保持装置とを相対移動させる移動装置を備え、
前記清掃動作中に、前記エアーブロー部によるエアーの吹き付けが、傾けた前記保持装置の上側から下側に向けて順に行われるように前記移動装置により前記主軸と前記保持装置とを相対移動させることを特徴とする、請求項9又は10に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置において、加工装置の内部に加工空間を備え、加工空間内で加工を行うものが知られている。また、このような加工装置として、加工空間で発生する切粉等の集塵を行うために、加工装置の背面側に集塵機に連接された集塵口を設け、加工装置内の加工領域に集まった切削粉を、集塵機により集塵口から吸引して外部に廃棄する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のように、加工装置の外部に集塵機を配置する構成の場合、加工装置側の集塵ダクトと集塵機側のホースとを接続することで、加工装置からの集塵を行う。特許文献1の構成の場合、集塵口が加工装置の背面側に設けられているため、集塵ダクトも背面側に設けられる。しかしながら、集塵機が加工装置の背面側に設置されるとは限らず、加工装置と集塵機との位置関係によっては、集塵ダクトと集塵機のホースとの接続を行いにくくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の加工装置は、ワークを加工する主軸と、前記主軸を収容する筐体と、前記主軸による加工で生じた切粉を集塵機により集塵すべく、前記集塵機のホースに接続される集塵ダクトと、を備え、前記集塵ダクトは、加工で生じた切粉を受ける受け部と、前記集塵機のホースに接続される接続口と、前記受け部と前記接続口とを連通させるダクト部と、を有し、前記集塵機のホースに接続される接続口の位置を切り換え可能に前記受け部が前記筐体の下側に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加工装置と集塵機との位置関係によらず、集塵ダクトと集塵機のホースとの接続を行い易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る加工装置と集塵機を接続した状態の正面図。
【
図3】実施形態に係る保持装置を傾けた状態を示す、(a)正面図、(b)斜視図。
【
図4】実施形態に係る主軸のエアーブロー部を示す、(a)斜視図、(b)(a)のA-A断面図。
【
図6】実施形態に係るエアーブロー部によるエアーの吹き付けの順序を示す図。
【
図8】(a)実施形態に係る保持装置を傾けた状態を示す断面図、(b)(a)と反対方向に保持装置を傾けた状態を示す断面図。
【
図9】(a)実施形態に係る加工機の収容部に覆われた部分を示す斜視図、(b)(a)と反対側から見た斜視図。
【
図10】実施形態に係る収容部を背面側から見て一部を切断した斜視図。
【
図11】実施形態に係る収容部を底面側から見た収容部と集塵ダクトの分解斜視図。
【
図13】(a)集塵ダクトの別例を示す斜視図、(b)接続側ダクト部を(a)と反対側に回動させた集塵ダクトの別例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態について、
図1ないし
図13(b)を用いて説明する。まず、本実施形態の加工装置1000の全体構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0009】
[加工装置]
図1は、本実施形態に係る加工装置1000に集塵機300を接続した正面図である。加工装置1000は、
図1に示すように、筐体としての外装カバー101内に加工機100(
図2)を収容している。外装カバー101は、後述する加工空間140(
図9(a)など)にアクセス可能な扉としての開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換や手動による工具の交換が可能となっている。開閉ドア102は、加工装置1000の前面に開閉可能に設けられている。また、ワークの加工中には、開閉ドア102を閉めるようにしている。開閉ドア102の開閉は、不図示のセンサにより検知される。
【0010】
また、集塵機300は、加工機100で生じた切粉などを集塵する。このために集塵機300と加工装置1000とは、ホース301と集塵ダクト110を介して接続されている。詳しくは後述するが、ホース301は、集塵機300に接続された可撓性を有するもので、集塵ダクト110との接続側の位置を或る程度自由に移動可能である。一方、集塵ダクト110は、基端側が加工装置1000に設けられた集塵口131(
図8(a)、(b)など参照)に接続されており、先端側がホース301に接続される。集塵口131は、加工装置1000内で工具による加工が行われる加工空間140に開口するように形成されている。加工空間140で生じた切粉は、集塵口131、集塵ダクト110、ホース301を介して集塵機300に集塵される。
【0011】
なお、本実施形態の場合、外装カバー101の下面に、加工装置1000を支持し設置面に設置するための複数の脚部103が設けられている。このため、外装カバー101の下面と設置面との間には隙間が存在する。集塵ダクト110は、後述するように、外装カバー101の下側に設けられるており、外装カバー101の下面と設置面との間の隙間に配設されている。
【0012】
[加工機]
図2に加工装置1000の外装カバー101内に配置される加工機100を示す。なお、
図2では、後述する加工空間140を形成するための収容部130(
図9(a)、(b)など参照)を省略している。加工機100は、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な回転手段としての第1回転機構(回動装置)50及び第2回転機構60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30により、後述する主軸11と保持装置41とを、X、Y、Zの3軸方向に相対移動させる移動手段としての移動装置200を構成する。
【0013】
フレーム1は、内部に空洞を有する架台2上に載置されており、
図2に示すように、第1フレーム部3と、第1フレーム部3の端部から直角に折り曲げられた第2フレーム部4とから構成される。本実施形態では、第1フレーム部3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2フレーム部4は、水平方向に沿って配置されている。
