(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173172
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】カッターナイフ
(51)【国際特許分類】
B26B 1/08 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
B26B1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079391
(22)【出願日】2021-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】594002347
【氏名又は名称】有限会社四国度器
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】露口 典之
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA10
3C061BA04
3C061CC19
(57)【要約】
【課題】先端側からブレードを交換可能な替え刃式のカッターナイフにおいて、使用者の意思に反してスライドユニットからブレードが外れることのない安全なカッターナイフを提供する。
【解決手段】カッターナイフ1は、長手方向に長手開口が形成されたレール12を有するホルダー10と、ブレード5に連結されてレール12にスライド自在に保持されるスライドユニット20と、を備え、レール12は、先端側に形成されてスライドユニット20の通常スライド範囲の先端側を規定する、長手開口の横幅を狭める段差部15と、段差部15のさらに先端側の底面に設置されたブレード交換用凹部16と、を有し、スライドユニット20は、先端にブレード連結凸部37が設置された長板部36を有するフック35と、通常スライド最先端に位置するときに、段差衝突位置と衝突回避位置との間で移動可能な段差衝突部43と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードを先端側から交換可能なカッターナイフにおいて、
長手方向に垂直な断面が略C型形状に構成され、長手方向に長手開口が形成されたレールを有するホルダーと、
前記ブレードに連結されて前記レールにスライド自在に保持されるスライドユニットと、を備え、
前記レールは、
先端側に形成されて前記スライドユニットの通常スライド範囲の先端側を規定する、前記長手開口の横幅を狭める段差部と、
前記段差部のさらに先端側の底面に設置されたブレード交換用凹部と、
を有し、
前記スライドユニットは、
先端側に突出する長板部と、前記長板部の先端上面に設置された前記ブレードの連結穴に挿入されるブレード連結凸部と、を有するフックと、
前記スライドユニットが通常スライド最先端に位置するときに前記段差部と衝突して先端側へのスライドを阻止する段差衝突位置と、前記段差衝突位置から退去して前記段差部との衝突を回避し、前記スライドユニットのさらに先端側へのスライドを許容する衝突回避位置との間で移動可能な段差衝突部と、
を有し、
前記スライドユニットが前記通常スライド最先端に位置するときに、前記段差衝突部が前記衝突回避位置に退去して前記スライドユニットがさらに先端側のブレード交換位置に移動すると、前記長板部の先端が前記ブレード交換用凹部において降下することで、前記連結凸部も降下して前記スライドユニットと前記ブレードとの連結が解除されるように構成されていることを特徴とするカッターナイフ。
【請求項2】
前記スライドユニットは、前記通常スライド最先端位置において、弾性力により前記段差衝突部を前記段差衝突位置へと押す第一弾性部を備えることを特徴とする請求項1記載のカッターナイフ。
【請求項3】
前記スライドユニットは、前記ブレード交換位置において、前記フックの先端部を弾性力により下方に押す第二弾性部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載のカッターナイフ。
【請求項4】
前記レールは、先端側を向いて前記長手開口の左右両側に長手開口折返し部が形成されており、前記段差部は、片側の前記長手開口折返し部のみに内側に突出して形成され、前記段差部に対向するもう一方の側の前記長手開口折返し部には、前記長手開口の横幅を拡げるように外側に凹んだ段差凹部が形成され、
前記スライドユニットは、前記通常スライド最先端において、前記段差凹部へと横方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載のカッターナイフ。
【請求項5】
前記段差凹部の長手方向の長さが、前記スライドユニットの前記長手開口から外側に露出している凸部の長手方向の長さより僅かに長いことを特徴とする請求項4記載のカッターナイフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレードを交換できる替え刃式のカッターナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホルダーに対してスライド自在であって、折り刃型で交換可能なブレードを備えるカッターナイフが提供されており、例えば、下記特許文献1~3に開示されている。
【0003】
特許文献1~3に開示されたカッターナイフでは、スライダー(スライドユニット)を先端側にスライドさせることで、ブレードとスライダーとの連結を解除し、先端側からブレードを交換可能に構成されている。スライダーを手元側にスライドさせて後端からブレードを交換する場合と比べて、先端側からブレードを交換する方が簡単な作業でブレードを交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-195093号公報
