IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特開-座席付き育児器具 図1
  • 特開-座席付き育児器具 図2
  • 特開-座席付き育児器具 図3
  • 特開-座席付き育児器具 図4
  • 特開-座席付き育児器具 図5
  • 特開-座席付き育児器具 図6
  • 特開-座席付き育児器具 図7
  • 特開-座席付き育児器具 図8
  • 特開-座席付き育児器具 図9
  • 特開-座席付き育児器具 図10
  • 特開-座席付き育児器具 図11
  • 特開-座席付き育児器具 図12
  • 特開-座席付き育児器具 図13
  • 特開-座席付き育児器具 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173050
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】座席付き育児器具
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/12 20060101AFI20221110BHJP
   B65H 75/48 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B62B9/12 A
B65H75/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210237
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2021079144
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】本多 智行
【テーマコード(参考)】
3D051
3F068
【Fターム(参考)】
3D051AA02
3D051AA23
3D051BA03
3D051CA05
3D051CA06
3D051CA12
3D051CB03
3D051CG04
3D051DD04
3D051DD13
3F068AA14
3F068BA00
3F068CA00
3F068DA03
3F068FA01
3F068FA07
3F068FB01
3F068GA03
3F068GA13
3F068GA14
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で背もたれ部の傾斜角度を変更することが可能な座席付き育児器具を提供すること。
【解決手段】調節機構(3)は、背もたれ部の裏面に取り付けられるホルダ(30)と、ホルダ(30)内に収容され、ホルダ(30)に正逆両方向に回転自在に支持されるリール(80)と、本体と背もたれ部とを連結し、リール(80)の巻き取りおよび送り出しによって背もたれ部の傾斜角度を変化させる紐(4)と、ホルダ(80)内に収容され、リール(80)の回転を禁止するロック部材(70)とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部を含む本体と、
前記座面部の後端から上方に立ち上がり、前記座面部に対する傾斜角度が変更可能な背もたれ部と、
前記背もたれ部の傾斜角度を変更するための調節機構とを備えた座席付き育児器具であって、
前記調節機構は、
前記背もたれ部の裏面に取り付けられるホルダと、
前記ホルダ内に収容され、前記ホルダに正逆両方向に回転自在に支持されるリールと、
前記本体と前記背もたれ部とを連結し、前記リールの巻き取りおよび送り出しによって前記背もたれ部の傾斜角度を変化させる紐と、
前記ホルダ内に収容され、前記リールの回転を禁止するロック部材とを含む、座席付き育児器具。
【請求項2】
前記調節機構は、前記リールを前記紐の巻取り方向に回転するように付勢する付勢部材をさらに含む、請求項1に記載の座席付き育児器具。
【請求項3】
前記付勢部材の付勢力は、前記背もたれ部が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように選ばれている、請求項2に記載の座席付き育児器具。
【請求項4】
前記調節機構は、前記紐の巻取り方向への前記リールの回転を許容し、前記紐の送り出し方向への前記リールの回転を禁止するワンウェイクラッチ機構をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記リールとともに回転する部分に係合して前記リールの回転を禁止する第1位置と、前記リールとともに回転する部分から離れて前記リールの回転を許容する第2位置との間を変位可能な係合爪を有する、請求項1~4のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【請求項6】
前記調節機構は、前記ロック部材を前記第2位置にもたらし、前記リールの自由回転を可能とするロック解除部材をさらに含む、請求項5に記載の座席付き育児器具。
【請求項7】
前記ロック解除部材は、前記ホルダの幅方向側面から突出するように設けられる、請求項6に記載の座席付き育児器具。
【請求項8】
前記付勢部材は、ゼンマイバネであり、
前記ゼンマイバネの一端は前記リールに固定されており、その他端は前記ホルダに固定されている、請求項1~7のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【請求項9】
前記リールおよび前記ロック部材は、前記ホルダと前記ロック解除部材との間に位置し、
前記リールの回転軸線は、前記背もたれ部の裏面に対して直行しており、
前記ロック部材は、前記リールの径方向に沿って前記第1位置と前記第2位置との間を変位可能に設けられており、
前記ロック解除部材は、前記背もたれ部の裏面に対して平行な関係で変位可能に設けられている、請求項6に記載の座席付き育児器具。
【請求項10】
前記ホルダは、前記背もたれ部の裏面に沿って延在する内板部を有し、
前記ロック解除部材は、前記内板部に対して平行な関係で延在する外板部を有し、
前記リールおよび前記ロック部材は、前記内板部と前記外板部との間に位置している、請求項6に記載の座席付き育児器具。
【請求項11】
前記ロック部材は、前記リールの厚みの範囲内で変位可能に設けられている、請求項9または10に記載の座席付き育児器具。