【0014】
第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、工具12が工具ホルダ(クランプ)を介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、モータ14と、Z軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材(不図示)を介して案内軸に移動可能に支持されている。案内軸やZ軸支持部材は、カバー17により覆われている。
【0015】
第2移動機構20は、フレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。
【0016】
第3移動機構30は、フレーム1の第2フレーム部4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ(不図示)と、Y軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。
【0017】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。
図2に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口しており、支持板部31及び支持板部31に支持された第2回転機構がY軸方向に移動しても架台2と干渉することを防いでいる。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0018】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持装置41と、両端部が第1回転機構50の回転部51にそれぞれ連結され、保持装置41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。保持装置41と支持部42は別体であり、詳しくは後述するが、保持装置41が支持部42に対して固定されている。但し、保持装置41と支持部42とを一体としても良い。
【0019】
第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51、52(
図3(b)参照)を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータとを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ及び片側(駆動側)の回転部51を支持する第1支持部53aと、他側(従動側)の回転部52を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0020】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部52は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ両側の回転部に支持されている。これにより、第1回転機構50は、支持機構40を、a軸(X軸)を中心として回転可能に支持する。
【0021】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸を中心として360°回転させることができる。
【0022】
第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構50は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部と、回転部を回転駆動するモータとを有する。回転部は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータに回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸(Y軸)を中心として回転可能に支持する。上述した移動機構、支持機構、回転機構はそれぞれの役割を実行できれば、他の構造で実現してもよい。
【0023】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の工具を格納可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、支持部材に支持され、この支持部材は第3移動機構30の支持板部31に支持されている。このため、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。但し、支持機構40がa軸を中心に回転しても、工具マガジン70は回転せず、支持機構40がb軸を中心に回転しても、工具マガジン70は回転しない。即ち、工具マガジン70は、支持機構40がa軸及びb軸を中心に回転しても所定の姿勢を維持するように、支持板部31に支持されている。工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40など共にY軸方向に移動可能である。
【0024】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける工具を交換可能としている。工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工機100により自動で行っても良い。本実施形態では、自動で工具の交換を行うべく、主軸11による工具の把持と解放を自動で行えるようにしている。
【0025】
工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。言い換えれば、主軸11を工具マガジン70に対してXY平面上で相対移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ(Z軸方向に移動させ)、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい工具12を装着する。なお、工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0026】
なお、本実施形態では、工具格納や取り出しの前後で、主軸11に把持された工具12の先端を検出可能な先端検出手段としての工具長センサ(タッチセンサ)96に工具12の先端を接触させることで、主軸11に工具12が把持されているか否かを確認する動作を行う。このとき、ワークのZ方向の中心(a軸)と工具先端を合わせる。工具長センサ96は、
