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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173166
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】エピナスチン含有点眼液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20221110BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61K31/55
A61K9/08
A61K47/04
A61P27/02
A61P27/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142452
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2021104301の分割
【原出願日】2016-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100158414
【弁理士】
【氏名又は名称】秦野 正和
(72)【発明者】
【氏名】河畑 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 博行
(72)【発明者】
【氏名】原 共紀
(72)【発明者】
【氏名】日景 祥江
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆司
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC05
4C076CC10
4C076DD23Z
4C076DD26Z
4C076DD30Z
4C076FF14
4C076FF39
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA10
4C086CB11
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA06
4C086ZA33
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分のいずれも添加されていない、エピナスチン又はその塩を含有する点眼液の提供。
【解決手段】0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液であって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、点眼液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の有効成分を配合することによって、マルチドーズ型容器に入れられた点眼液の防腐効力を向上させる方法であって、有効成分がエピナスチンまたはその塩であり、有効成分の濃度が0.1%(w/v)である、方法。
【請求項2】
一定量の有効成分を配合することによって、マルチドーズ型容器に入れられた点眼液の防腐効力を向上させる方法であって、有効成分がエピナスチンまたはその塩であり、有効成分の濃度が0.1%(w/v)であり、前記点眼液は実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、方法。
【請求項3】
エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
点眼液が、添加物として緩衝剤および/または等張化剤を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液であって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しないことを特徴とする、点眼液(以下、「本発明の点眼液」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼液は、繰り返しの使用に伴う菌類等の繁殖を防止するため、一定以上の防腐対策が要求される。そのため、点眼液には通常、防腐剤が配合されている。防腐剤として例えば、ベンザルコニウム塩化物は水溶性であり、化学的に安定で、他の防腐剤と比較しても防腐効力が高いので、汎用的に点眼液に使用される。しかし、ベンザルコニウム塩化物には細胞障害性があり、曝露量が増えると角膜上皮障害を引き起こす可能性が増大する。そのため、特にベンザルコニウム塩化物に過敏な反応を示す患者や重度の角膜上皮障害を有する患者には使用することができない。
【0003】
現在、日本で上市されているアレジオン(登録商標)点眼液0.05%は、エピナスチン塩酸塩を有効成分とする点眼液であり、ベンザルコニウム塩化物のような防腐剤を添加しない代わりに、防腐作用を有する別の成分(ホウ酸、エデト酸(EDTA))が添加されている(非特許文献1)。つまりエピナスチン又はその塩を含有する点眼液を繰り返し使用するためには、ベンザルコニウム塩化物のような防腐剤を必ずしも含有しなくてもよいが、それに代わる別の防腐作用を有する成分で、防腐効力を担保する必要があることは認識されている。一方で、防腐剤および防腐作用を有する成分のいずれも添加されていない、エピナスチン又はその塩を含有する点眼液は一切知られていない。
【0004】
なお、上市されている点眼液において、防腐剤および防腐作用を有する成分のいずれも添加されていない点眼液は知られているが、それらはユニットドーズ型(1回使い切りタイプ)のものまたは防腐剤フリー容器(防腐効果を発揮するための特別な構造を有する容器)に保存されているものであり、有効成分自身が防腐作用を発揮するような点眼液は知られていない。つまり、エピナスチン又はその塩自身が防腐作用を有することは一切知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アレジオン(登録商標)点眼液0.05%添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、エピナスチン又はその塩を含有する点眼液を提供することは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、防腐剤および防腐作用を有する成分のいずれも添加されていない、またはそれらの量が減量されたエピナスチン又はその塩を含有する点眼液を見出すために鋭意研究を行ったところ、点眼液中のエピナスチン又はその塩の濃度を0.075%(w/v)超とすることにより、実質的に防腐剤または防腐作用を有する成分を含有することなく、十分な防腐効果が得られることを見出し、本発明に至った。具体的に、本発明は以下を提供する。
(1)0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液であって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、点眼液。
(2)0.1%~5.0%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、(1)に記載の点眼液。
