(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173131
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】基準電極用ペースト、基準電極、およびそれを含むバイオセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
G01N27/30 311Z
G01N27/30 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075899
(22)【出願日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0058561
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】504206469
【氏名又は名称】アイ-センス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】I-SENS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ジェ カン
(72)【発明者】
【氏名】イン ソク チョン
(72)【発明者】
【氏名】チュル ヒュン パク
(72)【発明者】
【氏名】スク ジュン キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン ボム パク
(57)【要約】
【課題】機械的性質および電気化学的性質が改善された基準電極を提供すること。
【解決手段】本明細書では、塩化銀粉末および炭素系導電材を含む基準電極用ペースト、およびそれから形成される基準電極を開示する。例示的な実施形態による基準電極用ペーストから形成された基準電極は、改善された機械的性質および電気化学的性質を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化銀粉末と炭素系導電材との混合物を含む、基準電極用ペースト。
【請求項2】
固体状の銀を含まない、請求項1に記載の基準電極用ペースト。
【請求項3】
前記炭素系導電材は、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、およびカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1つ以上の化合物である、請求項1に記載の基準電極用ペースト。
【請求項4】
前記塩化銀粉末100重量部に対して、前記炭素系導電材は1~250重量部含まれる、請求項3に記載の基準電極用ペースト。
【請求項5】
前記塩化銀粉末と前記炭素系導電材は電気的に接続される、請求項1に記載の基準電極用ペースト。
【請求項6】
前記混合物はレジンをさらに含む、請求項1に記載の基準電極用ペースト。
【請求項7】
基材と、
請求項1に記載の前記基準電極用ペーストで前記基材上に形成される電極層とを含む、基準電極。
【請求項8】
作動電極、および請求項7に記載の前記基準電極を含む、バイオセンサ。
【請求項9】
対向電極をさらに含む、請求項8に記載のバイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電極用ペースト、基準電極、およびそれを含むバイオセンサに関する。より詳細には、塩化銀を含む基準電極、およびそれを含むバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病などの慢性疾患患者が増加し、慢性疾患に対する懸念が高まっている。その延長線上で、慢性疾患の管理のために体成分などをモニタリングできるバイオセンサなどに対する需要も着々と増えている。例えば、糖尿病患者は、血糖値の確認を定期的に行って血糖をより厳格に調節でき、合併症の発生を防ぐことができる。
【0003】
バイオセンサの一例に該当する連続血糖測定器は、体液からグルコース濃度などを測定するセンサモジュールと、センサモジュールによって測定された数値を端末に送信するトランスミッタと、送信された数値を出力する端末などとを含むことができる。また、センサモジュールは、センサプローブなどをさらに含み、皮下脂肪から細胞間質液などを抽出することができる。
【0004】
一方、バイオセンサのセンサモジュールは、体液の特定の成分などによって誘発される電気信号を測定するために2以上の電極を含むことができる。例えば、センサモジュールは作動電極と基準電極を含むことができ、対向電極をさらに含むことができる。特に、センサモジュールは、基準電極を含むことによって測定の一貫性を確保することができる。
【0005】
従来、特許文献1のようにセンサモジュールの劣化を防止するための発明が開示されている。特許文献1のセンサ部は、フィルタ部をさらに含む。フィルタ部は、生体組織または血液(Whole blood)に含まれる免疫細胞またはその他の細胞と生体粒子またはタンパク質などが作動電極(検知電極)および基準電極(参照電極)などに吸着することを防止する。
【0006】
