(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173148
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】無線周波数フロントエンド素子に整合する入出力インピーダンスを有する横方向励起フィルムバルク音響共振器マトリックスフィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 7/46 20060101AFI20221110BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20221110BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20221110BHJP
H03H 9/70 20060101ALI20221110BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20221110BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20221110BHJP
H04B 1/00 20060101ALI20221110BHJP
H04B 1/18 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H03H7/46 A
H03H9/72
H03H9/25 Z
H03H9/70
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
H04B1/00 257
H04B1/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076570
(22)【出願日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】63/185,454
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/494,677
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514326649
【氏名又は名称】レゾナント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESONANT INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ギエット アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】フェンツィ ニール
(72)【発明者】
【氏名】エディ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ブライアント
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
5K062
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097BB15
5J097CC05
5J097KK03
5J097KK04
5J097KK09
5J097KK10
5J097LL07
5J108AA07
5J108BB01
5J108CC04
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108JJ01
5K062AA09
5K062AC01
5K062AD04
5K062AE02
5K062BC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】損失を低減した、より高い周波数及び帯域幅での使用に適したマトリックスフィルタダイプレクサを提供する。
【解決手段】アンテナポート(共通フィルタポートFP1)、受信ポートFP2及び送信ポートFP3を有するマトリックスフィルタダイプレクサ1210は、受信ポートとアンテナポートとの間に結合される。送信マトリックスフィルタは、アンテナポートと送信ポートとの間に結合される。受信ポートのインピーダンスは、低雑音増幅器(LNA)1225の入力インピーダンスと整合し、送信ポートのインピーダンスは電力増幅器(PA)1220の出力インピーダンスと整合し、アンテナポートのインピーダンスはアンテナ1205のインピーダンスと整合する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信ポートとアンテナポートの間に結合された受信マトリックスフィルタと、
前記アンテナポートと送信ポートの間に結合された送信マトリックスフィルタと、
を備える、マトリックスフィルタダイプレクサであって、
前記受信ポートのインピーダンスは低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合し、
前記送信ポートのインピーダンスは電力増幅器(PA)の出力インピーダンスと整合し、
前記アンテナポートのインピーダンスはアンテナのインピーダンスと整合する、マトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項2】
前記受信ポートのインピーダンスは、RF受信機の低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合したフィルタ出力ポートの300Ωであり、
前記送信ポートのインピーダンスは、RF送信機の電力増幅器(PA)の出力インピーダンスと整合したフィルタ出力ポートの4Ωであり、
前記アンテナポートのインピーダンスは、無線周波数(RF)アンテナのインピーダンスと整合したフィルタ入力ポートの50Ωである、
請求項1に記載のマトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項3】
前記受信マトリックスフィルタ及び前記送信マトリックスフィルタは、
前記フィルタアンテナポートとそれぞれのフィルタ出力ポートとの間に接続された2つ以上のサブフィルタであって、各サブフィルタがn個の横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)直列素子とn-1個のコンデンサシャント素子を有するラダー回路を備え、前記サブフィルタの次数であるnは2より大きい整数である、2つ以上のサブフィルタ
をそれぞれ含む、請求項1に記載のマトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項4】
前記2つ以上のサブフィルタが非隣接通過帯域を有し、前記非隣接通過帯域のそれぞれが1つのサブフィルタのみの通過帯域である、請求項3に記載のマトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項5】
前記2つ以上のサブフィルタのそれぞれは、前記マトリックスフィルタの入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって分離された非隣接通過帯域を有する、請求項3に記載のマトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項6】
前記XBAR直列素子が、第一のサブフィルタポートに接続された第一の端部XBARと、第二のサブフィルタポートに接続された第二の端部XBARと、前記第一及び第二の端部音響共振器の間に接続された1つ以上の中間XBARとを含む、請求項3に記載のマトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項7】
前記送信ポート又は前記アンテナポートに印加される無線周波数信号が、前記XBAR直列素子の一次剪断音響モードを励起する、請求項3に記載のマトリックスフィルタダイプレクサ。
【請求項8】
第一及び第二の受信ポートとアンテナポートとの間に結合された第一及び第二の受信マトリックスフィルタと、
前記アンテナポートと第一及び第二の送信ポートとの間に結合された第一及び第二の送信マトリックスフィルタと、
を備える、マトリックスフィルタマルチプレクサであって、
前記第一及び第二の受信ポートのインピーダンスは、低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合し、
前記第一及び第二の送信ポートのインピーダンスは、電力増幅器の出力インピーダンスと整合し、
前記アンテナポートのインピーダンスは、アンテナのインピーダンスと整合する、
マトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項9】
前記第一及び第二の受信ポートのインピーダンスは、第一及び第二のRF受信機の低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合したフィルタ出力ポートの300Ωであり、
前記第一及び第二の送信ポートのインピーダンスは、第一及び第二のRF送信機の電力増幅器(PA)の出力インピーダンスと整合したフィルタ出力ポートの4Ωであり、
前記アンテナポートのインピーダンスは、無線周波数(RF)アンテナのインピーダンスと整合したフィルタ入力ポートの50Ωである、
請求項8に記載のマトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項10】
前記第一及び第二の受信マトリックスフィルタ及び前記第一及び第二の送信マトリックスフィルタは、
前記フィルタアンテナポートとそれぞれのフィルタ出力ポートとの間に接続された2つ以上のサブフィルタであって、各サブフィルタがn個の横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)直列素子とn-1個のコンデンサシャント素子を有するラダー回路を備え、前記サブフィルタの次数であるnは2より大きい整数である、2つ以上のサブフィルタ
をそれぞれ含む、請求項8に記載のマトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項11】
前記2つ以上のサブフィルタが非隣接通過帯域を有し、前記非隣接通過帯域のそれぞれが1つのサブフィルタのみの通過帯域である、請求項10に記載のマトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項12】
前記2つ以上のサブフィルタのそれぞれは、前記マトリックスフィルタの入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって分離された非隣接通過帯域を有する、請求項10に記載のマトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項13】
前記XBAR直列素子が、第一のサブフィルタポートに接続された第一の端部XBARと、第二のサブフィルタポートに接続された第二の端部XBARと、前記第一及び第二の端部音響共振器の間に接続された1つ以上の中間XBARとを含む、請求項10に記載のマトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項14】
前記第一の送信ポート、前記第二の送信ポート、又は前記アンテナポートのうちの1つに印加される無線周波数信号が、前記XBAR直列素子における一次剪断音響モードを励起する、請求項10に記載のマトリックスフィルタマルチプレクサ。
【請求項15】
フィルタ入力ポートと、
前記フィルタ入力ポートとそれぞれのフィルタ出力ポートの間に接続された2つ以上のサブフィルタであって、各サブフィルタは、n個の横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)直列素子とn-1個のコンデンサシャント素子を有するラダー回路を備え、前記サブフィルタの次数であるnは、2以上の整数である、2つ以上のサブフィルタと、
を備える、マトリックスフィルタであって、
前記それぞれのフィルタ出力ポートのうちの第一の複数のインピーダンスが低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合し、
前記それぞれのフィルタ出力ポートのうちの第二の複数のインピーダンスが電力増幅器の出力インピーダンスと整合し、
前記入力ポートのインピーダンスがアンテナのインピーダンスと整合する、マトリックスフィルタ。
【請求項16】
前記2つ以上のサブフィルタが非隣接通過帯域を有し、前記非隣接通過帯域のそれぞれが1つのサブフィルタのみの通過帯域である、請求項15に記載のフィルタ。
【請求項17】
前記2つ以上のサブフィルタのそれぞれは、前記マトリックスフィルタの入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって分離された非隣接通過帯域を有する、請求項15に記載のフィルタ。
【請求項18】
前記2つ以上のサブフィルタのうちの1つだけが、前記フィルタ入力ポートとそれぞれのフィルタ出力ポートとの間に接続されるように選択され、かつ、いずれの単一のサブフィルタの入出力伝達関数も、他のサブフィルタの入出力伝達関数と、両フィルタの伝達関数S21が-20dBを上回る周波数において、交差しない、請求項15に記載のフィルタ。