(3)エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、(1)または(2)に記載の点眼液。
(4)防腐剤および防腐作用を有する成分が、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン又はその塩、ホウ酸、ホウ砂、およびエデト酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも一つの成分である、(1)に記載の点眼液。
(5)有効成分として0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩のみを含有し、添加物として緩衝剤、等張化剤、およびpH調節剤のみを含有する、点眼液。
(6)0.1%~5.0%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、(5)に記載の点眼液。
(7)エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、(5)または(6)に記載の点眼液。
(8)緩衝剤がリン酸又はその塩である(5)~(7)のいずれか1記載の点眼液。
(9)等張化剤がイオン性等張化剤である(5)~(8)のいずれか1記載の点眼液。
(10)マルチドーズ型点眼液である、(1)~(9)のいずれか1記載の点眼液。
(11)実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有せず、エピナスチン又はその塩を0.075%(w/v)超の濃度で配合することで、エピナスチン又はその塩を含有する点眼液に防腐効力を付与する方法。
(12)実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有せず、エピナスチン又はその塩を0.075%(w/v)超の濃度で配合することで、エピナスチン又はその塩を含有する点眼液の防腐効力を維持する方法。
なお、前記(1)から(12)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
さらに、本発明は以下も提供する。
(13)治療が必要な患者に、治療上の有効量の(1)~(10)のいずれか1記載の点眼液を投与することを特徴とする、アレルギー性結膜炎を治療および/または予防する方法。
(14)アレルギー性結膜炎の治療および/または予防に使用する、(1)~(10)のいずれか1記載の点眼液。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、防腐剤および防腐作用を有する成分のいずれも添加しなくても防腐効果を有する、エピナスチン又はその塩を含有する点眼液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明において、「エピナスチン」とは、化学名(±)-3-Amino-9,13b-dihydro-1H-dibenz[c,f]imidazo[1,5-a]azepineで表される化合物であり、また下記式:
【化1】
で表される化合物である。
【0011】
本発明の点眼液において、含有されるエピナスチンは塩であってもよく、医薬として許容される塩であれば特に制限はない。塩としては例えば、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。
無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。
有機酸との塩としては、酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、アラニン、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、没食子酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等との塩が挙げられる。
エピナスチンの塩としては、一塩酸塩(エピナスチン塩酸塩)が特に好ましい。
【0012】
本発明において、含有されるエピナスチン又はその塩は、水和物又は溶媒和物の形態をとってもよい。
【0013】
本発明において、エピナスチン又はその塩の含有量は、0.075%(w/v)超であれば十分であるが、0.085%(w/v)以上、または0.1%(w/v)以上とすることもでき、その上限は眼科製剤として許容される濃度であればよく、例えば5%(w/v)である。エピナスチン又はその塩の含有量としては、0.1~5.0%(w/v)が好ましく、0.1~3.0%(w/v)がより好ましく、0.1~1.0%(w/v)がさらに好ましい。特に好ましくは、0.1~0.5%(w/v)、0.1~0.3%(w/v)であるが、0.1%(w/v)、0.2%(w/v)、0.3%(w/v)、0.4%(w/v)、0.5%(w/v)もさらにより好ましい。
なお、本発明においてエピナスチンの塩が含有される場合、これらの値はエピナスチンの塩の含有量である。「%(w/v)」は、本発明の点眼液100mL中に含まれる対象成分(ここでは、エピナスチン又はその塩)の質量(g)を意味する。以下、特に断りがない限り同様とする。
【0014】
本発明において、防腐剤としては例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン又はその塩、ソルビン酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。
クロルヘキシジン又はその塩としては、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸、クロルヘキシジン酢酸等が挙げられる。
ソルビン酸又はその塩としては、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0015】
本発明において、防腐作用を有する成分としては例えば、ホウ酸、ホウ砂、エデト酸又はその塩等が挙げられる。
エデト酸又はその塩としては、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
本発明において、「防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない」とは、点眼液に該「防腐剤および防腐作用を有する成分」を一切含有しない、または該「防腐剤および防腐作用を有する成分」が単独で第17改正日本薬局方に記載の保存効力試験法に適合しない程度に含まれる、ことを指す。上記の「単独で第17改正日本薬局方に記載の保存効力試験法に適合しない程度」とは、例えばEDTAであれば0.01%(w/v)または0.02%(w/v)程度であってもよいが、これはEDTAのもつ防腐作用ではなく安定化作用を得るために点眼液に含まれる。また、例えばホウ酸であれば0.01%(w/v)または0.02%(w/v)程度であってもよいが、これはホウ酸のもつ防腐作用ではなく緩衝作用を得るために点眼液に含まれる。本発明において「実質的に」とは本質が変わらなければよく、従って本発明において、「実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない」とは、該「防腐剤および防腐作用を有する成分」を一切含有しない、または防腐効果を意図しない場合において該「防腐剤および防腐作用を有する成分」が単独で第17改正日本薬局方に記載の保存効力試験法に適合しない程度に含まれる、ことを指す。