【特許文献2】特開2003-265873号公報
【特許文献3】実開昭55-167364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1~3に開示されたカッターナイフでは、折り刃型のブレードの先端をホルダーの先端から突出させたり退去させたりするためのスライダーの通常スライド範囲内の先端にスライダーを移動させれば、ブレードをスライダーから取り外して交換可能に構成されている。
【0006】
すなわち、通常スライド範囲内の先端部がブレード交換位置となっているため、使用者がブレードを交換する意思がない場合であっても、スライダーがブレード交換位置までスライドしてしまって、ブレードが外れてしまうおそれがある。このように、使用者の意思を伴わずにブレードが外れてしまうと、ケガなどの事故につながるおそれもある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、先端側からブレードを交換可能な替え刃式のカッターナイフにおいて、使用者の意思に反してスライドユニットからブレードが外れることのない安全なカッターナイフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るカッターナイフは、ブレードを先端側から交換可能なカッターナイフにおいて、長手方向に垂直な断面が略C型形状に構成され、長手方向に長手開口が形成されたレールを有するホルダーと、前記ブレードに連結されて前記レールにスライド自在に保持されるスライドユニットと、を備え、前記レールは、先端部分に形成された、前記スライドユニットの通常スライド範囲の先端側を規定する、前記長手開口の横幅を狭める段差部と、前記段差部のさらに先端側の底面に設置されたブレード交換用凹部と、を有し、前記スライドユニットは、先端側に突出する長板部と、前記長板部の先端上面に設置された前記ブレードの連結穴に挿入される連結凸部とを有するフックと、前記スライドユニットが通常スライド最先端に位置するときに前記段差部と衝突して先端側へのスライドを阻止する段差衝突位置と、前記段差衝突位置から退去して前記段差部との衝突を回避し、前記スライドユニットのさらに先端側へのスライドを許容する衝突回避位置との間で移動可能な段差衝突部と、を有し、前記スライドユニットが前記通常スライド最先端に位置するときに、前記段差衝突部が前記衝突回避位置に退去して前記スライドユニットがさらに先端側のブレード交換位置に移動すると、前記長板部の先端が前記ブレード交換用凹部において降下することで、前記連結凸部も降下して前記スライドユニットと前記ブレードとの連結が解除されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカッターナイフによれば、使用者が意図的にブレード交換位置に移動させない限り、スライドユニットからブレードが外れることがなく、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るカッターナイフの平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係るカッターナイフの垂直断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係るカッターナイフの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係るスライドユニットの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係るブレードの交換作業を説明するための平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係るブレードの交換作業を説明するための垂直断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第二実施形態に係るカッターナイフの平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係るカッターナイフの垂直断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第二実施形態に係るカッターナイフの分解斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第二実施形態に係るスライドユニットの分解斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の第二実施形態に係るブレードの交換作業を説明するための平面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第二実施形態に係るブレードの交換作業を説明するための垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
以下、
図1~
図7を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。
図6及び
図7は、ブレード5の交換作業を説明するための図であり、
図6(a)及び
図7(a)は、通常スライド最先端位置のときの状態を示し、
図6(b)及び
図7(b)は、ブレード交換位置のときの状態を示している。
