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特開2022-173076液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、液晶素子、液晶表示装置、並びに重合体
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  • 特開-液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、液晶素子、液晶表示装置、並びに重合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173076
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、液晶素子、液晶表示装置、並びに重合体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20221110BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G02F1/1337
C08G73/12
C08L79/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062964
(22)【出願日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021079356
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敬
(72)【発明者】
【氏名】杉山 文隆
(72)【発明者】
【氏名】永岩 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】前川 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】菅野 尚基
【テーマコード(参考)】
2H290
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA18
2H290AA33
2H290AA53
2H290AA73
2H290BA32
2H290BA54
2H290BA66
2H290BF13
2H290BF23
2H290BF42
2H290DA01
2H290DA03
4J002CM04W
4J002CM04X
4J002GP00
4J043PC085
4J043PC165
4J043QB15
4J043QB23
4J043RA06
4J043SA02
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA26
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA022
4J043UA052
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA151
4J043UB081
4J043UB161
4J043UB221
4J043UB281
4J043VA041
4J043YB24
4J043ZB21
(57)【要約】
【課題】長時間のバックライト照射後でも液晶配向性の変化が少なく、信頼性の高い液晶素子を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を液晶配向剤に含有させる。式中、Rβは、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω1であるか、又は、基Rω1若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。Rαは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、Rβは、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω1であるか、又は、基Rω1若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。Rαは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、-SiR、-P(=O)R、-COOR、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω2であるか、又は、基Rω2若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。Xは、酸素原子又は-NR-である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Rは置換基である。nは0~4の整数である。mは0又は1である。「*」は結合手であることを表す。)
【請求項2】
前記重合体(P)は、上記式(1)で表される部分構造を側鎖に有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記重合体(P)は、上記式(1)で表される部分構造を主鎖中に有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記Rαは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、又は炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基(ただし、Rは水素原子又は1価の有機基)である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記Rβは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、シアノ基、臭素原子、ヨウ素原子、-NR1213(ただし、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基)、又は炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基(ただし、Rは水素原子又は1価の有機基)である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
上記式(1)で表される部分構造を有しない重合体(Q)を更に含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
前記重合体(Q)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光照射する工程と、を含む、液晶配向膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【請求項14】
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、
前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、
前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、
を備え、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、
前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、
前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、
前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、
前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、
前記光配向膜は、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成されている、液晶表示装置。
【請求項15】
下記式(1)で表される部分構造を有する重合体。
【化2】
(式(1)中、Rβは、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω1であるか、又は、基Rω1若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。Rαは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、-SiR、-P(=O)R、-COOR、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω2であるか、又は、基Rω2若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。Xは、酸素原子又は-NR-である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Rは置換基である。nは0~4の整数である。mは0又は1である。「*」は結合手であることを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、液晶素子、液晶表示装置、並びに重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子では、液晶層中の液晶分子の配向を制御するために液晶配向膜が使用されている。液晶配向膜は一般に、重合体成分を含有する液晶配向剤を用いて形成される。液晶配向規制力を有する有機膜を得る方法としては、従来、有機膜をラビングする方法、酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、及び長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法のほか、感光性の有機膜に光照射する方法(光配向法)等が知られている。
【0003】
光配向法は、静電気や埃の発生を抑制しつつ、膜に液晶配向性を均一に付与できることから、近年、種々検討が進められている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2には、シンナメート構造を有する重合体を用いて光配向法により液晶配向膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/071091号
【特許文献2】国際公開第2016/080033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光配向処理によって得られた液晶配向膜(光配向膜)は、ラビング処理を施した場合に比べて液晶分子の配向規制力が十分でない傾向がある。このため、液晶素子を長時間駆動させると、長時間のバックライト照射によってリタデーションに変化が見られたり、液晶の初期配向の方向が製造当初から次第にずれてきたりすることがある。このような配向性の変化は、画像の焼き付き(残像)や透過率の低下、黒輝度の低下として現れるおそれがある。液晶素子としては、近年の更なる高性能化の要求を満たすべく表示品位を更に向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、長時間のバックライト照射後でも液晶配向性の変化が少なく、信頼性の高い液晶素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0008】
<1> 下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、Rβは、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω1であるか、又は、基Rω1若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。Rαは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、-SiR、-P(=O)R、-COOR、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω2であるか、又は、基Rω2若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。Xは、酸素原子又は-NR-である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Rは置換基である。nは0~4の整数である。mは0又は1である。「*」は結合手であることを表す。)
【0009】
<2> 上記<1>の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光照射する工程と、を含む、液晶配向膜の製造方法。
<3> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<4> 上記<3>の液晶配向膜を備える液晶素子。
【0010】
<5> 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備える液晶表示装置に関する。当該液晶表示装置において、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、前記光配向膜は、上記<1>の液晶配向剤を用いて形成されている。
【0011】
<6> 上記式(1)で表される部分構造を有する重合体。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、長時間のバックライト照射後でも液晶配向性の変化が少なく、信頼性の高い液晶素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】液晶表示装置の概略構成を示す模式図。
図2】液晶表示装置の1画素における配向パターンの一例を示す図。
図3】液晶表示装置の各画素における配向パターンの一例を示す図。(a)は第1基板を示し、(b)は第2基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0015】