図2に示すように、工具マガジン70に隣接した位置に設けられている。特に、本実施形態では、従動側の回転部52を支持する第2支持部53bに配置されている。
【0027】
電装ユニット80は、フレーム1の内側に取り付けられている。即ち、電装ユニット80は、第1フレーム部3の第1の面3aの反対側で、第2フレーム部4の第2の面4aの反対側に配置されている。このような電装ユニット80は、加工機100を制御するもので、主軸や各軸のモータの駆動を制御する制御基板や、それぞれ対応するモータのロータリーエンコーダの信号からモータに出力するパルスを演算し、それぞれ対応するモータの回転を適切に制御する複数の制御部を有する。
【0028】
また、本実施形態の加工機100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工機100の制御基板には、加工機100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が接続される。外部端末がNCコードを条件に従って作成し、制御基板に送信するようにしてもよい。なお、加工機100自体に、数値制御が可能なCPUやメモリを搭載したコンピュータが設けられていても良い。
【0029】
例えば、加工機100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データを作成する。そして、この加工データに基づいて、加工機100を制御してワークWを工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0030】
[エアーの吹き出し]
次に、本実施形態の加工装置1000におけるエアーの吹き出しの構成について、
図3(a)及び
図4を用いて説明する。本実施形態では、主軸11に、主軸11の先端に装着された工具に向けてエアーを吹き出すエアーブロー部87(
図4(a)など参照)を設けている。本実施形態では、後述するように、このエアーブロー部87を用いて保持装置41に向けてエアーを吹き付けることにより、保持装置41に付着した切粉を除去するようにしている。言い換えれば、このエアーブロー部87は保持装置41に向けてエアーを吹き出し可能である。
【0031】
また、
図3(a)、(b)に示すように、エアーブロー部87により保持装置41にエアーを吹き付ける清掃動作時に、保持装置41を回動装置としての第2回転機構60により水平方向に対して傾斜させるようにしている。本実施形態では、保持装置41に隣接して配置される工具マガジン70と反対側が下となるように、言い換えれば、工具マガジン70側が高くなるように、保持装置41を傾けるようにしている。傾ける角度は、例えば、水平方向に対して20°である。なお、ここでいう傾斜角度は、保持装置41の表面或いはワークWの表面がXY平面と平行な状態、即ち、水平な状態からY軸を中心に傾斜した角度をいう。なお、装置の構成によっては、水平な状態からX軸を中心に傾斜させるようにしても良い。清掃動作については後述する。
【0032】
エアーブロー部87について、
図4(a)、(b)を用いて説明する。
図4(a)は、主軸11を工具が取り付けられる側(先端側)から見た斜視図である。のエアーブロー部87は、主軸11の先端側で、工具を取り付けるチャック部分11aの周囲に複数(本実施形態では4個所)の送風口(吹き出し口)121を有する。また、主軸11には不図示のコンプレッサに接続されたエアー入口122が設けられており、エアー入口122から圧縮空気を送りこむと、4箇所の送風口121から主軸11の先端に設けられた工具に向かってエアーを吹き付ける。これにより、工具を冷却すると共に工具に付着した切粉を除去する。送風口121が4箇所あることで、工具全体へエアーを当てることができる。勿論、送風口121は4箇所以上あっても構わない。
【0033】
図4(b)はエアーブロー部87の送風口121の断面図である。エアーブロー部87は、エアー入口122に接続された連通口123と、エアーの流れる方向に関して連通口123の下流に形成され、連通口123よりも断面積が小さいノズル124と、ノズル124の先端に形成された送風口121とを有する。これらは主軸11内に形成されている。ノズル124は、エアーの流れる方向に関して下流に向かう程、主軸11に装着された工具側に向けて傾斜している。これにより、エアー入口122から流入したエアーは、連通口123、ノズル124を通って送風口121から吹き出される。ノズル124は、連通口123よりも細いため、送風口121から吹き出されるエアーの流速を高くできる。また、ノズル124が工具に向けて傾斜しているため、送風口121からエアーを工具に向けて吹き出すことができる。なお、送風口121は、ノズル124から先端に向けて断面積が大きくなるように部分円錐状に形成されているため、送風口121の加工が容易である。
【0034】
[加工装置の制御構成]
次に、
図5を用いて加工装置1000の制御構成について説明する。
図5に示すように、電装ユニット80は、演算手段であるCPU85、入出力ポート(I/O)86i、各モータの制御部84x、84y、84z、主軸11の制御部84c、a軸の制御部84a、b軸の制御部84bなどを備える。電装ユニット80の制御基板に設けられたCPU85は、入力されたデータや信号に基づいてメモリ86mを用いて各種の演算を行い、接続されたサーボアンプとしての制御部84x、84y、84z、84a、84b、84cに回転数や位置の指示を送信する。
【0035】
I/O86iは、コンプレッサ350、集塵機300、加工機100の工具長センサ96に接続される。コンプレッサ350は、エアーブロー部87に圧縮空気を供給し、エアーブロー部87から上述のように工具へエアーを吹き付け、除去した切粉を集塵機300で集める。工具長センサ96は、工具の長さを検知してCPU85に信号を送る。
【0036】
各モータの制御部84x、84y、84zは、CPU85からの指令に基づいてX、Y、Zの各モータを駆動する。各モータの制御部84x、84y、84zには、それぞれエンコーダを設けている。エンコーダは、例えば、各モータの制御部84x、84y、84zの回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータの制御部84x、84y、84zの駆動により各ステージx、y、zが移動した量(位置)を検知する。
【0037】
制御部84cは、主軸11を回転させる不図示のモータを制御して、主軸(スピンドル)の回転速度を制御する。また、a、b軸の制御部84a、84bは、CPU85からの指令に基づいてa軸、b軸の各モータを駆動する。
