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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173125
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】導電性ポリマー材料及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20221110BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20221110BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20221110BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20221110BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20221110BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221110BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20221110BHJP
   A01N 41/04 20060101ALI20221110BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 31/795 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C08G61/12
H01B1/12 F
C08K5/41
C08L65/00
A01P1/00
A01P3/00
A01N43/90 101
A01N41/04 Z
A01N61/00 D
A61K31/795
A61P31/04
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/22
A61K47/20
A61P31/10
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022075809
(22)【出願日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】110116583
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】111111937
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522176104
【氏名又は名称】大立精準有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】李明朗
(72)【発明者】
【氏名】顏傳特
(72)【発明者】
【氏名】文▲イエン▼鈞
(72)【発明者】
【氏名】洪秀惠
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H011
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD55
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086FA04
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZB35
4H011AA02
4H011AA04
4H011BB07
4H011BB08
4H011BB19
4J002CE001
4J002EV206
4J002FD181
4J002GH00
4J002GQ02
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC03
4J032BC32
4J032CG01
4J032CG06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原性感染症を抑制するために使用される導電性ポリマー材料、及び病原体の増殖を抑制するための方法を提供する。
【解決手段】導電性成分を含む導電性ポリマー材料であって、導電性成分は、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)を含有し、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)中のポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は、1:1~1:25の範囲内にある、導電性ポリマー材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性成分を含み、病原性感染症の抑制に用いられる導電性ポリマー材料であって、
前記導電性成分はポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)を含有し、該ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)において、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は1:1~1:25の範囲内にある、導電性ポリマー材料。
【請求項2】
ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は1:1.5~1:5の範囲内にある、請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項3】
前記導電性成分が更に水を含有する、請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項4】
ジメチルスルホキシドを更に含み、且つ、ジメチルスルホキシドと前記導電性成分との重量比は1:33である、請求項3に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項5】
前記病原性感染症は、抗生物質耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、カンジダ・アルビカンス、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる病原性細菌によって引き起こされる病原性感染症である、請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項6】
前記病原性感染症は、エンテロウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる病原性ウイルスにより引き起こされる病原性感染症である、請求項1に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項7】
前記エンテロウイルスはエンテロウイルス71である、請求項6に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項8】
前記パラミクソウイルスはニューカッスル病ウイルスである、請求項6に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項9】
前記コロナウイルスは、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)及び伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項10】
前記単純ヘルペスウイルスは仮性狂犬病ウイルス(PRV)である、請求項6に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項11】