しかし、特許文献1は、従来の電極を用いているので、生体信号測定の一貫性を維持する上で特に利点を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許第10-1637325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、向上した機械的安定性を有する基準電極用ペーストを提供することにある。
【0009】
本発明の課題は、向上した電気的特性を有する基準電極用ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.塩化銀粉末と炭素系導電材との混合物を含む、基準電極用ペースト。
【0011】
2.前記項目1において、固体状の銀を含まない、基準電極用ペースト。
【0012】
3.前記項目1において、前記炭素系導電材は、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、およびカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1つ以上の化合物である、基準電極用ペースト。
【0013】
4.前記項目3において、前記塩化銀粉末100重量部に対して、前記炭素系導電材は1~250重量部含まれる、基準電極用ペースト。
【0014】
5.前記項目1において、前記塩化銀粉末と前記炭素系導電材は電気的に接続される、基準電極用ペースト。
【0015】
6.前記項目1において、前記混合物はレジンをさらに含む、基準電極用ペースト。
【0016】
7.基材と、前記項目1による前記基準電極用ペーストで前記基材上に形成される電極層とを含む、基準電極。
【0017】
8.作動電極、および前記項目7による前記基準電極を含む、バイオセンサ。
【0018】
9.前記項目8において、対向電極をさらに含む、バイオセンサ。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によると、炭素系導電材を含む基準電極用ペーストは造形が容易であり、前記ペーストを使用して外形の制限なしに基準電極を実現することができる。
【0020】
また、例示的な実施形態による基準電極用ペーストから形成された基準電極は、改善された機械的性質を提供することができる。
【0021】
また、例示的な実施形態による基準電極用ペーストから形成された基準電極は、改善された電気的性質を提供することができる。
【0022】
また、例示的な実施形態による基準電極用ペーストから形成された基準電極は、高価な固体状の銀の代わりに炭素系導電材を含むことにより、生産コストにおいて利点を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による基準電極の概略断面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態による基準電極における時間による電位値の変化を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される用語「生体信号」とは、生体試料中に存在する特定の物質、例えば血液中の血糖、コレステロール、タンパク質、ホルモンなどの物質からの信号を意味し得る。生体信号の測定例としては、細胞間質液に含有されたグルコースの濃度測定が考えられる。
【0025】
本明細書で使用される用語「測定」とは、特定の物質の含有量などを定量的に分析することを意味し得る。
【0026】
本発明の実施形態では、塩化銀粉末と炭素系導電材との混合物を含む基準電極用ペーストを開示する。以下では、各構成についてより詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施形態では、炭素系導電材は、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト(GP)、グラフェン、およびカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1つ以上の化合物であってもよい。
【0028】
例示的ないくつかの実施形態では、炭素系導電材を含むことにより、基準電極用ペーストの電気伝導性および機械的安定性、例えば引張強度、柔軟性、弾性などを向上することができる。
【0029】
「カーボンナノチューブ」とは、地球上に多量に存在する炭素からなる炭素同素体であり、1つの炭素が他の炭素原子と六角形のハニカム形状に結合してチューブ状をしている物質である。カーボンナノチューブの粒径はナノサイズである。「ナノサイズ」とは、数ナノメートルから数十ナノメートルの間を意味し得る。
【0030】
例示的ないくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、単一壁、二重壁または多重壁などの形態を有してもよく、場合によってはロープ状であってもよい。追加の表面改質または吸着が行われても電界放出特性などが維持できるので、例示的ないくつかの実施形態による基準電極用ペーストは、多重壁カーボンナノチューブを含むか、または単一壁カーボンナノチューブと多重壁カーボンナノチューブの混合物を含むことができる。
【0031】
カーボンナノチューブの合成方法としては、電気放電法、熱分解法、レーザー蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、熱化学気相蒸着法、電気分解法、フレーム(flame)合成法などが考えられる。
【0032】
