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特開2022-173091樹脂組成物、成形体及び低誘電性樹脂用の流動性向上剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173091
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体及び低誘電性樹脂用の流動性向上剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20221110BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20221110BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L81/02
C08L71/12
C08L67/04
C08L23/00
C08L67/02
C09K3/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070544
(22)【出願日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2021078843
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021208656
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】川端 昭寛
(72)【発明者】
【氏名】柴地 功基
(72)【発明者】
【氏名】芝原 遼
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BA01X
4J002CF07W
4J002CF18W
4J002CH07W
4J002CN02W
(57)【要約】
【課題】本発明は、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等の低誘電性樹脂が有する低誘電特性を維持しつつ、成形時の発煙が抑制され、成形加工性に優れる低誘電性の樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(A)、並びに石油樹脂(B)を含み、前記石油樹脂(B)の5%重量減少温度が270℃以上であり、前記石油樹脂(B)の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が、10~95℃である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(A)、並びに石油樹脂(B)を含み、
前記石油樹脂(B)の5%重量減少温度が270℃以上であり、
前記石油樹脂(B)の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が、10~95℃である、樹脂組成物。
【請求項2】
上記液晶ポリマーが、液晶ポリエステルである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の軟化点が、120~190℃である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られる、成形体。
【請求項6】
5%重量減少温度が270℃以上であり、
混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が、10~95℃である石油樹脂(B)を含む、低誘電性樹脂用の流動性向上剤。
【請求項7】
(B)成分の軟化点が、120~190℃である、請求項6に記載の低誘電性樹脂用の流動性向上剤。
【請求項8】
上記低誘電性樹脂が、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、請求項6又は7に記載の低誘電性樹脂用の流動性向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体及び低誘電性樹脂用の流動性向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の通信機器や、次世代テレビ等の電子機器において、大容量のデータを高速に送受信することが要求されている。これに伴い、電気信号の高周波数化が進んでおり、具体的には、無線通信分野では、第5世代移動通信システム(5G)の導入により、10GHz以上の高周波数帯域が使用されている。
【0003】
しかしながら、使用される信号の周波数が高くなるに伴い、情報の誤認識を招きうる出力信号の品質低下、すなわち、伝送損失が大きくなる。この伝送損失は、導体に起因する導体損失と、電子機器や通信機器における基板等の電気電子部品を構成する絶縁用の樹脂に起因する誘電損失とからなるが、導体損失は使用する周波数の0.5乗、誘電損失は周波数の1乗に比例するため、高周波帯、とりわけGHz帯においては、この誘電損失による影響が非常に大きくなる。
【0004】
この伝送損失を低減するために、誘電損失に係る因子である比誘電率及び誘電正接が共に低い特性(以下、低誘電特性ともいう。)を有する低誘電性樹脂が求められている。このような低誘電性樹脂としては、例えば、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が検討されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-250620号公報
【特許文献2】特開2019-131685号公報
【特許文献3】特開2014-198778号公報
【特許文献4】特開2013-043942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等の低誘電性樹脂はガラス転移温度や融点が高く、溶融粘度が高いため、成形加工性に劣るものであった。また、成形加工性を向上させるために、これら低誘電性樹脂に従来の流動性向上剤を用いると、当該低誘電性樹脂が有する低誘電特性が低下してしまう場合があり、高周波領域(GHz帯)にて使用される電子材料には適さないことがあった。さらに、これら低誘電性樹脂は成形加工温度が250℃以上と非常に高いため、従来の流動性向上剤を添加して成形すると発煙が生じる問題もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等の低誘電性樹脂が有する低誘電特性を維持しつつ、成形時の発煙が抑制され、成形加工性に優れる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、低誘電性樹脂の低誘電特性を維持しつつ、これら低誘電性樹脂の成形時の発煙を抑制し、低誘電性樹脂の成形加工性を向上し得る、新規な流動性向上剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、上記低誘電性樹脂に特定の石油樹脂を用いた組成物によって、上記課題を解決することを見出した。また、本発明者は、特定の石油樹脂を含む流動性向上剤によって、上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明は、以下の樹脂組成物、成形体及び流動性向上剤に関する。
【0010】
1.液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(A)、並びに石油樹脂(B)を含み、
前記石油樹脂(B)の5%重量減少温度が270℃以上であり、
前記石油樹脂(B)の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が、10~95℃である、樹脂組成物。
【0011】
2.上記液晶ポリマーが、液晶ポリエステルである、上記項1に記載の樹脂組成物。
【0012】
3.(B)成分の軟化点が、120~190℃である、上記項1又は2に記載の樹脂組成物。
【0013】
4.(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、上記項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0014】
5.上記項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られる、成形体。
【0015】
6.5%重量減少温度が270℃以上であり、
混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が、10~95℃である石油樹脂(B)を含む、低誘電性樹脂用の流動性向上剤。
【0016】
7.(B)成分の軟化点が、120~190℃である、上記項6に記載の低誘電性樹脂用の流動性向上剤。
【0017】
8.上記低誘電性樹脂が、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、上記項6又は7に記載の低誘電性樹脂用の流動性向上剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等の低誘電性樹脂が有する低誘電特性を維持しつつ、その成形加工性に優れる。また、本発明の樹脂組成物は、成形時における発煙が抑制されている。
【0019】
本発明の流動性向上剤は、低誘電性樹脂に用いることにより、該低誘電性樹脂の低誘電特性を維持しつつ、その成形加工性を向上させる。また、本発明の流動性向上剤は、低誘電性樹脂の成形時における発煙を抑制し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(A)(以下、(A)成分とも記す)、並びに石油樹脂(B)(以下、(B)成分とも記す)を含むものである。
【0021】
<樹脂(A)>
(A)成分は、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であれば、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0022】
(液晶ポリマー)
上記液晶ポリマーは、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。液晶ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0023】
上記液晶ポリマーは、例えば、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド等が挙げられる。液晶ポリエステルは、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリエステル等が挙げられ、その中でも、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いて成る全芳香族ポリエステルが好ましい。液晶ポリエステルアミドは、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリエステルアミド等が挙げられ、その中でも、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いて成る全芳香族ポリエステルアミドが好ましい。また、上記液晶ポリマーとしては、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルを用いることもできる。
【0024】
上記芳香族ポリエステルは、特に限定されないが、例えば、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、