「脂肪族炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基を包含する意味である。重合体の「主鎖」とは、重合体の原子鎖のうち最も長い「幹」の部分をいう。重合体の「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。「有機基」とは、炭素を含む化合物(すなわち有機化合物)から任意の水素原子を取り除いてなる原子団をいう。「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを包含する意味である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを包含する意味である。
【0016】
《液晶配向剤》
本開示の液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する。
【化2】
(式(1)中、Rβは、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω1であるか、又は、基Rω1若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。Rαは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、-SiR、-P(=O)R、-COOR、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω2であるか、又は、基Rω2若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である。R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。Xは、酸素原子又は-NR-である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Rは置換基である。nは0~4の整数である。mは0又は1である。「*」は結合手であることを表す。)
【0017】
<重合体(P)>
重合体(P)が有する上記式(1)で表される部分構造は、カルボニル炭素のβ位に置換基(Rβ)を有する。上記式(1)において、Rβで表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基等が挙げられる。
【0018】
炭素数1~10のアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素数3~10のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数6~10のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基等が挙げられる。炭素数6~10のアラルキル基としては、例えばベンジル基等が挙げられる。
【0019】
βで表される基が、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-又は-NR-で置き換えられてなる1価の基(Rω1)である場合の具体例としては、炭素数2~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数6~10のアラルキル基が有する1個以上のメチレン基が、-O-、-S-又は-NR-で置き換えられた基が挙げられる。基Rω1の更なる具体例としては、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する基、シクロアルコキシ基、アリールアルコキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
βで表される基が、炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子で置換されてなる1価の基である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。Rβで表される基がハロゲン原子で置換されてなる1価の基である場合の具体例としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基等が挙げられる。
【0021】
βで表される基が、基Rω1又は炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がシアノ基、水酸基、アミノ基、チオール基又はニトロ基で置換されてなる1価の基である場合の具体例としては、シアノメチル基、アミノメチル基、2-アミノエチル基、N-(アミノメチル)メチル基、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、ヒドロキシメチルオキシメチル基、チオールメチル基、2-チオールエチル基、ニトロメチル基等が挙げられる。
【0022】
、R、及びRで表される1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基、炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。炭素数1~10の1価の炭化水素基の具体例としては、Rβで表される基の説明において例示した基と同様の基が挙げられる。炭素数1~10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
【0023】
バックライトを長時間照射した後にも劣化が生じにくく、信頼性の高い液晶素子を得ることができる点で、Rβは中でも、炭素数1~10の1価の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR若しくは-NRであるか、炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基Rω1であるか、又は、基Rω1若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、シアノ基、臭素原子、ヨウ素原子、-NR1213(ただし、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基)、又は炭素数2~10の1価の炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-若しくは-NR-を含む1価の基(ただし、Rは水素原子又は1価の有機基)であることが好ましい。Rβは、これらの中でも特に、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、又は-NR1213であることがより好ましく、メチル基、エチル基又はトリアルキルシリル基が好ましい。
【0024】
上記式(1)で表される部分構造は、カルボニル炭素のα位に水素原子又は置換基を有する。上記式(1)中のRαが、炭素数1~10の1価の炭化水素基、-SiR、-P(=O)R、-C≡CR又は-NRである場合、基Rω2である場合、及び基Rω2又は炭素数1~10の1価の炭化水素基が有する任意の水素原子がハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてなる1価の基である場合の具体例としては、Rβで表される基として例示したものと同様の基が挙げられる。Rαがハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。「-COOR」の具体例としては、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
αで表される基は、バックライトを長時間照射した後にも液晶配向性の変化が少なく、信頼性の高い液晶素子を得ることができる点で、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、又は炭素数2~10の1価の炭化水素基における任意のメチレン基が-O-、-S-若しくは-NR-で置き換えられてなる1価の基(ただし、Rは水素原子又は1価の有機基)であることが好ましく、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はシアノ基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はシアノ基であることが更に好ましく、水素原子がより更に好ましい。
【0026】
で表される基が-NR-である場合、Rで表される1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基及び1価の熱脱離性基が挙げられる。Rが1価の炭化水素基である場合の具体例としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基及び炭素数6~10のアラルキル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~6のアルキル基、シクロヘキシル基及びフェニル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。また、Rは、他の基に結合して、Rが結合する窒素原子と共に構成される環構造であってもよい。かかる環構造としては、例えばピペリジン構造、ピペラジン構造等が挙げられる。
【0027】
が1価の熱脱離性基である場合、熱脱離性基は、膜形成時の加熱により脱離する1価の基であることが好ましい。熱脱離性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性に優れ、かつ脱離した構造の膜中における残存量を少なくできる点で、Boc基が特に好ましい。
【0028】
上記式(1)で表される部分構造の光配向性をより高くできる点で、Xは中でも、酸素原子、-NH-、-N(CH)-又は-NR15-(R15はBoc基)であることが好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0029】
の置換基としては、例えば炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、エステル基等が挙げられる。nは、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。なお、mが1の場合には、式(1)中の結合手(*)は他の基(有機基)に結合する結合手を表す。mが1の場合、式(1)中の結合手(*)は、重合体の主鎖を構成する原子に結合していてもよく、側鎖を構成する原子に結合していてもよい。mが0の場合、上記式(1)で表される部分構造は、重合体主鎖の末端部分に存在していてもよく、側鎖の末端部分に存在していてもよい。
【0030】
重合体(P)の主骨格は特に限定されない。耐熱性や機械的強度、液晶との親和性等が良好である観点から、重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。重合体(P)は、上記式(1)で表される部分構造を主鎖中に有していてもよく、側鎖に有していてもよく、主鎖中及び側鎖の両方に有していてもよい。以下、重合体(P)の好ましい例について説明する。
【0031】
[ポリアミック酸]
重合体(P)としてのポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(P)」ともいう)は、上記式(1)で表される部分構造を有する単量体を用いて重合することにより得ることができる。ポリアミック酸(P)を製造する方法としては、例えば、〔1〕上記式(1)で表される部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「特定酸無二水物」ともいう)を含むモノマーを重合する方法;〔2〕上記式(1)で表される部分構造を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう)を含むモノマーを重合する方法;〔3〕特定酸無二水物及び特定ジアミンを含むモノマーを重合する方法、等が挙げられる。これらのうち、モノマーの合成が比較的容易である点で特定ジアミンを用いることが好ましく、上記[2]の方法がより好ましい。
【0032】
(テトラカルボン酸二無水物)
・特定酸二無水物
特定酸二無水物は、上記式(1)で表される部分構造を有する限り、その他の部分の構造は特に限定されない。特定酸二無水物は、上記式(1)で表される部分構造を主鎖中に有していることが好ましい。特定酸二無水物の具体例としては、下記式(5-1)~式(5-4)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化3】
【0033】
・その他の酸二無水物
上記方法〔1〕及び方法〔3〕の場合、ポリアミック酸(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は、特定酸二無水物のみであってもよいが、上記式(1)で表される部分構造を有さないテトラカルボン酸二無水物(以下、「その他の酸二無水物」ともいう)を併用してもよい。上記方法〔2〕では、ポリアミック酸(P)の合成に際し、テトラカルボン酸二無水物としてその他の酸二無水物を使用する。その他の酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0034】
これらの具体例としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物としては、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は、重合体の溶解性を高くできる点、及び良好な電気特性を示す液晶配向膜を得ることができる点で、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことがより好ましい。脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用量は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましい。
【0036】
(ジアミン)
・特定ジアミン