【0038】
制御部84aは、第1回転機構50のモータ54を制御して、支持機構40をa軸を中心に回転させる。制御部84bは、第2回転機構60のモータを制御して、支持機構40をb軸を中心に傾斜させ、支持機構40の姿勢を決定する。また、制御部84xは、第2移動機構20のモータ21を制御して主軸11をX軸方向に移動させ、主軸11のX軸方向の位置を決定する。制御部84yは、第3移動機構30のモータを制御して支持機構40をY軸方向に移動させ、支持機構40のY軸方向の位置を決定する。制御部84zは、第1移動機構10のモータ13を制御して主軸11をZ軸方向に移動させ、主軸11のZ軸方向の位置を決定する。これにより、主軸11と支持機構40のX軸、Y軸、Z軸の相対位置が決定される。このようにCPU85により加工装置1000の各部を制御することにより、上述のように支持機構40の保持装置41に保持されたワークWに所定の加工を施す。
【0039】
[保持装置]
ここで、本実施形態の保持装置41は、
図3(b)に示すように、略C型形状を有する。これは、a軸(X軸)を中心に90°傾けても加工対象物(ワーク)を加工できるようにするためであり、保持装置41は、
図3(a)における手前側が開放されたC型の形状としている。即ち、ワークWを保持する保持装置41は、一対のアーム部41aと、連結部41bとを備える。一対のアーム部41aは、ワークWを両側から挟むように配置されている。連結部41bは、一対のアーム部41aの一端部同士を連結すると共に、一対のアーム部41aと一体に形成されている。一方、一対のアーム部41aの他端側は、連結されておらず、これにより、保持装置41は、略C型形状に形成されている。
【0040】
また、保持装置41は、樹脂製の本体部としての樹脂部410、第1補強板としての板金420、第2補強板としての板金430、保持部材としての保持カバー440を有する。これらを複数のボルト420a、440aなどにより結合することで保持装置41を構成している。具体的には、樹脂部410を1対の板金420、430で挟んだ状態で、1対の板金420、430を樹脂部410にボルトにより固定する。この状態で、ディスク上のワークWを載せ、保持カバー440でワークWを押さえつけて保持カバー440を板金420を介して樹脂部410にボルトにより固定する。このようなボルトは、スパナ等で回転させることで、ワークの固定や取り出しを行う。なお、このようなボルトによる締結以外にも、他の締結方法を用いてもよい。
【0041】
何れにしても、保持装置41の表面には複数の複数のボルト420a、440aなどの締結具が露出しており、工具によりワークWを加工した際の切粉がボルト420a、440a周辺に残り易い。このように切粉が堆積してしまっているとワークの着脱を行う場合にボルトをスパナなどの工具で回転させにくい。そこで、本実施形態では、以下のような清掃動作を実行可能としている。
【0042】
[清掃動作]
本実施形態の保持装置41の清掃動作について、
図3(a)及び
図4を参照しつつ、
図6ないし
図7を用いて説明する。上述の
図3(a)、(b)に示したように、清掃動作時には、第2回転機構60のモータを制御して、支持機構40をb軸中心に水平方向に対して20°回転させる。そして、支持機構40の姿勢が傾斜した状態でエアーを吹き付けながら主軸11を移動させる。
【0043】
清掃動作におけるエアーの吹き出しは、固定具である複数のボルト420a、440aの上方を主軸11がその順番に通るように移動させて行う。なお、エアーが各ボルトにあたるように移動させれば、必ずしも各ボルトの上方を通らずともよい。具体的には、
図6に示す矢印の順番でエアーを吹き付ける。ここで、
図6の右側が高くなるように支持機構40の保持装置41が水平方向に対して傾斜している。また、
図6では、P1、P4、P5、P8の位置にあるボルトが、ワークWを押さえつけて保持するための保持カバー440を板金420を介して樹脂部410に固定するためのボルト440aである。また、P2、P3、P6、P7の位置にあるボルトが、板金420を樹脂部410に固定するためのボルト420aである。
【0044】
主軸11は、エアーブロー部87から吹き付けるエアーの位置が、まず、位置P1と位置P2の間、位置P3、位置P4、位置P5、位置P6、位置P7と位置P8の間の順となるように保持装置41と相対移動する。主軸11と保持装置41の相対移動は、移動装置としての上述の第1移動機構10、第2移動機構20、第3移動機構30により行われる。なお、清掃動作中に主軸11をZ軸方向に移動させない場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により主軸11と保持装置41を相対移動させればよい。
【0045】
上述のように保持装置41は
図6の右側が高くなるように傾斜しているため、
図6の右側の位置P1~P4は、左側の位置P5~P8よりも高い。したがって、主軸11と保持装置41は、清掃動作中に、エアーブロー部87によるエアーの吹き付けが、傾けた保持装置41の上側から下側に向けて順に行われるように相対移動する。このような順番でエアーを吹き付けることで、保持装置41の表面に付着した切粉に対して斜め上方から下方に向けてエアーを吹き付けることになるため、効率よく切粉の除去を行える。特に、ボルト420a、440aは保持装置41の表面から突出した部分であり、切粉が落ちにくいが、上述のように保持装置41を水平方向に対して傾斜させ、上側から下側に順番にエアーを吹き付けることで、落ちにくい切粉も効率的に除去できる。
【0046】
但し、エアーを吹き付ける順番はこれに限らない。例えば、上述の例では、位置P1と位置P2の距離、位置P7と位置P8との距離がそれぞれ近いため、これらの間に向けてエアーを吹き付けることで、両方の位置の切粉を除去できるが、距離が遠い場合には、それぞれの位置に向けてエアーを吹き付けても良い。また、位置P3~P6に関しても、隣接するボルトの位置が近ければ、近いボルト同士の間にエアーを吹き付けるようにしても良い。
【0047】
また、エアーを吹き付ける順番として、まず、保持装置41の連結部41bと反対側の開口側を傾斜した保持装置41の下側から上側に向けて行い。次いで、連結部41bの上側から下側に向けて行うようにしても良い。例えば、位置P7、P8,P1、P2、P3、P4、P5、P6の順となる。このように、C型の保持装置41の開口側、即ち、連結部がない部分のところで下側から上側にエアーを吹き付けた場合、保持装置41の開口を通じて切粉が落ち易いため、下側から順にエアーを吹き付けても、切粉を効率的に除去できる。そして、連結部41b側では上側から下側に向けてエアーを吹き付けることで、傾斜に沿って切粉が落ち易く、効率的に切粉の除去を行える。このような順番の場合も、上述の