(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル等、が挙げられる。
【0025】
上記芳香族ポリエステルアミドは、特に限定されないが、例えば、
(1)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、
(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、
(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、
(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等、が挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0026】
上記芳香族ヒドロキシカルボン酸は、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、または3-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3-メトキシ-4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-5-メチル-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ナフトエ酸、2-クロロ-4-ヒドロキシ安息香酸、3-クロロ-4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸、2,5-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸、3-ブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-5-クロロ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-7-クロロ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-5,7-ジクロロ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
【0027】
上記芳香族ジオールは、例えば、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、3,3'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシテルフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ナフタレンジオール、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,6-ナフタレンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン等の芳香族ジオール、またはクロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4-クロロレゾルシン、4-メチルレゾルシン等の芳香族ジオールのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0028】
上記芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、4,4'-トリフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェノキシブタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-4,4'-ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル-3,3'-ジカルボン酸、ジフェノキシエタン-3,3'-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-3,3'-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、またはクロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等で代表される上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
【0029】
上記芳香族ヒドロキシアミンは、例えば、4-アミノフェノール、N-メチル-4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-クロロ-4-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-4'-ヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4'-ヒドロキシジフェニルエーテル、4-アミノ-4'-ヒドロキシジフェニルメタン、4-アミノ-4'-ヒドロキシジフェニルスルフィド等が挙げられる。
上記芳香族ジアミンは、例えば、1,4-フェニレンジアミン、N-メチル-1,4-フェニレンジアミン、N,N'-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、2,5-ジアミノトルエン、4,4'-エチレンジアニリン、4,4'-ジアミノジフェノキシエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)等が挙げられる。
【0030】
上記芳香族ポリエステルは、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸を構成成分として有する芳香族ポリエステルであるのが、より好ましい。また、上記芳香族ポリエステルアミドは、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸を構成成分として有する芳香族ポリエステルアミドであるのが、より好ましい。
【0031】
上記液晶ポリマーの製造方法は、特に限定されず、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、上述した原料モノマー化合物(又は原料モノマーの混合物)を用いて、直接重合法やエステル交換法を用いて、公知の方法で製造することができるが、通常は、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。エステル形成能を有する化合物である場合は、そのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階でアシル化剤等を用いて前駆体から該エステル形成能を有する誘導体に変性されたものを用いてもよい。アシル化剤としては、無水酢酸等の無水カルボン酸等を挙げることができる。
【0032】
上記重合に際しては、種々の触媒を使用してもよい。当該触媒は、例えば、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒が挙げられる。触媒の使用量は、通常はモノマーの全質量に対して、約0.001~1質量%であり、特に、約0.01~0.2質量%が好ましい。
【0033】
上記液晶ポリマーは、樹脂組成物の低誘電特性、耐熱性及び高強度に優れる点から、液晶ポリエステルが好ましく、同様の点から、全芳香族ポリエステルがより好ましい。
【0034】
(上記液晶ポリマーの物性)
上記液晶ポリマーの物性は特に限定されない。上記液晶ポリマーの示差走査熱量計で測定される融点(Tm2)は、250℃以上400℃以下であり、好ましくは260℃以上380℃以下であり、より好ましくは280℃以上350℃以下である。
【0035】
なお、融点(Tm2)は、JIS K-7121(1999)に基づいた方法により、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点(Tm1))の測定後、(融点(Tm1)+40)℃で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱(2ndRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。
【0036】
上記液晶ポリマーは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を含んでもよい。無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
【0037】
(ポリフェニレンエーテル樹脂)
上記ポリフェニレンエーテル樹脂は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0038】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる単独重合体、或いは共重合体等が挙げられる。
【0039】
【化1】
(式(1)中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良いアルキル基、アルコキシ基又は置換基を有していても良いアリール基であり、nは繰り返し数である。)
【0040】
上記一般式(1)で表される単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。
【0041】
又、共重合体としては、例えば、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールとo-クレゾールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体等が挙げられる。
【0042】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、特に限定されず、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書、同第3257358号明細書、特開昭50-51197号公報、特公昭52-17880号公報、及び同63-152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
【0043】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいてもよい。前記フェニレンエーテルユニットとしては、例えば、2-(ジアルキルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユニットや、2-(N-アルキル-N-フェニルアミノメチル)-6-メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。また、上記ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものであっても良い。更には、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びこれらの酸無水物等やこれら不飽和ジカルボン酸の2個のカルボキシル基のうちの1個または2個がエステルになっているもの、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレン、エポキシ化天然油脂等、アリルアルコール、4-ペンテン-1-オール、1,4-ペンタジエン-3-オールなどの一般式CnH2n-3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式CnH2n-5OH、CnH2n-7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等によって変性されているポリフェニレンエーテル樹脂であっても良い。これら変性されたポリフェニレンエーテル樹脂は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上記の変性されたポリフェニレンエーテル樹脂の融点は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/分で昇温するときに得られる温度-熱流量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義され、ピークトップ温度が複数ある場合にはその内の最高の温度で定義される。