【請求項19】
前記フィルタ入力ポートと前記それぞれのフィルタ出力ポートの間のサブフィルタの接続は、前記非隣接通過帯域の1つ以上を選択するためにスイッチ切り替え可能である、請求項15に記載のフィルタ。
【請求項20】
アンテナと3つの受信機との間に結合されたマトリックストリプレクサを備える3バンドダイバーシチ受信機であって、前記トリプレクサは、
第一のフィルタポートと第一の受信機に結合された第二のフィルタポートの間に結合された第一のサブフィルタと、
前記第一のフィルタポートと第二の受信機に結合された第三のフィルタポートとの間に結合された第二のサブフィルタと、
前記第一のフィルタポートと第三の受信機に結合された第四のフィルタポートとの間に結合された第三のサブフィルタと、
を備え、
各サブフィルタが、少なくとも3つの横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)直列素子及び少なくとも2つのコンデンサシャント素子を有するラダー回路を備え、
前記第二、第三及び第四のフィルタポートのインピーダンスは、それぞれの低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合し、
前記第一のフィルタポートのインピーダンスは、アンテナのインピーダンスと整合する、3バンドダイバーシチ受信機。
【請求項21】
前記3つのサブフィルタのそれぞれは、前記マトリックスフィルタの入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって他の3つのサブフィルタの全ての前記通過帯域から分離された非隣接通過帯域を有する、請求項20に記載のフィルタ。
【請求項22】
前記XBAR直列素子のそれぞれは、第一のサブフィルタポートと第二のサブフィルタポートとの間に直列に接続され、
前記シャントコンデンサのそれぞれは、接地と前記XBAR直列素子のそれぞれのペアの間のノードとの間に接続されている、請求項20に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権及びトレードドレスの通知)
本特許文書の開示の一部分は、著作権の保護を受ける材料を含む。本特許文書は、所有者のトレードドレスである事項又はトレードドレスとなり得る事項を図示及び/又は記載することができる。権及びトレードドレスの所有者は、その特許開示が米国特許商標庁の特許出願書類又は記録内にあるので、当該特許開示を任意の者が複製することに異議はないが、それ以外は何であれ、全ての著作権及びトレードドレス権を保有するものである。
【0002】
(関連出願情報)
本特許は、2021年5月7日に出願された、「MATRIX FILTER WITH RFFE MATCHING」と題する仮特許出願第63/185,454号の優先権を主張し、その内容は参照によりここに組み込まれるものとする。
【0003】
本特許は、2021年4月27日に出願された「MATRIX FILTER WITH RFFE MATCHING」と題する仮特許出願第63/180,084号の優先権を主張して、2021年7月9日に出願された「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR MATRIX FILTERS WITH NONCONTIGUOUS PASSBAND」と題する一部継続出願第17/372,114号であり、かつ2020年10月5日に出願された「MATRIX XBAR FILTER」と題する仮特許出願第63/087,789号の優先権を主張して、2020年12月14日に出願された「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR MATRIX FILTERS WITH NONCONTIGUOUS PASSBAND」と題する継続出願第17/121,724号で、2020年12月15日に出願された「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR MATRIX FILTERS WITH NONCONTIGUOUS PASSBAND」と題する一部継続出願第17/122,986号でもある、2021年7月12日に出願された「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR MATRIX FILTERS WITH SWITCHES IN PARALLEL WITH SUB-FILTER SHUNT CAPACITORS」と題する一部継続出願第17/373,427号である。
【0004】
本開示は、弾性波共振器を用いた無線周波フィルタに関し、特に通信機器に使用するためのフィルタに関する。
【背景技術】
【0005】
無線周波(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を阻止させるように構成された2ポートデバイスであり、「通過」は比較的低い信号損失で送信することを意味し、「阻止」はブロックすること又は大幅に減衰させることを意味する。フィルタを通過する周波数の範囲は、フィルタの「通過帯域」と呼ばれる。このようなフィルタによって阻止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域」と呼ばれる。一般的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域と、少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域又は阻止帯域の特定の要件は、特定の用途に依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB、又は3dBなどの定義された値よりも良好な周波数範囲として定義されてもよい。「阻止帯域」は、フィルタの拒否が用途に応じて20dB、30dB、40dB、又はそれ以上などの定義された値よりも大きい周波数範囲として定義されてもよい。
【0006】
RFフィルタは、情報が無線リンクを介して送信される通信システムで使用されている。例えば、RFフィルタは、セルラーベースステーション、携帯電話及びコンピューティングデバイス、衛星トランシーバ及び地上局、IoT(モノのインターネット)デバイス、ラップトップコンピュータ及びタブレット、固定ポイント無線リンク、及び他の通信システムのRFフロントエンドで見られる。RFフィルタは、レーダ、電子及び情報戦システムでも使用されている。
【0007】
RFフィルタは、通常、特定の用途ごとに、挿入損失、拒否、絶縁、電力処理、直線性、サイズ及びコストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を実現するために多くの設計上のトレードオフを必要とする。特定の設計及び製造方法と機能強化は、これらの要件の1つ又は幾つかを同時に実現できる。
【0008】
無線システムにおけるRFフィルタの性能の強化は、システム性能に幅広い影響を与える可能性がある。RFフィルタの改善を活用して、セルサイズの拡大、バッテリ寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、コストの削減、セキュリティの強化、信頼性の向上などのシステム性能の改善を実現できる。これらの改善は、無線システムの多くのレベルで、例えば、RFモジュール、RFトランシーバ、モバイル又は固定サブシステム、又はネットワークレベルなどで、個別でも、組み合わせてでも実現できる。
【0009】
現在の通信システム用の高性能RFフィルタは、一般に、表面弾性波(SAW)共振器、バルク弾性波(BAW)共振器、フィルムバルク弾性波共振器(FBAR)、及びその他のタイプの音響共振器を含む弾性波共振器を組み込んでいる。しかしながら、これらの既存技術は、将来の通信ネットワークで提案されているより高い周波数及び帯域幅での使用には適していない。
【0010】
通信チャネルの帯域幅をより広くしたいという要望は、必然的に高い周波数の通信帯域を使用することになる。モバイル電話ネットワークの無線アクセス技術は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)(登録商標)によって標準化されてきた。第五世代(5G)モバイルネットワークの無線アクセス技術は、5G NR(new radio)規格で定義されている。5G NR規格では、いくつかの新しい通信帯域が定義されている。この新しい通信帯域のうちの2つが、3300MHz~4200MHzの周波数帯域を使用するn77と、4400MHz~5000MHzの周波数帯域を使用するn79である。帯域n77及び帯域n79は両方とも時分割多重(TDD)を採用しており、帯域n77及び/又は帯域n79で動作する通信機器は、アップリンクとダウンリンクの両方の送信で同じ周波数を使用する。帯域n77と帯域n79のバンドパスフィルタは、通信機器の送信電力に対応できるものでなければならない。5GHz及び6GHzのWiFi帯域も高い周波数と広い帯域を必要とする。5G NR規格では、24.25GHz~40GHzの周波数を有するミリ波通信帯域も定義されている。
【0011】
横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタに使用するための音響共振器構造である。XBARは、「TRANSVERSELY EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」と題する特許文献1に記載されている。XBAR共振器は、単結晶圧電材料の薄い浮遊層又はダイアフラム上に形成されたインターデジタル変換器(IDT)を含む。IDTは、第一のバスバーから延びる第一のセットの平行フィンガと、第二のバスバーから延びる第二のセットの平行フィンガとを含む。第一及び第二の平行フィンガは、インターリーブされている。IDTに印加されたマイクロ波信号により、圧電ダイアフラムに剪断一次弾性波が励起される。XBAR共振器は、非常に高い電気機械的結合と高い周波数性能を提供する。XBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサなど、様々なRFフィルタに使用することができる。XBARは、3GHzを超える周波数を有する通信帯域用フィルタで使用するのに非常に適している。マトリックスXBARフィルタは、1GHz~3GHzの周波数のフィルタにも適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略平面図、2つの概略断面図、及び詳細断面図を含む。
【
図2B】理想的な音響共振器のアドミタンスのグラフである。
【
図3A】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用するマトリックスフィルタの概略図である。
【
図4】サブフィルタの共振周波数を示す
図3Aのフィルタの実施形態の性能のグラフである。
【
図5】サブフィルタの通過帯域周波数を示す
図3Aのフィルタの実施形態の性能のグラフである。
【
図6】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用するマトリックスダイプレクサの概略図である。
【
図7】
図6のスイッチドダイプレクサの実施形態の入出力伝達関数のグラフである。
【
図8】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用するマトリックストリプレクサの概略図である。
【
図9】
図8のトリプレクサの実施形態の入出力伝達関数のグラフである。
【
図10A】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用する再構成可能なスイッチドマトリックスフィルタの概略図である。
【
図10B】
図10Aの1つのタイプのサブフィルタ及びスイッチモジュールの概略図である。
【
図10C】
図10Aの別のタイプのサブフィルタ及びスイッチモジュールの概略図である。
【
図11】
図10Aの再構成可能なスイッチドマトリックスフィルタの実施形態の2つの構成の入出力伝達関数のグラフである。
【
図12】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する周波数分割二重(FDD)無線機の概略ブロック図である。
【
図13】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有するマトリックストリプレクサを使用する3バンドダイバーシチ受信機のブロック図である。
【
図14】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有するマトリックス多重化フィルタを使用するデュアルバンド周波数分割無線機のブロック図である。
【
図15A】無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用するマトリックスフィルタの概略図である。
【0014】