ポリアミック酸(P)の合成に使用する特定ジアミンは、上記式(1)で表される部分構造を有する限り特に限定されない。特定ジアミンは、上記式(1)で表される部分構造を主鎖中に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。特定ジアミンとしては、例えば、下記式(6-1)で表される化合物及び下記式(6-2)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】
(式(6-1)中、Aは、上記式(1)で表される2価の基である。Y及びYは、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。)
【化5】
(式(6-2)中、Aは、上記式(1)で表される2価の基である。Yは、3価の芳香環基である。Yは、単結合又は2価の連結基である。Yは、水素原子又は1価の有機基である。)
【0037】
上記式(6-1)において、Y及びYで表される2価の有機基としては、例えば炭素数1~20の2価の炭化水素基、当該炭化水素基が有するメチレン基の一部が-O-、-CO-、-COO-又は-NR30-(R30は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基)で置き換えられてなる2価の基、2価の複素環基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。2価の複素環基としては、例えばピリジン、ピペラジン、ピペリジン等の窒素含有複素環から2個の水素原子を取り除いた基等が挙げられる。Y及びYが有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基等、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0038】
上記式(6-2)において、Yで表される3価の芳香環基は、芳香環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基である。当該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリダジン環等の芳香族複素環が挙げられる。これらのうち、ベンゼン環及びピリジン環が特に好ましい。なお、芳香環基が有する芳香環には置換基が導入されていてもよい。当該置換基としては、例えば炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
【0039】
で表される2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-NR30-、-CO-NR30-、炭素数1~3のアルカンジイル基等が挙げられる。
【0040】
で表される1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、当該炭化水素基が有するメチレン基の一部が-O-、-CO-、-COO-又は-NR30-で置き換えられてなる1価の基、1価の複素環基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0041】
特定ジアミンの具体例としては、上記式(6-1)で表される化合物として、例えば下記式(6-1-1)~式(6-1-22)のそれぞれで表される化合物等を;上記式(6-2)で表される化合物として、例えば下記式(6-2-1)~式(6-2-4)のそれぞれで表される化合物等を、挙げることができる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
・その他のジアミン
上記方法〔2〕及び方法〔3〕の場合、ポリアミック酸(P)の合成に使用するジアミンは、特定ジアミンのみであってもよいが、上記式(1)で表される部分構造を有さないジアミン(以下、「その他のジアミン」ともいう)を併用してもよい。上記方法〔1〕では、ポリアミック酸(P)の合成に際し、ジアミンとしてその他のジアミンを使用する。その他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。
【0044】
ポリアミック酸の合成に使用するジアミンの具体例としては、鎖状ジアミンとして、メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を;
脂環式ジアミンとして、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等を;
芳香族ジアミンとして、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノスチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)-ピペラジン等の主鎖型ジアミン:
ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、3,5-ジアミノ安息香酸=5ξ-コレスタン-3-イル、下記式(E-1)
【化11】
(式(E-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、-O-、*-COO-又は*-OCO-(ただし、「*」はXとの結合手を示す。)である。Rは、炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIは、単結合又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIIは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、又はフルオロアルコキシ基である。aは0又は1である。bは0~3の整数である。cは0~2の整数である。dは0又は1である。ただし、1≦a+b+c≦3である。)
で表される化合物等の側鎖型ジアミン等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0045】
また、その他のジアミンとしては、-NR-(ただし、Rは炭素数1~10の1価の炭化水素基又は熱脱離性基である)又は窒素含有複素環構造を有するジアミン(以下、「窒素含有ジアミン」ともいう)が挙げられる。窒素含有ジアミンとしては、上記で例示した他のジアミンのうち該当する化合物のほか、例えば、N4,N4’-ビス-(4-アミノフェニル)-N4,N4’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジ(5-アミノ-2-ピリジル)-N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)エチレンジアミン、6,6’-(ペンタメチレンジオキシ)ビス(3-アミノピリジン)、3,5-ジアミノ-N,N-ビス(ピリジン-3-イルメチル)ベンズアミド、4-(4-アミノフェノキシカルボニル)-1-(4-アミノフェニル)ピペリジン等が挙げられる。ポリアミック酸(P)の合成に際し、ジアミンとしては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
ポリアミック酸(P)において、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、ポリアミック酸(P)が有する全ジアミン単位に対して、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることが更に好ましい。また、ポリアミック酸(P)における上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、ポリアミック酸(P)が有する全ジアミン単位に対して、95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下であることが更に好ましい。ポリアミック酸(P)中の上記式(1)で表される部分構造の含有割合が上記範囲にあると、ポリアミック酸(P)の光反応性が良好であるとともに、バックライトを長時間照射した後にも良好な液晶配向性を示す配向膜を形成できる点で好適である。
【0047】
・ポリアミック酸の合成
ポリアミック酸(P)は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸(P)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。
【0048】
分子量調整剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸一無水物;アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物;フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
【0049】
ポリアミック酸(P)の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等を挙げることができる。特に好ましい有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0050】
以上のようにして、ポリアミック酸(P)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0051】
(ポリアミック酸エステル)
重合体(P)としてのポリアミック酸エステル(以下、「ポリアミック酸エステル(P)」ともいう)は、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸(P)とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルと、特定ジアミンを含むジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物と、特定ジアミンを含むジアミンとを反応させる方法、等によって得ることができる。本開示の液晶配向剤に含有させるポリアミック酸エステル(P)は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。ポリアミック酸エステル(P)を溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステル(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0052】
(ポリイミド)
重合体(P)としてのポリイミド(以下、「ポリイミド(P)」ともいう)は、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸(P)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミド(P)は、その前駆体であるポリアミック酸(P)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミド(P)は、そのイミド化率が20%以上であることが好ましく、30~95%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0053】
ポリアミック酸(P)の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸(P)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。この方法において、脱水剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸(P)のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸(P)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。なお、上記反応により得られるポリイミド(P)を含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミド(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。また、ポリイミド(P)は、ポリアミック酸エステル(P)のイミド化により得ることもできる。
【0054】
液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの溶液粘度は、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、重合体の良溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0055】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000である。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
【0056】
(ポリオルガノシロキサン)
重合体(P)としてのポリオルガノシロキサン(以下、「ポリシロキサン(P)」ともいう)は、上記式(1)で表される部分構造を有する限り、その製造方法は特に限定されない。ポリシロキサン(P)は、例えば加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合反応により得ることができる。具体的には、下記〔1〕及び〔2〕の方法が挙げられる。
【0057】
〔1〕エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物(ms-1)、又はシラン化合物(ms-1)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合してエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを合成し、次いで、得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンと、上記式(1)で表される部分構造を有するカルボン酸(以下、「特定カルボン酸」ともいう)とを反応させる方法。
〔2〕上記式(1)で表される部分構造を有する加水分解性のシラン化合物(ms-2)、又はシラン化合物(ms-2)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合させる方法。