【0044】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂は、芳香族ビニル系重合体、ポリアミド等のポリフェニレンエーテル以外の樹脂成分を含有しても良い。芳香族ビニル系重合体としては、例えば、アタクティックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0045】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂が、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレンを含む混合物(いわゆる変性ポリフェニレンエーテル樹脂)である場合、ポリフェニレンエーテルの含有量は、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの合計量に対して、通常70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。
【0046】
上記変性ポリフェニレンエーテル樹脂の市販品は、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピエース」(登録商標)、SABIC社製「NORYL」(登録商標)、旭化成(株)製「ザイロン」(登録商標)等が挙げられる。
【0047】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を含んでもよい。無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
【0048】
(ポリフェニレンサルファイド樹脂)
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0049】
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、例えば、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体等が挙げられる。
【0050】
【化2】
【0051】
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含む重合体であることが耐熱性の点で好ましい。また、上記構造式におけるフェニレン基としては、例えば、p-フェニレン、m-フェニレン、o-フェニレン、アルキル置換フェニレン(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)、フェニル置換フェニレン、ハロゲン置換フェニレン、アミノ置換フェニレン、アミド置換フェニレン、p,p’-ジフェニレンスルフォン、p,p’-ビフェニレン、p,p’-ビフェニレンエーテル、p,p’-ビフェニレンカルボニル及びナフタレン等を挙げることができる。これらのフェニレン基からなるポリフェニレンサルファイド樹脂としては、同一の繰り返し単位からなるホモポリマー、2種以上の異なるフェニレン基からなるコポリマー及びこれらの混合物であってもよい。
【0052】
また、上記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されることが可能である。
【0053】
【化3】
【0054】
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法は、特に限定されず、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、ポリハロゲン芳香族化合物及びスルフィド化剤を用いて、特公昭45-3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52-12240号公報や特開昭61-7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。また、上記のように得られたポリフェニレンサルファイド樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0055】
上記ポリハロゲン芳香族化合物は、例えば、p-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロ-p-キシレン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン等が挙げられ、好ましくはp-ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p-ジハロゲン芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0056】
上記スルフィド化剤は、例えば、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、硫化水素等が挙げられる。上記アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。上記アルカリ金属水硫化物は、例えば、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物及び水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。上記スルフィド化剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、上記スルフィド化剤は、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から調製されるアルカリ金属硫化物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から調製されるアルカリ金属硫化物等も用いることができる。
【0058】
なお、上記スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0059】
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂の市販品は、例えば、東レ(株)製「トレリナ」(登録商標)、DIC(株)製「DIC.PPS」(登録商標)、ポリプラスチックス(株)製「ジュラファイド」(登録商標)等が挙げられる。
【0060】
(ポリフェニレンサルファイド樹脂の物性)
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂の物性は特に限定されない。上記ポリフェニレンサルファイド樹脂の融点(Tm(A))は、260~300℃であることが好ましい。
【0061】
なお、上記ポリフェニレンサルファイド樹脂の融点(Tm(A))は、示差走査熱量計(TA Instruments製DSC Q2000)を用い、25℃から320℃の範囲を10℃/分の条件で昇温して、1水準につき3回測定し、得られたDSC曲線の最も大きな吸熱ピークのピークトップ温度の算術平均値から求めた。
【0062】
上記ポリフェニレンサルファイド樹脂は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を含んでもよい。無機及び有機充填剤は一種又は二種以上を併用することができる。
【0063】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂)
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0064】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂である。
【0065】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位以外の、他のジカルボン酸単位及び他のジオール単位を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であっても良い。また、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位のみがエステル結合したポリブチレンテレフタレート単独重合体と、前記共重合体との混合物であっても良い。
【0066】
上記の他のジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、及び、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。なお、これらテレフタル酸以外の他のジカルボン酸を含んでいる場合の共重合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の10モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5モル%未満、さらに好ましくは3モル%未満である。
【0067】
上記の他のジオールとしては、例えば、炭素原子数2~20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。なお、これらの1,4-ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいる場合の共重合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の10モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5モル%未満、さらに好ましくは3モル%未満である。
【0068】
また、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0069】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記したように共重合体であってもよいが、上記ポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。
【0070】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、特に限定されず、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることもできる。
【0071】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する方法が好ましい。
【0072】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0073】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂の物性)