【請求項12】
前記ホルダは、前記背もたれ部の裏面に沿って延びる上下方向に長い扁平形状であり、前記紐を通すための貫通孔を有し、
前記貫通孔は、上下方向に長い前記ホルダの下方位置に設けられ、
前記ロック解除部材は、前記背もたれ部の裏面に沿って延びる上下方向に長い形状であり、前記ロック解除部材の上方位置に設けられる操作部を有する、請求項9~11のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座席付き育児器具に関し、特に座面部を含む本体と、座面部の後端から上方に立ち上がり、座面部に対する傾斜角度が変更可能な背もたれ部と、背もたれ部の傾斜角度を変更するための調節機構とを備えた座席付き育児器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、座席付き育児器具としての乳母車は、背もたれ部の傾斜角度が座面部に対して変更可能に設けられている。
【0003】
たとえば、実開平7-4248号公報(特許文献1)には、手押し棒にベルトを連結し、背もたれ部の背面に取り付けたバックルでベルトの長さを調節することで、リクライニング角度を変更することが可能な乳母車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-4248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乳母車は、背もたれ部の傾斜角度を変更する際に両手が必要であり、構造が複雑であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構造で背もたれ部の傾斜角度を変更することが可能な座席付き育児器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明の一態様に係る座席付き育児器具は、座面部を含む本体と、座面部の後端から上方に立ち上がり、座面部に対する傾斜角度が変更可能な背もたれ部と、背もたれ部の傾斜角度を変更するための調節機構とを備えた座席付き育児器具であって、調節機構は、背もたれ部の裏面に取り付けられるホルダと、ホルダ内に収容され、ホルダに正逆両方向に回転自在に支持されるリールと、本体と背もたれ部とを連結し、リールの巻き取りおよび送り出しによって背もたれ部の傾斜角度を変化させる紐と、ホルダ内に収容され、リールの回転を禁止するロック部材とを含む。
【0008】
好ましくは、調節機構は、リールを紐の巻取り方向に回転するように付勢する付勢部材をさらに含む。
【0009】
好ましくは、付勢部材の付勢力は、背もたれ部が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように選ばれている。
【0010】
好ましくは、調節機構は、紐の巻取り方向へのリールの回転を許容し、紐の送り出し方向へのリールの回転を禁止するワンウェイクラッチ機構をさらに含む。
【0011】
好ましくは、ロック部材は、リールとともに回転する部分に係合してリールの回転を禁止する第1位置と、リールとともに回転する部分から離れてリールの回転を許容する第2位置との間を変位可能な係合爪を有する。
【0012】
好ましくは、調節機構は、ロック部材を第2位置にもたらし、リールの自由回転を可能とするロック解除部材をさらに含む。
【0013】
好ましくは、ロック解除部材は、ホルダの幅方向側面から突出するように設けられる。
【0014】
好ましくは、付勢部材は、ゼンマイバネであり、ゼンマイバネの一端はリールに固定されており、その他端はホルダに固定されている。
【0015】
好ましくは、リールおよびロック部材は、ホルダとロック解除部材との間に位置し、リールの回転軸線は、背もたれ部の裏面に対して直行しており、ロック部材は、リールの径方向に沿って第1位置と第2位置との間を変位可能に設けられており、ロック解除部材は、背もたれ部の裏面に対して平行な関係で変位可能に設けられている。
【0016】
好ましくは、ホルダは、背もたれ部の裏面に沿って延在する内板部を有し、ロック解除部材は、内板部に対して平行な関係で延在する外板部を有し、リールおよびロック部材は、内板部と外板部との間に位置している。
【0017】
好ましくは、ロック部材は、リールの厚みの範囲内で変位可能に設けられている。
【0018】
好ましくは、ホルダは、背もたれ部の裏面に沿って延びる上下方向に長い扁平形状であり、貫通孔は、上下方向に長いホルダの下方位置に設けられ、紐を通すための貫通孔を有し、ロック解除部材は、背もたれ部の裏面に沿って延びる上下方向に長い形状であり、ロック解除部材の上方位置に設けられる操作部を有する。
【0019】
本発明の他の一態様に係る座席付き育児器具は、座面部を含む本体と、座面部の後端から上方に立ち上がり、座面部に対する傾斜角度が変更可能な背もたれ部と、背もたれ部の傾斜角度を変更するための調節機構とを備えた座席付き育児器具であって、調節機構は、本体と背もたれ部とを連結する紐と、正逆両方向に回転自在であり、紐の巻き取りおよび送り出しによって、背もたれ部の傾斜角度を変化させるリールと、リールを紐の巻取り方向に回転するように付勢する付勢部材と、リールの回転を禁止するロック部材とを含み、付勢部材の付勢力は、背もたれ部が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように選ばれている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構造で背もたれ部の傾斜角度を変更することが可能な座席付き育児器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る乳母車の骨組みを示す側面図であり、(A)は背もたれ部を立ち上げた状態であり、(B)は背もたれ部を傾斜させた状態である。
図2】本発明の実施の形態に係る他の乳母車を後方から示した斜視図であり、(A)は背もたれ部を立ち上げた状態であり、(B)は背もたれ部を傾斜させた状態である。
図3】本発明の実施の形態1における調節機構を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る調節機構の分解斜視図である。