図6に示した順番の場合も、主軸11を保持装置41の表面に対して常にエアーを当てつつ略円を描くように移動させることができるため、効率よく清掃作業を行える。
【0048】
このような清掃動作の流れの一例について、
図7のフローチャートを用いて説明する。本実施形態における清掃動作(清掃モード)は、CPU85がメモリ86m等の記憶手段にプログラムを展開して実行する。加工中に清掃モードを実行した場合、まず、現在の座標位置を戻り座標位置としてメモリ86mに記憶する(S1)。即ち、加工中に清掃モードを実行するため、清掃モード終了後に元の加工位置へ戻るために位置を保存しておく。
【0049】
次に、主軸11をZ軸方向に上昇させ、保持装置41から退避させる(S2)。この際、主軸11の回転を停止させる(S3)。次いで、主軸11に把持された工具を工具マガジン70に格納する(S4)。工具を格納後、再度、主軸11を上昇させる(S5)。次に、第2回転機構60を駆動して、保持装置41をb軸(Y軸)を中心として回動させ、水平方向に対して傾斜させる(S6)。角度は、上述のように例えば水平方向に対して20°であるが他の角度であってもよい。
【0050】
この状態で、主軸11と保持装置41をX軸方向及びY軸方向に相対移動させ、
図6に示した位置P1と位置P2の中点へ移動させる(S7)。上述のように位置P1と位置P2の距離が近く、同時にエアーを突き付けることができるため、ここでは中点位置としている。次に、主軸11をZ軸方向に下降させる(S8)。この位置がエアーを突き付ける前の待機位置となる。
【0051】
そして、エアーブロー部87によるエアーの吹き付けを開始する(S9)。この時、エアーの流量を最大にし、エアーブロー部87のノズル124を用いてエアーを吹き付けることで、強いエアーブローを発生させ、切粉を飛ばしやすくする。次いで、エアーを吹き付けながら主軸11を位置P3に移動させ、所定時間、その位置に留まる(S10)。その後、
図6に矢印で示した順序で、エアーを吹き付けながら主軸11を移動させ、所定時間、その位置に留まる動作を行う。即ち、位置P4(S11)、位置P5(S12)、位置P6(S13)、位置P7と位置P8の中点位置(S14)に順次、主軸11を移動させ、それぞれの位置で所定時間停止し、次の位置に移動する。
【0052】
S10からS14については、XY方向の移動だけでなく、エアーブロー部87の送風口121(ノズル先端)と保持装置41との距離を一定に保つように、保持装置41の傾斜角度にならってZ方向の移動も行う。つまり、保持装置41を傾け、
図3(a)の左下がりの状態にした場合は、左側の位置になるにつれて保持装置41の傾斜角度に沿ってノズル先端位置を徐々に下側に下げていく。
【0053】
位置P7と位置P8の中点位置までエアーブローが終了したら、エアーブロー部87によるエアーの吹き付けを停止する(S15)。そして、主軸11をZ軸方向に上昇させ、保持装置41から退避させる(S16)。その後、保持装置41を水平方向に戻す(S17)。このように主軸11を上昇させ、保持装置41を水平に戻すのは、主軸11と他の部材との干渉を防ぐためである。
【0054】
次に、S4で工具マガジン70に格納した工具を取り出す(S18)。即ち、使用していた工具を再度、主軸11でチャックする。次いで、主軸11を回転させ(S19)、S1で記憶した戻り位置に主軸11と保持装置41を相対移動させる(S20)。そして、中断していた加工動作を再開する。保持装置41の表面に露出するボルト位置に対して効率よくエアーを吹き付けることができ、当該部分に堆積する切粉を減少させ、加工完了後のユーザによる掃除の手間を減らすことができる。
【0055】
ここで、本実施形態では、清掃モードにおいて保持装置41を傾斜させる方向は、工具マガジン70と反対側が下となる方向である。これは、工具マガジン70と反対側に切粉が飛ぶようにするためである。例えば、加工室内の中央に保持装置41があり、右側に工具マガジン70がある場合、保持装置41を傾け左下がりの状態にすれば、保持装置41に対しエアーを突き付けると、切粉は左側に飛んで行くので、工具マガジン70上に切粉が堆積することを抑制できる。
【0056】
また、このように保持装置41を工具マガジン70と反対側が下となるように、言い換えれば、工具マガジン70側が上となるように傾斜させれば、第1回転機構50の第2支持部53bが保持装置41と工具マガジン70との間の遮蔽物となり、工具マガジン70に切粉が飛びにくくできる。清掃モードにおける保持装置41の傾斜方向は、第2支持部53bのように支持機構や回転機構の少なくとも一部が工具マガジンに対して遮蔽物となる方向が好ましく、傾斜角度は、水平方向に対して5°以上45°以下とすることが好ましい。特に、工具マガジン70に載置された工具の主軸11に把持される部分が、水平方向(X方向)から見て遮蔽物により隠れるように傾けることが好ましい。
【0057】
なお、上述した実施形態では、保持装置41をb軸周りで回転させて傾けた状態で清掃モードを行ったが、他の回転軸に対して回転させて傾けた状態で掃除動作を行ってもよい。また工具マガジンが加工室内にない場合には、上述と同様に保持装置41を傾斜させて清掃モードを行っても良いし、他の方向や他の回転軸に対して保持装置41を傾斜させて清掃モードを行っても良い。また、清掃モードの実行時に保持装置41を水平方向に対して傾斜させることで、例えばユーザが仕上げに刷毛などで保持装置41に付着した切粉を落とし易い。
【0058】
また、上述した清掃モードにおいて、工具マガジン70に収納された工具に向けてエアーを吹き付けた後に、保持装置41の複数のボルト420a、440aに対してもエアーを吹き付けるようにしても良いし、複数のボルト420a、440aへのエアーの吹き付け後に工具マガジン70に格納された工具に向けてエアーを吹き付けるようにしても良い。何れにしても、複数のボルト420a、440aに対してもエアーを吹き付けるようにすると、複数のボルト420a、440aの着脱操作を行う際に切粉が挟まりにくくすることができる。また、清掃モードでは、保持装置41を回転させて傾けた状態で複数のボルト420a、440aの少なくともいずれか一つに対してエアーの吹き付けを行うようにしても良い。即ち、複数のボルト420a、440aに切粉が挟まりにくくできれば、どのようなタイミングで清掃モードを行ってもよい。