【0012】
第一実施形態では、スライド位置が自動的に所定のピッチで固定されるオートロック式の折り刃型カッターナイフ1について説明する。カッターナイフ1は、ブレード5と、ホルダー10と、連結したブレード5と一体にホルダー10に対してスライド可能に設置されるスライドユニット20とを備える。
【0013】
ブレード5は、折り刃型であり、根元部分にスライドユニット20と連結するための連結穴5aが形成されている。ホルダー10は、樹脂製のホルダー本体11と、ステンレス製のレール12と、ホルダー本体11の後端部に着脱自在に設置されるキャップ19とを備える。
【0014】
ホルダー本体11は、使用者の手によって握られる長手部材であり、内側に同じく長手部材であるレール12を保持する。レール12は、内側にスライドユニット20を長手方向にスライド可能に保持する部材であり、長手方向に垂直な断面形状は略角括弧(C型、コの字型)形状である。
【0015】
レール12の長手方向に延在する長手開口部分には、スライドユニット20をスライド自在に保持するために内側に折り返された長手開口折返し部13が長手方向にわたって左右両側に形成されている。長手開口折返し部13は、長手方向に沿って両側に所定の間隔で凹部14aが多数形成されたスライド凹部14が設置されている。スライド凹部14は、スライドユニット20のスライド位置をオートロック式で一時的に固定するために用いられる。
【0016】
レール12のスライド凹部14の先端側には、先端方向に移動するスライドユニット20に衝突して、スライドユニット20の先端方向への移動を阻止するための段差である段差部15が長手開口折返し部13に設置されている。段差部15は、左右両側の長手開口折返し部13にそれぞれ設置されおり、長手開口の横幅を狭めるように内側に突出して形成されている。
【0017】
この段差部15により、折り刃型のブレード5の先端をホルダー10の先端から突出させたり退去させたりするためのスライドユニット20の通常スライド範囲の先端が規定されている。通常スライド範囲の手元側の後端は、キャップ19により規定されており、後端側へスライドするスライドユニット20はキャップ19に衝突することで停止する。
【0018】
レール12の段差部15のさらに先端側の底面には、ブレード交換用凹部16が設置されている。ブレード交換用凹部16では、レール12の底面が他の部分よりも一段低くなっている。なお、ブレード交換用凹部16は、レール12の底面を直方体形状に凹ませて構成しているが、ブレード交換用凹部16において、後述するフック35の先端下面爪38が下降できる構成であれば良く、開口であっても良い。本明細書では、ブレード交換用の凹部にブレード交換用の開口を含むものとする。
【0019】
スライドユニット20は、
図5に示すように、上方から順に、スライドノブ25と、ロックレバー40と、スライダー本体21と、スプリング30と、フック35とを備えている。スライダー本体21は、全体的に略長方形状板であり、中央部分に上方に突出する直方体形状の角筒凸部22が設置されている。角筒凸部22の内側は、スプリング30が収納設置されるスプリング収納部23を構成している。
【0020】
スライダー本体21の角筒凸部22の後端側には、ロックレバー40を連結するためのロックレバー連結凹部24が形成されている。また、角筒凸部22の幅方向両脇には、内側に設置されるスプリング30の後述する横棒部31が上面側に露出するスプリング横棒露出開口22aが形成されている。スライダー本体21の先端部には、後述するブレード連結凸部37を貫通させるためのブレード連結凸部用穴21bが形成されている。
【0021】
スライドノブ25は、スライダー本体21の角筒凸部22の上部に被せるように載置される、下面が開放された中空直方体形状の部材であり、スライダー本体21に対して、長手方向において前後方向に微小距離スライド可能に連結されている。スライドノブ25は、角筒凸部22から容易に抜けないように、図示しない爪で係止されている。
【0022】
スライドノブ25の本体の下方内側の中央には、スプリング押下凹部26が設置されている。スプリング押下凹部26は、長手方向に平行な鉛直断面において、下方に凹の略U字形状であり、スライドノブ25が前後にスライドする際に、スプリング押下凹部26の前後の下端部がスプリング30に接触して、スプリング30を下方に押下する。
【0023】
スライドノブ25の先端側の上面には、正方形状のつまみ用開口27が設置されており、後述するロックレバー40のつまみ44がつまみ用開口27を貫通して、上方に突出する。
【0024】
スプリング30は、長手方向に直交する横方向に水平に延在する横棒部31と、組立前に横棒部31から先端(刃先)側と後端(手元)側の双方の斜め下方に突出する板バネ部32とを備えている。
【0025】
フック35は、長手方向に延在する長板部36と、長板部36の先端上面に設置されたブレード連結凸部37と、長板部36の先端下面に形成された先端下面爪38とを備えている。フック35は、スプリング収納部23に収納されたスプリング30を挟んで、その根元端部が下方からスライダー本体21に連結固定される。
【0026】
ブレード連結凸部37は、ブレード5の連結穴5aに挿入されることで、一体にスライド可能にブレード5をスライドユニット20と連結する。長板部36は、その上面が接触する第二弾性部として機能するスプリング30の板バネ部32の弾性力により常に下方に押されている。
【0027】