これらのうち、〔1〕の方法は簡便であり、かつポリシロキサン(P)における上記式(1)で表される部分構造の導入率を高くすることができる点で好ましい。
【0058】
シラン化合物(ms-1)の具体例としては、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、2-グリシドキシエチルジメチルメトキシシラン、2-グリシドキシエチルジメチルエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルメチルジエトキシシラン、4-グリシドキシブチルジメチルメトキシシラン、4-グリシドキシブチルジメチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラン化合物(ms-1)としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0059】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの合成に使用するその他のシラン化合物は、加水分解性を示すシラン化合物である限り特に制限されない。その具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(3-シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の窒素・硫黄原子含有のアルコキシシラン;
3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等の不飽和炭化水素含有のアルコキシシラン;のほか、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。その他のシラン化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を包含する意味である。
【0060】
シラン化合物の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行うことができる。反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは1~30モルである。使用する触媒としては、例えば、酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば、シラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01~3倍モルである。使用する有機溶媒としては、例えば、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール等が挙げられる。これらのうち、非水溶性又は難水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100質量部に対して、好ましくは10~10,000質量部である。
【0061】
上記の加水分解・縮合反応は、例えば油浴等により加熱して実施することが好ましい。その際、加熱温度は130℃以下とすることが好ましく、加熱時間は0.5~12時間とすることが好ましい。反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層を、必要に応じて乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリシロキサンを得ることができる。なお、ポリシロキサンの合成方法は上記の加水分解・縮合反応に限らず、例えば加水分解性シラン化合物をシュウ酸及びアルコールの存在下で反応させる方法等により行ってもよい。
【0062】
上記[1]の方法では、上記反応により得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを、次いで、特定カルボン酸と反応させる。これにより、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基と、特定カルボン酸が有するカルボキシル基とが反応して、上記式(1)で表される部分構造を側鎖に有するポリオルガノシロキサン(P)を得ることができる。
【0063】
特定カルボン酸の具体例としては、例えば下記式(7-1)~式(7-5)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
【化12】
【0064】
ポリシロキサン(P)1分子中における、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、ポリシロキサン(P)が有するケイ素原子に対して、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることが更に好ましい。また、ポリシロキサン(P)1分子中における、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、ポリシロキサン(P)が有するケイ素原子に対して、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることが更に好ましい。ポリシロキサン(P)中の上記式(1)で表される部分構造の含有割合が上記範囲にあると、ポリシロキサン(P)の光反応性を良好にできる点、及びバックライトの長時間照射後にも良好な液晶配向性を示す配向膜を形成できる点で好ましい。
【0065】
なお、ポリシロキサン(P)の合成に際し、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとの反応に使用するカルボン酸は特定カルボン酸のみであってもよいが、特定カルボン酸以外のその他のカルボン酸を併用してもよい。その他のカルボン酸は、上記式(1)で表される部分構造を有さないカルボン酸であればよく、種々のカルボン酸を使用することができる。その他のカルボン酸としては、例えば、メソゲン構造を有するカルボン酸等が挙げられる。
【0066】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は、好ましくは触媒及び有機溶媒の存在下で行うことができる。使用する触媒としては、例えば有機塩基、エポキシ化合物の反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物(例えば、3級有機アミン、4級有機アミン、4級アンモニウム塩等)を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0067】
上記反応において使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコール等を挙げることができる。有機溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計質量が、溶液の全重量に対して占める割合)が、0.1質量%以上となる割合で使用することが好ましく、5~50質量%となる割合で使用することがより好ましい。上記反応において、反応温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは50~150℃である。反応時間は、好ましくは0.1~50時間であり、より好ましくは0.5~20時間である。反応終了後には、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。水洗後、有機溶媒層を、必要に応じて適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的物であるポリシロキサン(P)を得ることができる。
【0068】
ポリシロキサン(P)は、これを濃度10質量%の溶液としたときに、1~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、3~200mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。ポリシロキサン(P)につき、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000であることが好ましく、2,000~50,000であることがより好ましく、3,000~20,000であることが更に好ましい。
【0069】
(付加重合体)
重合体(P)としての付加重合体(以下、「付加重合体(P)」ともいう)は、上記式(1)で表される部分構造を有する限り、その製造方法は特に限定されない。付加重合体(P)は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体に由来する構造単位を有する重合体である。付加重合体(P)は、例えば、上記式(1)で表される部分構造を有する不飽和単量体(ma-1)、又は不飽和単量体(ma-1)とその他の不飽和単量体との混合物を重合することにより得ることができる。
【0070】
不飽和単量体としては、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する任意の単量体を用いることができる。当該単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルフェニル基、マレイミド基等を有する化合物が挙げられる。液晶配向性に優れた液晶配向膜を形成できる点で、不飽和重合体(P)としては、ポリ(メタ)アクリレート、マレイミド系重合体及びスチレン-マレイミド系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用することができる。
【0071】
不飽和単量体(ma-1)は、上記式(1)で表される部分構造を有していればよく、特に限定されない。不飽和単量体(ma-1)の具体例としては、例えば下記式(8-1)~式(8-10)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
【化13】
(式(8-1)~式(8-4)中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【化14】
【0072】
その他の不飽和単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸:(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等)、(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルグリシジルエーテル等の不飽和カルボン酸エステル:無水マレイン酸等の不飽和多価カルボン酸無水物:等の(メタ)アクリル系化合物;
スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン及び4-(グリシジルオキシメチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物;1,3-ブタジエン及び2-メチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン化合物;
N-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸、N-(4-グリシジルオキシフェニル)マレイミド、N-グリシジルマレイミド、3-マレイミド安息香酸、3-マレイミドプロピオン酸、3-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸、及び4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸メチル等のマレイミド系化合物等が挙げられる。付加重合体(P)の合成に際し、その他の不飽和単量体としては1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0073】
付加重合体(P)1分子中における、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、付加重合体(P)が有する全構造単位に対して、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。また、付加重合体(P)1分子中における、上記式(1)で表される部分構造の含有割合は、付加重合体(P)が有する全構造単位に対して、60モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましく、40モル%以下であることが更に好ましい。付加重合体(P)中の上記式(1)で表される部分構造の含有割合が上記範囲にあると、付加重合体(P)の光反応性を良好にできる点、及びバックライトの長時間照射後にも良好な液晶配向性を示す配向膜を形成できる点で好ましい。
【0074】
付加重合体(P)は、例えば、単量体を重合開始剤の存在下で重合することにより得ることができる。使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が好ましい。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全単量体100質量部に対して、0.01~30質量部とすることが好ましい。
【0075】
上記重合反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。反応に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物等が挙げられ、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。反応温度は30℃~120℃とすることが好ましく、反応時間は、1~36時間とすることが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。
【0076】
付加重合体(P)につき、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、250~500,000であることが好ましく、500~100,000であることがより好ましい。
【0077】