【0017】
本発明において、マルチドーズ型点眼液とは、マルチドーズ型容器に入れられた点眼液を指す。マルチドーズ型容器とは、複数回使用することを目的にキャップ等の開閉を自由に行えるようにした容器であり、開封後一定期間に渡って使用することができ、持ち運びも容易である。本発明において、容器本体の大きさや形状に特に制限はなく、ユニットドーズ型容器(1回使い切りタイプ)であってもよいが、点眼液に防腐効果が付与されているためマルチドーズ型容器がより好ましい。逆流防止機能等の防腐効果を発揮するための特別な構造を有する容器、例えばPFMD(Preservative Free Multi Dose)容器は含まれない。なお、容器の素材に特に制限はなく、一般に汎用される容器、例えば、ポリエチレン(PE)製、ポリプロピレン(PP)製、ポリエチレンテレフタレート(PET)製等の容器を用いることができる。
【0018】
本発明において、点眼液は、構成成分が全て溶解または一部懸濁していてもよいが、構成成分が全て溶解している液状がより好ましい。
【0019】
本発明において、点眼液に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤は、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を適宜配合することができるが、例えば、リン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられ、これらの水和物又は溶媒和物であってもよい。
リン酸又はその塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。
クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。
酢酸又はその塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。
炭酸又はその塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。
酒石酸又はその塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。
本発明において、点眼液に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤は、リン酸又はその塩がより好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムまたはこれらの水和物が特に好ましい。また緩衝剤を2以上一緒に用いてもよい。
本発明において、点眼液に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~3%(w/v)がさらに好ましく、0.2~1.5%(w/v)が最も好ましい。
【0020】
本発明において、点眼液に等張化剤を配合する場合の等張化剤は、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができるが、例えば、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。
イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。
非イオン性等張化剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、マルトース、スクロース等が挙げられる。
本発明において、点眼液に等張化剤を配合する場合の等張化剤は、イオン性等張化剤がより好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。また等張化剤を2以上一緒に用いてもよい。
本発明において、点眼液に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~1%(w/v)がさらに好ましく、0.2~0.5%(w/v)が最も好ましい。
本発明において、点眼液の浸透圧比は眼科製剤に許容される範囲内にあればよく、例えば0.5~2.0であり、0.7~1.6が好ましく、0.8~1.4がより好ましく、0.9~1.2がさらに好ましい。
【0021】
本発明において、点眼液にpH調節剤を配合する場合のpH調節剤は、医薬品の添加物として使用可能なpH調節剤を適宜配合することができるが、例えば、酸又は塩基であり、酸としては例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸等、塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
本発明において、点眼液のpHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよく、4.0~8.0の範囲内が好ましく、6.0~8.0がより好ましく、6.5~7.5がさらに好ましい。特に好ましいpHは、6.7~7.3であるが、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3もさらにより好ましい。
【0022】
本発明において、上記緩衝剤、等張化剤、およびpH調節剤以外にも必要に応じて眼科製剤に許容される添加物(防腐剤および防腐作用を有する成分を除く)を1以上加えることができ、その添加物としては例えば、可溶化剤、安定化剤、抗酸化剤、粘稠化剤等を加えることができる。また、特に断りのない限り、エピナスチン又はその塩以外の点眼液に用いられる有効成分を含んでいてもよい。
可溶化剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポビドン、ポリソルベート80等、安定化剤としては、例えばポビドン、ポリソルベート80等、抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸ナトリウム等、粘稠化剤としては、例えばカルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの添加物は眼科製剤に許容される範囲内で加えることができ、例えばそれぞれ2%以下で加えることができ、または0.2%以下、0.02%以下、0.002%以下の範囲であっても加えることができる。
【0023】
本発明の点眼液は、アレルギー性結膜炎の治療剤として有用である。
【0024】
本発明の点眼液を投与する場合、所望の薬効を奏するのに十分であれば用法用量に特に制限はないが、1回1滴、1日1~10回、好ましくは1日2~6回、より好ましくは1日2~4回、さらに好ましくは1日2回、1日4回に分けて点眼することができる。また、本発明の点眼液は、コンタクトレンズ装用時においても使用することができる。