図5図3のV線から見た断面図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
図6】本発明の実施の形態2における調節機構を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)は正面図である。
図7図6のVII線から見た断面図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
図8】(A)は図7のVIIIa線から見た断面図であり、(B)は図7のVIIIb線から見た断面図である。
図9】調節機構の変形例を示す図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
図10】本発明の実施の形態3に係る乳母車の骨組みを示す側面図であり、(A)は背もたれ部を立ち上げた状態であり、(B)は背もたれ部を傾斜させた状態である。
図11】本発明の実施の形態3における調節機構を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
図12】本発明の実施の形態3における調節機構を前方から見た分解斜視図である。
図13】本発明の実施の形態3における調節機構を後方から見た分解斜視図である。
図14】調節機構のロック解除部材とリールとロック部材との関係を示す図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
まず、調節機構3を備えた座席付き育児器具の一例について説明する。調節機構3が用いられる座席付き育児器具としては、たとえば乳母車、チャイルドシート、ベビーラック、育児椅子などが挙げられるが、乳母車に適用した例を説明する。
【0024】
<乳母車の概要>
図1図2を参照して、乳母車1の一例について説明する。乳母車1の説明において、前方は図1で示す矢印Aの方向であり、後方はその反対方向である。左右方向(幅方向)は、乳母車1の前方から見た左右方向に対応し、上下方向は、乳母車1の上下方向に対応している。
【0025】
乳母車1の車体フレームは、特に限定されないが、図1に示すように、たとえば、背面押し状態および対面押し状態の両状態に切替え可能な、いわゆる両面式であり、折り畳み能に設けられていてもよいし、図2に示すように、背面押し状態しかできない片面式であり、折り畳みができないように設けられていてもよい。
【0026】
図1に示す乳母車1の構造について説明する。図2に示す乳母車1Aについては、同一の符号を付して、その説明を繰り返さない。乳母車1の基本構造としては、一般的な乳母車の構造と同様であってよく、乳母車1は、座面部10と、背もたれ部11と、脚部12と、連結杆15と、反転ブラケット16と、前ガード17と、手摺部18と、押し棒19とを備える。座面部10、背もたれ部11、(図2で示す)前ガード17、および押し棒19を除く車体フレームは、幅方向(車幅方向)に離隔して左右に設けられ、対をなす。
【0027】
座面部10は、子供の臀部を支持する部分である。背もたれ部11は、座面部10の後端から上方に立ち上がり、子供の背中を支持する部分である。座面部10と背もたれ部11で子供を受け入れる受け入れ空間を形成する。背もたれ部11は、座面部10に対する傾斜角度が変更可能に設けられている。図1(A),図2(A)は、背もたれ部11が座面部10に対して立ち上がっている椅子状態であり、図1(B),図2(B)は、背もたれ部11が座面部10に対して傾斜している(倒れている)ベッド状態である。
【0028】
背もたれ部11の傾斜角度を変更するために、背もたれ部11の背面(裏面)に調節機構3が設けられている。調節機構3は、概略として、紐4と、調節機構本体5とを備えている。調節機構本体5で紐4の長さを調節することで、背もたれ部11の傾斜角度を変更することができる。図1(A),図2(A)に示すように、調節機構本体5で紐4を巻き取ることで背もたれ部11を立ち上げ、図1(B),図2(B)に示すように、調節機構本体5で紐4を送り出すことで背もたれ部11を倒れた状態にする。調節機構3の構成については、後述する。
【0029】
脚部12は、座面部10を下方から支持する。脚部12は、前輪13aを有する一対の前脚14aと、後輪13bを有する一対の後脚14bとを有する。一対の前脚14aと一対の後脚14bとは、それらの上端でそれぞれ連結されている。(図2で示す)前ガード17は、座面部10の前方位置において幅方向に延び、座面部10の左右両側に配置される一対の手摺部18の前方端に着脱自在に連結されていてもよい。なお、前ガード17は、座面部10の後端部(背もたれ部11と交わる角部)の幅方向両端に連結されていてもよい。
【0030】
手摺部18の前端は、一対の前脚14と一対の後脚14bの上端に連結される。手摺部18の後端は、上下に延びる連結杆15の上端に連結される。連結杆15の下端は、反転ブラケット16の上端と座面部10の後端に連結される。図1(A)および図1(B)に示すように、車体フレームを側方から観察すると、連結杆15と押し棒19とは重なっており、連結杆15は側方からは見えない。反転ブラケット16の下端は、後脚14bの上下方向途中位置に連結される。
【0031】
連結杆15の下端部は、後脚13に対してロックされる位置とロック解除される位置との間を切り換え可能に設けられている。連結杆15が後脚14bに対してロックされる位置は、走行状態であり、連結杆15の下端部と後脚14bの中央部とが当接する位置である。連結杆15が後脚13に対してロック解除される位置は、折り畳み状態であり、反転ブラケット16が反転して、反転ブラケット16の上端が下方に回転移動し、連結杆15の下端部と後脚13の下端部が当接する位置である。このような構成により、乳母車1を折り畳むことが可能となる。
【0032】
押し棒19は、上下方向に延び、座面部10の後端に連結される。押し棒19は、座面部10および背もたれ部11に対して、前後方向に揺動可能に設けられ、一点鎖線で示す対面押し位置、および、実線で示す背面押し位置の間で切り換え可能である。
【0033】
本実施の形態では、座面部10を含むものが本体であるが、本体は、座面部10だけでなく、たとえば脚部12、連結杆15と、反転ブラケット16と、前ガード17、手摺部18、および押し棒19など背もたれ部11以外の部材を含んでいてもよい。