なお、付加重合体(P)の製造方法は上記に限らず、例えば、エポキシ基を有する不飽和単量体(m-1)を含む単量体を重合開始剤の存在下で重合させた後、その得られた重合体と、特定カルボン酸とを反応させる方法によって得ることもできる。
【0078】
重合体(P)が上記式(1)で表される部分構造を主鎖中に有する場合、重合体(P)は、上記式(1)で表される部分構造の導入しやすさの観点から、上記の中でも、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。重合体(P)が上記式(1)で表される部分構造を側鎖に有する場合、重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0079】
<その他の成分>
本開示の液晶配向剤は、重合体(P)とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、上記式(1)で表される部分構造を有しない重合体(以下、「重合体(Q)」ともいう)、架橋剤及び溶剤等が挙げられる。
【0080】
(重合体(Q))
重合体(Q)は、重合体成分の溶解性や、液晶配向膜の配向性及び電気特性等を改善すること等を目的として使用することができる。重合体(Q)としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、付加重合体等を主骨格とする重合体が挙げられる。液晶配向剤の調製に際し、重合体(Q)としては1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
重合体(Q)は、得られる液晶素子の液晶配向性及び電気特性を高くできる点で、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及び付加重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。重合体(Q)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの具体例としては、上述したその他の酸二無水物とその他のジアミンとを反応させて得られる重合体が挙げられる。重合体(Q)としての付加重合体は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルフェニル基又はマレイミド基を有する1種又は2種以上の単量体を用いて得られる重合体であることが好ましく、ポリ(メタ)アクリレート、マレイミド系重合体及びスチレン-マレイミド系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0082】
液晶配向剤中に重合体(Q)を含有させる場合、液晶配向剤における重合体(Q)の含有割合は、重合体(P)と重合体(Q)との合計量100質量部に対して、20~99.9質量部とすることが好ましく、30~99質量部とすることがより好ましい。
【0083】
また、液晶配向剤中に重合体(Q)を含有させる場合、液晶配向剤における重合体(P)の含有割合は、重合体(Q)100質量部に対して、0.5質量部以上とすることが好ましく、1質量部以上とすることがより好ましい。また、重合体(P)の含有割合は、重合体(Q)100質量部に対して、150質量部以下とすることが好ましく、120質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。
【0084】
(架橋剤)
本開示の液晶配向剤は、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤を液晶配向剤に配合することにより、バックライトの長時間照射に対する信頼性の改善効果を高めることができる点で好適である。
【0085】
架橋剤は、重合体(P)が有する官能基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、重合体不飽和結合基等)と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましい。具体的には、環状エーテル基、カルボキシル基、環状カーボネート基、アルコール性水酸基、アミノ基、保護アミノ基、保護イソシアネート基、トリアルコキシシリル基、及び重合性不飽和結合基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する分子量1000以下の化合物であることが好ましい。架橋剤が有する架橋性基の数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、3~8個が更に好ましい。
【0086】
架橋剤を配合する場合、液晶配向剤中における架橋剤の含有割合は、液晶配向剤中の重合体成分の全体量100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、架橋剤の含有割合は、過剰量の添加に起因する性能低下を抑制する観点から、液晶配向剤中の重合体成分の全体量100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。なお、架橋剤としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
(溶剤)
本開示の液晶配向剤は、重合体(P)及び必要に応じて使用される成分が適当な溶剤中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製されることが好ましい。使用する溶剤は有機溶媒が好ましく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ジアセトンアルコール)、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0088】
その他の成分としては、溶剤のほか、例えば酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。これらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0089】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶剤以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1質量%以上であると塗膜の膜厚を十分に確保でき、良好な液晶配向膜を得やすい点で好適である。また、固形分濃度が10質量%以下であると、塗膜の膜厚が過大となりすぎず良好な液晶配向膜を得ることができるとともに、液晶配向剤の粘性を適度に確保でき、塗布性を良好にすることができる。
【0090】
液晶配向剤中の重合体成分の含有割合は、本開示の効果を十分に得る観点から、液晶配向剤中の固形成分(すなわち、溶剤以外の成分)の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。
【0091】
《液晶配向膜及び液晶素子》
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を備える。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型(VA-MVA型、VA-PVA型等を含む)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型等といった種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
【0092】
(工程1:塗膜の形成)
先ず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一方の面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜等を用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。基板への液晶配向剤の塗布は、電極形成面上に、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
【0093】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~150℃であり、より好ましくは40~120℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。
【0094】
その後、溶剤を更に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、カラーフィルタ上に液晶配向膜を形成する際に高温による退色等の劣化を抑制する観点、及び環境負荷の低減の観点から、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、膜中に残存した溶剤成分の影響によって液晶配向性や信頼性が低下することを抑制する観点から、ポストベーク温度は、80℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。ポストベーク時間は、好ましくは5~150分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜、又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。
【0095】
(工程2:配向処理)
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットン等で擦るラビング処理、又は塗膜に光照射を行って液晶配向能を付与する光配向処理を用いることが好ましい。垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用してもよく、液晶配向能を更に高めるために塗膜に対し配向処理を施してもよい。
【0096】
光配向処理における光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
【0097】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。放射線の照射量は、好ましくは400~20,000J/mであり、より好ましくは1,000~5,000J/mである。塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。また、光照射処理が施された有機膜を、水、水溶性有機溶媒、又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒に接触させる工程を更に含んでいてもよい。
【0098】
(工程3:液晶セルの構築)
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、〔1〕液晶配向膜が対向するように間隙(スペーサー)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法、〔2〕液晶配向膜を形成した一方の基板上の所定の場所にシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げる方法(ODF方式)等が挙げられる。製造した液晶セルに対しては、更に、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷する処理を行うことにより、液晶充填時の流動配向を除去することが好ましい。
【0099】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。スペーサーとしては、フォトスペーサー、ビーズスペーサー等を用いることができる。
【0100】
使用する液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。ネマチック液晶としては、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等を用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
【0101】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。これにより液晶素子が得られる。
【0102】
本開示の液晶素子は種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は、位相差フィルム等の光学フィルムに適用することもできる。
【0103】
《液晶表示装置》
本発明の液晶表示装置の一態様は、液晶配向膜として、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された光配向膜を有する。以下に、本発明の液晶表示装置について、適宜図面を用いて説明する。
【0104】
図1に示すように、液晶表示装置10は、第1基板11及び第2基板12からなる一対の基板と、第1基板11と第2基板12との間に配置された液晶層13と、を備えている。液晶表示装置10は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)型の液晶表示装置である。なお、他の駆動方式(例えば、パッシブマトリックス方式、プラズマアドレス方式等)に本発明を適用してもよい。
【0105】
第1基板11は、ガラスや樹脂等からなる透明基板14の液晶層13側の表面上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電体からなる画素電極15、スイッチング素子としてのTFT、走査線や信号線等の各種配線が配置されたTFT基板である。第2基板12は、ガラスや樹脂等からなる透明基板16の液晶層13側の表面上に、ブラックマトリクス17、カラーフィルタ18、透明導電体からなる対向電極19(共通電極ともいう)が設けられたCF基板である。
【0106】
一対の基板11,12には、液晶分子を膜表面に対して所定方位に配向させる液晶配向膜が形成されている。液晶配向膜は垂直配向膜である。液晶表示装置10は、液晶配向膜として、第1基板11の電極配置面上に形成された第1配向膜22と、第2基板12の電極配置面上に形成された第2配向膜23とを有している。