【0059】
例えば、上述の清掃モードを実行するタイミングは、ユーザによる任意のタイミングでも良いし、加工終了時などの予め決められた所定のタイミングであっても良い。ワークの材料が樹脂の場合は、特に清掃モードを実行することが好ましい。これは、樹脂の場合、静電気でまとまり易く、その後に除去しにくくなるためである。例えば、1つのワークの加工中に清掃モードを複数回実行するようにしても良い。また、1つのワークの加工に対して複数回の加工モードが存在する場合、その加工モード毎、或いは、1つの加工モードで複数回、清掃モードを実行するようにしても良い。なお、従来は、このために除電器を設けた構成もあるが、本実施形態のような清掃モードを実行すれば、このような除電器を省略できる。
【0060】
一方、ワークがジルコニアなどの樹脂以外の材料の場合、樹脂の場合よりも清掃モードの頻度を低くしても良い。これは、清掃モードではある程度時間がかかってしまうため、頻繁に清掃モードを実行すると生産性が低下してしまうためである。したがって、ワークの材料が樹脂以外の場合には、例えば、加工終了時のみに清掃モードを実行するなど、清掃モードを実行する頻度を少なくすることが好ましい。なお、ワークの種類によって、清掃モードを実行する頻度を選択できるようにしても良い。
【0061】
上述のように任意のタイミングや所定のタイミングで清掃モードを実行することで、保持装置41に切粉が堆積しすぎることを抑制できる。また、保持装置41を傾斜させてエアーの吹き付けを行うことで、それぞれの一回の清掃モードで効率よく切粉の除去を行える。
【0062】
このように本実施形態では、ボルトなどの締結具によってワークの固定などを行い、且つ、ワークを保持する保持装置41を回転させて加工を行う加工装置において、保持装置41を傾けた状態で締結具に対して清掃モードを実行することで、簡易な方法で効率よく切粉の除去を行える。そして、ワークの着脱を行う前に堆積した切粉の量を低減し易い。このような清掃モードは、加工システムの制御方法、プログラムとして、上述のような構成を有する既存の加工装置に組み込むようにしても良い。
【0063】
[切粉の集塵]
次に、上述のように清掃モードで吹き飛ばされた切粉や加工中に生じた切粉を集塵するための構成について、
図1を参照しつつ
図8(a)ないし
図13(b)を用いて説明する。上述の
図1に示したように、本実施形態の加工装置1000は、集塵機300に接続されている。加工装置1000と集塵機300とは、ホース301と集塵ダクト110を介して接続されている。集塵機300は、少なくとも加工動作中に駆動され、加工動作中に生じた切粉を集塵する。なお、上述の清掃モードの実行時にも駆動する。但し、集塵機300の動作が加工装置1000の動作と連動せず、別途、操作者の操作により駆動される場合には、操作者が適宜、集塵機300を動作させる場合もある。
【0064】
また、加工装置1000は、加工機100と、加工機100を収容する外装カバー101とを有し、加工機100は、
図8(a)ないし
図9(b)に示すように、主軸11や保持装置41、工具マガジン70などが内部に収容され、工具により加工が行われる加工空間140を形成する収容部130を有する。本実施形態では、収容部130の底面132に集塵ダクト110が接続される集塵口131が設けられている。即ち、本実施形態では、集塵口131を装置の背面側ではなく、鉛直方向の底面132に設けている。集塵口131は、板金に複数の穴をあけた構成としているが、メッシュ状としても良い。これにより、仮に工具やボルトなどが底面132に落下しても集塵口131内に入り込むことを防止できる。
【0065】
また、集塵口131は、ホームポジションにある保持装置41と鉛直方向から見て少なくとも一部が重なる位置に設けられている。保持装置41のホームポジションとは、XY方向に関して保持装置41が加工開始時に位置する位置であり、加工終了時や中断時に戻る原点となる位置である。本実施形態では、収容部130を鉛直方向から見た場合に、X軸方向に関して略中央、Y軸方向に関しては中央よりも前面側の位置をホームポジションとしている。
図8(a)、(b)は、保持装置41がXY方向に関してホームポジションに位置している状態であり、集塵口131は、ホームポジションにある保持装置41のほぼ真下に形成されている。
【0066】
なお、集塵口131の位置は、保持装置41の下方にあれば真下でなくても良く、前後左右の何れかにずれていても良い。但し、保持装置41により保持されたワークの加工により生じる切粉など効率よく集めるために、集塵口131は、ホームポジションにある保持装置41と鉛直方向から見て少なくとも一部が重なる位置に設けることが好ましい。
【0067】
また、本実施形態では、集塵口131が形成されている収容部130の底面132には、収容部130の端部から集塵口131に向けて下方に傾斜する傾斜面133、134が設けられている。まず、
図8(a)、(b)に示すように、傾斜面133は、工具マガジン70の下方に、収容部130の右側壁130aから集塵口131に向けて下方に傾斜するように設けられている。
【0068】
図8(a)は、保持装置41の工具マガジン70側が高くなるように最大に傾けた場合を示した図である。
図8(b)は、保持装置41の工具マガジン70側が低くなるように最大に傾けた場合を示した図である。傾斜面133は、何れの状態でも保持装置41と干渉しないように形成されている。加工空間140内に位置する工具マガジン70の下部には、まとまって切粉が堆積する可能性があるため、傾斜面133が工具マガジン70の下方に設けられている。収容部130の左右方向(X軸方向)に関して片方にだけ傾斜面133を設けることで、加工空間140を有効利用することができ、装置の小型化とともに、切粉を集塵口131に向けて移動させ易くなる。
【0069】
また、本実施形態では、
図10に示すように、収容部130の前面側にも傾斜面134を設けている。
図10は、収容部130を背面側から見て、円Bが含まれる円柱を挿入して切断した斜視図である。したがって、
図10の左手前側が背面側で、右後側が前面側である。傾斜面134は、収容部130の前側壁130bから集塵口131に向けて下方に傾斜するように設けられている。
【0070】
なお、前側壁130bには、外装カバー101の開閉ドア102(
図1参照)を開けた場合に、加工空間140にアクセス可能な開口部141が形成されており、傾斜面134は、開口部141の下方に設けられている。傾斜面134も、