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の物性は特に限定されない。上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、融点が215℃以上であることが好ましく、より好ましくは220℃以上、さらには222℃以上であることが好ましい。また、当該融点は、250℃以下が好ましく、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0074】
なお、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は、JIS K7121に基づく示差熱分析法(DSC)により、昇温速度20℃/minで測定する樹脂の融点(Tm)である。
【0075】
(樹脂(A)の物性)
(A)成分の物性は特に限定されない。(A)成分は、1GHzにおける誘電正接tanδが0.01以下であることが好ましい。このような低誘電特性を有する(A)成分であれば、高周波帯(GHz帯)における誘電損失の影響が小さくなる。
【0076】
<石油樹脂(B)>
(B)成分は、その5%重量減少温度が270℃以上であり、その混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が10~95℃であれば、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0077】
本発明の樹脂組成物は、(B)成分を用いることにより、樹脂組成物の溶融粘度が低くなるため、その成形加工性に優れ、且つ(A)成分が有する低誘電特性を維持し得る。従来の流動性向上剤は、(A)成分の低誘電特性を低下させる場合があったが、(B)成分は、それ自体が低誘電特性を有しているために、(A)成分を含む樹脂組成物に用いても、(A)成分が有する低誘電特性を低下させることなく、樹脂組成物の成形加工性を向上し得る。
【0078】
(B)成分は、例えば、各種公知の石油樹脂が挙げられる。当該石油樹脂は、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂環族・芳香族系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂及びこれらの水素化物(以下、これらの水素化物を水素化石油樹脂とする)等が挙げられる。石油樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても良い。
【0079】
上記脂肪族系石油樹脂としては、例えば、ナフサのC5石油留分から得られるC5系石油樹脂等が挙げられる。C5石油留分は、例えば、イソプレン、トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等に代表される炭素数4~6の共役ジオレフィン性不飽和炭化水素類;ブテン、2-メチルー1ーブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン等に代表される炭素数4~6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;シクロペンタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素;これらの混合物等が挙げられる。
【0080】
上記脂環族系石油樹脂としては、例えば、ナフサのシクロペンタジエン系石油留分から得られるジシクロペンタジエン系石油樹脂等が挙げられる。シクロペンタジエン系石油留分は、例えば、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、及びこれらの2量体、3量体、共2量体、更にはこれらの混合物等が挙げられる。該2量体は、例えば、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0081】
上記芳香族系石油樹脂としては、例えば、ナフサのC9石油留分から得られるC9系石油樹脂、該C9系石油樹脂を単独、又は複数重合させた共重合体等が挙げられる。C9石油留分は、例えば、スチレン等の炭素数8の芳香族化合物;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン等の炭素数9の芳香族化合物;2-イソプロペニルトルエン、4-イソプロペニルトルエン、1-メチルインデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン等の炭素数10の芳香族化合物;2,3-ジメチルインデン、2,5-ジメチルインデン等の炭素数11の芳香族化合物;これらの混合物等が挙げられる。
【0082】
上記脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、例えば、上記C5石油留分とC9石油留分から得られるC5/C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。
【0083】
上記脂環族・芳香族系石油樹脂としては、例えば、上記シクロペンタジエン系石油留分とC9石油留分から得られるシクロペンタジエン/C9共重合系石油樹脂等が挙げられ、具体的には、ジシクロペンタジエン/スチレン共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン/C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。
【0084】
上記ピュアモノマー樹脂としては、例えば、上記C9石油留分を精製して得られる重合性モノマー(スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、インデン)をカチオン重合やラジカル重合等により重合して得られる樹脂が挙げられる。
【0085】
上記水素化石油樹脂は、各種公知の手段を用いて得ることができる。具体的には、例えば、公知の水素化条件を用いて、上記の各種石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂環族・芳香族系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂)を水素化することにより得ることができる。
【0086】
水素化条件は、例えば、水素化触媒の存在下、水素分圧が0.2~30MPa程度で、200~350℃程度に、上記の各種石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂環族・芳香族系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂)を加熱する方法等が挙げられる。水素化触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、コバルト、ルテニウム、白金及びロジウム等の金属や、該金属の酸化物が挙げられる。また、水素化触媒の使用量は、原料樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部程度とするのが好ましい。
【0087】
上記水素化は、上記の各種石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂環族・芳香族系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂)を溶融して、又は溶剤に溶解した状態で行う。該石油樹脂を溶解する溶剤は特に限定されないが、反応に不活性で原料や生成物が溶解し易い溶剤であればよい。例えば、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、デカリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に制限されないが、通常、該石油樹脂に対して固形分が10質量%以上であり、好ましくは10~70質量%の範囲である。なお、上記水素化条件は反応形式として回分式を採用した場合について説明しているが、反応形式としては流通式(固定床式、流動床式等)を採用することもできる。
【0088】
上記水素化石油樹脂は、樹脂組成物の低誘電特性に優れる点から、水素化芳香族系石油樹脂が好ましい。
【0089】
(B)成分は、樹脂組成物の成形時の発煙が抑制され、樹脂組成物における低誘電特性に優れる点から、水素化石油樹脂が好ましい。
【0090】
(石油樹脂(B)の物性)
(B)成分の5%重量減少温度(℃)は、270℃以上である。なお、本明細書において、5%重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用いて、窒素雰囲気下で熱重量を測定した際の5%重量減少時の温度(℃)である。
【0091】
(B)成分の5%重量減少温度が270℃以上である場合は、樹脂組成物の成形時における発煙が抑制される。
【0092】
(B)成分の5%重量減少温度は、樹脂組成物の成形時の発煙が抑制される点から、290℃以上であるのが好ましく、300℃以上であるのがより好ましく、350℃以上であるのが特に好ましい。
【0093】
(B)成分の5%重量減少温度をより高くするには、(B)成分から低分子量成分を除去して、(B)成分中の低分子量成分の含有量を低下させればよい。低分子量成分を除去する方法としては、例えば、(B)成分を減圧蒸留する、(B)成分に水蒸気を吹き込む、(B)成分を良溶媒及び貧溶媒を用いて再結晶させる、などの方法が挙げられる。
【0094】
(B)成分の5%重量減少温度が270℃未満である場合は、樹脂組成物の成形時において発煙が多く発生する。
【0095】
(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)(℃)は、10~95℃である。(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は、(B)成分における芳香族性及び脂肪族性の特質を示すものである。(B)成分における芳香族部分の割合が高いと、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は低い傾向にあり、芳香族部分の割合が低いと、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は高い傾向にある。また、(B)成分における脂肪族部分の割合が高いと、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は高い傾向にあり、脂肪族部分の割合が低いと、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は低い傾向にある。なお、本明細書において、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は、後述の実施例に記載の方法で測定されるものである。
【0096】
また、(B)成分が水酸基、アミノ基、カルボニル基等の極性の高い官能基を含む場合も、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は低い傾向にある。
【0097】
(B)成分が、C5石油留分、シクロペンタジエン系石油留分等の脂肪族系原料を多く用いて得られる未水素化の石油樹脂、及び上記水素化石油樹脂である場合は、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は高い傾向にある。また、(B)成分が、C9石油留分やピュアモノマー等の芳香族系原料を多く用いて得られる未水素化石油樹脂である場合は、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は低い傾向にある。