【0107】
第1基板11及び第2基板12は、第1基板11の電極配置面と、第2基板12の電極配置面とが対向するように、スペーサー24を介して所定の間隙(セルギャップ)を設けて配置されている。なお、図1には、スペーサー24として柱状スペーサーを示したが、ビーズスペーサー等の他のスペーサーであってもよい。対向配置された一対の基板11,12は、その周縁部において、シール材25を介して貼り合わされている。第1基板11、第2基板12及びシール材25によって囲まれた空間には液晶組成物が充填されている。これにより、第1基板11と第2基板12との間に液晶層13が形成されている。液晶層13には、負の誘電率異方性を有する液晶が充填されている。
【0108】
第1基板11及び第2基板12のそれぞれの外側には偏光板(図示略)が配置されている。第1基板11の外縁部には端子領域が設けられている。この端子領域に、液晶を駆動するためのドライバIC等が接続されることによって液晶表示装置10が駆動される。
【0109】
第1配向膜22及び第2配向膜23のうち少なくとも一方は光配向膜であり、本実施形態では、少なくとも第1配向膜22が光配向膜である。なお、本明細書において、「光配向膜」とは、光配向性基を有する重合体を用いて形成された塗膜に対して偏光又は無偏光の光照射を行うことにより液晶配向能が付与された液晶配向膜をいう。「光配向性基」とは、光照射による光異性化反応、光二量化反応、光分解反応又は光転位反応等によって膜に異方性を付与する官能基である。
【0110】
第1配向膜22は、光配向処理により、液晶分子の配向方位が領域ごとに異なるように分割露光されている。第1配向膜22は、上記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する液晶配向剤を用いて形成された塗膜に対し、フォトマスク(例えば偏光子)を用いて、偏光放射線を複数回斜め照射することにより形成されている。一方、第2配向膜23は分割露光されていない。第2配向膜23について、本実施形態では、第1配向膜22と同じ液晶配向剤を用いて形成された塗膜を、光を照射せずそのまま用いている。これにより、第1配向膜22により規定されるプレチルト角と、第2配向膜23により規定されるプレチルト角とを異ならせている。具体的には、第1配向膜22により規定されるプレチルト角を90度未満とし、第2配向膜23により規定されるプレチルト角を実質的に90度としている。
【0111】
なお、第2配向膜23の形成に際し、液晶配向剤により形成した有機膜に対し光照射しないことによって、第2配向膜23により規定されるプレチルト角を実質的に90度とする構成に代えて、液晶配向剤により形成した有機膜の面全体に対し、フォトマスクを用いずに基板法線方向から無偏光露光を行うことによって、第2配向膜23により規定されるプレチルト角を実質的に90度としてもよい。この場合、第2基板12に対する露光は、平行光であっても拡散光であってもよい。「プレチルト角」とは、電圧オフの状態において、配向膜表面と配向膜近傍の液晶分子の長軸方向とがなす角度である。
【0112】
液晶表示装置10は、複数の画素30を有し、それら複数の画素30が液晶表示装置10の表示領域にマトリクス状に配列されている。各画素30は、各々の画素領域が配向分割されており、液晶分子の配向方位が互いに異なる複数の領域を有している。これにより、液晶表示装置10の視野角特性を補償している。
【0113】
なお、本明細書において、「画素」とは、表示において各色の濃淡(階調)を表現する最小単位であり、例えばカラーフィルタ方式の表示装置では、R,G及びB等のそれぞれの階調を表現する単位に相当する。したがって、「画素」と表現した場合、R画素、G画素及びB画素を組み合わせたカラー表示画素(絵素)ではなく、R画素、G画素及びB画素のそれぞれを指す。つまり、カラー液晶表示装置の場合、1つの画素は、カラーフィルタのいずれかの色に対応している。
【0114】
図2に、画素30の配向パターンの一例を示す。なお、図2(a)において、円錐体は液晶分子35を表し、円錐体の頂点側が第1基板11側、円錐体の底面側が第2基板12側を表す。図2(a)は、液晶表示装置10を第2基板12側から見た図である。
【0115】
一例としては、図2(a)に示すように、各画素30には、液晶分子35の配向方位が互いに異なる4つの配向領域が形成されている。これら4つの配向領域(第1ドメイン31、第2ドメイン32、第3ドメイン33、及び第4ドメイン34)は、1画素内において画素30の長手方向(図2のY方向)に並べて配置されている。第1~第4ドメイン31~34における液晶分子35の配向方位は、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっている。なお、本明細書において、「液晶分子の配向方位」は、特に言及しない場合、液晶表示装置10に電圧を印加したときの液晶層13の層面内及び厚み方向における中央付近の液晶分子の配向方位を意味する。
【0116】
具体的には、画素30の短手方向(図2のX方向)を0度としたとき、液晶分子35の配向方位は、第1ドメイン31では実質的に45度、第2ドメイン32では実質的に135度、第3ドメイン33では実質的に225度、第4ドメイン34では実質的に315度となっている。これら4つのドメイン31~34は、図2(a)に示すように、1画素内において、第4ドメイン34、第2ドメイン32、第3ドメイン33、第1ドメイン31の順に画素30の長手方向に沿って配置されている。各画素30の光透過領域(以下、「画素領域」ともいう)を画素30の長手方向において2つに分割する位置には信号線36が配置されている。信号線36により分割された画素領域の一方を形成する2つのドメイン(第4ドメイン34と第2ドメイン32)、及び他方を形成する2つのドメイン(第3ドメイン33と第1ドメイン31)は、各ドメインにおける液晶分子35の配向方位が互いに180度異なっている(図2(a)参照)。
【0117】
なお、本明細書において「実質的に45度」、「実質的に135度」、「実質的に225度」、「実質的に315度」とはそれぞれ、45度±0.5度、135度±0.5度、225度±0.5度、315度±0.5度の範囲をいう。各角度は、好ましくはβ度±0.2度であり、より好ましくはβ度±0.1度(ただし、βは45、135、225又は315である)である。
【0118】
図2(b)及び図2(c)は、1つの画素30の各基板における配向膜表面の液晶分子の長軸方向を電圧オフ状態において基板に投影した方位(チルト方位)を模式的に示した図である。図2中、(b)は第1基板11を示し、(c)は第2基板12を示す。図2中の矢印37はチルト方位を示している。液晶表示装置10においては、第1配向膜22及び第2配向膜23のうち第1配向膜22に対しては、液晶分子35の配向方位に対応する方向に偏光放射線を照射することにより、各ドメイン31~34に所望のプレチルト角特性を付与する。一方、第2配向膜23に対しては偏光紫外線を照射しない。こうした露光処理により、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれの配向領域では、第1配向膜22により規定されるプレチルト角θ1を90度未満とし、第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2を実質的に90度としている。
【0119】
プレチルト角θ1は、第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2よりも小さければよい。液晶分子35の応答遅れを抑制する観点から、プレチルト角θ1は、好ましくは89.0度以下であり、より好ましくは88.5度以下である。また、液晶表示装置10のコントラストの低下を抑制する観点から、プレチルト角θ1は、好ましくは81.0度以上であり、より好ましくは83.0度以上である。なお、本明細書において「実質的に90度」とは、90度±0.5度の範囲をいう。
【0120】
図2(b)に示すように、第1基板11側のチルト方位は、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれにおいて互いに異なっており、任意の2つのドメインでのチルト方位の差が90度の整数倍に略等しくなっている。具体的には、各ドメインでのチルト方位は、画素30の短手方向(X方向)を0度とした場合に、第1ドメイン31では実質的に45度、第2ドメイン32では実質的に135度、第3ドメイン33では実質的に225度、第4ドメイン34では実質的に315度である。
【0121】
また、液晶表示装置10が有する複数の画素30は、図3に示すように、画素30の短手方向(X方向)において隣接するドメイン同士の互いの配向方位が同一になるように、画素30の短手方向に並べて配置されている。なお、図3中、矢印41は、液晶配向剤を用いて形成された塗膜上での偏光放射線の露光方位を示す。符号44は、各画素の第4ドメイン34に対応する領域を示す。
【0122】
上記構成の液晶表示装置10における光配向膜を、上記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を用いて形成することにより、透過率が高く、かつ長時間のバックライト照射後でも液晶配向性が低下しにくく、信頼性の高い液晶表示装置を得ることができる。
【0123】
液晶表示装置10は、種々の用途に有効に適用することができる。液晶表示装置10は、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置として用いることができる。
【実施例0124】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0125】
以下の実施例及び比較例において、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、ポリイミドのイミド化率、並びにエポキシ当量は以下の方法により測定した。
【0126】
[重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
Mw及びMnは、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン(ポリオルガノシロキサン及び付加重合体の場合)、又は、リチウムブロミド及びリン酸含有のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(ポリアミック酸エステルの場合)
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
【0127】
[イミド化率]
ポリイミドを含有する溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMRを測定した。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(E-1)を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1-A/A×α)×100 …(E-1)
(数式(E-1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0128】
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸-メチルエチルケトン法により測定した。
【0129】
本実施例で使用した化合物の構造式を以下に示す。なお、以下では便宜上、「式(X)で表される化合物」を単に「化合物(X)」と略す。
【0130】
(テトラカルボン酸誘導体)
【化15】
【0131】
(ジアミン)
【化16】
【0132】
(変性用カルボン酸)
【化17】
【0133】
(不飽和単量体)
【化18】
【化19】
【0134】
(添加剤)
【化20】
【化21】
【0135】
1.化合物の合成
[合成例1-1]
下記スキームに従い、化合物(DA-1)を合成した。
【化22】
【0136】
・化合物(DA-1-1)の合成
4-ニトロベンズアルデヒド16.5g(100mmol)とシアノマロン酸11.3g(100mmol)をピリジン500mlに溶解させ、そこへピペリジン25mlを加え、その後80℃にて5時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、酢酸エチル300mlを加え、次に塩酸200mlを加えて分液した。水300mlで2回分液した後、ロータリーエバポレーターで溶媒留去し、固体を得た。得られた固体を水100ml、水酸化ナトリウム5gと共に還流下で3時間撹拌した。撹拌後、塩酸でpH=4にし、析出した固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥させることで、中間体として化合物(DA-1-1)を20.3g得た。
【0137】
・化合物(DA-1-2)の合成
化合物(DA-1-1)2.61g(10.0mmol)と4-ニトロアニリン1.38g(10.0mmol)をジクロロメタン50mlに溶解させ、0℃に冷却した。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド1.86g(12.0mmol)と4-ジメチルアミノピリジン0.61g(4.99mmol)を加え、室温に戻し一晩反応させた。その後、1規定塩酸50mlで1回、水50mlで3回分液し、有機層をロータリーエバポレーターで溶媒留去することで、化合物(DA-1-2)を3.27g得た。
【0138】
・化合物(DA-1)の合成
化合物(DA-1-2)3.52g(10.0mmol)に、THFと水を30mlずつ加え、そこに10当量の塩化スズを加え、60℃で2時間反応させた。反応後、酢酸エチル50mlを加え、分液した。さらに、水50mlで2回分液し、有機層をロータリーエバポレーターで溶媒留去した。得られた固体をTHF 50mlに溶かし、そこにエタノール30mlと水10mlを加えた。ロータリーエバポレーターにてゆっくり良溶媒を留去し、析出した固体をろ取乾燥することで、化合物(DA-1)2.48gを得た。
【0139】
[合成例1-2]
下記スキームに従い、化合物(DA-3)を合成した。
【化23】
【0140】
・化合物(DA-3-1)の合成