例示的ないくつかの実施形態では、炭素系導電材としてカーボンナノチューブを含むことにより、基準電極用ペーストの電気伝導性および機械的安定性、例えば柔軟性をさらに向上させることができる。
【0033】
「グラフェン」とは、1つの炭素が他の炭素原子と六角形のハニカム形状に結合して層をなす物質であり、高い電気伝導性および機械的安定性を有する。「グラファイト」(graphite)とは、地球上に多量に存在する炭素からなる炭素同素体であり、グラフェンが2以上積層された物質である。
【0034】
グラファイトに含まれるシート(単一グラフェン層)は、2~100個であることが好ましい。シートの数が100個を超えると、均一な電気的特性を実現するために炭素系導電材の過剰使用が引き起こされ、基準電極用ペーストの加工性が低下することがある。そのため、グラファイトに含まれるシート(単一グラフェン層)の数は、50以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が最も好ましい。
【0035】
「カーボンブラック」とは、タールのような炭素系化合物の不完全燃焼から得られる物質であり、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、スーパーピーブラック、およびサーマルブラックなどを含む。カーボンブラックは、ナノサイズの微粒子を含む。
【0036】
例示的ないくつかの実施形態では、炭素系導電材としてカーボンブラックを用いることにより、炭素系導電材と塩化銀粉末をより均一に混合することができる。
【0037】
本発明の実施形態では、固体状の銀の代わりに炭素系導電材を含む基準電極用ペーストを開示する。銀に代わって、炭素系導電材は塩化銀粉末と接触して電気的に接続され、測定対象から誘発される塩化銀相の変化(例えば、電流の発生)を基材などに電気的に伝達することができる。
【0038】
また、例示的な実施形態では、基準電極用ペーストは、固体状の銀を含まないので、銀の表面に塩化銀を蒸着するか、または合成するための工程を伴わなくてもよい。特に、炭素系導電材と別に準備された塩化銀とを混合する方法により、均一な界面特性を有する基準電極用ペーストを準備することができる。
【0039】
また、本発明の実施形態による基準電極用ペーストは、固体状の銀を含まなくてもよい。これにより、塩素イオン溶液(例えば、KCl溶液)などと実施例で製造された基準電極を混用しても、塩化銀の追加生成を抑制することができ、塩化銀の増加によるAgCl2
-の生成を遅延することができる。また、塩化銀の追加生成などによって誘発される基準電位の変化を抑制することができ、基準電極の寿命を延ばすことができる。
【0040】
また、基準電極用ペーストの例示的な実施形態は、粉末状の塩化銀を含むことができる。前記粉末状の塩化銀は塩化銀粒子の集合を意味し得る。前記塩化銀粉末は塩化銀粒子を含むことができる。塩化銀粒子のアスペクト比は0.5以上であってもよいが、均一な基準電位を提供できる点で、塩化銀粒子のアスペクト比は0.9以上であることが好ましく、球状または類似球状であることがより好ましい。
【0041】
また、例示的ないくつかの実施形態によると、塩化銀粒子の平均粒径は1μm~10mmであってもよく、1μm~1mmであることが好ましく、1μm~100μmであることがより好ましく、1μm~10μmであることが最も好ましい。塩化銀の平均粒径が大きくなるほど、炭素系導電材に均一に分散しない恐れが大きくなり、塩化銀の平均粒径が減少するほど、酸化還元電位が一定に維持されない恐れが大きくなる。
【0042】
例示的ないくつかの実施形態によると、塩化銀の平均粒径が10μmを超えると、塩化銀粒子の表面エネルギーが増加して塩化銀粒子が炭素系導電材によって十分に分散しないことがあり、付着強度などの機械的安定性がさらに不足することがある。逆に、塩化銀粒子の平均粒径が1μm未満であると、塩化銀粒子の表面が外部に十分に露出せず、基準電極としての電気化学的特性がさらに劣れることがある。
【0043】
したがって、基準電極の電気化学的性質と機械的安定性を共に求めることができる点で、粉末状の塩化銀は、前記の数値範囲を満たす塩化銀粒子を含むことが好ましい。
【0044】
平均粒径が均一な塩化銀を得るために、従来知られているマイクロエマルション法またはマトリックスベースの合成法を用いることができる。また、硝酸銀(AgNO3)と塩化銀とを混合して凝集核を形成し、それを成長させる方法を用いることができる。
【0045】
例えば、硝酸銀に対する塩酸のモル比が2~30であれば、塩化銀キューブまたは球を形成することができ、仮想の内接球または球の平均粒径は1.5μm~0.05mmであってもよい。
【0046】
また、基準電極用ペーストの例示的ないくつかの実施形態では、塩化銀粉末100重量部に対して炭素系導電材は0.1~300重量部含まれてもよく、1~250重量部含まれることが好ましい。
【0047】
例示的ないくつかの実施形態によると、塩化銀粉末が1重量部未満の量で含まれると、基準電極として十分な酸化還元電位を確保できないことがある。また、一定の酸化還元電位を維持できないことがあり、それから得られる基準電極の寿命評価結果が未達になり、寿命が短くなりすぎることがある。逆に、塩化銀粉末が100重量部を超える量で含まれると、炭素系導電材の不足により、基準電極の機械的安定性、例えば屈曲性の評価結果が未達になることがある。