前記インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスからなる群より選ばれる、請求項6に記載の導電性ポリマー材料。
【請求項12】
導電性成分を含む導電性ポリマー材料を対象物に塗布し、
前記導電性成分はポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)を含有し、且つ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)におけるポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は1:1~1:25の範囲内にある、病原体の増殖を抑制するための方法。
【請求項13】
ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比が1:1.5~1:5の範囲内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記導電性成分は更に水を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記導電性ポリマー材料は、ジメチルスルホキシドを更に含み、且つ、ジメチルスルホキシドと前記導電性成分との重量比は1:33である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記病原体は、抗生物質耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、カンジダ・アルビカンス、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記病原体は、エンテロウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記エンテロウイルスはエンテロウイルス71である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パラミクソウイルスはニューカッスル病ウイルスである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記コロナウイルスは、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)及び伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)からなる群より選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記単純ヘルペスウイルスは仮性狂犬病ウイルス(PRV)である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスからなる群より選ばれる、請求項17に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は導電性成分を含む導電性ポリマー材料に関する。本開示はまた該導電性ポリマー材料を病原体感染症の抑制、及び病原体の成長の抑制のために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に存在する様々な病原体は、人間の健康に影響を与え、様々な病気を引き起こす可能性がある。従って、抗菌・抗ウイルス機能を有する物質の需要が高まっている。抗菌および抗ウイルス機能を有する一般的な物質には、ナノ金溶液、ナノ銀溶液、および分子酵素(VirusBomとしても知られる)が含まれる。しかし、ナノ金やナノ銀は人体から排出できず、体内に蓄積される問題点がある。さらに、分子酵素(すなわち、VirusBom)が抗菌または抗ウイルス効果を達成するためには、細菌またはウイルスと長期間反応しなければならない。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の第1の態様として、本開示は、病原性感染症の抑制に用いられるための導電性ポリマー材料を提供し、これは、従来技術の欠点の少なくとも1つを緩和することができ、且つ、導電性成分を含む。
【0004】
該導電性成分は、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)を含有し、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)におけるポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は、1:1~1:25の範囲内にある。
【0005】
本発明の第2の態様として、本開示は、病原体の増殖を抑制するための方法を提供し、これは、従来技術の欠点の少なくとも1つを緩和することができ、且つ、前述の導電性ポリマー材料を対象物に適用することを含む。
[発明に関する詳しい説明]
【0006】
本明細書において何らかの先行技術刊行物が言及される場合、そのような言及は、その刊行物が台湾または他の任意の国における当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことを理解されたい。
【0007】
本明細書の目的のために、「含む」という単語は「含むがこれに限定されない」ことを意味し、「含む」という語は対応する意味を有することは明確に理解されるべきである。
【0008】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者は、本明細書に記載されるものと類似または同等な多くの方法及び材料を認識し、これは本開示の実施において使用され得る。実際、本開示は、記載された方法及び材料によって限定されるものではない。
【0009】
本開示は、病原性感染症を抑制するために使用される導電性ポリマー材料を提供し、該導電性ポリマー材料は導電性成分を含む。
【0010】
この導電性成分は、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)を含有し、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)において、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は、1:1~1:25の範囲内にある。
【0011】
抗菌及び抗ウイルス試験により、この導電性ポリマー材料が病原性細菌及び病原性ウイルスを抑制または消滅できることが証明されており、したがって抗菌及び抗ウイルス用途に使用することができる。したがって、導電性ポリマー材料は、病原性感染症に対する有効性のためにそれを必要とする対象に投与することができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「投与」または「投与する」は、その意図された機能を実行するための任意の適切な経路によって、予め決定された活性成分を対象に導入、提供または送達することを意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、関心のある任意の動物、例えばヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、及びラットを指す。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0014】
特定の実施形態では、導電性ポリマー材料は、ジメチルスルホキシドを更に含み、そしてジメチルスルホキシドの導電性成分に対する重量比は1:33である。
【0015】
特定の実施形態において、導電性成分は、水を更に含有する。
【0016】