図8(a)、(b)の何れの状態の保持装置41と干渉しないように形成されている。また、収容部130の前後方向(Y軸方向)に関して片方にだけ傾斜面134を設けることで、加工空間140を有効利用することができ、装置の小型化とともに、切粉を集塵口131に向けて移動させ易くなる。
【0071】
次に、集塵口131に接続される集塵ダクト110について説明する。集塵ダクト110は、集塵機300のホース301に接続される接続口111の位置を、筐体としての外装カバー101を前面から見て左右の何れかの方向に切り換え可能に設けられている。具体的には、
図1に示すように、集塵ダクト110は、外装カバー101の下側から外装カバー101を前面から見て左右の何れかの方向に、且つ、少なくとも集塵機300のホース301に接続される接続口111が、上方から見た外装カバー101よりも突出するように設けられている。即ち、
図1に示したように、複数の脚部103により形成された外装カバー101の下面と設置面とのに隙間に、集塵ダクト110が配設されている。集塵ダクト110は、
図9(a)、(b)に示すように、外装カバー101から突出する方向を変えて収容部130に装着可能である。また、
図12に示すように、集塵ダクト110の接続口111を含む先端側が、上方から見た外装カバー101よりも突出するように、集塵ダクト110が収容部130に設けられている。
【0072】
本実施形態の場合、
図11に示すように、集塵ダクト110は、収容部130の下面に複数のねじ142により固定される。集塵ダクト110の基端部は、集塵口131全体を覆うように上方が開口した覆い部112の周囲にフランジ113が設けられており、フランジ113と収容部130の下面とを複数のねじ142により締結することで、集塵ダクト110が収容部130の下面に固定される。即ち、受け部としての覆い部112が収容部130の底面132に接続されている。覆い部112及びフランジ113は、前後方向中央部を通り左右方向に平行な仮想線に対して対称となるように形成されており、取り付け方向を左右逆にしても、覆い部112により集塵口131を覆え、フランジ113(取付部)のねじ穴と収容部130の下面に設けられたねじ用の穴との位置が一致するようになっている。
【0073】
また、ダクト部114の長さを可変とする機構としてもよく、前側や後側に突出するように取り付け、ホースの接続を行い易い位置に接続口111の位置を調整することもできる。即ち、加工装置1000を前面から見て、接続口111の外装カバー101から突出する位置を左右だけではなく前後にも切り替え可能となっている。フランジ113のねじによる締結部の配置が正方形となっており、90°ずつ回転しても取り付けることができる。前側、後側に向かってダクトが伸びるように取り付ける場合は、ダクト部114の長さを可変とする機構として、位置を調整すればよい。また、接続口111の外装カバー101から突出する位置を、外装カバー101周りの任意の位置としても良い。この場合、フランジ113の形状を、例えば円形とし、ねじによる締結部の位置を覆い部112の集塵口131側の開口中心に対して点対称とすることで、接続口111の突出方向を、集塵口131の中心周りに任意の位置に設定可能としても良い。
【0074】
図9(a)は、集塵ダクト110を前面から見て左側に突出するように配設した図であり、
図9(b)は、集塵ダクト110を前面から見て右側に突出するように配設した図である。何れの場合も、集塵ダクト110の先端側に設けられた接続口111が外装カバー101よりも突出するように集塵ダクト110が収容部130に固定されている。なお、集塵ダクト110は、上述のような固定方式に拘わらず、例えば、収容部130に対してZ軸方向を中心に回動可能に固定されていても良い。この場合、例えば、集塵ダクト110を回動する方向の脚部103を取り外した状態で集塵ダクト110を回動させる。
【0075】
また、収容部130は、
図9(a)、(b)に示すように、主軸11が第2移動機構20(
図2)によりX軸方向に移動可能となるように、上方が開口しており、この開口と主軸11の隙間を塞ぐようにロールカーテン135a、135bが設けられている。ロールカーテン135a、135bは、主軸11のX軸方向(長手方向)両側に配置され、主軸11のX軸方向の移動と連動する。具体的には、ロールカーテン135a、135bの主軸11側の端部は主軸11に接続されており、反対側の端部はロールカーテン135a、135bの巻き取り及び引き出しが可能な巻き取り部136a、136bに接続されている。更に、ロールカーテン135a、135bのY軸方向(幅方向)の両端部で主軸11と干渉しない位置には、ロールカーテン135a、135bの浮きを防止するための、例えば、金属板により構成された押さえ部137a、137bが設けられている。
【0076】
このようなロールカーテン135a、135bは、主軸11がX軸方向の一方に移動すると、一方側のロールカーテンが巻き取り部に巻き取られると共に、他方側のロールカーテンが巻き取り部から引き出される。この際、幅方向両端部が押さえ部137a、137bにより抑えられているため、この動作により、ロールカーテン135a、135bと収容部130の開口との間に隙間が生じることを抑制できる。このように主軸11の移動個所にロールカーテン135a、135bを設けることで、加工により生じた切粉が収容部130の主軸11側から外部に飛散することを抑制できる。
【0077】
なお、ロールカーテン135a、135bの材質としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)などの樹脂を用いている。また、ロールカーテン135a、135bは、帯電防止材料を含んだ透明なフィルムとしている。ロールカーテン135a、135bが透明であると、加工室内を上方から見ることができ、加工状態を把握し易い。
【0078】
集塵ダクト110は、基端側の覆い部112と、先端側に設けられた接続口111と、接続口111と覆い部112とを連通させるダクト部114とを有する。
図11に示すように、覆い部112は、上方が開口した矩形状を有しており、ダクト部114は、覆い部112の側面に覆い部112内の空間と連通するように設けられている。ダクト部114は、覆い部112の前後方向の幅よりも狭く、且つ、高さ方向の幅も狭い、直方体状に形成されている。接続口111は、ダクト部114の先端部の前後の両方向に設けられており、それぞれ前側と後側に開口している。即ち、本実施形態では、集塵ダクト110に向きが異なる2つの接続口111が設けられている。
【0079】