【0098】
(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が10~95℃である場合は、樹脂組成物における低誘電特性に優れる。
【0099】
(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は、樹脂組成物における低誘電特性に優れる点から、80~95℃程度であるのが好ましく、85~95℃程度であるのがより好ましい。
【0100】
(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が10℃未満である場合は、樹脂組成物における低誘電特性が低下する。
【0101】
(B)成分は、5%重量減少温度及び混合シクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)以外の物性は特に限定されない。(B)成分の色調は、樹脂組成物及び成形物における着色が抑制される点から、10~400ハーゼン程度が好ましく、10~200ハーゼン程度がより好ましい。なお、本明細書において、色調は、ハーゼン単位はJIS K 0071-1に準拠して、ガードナー単位はJIS K 0071-2に準拠して測定されたものである。
【0102】
(B)成分の軟化点は、樹脂組成物の成形時の発煙が抑制され、樹脂組成物の低誘電特性に優れる点から、80~190℃程度が好ましく、同様の点から、120℃~190℃程度がより好ましく、同様の点から、135℃~190℃程度が特に好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 5902の環球法により測定した値である。
【0103】
(B)成分の軟化点が高い程、上記5%重量減少温度は高い傾向にある。また、(B)成分の軟化点が高い程、(B)成分における分子運動が抑制されて、(B)成分における誘電損失がより抑制されるため、樹脂組成物の低誘電特性はより優れる傾向にある。
【0104】
(B)成分は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて各種公知の添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、脱水剤、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いる事が出来る。
【0105】
(フィラー(C))
上記樹脂組成物は、フィラー(C)(以下、(C)成分という)を含み得る。(C)成分は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0106】
(C)成分の形状は、例えば、球状、針状、繊維状、板状等が挙げられる。
【0107】
(C)成分は、例えば、繊維、結晶質シリカ、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ砂、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、二硫化モリブデン、ワラストナイト、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。なお、金属粉、金属フレーク、金属リボンを構成する金属の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
【0108】
上記繊維は、特に限定されず各種公知のものを使用できる。上記繊維は、例えば、炭素繊維;ガラス繊維;アルミナ繊維;ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール変性繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)繊維、フッ素樹脂系繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、アクリル繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、セルロース(ナノ)繊維、液晶ポリマー(液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド)繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエーテルスルホン繊維、ポリフェニレンエーテル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等の有機繊維;鉄、金、銀、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属からなる金属繊維等が挙げられる。上記繊維は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
上記繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0110】
(C)成分は、樹脂組成物の耐衝撃性に優れる点から、ガラス繊維及びカーボン粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0111】
従来、フィラーを含む樹脂組成物においては、当該フィラーにより、樹脂組成物の溶融粘度が非常に高くなるため、成形加工性が極端に劣ってしまう場合があったが、本発明の樹脂組成物は、(B)成分を用いることにより、(C)成分を含む場合であっても、その溶融粘度が低くなるため、成形加工性に優れる。
【0112】
(添加剤)
上記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、難燃剤、導電付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、着色剤、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤、無機顔料、有機顔料、(B)成分以外の流動性改良剤、光安定剤等が挙げられる。
【0113】
(各成分の含有量)
上記樹脂組成物に(C)成分が含まれない場合、上記樹脂組成物における(B)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部であるのが好ましい。
【0114】
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上である場合は、樹脂組成物の成形加工性により優れる。(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して10質量部以下である場合は、樹脂組成物の成形加工性により優れ、樹脂組成物の成形時の発煙がより抑制され、且つ樹脂組成物の低誘電特性の低下もより抑制される。
【0115】
上記樹脂組成物に(C)成分が含まれない場合、上記樹脂組成物における(B)成分の含有量は、樹脂組成物の成形時の発煙がより抑制され、樹脂組成物の成形加工性及び低誘電特性に特に優れる点から、(A)成分100質量部に対して、0.5~5質量部であるのがより好ましい。
【0116】
上記樹脂組成物に(C)成分が含まれる場合、上記樹脂組成物における(B)成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の成形時の発煙がより抑制され、樹脂組成物の成形加工性及び低誘電特性により優れる点から、(A)成分100質量部に対して、0.5~15質量部であるのが好ましく、5~10質量部であるのがより好ましい。
【0117】
上記樹脂組成物に(C)成分が含まれる場合、上記樹脂組成物における(C)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、60質量部以下であるのが好ましい。
【0118】
上記樹脂組成物における上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、上記樹脂組成物100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0119】
(樹脂組成物の製造方法)
上記樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。上記樹脂組成物の製造方法は、例えば、(A)成分、(B)成分、並びに必要に応じて(C)成分及び上記添加剤を、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。当該溶融混練の温度は、特に制限されないが、通常(A)成分の融点-30℃~融点+30℃の範囲である。
【0120】
[成形体]
本発明の成形体は、各種公知の成形法により、上記樹脂組成物を成形して得られる。成形体の形状としては、特に制限はなく、成形体の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0121】
上記成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用できる。具体的には、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、延伸フィルム成形、インフレーション成形、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、プレス成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。中でも、成形は射出成形法により行われることが好ましい。射出成形機としては、超高速射出成形機、射出圧縮成形機等の公知の射出成形機等が挙げられる。
【0122】
本発明の成形体は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。また、本発明の成形体は、低誘電特性に優れることから、特に無線LAN、ETC、衛星通信用アンテナや車載レーダーなどの高周波領域に対応した電気・電子部品、自動車部品に有用である。また、インサート成形により金属部品と複合化して使用される成形体(金属複合成形品)に有用であり、係る金属複合成形品は、移動用通信機器部品に好適に使用することができる。
【0123】
[流動性向上剤]
本発明の流動性向上剤は、上述の(B)成分を含むものである。本発明の流動性向上剤は、低誘電性樹脂に用いることにより、低誘電性樹脂の低誘電特性を維持しつつ、低誘電性樹脂の溶融粘度を低下させて、その成形加工性を向上させる。なお、本発明の流動性向上剤は、上記樹脂組成物とは異なるものである。
【0124】
上記流動性向上剤は、各種公知の低誘電性樹脂に対して用いることができる。低誘電性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。
【0125】
上記低誘電性樹脂は、1GHzにおける誘電正接tanδが0.01以下であることが好ましい。上記低誘電性樹脂は、このような低誘電特性を有することにより、高周波帯(GHz帯)における誘電損失の影響が小さくなる。
【0126】
上記低誘電性樹脂としては、低誘電特性、耐熱性及び高強度に優れる点から、上述の(A)成分が好ましい。
【0127】
上記流動性向上剤における(B)成分は、低誘電性樹脂の成形時の発煙を抑制し、低誘電性樹脂における低誘電特性の低下を抑制する点から、水素化石油樹脂が好ましい。
【0128】
上記流動性向上剤における(B)成分の5%重量減少温度は、270℃以上である。なお、本明細書において、5%重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用いて、窒素雰囲気下で熱重量を測定した際の5%重量減少時の温度である。