特定の実施形態では、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)におけるポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は、1:1.5~1:5の範囲内にある。
【0017】
本開示によれば、病原性感染症は、抗生物質耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、カンジダ・アルビカンス、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる病原性細菌によって引き起こされるものである。
【0018】
本開示によれば、病原性感染症は、エンテロウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる病原性ウイルスによって引き起こされるものである。
【0019】
特定の実施形態では、エンテロウイルスはエンテロウイルス71(EV71)である。特定の実施形態では、パラミクソウイルスは、ニューカッスル病ウイルス(NDV)である。特定の実施形態では、コロナウイルスは、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)及び伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)からなる群から選ばれる。特定の実施形態では、単純ヘルペスウイルスは、仮性狂犬病ウイルス(PRV)である。特定の実施形態では、インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスからなる群から選ばれる。
【0020】
本開示によれば、導電性ポリマー材料は、医薬組成物の形態で調製することができる。医薬組成物は、当業者に周知の技術を用いて局所投与に適した剤形に製剤化することができる。
【0021】
本開示によれば、局所投与に適した剤形としては、限定されるものではないが、エマルジョン、ゲル、硬膏、クリーム、パッチ、リニメント、粉末、エアロゾル、スプレー、ローション、血清、ペースト、フォーム、滴剤、懸濁液、軟膏、及び包帯を含む。
【0022】
本開示はまた、病原体の増殖を抑制するための方法を提供し、これは、前述の導電性ポリマー材料を対象物上に適用することを含む。
【0023】
前記対象物の例としては、限定されるものではないが、金属物体及びプラスチック物体が含まれ得る。
【0024】
本開示によれば、病原体は、抗生物質耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、カンジダ・アルビカンス、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0025】
本開示によれば、病原体は、エンテロウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0026】
特定の実施形態では、エンテロウイルスはエンテロウイルス71(EV71)である。特定の実施形態では、パラミクソウイルスは、ニューカッスル病ウイルス(NDV)である。特定の実施形態では、コロナウイルスは、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)及び伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)からなる群から選ばれる。特定の実施形態では、単純ヘルペスウイルスは、仮性狂犬病ウイルス(PRV)である。特定の実施形態では、インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスからなる群から選ばれる。
【0027】
本開示を、以下の実施例により更に説明する。しかしながら、以下の実施例は、例示のみを目的としており、実際に開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
実施例
導電性ポリマー材料の作製
実施例1(例1):
【0028】
ポリ(スチレンスルホネート)(PSSと略す)153.25g(製造元:アクゾノーベル、分子量:70000)を水3923.026gと混合し、40℃で30分間攪拌した。得られた混合物を塩化第二鉄(FeCl)(アルファエイサー社製)0.811gと混合し、40℃で30分間攪拌した後、3,4‐エチレンジオキシチオフェン(EDOT)(駿瀚生化(Synmax Biochemical)社製)を7.109g加えた。得られた混合物を40℃で20分間攪拌下で反応させた。反応物の温度を20℃に下げた後、過硫酸アンモニウム((NH)(ADEKA社製)を6.3895g加え、120分間攪拌した。上記の過硫酸アンモニウムを添加し、次いで攪拌する工程を2回繰り返した。
【0029】
次に、得られた混合物に39.09gの強酸性陽イオン交換樹脂(製造元:Tai‐Young Chemical社、カタログ番号:DIAION UBK08H、成分:スチレンポリマー)と55.54gの弱塩基陰イオン交換樹脂(Tai‐Young Chemical社、カタログ番号:RELITE JA310、成分:スチレン・ジビニルベンゼン共重合体)を加え、60分間攪拌した。得られた混合物をフィルター(メッシュ:200μm)を用いて濾過し、導電性成分を得た。導電性成分には、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)と水が含まれていた。ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ポリ(スチレンスルホネート)におけるポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのモル比は1:5である。
【0030】
導電性成分に対し、高圧ホモジナイザー(製造元:GOGENE社、カタログ番号:N‐10)を用いて、1800barの圧力下で10回の均質化処理を行い、均一な粒径を有する導電性ポリマー材料を得た。
実施例2~3(例2~例3):
【0031】
例2~例3の導電性ポリマー材料を作製する手順は、水、EDOT、(NH、強酸性陽イオン交換樹脂、及び弱塩基陰イオン交換樹脂の量を以下の表1に示すように変化させたことを除いて、例1の手順と同様である。
実施例4(例4):
【0032】
例4の導電性ポリマー材料を作製する手順は、均質化処理を10回行った後に、ジメチルスルホキシド0.903gを添加したこと以外は例2と同様であった。
実施例5(例5):
【0033】
例5の導電性ポリマー材料を作製する手順は、均質化処理を10回行った後に、ジメチルスルホキシド0.671gを添加したこと以外は例3と同様であった。
【0034】
例1~例5の導電性ポリマー材料を作製するための成分及びその配合量を以下の表1にまとめた。
固形分の測定
【0035】
例1~例5のそれぞれの導電性ポリマー材料をオーブン(製造元:DENGYNG、カタログ番号:DO30)の中で、105℃で3時間の乾燥処理を実行し、導電性ポリマー材料の乾燥粉末を得た。
【0036】
例1~例5の導電性ポリマー材料及び導電性ポリマー材料の乾燥粉末の重量を測定し、以下の式(1)を用いて固形分(%)を算出する。
式(1)
A=(B/C)×100
ここで、Aは固形分(%)であり、
Bは各実施例における導電性ポリマー材料の乾燥粉末の重量(g)であり、
Cは各実施例における導電性ポリマー材料の重量(g)である。
【0037】
結果を下記表1に示す。表1から、例1~例5のそれぞれの導電性ポリマー材料は、1.3重量%の固形分を有することが分かる。
【表1】

抗菌作用の分析
【0038】
例3の導電性ポリマー材料を、台湾のSGS株式会社に委託し、米国薬局方26NF21微生物学試験(51)の抗菌有効性試験を実行してその抗菌作用を分析した。
【0039】