この説明全体を通して、図に表示される要素には、3桁又は4桁の参照番号が割り当てられる。ここで、下2桁は要素に固有であり、上1桁又は上2桁は要素が最初に導入された図番号である。図と共に説明されていない要素は、同じ参照番号を有する前述の要素と同じ特性及び機能を有すると推定され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(装置の説明)
横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタに使用するための音響共振器構造である。XBARは、「TRANSVERSELY EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」と題する特許文献1に記載されており、その記載は、その全体が参照により、本明細書に組み込まれる。XBAR共振器は、圧電材料の薄い浮遊層又はダイアフラム上に形成されたインターデジタル変換器(IDT)を有する導体パターンを備える。IDTは2つのバスバーを有し、バスバーは、それぞれ1セットのフィンガに取り付けられており、2セットのフィンガは、共振器が装着された基板に形成されたキャビティを介してダイアフラム上にインターリーブされる。ダイアフラムはキャビティにまたがっており、前面側及び/又は背面側の誘電体層を含んでもよい。IDTに印加されたマイクロ波信号は、圧電ダイアフラムに剪断一次音響波を励起し、音響エネルギーは、IDTによって発生した電界の方向に対して直交又は横断する層の表面に対して実質的に垂直に流れるようになる。XBAR共振器は、非常に高い電気機械的結合と高い周波数性能を提供する。
【0016】
マトリックスフィルタは、小型のXBAR共振器を用いて様々な低周波フィルタを実装することができるフィルタアーキテクチャである。マトリックスフィルタのサブフィルタでは、低周波の非隣接バンドパスフィルタリングを実現することができる。このようなバンドパスサブフィルタは、XBAR直列素子とコンデンサシャント素子によるラダーフィルタ回路を有する。以下では、アンテナ(Ant)、電力増幅器(PA)、低雑音増幅器(LN)などの無線周波数フロントエンド(RFFE)素子にインピーダンス整合するために、マトリックスフィルタの入力及び/又は出力インピーダンスを広い範囲に設定することで、改善されたXBAR共振器、フィルタ及び製造技術について説明する。マトリックスフィルタはRFFEとインピーダンス整合しているため、外部からのインピーダンス整合やスイッチングが不要である。
【0017】
図1は、横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略上面図、直交断面図、及び詳細断面図を示す。共振器100などのXBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、及びマルチプレクサを含む様々なRFフィルタで使用してもよい。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタでの使用に特に適している。この特許に記載されるマトリックスXBARフィルタは、1GHz以上の周波数にも適している。
【0018】
XBAR100は、それぞれ平行な前面112及び背面114を有する圧電板110の表面上に形成された薄膜導体パターンから構成される。圧電板は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電板は、前面と背面に対するX、Y、Z結晶軸の配向が既知で一貫しているようにカットされる。圧電板は、Zカット(つまり、Z軸は前面112及び背面114に垂直である)、回転Zカット、又は回転YXカットのいずれであってもよいXBARは、他の結晶学的配向を有する圧電板上に製造されてもよい。
【0019】
圧電板110の背面114は、基板に形成されたキャビティ140にまたがるダイアフラム115を形成する圧電板110の部分を除いて、基板120の表面に取り付けられている。キャビティにまたがる圧電板の部分は、マイクロフォンのダイアフラムに物理的に類似しているため、本明細書では「ダイアフラム」115と呼ばれる。
図1に示すように、ダイアフラム115は、キャビティ140の周囲145の全ての周りで圧電板110の残りの部分と隣接している。この文脈において、「隣接している(contiguous)」とは、「介在物なしで連続的に接続されている」ことを意味する。他の構成では、ダイアフラム115は、キャビティ140の周囲145の少なくとも50%の周りで圧電板と隣接していてもよい。
【0020】
基板120は、圧電板110に機械的支持を提供する。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英、若しくは他の何らかの材料、又は材料の組み合わせであってもよい。圧電板110は、ウェーハボンディングプロセスを用いて基板120に結合してもよい。あるいは、圧電板110は、基板120上に成長させても、他の何らかの方法で基板に取り付けてもよい。圧電板110は、基板に直接取り付けても、あるいは1つ以上の中間材料層を介して基板120に取り付けてもよい(
図1に図示せず)。
【0021】
「キャビティ」は、「中実体内の空いた空間」という従来の意味を有する。キャビティ140は、(断面A-A及び断面B-Bに示すように)基板120を完全に貫通する穴であってもよいし、ダイアフラム115の下の基板120の凹部であってもよい。キャビティ140は、例えば、圧電板110と基板120とが取り付け合わされる前又は後に、基板120を選択的にエッチングすることによって形成されてもよい。
【0022】
XBAR100の導体パターンは、インターデジタル変換器(IDT)130を含む。IDT130は、第一のバスバー132から延びるフィンガ136などの第一の複数の平行なフィンガと、第二のバスバー134から延びる第二の複数のフィンガとを含む。第一及び第二の複数の平行なフィンガは、インターリーブされる。インターリーブされたフィンガは、一般にIDTの「アパーチャ」と呼ばれる距離APにわたって重なり合う。IDT130の最側のフィンガ間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0023】
第一及び第二のバスバー132、134は、XBAR100の端子として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に印加される無線周波数又はマイクロ波信号は、圧電板110内の一次音響モードを励起する。XBARの一次音響モードは、音響エネルギーが圧電板110の表面に実質的に直交する方向に沿って伝播するバルク剪断モードであり、これはまた、IDTフィンガによって生成された電界の方向に垂直又は横方向である。したがって、XBARは、横方向励起フィルムバルク波共振器と見なされる。
【0024】
IDT130は、少なくともIDT130のフィンガがキャビティ140にまたがっている、又はその上に懸架されているダイアフラム115上に配置されるように、圧電板110上に配置される。
図1に示すように、キャビティ125は、アパーチャAP及びIDT130の長さLよりも広い範囲を有する長方形の形状を有する。XBARのキャビティは、正多角形又は不等辺多角形など、様々な形状をしていてもよい。XBARのキャビティは、辺の数が4つを上回っても、下回ってもよく、それらの辺は直線であっても、曲線であってもよい。
【0025】
詳細断面図(詳細C)は、圧電板110の表面上の2つのIDTフィンガ136a、136bを示す。寸法pはIDTの「ピッチ」であり、寸法wはIDTフィンガの幅又は「マーク」である。誘電体層150は、IDTフィンガの間に、また任意にその上に(IDTフィンガ136aを参照)形成されてもよい。誘電体層150は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの非圧電性誘電体材料であってもよい。誘電体層150は、2つ以上の材料の複数の層で形成されてもよい。IDTフィンガ136a及び136bは、アルミニウム、銅、ベリリウム、金、タングステン、モリブデン、それらの合金及び組み合わせ、又は何らかの他の導電材料であってもよい。フィンガと圧電板110との間の接着を改善するため、及び/又はフィンガを不動態化又はカプセル化するため、及び/又はパワーハンドリングを改善するために、フィンガの下及び/又は上、及び/又はフィンガ内の層として、クロム又はチタンなどの他の金属の薄い(導体の総厚に対しての)層が形成されてもよい。IDT130のバスバーは、フィンガと同じ材料で作られても、異なる材料で作られてもよい。
【0026】
図1の提示を容易にするために、IDTフィンガの幾何学的ピッチ及び幅は、XBARの長さ(寸法L)及びアパーチャ(寸法AP)に関して著しく誇張されている。一般的なXBARは、IDT110に10を超える平行なフィンガを有する。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行なフィンガを有してもよい。同様に、断面図のフィンガの太さは、著しく誇張されている。
【0027】
剪断弾性波共振に基づく音響共振器は、現在の最先端の表面弾性波(SAW)、フィルムバルク音響共振器(FBAR)及び、ソリッドマウント共振器バルク弾性波(SMR BAW)デバイスよりも優れた性能を達成できる。特に、剪断波XBAR共振の圧電結合は、他の音響共振器と比較して高くすることができる(>20%)。高い圧電結合によって、かなりの帯域幅を有する様々なタイプのマイクロ波及びミリ波フィルタの設計と実装が可能になる。
【0028】
XBARを含む音響共振器の基本的な挙動は、
図2Aに示すようなButterworth Van Dyke(BVD)回路モデルを用いて一般的に説明される。BVD回路モデルは、運動アームと静的アームとから構成される。運動アームは、運動インダクタンスL
m、運動容量C
m、及び抵抗R
mを含む。静的アームには、静電容量C
0と抵抗R
0が含まれる。BVDモデルは音響共振器の挙動を完全に記述するものではないが、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサ(マルチプレクサは複数の通過帯域がある3つ以上の入力ポート又は出力ポートを有するフィルタ)の設計に使用される2つの主共振をモデル化するには適している。
【0029】
BVDモデルの第一の主共振は、運動インダクタンスL
mと運動容量C
mの直列結合によって生じる運動共振である。BVDモデルの第二の主共振は、運動インダクタンスL
m、運動容量C
m、及び静電容量C
0の組み合わせによって生じる反共振である。無損失共振器(R
m=R
0=0)では、運動共振の周波数F
rは、
【数1】
で与えられる。反共振の周波数F
aは、
【数2】
で与えられる。ここで、γ=C
0/C
mは共振器構造、圧電材料の種類及び結晶軸の配向に依存する。
【0030】
図2Bは、理論的な無損失音響共振器のアドミタンスの大きさである。具体的には、実線の曲線210は、周波数の関数として音響共振器のアドミタンスの大きさをプロットしたものである。音響共振器は、共振器のアドミタンスが無限大に近づく共振周波数において、共振212を有する。この共振は、
図2AのBVDモデルにおける運動インダクタンスL
mと運動容量C
mの直列結合に起因する。また、音響共振器は、共振器のアドミタンスがゼロに近づく反共振214を示す。反共振は、運動インダクタンスL
m、運動容量C
m、及び静電容量C
0の組み合わせによって引き起こされる。無損失共振器(R
m=R
0=0)において、共振の周波数F
rは、
【数3】
で与えられる。反共振の周波数F
aは、
【数4】
で与えられる。
【0031】
過度に簡略化すると、無損失音響共振器は、共振周波数212で短絡し、反共振周波数214で開回路であると考えることができる。
図2Bの共振周波数及び反共振周波数は代表的なものであり、音響共振器は他の周波数に対して設計することもできる。
【0032】
図2Cは、XBARなどの音響共振器の回路記号を示す。この記号は、以降の図のフィルタの概略図において、各音響共振器を指定するために使用される。
【0033】
図3Aは、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を用いたマトリックスフィルタ300の概略図である。マトリックスフィルタ300は、第一のフィルタポート(FP1)と第二のフィルタポート(FP2)との間に並列に接続されたn個のサブフィルタ320-1、320-2、320-nのアレイ310を含み、nは1より大きい整数である。サブフィルタ320-1、320-2、320-nは、非隣接通過帯域を有しており、その結果、マトリックスフィルタ300の帯域幅が構成サブフィルタの帯域幅の合計に等しくない代わりに、マトリックスフィルタ300の入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって分離された3つの別々の独立した通過帯域を有するようになっている。この特許の後続の実施例では、n=3である。nは、マトリックスフィルタ300に所望の非隣接通過帯域を提供するために、必要に応じて3より小さくすることも、3より大きくすることができる。いくつかの実施実施例では、n個のサブフィルタ320-1、320-2、320-nは、1つ以上のXBARを含んでもよい。フィルタ300及び/又はサブフィルタは、5G NR規格によって定義された周波数帯域を通過させるRFフィルタであってもよい。