【0129】
上記流動性向上剤における(B)成分の5%重量減少温度が270℃以上である場合は、低誘電性樹脂の成形時における発煙を抑制する。
【0130】
上記流動性向上剤における(B)成分の5%重量減少温度は、低誘電性樹脂の成形時の発煙を抑制する点から、290℃以上であるのが好ましく、300℃以上であるのがより好ましく、350℃以上であるのが特に好ましい。
【0131】
上記流動性向上剤における(B)成分の5%重量減少温度をより高くするには、(B)成分から低分子量成分を除去して、(B)成分中の低分子量成分の含有量を低下させればよい。低分子量成分を除去する方法としては、例えば、(B)成分を減圧蒸留する、(B)成分に水蒸気を吹き込む、(B)成分を良溶媒及び貧溶媒を用いて再結晶させる、などの方法が挙げられる。
【0132】
上記流動性向上剤における(B)成分の5%重量減少温度が270℃未満である場合は、低誘電性樹脂の成形時において発煙が多く発生する。
【0133】
上記流動性向上剤における(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)(℃)は、10~95℃である。なお、本明細書において、混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は、後述の実施例に記載の方法で測定されるものである。
【0134】
上記流動性向上剤における(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が10~95℃である場合は、低誘電性樹脂における低誘電特性の低下を抑制する。
【0135】
上記流動性向上剤における(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)は、低誘電性樹脂における低誘電特性の低下を抑制する点から、80~95℃程度であるのが好ましく、85~95℃程度であるのがより好ましい。
【0136】
上記流動性向上剤における(B)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)が10℃未満である場合は、低誘電性樹脂における低誘電特性を低下させる。
【0137】
上記流動性向上剤における(B)成分は、5%重量減少温度及び混合シクロヘキサンアニリン曇点(MMAP)以外の物性は特に限定されない。(B)成分の色調は、低誘電性樹脂の成形物における着色を抑制する点から、10~400ハーゼン程度が好ましく、10~200ハーゼン程度がより好ましい。なお、本明細書において、色調は、ハーゼン単位はJIS K 0071-1に準拠して、ガードナー単位はJIS K 0071-2に準拠して測定されたものである。
【0138】
上記流動性向上剤における(B)成分の軟化点は、低誘電性樹脂の成形時の発煙を抑制し、低誘電性樹脂の低誘電特性の低下をより抑制する点から、80~190℃程度が好ましく、同様の点から、120℃~190℃程度がより好ましく、同様の点から、135℃~190℃程度が特に好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 5902の環球法により測定した値である。
【0139】
上記流動性向上剤における(B)成分の軟化点が高い程、上記5%重量減少温度は高い傾向にある。また、上記流動性向上剤における(B)成分の軟化点が高い程、(B)成分における分子運動が抑制されて、その誘電損失がより抑制されるため、低誘電性樹脂における低誘電特性の低下がより抑制される傾向にある。
【0140】
上記流動性向上剤の使用量は、特に限定されないが、低誘電性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部であるのが好ましい。
【0141】
上記流動性向上剤の使用量が、低誘電性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上である場合は、低誘電性樹脂の成形加工性をより向上させる。上記流動性向上剤の使用量が、低誘電性樹脂100質量部に対して10質量部以下である場合は、低誘電性樹脂の成形加工性をより向上させ、低誘電性樹脂の成形時の発煙をより抑制し、且つ低誘電性樹脂の低誘電特性の低下をより抑制する。
【0142】
上記流動性向上剤の使用量は、低誘電性樹脂の成形時の発煙をより抑制し、低誘電性樹脂の成形加工性をより向上させ、且つ低誘電性樹脂の低誘電特性の低下をより抑制する点から、低誘電性樹脂100質量部に対して、0.5~5量部であるのが好ましい。
【0143】
また、低誘電性樹脂に(C)成分のようなフィラーが併用される場合、上記流動性向上剤の使用量は、特に限定されないが、低誘電性樹脂の成形時の発煙をより抑制し、低誘電性樹脂の成形加工性をより向上させ、且つ低誘電性樹脂の低誘電特性の低下をより抑制する点から、低誘電性樹脂100質量部に対して、0.5~15質量部であるのが好ましく、5~10質量部であるのがより好ましい。
【0144】
本発明の流動性向上剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて各種公知の添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、脱水剤、耐候剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いる事が出来る。上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、流動性向上剤100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0145】
本発明の流動性向上剤の使用方法は、特に限定されない。上記流動性向上剤の使用方法は、例えば、混合機に、低誘電性樹脂と共に流動性向上剤を添加し、当該混合機で溶融混練する方法等が挙げられる。上記混合機は、例えば、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等が挙げられる。当該溶融混練の温度は、特に制限されないが、通常、低誘電性樹脂の融点-30℃~融点+30℃の範囲である。
【実施例0146】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実
施例に限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」とあるのは、それぞれ
「質量部」および「質量%」を表す。
【0147】
(水素化石油樹脂(B)の製造)
製造例1
C9系石油樹脂(色調10ガードナー,軟化点140℃)100部、及び沈殿法にて調製したニッケル-合成シリカアルミナ触媒酸化物を水素気流下で400℃、1時間水素還元した触媒(ニッケル含有量55重量%、触媒表面積350m2/g、かさ比重0.30g/cm3)0.4部を、振とう式オートクレーブにて、水素分圧19.6MPa、反応温度290℃、反応時間6時間の条件下で水素化反応を行った。反応終了後、得られた樹脂をシクロヘキサン400部に溶解し、ろ過により触媒を除去した。その後、攪拌羽根、コンデンサー、温度計、温度調節器および圧力表示計の取り付けられた1リットル容のセパラブルフラスコにろ液を入れ、200℃、2.7kPaまで徐々に昇温・減圧して溶媒を除去し、軟化点139℃、色調20ハーゼンの水素化C9系石油樹脂(以下、(B1)成分とする)99部を得た。
【0148】
製造例2
C9系石油樹脂(色調10ガードナー,軟化点125℃)100部、及び沈殿法にて調製したニッケル-合成シリカアルミナ触媒酸化物を水素気流下で400℃、1時間水素還元した触媒(ニッケル含有量55重量%、触媒表面積350m2/g、かさ比重0.30g/cm3)0.4部を、振とう式オートクレーブにて、水素分圧19.6MPa、反応温度305℃、反応時間5時間の条件下で水素化反応を行った。反応終了後、得られた樹脂をシクロヘキサン400部に溶解し、ろ過により触媒を除去した。その後、攪拌羽根、コンデンサー、温度計、温度調節器および圧力表示計の取り付けられた1リットル容のセパラブルフラスコにろ液を入れ、200℃、2.7kPaまで徐々に昇温・減圧して溶媒を除去し、軟化点125℃、色調20ハーゼンの水素化C9系石油樹脂(以下、(B2)成分とする)101部を得た。
【0149】
製造例3
製造例2において、反応温度305℃とした他は製造例1と同様の操作を行い、軟化点115℃、色調15ハーゼンの水素化C9系石油樹脂(以下、(B3)成分とする)101部を得た。
【0150】
製造例4
C9系石油樹脂(色調10ガードナー、軟化点140℃)100部、及び沈殿法にて調製したニッケル-合成シリカアルミナ触媒酸化物を、水素気流下で、400℃、1時間、水素還元した触媒(ニッケル含有量55重量%、触媒表面積350m/g、かさ比重0.30g/cm)0.35部を、振とう式オートクレーブにて、水素分圧19.6MPa、反応温度280℃、反応時間5時間の条件下で水素化反応を行った。反応終了後、得られた樹脂をシクロヘキサン400部に溶解し、ろ過により触媒を除去した。その後、攪拌羽根、コンデンサー、温度計、温度調節器、及び圧力表示計の取り付けられた1リットル容のセパラブルフラスコに、得られたろ液を入れ、200℃、2.7kPaまで徐々に昇温・減圧して溶媒を除去し、軟化点135℃、色調30ハーゼンの水素化C9系石油樹脂(以下、(B4)成分とする)101部を得た。
【0151】
製造例5
製造例1で得た水素化C9系石油樹脂100部を260℃に加熱し、常圧(0.1MPa)の水蒸気を4時間吹き込み、減圧下に水分等を除去し、残存物として軟化点157℃、色調20ハーゼンの水素化C9系石油樹脂(以下、(B5)成分とする)90部を得た。
【0152】
製造例6
製造例1で得た水素化C9系石油樹脂100部を2エチルヘキサノール250部に溶解させた。溶解後に2-プロパノール250部を滴下し、析出物として軟化点182℃、色調20ハーゼンの水素化C9系石油樹脂(以下、(B6)成分とする)30部を得た
【0153】
比較製造例1
1Lオートクレーブに水酸基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂(商品名「クイントン1700」、ジシクロペンタジエンとアリルアルコールの反応物、日本ゼオン(株)製、軟化点102℃)500部、ニッケル/珪藻土触媒(ニッケル担持量50質量%)7部を仕込み、280℃に保温し、水素圧力20MPaで5時間、水素化を行なった。次いで、得られた水酸基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物を取出し、トルエン500部に溶解し、ろ過により触媒を除去した後、200℃、2.7kPaで30分間減圧脱溶剤して、水酸基含有ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物(以下、(b3)成分とする)450部を得た。(b3)成分は、軟化点が110℃、色調が200ハーゼンであった。
【0154】
(色調)
(B1)~(B6)成分、後述の(B7)成分、(b3)成分及び後述の(b1)成分、(b2)成分、(b4)成分の色調は、ハーゼン単位はJIS K 0071-1に準拠して、ガードナー単位はJIS K 0071-2に準拠して測定した。
【0155】
(軟化点)
(B1)~(B6)成分、後述の(B7)成分、(b3)成分及び後述の(b1)成分、(b2)成分、(b4)成分の軟化点は、JIS K 5902に準拠して測定した。
【0156】
(5%重量減少温度の測定)