【実施例0025】
以下に、製剤例および防腐効力試験の結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
[製剤例]
以下に本発明の代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤1mL中の含量である。
【0027】
製剤例1
マルチドーズ型容器(1mL)中
エピナスチン塩酸塩 1mg
リン酸二水素ナトリウム 3mg
塩化ナトリウム 5mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0028】
製剤例2
マルチドーズ型容器(1mL)中
エピナスチン塩酸塩 3mg
リン酸二水素ナトリウム 3mg
リン酸水素二ナトリウム 12mg
塩化ナトリウム 4mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0029】
防腐効力試験(1)
本試験は、第17改正日本薬局方に記載の保存効力試験法に準じて実施した。
1.被験製剤の調製
エピナスチン(50mg)、リン酸二水素ナトリウム(25mg)、リン酸水素二ナトリウム水和物(122mg)、塩化ナトリウム(40mg)を水に溶解し濾過滅菌を行い、pH調節剤と水を加えて全量を10mLとすることにより、実施例1の製剤を調製した。
【0030】
実施例1
1mL中
エピナスチン塩酸塩 5mg
リン酸二水素ナトリウム 2.5mg
リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg
塩化ナトリウム 4mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 6.7
【0031】
実施例1の調製方法と同様の方法にて、実施例2~4および比較例1~2の製剤を調製した。
【0032】
実施例2
1mL中
エピナスチン塩酸塩 50mg
リン酸二水素ナトリウム 2.5mg
リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 6.7
【0033】
実施例3
1mL中
エピナスチン塩酸塩 1mg
リン酸二水素ナトリウム 2.5mg
リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg
塩化ナトリウム 4.7mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 6.7
【0034】
実施例4
1mL中
エピナスチン塩酸塩 2mg
リン酸二水素ナトリウム 2.5mg
リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg
塩化ナトリウム 4.5mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 6.7
【0035】
比較例1
1mL中
エピナスチン塩酸塩 0.5mg
リン酸二水素ナトリウム 2.5mg
リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg
塩化ナトリウム 5mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 6.7
【0036】
比較例2
1mL中
エピナスチン塩酸塩 0.75mg
リン酸二水素ナトリウム 2.5mg
リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg
塩化ナトリウム 4.7mg
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 6.7
【0037】
2.試験方法
接種菌として以下の菌株を使用した。
細菌:
大腸菌,Escherichia Coli ATCC 8739(E.coliともいう)
緑膿菌,Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027(P.aeruginosaともいう)
黄色ブドウ球菌,Staphylococcus aureus ATCC 6538(S.aureusともいう)
酵母菌およびカビ類:
カンジダ,Candida albicans ATCC 10231(C.albicansともいう)
クロコウジカビ,Aspergillus brasiliensis ATCC16404(A.brasiliensisともいう)
【0038】
各製剤からなる試験試料中の菌液濃度が10~10個/mL(5菌種共)となるように、接種菌液を試験試料に接種した。具体的には、10~10cfu/mLとなるように接種菌液を調製し、この接種菌液を10~10cfu/mLとなるように、実施例1~4及び比較例1~2の製剤からなる試験試料に各接種菌液を接種し、均一に混合し試料とした。これらの試料を遮光下20~25℃に保存し、各サンプリングポイント(7日後、14日後、又は28日後)において、各試料からマイクロピペットで1mLを採取し、生菌数を測定した。各サンプリングポイントでは、試料溶液の蓋を空けてサンプリングを実施し、蓋を閉める操作を行った。
【0039】
3.試験結果及び考察
試験結果を表1および表2に示す。表1および表2の試験結果は、生菌数を測定したときの菌数(A)に対する接種時の菌数(B)の比(B/A)の常用対数値で示しており、たとえば、値が「1」の場合には、検査時の生菌数が接種菌数の10%に減少したことを示している。
試験の合否判定について、細菌種(E.coli、P.aeruginosa、S.aureus)に対しては、播種7日後に1.0以上、かつ14日後または28日後に3.0以上であること、および真菌種(C.albicans、A.brasiliensis)に対しては、播種7日後と比較して播種14日後または28日後の数値が減少していないこと、をいずれも満たす時に適合とした。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1および表2に示されるように、エピナスチン又はその塩を含有する実施例1~4の製剤は、防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しないにもかかわらず、いずれの菌に対しても十分な防腐効果を示した。これに対して、比較例1および比較例2の製剤は、十分な防腐効果を有さないことが示された。これにより、0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチンまたはその塩を含有する本発明の点眼液は、防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しなくても、マルチドーズ型点眼液として、繰り返し容器を開閉して使用可能であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液であって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、点眼液を提供する。