【0034】
サブフィルタのアレイ310は、好ましくはXBARであるが、必ずしもXBARでない音響共振器XL1及びXH1によってFP1端で終端される。サブフィルタのアレイ310は、好ましくはXBARであるが、必ずしもXBARでないFP2端で音響共振器XL2及びXH2によって終端される。音響共振器XL1、XL2、XH1、及びXH2は、それらのそれぞれの共振周波数で「伝送ゼロ」を生成する。「伝送ゼロ」は、フィルタ300の入出力伝達関数が非常に低い(音響共振器XL1、XL2、XH1、XH2がロスレスであればゼロとなる)周波数である。ゼロ伝送は、音響共振器の1つ以上が接地に対して非常に低いインピーダンスを生成することによって引き起こされる可能性があり、したがって、この構成では、音響共振器が基本的に接地に対して短絡であるので、サブフィルタはフィルタリングコンポーネントとして除去され、サブフィルタが伝送ゼロ周波数の間にフィルタ300に影響を及ぼさない。典型的には、XL1及びXL2の共振周波数は等しく、XH1及びXH2の共振周波数は等しいが、必ずしもそうではない。音響共振器XL1、XL2の共振周波数は、フィルタ通過帯域の低端に隣接する伝送ゼロ点を提供するように選択される。XL1及びXL2は、共振周波数がフィルタ通過帯域の低端に近いので、「低端共振器」と呼ばれることがある。音響共振器XL1及びXL2は、フィルタのポートにおけるインピーダンスを所望のインピーダンス値に整合させるのに役立つシャントインダクタンスとしても機能する。この特許の後続の実施例では、フィルタの各ポートにおけるインピーダンスは、RFアンテナに接続される場合には50Ω、RF送信機のような電力増幅器に接続される場合には4Ω、RF受信機のような低雑音増幅器に接続される場合には300Ωと整合させることができる。これらの実施形態の具体的な実施例は、
図15A~Cで与えられる。他の場合、インピーダンスは、20、100又は1000Ωなど、所望により他の値であってもよい。音響共振器XH1、XH2の共振周波数は、フィルタ通過帯域の高端又はそれ以上で伝送ゼロを提供するように選択される。XH1及びXH2は、共振周波数がフィルタ通過帯域の高端に近いため、「高端共振器」と呼ばれることがある。高端共振器XH1及びXH2は、これらの高端周波数で信号の相対的な振幅を通過させないサブフィルタを有するフィルタなど、全てのマトリックスフィルタにおいて必要でない場合がある。
【0035】
図3Bは、フィルタ300のサブフィルタ320-1、320-2、320-nのそれぞれに適したサブフィルタ350の概略図である。サブフィルタ350は、FP1に接続可能な第一のサブフィルタポート(SP1)とFP2に接続可能な第二のサブフィルタポート(SP2)との間に直列に接続された3つの音響共振器XA,XB,XCを含む。音響共振器XA、XB、XCは、好ましくはXBARであるが、必ずしもそうでなくてもよい。サブフィルタ350は、2つのカップリングコンデンサCA、CBを含み、これらのそれぞれは、接地と、音響共振器のうちの2つの間のそれぞれのノードとの間に接続される。サブフィルタ350に3つの音響共振器が含まれることは、例示的なものある。サブフィルタは、m個の音響共振器を有していてもよく、mは1より大きい整数である。m個の音響共振器を有するサブフィルタは、m-1個のカップリングコンデンサを含む。サブフィルタのm個の音響共振器は、サブフィルタの2つのポートSP1及びSP2の間に直列に接続され、m-1個のカップリングコンデンサのそれぞれは、接地とm個の音響共振器からのそれぞれの音響共振器の対の間のノードとの間に接続される。
【0036】
他のタイプの音響共振器と比較して、XBARは、非常に高い電気機械的結合を有する(このことは、共振周波数と反共振周波数の間に大きな差をもたらす)が、単位面積当たりの静電容量が低い。
図3A及び
図3Bに示すようなマトリックスフィルタアーキテクチャは、高い共振器容量を必要とせずに、XBARの高い電気機械的結合を利用するものである。
【0037】
図4は、音響共振器の全てに対してXBARを使用して実装されたマトリックスフィルタの例示的な実施形態の性能405のグラフ400である。グラフ400における性能405は、3つの非隣接通過帯域サブフィルタ1、2及び3を有するフィルタ300の伝達関数S21の性能であってよい。具体的には、性能405は、実線410、破線420及び点線430を含み、これらは、フィルタのFP1からFP2への伝達関数であるS21を周波数の関数としてプロットしたものであり、線410、420及び430のそれぞれは、それぞれ非隣接通過帯域サブフィルタ1、2及び3に関するものである。すなわち、実線410は、フィルタのサブフィルタ1に対するFP1からFP2への分離伝達関数S21を、周波数の関数として、かつ共振周波数SF1と分離してプロットしたものである。破線420は、フィルタのサブフィルタ2に対するFP1からFP2への分離伝達関数S21を、周波数の関数として、かつ共振周波数SF2を分離してプロットしたものである。点線430は、フィルタのサブフィルタ3に対するFP1からFP2への分離伝達関数S21を、周波数の関数として、かつ共振周波数SF3を分離してプロットしたものである。例示的なフィルタは非対称であるため、実線410、破線420、点線430は、S12のプロットではない。
【0038】
図5は、
図4に性能が示された
図3Aのフィルタの例示的なマトリックスフィルタ内のサブフィルタの通過帯域周波数のグラフ500である。グラフ500の一例は、LTE帯域3、1、及び7(低周波から高周波まで)の受信周波数に対して、通過帯域が-3dB以上と定義されるものであってよい。具体的には、P1、P2、及びP3は、それぞれサブフィルタ1、サブフィルタ2、サブフィルタ3の入出力伝達関数の大きさの-3dB以上の通過帯域の周波数である。通過帯域P1、P2、及びP3は、隣接する通過帯域の各ペアが、マトリックスフィルタの入出力伝達関数が-20dB未満である阻止帯域で分離されるため、非隣接である。例えば、通過帯域P1及びP2は、そのペアが、マトリックスフィルタ300の入出力伝達関数S21が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域SB1によって分離されるため、非隣接である。また、通過帯域P2及びP3は、そのペアが、マトリックスフィルタ300の入出力伝達関数S21が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域SB2によって分離されるため、非隣接である。
【0039】
図4及び
図5のマトリックスフィルタは、入力及び出力RF通信信号に対して多数の通過帯域を提供するためにスイッチ切替可能な入力ポートと出力ポートとの間の接続を有する3つのサブフィルタを含む。各サブフィルタは、
図3A及び
図3Bに示すように、3つのXBARを含んでもよい。他の場合では、2つ、4つ、5つ、又は最大10個のサブフィルタがあってもよい。また、各サブフィルタは、4つ以上のXBARと2つのカップリングコンデンサを含んでもよい。いくつかのサブフィルタは、m個の音響共振器(m=4、5、6又は最大10)と、
図3Bについて注記したように、対応するm-1個のカップリングコンデンサを有してもよい。この実施例及び全ての後続の実施例において、フィルタ性能は、XBARに対するBVDモデル(
図2A)を用いて、フィルタをシミュレーションすることによって決定された。3つのサブフィルタに関する本明細書の概念は、2つだけ、又は4つまで、5つまで、あるいはサイズ及び配線の複雑さの考慮によって決まる任意の数まで拡張できることを理解することができる。
【0040】
例示的なフィルタの入出力伝達関数は、
図4に示すように、3つのサブフィルタの入出力伝達関数のベクトル和であり、ここで、3つのサブフィルタは、非隣接通過帯域を有する。非隣接通過帯域とは、いずれの単一のサブフィルタの入出力伝達関数も他のサブフィルタの入出力伝達関数と、両フィルタの伝達関数S21が-20dBを上回る周波数において、交差しないことを意味してもよい。このため、サブフィルタ1とサブフィルタ2の入出力伝達関数は、(a)両フィルタのS21が-20dBを上回ることがなく、(b)両フィルタの入出力伝達関数の位相が実質的に等しい2GHz直下の周波数で交差している。この文脈で、「上回ることがない」とは、フィルタ通過帯域範囲(この場合は1.5~3GHz)内でマトリックスフィルタの異なるサブフィルタの伝達関数によってサブフィルタの伝達関数のいずれかに好ましくない変動が生じない程度に十分に下回ることを意味する。「上回ることがない」定量的な値は、フィルタの用途によって異なる可能性がある。同様の要件は、サブフィルタ2にも、サブフィルタ3にも適用される。4つ以上のサブフィルタを有するマトリックスフィルタでも,同様の要件が、サブフィルタの(周波数的に)隣接する全てのペアに適用される。
【0041】
いくつかの場合において、「隣接」通過帯域マトリックスフィルタは、2つ以上のサブフィルタの通過帯域の合計である通過帯域を有するマトリックスフィルタを説明し、「非隣接」通過帯域マトリックスフィルタは、各通過帯域が1つのサブフィルタのみの通過帯域となるマトリックスフィルタを説明する。いくつかのスイッチドマトリックスフィルタでは、「非隣接」のサブフィルタの通過帯域は隣接しないか、又は-20dBを上回るところで重ならない。また、マトリックスフィルタは、一部のサブフィルタが隣接し、他のサブフィルタが非隣接である場合もある。例えば、隣接するサブフィルタの少なくとも1ペアの通過帯域間に、少なくとも1つの阻止帯域を有するフィルタであってもよい。
【0042】
一例では、最低通過帯域の非隣接通過帯域サブフィルタ1は、LTE帯域Rx3であり、3つの共振器と2つのカップリングコンデンサを有する。ここで、中間通過帯域の非隣接通過帯域サブフィルタ2は、LTE帯域Rx1であり、5つの共振器と4つのカップリングコンデンサを有する。最高通過帯域の非隣接通過帯域サブフィルタ3は、LTE帯域Rx7であり、サブフィルタは、4つの共振器と3つのカップリングコンデンサを有する。このフィルタは、1つ以上のXL共振器と、0以上のXH共振器を有してもよい。
【0043】
例示的なマトリックスフィルタは、FP1及びFP2におけるインピーダンスが異なるという点で非対称である。ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナのインピーダンスと整合させるためにフィルタ入力ポートの50Ωであってもよい。ポートFP2におけるインピーダンスは、フィルタ300が送信フィルタとして使用される場合のように、RF送信機のような電力増幅器の出力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの4Ωであってもよい。別の態様では、ポートFP2におけるインピーダンスは、フィルタ300が受信フィルタとして使用される場合のように、RF受信機のような低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの300Ωであってもよい。垂直の一点鎖線は、例示的なマトリックスフィルタ内のXBARの共振周波数を識別する。「XL」とラベル付けされた線は、共振器XL1及びXL2の共振周波数を識別し、フィルタ通過帯域の低端に隣接している。同様に、「XH」とラベル付けされた線は、共振器XH1及びXH2の共振周波数を識別し、フィルタ通過帯域の高端に隣接している。
図4において「SF1」とラベル付けされた2つの線は、サブフィルタ1内のXBARの共振周波数を分離して識別する。
図5において「PBF1」とラベル付けされた2つの線は、サブフィルタ1内のXBARの通過帯域周波数を分離して識別する。共振周波数の両方が通過帯域の中心より低いことに注意されたい。これは、共振器とコンデンサを直列に接続した場合の共振周波数が、共振器を分離した場合の共振周波数よりも高くなるためである。同様に、「SF2」とラベル付けされた2つの線は、サブフィルタ2内のXBARの共振周波数を識別し、「SF3」とラベル付けされた2つの線は、サブフィルタ3内のXBARの共振周波数を識別する。同様に、
図4において「SF2」とラベル付けされた2つの線は、共振周波数を識別し、
図5において「PBF2」とラベル付けされた2つの線は、サブフィルタ2内のXBARの通過帯域周波数を識別する。最後に、
図4において「SF3」とラベル付けされた2つの線は、共振周波数を識別し、
図5において「PBF3」とラベル付けされた2つの線は、サブフィルタ3内のXBARの通過帯域周波数を識別する。
【0044】