(B1)~(B6)成分、後述の(B7)成分、(b3)成分及び後述の(b1)成分、(b2)成分、(b4)成分の5%重量減少温度は、示差熱・重量同時測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、装置名「STA7200」)にて、窒素雰囲気下、サンプル量10mg、測定温度30~500℃、昇温速度:10℃/分、窒素流量250ml/分にて、サンプル重量が5%減少した温度を測定した。結果を表1~3に示す。
【0157】
(混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(℃)(MMAP)の測定)
(B1)~(B6)成分、後述の(B7)成分、(b3)成分及び後述の(b1)成分、(b2)成分、(b4)成分の混合メチルシクロヘキサンアニリン曇点(℃)(MMAP)は、それぞれの成分1g、メチルシクロヘキサン1mL及びアニリン2mLの加熱された均一な溶液を冷却し、溶液に濁りが生じたときの温度を測定した。結果を表1~3に示す。
【0158】
[樹脂組成物の調製]
実施例1
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、液晶ポリエステル(ポリプラスチックス(株)製、商品名「ラペロスC950RX」)(以下、(A1)成分とする)を100部及び(B1)成分を2部投入し、ローラ回転数40rpm、温度350℃で10分間混練した。その後、得られた混練物(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、350℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0159】
実施例2
実施例1において、(B1)成分の代わりに(B2)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0160】
実施例3
実施例1において、(B1)成分の代わりに(B3)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0161】
実施例4
実施例1において、(B1)成分の代わりに(B4)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0162】
実施例5
実施例1において、(B1)成分の代わりに(B5)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0163】
実施例6
実施例1において、(B1)成分の代わりに(B6)成分を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0164】
実施例7
実施例1において、(B1)成分の代わりに、軟化点145℃、色調10ガードナー、5%重量減少温度302℃及びMMAP12℃のC9系石油樹脂(以下、(B7)成分とする)を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0165】
実施例8
実施例1において、(A1)成分の代わりに、液晶ポリエステル(ポリプラスチックス(株)製、商品名「ラペロスA950RX」)(以下、(A2)成分とする)を100部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0166】
比較例1
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、(A1)成分を100部投入し、ローラ回転数40rpm、温度350℃で5分間混練した。その後、得られた混練物を当該混練装置から取り出し、350℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0167】
比較例2
比較例1において、(A1)成分の代わりに、(A2)成分を100部使用した以外は、比較例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0168】
比較例3
実施例1において、(B1)成分の代わりに、水素化C9系石油樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「アルコンP-100」、軟化点103℃、色調20ハーゼン)(以下、(b1)成分とする)を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0169】
比較例4
実施例1において、(B1)成分の代わりに、水素化C9系石油樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「アルコンP-90」、軟化点90℃、色調20ハーゼン)(以下、(b2)成分とする)を2部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0170】
(発煙の評価)
実施例1~8及び比較例1~4のペレットをハンドトゥルーダM-1((株)東洋精機製作所製、卓上手動式射出成形機・ペレタイザー)を用いて350℃で射出成形した際、成形時における発煙を目視にて評価し、以下の基準にて発煙を評価した。結果を表1に示す。
〇:ほとんど発煙が無い。
△:発煙が少し生じる。
×:発煙が多い。
【0171】
(誘電正接の評価)
ネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製、装置名「P5003A」)と測定周波数10.124GHzのスプリットポスト誘電体共振器(QWED社製)を用いて、何も挿入していない共振器単体の共振周波数とそのピークのQ値を測定した。
次に、実施例1~8及び比較例1~4のシート状成型物を共振器内に挿入した後、シート状成型物が挿入されたときの共振周波数とQ値を測定した。実施例1~8及び比較例1~4のシート状成型物の誘電正接(Df)は、共振器単体とシート状成型物を挿入したときのQ値の差と共振周波数の差から算出した。
【0172】
そして、比較例1(ブランク)の誘電正接(Df)に対する、実施例1~7及び比較例3~4のシート状成型物の誘電正接(Df)の上昇率を、以下の基準にて評価した。また、比較例2(ブランク)の誘電正接(Df)に対する、実施例8のシート状成型物の誘電正接(Df)の上昇率も、以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。誘電正接(Df)の上昇率が小さいほど、低誘電特性に優れている。
〇:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%未満
△:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%以上30%未満
×:ブランク対比で誘電正接の上昇率が30%以上
【0173】
(溶融粘度の評価)
実施例1~8及び比較例1~4のペレットについて、JIS K7199に準拠して、温度330℃、せん断速度2432(1/sec)の見かけの溶融粘度を、市販のキャピラリーレオメータ((株)東洋精機製作所製、装置名「キャピログラフ1C」)を用いて測定した。
【0174】
そして、比較例1(ブランク)の溶融粘度に対する、実施例1~7及び比較例3~4のペレットの溶融粘度の低下率を、以下の基準にて評価した。また、比較例2(ブランク)の溶融粘度に対する、実施例8のペレットの溶融粘度の低下率も、以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。溶融粘度の低下率が大きいほど、成形加工性に優れている。
〇:ブランク対比で溶融粘度の低下率が10%以上
△:ブランク対比で溶融粘度の低下率が3%以上10%未満
×:ブランク対比で溶融粘度の低下率が3%未満
【0175】
【表1】
【0176】
表1の配合量は、質量部の値である。
【0177】
[樹脂組成物の調製]
実施例9
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ユピエースAH40」)(以下、(A3)成分とする)を100部及び(B1)成分を5部投入し、ローラ回転数40rpm、温度250℃で10分間混練した。その後、得られた混練物(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、250℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0178】
実施例10
実施例9において、(B1)成分の代わりに(B2)成分を5部使用した以外は、実施例9と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0179】
実施例11
実施例9において、(B1)成分の代わりに(B4)成分を5部使用した以外は、実施例9と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0180】
実施例12
実施例9において、(B1)成分の代わりに(B5)成分を5部使用した以外は、実施例9と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0181】
実施例13
実施例9において、(B1)成分の代わりに(B6)成分を5部使用した以外は、実施例9と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0182】
実施例14
実施例9において、(B1)成分の代わりに(B7)成分を5部使用した以外は、実施例9と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0183】
比較例5
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、(A3)成分を100部投入し、ローラ回転数40rpm、温度250℃で10分間混練した。その後、得られた混練物を当該混練装置から取り出し、250℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0184】
比較例6
実施例9において、(B1)成分の代わりに、(b1)成分を5部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0185】
比較例7
実施例9において、(B1)成分の代わりに、(b3)成分を5部使用した以外は、実施例1と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0186】
比較例8
実施例9において、(B1)成分の代わりに、水素化ロジンエステル(荒川化学工業(株)製、商品名「KE-311」、軟化点96℃、色調20ハーゼン)(以下、(b4)成分とする)を5部使用した以外は、実施例9と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0187】
(発煙の評価)
実施例9~14及び比較例5~8のペレットをハンドトゥルーダM-1((株)東洋精機製作所製、卓上手動式射出成形機・ペレタイザー)を用いて290℃で射出成形した際、成形時における発煙を目視にて評価し、以下の基準にて発煙を評価した。結果を表2に示す。
〇:ほとんど発煙が無い。
△:発煙が少し生じる。
×:発煙が多い。
【0188】
(誘電正接の評価)
ネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製、装置名「P5003A」)と測定周波数10.124GHzのスプリットポスト誘電体共振器(QWED社製)を用いて、何も挿入していない共振器単体の共振周波数とそのピークのQ値を測定した。