ホスホノ酢酸トリエチル30.2g(120mmol)の脱水THF溶液200mlを、水素化ナトリウム4.8g(120mmol)に滴下し0℃で2時間撹拌した。そこに、4’-ニトロ-2,2,2-トリフルオロアセトフェノン 21.9g(100mmol)のTHF溶液100mlを滴下し、室温で1時間撹拌し、その後、還流しながら2時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル300mlを加え、飽和NHCl溶液で2回、水で3回分液した。有機層をロータリーエバポレーターにて溶媒留去したのち、水300ml、水酸化ナトリウム10gと共に還流下で3時間撹拌した。撹拌後、塩酸でpH=4にし、析出した固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥させることで、中間体として化合物(DA-3-1)を17.7g得た。以降は、化合物(DA-1-2)、化合物(DA-1)と同様の方法で化合物(DA-3)を合成した。
【0141】
[合成例1-3]
下記スキームに従い、化合物(DA-4)を合成した。
【化24】
【0142】
・化合物(DA-4-2)の合成
化合物(DA-4-1)2.51g(10.0mmol)と酢酸アンモニウム3.85g(50.0mmol)、アニリン4.65g(50.0mmol)にエタノール100mlを加え、還流下で3時間反応させた。反応後、ロータリーエバポレーターにて溶媒留去し、酢酸エチル50mlとTHF50mlに溶解させ、1規定塩酸で3回、水で3回分液した。有機層を溶媒留去した後、水100ml、水酸化ナトリウム3gと共に還流下で3時間撹拌した。撹拌後、塩酸でpH=4にし、析出した固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥させることで、中間体として化合物(DA-4-2)を2.76g得た。
以降は、化合物(DA-1-2)、化合物(DA-1)と同様の方法で化合物(DA-4)を合成した。
【0143】
[合成例1-4]
下記スキームに従い、化合物(M-1)を合成した。
【化25】
【0144】
・化合物(M-1-2)の合成
化合物(M-1-1)31.0g(100mmol)、DBU76.0g(500mmol)、Pd(PPhCl 87.8mg(2.50mmol)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン 2.130g(10.0mmol)を、窒素雰囲気下でDMSO 200mlに溶解させた。次いで、プロピオール酸7.01g(100mmol)を加え、50℃で5時間反応させた。その後、反応液を酢酸エチル200mlに注ぎ、飽和炭酸水素ナトリウム溶液200mlで2回、1規定塩酸200mlで2回、水200mlで3回分液した。有機層を減圧下で溶媒留去することで、化合物(M-1-2) 21.7gを得た。
【0145】
・化合物(M-1-3)の合成
化合物(M-1-2)3.00g(10.1mmol)をジクロロメタン100mlに溶解させ、0℃に氷冷した。次いで、47.0-49.0%濃度の臭化水素酸9gを加え、5時間反応させた。反応液を飽和水酸化ナトリウム水溶液にゆっくり注ぎ、分液した。さらに1規定塩酸50mlで2回、水100mlで2回分液し、有機層を減圧下で溶媒留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物(M-1-3)を1.68g得た。
【0146】
・化合物(M-1)の合成
化合物(M-1-3)1.13g(3.00mmol)に塩化チオニル10mlとDMFを触媒量加え、60℃で2時間反応させた。反応後、塩化チオニルを減圧留去した。得られた固体を脱水THF20mlに溶解させ、溶液Aとした。溶液Aとは別に、脱水THF10mlに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.391g(3.00mmol)とトリエチルアミン0.500gを溶解させ、0℃に氷冷した。ここに溶液Aを滴下し、室温で一晩反応させた。反応後、反応液を1規定塩酸で2回、水で3回分液し、有機層を減圧留去した。得られた粘性体をカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物(M-1)1.03gを得た。
【0147】
[合成例1-5]
下記スキームに従い、化合物(M-2)を合成した。
【化26】
【0148】
・化合物(M-2-2)の合成
原料を変更した以外は、化合物(DA-3-1)と同様の方法で化合物(M-2-2)を合成した。
【0149】
・化合物(M-2)の合成
化合物(M-2-2)3.70g(10.0mmol)に塩化チオニル20mlとDMFを触媒量加え、60℃で2時間反応させた。反応後、塩化チオニルを減圧留去した。得られた固体を脱水THF50mlに溶解させ、溶液Aとした。他方、脱水THF50mlに、4-ヒドロキシフェニルマレイミド1.90g(10.0mmol)とトリエチルアミン1.20gを溶解させ、0℃に氷冷した。ここに溶液Aを滴下し、室温で一晩反応させた。反応後、反応液を1規定塩酸で2回、水で3回分液し、有機層を減圧留去した。さらに、得られた固体をTHF50mlに溶かし、そこにエタノール30mlと水10mlを加えた。ロータリーエバポレーターにて、ゆっくり良溶媒を留去し、析出した固体をろ取乾燥することで、化合物(M-2)3.31gを得た。
【0150】
[合成例1-6]
下記スキームに従い、化合物(M-3)を合成した。
【化27】
【0151】
・化合物(M-3-2)の合成
J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 40, 9918-9919と同様の方法で、化合物(M-3-2)のメチルエステルを合成後、化合物(DA-1-1)と同様の方法で加水分解することで化合物(M-3-2)を得た。以降は、化合物(M-2)と同様の方法で合成した。
【0152】
[合成例1-7及び合成例1-8]
原料を替えた以外は、化合物(M-2)と同様の方法で化合物(M-4)及び化合物(M-5)を合成した。
【化28】
【化29】
【0153】
[合成例1-9]
下記スキームに従い、化合物(M-6)を合成した。
【化30】
【0154】
・化合物(M-6-1)の合成
化合物(M-1-1)15.46g(50.0mmol)、メタクリル酸メチル16.0ml(150.0mmol)、P(o-tolyl)1.52g(5.00mmol)、iPrNEt 26.1ml(150mmol)、酢酸パラジウム561mg(2.50mmol)、DMF250mlを加えて、十分に窒素置換を行い、100℃に昇温して6時間反応させた。LCで原料消失を確認したのち、室温まで冷却した。冷却後、酢酸エチル200ml加え、室温でしばらく撹拌し、沈殿をろ過して取り除いた。ろ液にヘキサン200mlを加え、1N HCl 100mlで2回、蒸留水 100mlで2回、飽和食塩水100mlで1回分液洗浄を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーター及びオイルポンプで減圧留去した。得られた固体に、水300ml、水酸化ナトリウム5gと共に還流下で3時間撹拌した。撹拌後、塩酸でpH=4にし、析出した固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥させることで、中間体として化合物(DA-6-2)を17.2g得た。以降は、化合物(M-2)と同様の方法で化合物(M-6)を合成した。
【0155】
[合成例1-10]
原料を替えた以外は、化合物(M-6)と同じ方法で化合物(M-7)を合成した。
【化31】
【0156】
2.重合体の合成
<ポリアミック酸の合成>
[合成例2-1]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(化合物(T-1))50モル部、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物50モル部、化合物(DA-1)70モル部、及び化合物(DA-2)30モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、40℃で3時間反応させることにより重合体(P-1)を10質量%含有する溶液を得た。
【0157】
[合成例2-4、2-11、2-12及び2-13、比較合成例3,4]
使用するテトラカルボン酸誘導体及びジアミンの種類及び量を下記表1に記載のとおり変更した以外は、上記合成例2-1と同様の操作を行うことにより、重合体(P-10)、(PAA-S)、(PAA-1)、(PAA-2)、(P-13)及び(P-14)をそれぞれ含有する溶液を得た。なお、表1中、テトラカルボン酸誘導体の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸誘導体の全量に対する各化合物の使用割合(モル%)を示す。ジアミンの数値は、重合体の合成に使用したジアミンの全量に対する各化合物の使用割合(モル%)を示す。
【0158】
<ポリイミドの合成>
[合成例2-2]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(化合物(T-1))100モル部、化合物(DA-2)20モル部、及び化合物(DA-3)80モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、40℃で3時間反応させることによりポリアミック酸を10質量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液に、ピリジン及び無水酢酸を、重合に使用したテトラカルボン酸二無水物1モルに対してそれぞれ1モルずつ添加し、100℃において8時間脱水閉環反応を行った。反応終了後の反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。回収した沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧下40℃において15時間乾燥することにより重合体(P-2)を得た。得られた重合体(P-2)のイミド化率は68%であった。
【0159】
<ポリアミック酸エステルの合成>
[合成例2-3]
窒素導入管、還流冷却管、及び温度計を備えた200mL三口フラスコに、下記式(TA-3)で表される化合物を22.42g、テトラヒドロフランを100mL、ピリジンを0.79g入れ、窒素気流下で撹拌して懸濁させた。この懸濁液にβ-メタリルアルコール15.14gを加え、室温で2時間撹拌した。さらに60℃で8時間反応させ、無色透明な溶液を得た。この反応溶液を60℃で減圧濃縮し、さらに真空乾燥し、下記式(DE-1a)で表される化合物と下記式(DE-1b)で表される化合物との混合物(以下、「混合物(DE-1a/b)」という。)36.84gを得た。
【化32】
【0160】
続いて、窒素導入管及び還流冷却管を備えた100mLナスフラスコに、混合物(DE-1a/b)を18.42g、トルエンを100mL入れ、80℃で30分間撹拌した。その後、撹拌しながら室温まで冷却し、さらに室温で30分間撹拌した。得られた懸濁液をろ過し、トルエン5mLで2回洗浄した。得られた固体を60℃で真空乾燥し、白色粉末の化合物(DE-1a) 15.47gを得た(収率84%)。
【0161】
窒素導入管、還流冷却管、及び温度計を備えた500mL三口フラスコに、化合物(DE-1a)を14.74g、ヘプタンを80mL、ピリジンを0.032g入れ、窒素気流下75℃で撹拌した。塩化チオニル14.28gを20分かけてゆっくり滴下し、反応の進行に伴う発泡を確認した。滴下終了後、75℃で2時間反応させ、無色透明な溶液を得た。この反応溶液を60℃で減圧濃縮し、過剰の塩化チオニルを留去した。得られた液体にヘプタン80mLを加えて室温で撹拌し、析出した不溶分をろ過により除去した。このろ液を60℃で減圧濃縮し、さらに高真空下60℃で4時間乾燥し、無色透明液体の下記式(DE-1a)で表される化合物15.89gを得た(収率98%)。
【化33】
【0162】
窒素導入管及び温度計を備えた50mL三口フラスコに、化合物(T-3)を100モル部、化合物(DA-2)を70モル部、化合物(DA-4)を30モル部、NMPを57g、トリエチルアミンを24g入れ、約10℃に冷却し、トリアジン系脱水縮合剤であるDMT-MMを83g加え、窒素気流下室温で24時間反応させた。得られた重合溶液をNMPにより希釈し、メタノール中に撹拌しながらゆっくり注ぎ凝固させた。沈殿した固体を回収し、メタノール中で撹拌洗浄を2回繰り返し、60℃で真空乾燥し、白色粉末のポリアミック酸エステル(以下、これを「重合体(P-3)」という)を得た。この重合体の数平均分子量Mnは14,000、分子量分布Mw/Mnは2.8であった。
【0163】
【表1】
【0164】
<ポリオルガノシロキサンの合成>
[合成例2-5]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを室温で混合した。次いで、純水100gをゆっくり滴下した後、80℃にて6時間撹拌した。その後、有機層を取り出し、これを0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後に濃縮し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS-1)を粘調な透明液体として得た。このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS-1)のMwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
次いで、100mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(EPS-1)8.0g、メチルイソブチルケトン26g、化合物(CA-1)15.3g、及び商品名「UCAT 18X」(サンアプロ社製の4級アミン塩)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をメタノールに投入して生成した沈殿物を回収し、これを酢酸エチルに溶解して溶液とし、該溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、重合体(P-4)を白色粉末として23.2g得た。この重合体(P-4)の重量平均分子量Mwは14,100であった。