図6は、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有するダイプレクサとして構成されたマトリックスフィルタ600の概略図である。マトリックスフィルタ600は、3つのサブフィルタ620-1、620-2、620-nのアレイ610を含む。サブフィルタ1 620-1は、第一のフィルタポート(FP1)と第二のフィルタポート(FP2)との間に接続される。サブフィルタ2 620-2及びサブフィルタ3 620-3は、FP1と第三のフィルタポート(FP3)との間に並列に接続される。FP1はダイプレクサの共通又は入力ポートであり、FP2及びFP3は分岐又は出力ポートである。サブフィルタのアレイ610は、前述したように、XBAR XL及びXHによって両端が終端されている。
【0045】
図7は、
図6のマトリックスフィルタダイプレクサ600の一例の性能705のグラフ700である。この例では、XL、XH、及び3つのサブフィルタは、
図3Aのマトリックスフィルタ300の対応する要素と同じである。
図7において、710の下の実線410は、FP1からFP2への伝達関数S21を、周波数の関数としてプロットしたものである。720の下の破線420及び点線430は、FP1からFP3への伝達関数S31を、周波数の関数としてプロットしたものである。例示的なフィルタは非対称であるため、710の下の実線410、及び720の下の破線420と点線430は、それぞれS12及びS13のプロットではない。スイッチドマトリックスフィルタ600は、例示的なものである。ほとんどの用途において、ダイプレクサは、共通又は入力ポートと2つの分岐ポートとの間に、同じ数(2つ、3つ又はそれ以上)のサブフィルタを並列に有することになる。
【0046】
FP1は、マトリックスフィルタダイプレクサ600の共通又は入力ポートと見なすことができる。FP2は、「低帯域」ポートと見なされ、FP3は「高帯域」ポートと見なすことができる。マトリックスフィルタダイプレクサが周波数分割二重無線機で使用される場合、FP2及びFP3の一方は、ダイプレクサの受信又は出力ポートであってもよく、FP2及びFP3の他方は、受信及び送信用に割り当てられた周波数に応じてダイプレクサの送信又は出力ポートであってもよい。
【0047】
フィルタ600の変形例である第二のダイプレクサの構成では、サブフィルタ1 620-1とサブフィルタ2 620-2とは、FP1とFP2との間に並列接続される。ここで、サブフィルタ3 620-3は、FP1とFP3との間に接続される。この場合、マトリックスフィルタダイプレクサの一例の性能のグラフは、周波数の関数として、S21のプロットとして実線410及び破線420を、S31のプロットとして点線430を有する。
【0048】
フィルタ600の変形例である第三のダイプレクサの構成では、サブフィルタ1 620-1とサブフィルタ3 620-3とは、FP1とFP2との間に並列接続される。ここで、サブフィルタ2 620-2は、FP1とFP3との間に接続される。この場合、スイッチドマトリックスフィルタダイプレクサの一例の性能のグラフは、周波数の関数として、S21のプロットとして実線410及び点線430を、S31のプロットとして破線420を有する。
【0049】
ダイプレクサフィルタ600及び2つの変形例は、分岐ポートFP2又はFP3のいずれか一方をフィルタの出力として選択又はスイッチ切替することができるので、スイッチドマトリックスフィルタである。例えば、入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタの接続は、入力及び出力RF通信信号用の多数の通過帯域を提供するために、スイッチ切替することができる。プロセッサ(図示せず)は、分岐ポート選択を提供するように、フィルタ600内のスイッチの動作に結合されてもよく、これを制御してもよい。
【0050】
ダイプレクサフィルタ600の構成のいずれかにおいて、ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナのインピーダンスと整合させるためにフィルタ入力ポートの50Ωであってもよい。ポートFP2及びFP3のそれぞれにおけるインピーダンスは、RF送信機のような電力増幅器の出力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの4Ωであってもよく、又はRF受信機のような低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの300Ωであってもよい。場合によっては、ポートFP2のインピーダンスはFP3のインピーダンスと同じになる。また、異なることもある。
【0051】
図8は、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用するマトリックストリプレクサフィルタ800の概略図である。マトリックスフィルタ800は、3つのサブフィルタ820-1、820-2、820-nのアレイ810を含む。サブフィルタ1 820-1は、第一のフィルタポート(FP1)と第二のフィルタポート(FP2)の間に接続される。サブフィルタ2 820-2は、FP1と第三のフィルタポート(FP3)の間に接続される。サブフィルタ3 820-3は、FP1と第四のフィルタポート(FP4)の間に接続される。サブフィルタのアレイ810は、前述したように、XBAR XL及びXHによって両端が終端されている。FP1はマルチプレクサの共通又は入力ポートであり、FP2、FP3、及びFP4はマルチプレクサの分岐又は出力ポートである。マルチプレクサには、3つ以上の分岐ポートがあってもよい。2つの分岐ポートを有するマルチプレクサは、一般に「ダイプレクサ」と呼ばれ、3つの分岐ポートを有するマルチプレクサは、「トリプレクサ」と呼ばれることがある。
【0052】
図9は、
図8のトリプレクサフィルタ800の実施形態の機能の一例の性能のグラフ900である。この例では、XL、XH、及び3つのサブフィルタは、
図3Aのマトリックスフィルタ300の対応する要素と同じである。
図9において、910の下の実線は、FP1からFP2への伝達関数S21を、周波数の関数としてプロットしたものである。920の下の破線は、FP1からFP3への伝達関数S31を、周波数の関数としてプロットしたものである。390の下の点線は、FP1からFP4への伝達関数S41を、周波数の関数としてプロットしたものである。例示的なフィルタは非対称であるので、910の下の実線、920の下の破線、及び930の下の点線は、それぞれS12、S13、及びS14のプロットではない。
【0053】
FP1は、マトリックスフィルタの共通ポート又は入力ポートと見なしてもよい。FP2は「低帯域」ポートと見なしてもよく、FP3は「中帯域」ポートと見なしてもよく、FP4は「高帯域」ポートと見なしてもよい。マトリックスフィルタが周波数分割複信(FDD)無線機で使用される場合、受信と送信に割り当てられた周波数に応じて、FP2、FP3、FP4の1つが受信又は出力ポートであってもよく、FP2、FP3、FP4の別のものが送信又は出力ポートであってもよい。他の場合、FDD無線機では、FP2、FP3、FP4のうちの2つが受信又は出力ポートであってもよく、FP2、FP3、FP4のうちの他の1つが送信又は出力ポートであってもよく、あるいは、その逆であってもよい。
【0054】
フィルタ800の変形例である追加のマルチプレクサ構成では、サブフィルタ1 820-1、サブフィルタ2 820-2、及びサブフィルタ3 820-3のいずれか1つ以上が、FP1とFP2、FP3及び/又はFP4との間で並列接続されてもよい。この場合、マトリックスフィルタダイプレクサの一例の性能のグラフは、周波数の関数として、S21、S31及び/又はS41のプロットとして、実線410、破線420、及び/又は点線430の対応するものを有する。
【0055】
ポートFP2、FP3、FP4のいずれか1つ以上をフィルタの出力として選択又はスイッチ切替することができるので、マルチプレクサフィルタ800及び2つの変形例は、スイッチドマトリックスフィルタであってもよい。例えば、入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタの接続は、入力及び出力RF通信信号用の多数の通過帯域を提供するために、スイッチ切替することができる。一例では、LTE帯域3、1、7用の3つのサブフィルタを有するスイッチドXBARマトリックスフィルタは、7つの可能な状態全て(1のみ、3のみ、7のみ、1+3、1+7、3+7、及び1+3+7)に対して構成可能なマルチ通過帯域再構成可能フィルタを提供する。このフィルタは、スイッチの位置及びフィルタがインダクタを必要としないことなど、マトリックスアーキテクチャによって、損失が低い。プロセッサ(図示せず)は、サブフィルタ及びポートFP2、FP3及びFP4を選択するように、フィルタ800内のスイッチの動作に結合されてもよく、これを制御してもよい。
【0056】
トリプレクサフィルタ800の構成のいずれかにおいて、ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナのインピーダンスと整合させるためにフィルタ入力ポートの50Ωであってもよい。ポートFP2、FP3、及びFP4のそれぞれにおけるインピーダンスは、RF送信機のような電力増幅器の出力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの4Ωであってもよく、又はRF受信機のような低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの300Ωであってもよい。場合によっては、ポートFP2、FP3、FP4の全てにおけるインピーダンスは、同じである。他の場合には、それら3つのポートのうちの1つにおけるインピーダンスは、他の2つにおけるインピーダンスとは異なる。
【0057】
図10Aは、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有するXBARを使用する再構成可能なスイッチドマトリックスフィルタ1000の概略図である。再構成可能なスイッチドマトリックスフィルタ1000は、第一のフィルタポート(FP1)と第二のフィルタポート(FP2)との間に並列接続されたn個のサブフィルタ/スイッチ回路1020-1、1020-2、1020-nのアレイ1010を含み、nは1より大きい整数である。後続の実施例では、n=3である。他の実施例では、再構成可能なマトリックスフィルタ1000に所望の帯域幅を提供するために、必要に応じてnを3より大きくすることができる。各サブフィルタ/スイッチ回路は、選択的に有効化(すなわち、FP1とFP2との間に接続)又は無効化(すなわち、FP1とFP2との間に接続しない)することができる非隣接バンドパスフィルタとして機能する。サブフィルタ/スイッチ回路のアレイ1010は、前述したように、両端がXBAR XL及びXHによって終端されている。
【0058】
サブフィルタ/スイッチ回路1020-1、1020-2、1020-nは、非隣接通過帯域を有しており、その結果、全てのサブフィルタ/スイッチモジュールが有効化されたときのマトリックスフィルタ1000の帯域幅が、構成サブフィルタの帯域幅の合計に等しくない代わりに、マトリックスフィルタ300の入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって分離された3つの別々の独立した通過帯域を有するようになっている。1つ以上のサブフィルタ/スイッチ回路を無効にして、マトリックスフィルタに所望の非隣接通過帯域を提供するために、マトリックスフィルタの帯域幅を調整することも、あるいは、全体の通過帯域内にノッチ又は阻止帯域を挿入することもできる。フィルタ1000及び/又はサブフィルタは、5G NR規格によって定義された周波数帯域を通過させるRFフィルタであってもよい。
【0059】
図10Bは、
図10Aのサブフィルタ/スイッチ回路1020-1、1020-2、及び1020-nに適したサブフィルタ/スイッチ回路1050の概略図である。サブフィルタ/スイッチ回路1050は、第一のサブフィルタポート(SP1)と第二のサブフィルタポート(SP2)との間に直列に配置された3つの音響共振器X1、X2、X3と、隣接する音響共振器間の接合部から接地に接続されたカップリングコンデンサC1、C2とを含む。サブフィルタ/スイッチ回路1050に3つの音響共振器を含むことは例示的なものであり、サブフィルタ/スイッチ回路は、4つ以上の音響共振器を有してもよい。サブフィルタ/スイッチ回路が4つ以上の音響共振器を含む場合、カップリングコンデンサの数は、音響共振器の数より1つ少なくなる。音響共振器X1、X2、X3は、好ましくはXBARであるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0060】