次に、実施例9~14及び比較例5~8のシート状成型物を共振器内に挿入した後、シート状成型物が挿入されたときの共振周波数とQ値を測定した。実施例9~14及び比較例5~8のシート状成型物の誘電正接(Df)は、共振器単体とシート状成型物を挿入したときのQ値の差と共振周波数の差から算出した。
【0189】
そして、比較例5(ブランク)の誘電正接(Df)に対する、実施例9~14及び比較例6~8のシート状成型物の誘電正接(Df)の上昇率を、以下の基準にて評価した。結果を表2に示す。誘電正接(Df)の上昇率が小さいほど、低誘電特性に優れている。
〇:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%未満
△:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%以上40%未満
×:ブランク対比で誘電正接の上昇率が40%以上
【0190】
(MFRの評価)
JIS K 7210に準拠して、実施例9~14及び比較例5~8のペレットを温度300℃、荷重21.2N(2.16kg)の条件下にて、各ペレットのMFRを測定した。
【0191】
そして、比較例5(ブランク)のMFRに対する、実施例9~14及び比較例6~8のペレットのMFRの上昇率を、以下の基準にて評価した。結果を表2に示す。MFRの上昇率が大きいほど、成形加工性に優れている。
〇:ブランク対比でMFRの上昇率が10%以上
△:ブランク対比でMFRの上昇率が3%以上10%未満
×:ブランク対比でMFRの上昇率が3%未満
【0192】
【表2】
【0193】
表2の配合量は、質量部の値である。
【0194】
[樹脂組成物の調製]
実施例15
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、ガラス繊維強化ポリフェニレンサルファイド樹脂(東レ(株)製、商品名「トレリナ A504X90」、ポリフェニレンサルファイド樹脂60質量%、ガラス繊維40質量%)(以下、ポリフェニレンサルファイド樹脂を(A4)成分とし、ガラス繊維を(C1)成分とする)を100部及び(B1)成分を5部投入し、ローラ回転数40rpm、温度310℃で10分間混練した。その後、得られた混練物(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、320℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0195】
実施例16
実施例15において、(B1)成分の代わりに(B2)成分を5部使用した以外は、実施例15と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0196】
実施例17
実施例15において、(B1)成分の代わりに(B4)成分を5部使用した以外は、実施例15同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0197】
実施例18
実施例15において、(B1)成分の代わりに(B5)成分を5部使用した以外は、実施例15と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0198】
実施例19
実施例15において、(B1)成分の代わりに(B6)成分を5部使用した以外は、実施例15と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0199】
実施例20
実施例15において、(B1)成分の代わりに(B7)成分を5部使用した以外は、実施例15と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0200】
比較例9
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、ガラス繊維強化ポリフェニレンエーテル樹脂(東レ(株)製、商品名「トレリナ A504X90」、(A4)成分60質量%、(C1)成分40質量%)を100部投入し、ローラ回転数40rpm、温度320℃で10分間混練した。その後、得られた混練物を当該混練装置から取り出し、320℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0201】
比較例10
実施例15において、(B1)成分の代わりに(b1)成分を5部使用した以外は、実施例15と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0202】
(発煙の評価)
実施例15~20及び比較例9~10のペレットをハンドトゥルーダM-1((株)東洋精機製作所製、卓上手動式射出成形機・ペレタイザー)を用いて350℃で射出成形した際、成形時における発煙を目視にて評価し、以下の基準にて発煙を評価した。結果を表3に示す。
〇:ほとんど発煙が無い。
△:発煙が少し生じる。
×:発煙が多い。
【0203】
(誘電正接の評価)
ネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製、装置名「P5003A」)と測定周波数10.124GHzのスプリットポスト誘電体共振器(QWED社製)を用いて、何も挿入していない共振器単体の共振周波数とそのピークのQ値を測定した。
次に、実施例15~20及び比較例9~10のシート状成型物を共振器内に挿入した後、シート状成型物が挿入されたときの共振周波数とQ値を測定した。実施例15~20及び比較例9~10のシート状成型物の誘電正接(Df)は、共振器単体とシート状成型物を挿入したときのQ値の差と共振周波数の差から算出した。
【0204】
そして、比較例9(ブランク)の誘電正接(Df)に対する、実施例15~20及び比較例10のシート状成型物の誘電正接(Df)の上昇率を、以下の基準にて評価した。結果を表3に示す。誘電正接(Df)の上昇率が小さいほど、低誘電特性に優れている。
〇:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%未満
△:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%以上30%未満
×:ブランク対比で誘電正接の上昇率が30%以上
【0205】
(溶融粘度の評価)
実施例15~20及び比較例9~10のペレットについて、JIS K7199に準拠して、温度310℃、せん断速度2432(1/sec)の見かけの溶融粘度を、市販のキャピラリーレオメータ((株)東洋精機製作所製、装置名「キャピログラフ1C」)を用いて測定した。
【0206】
そして、比較例9(ブランク)の溶融粘度に対する、実施例15~20及び比較例10のペレットの溶融粘度の低下率を、以下の基準にて評価した。結果を表3に示す。溶融粘度の低下率が大きいほど、成形加工性に優れている。
〇:ブランク対比で溶融粘度の低下率が10%以上
△:ブランク対比で溶融粘度の低下率が3%以上10%未満
×:ブランク対比で溶融粘度の低下率が3%未満
【0207】
【表3】
【0208】
表3の配合量は、質量部の値である。
【0209】
[樹脂組成物の調製]
実施例21
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、ガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)製、商品名「トレコン 1101G-30」、ポリブチレンテレフタレート樹脂70質量%、ガラス繊維30質量%)(以下、ポリブチレンテレフタレート樹脂を(A5)成分とし、ガラス繊維を(C1)成分とする)を100部及び(B1)成分を5部投入し、ローラ回転数40rpm、温度245℃で10分間混練した。その後、得られた混練物(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、320℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0210】
実施例22
実施例21において、(B1)成分の代わりに(B4)成分を5部使用した以外は、実施例21と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0211】
実施例23
実施例21において、(B1)成分の代わりに(B7)成分を5部使用した以外は、実施例21と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0212】
比較例11
ローラミキサ型混練装置((株)東洋精機製作所製、装置名「ラボプラストミル モデル 10C100」)に、ガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)製、商品名「トレコン 1101G-30」、(A5)成分70質量%、(C1)成分30質量%)を100部投入し、ローラ回転数40rpm、温度245℃で10分間混練した。その後、得られた混練物(樹脂組成物)を当該混練装置から取り出し、320℃で熱プレスして、厚さ1.0mmのシート状に成形し、シート状成型物を得た。また、シート状成型物の一部を裁断機で5mm×5mmに裁断することでペレットを得た。
【0213】
比較例12
実施例21において、(B1)成分の代わりに(b1)成分を5部使用した以外は、実施例21と同様に調製を行い、シート状成型物とペレットを得た。
【0214】
(発煙の評価)
実施例21~23及び比較例11~12のペレットをハンドトゥルーダM-1((株)東洋精機製作所製、卓上手動式射出成形機・ペレタイザー)を用いて350℃で射出成形した際、成形時における発煙を目視にて評価し、以下の基準にて発煙を評価した。結果を表4に示す。
〇:ほとんど発煙が無い。
△:発煙が少し生じる。
×:発煙が多い。
【0215】
(誘電正接の評価)
ネットワークアナライザ(Keysight Technologies社製、装置名「P5003A」)と測定周波数10.124GHzのスプリットポスト誘電体共振器(QWED社製)を用いて、何も挿入していない共振器単体の共振周波数とそのピークのQ値を測定した。
次に、実施例21~23及び比較例11~12のシート状成型物を共振器内に挿入した後、シート状成型物が挿入されたときの共振周波数とQ値を測定した。実施例21~23及び比較例11~12のシート状成型物の誘電正接(Df)は、共振器単体とシート状成型物を挿入したときのQ値の差と共振周波数の差から算出した。
【0216】
そして、比較例11(ブランク)の誘電正接(Df)に対する、実施例21~23及び比較例12のシート状成型物の誘電正接(Df)の上昇率を、以下の基準にて評価した。結果を表4に示す。誘電正接(Df)の上昇率が小さいほど、低誘電特性に優れている。
〇:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%未満
△:ブランク対比で誘電正接の上昇率が10%以上40%未満
×:ブランク対比で誘電正接の上昇率が40%以上
【0217】
(MFRの評価)
JIS K 7210に準拠して、実施例21~23及び比較例11~12のペレットを温度300℃、荷重21.2N(2.16kg)の条件下にて、各ペレットのMFRを測定した。
【0218】
そして、比較例11(ブランク)のMFRに対する、実施例21~23及び比較例12のペレットのMFRの上昇率を、以下の基準にて評価した。結果を表4に示す。MFRの上昇率が大きいほど、成形加工性に優れている。
〇:ブランク対比でMFRの上昇率が10%以上
△:ブランク対比でMFRの上昇率が3%以上10%未満
×:ブランク対比でMFRの上昇率が3%未満
【0219】
【表4】
【0220】
表4の配合量は、質量部の値である。