【0034】
<実施の形態1>
図3図5を参照して、実施の形態1における調節機構3について説明する。以下の調節機構3の説明において、図4図5の紙面上の上下方向を調節機構3の上下方向、紙面上の左右方向を調節機構3の左右方向として説明する。
【0035】
上述のように、調節機構3は、概略として、紐4と、調節機構本体5とを備えている。特に図4図5を参照して、調節機構本体5は、ホルダ30と、ロック解除部材60と、ロック部材70と、リール80と、付勢部材110とを備えている。調節機構3は、付勢部材110の付勢力で自動的に紐4の巻き取りを行い、ロック解除部材60を操作することで巻き取った紐4を引き出す(送り出す)ことができるものである。
【0036】
図2に示すように、紐4は、手摺部18の後端部と背もたれ部11とを連結している。紐4は、リール80に巻かれるものであり、リール80を介して背もたれ部11に固定されている。紐4は、一本であってもよいし、複数設けられてもよい。具体的には、一本の紐の両端が手摺部18の後端に連結され、その中央部がリールに固定されていてもよいし、二本の紐が設けられ、その一端が手摺部18の後端にそれぞれ連結され、その他端がリール80にそれぞれ固定されていてもよい。
【0037】
紐4の巻き取り長さを調節することで、背もたれ部11の傾斜角度を変更することができる。具体的には、紐4をリール80で巻き取る(短くする)ことで、図1(A),2(A)に示すように椅子状態にし、紐4を送り出す(長くする)ことで、図1(B),2(B)に示すようにベッド状態にすることができる。
【0038】
本実施の形態では、紐4は、長尺状の部材であり、糸や、化学繊維、金属、紙などを組んだり、編んだり、縫い合せたりしたものを意味し、たとえばワイヤー、ベルトなども含む。なお、紐4は、手摺部18の後端部に連結されているとしたが、背もたれ部11以外、たとえば押し棒19、座面部10などに連結されていてもよく、紐4の連結箇所は限定されない。
【0039】
図4図5を参照して、ホルダ30は、リール80を回転可能に支持する。ホルダ30は、上ホルダ31と、下ホルダ34とを含む。上ホルダ31は、上面と、上面の外周縁から下方に突出する側面とを含む。上ホルダ31の上面の略中央部には貫通孔32が設けられる。この貫通孔32には、ロック解除部材60の操作部61が貫通する。上ホルダ31の対向する側面には、紐4が貫通する紐孔部33が設けられる。
【0040】
下ホルダ34は、下面と、下面の外周縁から上方に突出する側面とを含む。下面と側面とで囲まれる領域には、ロック部材70を保持する凹部35が設けられる。また、下ホルダ34の下面が背もたれ部11に固定されるため、図2に示すように、上ホルダ31の上面が乳母車1の後方を向くように配置される。
【0041】
付勢部材110は、リール80を紐4の巻取り方向に回転するように付勢する。付勢部材110の付勢力は、背もたれ部11が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように選ばれている。付勢部材110は、たとえばゼンマイバネである。ゼンマイバネは、渦巻き状であり、径方向内側に位置する一端部111と、径方向外側に位置する他端部112とを含む。図示は省略するが、ゼンマイバネの一端部111は、リール80に固定されており、その他端部112は、上ホルダ31に固定されている。これにより、リール80は常に巻取方向に向かって付勢されている。
【0042】
なお、本実施の形態では、付勢部材110としてゼンマイバネを用いたが、付勢部材110は、リール80を紐4の巻き取り方向に回転させるように付勢する部材であればよく、たとえば他のバネであってもよいし、弾性的な付勢力を発揮する他の付勢部材を用いてもよい。
【0043】
リール80は、正逆両方向(一方方向および他方方向)に回転自在である。リール80は、紐4の巻き取りおよび送り出しによって、背もたれ部11の傾斜角度を変化させることができる。図4および図5を参照して、リール80は、リール本体81と、リール本体81の上方に設けられ、リール本体81とともに回転するリンク部材85とを含む。
【0044】
リール本体81は、紐保持部82と、紐保持部82の下方に位置する鍔部84とを含む。紐保持部82は、紐4が固定されている部分であり、紐4を巻き取り、送り出す部分である。紐保持部82の略中央には、後述するロック解除部材60のロック解除本体62が貫通する穴部が設けられている。図5に示すように、鍔部84は、リール80の回転軸線に対して直交する方向に延びる。鍔部84の下方には、周方向に連続して係合歯87が設けられる。係合歯87は、後述するロック部材70の係合爪72と係合する。
【0045】
リンク部材85の略中央にも、後述するロック解除本体62が貫通する穴部が設けられている。リンク部材85には、付勢部材110の一端部111が固定されており、付勢部材110によりリンク部材85が回転することで、リール80も伴回りする。なお、リンク部材85は必ずしも設けられていなくてもよく、リンク部材85が設けられない場合は、付勢部材110の一端部111は、リール本体81に取り付けられる。
【0046】
ロック部材70は、リール80の回転を禁止するものである。ロック部材70は、リール80の下方に位置し、上下に変位可能に設けられる。図4,5に示すように、ロック部材70は、ロック本体71と、ロック本体71の上面に設けられる係合爪72と、ロック本体71を付勢するバネ部材75とを含む。係合爪72は、リール80に係合してリール80の回転を禁止する第1位置と、リール80から離れてリール80の回転を許容する第2位置との間を変位可能である。具体的には、ロック部材70は、係合爪72と係合歯87が係合する係合位置(第1位置:図5(A))と、係合爪72と係合歯87が係合しない非係合位置(第2位置:図5(B))とに変位可能である。上述のように、係合歯87は、リール80の回転軸線に対して直交する方向に延びる上面に設けられている。ロック部材70の係合爪72とリール80の係合歯87とは、リール80の回転を禁止する「回転ロック機構」である。
【0047】