サブフィルタ/スイッチ回路1050は、音響共振器X2と直列に接続されたスイッチSWを含む。スイッチSWを閉じると、サブフィルタ/スイッチ回路は、先行例のいずれかにおいて使用するのに適したサブフィルタとして動作する。この場合、入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタ/スイッチ回路の接続は、そのサブフィルタの通過帯域を入出力RF通信信号に提供するためにスイッチインされる。スイッチSWを開くと、サブフィルタ/スイッチ回路はSP1、SP2に対して適切なインピーダンスを提示するが、オープン回路の入出力伝達関数を有する。この場合、入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタ/スイッチ回路の接続がスイッチアウトされ、入出力RF通信信号に対してそのサブフィルタの通過帯域が提供されることはない。サブフィルタ/スイッチ回路が4つ以上の音響共振器を含む場合、スイッチは、2つのサブフィルタポートに接続された2つの音響共振器以外の音響共振器のいずれかと直列に接続されていてもよい。言い換えれば、スイッチは、共振器の列の中央にある「中央の音響共振器」のいずれかと直列であってもよいが、列の両端にある2つの「端の音響共振器」ではない。いくつかの場合において、フィルタ1000は、共通の出力ポートFP2に接続されたその全てのサブフィルタのそれぞれの出力ポートSP2を有すると説明することができる。
【0061】
図10Cは、
図10Aのサブフィルタ/スイッチ回路1020-1、1020-2、及び1020-nに適したサブフィルタ/スイッチ回路1075の概略図である。サブフィルタ/スイッチ回路1075は、第一のサブフィルタポート(SP1)と第二のサブフィルタポート(SP2)との間に直列に配置された3つの音響共振器X1、X2、X3と、隣接する音響共振器間の接合部から接地に接続されたカップリングコンデンサC1、C2とを含む。サブフィルタ/スイッチ回路1075に3つの音響共振器を含むことは例示的なものであり、サブフィルタ/スイッチ回路は、4つ以上の音響共振器を有してもよい。サブフィルタ/スイッチ回路が4つ以上の音響共振器を含む場合、カップリングコンデンサの数は、音響共振器の数より1つ少なくなる。音響共振器X1、X2、X3は、好ましくはXBARであるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0062】
サブフィルタ/スイッチ回路1075は、第一のシャントコンデンサC1と並列のスイッチSW1と、最後のシャントコンデンサC2と並列のスイッチSW2とを含む。スイッチSW1及びSW2が開いているとき、サブフィルタ/スイッチ回路は、先行例のいずれかにおいて使用するのに適したサブフィルタとして動作する。この場合、入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタ/スイッチ回路の接続は、そのサブフィルタの通過帯域を入出力RF通信信号に提供するためにスイッチインされる。スイッチSW1及びSW2が閉じているとき、サブフィルタ/スイッチ回路は、SP1,SP2に対して適切なインピーダンスを提示するが,入出力伝達関数は開回路を有する。この場合、入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタ/スイッチ回路の接続がスイッチアウトされ、入出力RF通信信号に対してそのサブフィルタの通過帯域が提供されることはない。
図10BのスイッチSWの代わりに、スイッチSW1及びSW2を用いて、入力ポートと出力ポートとの間で特定のサブフィルタをスイッチ切替えするようにしてもよい。
【0063】
サブフィルタ/スイッチ回路が3つ以上のシャントコンデンサを含むとき、スイッチは、2つのサブフィルタポートに接続された音響共振器にすぐ隣接する2つのシャントコンデンサと並列である。言い換えれば、スイッチは、共振器の列の真ん中ではなく、列の両端にある2つの「端の音響共振器」のすぐ内側にある「最初のシャントコンデンサ」と「最後のシャントコンデンサ」と並列に配置される。例えば、第一のスイッチは、フィルタ入力ポートにすぐ隣接するXBAR直列素子と入力ポートから遠いXBAR直列素子の間にある最初のコンデンサシャント素子と並列に配置され、第二のスイッチは、フィルタ出力ポートにすぐ隣接するXBAR直列素子と出力ポートから遠いXBAR直列素子の間にある最後のコンデンサシャント素子と並列に配置される。
【0064】
図11は、
図10の再構成可能なスイッチドマトリックスフィルタ1000の一例の性能1105のグラフ1100である。この例では、XL、XH、及び3つのサブフィルタ/スイッチ回路内のコンポーネントは、
図3Aのマトリックスフィルタ300の対応する要素と同じである。
図11において、1110の下の実線は、サブフィルタ/スイッチ回路1が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路2及び3が無効である場合のフィルタのポート1からポート2への伝達関数であるS21を周波数の関数としてプロットしたものである。1120の下の破線は、サブフィルタ/スイッチ回路2が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路1及び3が無効である場合の周波数の関数としてのS21のプロットである。1130の下の破線は、サブフィルタ/スイッチ回路3が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路1及び2が無効である場合の周波数の関数としてのS21のプロットである。1110と1130の下の2つの曲線の和は、図示していないが容易に想定されるように、サブフィルタ/スイッチ回路1及び3が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路2が無効である場合の周波数の関数としてのポート1からポート2への伝達関数である。1110と1120の下の2つの曲線の和は、サブフィルタ/スイッチ回路1及び2が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路3が無効である場合の周波数の関数としてのポート1からポート2への伝達関数である。1110と1130の下の2つの曲線の和は、サブフィルタ/スイッチ回路1及び3が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路2が無効である場合の周波数の関数としてのポート1からポート2への伝達関数である。1120と1130の下の2つの曲線の和は、サブフィルタ/スイッチ回路2及び3が有効であり、サブフィルタ/スイッチ回路1が無効である場合の周波数の関数としてのポート1からポート2への伝達関数である。1110、1120、1130の下の3つの曲線の和は、サブフィルタ/スイッチ回路1、2、3が有効である場合の周波数の関数としてのポート1からポート2への伝達関数である。オープン回路の入出力伝達関数は、サブフィルタ/スイッチ回路1、2、3の全てが無効である場合の周波数の関数としてのポート1からポート2への伝達関数である。.2つのサブフィルタ/スイッチ回路の様々な組み合わせを有効にすることで、合計8つの異なるフィルタ構成が可能である。プロセッサ(図示せず)は、サブフィルタを選択するように、フィルタ1000、1050及び/又は1075内のスイッチの動作に結合されてもよく、これを制御してもよい。
【0065】
フィルタ1000、1050及び/又は1075の構成のいずれかにおいて、ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナのインピーダンスと整合させるためにフィルタ入力ポートの50Ωであってもよい。ポートFP2におけるインピーダンスは、RF送信機のような電力増幅器の出力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの4Ωであってもよく、又はRF受信機のような低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合させるためにフィルタ出力ポートの300Ωであってもよい。
【0066】
フィルタ1000、1050及び/又は1075の入力ポートと出力ポートとの間のサブフィルタ/スイッチ回路接続は、ポートFP2における所望の通過帯域及び所望のインピーダンスを選択するためにスイッチ切り替えられることが可能である。例えば、
図10BのスイッチSWは、送信機からの送信信号に対する所望の通過帯域と、送信機の電力増幅器の出力インピーダンスと整合する所望のインピーダンスとを有するフィルタ1000のサブフィルタ1050の1つを選択するために使用することができる。また、
図10BのスイッチSWは、アンテナからの受信信号を受信機に送るための所望の通過帯域と、受信機の低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合する所望のインピーダンスとを有するフィルタ1000のサブフィルタ1050の1つを選択するために使用することができる。また、
図10CのスイッチSW1及びSW2は、スイッチSWについて注記したように、所望の通過帯域及び所望のインピーダンスを有するフィルタ1000のサブフィルタ1075の1つを選択するために使用することができる。
【0067】
図12は、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入力及び出力インピーダンスを有する周波数分割二重(FDD)無線機1200の概略ブロック図である。FDD無線機は、定義された通信帯域を有する異なる周波数範囲で送受信する。送信及び受信周波数範囲は、典型的には隣接しているが、必ずしもそうである必要はない。無線機1200は、アンテナ1205と、アンテナ1205に接続するように構成された共通フィルタポートFP1と、送信機1220の出力ポートOutに結合された送信フィルタポートFP3と、受信機1225の入力ポートInに結合された受信フィルタポートFP2を有するマトリックスフィルタダイプレクサ1210と、を含む。
【0068】
無線機1200は、指定された通信帯域で動作するように構成される。マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、FP1とFP2との間に結合された受信フィルタと、FP1とFP3との間に結合された送信フィルタとを含む。受信フィルタは、1つ以上の受信サブフィルタを含んでもよい。送信フィルタは、1つ以上の送信サブフィルタを含んでもよい。送信フィルタは、送信機1220によって生成されるRF電力に適合していなければならない。マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、XBARであり得る音響共振器を用いて実装されてもよい。
【0069】
マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、
図3A~Bのマトリックスフィルタ300のうちの2つと同様であってもよい。ここで、フィルタ300のそれぞれは、送信フィルタ又は受信フィルタであり、送信フィルタ又は受信フィルタのそれぞれについて、同数のサブフィルタがスイッチインされている。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1はフィルタ300のFP1であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の送信ポートFP3は、フィルタ300の送信フィルタバージョンのポートFP2であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の受信ポートFP2は、フィルタ300の受信フィルタバージョンのポートFP2である。2つのフィルタ300は、異なる通過帯域を有していてもよい。この場合、ポートFP1は、2つのフィルタ300に共通であってもよい。
【0070】
マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、
図6のマトリックスダイプレクサ600と同様であってもよく、送信フィルタ及び受信フィルタのサブフィルタの数が等しい。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1はマトリックスダイプレクサ600のFP1であり、送信又は出力ポートFP3はマトリックスダイプレクサ600のFP2又はFP3のいずれか一方であってもよく、受信又は出力ポートFP2はマトリックスダイプレクサ600のFP2及びFP3の他方であってもよい。
【0071】
別の場合、マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、
図8のマトリックストリプレクサフィルタ800と同様であってもよく、送信フィルタ及び受信フィルタのサブフィルタの数が等しい。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1はマトリックストリプレクサ800のFP1であり、送信又は出力ポートFP3はマトリックストリプレクサ800のFP2、FP3又はFP4のいずれかであってもよく、受信又は出力ポートFP2はマトリックストリプレクサ800のFP2、FP3又はFP4のその他のいずれかであってもよい。
【0072】
また、マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、