【0048】
したがって、基準電極の電気化学的性質と機械的安定性を共に求めることができる点で、基準電極用ペーストは、前記の数値範囲を満たす塩化銀粉末を含むことが好ましい。
【0049】
また、例示的な実施形態では、基準電極用ペーストに含まれる塩化銀粉末と炭素系導電材を均一に混合するために溶媒をさらに含むことができる。また、塩化銀粉末と炭素系導電材を均一に混合した後、前記溶媒は蒸発することができる。
【0050】
例示的な実施形態によると、前記溶媒はレジン単量体、炭素系導電材および塩化銀粉末を溶解できるものであって、極性を有するものが好ましい。溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、蒸留水、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、またはジメチルスルホキシドの少なくとも1つ以上の溶媒の使用が考えられる。
【0051】
また、例示的な実施形態では、基準電極用ペーストはレジンをさらに含むことができる。レジンはバインダーとして機能し、レジンを含むことにより、基準電極用ペーストの粘着性を増加させることができる。さらに、硬化性レジンを含むことにより、基準電極用ペーストを一定の形状に硬化することができる。
【0052】
本発明の例示的な実施形態では、塩化銀および炭素系導電材を含む混合物がレジンをさらに含む基準電極用ペーストを開示する。
【0053】
混合物に含まれるレジンの例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン、ポリアクリレート樹脂、スチレン-アクリル共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、ポリプロピレン樹脂、オレフィン重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、またはフェノール樹脂の少なくとも1つ以上の樹脂の使用が考えられる。
【0054】
また、前記硬化性レジンは光硬化性または熱硬化性レジンであってもよく、硬化過程で基準電極用ペーストに圧力を加えるか、または硬化過程の前後に基準電極用ペーストに圧力を加えることができる。
【0055】
例えば、前記光硬化性レジンは、単量体、オリゴマー(または樹脂、特に低分子量樹脂)およびポリマーの少なくとも1つを含むことができる。また、単量体の例としては、単官能性単量体、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体が考えられる。
【0056】
単官能性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの架橋環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが考えられる。
【0057】
また、多官能性単量体の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの架橋環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体が考えられる。
【0058】
また、硬化性レジンは、その種類によって硬化剤をさらに含むことができる。熱硬化性樹脂が使用される場合には、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を用いることができる。光硬化性樹脂が使用される場合には、光重合開始剤を含むことができる。
【0059】
また、光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類またはプロピオフェノン類、ベンジル(benzil)類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが考えられる。十分な硬化速度および機械的物性を共に確保できる観点から、硬化性樹脂の前駆体100重量部に対して、硬化剤の含有量は0.1重量部~20重量部であることが好ましい。
【0060】
本明細書では、基材と、請求項1に記載の基準電極用ペーストで前記基材上に形成される電極層とを含む基準電極をさらに開示する。
【0061】
また、前記基材は、伝導性を有するか、または伝導性を有する層を含むことができ、伝導性を有しなくてもよい。基材の形状は、箔、シートまたはプレートであってもよく、単一層でも多重層でもよい。
【0062】
例えば、基材は金属または高分子樹脂を含むことができる。前記金属の例としては、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、スズ、ステンレス鋼、またはこれらの合金が考えられる。また、高分子樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド(例えば、KAPTON(登録商標))、PET、ポリアクリレート、ポリカーボネート、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリエステル(例えば、MYLAR(登録商標))、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(例えば、ULTEM(登録商標))、およびポリエチレンナフタレート(PEN)などの使用が考えられる。