【0165】
<付加重合体の合成>
[合成例2-6]
窒素下、100mL二口フラスコに、重合モノマーとして、化合物(M-1)9.0g、化合物(M-9)3.0g、及び化合物(M-10)1.8g、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.70g、連鎖移動剤として2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン0.20g、並びに溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)50mlを加え、70℃で6時間重合した。メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、室温で8時間真空乾燥することで目的の重合体(P-5)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは42,000、分子量分布Mw/Mnは2.1であった。
【0166】
[合成例2-7~2-10、比較合成例1,2,5]
使用する重合モノマーの種類及び量を下記表2に記載のとおり変更した以外は、上記合成例2-6と同様の操作を行うことにより、重合体(P-6)~(P-9)、(P-11)、(P-12)及び(P-15)を得た。なお、表2中、重合モノマーの数値は、重合体の合成に使用した重合モノマーの全量に対する各化合物の使用割合(モル%)を示す。
【0167】
【表2】
【0168】
3.液晶配向剤及び液晶表示装置の製造、並びに評価
[実施例1]
(1)液晶配向剤の調製
合成例2-1で得た重合体(P-1)5質量部、合成例2-12で得た重合体(PAA-1)100質量部、及び化合物(ADD-1)10質量部が入った容器に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0169】
(2)光FFS型液晶表示素子の製造
櫛歯状にパターニングされたクロムからなる2系統の金属電極(電極A及び電極B)を有し、それら電極A及び電極Bに対して独立に電圧の印加が可能なガラス基板を準備した。このガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対とし、ガラス基板の電極を有する面と対向ガラス基板の一面とに、上記で調製した液晶配向剤(AL-1)を、スピンコーターを用いてそれぞれ塗布した。次いで、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後に、庫内を窒素置換した200℃のオーブンで1時間加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。
この操作を繰り返し、透明導電膜上に塗膜を有するガラス基板を一対(2枚)得た。上記で得た塗膜に対し、Hg-Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて、313nmの輝線を含む偏光紫外線2,000J/mを基板法線方向から照射して光配向処理を施した。なお、この照射量は、波長313nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
次に、液晶配向膜を形成した一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に液晶組成物(メルク社製、MLC-6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、液晶セルを得た。さらに、液晶セルにおける基板の外側両面に、2枚の偏光板の変更方向が互いに直交するように偏光板を貼り合わせた。
【0170】
(3)バックライト信頼性(BL信頼性)の評価
上記で作製した液晶表示素子を、27,000cd/mの高輝度バックライト上で500時間静置し、バックライトの照射前後における特性変化を下記(3A)の方法により評価した。
(3A)リタデーション変化率によるBL信頼性の評価
液晶表示素子を、オプトサイエンス社製Axoscanによりリタデーションを測定し、下記数式(z-1)によりバックライト照射前後のリタデーションの変化率αを算出した。変化率αが小さいほど、液晶表示素子の長時間駆動後でも残像が発生しにくく、BL信頼性が良好であるといえる。変化率αが0.5%以下であった場合を「最良(◎)」、0.5%よりも大きく1%以下であった場合を「良(○)」、1%よりも大きく2%以下であった場合を「可(△)」、2%よりも大きかった場合を「不可(×)」とした。
α=Δθ/θ1 …(z-1)
(式(z-1)中、Δθは照射前後のリタデーション差を表し、θ1は照射前のリタデーションを表す。)
その結果、この実施例では「良(○)」の評価であった。
【0171】
[実施例2,3及び比較例3]
液晶配向剤の配合処方を表3のとおりに変更した点以外は実施例1と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、調製した液晶配向剤を用い、実施例1と同様にして光FFS型液晶表示素子を製造するとともに、実施例1と同様の評価を行った。それらの結果を表3に示した。
【0172】
[実施例4]
(1)液晶配向剤の調製
合成例2-5で得た重合体(P-4)50質量部、合成例2-12で得た重合体(PAA-1)100質量部、及び化合物(ADD-4)5質量部が入った容器に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-4)を調製した。
【0173】
(2)光垂直型液晶表示素子の製造(UV2A)
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤(AL-4)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、200℃40分間本焼成し、膜厚0.08μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg-Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて、313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線に対し40°傾いた方向から室温で照射した。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を形成した基板を一対(2枚)作成した。
液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの1枚における、液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板に照射した紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように一対の基板を圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に液晶組成物(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、液晶セルを得た。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、液晶セルを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、液晶セルにおける基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜形成時に照射した紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせた。
【0174】
(3)BL信頼性の評価
上記で作製した液晶表示素子を、27,000cd/mの高輝度バックライト上で500時間静置し、バックライトの照射前後における特性変化を下記(3B)の方法により評価した。
(3B)チルト戻りによるBL信頼性の評価
液晶のプレチルト角をシンテック社製Optiproにより測定し、バックライト照射前後のプレチルト角を比較することによりBL信頼性を評価した。照射後と照射前のプレチルト角差が0.1度以下であった場合を「最良(◎)」、0.1度よりも大きく0.5度以下であった場合を「良(○)」、0.5度よりも大きく1.0度以下であった場合を「可(△)」、1.0度よりも大きかった場合を「不可(×)」とした。その結果、この実施例では「可(△)」の評価であった。
【0175】
[実施例5~10及び比較例1,2,4,5]
液晶配向剤の配合処方を表3のとおりに変更した点以外は実施例4と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、調製した液晶配向剤を用い、実施例4と同様にして光垂直型液晶表示素子を製造するとともに、実施例4と同様の評価を行った。それらの結果を表3に示した。
【0176】
【表3】
【0177】
以上の結果から、重合体(P)を含む液晶配向剤とした実施例1~10では、バックライトを長時間照射した後においても液晶配向性が良好でありBL信頼性に優れていた。特に、重合体(P)として、上記式(1)中のRβがトリメチルシリル基である重合体(P-7)を配合した実施例7、Rβがエチル基である重合体(P-8)を配合した実施例8、Rβがメチル基である重合体(P-9)を配合した実施例9、及びRβがメチル基である重合体(P-10)を配合した実施例10では、バックライトの照射前後のプレチルト角差が小さく、BL信頼性が良(○)又は最良(◎)の評価であった。
【0178】
これに対し、重合体(P)を含まない液晶配向剤を用いた比較例1~5では、BL信頼性の評価が不良であった。なお、シンナメート構造中のβ位にエステル基(-COOMe)が導入された重合体(P-15)を用いた比較例5においてBL信頼性の評価が不可であった理由としては、エステル基(-COOMe)は高温でのポストベークにより脱炭酸することが影響を及ぼしたと推測される。
【0179】
[実施例11]
(1)液晶配向剤の調製
合成例2-10で得た重合体(P-9)を用いて、実施例9と同様の組成及び調製方法により液晶配向剤(AL-11)を調製した。
【0180】
(2)液晶表示装置の製造及び評価
図1に対応する液晶表示装置を製造した。まず、画素電極を有するTFT基板、及び対向電極を有するCF基板を準備した。TFT基板の画素電極及びCF基板の対向電極としては、スリットが形成されていないベタ電極を用いた。TFT基板及びCF基板の各電極配置面に、上記(1)で調製した液晶配向剤(AL-11)をスピンキャスト法により塗布した。これを80℃で1分間プレベークを行った後、230℃で40分間ポストベークを行い、最終的な膜厚が120nmになるようにした。続いて、TFT基板に形成した塗膜(液晶配向膜)に対し、スキャン露光を行った。スキャン露光は、図2に従い、液晶分子の配向方位が互いに異なる4つのドメインが1画素内に形成されるように、313nmの直線偏光を20mJ/cmの強度により合計4回行った。一方、液晶配向剤(AL-11)を用いてCF基板上に形成した液晶配向膜に対しては露光を行わなかった。
【0181】
続いて、TFT基板の液晶配向膜の形成面に、負の誘電異率方性を有するネマチック液晶を滴下し、CF基板の外縁部に、シール材として熱硬化性エポキシ樹脂を配置した。その後、TFT基板、CF基板の配向膜面が互いに内側になるようにして貼り合わせた。続いて、130℃で1時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ、液晶セルを得た。得られた液晶セルをAC6Vで駆動した際の透過率を測定した。透過率の評価は、LinkGlobal21社製のExpert LCDを用いてシミュレーションにより算出した。計算条件は、液晶物性:Δε=3、Ne=1.6、No=1.5、セルギャップ:3.2μm、プレチルト角:計測値(TFT基板側:88.0°、CF基板側;90.0°)を適用し、印加電圧6Vの結果から透過率を評価した。透過率の計算値が0.275未満の場合に「可(△)」、0.275以上0.280未満の場合に「良(○)」、0.280以上0.285未満の場合に「優良(◎)」、0.285以上の場合に「最良(◎◎)」と評価した。また、実施例4と同様に、上記で作製した液晶表示装置を27,000cd/mの高輝度バックライト上で500時間静置し、バックライトの照射前後における特性変化(チルト戻りによるBL信頼性)を上記(3B)の方法により評価した。結果を表4に示した。
【0182】
[比較例6及び参考例1]
使用する重合体を表4のとおりに変更した点以外は実施例11と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、調製した液晶配向剤を用い、実施例11と同様にして液晶表示装置を製造するとともに、実施例11と同様の評価を行った。それらの結果を表4に示した。
【0183】
【表4】
【0184】
表4に示すように、重合体(P)を含む液晶配向剤を用いた実施例11は、透過率が高く、BL信頼性にも優れていた。これに対し、重合体(P)を含まない液晶配向剤を用いた比較例6は、透過率及びBL信頼性が実施例11よりも劣っていた。また、上記式(1)中のカルボニル炭素のβ位に替えてα位に置換基(メチル基)を有する部分構造を含む重合体を用いた参考例1は、透過率の評価は「◎」であり、チルト戻りに基づくBL信頼性の評価は「○」であった。これらの結果から、重合体(P)を含有する液晶配向剤によれば、液晶表示装置の透過率及びBL信頼性をより良化できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0185】
10…液晶表示装置、11…第1基板、12…第2基板、13…液晶層、14…透明基板、15…画素電極、16…透明基板、17…ブラックマトリクス、18…カラーフィルタ、19…対向電極、22…第1配向膜、23…第2配向膜、24…スペーサー、25…シール材、30…画素、31…第1ドメイン、32…第2ドメイン、33…第3ドメイン、34…第4ドメイン、35…液晶分子、36…配線
図1
図2
図3