なお、上記実施の形態では、係合爪72は、リール80に設けられる係合歯87に係合するものであったが、リール80ととともに回転する部材が設けられる場合は、その部材に設けられる係合歯に係合するものであってもよい。
【0048】
ロック解除部材60は、ロック部材70を非係合位置(第2位置:図5(B))にもたらすものである。具体的には、ロック解除部材60は、リール80の回転禁止状態を解除し、リール80の自由回転を可能とする。つまり、ロック解除部材60を操作することで、リール80で巻き取った紐4を引き出すことと、付勢部材110によるリール80の自動巻き取りが可能となる。図5(A)は、ロック解除部材60が操作されていない状態であり、紐4の送り出しができない状態である。図5(B)は、ロック解除部材60が操作されている状態であり、リール80から紐4を巻き取りも送り出しもできる状態である。ロック解除部材60は、リール80の回転軸線に対して平行な方向に移動することで、リール80の回転禁止状態を解除する。
【0049】
これらの図を参照して、ロック解除部材60は、使用者が操作する操作部61と、操作部61の操作により上下方向にスライド移動し、上下方向に棒状に延びるロック解除本体62とを含む。ロック解除部材60は、ロック部材70の上方に当接している。これにより、ロック解除部材60は、バネ部材75により、常にロック解除位置(上方)に付勢されている。
【0050】
(ワンウェイクラッチ機構について)
図5を参照して、ワンウェイクラッチ機構について説明する。ワンウェイクラッチ機構は、紐4の巻取り方向へのリール80の回転を許容し、紐の送り出し方向へのリール80の回転を禁止するものである。ワンウェイクラッチ機構とは、一方方向には容易に回転するが、他方向には回転しないか、または一定の荷重を加えないと回転しない機構である。本実施の形態では、図5(A)において、リール80は紐4を巻き取る巻取方向Tには回転するが、送り出し方向Sには回転しない。本実施の形態のワンウェイクラッチ機構は、ロック部材70がリール80の回転軸線に対して平行な方向に移動することで行われる。
【0051】
本実施の形態では、ウェンウェイクラッチ機構は、リール80に設けられた係合歯87と、ロック部材70に設けられた係合爪72との係合により行われる。リール80の係合歯87は、第1傾斜部87aと第2傾斜部87bとを含む。ロック部材70の係合爪72は、第1傾斜部72aと第2傾斜部72bとを含む。送り出し方向Sにおいて対向する第1傾斜部87a,72aは、リール80の回転軸線に対して平行な方向に延びていることが好ましい。なお、リール80の係合歯87およびロック部材70の係合爪72は、図示した形状に限定されず、一般的なワンウェイクラッチの形状のように噛み合う形状であればよい。
【0052】
本実施の形態のワンウェイクラッチ機構が設けられることで、リール80は巻取方向Tにのみ回転し、送り出し方向Sには回転しない。これにより、紐4が送り出される方向への回転は、ロック解除部材60を操作しなければ起こり得ない。そのため、子供の荷重がかかるような背もたれ部11であっても、強度を向上させることができ、急に背もたれ部11が倒れてしまうことがないため、安全性を向上させることができる。
【0053】
(動作について)
実施の形態1の調節機構3の動作について説明する。背もたれ部11を起立させたい場合は、背もたれ部11を上方に押して立ち上げる。リール80は、付勢部材110で巻き取り方向に付勢されているため、背もたれ部11が上方に押し上げられて、弛んだ紐4はリール80で巻き取られていく。弛んだ紐4がリール80に巻き取られたら、背もたれ部11から手を離す。リール80を巻き取り方向に付勢している付勢部材110の付勢力は、背もたれ部11が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さいため、手を離すとリール80による巻き取りが停止される。これにより、図1(A),2(A)に示すように、背もたれ部11を立ち上げた状態で保持することができる。
【0054】
また、背もたれ部11を立ち上げた状態から倒した状態にするには、ロック解除部材60を押圧した状態のまま、背もたれ部11を下方に押し下げる。この場合、リール80は、付勢部材110により巻き取り方向に付勢されているため、付勢部材110の付勢力よりも強い力で押し下げる必要がある。ただし、付勢部材110の付勢力は、背もたれ部11が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように設定されているため、そんなに強く下方に押し下げる必要はない。
【0055】
本実施の形態は、リール80が付勢部材110により巻取方向に付勢されており、付勢部材110の付勢力は、背もたれ部11が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように設定されている。そのため、作業者が背もたれ部11を立ち上げさえすれば、自動的に紐4が巻き取られ、任意の傾斜角度にすることができるため、作業者が背もたれ部11を立ち上げて、紐4を巻き取ってという作業が必要ないため、操作性がよい。
【0056】
さらに、背もたれ部11を立ち上げた状態から寝かせた状態にする場合にも、付勢部材110の付勢力は、背もたれ部11が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように設定されているため、作業者は力を入れることなく寝かせた状態にすることができるため、その点でも操作性がよい。このように、本実施の形態の調節機構を用いることで、簡易な構造で背もたれ部11の傾斜角度を簡単に変更することが可能となる。
【0057】
<実施の形態2>
図6図8を参照して、実施の形態2における調節機構3Aについて説明する。実施の形態1で示した調節機構3との相違点のみ詳細に説明する。実施の形態1と本実施の形態とは、概略としてロック解除部材60Aにおいて異なる。以下の説明では、図6(C)および図7の紙面上の上方を調節機構3Aの上方、紙面上の下方を調節機構3Aの下方として説明する。
【0058】
調節機構3Aは、概略として、紐4と、調節機構本体5Aとを備える。特に図7を参照して、調節機構本体5Aは、ホルダ30Aと、ロック解除部材60Aと、ロック部材70Aと、リール80Aと、付勢部材110とを備えている。