図10A~Cのマトリックスフィルタ1000のうちの2つと同様であってもよい。ここで、フィルタ1000のそれぞれは、送信フィルタ又は受信フィルタであり、その送信フィルタ又は受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされている。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1は、マトリックスフィルタ1000のそれぞれのFP1であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の送信ポートFP3は、マトリックスフィルタ1000のサブフィルタのスイッチ切替えに基づく送信フィルタバージョンのフィルタ1000のポートFP2であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の受信ポートFP2は、マトリックスフィルタ1000のサブフィルタのスイッチ切替えに基づく受信フィルタバージョンのフィルタ1000のポートFP2である。この場合、ポートFP1は、2つのフィルタ1000に共通であってもよい。
【0073】
また、マトリックスフィルタダイプレクサ1210は、フィルタ300、600、800及び1000のうちの2つの組み合わせと同様であってもよく、送信フィルタ又は受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされていることが考えられる。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210のポートFP1は共通ポートであり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の送信ポートFP3は送信ポートであり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の受信ポートFP2は、フィルタ300、600、800及び1000のいずれか1つの受信ポートである。この場合、ポートFP1は、フィルタの組み合わせに共通であってもよい。
【0074】
フィルタ1210の構成のいずれかにおいて、ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナ1205のインピーダンスと整合するように50Ωである。ポートFP3におけるインピーダンスは、RF送信機1220の電力増幅器(PA)の出力インピーダンスと整合する。例えば、ポートFP3におけるインピーダンスは、約4Ωであってよい。ポートFP2におけるインピーダンスは、RF受信機1225の低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合する。ポートFP2におけるインピーダンスは、LNAの雑音指数を最小化するインピーダンスであってもよい。インピーダンスは、例えば、約300Ωであってもよい。
【0075】
図13は、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有するマトリックストリプレクサを使用する3バンドダイバーシチ受信機1300の概略ブロック図である。3バンドダイバーシチ受信機無線は、3つの通信帯域に対応する3つの異なる周波数帯域で受信する。受信機1300は、アンテナ1305と、アンテナ1305に接続するように構成された共通フィルタポートFP1を有するマトリックスフィルタトリプレクサ1310と、受信機1320の入力ポートIn1に結合された第一の出力又は受信フィルタポートFP2と、受信機1325の入力ポートIn2に結合された第二の出力又は受信フィルタポートFP3と、受信機1330の入力ポートIn3に結合された第三の出力又は受信フィルタポートFP4と、を含む。
【0076】
受信機1300は、指定された通信帯域で動作するように構成される。マトリックスフィルタトリプレンザ1310は、FP1とFP2、FP1とFP3、及びFP1とF4のそれぞれの間に結合された受信フィルタを含む。受信フィルタは、非隣接通過帯域受信サブフィルタを含む。マトリックスフィルタトリプレンザ1310は、XBARであり得る音響共振器を用いて実装されてもよい。
【0077】
マトリックスフィルタトリプレンザ1310は、
図3A~Bのマトリックスフィルタ300のうちの3つと同様であってよい。ここで、フィルタ300のそれぞれは、受信フィルタであり、その受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされている。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1は、フィルタ300のそれぞれのFP1であり、マトリックスフィルタトリプレクサ1310のFP2、FP3、FP4ポートは、フィルタ300の受信フィルタバージョン3つのそれぞれのFP2であってもよい。3つのフィルタ300は、異なる通過帯域を有していてもよい。この場合、ポートFP1は、3つのフィルタ300に共通であってもよい。
【0078】
マトリックスフィルタトリプレクサ1310は、
図8のマトリックストリプレクサ800であってもよい。マトリックスフィルタトリプレクサ1310のFP1、FP2、FP3及びFP4ポートは、マトリックスマルチプレクサ800のFP1、FP2、FP3及びFP4ポートであってもよい。
【0079】
別の場合、マトリックスフィルタトリプルプレクサ1310は、
図10A~Cの再構成可能スイッチドフィルタ1000の3つと同様であってよく、それぞれ3つの受信フィルタに同数のサブフィルタを有する。マトリックスフィルタトリプレンザ1310のFP1ポートは、3つの再構成可能スイッチドフィルタ1000のFP1であってもよく、マトリックスフィルタトリプレンザ1310のFP2、FP3及びFP4ポートは、3つの再構成可能スイッチドフィルタ1000のそれぞれのFP2であってもよく、3つのフィルタ1000は、3つのマトリックスフィルタ1000のサブフィルタへのスイッチ切替えに基づいて異なる通過帯域を有してもよい。この場合、ポートFP1は、3つのフィルタ1000に共通であってもよい。
【0080】
また、マトリックスフィルタトリプレクサ1310は、フィルタ600、800、1000のうちの任意の3つの組み合わせと同様であってもよく、受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされていることが考えられる。ここで、マトリックスフィルタトリプレクサ1310のポートFP1は共通ポートであり、マトリックスフィルタトリプレクサ1310のポートFP2、FP3及び/又はFP4のそれぞれは、フィルタ600、800及び1000のうちの1つの受信ポートである。この場合、ポートFP1は、フィルタの組み合わせに共通であってもよい。
【0081】
フィルタ1310の構成のいずれかにおいて、ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナ1305のインピーダンスと整合するフィルタ入力ポートの50Ωである。ポートFP2、FP3及びFP4におけるインピーダンスは、それぞれRF受信機1320、1325及び1330のそれぞれの低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合する。各ポートFP2、FP3、FP4におけるインピーダンスは、それぞれのLNAの雑音指数を最小化するインピーダンスであってもよい。各ポートにおけるインピーダンスは、例えば、約300Ωであってもよい。3つのポートにおけるインピーダンスは、RF受信機1320、1325、1330のLNAの特性に対応するように異なっていてもよい。
【0082】
図14は、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有するマトリックス多重化フィルタを使用するデュアル帯域周波数分割無線機の概略ブロック図である。無線機1400は、通信帯域が定義された異なる周波数帯域で送受信する。送信及び受信周波数範囲は、典型的には隣接しているが、必ずしもそうである必要はない。無線機1400は、アンテナ1405と、アンテナ1405に接続するように構成された共通フィルタポートFP1を有するマトリックスフィルタマルチプレクサ1410と、送信機1420及び1425の出力ポートOut1及びOut2にそれぞれ結合された送信フィルタポートFP2及びFP3と、受信機1430及び1435の入力ポートIn1及びIn2にそれぞれ結合された受信フィルタポートFP4及びFP5とを含む。
【0083】
無線機1400は、指定された通信帯域で動作するように構成される。マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、FP1とFP2の間に結合された第一の送信フィルタ、FP1とFP3の間に結合された第二の送信フィルタ、FP1とFP4の間に結合された第一の受信フィルタ、及びFP1とFP5の間に結合された第二の受信フィルタを含む。送信フィルタは、1つ以上の送信サブフィルタを含んでもよい。受信フィルタは、1つ以上の受信サブフィルタを含んでもよい。送信フィルタは、送信機1420及び1425によって生成されるRF電力に適合する。マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、XBARであり得る音響共振器を用いて実装されてもよい。
【0084】
マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、
図3A~Bのマトリックスフィルタ300の4つと同様であってよい。ここで、フィルタ300のそれぞれは、送信フィルタ又は受信フィルタであり、その送信フィルタ又は受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされている。ここで、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410の共通フィルタポートFP1はフィルタ300のFP1であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の送信ポートFP2及びFP3はフィルタ300の送信フィルタバージョンのポートFP2であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の受信ポートFP4及びFP5は、フィルタ300の受信フィルタバージョンのポートFP2である。送信フィルタ300及び受信フィルタ300のペアは、異なる通過帯域を有してもよい。この場合、ポートFP1は、4つのフィルタ300に共通であってもよい。
【0085】
マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、
図6のマトリックスダイプレクサ600の2つと同様であってもよく、送信フィルタと受信フィルタのサブフィルタの数が等しい。ここで、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410の共通フィルタポートFP1は、2つのマトリックスダイプレクサ600のFP1であり、送信又は出力ポートFP2及びFP3は、2つのマトリックスダイプレクサ600のFP2又はFP3のいずれか一方でもよく、受信又は出力ポートFP4及びFP5は、2つのマトリックスダイプレクサ600のFP2及びFP3の他方でもいい。フィルタ600の送信フィルタと受信フィルタのペアは、異なる通過帯域を有してもよい。この場合、ポートFP1は、4つのフィルタ600に共通であってもよい。
【0086】
別の場合、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、送信フィルタ及び受信フィルタとして3つのサブフィルタの代わりに4つのサブフィルタ(例えば、クワッドプレクサ)を有する
図8のマトリックストリプレクサフィルタ800と同様でもよい。このフィルタは、他のサブフィルタと同様なサブフィルタ4(図示せず)を追加するが、入力ポートFP1に接続され、出力ポートFP5を有する。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1はマトリックストリプレクサ800のFP1であり、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の送信又は出力ポートFP2及びFP3はマトリックストリプレクサ800のFP2、FP3、FP4又はFP5のいずれか2つであってもよく、受信又は出力ポートFP4及びFP5はマトリックストリプレクサ800のFP2、FP3、FP4又はFP5の他の2つでもよい。フィルタ600の送信フィルタと受信フィルタのペアは、異なる通過帯域を有してもよい。
【0087】
また、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、