この実験で使用された4つの病原性細菌株は、一般に容易に入手可能であり、そしてAmerican Type Culture Collection(ATCC、米国ヴァージニア州マナサス)から購入した。それぞれの病原性細菌株に関する関連情報を以下の表2に列挙する。
【表2】
【0040】
結果によると、4つの病原性細菌株のそれぞれと24時間培養した後、例3の導電性ポリマー材料が、抗生物質耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、及び大腸菌のそれぞれに対して99.9%以上の抑制率を有し、カンジダ・アルビカンスに対しては65.4%以上の抑制率を有することが示された。そこで、本出願人は、例3の導電性ポリマー材料が優れた抗菌効果を有すると考える。
抗ウイルス作用の分析
A.細胞株の供給源及び培養
【0041】
本実験で用いた5種類の細胞株は、一般に容易に入手可能であり、食品工業発展研究所(FIRDI)の生物資源収集研究センター(BCRC)(台湾新竹市食品路331号)から購入した。それぞれの細胞株に関する関連情報を以下の表3に列挙する。
【表3】
【0042】
5つの細胞株のそれぞれを、10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%Gibco(登録商標)ペニシリン‐ストレプトマイシン‐ネオマイシン(PSN)抗生物質混合物を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む10cmペトリ皿中で増殖させた。次に、培養条件を37℃、5%COに設定したインキュベーター内で24時間培養した。得られた細胞培養物を以下の試験に用いた。
B.ウイルスの取得及び培養
【0043】
本実験に用いた6種類のウイルスは、台湾の国立屏東科技大学動物ワクチン技術大学院研究所から入手し、当業者に公知の手順に従って、表4に示す対応する細胞株を用いて培養した。
【表4】
【0044】
簡単に説明すると、表4に示す5つの細胞株のそれぞれの細胞培養物1mLを、10%FBSを添加した9mLのDMEMを含むフラスコに2×10cells/mLの濃度で接種し、続いてインキュベーター(37℃、5%CO)で培養した。フラスコ内で細胞単層が形成されてから、液体培地を除去し、得られた細胞培養物のそれぞれをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで、表4に示すように6種類のウイルスのうち対応する1種により感染倍率(m.o.i.)0.1で感染させ、その後、1時間放置した。次に、5mLのDMEMをフラスコに加え、インキュベーター(37℃、5%CO)で培養した。培養した細胞は細胞変性効果について毎日観察した。凍結融解処理を、培養細胞の75%に細胞変性効果が認められた時点で3回行い、液体培養物を得た。2500g、4℃で10~20分間で遠心分離した後、得られた上清を回収し、使用時まで-80℃で保管した。以下ではこの上清を「ウイルス液」と呼ぶ。
C.試験サンプルの作製
【0045】
例1~例5のそれぞれの導電性ポリマー材料をPBSで希釈し、7つの希釈液(1、2、4、8、16、32、及び64の希釈倍率を用いて作製)を得た。次いで、それぞれの希釈液を、セクションBで作製したウイルス液の各々と共に、異なるインキュベーション時間(すなわち、0.5、1、2、5、10、20、30、及び60分間)にわたってインキュベートした。得られたそれぞれの混合物を試験サンプルとして用い、以下の分析を行った。
D.プラーク減少アッセイ(PRA)
【0046】
上記の表4に示す5つの細胞株のそれぞれの細胞培養物を、10%FBSを添加した2mLのDMEMを含む6ウェル培養プレートの各ウェルに3×10細胞/ウェルでインキュベートし、インキュベーター(37℃、5%CO)で1日間培養した。その後、各細胞培養物を、表4に示すように対応するウイルス液を用いて作製した100μLの試験サンプルで処理し、その後、インキュベーター(37℃)で1時間培養した。各ウェルに半固形オーバーレイ培地(42℃)2mLを添加し、その後インキュベーター(37℃、5%CO)で5日間培養した。次に、クリスタルバイオレット含有染色液2mLを各ウェルに添加し、0.5時間放置した。その後、各ウェルを水洗して染色液を除去し、風乾することにより、試料を得た。
【0047】
それぞれの試料の色変化を目視で観察した。この試料が無色であれば、ウイルスが生存していることを示す。この試料が、クリスタルバイオレット色を呈する場合、ウイルスが完全に死滅したことを示す。
【0048】
試験の結果は、以下の表5~表9に示す。表5から、例1の導電性ポリマー材料は、ニューカッスル病ウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及びA型インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス効果を示すことが分かる。特に、同じ希釈係数では、例1の導電性ポリマー材料は、比較的短期間にニューカッスル病ウイルス及びA型インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス効果を示した。
【0049】
表6から、例2の導電性ポリマー材料は、猫伝染性腹膜炎ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、及び仮性狂犬病ウイルスに対して抗ウイルス効果を示したことが分かる。
【0050】
表7から、例3の導電性ポリマー材料は、エンテロウイルス71、ニューカッスル病ウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及びA型インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス効果を示したことが分かる。特に、同じ希釈係数では、例3の導電性ポリマー材料は、比較的短期間にニューカッスル病ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及びA型インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス効果を示した。
【0051】
表8から、例4の導電性ポリマー材料は、猫伝染性腹膜炎ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、及び仮性狂犬病ウイルスに対して抗ウイルス効果を示したことが分かる。特に、同じ希釈係数では、例4の導電性ポリマー材料は、比較的短期間に仮性狂犬病ウイルスに対して抗ウイルス効果を示した。
【0052】
表9から、例5の導電性ポリマー材料は、ニューカッスル病ウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及びA型インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス効果を示したことが分かる。特に、同じ希釈係数では、例5の導電性ポリマー材料は、比較的短期間で仮性狂犬病ウイルスに対して抗ウイルス効果を示した。
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】
【0053】
以上の試験結果をまとめると、本開示の導電性ポリマー材料は、優れた抗菌・抗ウイルス効果を有し、従って、病原体の増殖を抑制し、病原性感染症を抑制できることが明らかである。
【0054】
本開示は、例示的な実施形態とみなされるものに関連して説明されてきたが、この開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、そのようなすべての変更及び同等の配置を包含するように、最も広い解釈の精神及び範囲内に含まれる様々な配置を網羅することを意図していることが理解される。
【外国語明細書】