【0063】
本明細書では、作動電極と、例示的な実施形態による基準電極とを含むバイオセンサ、および、作動電極と、対向電極と、例示的な実施形態による基準電極とを含むバイオセンサを追加に開示する。
【0064】
例示的ないくつかの実施形態では、作動電極または対向電極は、金属または炭素ベースの材料を使用して製造されたものであってもよい。例えば、作動電極または対向電極の非限定的な例としては、金属、金属酸化物、カーボンインク、グラファイト、ガラス質炭素、グラフェンなどの使用が考えられる。
【0065】
例示的ないくつかの実施形態では、バイオセンサは2電極システムを含むことができる。また、例示的ないくつかの実施形態では、測定の信頼性、精度などをさらに改善するために、バイオセンサは、対向電極をさらに含んで3電極システムを採用することができる。
【0066】
例示的な実施形態によると、バイオセンサは、様々なバイオ物質の濃度などを測定するために使用することができる。バイオセンサの測定は、測定対象の有無および濃度による電流変化に基づいて行うことができる。また、例示的な実施形態による基準電極は、測定の基準となる基準値を提供することができる。
【0067】
また、測定の対象となるバイオ物質の例としては、酵素、アプタマー、炭水化物、タンパク質、酸化物、脂質、ホルモン、DNA、PNA、RNA、またはこれらの混合物が考えられる。さらに、バイオ物質は血液、尿、涙、汗、唾液、細胞間液、リンパ液、または脳脊髄液などに含まれるものであってもよい。
【0068】
その他にも、バイオセンサは被測定者の生物学的特性を測定するために使用することができる。例示的なバイオセンサは、肌の温度、心拍数、呼吸数、または血圧などを組み合わせた健康情報を抽出するために使用することができる。
【0069】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0070】
以下、図面および実施例を参照して、例示的な実施例による基準電極の電気化学的特性と機械的特性について説明する。ただし、この説明は通常の技術者の理解を助けるためのものであり、本発明の権利範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0071】
図1は、例示的な実施形態による基準電極の概略断面図である。例示的な実施形態による基準電極100は、基材110と、例示的な実施形態による基準電極用ペーストで前記基板上に形成される電極層120とを含む。例示的な実施形態による基準電極100の製造方法は、以下の実施例および比較例に記載する通りである。
【0072】
実施例及び比較例
実施例1
過量の有機溶媒にイソボルニルアクリレート単量体約400重量部、平均粒径が3μmの塩化銀100重量部、グラファイト(CAS No.7782-42-5、シグマアルドリッチ社製、GP)200重量部、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド20重量部を加え、80℃で1時間混合し、溶媒を蒸発させてペーストを得た。
得られたペーストをPET基材上に塗布し、光(紫外線)を照射して光硬化反応を誘導した。その結果、塩化銀とグラファイトが均一に混合された基準電極が得られた。
【0073】
実施例2
実施例1と同様に実施する一方、平均粒径が8μmの塩化銀を使用した。また、イソボルニルアクリレート単量体約600重量部とグラファイト200重量部を使用した。
【0074】
実施例3
実施例1と同様に実施する一方、平均粒径が15μmの塩化銀を使用した。また、イソボルニルアクリレート単量体約800重量部とグラファイト200重量部を使用した。
【0075】
実施例4
実施例1と同様に実施する一方、平均粒径が1μmの塩化銀を使用した。また、イソボルニルアクリレート単量体約200重量部とグラファイト200重量部を使用した。
【0076】
実施例5
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト約300重量部を使用した。
【0077】
実施例6
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト約150重量部を使用した。
【0078】
実施例7
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト約75重量部を使用した。
【0079】
実施例8
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト約10重量部を使用した。
【0080】
実施例9
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト約1重量部を使用した。
【0081】
実施例10
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト200重量部の代わりにグラフェン(CAS No.1034343-98-0、シグマアルドリッチ社製)150重量部を混合してペーストを準備した。
【0082】
実施例11