集塵機300のホース301を接続する場合、ホース301が前後の接続口111のうちの何れか一方の接続口111に接続されると共に、他方の接続口111がゴム栓などの塞ぎ部材115により塞がれる。例えば、
図9(a)、(b)、
図11では、後側の接続口111が塞ぎ部材115により塞がれており、前側の接続口111にホース310が接続される。前後の接続口111は、同じ形状を有し、共通の塞ぎ部材115により塞ぐことが可能であり、共通のホース301を接続可能である。したがって、後側の接続口111にホース301を接続する場合には、前側の接続口111を塞ぎ部材115により塞ぐ。
【0080】
なお、接続口111は、2つ以上の複数としても良い。例えば、前後に加えて、左右方向の先端面にも集塵ダクト110の突出方向(左方向又は右方向)に開口するように接続口111を設けても良い。
【0081】
図9(a)、(b)は、収容部130の下面に集塵ダクト110が接続された断面図である。集塵ダクト110は、覆い部112が上方に形成された開口により集塵口131の全体を覆うようにフランジ113を介して収容部130の下面に固定されている。ダクト部114は、上面がフランジ113よりも下方にシフトするように略水平方向に配設されている。これにより、フランジ113を収容部130の下面に固定する際に、ダクト部114の上面が収容部130の下面と干渉することを防止している。なお、ダクト部114の下面は、覆い部112の下面と略同一の高さとしている。接続口111は、ダクト部114の先端部に設けられており、その下端がダクト部114の下面よりも上方に位置するように設けられている。これにより、ホース301を接続した場合にホース301が設置面と干渉するなどして接続口111に無理な力がかからないようにしている。このように本実施形態では、集塵ダクト110を収容部130の下面に設ける上で、覆い部112、ダクト部114、接続口111の上下の位置関係を適切に規制している。
【0082】
上述のような本実施形態によれば、加工装置1000と集塵機300との位置関係によらず、集塵ダクト110と集塵機300のホース301との接続を行い易くできる。即ち、本実施形態では、集塵口131に接続される集塵ダクト110を収容部130の下面に設け、集塵ダクト110の接続口111を含む先端部が外装カバー101よりも外部に突出するようにしている。このとき、接続口111の全部が外部に突出するようにしているが、接続口111の少なくとも一部が外部に突出するようにすることによって、ホース301と接続口111を接続し易くすることができる。また、集塵ダクト110は、左右の何れかに突出するように選択的に収容部130の下面に固定可能である。このため、加工装置1000の左右何れにも集塵機300のホース301を選択的に接続可能であり、加工装置1000と集塵機300との位置関係によらず、集塵ダクト110と集塵機300のホース301との接続を行い易くできる。また、覆い部112が、収容部130の下面に固定され、二つの脚部103の間をダクト部114が通るように配置しているため、集塵ダクト110の方向を切り換え易い。
【0083】
特に、本実施形態の場合、接続口111が前後の両方向に設けられているため、集塵機300のホース301は、前後左右の4方向の位置に選択的に接続可能となる。このため、集塵機300の設置個所やホース301の接続箇所の自由度が高くなり、加工装置1000と集塵機300との位置関係によらず、集塵ダクト110と集塵機300のホース301との接続をより行い易くできる。
【0084】
また、前側の接続口111にホース301を接続した場合、加工装置1000の操作者がこのホース301を接続口111から取り外し、前側の開閉ドア102を開けてホース301を加工空間140内に入れることで、このホース301を用いて加工空間140内の清掃をし易くできる。
【0085】
[集塵ダクトの別例]
なお、上述の実施形態では、接続口111を複数有する集塵ダクト110について説明したが、
図13(a)、(b)に示すように、接続口111を回動可能としても良い。例えば、接続口111を1つとして、接続口111を回動させることで接続口111が開口している向きを変えられるようにしても良い。即ち、
図13(a)、(b)に示す集塵ダクト110Aは、加工機100の収容部130に固定される加工機側ダクト部116と、接続口111を有し、接続口111の向きを変えられるように加工機側ダクト部116に対して回動可能に接続された接続側ダクト部117とを有する。加工機側ダクト部116は、上述の覆い部112とダクト部114に対応する部分であり、ダクト部114を短くすると共に接続口111をなくした構成である。また、加工機側ダクト部116の先端には、接続側ダクト部117を回転可能に接続する円筒部116aが設けられている。
【0086】
接続側ダクト部117は、円筒部116aに着脱可能に固定される第1円筒部117aと、第1円筒部117aから略直角に折り曲げられるように形成され、接続口111を有する第2円筒部117bとを有する。接続側ダクト部117は、例えば、接続口111の向きを前後何れかの向きにした状態で、第1円筒部117aを円筒部116aに固定すれば、接続口111の向きを前後2方向に選択可能である。また、接続口111の向きを前後に拘わらず上方向などにすることも可能であり、ホース301の接続の自由度を高めることができる。集塵ダクト110Aが外装カバー101よりも左右何れの方向にも突出するように選択的に収容部130の下面に固定できる点など、他の構成に関しては上述の集塵ダクト110と同様である。
【0087】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、加工機100を収容する筐体を外装カバー101としたが、加工空間を形成する収容部を外装カバーが兼ねていても良い。
【符号の説明】
【0088】
11・・・主軸
20・・・第2移動機構(移動装置)
30・・・第3移動機構(移動装置)
41・・・保持装置
60・・・第2回転機構(回動装置)
70・・・工具マガジン
87・・・エアーブロー部
100・・・加工機
101・・・外装カバー(筐体)
102・・・開閉ドア(扉)
110、110A・・・集塵ダクト
111・・・接続口
112・・・覆い部(受け部)
113・・・フランジ(取付部)
114・・・ダクト部
115・・・塞ぎ部材
116・・・加工機側ダクト部
117・・・接続側ダクト部
130・・・収容部
131・・・集塵口
132・・・底面
133、134・・・傾斜面
140・・・加工空間
300・・・集塵機
301・・・ホース
1000・・・加工装置
W・・・ワーク