図10A~Cのマトリックスフィルタ1000の4つと同様であってもよい。ここで、フィルタ1000のそれぞれは、送信フィルタ又は受信フィルタであり、その送信フィルタ又は受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされている。ここで、マトリックスフィルタダイプレクサ1210の共通フィルタポートFP1は、フィルタ1000のそれぞれのFP1であり、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410の送信ポートFP2及びFP3は、マトリックスフィルタ1000のサブフィルタのスイッチ切り替えに基づく送信フィルタバージョンのフィルタ1000のポートFP2であり、マトリックスフィルタマルチプレクサ1210の受信ポートFP4及びFP5は、マトリックスフィルタ1000のサブフィルタのスイッチ切り替えに基づく受信フィルタバージョンのフィルタ1000のポートFP2である。フィルタ1000の送信フィルタと受信フィルタのペアは、異なる通過帯域を有してもよい。この場合、ポートFP1は、4つのフィルタ1000に共通であってもよい。
【0088】
また、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410は、フィルタ300、600、800及び1000の2つ又は4つの組み合わせと同様であってもよく、送信フィルタ又は受信フィルタのそれぞれに対して、同数のサブフィルタがスイッチインされていることが考えられる。ここで、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410のポートFP1は共通ポートであり、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410の送信ポートFP2及びFP3はそれぞれ送信フィルタの送信ポートであり、マトリックスフィルタマルチプレクサ1410の受信ポートFP4及びFP5はそれぞれフィルタ300、600、800、1000のうちの1つである受信フィルタの受信ポートである。この場合、ポートFP1は、フィルタの組み合わせに共通であってもよい。
【0089】
フィルタ1410の構成のいずれかにおいて、ポートFP1におけるインピーダンスは、RFアンテナ1405のインピーダンスと整合したフィルタ入力ポートの50Ωである。ポートFP2及びFP3のそれぞれにおけるインピーダンスは、それぞれRF送信機1420及び1425の電力増幅器(PA)の出力インピーダンスと整合する。ポートFP4及びFP5のそれぞれにおけるインピーダンスは、それぞれRF受信機1430及び1435の低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合する。
【0090】
マルチプレクサ1410の4つの送受信フィルタは、様々な周波数帯域で送受信することができる。例えば、マトリックスマルチプレクサフィルタ1410内の4つの送受信フィルタのそれぞれは、別々のバンドパスを使用することになる。
図14の例では、FP1とFP2との間の送信フィルタ、及びFP1とFP4との間の受信フィルタは、LTE帯域1のアップリンク及びダウンリンクの周波数を通過させ、FP1とFP3との間の送信フィルタ、及びFP1とFP5との間の受信フィルタは、LTE帯域3のアップリンク及びダウンリンクの周波数を通過させることができる。具体的には、FP1とFP2との間の送信フィルタは、1900~1980MHzのLTE帯域1 Tx用の周波数を通過させ、FP1とFP4との間の受信フィルタは、2110~2170MHzのLTE帯域1 Rx用の周波数を通過させ、FP1とFP3との間の送信フィルタは、1710~1785MHzのLTE帯域3 Tx用の周波数を通過させ、FP1とFP5との間の受信フィルタは、1805~1880MHzのLTE帯域1 Rx用の周波数を通過させる。
【0091】
図15Aは、無線周波数フロントエンド(RFFE)素子に整合する入出力インピーダンスを有する音響共振器を使用するマトリックスフィルタ1500の概略図である。
図15Aは、
図3A~Bの具体例である。マトリックスフィルタ1500は、入力フィルタポート(FP1)と出力フィルタポート(FP2)との間に並列に接続された3つのサブフィルタ1520-1、1520-2、及び1520-3のアレイ1510を含む。サブフィルタ1520-1、1520-2、1520-3は、非隣接通過帯域を有しており、その結果、マトリックスフィルタ1500の帯域幅が構成サブフィルタの帯域幅の合計に等しくない代わりに、マトリックスフィルタ1500の入出力伝達関数が-20dB未満であるところに存在する阻止帯域によって分離された3つの別々の独立した通過帯域を有するようになっている。
【0092】
フィルタ1500及び/又はサブフィルタ1520-1、1520-2、及び1520-3のそれぞれは、5G NR規格によって定義された周波数帯域を通過するRFフィルタであってもよい。サブフィルタのアレイ1510は、入力又はFP1端及び出力又はFP2端において、フィルタ300について注記したように「伝送ゼロ」を生成する音響共振器によって終端される。
【0093】
サブフィルタ1520-1、1520-2、及び1520-3のそれぞれは、FP1とFP1との間に直列に接続された3つの音響共振器XA、XB、XCを含む。音響共振器XA、XB、XCは、好ましくはXBARであるが、必ずしもそうでなくてもよい。各サブフィルタは、2つのカップリングコンデンサCA、CBを含み、これらのそれぞれは、接地と音響共振器の2つの間のそれぞれのノードとの間に接続される。フィルタ1500の音響共振器XL1及びXL2は、フィルタのポートにおけるインピーダンスを所望のインピーダンス値に整合させるのを助けるために、シャントインダクタンスとしても機能する。
【0094】
フィルタ1500は、50Ωの入力ポートFP1インピーダンスと、4Ω又は300Ωのいずれかの出力ポートFP2インピーダンスを有する。FP1におけるインピーダンスは、RFアンテナに接続される場合、50Ωと整合してもよい。FP2のインピーダンスは、RF送信機のような電力増幅器に接続される場合は4Ωに、RF受信機のような低雑音増幅器に接続される場合は300Ωと整合してもよい。FP2を低雑音増幅器やRF受信機に接続する場合など、FP1を入力ポート、FP2を出力ポートとして説明したが、これを逆にしてもよい。サブフィルタ1520-1、1520-2、及び1520-3は、本明細書に記載したように、それぞれ様々な周波数帯域を通過させてもよい。場合によっては、それぞれが、
図4~5、7、9、及び11~14のいずれかについて注記したように、別個の通過帯域を使用してもよい。
【0095】
図15Bは、入力ポートFP1インピーダンスが50Ω、出力ポートFP2インピーダンスが4Ωの
図15Aの第一の実施例に対する特定のコンポーネント特性を示す。この場合、FP1は、RFアンテナに接続されたときに50Ωと整合し、FP2におけるインピーダンスは、RF送信機のような電力増幅器に接続されたときに4Ωと整合してもよい。
図15Bの特性は、最大の容量(共振器「X」C0値及びカップリングコンデンサ「C」C0値)がFP1付近のものよりも4ΩポートFP2付近であることを示した。例えば、X3共振器の容量は、X1共振器又はX2共振器よりも大きい。また、C2コンデンサの容量は、C1コンデンサの容量よりも大きい。最後に、H2及びL2共振器の容量は、H1及びL1共振器の容量よりも大きい。フィルタ1500の
図15Bの例の通過帯域は、50Ωと整合したFP1及び4Ωに整合されたFP2について本明細書で指摘したように、様々な通過帯域周波数のいずれであってもよい。
【0096】
図15Cは、入力ポートFP2インピーダンスが300Ω、出力ポートFP1インピーダンスが50Ωの
図15Aの第二の実施例に対する特定のコンポーネント特性を示す。この場合、FP1は、RFアンテナに接続されたときに50Ωと整合してもよく、FP2でのインピーダンスは、RF受信機のような低雑音増幅器に接続されたときに300Ωと整合してもよい。
図15Bの特性は、最大の容量(共振器「X」C0値、カップリングコンデンサ「C」C0値)がFP2付近のものよりも50ΩポートFP1付近であることを示した。例えば、X1共振器のキャパシタンスは、X2共振器又はX3共振器よりも大きい。また、C1コンデンサの容量は、C2コンデンサの容量よりも大きい。最後に、H1及びL1共振器の容量は、H2及びL2共振器の容量より大きい。フィルタ1500の
図15Cの例の通過帯域は、50Ωと整合したFP1及び300Ωと整合したFP2について本明細書で指摘したように、様々な通過帯域周波数のいずれであってもよい。
【0097】
本明細書の特定の実施形態では、ポートFP1は、本明細書のマトリックスフィルタの入力ポートと出力ポートとの間の送信又は受信フィルタの共通又はフィルタ入力ポートとして記載されてもよい。ポートFP2、FP3、FP4又はFP5は、このポートのインピーダンスがRF送信機などの電力増幅器の出力インピーダンスと整合する場合、本明細書のマトリックスフィルタの入力と出力ポートとの間の送信フィルタの送信又はフィルタ出力ポートとして記載されてもよい。ポートFP2、FP3、FP4又はFP5は、このポートのインピーダンスがRF受信機などの低雑音増幅器の入力インピーダンスと整合する場合、本明細書のマトリックスフィルタの入力と出力ポートとの間の送信フィルタの受信又はフィルタ出力ポートとして記載されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、50Ω、4Ω及び300Ωのような本明細書のインピーダンス値の記述は、RFFEの要件を満たすために大幅に変化してもよい。本明細書における説明は、インピーダンスが、RFアンテナのインピーダンスと整合する50Ω、低雑音増幅器(LNA)の入力インピーダンスと整合する300Ω、及び電力増幅器(PA)の出力インピーダンスと整合する4Ωであり得ることを含むが、様々な他のインピーダンスがアンテナ、LNA及び/又はPAと整合するために用いられてもよいことを理解することが可能である。
【0099】
本明細書のマトリックスフィルタの重要な利点は、アンテナ(Ant)、電力増幅器(PA)、低雑音増幅器(LN)などの無線周波数フロントエンド(RFFE)素子との整合を提供するためにフィルタの入力及び/又は出力インピーダンスを広い範囲で設定する能力である。RFFEとのインピーダンス整合により、本マトリックスフィルタは、Ant、受信機LNA、送信機PAからの雑音指数を最小化する入出力インピーダンスを有する。マトリックスフィルタはRFFEとインピーダンス整合しているため、外部でのインピーダンス整合又はスイッチングが不要となる。さらに、フィルタ300、600、800及び/又は1000、無線機1200及び/又は1400、及び受信機1300のような本明細書の音響共振器マトリックスフィルタのトポロジーは、フィルタ内の共振器のサイズを低減し、したがって、フィルタのための構成要素と製造のコストを下げ、フィルタの入力及び出力におけるインピーダンス整合に対して達成可能なインピーダンス変換を有するフィルタを提供し、任意の整合インダクタなしで出力接続LNAの最小騒音指数に対して整合するフィルタを提供してもよい。
【0100】
(結びのコメント)
この説明全体を通して、示される実施形態及び実施例は、開示又は特許請求される装置及び手順に対する制限ではなく、模範と見なされるべきである。本明細書に提示される実施例の多くは、方法動作又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの動作及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることもできることを理解されたい。フローチャートに関しては、ステップを追加することも、より少なくすることもでき、示されているステップを組み合わせて、あるいはさらに改良して、本明細書に記載の方法を達成してもよい。一実施形態に関連してのみ論じられる動作、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0101】
本明細書で使用される場合、「複数」は2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、アイテムの「セット」は、そのようなアイテムの1つ以上を含み得る。本明細書で使用される場合、書面による説明又は特許請求の範囲において、「備える」、「含む」、「携える」、「有する」、「含有する」、「関与する」などの用語は、オープンエンドであると理解されるべきであり、つまり、含むが、限定されないことを意味する。クレームに関して、それぞれ「からなる」及び「本質的にからなる」の移行句のみが、クローズエンド又はセミクローズエンドの移行句である。クレーム要素を変更するためのクレームでの「第一」、「第二」、「第三」などの序数詞の使用は、それ自体では、1つのクレーム要素の他のクレーム要素に対するいかなる優先性、優先順位、又は順序、又は方法の動作が実行される時間的な順序を意味するものではなく、クレーム要素を区別するために、特定の名称を有する1つのクレーム要素を同じ名称を有する別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用される(ただし、序数詞を使用するため)。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙されたアイテムが代替物であることを意味するが、その代替物は、列挙されたアイテムの任意の組み合わせも含む。
【外国語明細書】