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト200重量部の代わりに多重壁カーボンナノチューブ(mw-CNT、CAS No.308068-56-6、シグマアルドリッチ社製)150重量部を混合してペーストを準備した。
【0083】
実施例12
実施例1と同様に実施する一方、グラファイト150重量部の代わりにデンカブラック(デンカコリア株式会社製)200重量部を混合してペーストを準備した。
【0084】
実施例1~12のペーストに含まれる化合物の組成及び含有量を下記表1にまとめて示す。各化合物の数値は重量部を意味する。粒径は塩化銀粉末の平均粒径を意味し、単位はμmである。
【0085】
【0086】
比較例1
実施例1と同様に実施する一方、グラファイトを除外し、イソボルニルアクリレート単量体約400重量部、および平均粒径が3μmの塩化銀粉末100重量部を混合してペーストを準備した。
【0087】
比較例2
実施例1と同様に実施する一方、イソボルニルアクリレート単量体約400重量部、グラファイト200重量部、平均粒径が約3μmの塩化銀粉末50重量部、および平均粒径が約3μmの銀粉末50重量部を混合してペーストを準備した。
【0088】
比較例3
実施例1と同様に実施する一方、イソボルニルアクリレート単量体約400重量部、グラファイト200重量部、平均粒径が3μmの銀粉末100重量部を混合してペーストを準備した。
【0089】
実験例
1.基準電極の寿命の評価
ポテンショスタット(Potentiostat、CHI660)を用いて、実施例および比較例で製造された基準電極の寿命を評価した。製造された各基準電極は、3MのKClが添加されたPBS(phosphate buffered saline)溶液に浸漬された。基準電極の電位値を測定するために、銀/塩化銀電極を対向電極として使用した。測定された電位の初期値は0.02~0.06Vであった。
【0090】
基準電極の寿命を評価する準拠は以下の通りである。測定された電位の初期値が特定のレベル以上に維持される期間を基準として各基準電極の性能を評価した。電位の測定は1分単位で行った。
◎(卓越):45日間、電位値が初期値の95%を上回る
○(優秀):30日間、電位値が初期値の95%を上回る
×(未達):30日以内に電位値が初期値の95%を下回る
【0091】
また、
図2は、例示的な実施例1による基準電極用ペーストを用いて得られた基準電極における時間による電位値の変化を示すものである。初期電位値は0.04Vであり、電流値は10nAであった。
【0092】
図2を参照すると、実施例1の基準電極は30日以上約0.04Vの電位を維持し、45日経過後も0.038V以上の電位値を維持したので、電極寿命の評価結果は「卓越」であった。その他の実施例及び比較例による電極の寿命評価結果を下記表2に示す。
【0093】
【0094】
表2を参照すると、実施例3及び実施例9の基準電極は、寿命が「優秀」で、それらを除いた実施例の基準電極は、いずれも寿命が「卓越」であることを確認することができる。特定の含有量に至るまでの炭素系導電材の添加は、寿命の増加に寄与すると判断される。
【0095】
これに対して、比較例1~3は、いずれも寿命が「未達」であり、比較例2及び3では、1%以上の電位変化が確認された。
【0096】
2.基準電極の付着力の評価
ISO 2409に準拠して基準電極の付着力を評価した。詳細には、実施例及び比較例で得られたペーストの硬化物を、刃の間隔が1mmである切断機でクロスカットして、100個ずつの試験片を準備した。
【0097】
準備した試験片に、付着力が約7.6N/cmの試験用テープを付着および脱着し、完全な試験片の数を記録した。付着力の評価結果を下記表3に示す。
【0098】
【0099】
表3を参照すると、実施例1、4、5を除いた実施例及び比較例では、得られた硬化物の試験片が付着力の評価後も完全に残存していた。評価結果によると、基準電極用ペーストに含まれるレジンの含有量比が増加するほど、残存する試験片の数が増加することを確認することができた。
【0100】
3.基準電極の柔軟性の評価
柔軟性を評価するために、実施例及び比較例で得られたペーストの硬化物からサイズ15mm×25mmの試験片を5個ずつ切り取った。JIS P 8115に準拠して試験片を垂直方向に5回ずつ曲げて、試験片の曲げ前後の抵抗変化を測定した。
【0101】
試験片の曲げにおいて、曲率半径は0.8mm、伝送速度は175rpm、搬送角度は135度、荷重は0.5kgfであった。評価準拠は以下の通りであり、評価結果は下記表4に示す。
◎(卓越):5回曲げ前後の抵抗変化が5%以下
○(優秀):5回曲げ前後の抵抗変化が10%以下
×(未達):5回曲げ前後の抵抗変化が10%を超える
【0102】
【0103】
表4を参照すると、実施例3及び実施例9を除いた実施例では、いずれも硬化体の柔軟性が「優秀」以上と評価され、実施例4、実施例5及び実施例11では、柔軟性が「卓越」と評価された。また、比較例1を除いた比較例の硬化体もまた、柔軟性が「優秀」と評価された。
【0104】
評価結果を参照すると、基準電極用ペーストに含まれる炭素系導電材の含有量比が高いほど柔軟性が向上することが示された。また、炭素系導電材の種類によって柔軟性が異なり、カーボンナノチューブの使用が柔軟性の向上に寄与できることが示された。