【0059】
ホルダ30Aは、上記実施の形態と同様、上下に分割されており、上ホルダ31と下ホルダ34とを含む。図7に示すように、上ホルダ31の内部には、下方に向かって突出する突起部32A(図7)が設けられる。また、リール80Aは、その上端に上方に突出する凸部86Aが設けられている。図8に特に示すように、上ホルダ31の突起部32Aには、付勢部材110の他端部112が連結され、リール80Aの凸部86Aには、付勢部材110の一端部111が連結される。これにより、リール80Aは、付勢部材110により巻取方向に付勢される。
【0060】
図7に示すように、ロック部材70Aは、ロック本体71と、ロック本体71の上面に設けられる係合爪72と、ロック本体71の下方に設けられる段差部73Aと、ロック本体71を付勢するバネ部材75とを含む。段差部73Aには、後述するロック解除部材60Aのロック解除本体62Aが当接している。
【0061】
図6図7に示すように、ロック解除部材60Aは、ホルダ30Aの幅方向側面から突出するように一対設けられる。ホルダ30Aの幅方向両側面は、乳母車1の幅方向と一致する。つまり、ロック解除部材60Aは、乳母車1の左右両端を向く位置に配置される。これにより、使用者は片手でロック解除部材60Aを操作することができるため、操作性が向上する。なお、ロック解除部材60Aが一対設けられる場合は、ホルダ30Aの上下方向を向く両側面に設けられていてもよい。
【0062】
図7に示すように、ロック解除部材60Aは、使用者が操作する操作部61Aと、操作部61Aに操作により回転移動するロック解除本体62Aと、操作部61Aとロック解除本体62Aを連結する軸部63Aとを含む。図7(A)の状態の操作部61Aを押圧することで、図7(B)に示すように、ロック解除本体62Aがバネ部材75の付勢力に反してロック部材70を下方に押し下げる。これにより、リール80Aとロック部材70の係合が解除される。
【0063】
本実施の形態の調節機構3Aは、ロック解除部材60Aの操作部61Aがホルダ30Aから幅方向両側面から突出している。これにより、親指と人差し指でそれぞれ操作部61Aを押圧した状態で背もたれ部11を上方に起こしたり、下方に倒したりすることができるため、操作性がよい。
【0064】
(変形例について)
図9を参照して、実施の形態2におけるロック解除部材60Aの変形例について説明する。
【0065】
調節機構3Bのロック解除部材60Bは、ホルダ30Aの幅方向側面から突出するように一対設けられる。ロック解除部材60Bは、リール80の回転軸線に対して直行する方向に移動可能である。具体的には、ロック解除部材60Bは、ロック部材70Bと接する面に、上方に向かって先細りとなるスリットが設けられている。ロック解除部材60Bを内方に向かって押圧すると、スリットがロック部材70Bの傾斜部に乗り上がり、ロック部材70Bはバネ部材75の付勢力に反して下方に押し下がる。これにより、リール80Aとロック部材70Bの係合が解除される。
【0066】
<実施の形態3>
図10図14を参照して、実施の形態3における調節機構3Cについて説明する。実施の形態1で示した調節機構3との相違点のみ詳細に説明する。以下の説明では、図10図14の紙面上の上方を調節機構3Cの上方、紙面上の下方をその下方とする。本実施の形態3の調節機構3Cの説明においても、前方は図10図13で示す矢印Aの方向であり、後方はその反対方向であるとして説明する。なお、図14において、理解容易のため、ロック解除部材60を破線で示し、その他の部材を実線で示している。
【0067】
調節機構3Cは、概略として、紐4と、調節機構本体5Cとを備える。特に図12を参照して、調節機構本体5Cは、ホルダ30Cと、ロック解除部材60Cと、ロック部材70Cと、リール80Cと、付勢部材110とを備えている。調節機構本体5Cの厚み(前後方向寸法)は薄いことが好ましく、具体的には5cm以下、さらに好ましくは3cm以下である。
【0068】
ホルダ30Cは、背もたれ部11の裏面に取り付けられる。ホルダ30Cは、ロック部材70Cおよびリール80Cが外方に露出しないように内部に収容することが好ましい。ホルダ30Cは、たとえば、背もたれ部11の裏面に沿って延びる上下方向に長い扁平形状である。具体的には、ホルダ30Cの上下方向寸法は、横幅方向寸法よりも長く、たとえば2倍以上、好ましくは3倍以上になるように設計されている。ホルダ30Cは、前後(背もたれ部11側と背もたれ部11の後方側)に分割されており、後ホルダ31Cと前ホルダ41Cとを含む。
【0069】
図12に示すように、後ホルダ31Cは、後面と、後面の外周縁から前方に突出する側面とを含む。後ホルダ31Cの後面と側面とで囲まれる領域には、ガイド孔32Cと、第1,2凸部33C,34Cと、第3凸部35Cとが設けられる。ガイド孔32Cは、後面を貫通する上下に延びる長孔である。ガイド孔32Cは、後述するロック部材70Cの突起部74Cが貫通し、突起部74Cの上下の動きを案内する。第1凸部33Cは、後面から前方に向かって突出し、後述するロック部材70Cの支持部73Cおよびねじりバネ76Cが保持される。これにより、第1凸部33Cは、ロック部材70Cの回転軸としても機能する。さらに、第1凸部33Cの中央部には、ネジ94Cが固定されるネジ穴が設けられる。第1凸部33Cと同様に、第2凸部34Cの中央部には、ネジ96Cが固定されるネジ穴が設けられる。第3凸部35Cは、後述するリール80Cのリール貫通孔88Cが貫通する。第3凸部35Cは、その上端に付勢部材110の一方端111が固定されるスリットが設けられる。また、側面には、左右方向に対向して設けられる第1段差部36Cが設けられる。
【0070】
前ホルダ41Cは、背もたれ部11の裏面に沿って延在する。図13に示すように、前ホルダ41Cは、上方領域42Cと下方領域43Cとが設けられる。上方領域42Cは、後述するロック解除部材60Cを保持し、下方領域43Cは、後ホルダ31Cを保持する。前ホルダ41Cの下方領域43Cと後ホルダ31Cで形成される空間内に、後述するロック部材70C、リール80C、および付勢部材110が収納される。
【0071】
図12に示すように、上方領域42Cは、大穴部52Cと、大穴部52Cの上方に位置する一対のネジ穴44Cと、大穴部52Cの下方に位置する一対の長孔45Cと、一対の長孔45Cの間に位置するバネ上端保持部46Cとを含む。大穴部52Cには、後述するロック解除部材60Cの操作部61が入り込む。図14をさらに参照して、大穴部52Cは、操作部61Cがある程度上下にスライド可能なように、操作部61Cの上下方向の寸法よりも大きく設定されている。一対の長孔45Cには、一対のネジ95C(図12)が貫通してロック解除部材60Cの貫通孔64Cに固定されている。これにより、ロック解除部材60Cは、上下にスライド可能な状態で前ホルダ41Cに固定される。バネ上端保持部46Cの上端は、コイルバネ79Cの上端と当接する。
【0072】
図13に示すように、下方領域43Cは、後述するリール80Cを保持するリール保持部47Cと、一対のネジ穴48Cとを含む。下方領域43Cの側面には、左右方向に対向して設けられる第2段差部49Cが設けられる。特に図11(B)に示すように、後ホルダ31Cの第1段差部36Cと前ホルダ41Cの第2段差部49Cとで、紐4を通すための貫通孔50Cが形成される。このように、貫通孔50Cは、ホルダ30Cの下方位置に設けられる。具体的には、貫通孔50Cは、ホルダ30Cの上下方向中央位置よりも下方に設けられる。
【0073】
また、ホルダ30Cは、プレート90Cを介して背もたれ部11の背板に取り付けられていてもよい。プレート90Cは、たとえば横長の矩形形状であり、上方に位置する上プレート91Cと、下方に位置する下プレート92Cとを含む。特に図12に示すように、上,下プレート91C,92Cには、一対の穴部がそれぞれ設けられている。上プレート91Cの一対の穴部には、ネジ93Cがそれぞれ貫通され、ネジ93Cは前ホルダ41Cのネジ穴44Cに固定される。下プレート92Cの紙面上の左側の穴部には、ネジ94Cが貫通され、ネジ94Cは前ホルダ41Cの下方領域43Cの一対のネジ穴48Cを貫通し、後ホルダ31Cの第1凸部33Cのネジ穴に固定される。下プレート92Cの紙面上の右側の穴部には、ネジ96Cが貫通され、ネジ96Cは前ホルダ41Cの下方領域43Cの一対のネジ穴48Cを貫通し、後ホルダ31Cの第2凸部34Cのネジ穴に固定される。
【0074】
なお、調節機構3Cの背もたれ部11に対する取付方法は限定的ではなく、たとえば前ホルダ41Cの上端縁にフックが固定されており、そのフックで背もたれ部11を構成する逆U字状のパイプに引っ掛けるようにされてもよい。このように、背もたれ部11の形状によって、種々の取付方法が採用される。
【0075】
図12図13に示すように、リール80Cは、ラチェット81Cと紐保持部82Cとが互いに重ね合わされて構成されている。ラチェット81Cと紐保持部82Cは、一体的に設けられて、一体回転する。リール80Cの回転軸線は、背もたれ部11の裏面に対して直行している。なお、直行とは、必ずしも厳密に背もたれ部11の傾斜角度に対して90度であることを意味するものではなく、背もたれ部11の裏面に対して略垂直(たとえば、傾き70~110度程度)であることも含まれる。ラチェット81Cは、後ホルダ31C側を向いており、紐保持部82Cは、前ホルダ41側を向いている。ラチェット81Cは、上述したワンウェイクラッチ機構を備えている。ラチェット81Cは、係合歯87Cを周方向に有し、後述するロック部材70Cに対して係合または被係合となる。
【0076】
特に図12に示すように、紐保持部82Cは、鍔部84Cと、その中央部分において付勢部材110およびコードガイド100Cを収容するための凹部83Cが設けられる。鍔部84Cには、対向する位置(すなわち180度の位置)に一対のスリット86Cが設けられる。一対のスリット86Cは、紐4をホルダ30Cの外方に引き出すことを案内する役割を果たす。
【0077】
凹部83Cの中央部分には、後ホルダ31Cの第3凸部35Cが貫通するリール貫通孔88Cが設けられる。凹部83C内に収容される付勢部材110は、その一端部111が後ホルダ31Cの第3凸部35Cに固定され、その他端部112が紐保持部82Cの鍔部84Cに形成される切欠き部85Cに固定される。これにより、リール80Cは、付勢部材110により常に巻取方向に付勢される。
【0078】
コードガイド100Cは、凹部83C内に収容され、付勢部材110の上方に配置される。コードガイド100Cは、紐4の経路をガイドする部材である。コードガイド100Cは、紐4をガイドするだけでなく、リール80C内における紐4の位置を固定するものでもある。そのため、コードガイド100Cを用いれば、紐4をリール80C内で結んで固定する必要がないため、調節機構3Cの前後方向の厚みを薄くすることができる。
【0079】
図12に示すように、ロック部材70Cは、リール80Cの厚みの範囲内で変位可能に設けられている。つまり、ロック部材70Cの前後方向寸法は、リール80Cの前後方向寸法よりも小さいことが好ましい。具体的には、ロック部材70Cは、ロック本体71Cと、ねじりバネ76Cとを含む。ロック本体71Cは、その一方端に設けられる係合爪72Cと、後ホルダ31C側に突出し、後ホルダ31Cのガイド孔32Cを貫通する突起部74Cと、その他方端に設けられ、後ホルダ31Cの第1凸部33Cに支持される支持部73Cと、ねじりバネ76Cを位置決めする位置決め部75Cとを含む。位置決め部75Cは、ねじりバネ76Cの他端部78Cを保持する。ねじりバネ76Cの一端部77Cは、後ホルダ31Cの上縁部37Cに当接する。これにより、ロック部材70Cは、ロックする方向(係合歯87Cに係合する方向)に付勢される。ロック部材70Cは、リール80Cの径方向に沿って変位可能に設けられており、係合爪72Cは、ラチェット81Cの係合歯87Cに係合したり離れたりする。
【0080】
図11図13に示すように、ロック解除部材60Cは、背もたれ部11の裏面に対して平行な関係で変位可能に設けられている。ロック解除部材60は、前ホルダ41Cに対しても平行な関係で延在する。なお、平行とは、厳密に平行であることを意図するのではなく、前ホルダ41Cに対して若干傾斜した位置関係であることも含まれる。ロック解除部材60Cは、上下方向に長い形状であり、調節機構3の上下方向長さと略同一であるぐらい長くてもよい。ロック解除部材60Cは、その上方位置に操作部61Cを有する。操作部61Cは、前方側に向かって凹んでいる凹部形状でありたとえば、指で引っ掛けやすいように半円形状であることが好ましい。この操作部61Cに指を入れて上方にスライド移動させることでロック部材70Cとラチェット81Cとのロックを解除することができる。操作部61Cは、前ホルダ41Cの大穴部52C内に位置する。
【0081】
ロック解除部材60Cの前面側には、操作部61Cの下方に位置し、コイルバネ79Cの下端と当接するバネ下端保持部62Cと、バネ下端保持部62Cの下方に位置し、ロック部材70Cの突起部74Cに当接する当接部63Cと、バネ下端保持部62Cの両側に位置する一対のネジ穴64Cが設けられる。
【0082】
バネ下端保持部62Cは、上述した前ホルダ41Cのバネ上端保持部46Cとともにコイルバネ79Cを保持するものである。これにより、ロック解除部材60Cは、コイルバネ79Cによって常に下方に付勢されている。当接部63Cは、ロック部材70Cの突起部74Cに当接しているため、ロック解除部材60Cを上方に移動させることで、ロック部材70Cも上方に回転する。
【0083】
具体的な動作としては、図14(A)の状態のロック解除部材60Cの操作部61Cに指を入れてロック解除部材60Cを上方に引き上げる。ロック解除部材60Cの当接部63Cにロック部材70Cの突起部74Cが当接しているため、図14(B)に示すように、ねじりバネ76Cの付勢力に反してロック部材70Cが上方に回転する。これにより、ラチェット81Cの係合歯87Cとロック部材70Cの係合爪72Cとの係合が解除される。また、操作部61Cから指を離すと、ロック解除部材60Cは、コイルバネ79Cによって常に下方に付勢されているため、図14(A)に示すように、ラチェット81Cの係合歯87Cとロック部材70の係合爪72Cとが係合する。
【0084】
本実施の形態の調節機構3Cは、リール80Cの回転軸線が背もたれ部11の裏面に対して直行するように配置され、ロック部材70Cがリール80Cの径方向に沿って変位可能に設けられ、ロック解除部材60Cが背もたれ部11の裏面に対して平行な関係で変位可能に設けられている。これにより、調節機構3Cをコンパクト化することができ、特に前後方向の厚みを薄くすることができる。また、リール80Cとロック部材70Cを上述のように設けることで、リール80の直径を大きくしても、調節機構3Cの前後方向の厚みが厚くならない。さらに、ロック部材70Cがリール80Cの厚みの範囲内で変位可能に設けられるため、調節機構3Cの厚みをより薄くすることができる。
【0085】
また、本実施の形態の調節機構3Cは、紐4を引き出す貫通孔50Cがホルダ30Aの下方位置に設けられているため、紐4が水平に引き出され、紐4に余計なテンションが掛からない。さらに、ロック解除部材60Cの操作部61Aがホルダ30Aの上方位置に設けられているため、背もたれ部11の裏面上方に手を掛けると同時に操作部61Cに手を掛けることができる。そのため、操作部61Cを上方に引き上げた状態で背もたれ部11を上方に起こしたり、下方に倒したりすることができ、操作性がよい。
【0086】
また、実施の形態1~3の調節機構3,3A,3B,3Cは、ロック部材70,70A,70B,70Cおよびリール80,80A,80Cがホルダ30,30A,30C内に収容されているため、たとえば異物混入などによる動作不良などを防止することができる。さらに、背もたれ部11の裏面に取り付けることができるため、たとえば製造時の取り付け、修理の際の取り外しなどが容易であり、種々の車体フレームに取り付け可能であるため、自由度が高い。
【0087】
なお、実施の形態1,2のホルダ30,30Aは、上下に分割されており、実施の形態3のホルダCは、前後に分割されていたが、ホルダの形状はこれらに限定されるものではない。
【0088】
特に、実施の形態3の調節機構3Cは、前ホルダ41Cと後ホルダ31Cとの間にリール80Cとロック部材70Cとが収納されていたが、後ホルダ31Cが設けられていなくてもよい。たとえば、リール80Cとロック部材70Cとは、背もたれ部11の裏面に沿って延在する内板部(たとえば、前ホルダ41C)と、内板部に対して平行な関係で延在するロック解除部材60Cとしての外板部との間に位置していればよい。このような構成により、調節機構3Cを前後方向の厚みが薄い扁平な形状とすることができる。
【0089】
また、背もたれ部11は、自重によって鉛直方向下方に移動するとしたが、水平面に対
して垂直な鉛直下方だけでなく、鉛直方向に対して傾斜した下方であってもよい。さらに
、背もたれ部が鉛直方向下方に移動しようとする力は、背もたれ部の自重だけでなく、バ
ネなどで背もたれ部を鉛直方向下方に移動しようとする付勢力なども含まれていてもよい
【0090】
また、本実施の形態では、ロック解除部材60とロック部材70とは別の部材であった
が、ロック解除部材60とロック部材70は一体的に設けられていてもよい。
【0091】
さらに、付勢部材110の付勢力は、背もたれ部11が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように設定されていたが、その付勢力と同等またはその付勢力よりも大きくなるように設定されていてもよい。また、調節機構3,3A,3Cに付勢部材110が設けられておらず、リール80,80A,80Cを手動で回転させて紐4を舞い上げるものであってもよい。
【0092】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施
の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内に
おいて、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 乳母車、3,3A,3B,3C 調節機構、4 紐、10 座面部、11 背もたれ部、30,30A,30C ホルダ、41C 前ホルダ(内板部)、50C 貫通孔、60,60A,60B,60C ロック解除部材(外板部)、70,70A,70B,70C ロック部材、72,72C 係合爪、80,80A,80C リール、87,87C 係合歯、110 付勢部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14