ロックレバー40は、通常スライド範囲よりも先端側のブレード5の交換位置へのスライドユニット20のスライドの阻止又は許容を切り換えるための部材である。ロックレバー40は、略長方形枠形状であり、フレーム部41と、スライダー本体連結凸部42と、段差衝突部43と、つまみ44とを備えている。
【0028】
スライダー本体連結凸部42は、フレーム部41の手元側に位置し、下方に突出している。スライドユニット組み立て時には、スライダー本体21のロックレバー連結凹部24に差し込まれて、スライダー本体21とロックレバー40とが一体に連結固定される。
【0029】
ロックレバー40は、スライドノブ25とスライダー本体21との間に挟まれて設置されており、フレーム部41がスライダー本体21の角筒凸部22の上縁部を取り囲むように組み付けられる。
【0030】
段差衝突部43及びつまみ44は、フレーム部41の先端側に位置し、上方に位置するつまみ44を作業者が指等で押下することで、つまみ44と、その下方に位置する段差衝突部43とが一体に下方に移動し、指等を離すと、第一弾性部として機能するフレーム部41の弾性力により元の位置へと段差衝突部43とつまみ44とが上昇する。
【0031】
段差衝突部43は、スライドユニット20が通常スライド範囲の最先端に位置するときに、レール12の段差部15に衝突する段差衝突位置において、スライドユニット20がさらに先端側に移動できないように制限する(
図6(a)及び
図7(a)参照)。
【0032】
このとき、つまみ44を押下して段差衝突部43をレール12の長手開口折返し部13よりも下方に退去させると、衝突回避位置となり、段差衝突部43と段差部15との衝突が解消され、スライドユニット20が、通常スライド最先端位置よりも先端側のブレード交換位置へ移動可能となる。
【0033】
以上、スライドユニット20を構成する各部材の構成について説明したが、スライドユニット20を組み立てた状態では、スライダー本体21のスプリング収納部23に収納されたスプリング30は、下側に位置するフック35の長板部36により、前後の板バネ部32が、スプリング収納部23の天井面に水平状態となるように押し付けられている。
【0034】
このため、スライダー本体21の角筒凸部22の両脇に形成されたスプリング横棒露出開口22aから両端が露出するスプリング30の横棒部31は、組み立てた状態では常に板バネ部32の弾性力により上方に付勢されている。
【0035】
カッターナイフ1の使用時に、スライドユニット20をホルダー10に対してスライドさせる通常スライドの際には、スプリング横棒露出開口22aから露出する横棒部31の両端がレール12のスライド凹部14の各凹部14aに嵌まることで、スライドが制限されて、スライドユニット20のスライド位置が自動的に固定される。
【0036】
通常スライド時の位置固定を解除して再度スライドさせたい場合には、スライドノブ25をスライドさせたい方向である先端側又は根元側に指で押すと、指で押されたスライドノブ25がスライダー本体21に対して微小距離移動することで、スプリング押下凹部26がスプリング30の横棒部31に接触し、板バネ部32の弾性力に抗して横棒部31を下方に移動させる。
【0037】
横棒部31が下方に移動すると、レール12の凹部14aから抜けるため、スライドユニット20がスライド可能となる。スライドユニット20が所望のスライド位置までスライドし、スライドノブ25を指で押すのを止めると、スライドノブ25がスライド本体21に対して元の位置に戻り、スプリング30の横棒部31が下方に押されなくなるため、上方に付勢されている横棒部31が上昇する。
【0038】
これにより、再度、横棒部31がレール12の凹部14aに嵌まり、スライドが停止し、スライドユニット20のスライド位置が所望の位置に再び固定される。なお、スライドユニット20を先端側に移動させ続けると、上述したように、ロックレバー40の段差衝突部43がレール12の先端近くに設置されている段差部15に衝突し、それ以上先端側にスライドユニット20を移動させることはできない(通常スライド最先端位置)。
【0039】
続いて、ブレード5を交換する際の作業について説明する。交換にあたっては、通常スライド最先端位置からさらに先端側のブレード交換位置までスライドユニット20を移動させる必要がある。
【0040】
通常スライド最先端位置からさらに先端側に移動させるためには、上述したように、段差衝突部43を段差衝突位置から衝突回避位置へと退去させて、ロックレバー40の段差衝突部43と、レール12の段差部15との衝突を解除する必要がある。ロックレバー40のつまみ44を押下すると、一体に形成されている下方の段差衝突部43も下降する。
【0041】
段差部15が形成された長手開口折返し部13よりも下方に段差衝突部43が下降し、両者の衝突が解除されると、スライドユニット20が通常スライド最先端位置からさらに先端側に移動可能となるため、指でスライドノブ25を先端側に押すと、スライドユニット20がさらに先端側に移動する。
【0042】
通常スライド範囲の最先端位置よりも先端側に移動したスライドユニット20は、スライダー本体21の先端がレール12の先端ストッパー17に衝突することで、ブレード交換位置で停止し、それ以上先端側には移動できなくなる。
【0043】
図6(b)及び
図7(b)に示すように、スライドユニット20がブレード交換位置まで移動すると、フック35の先端の先端下面爪38がプレード交換用凹部16の位置に到達する。フック35の長板部36の上面はスプリング30の板バネ部32に接触しているため、先端下面爪38がブレード交換用凹部16に到達し、下方が開放されると、先端下面爪38は、第二弾性部として機能する板バネ部32の弾性力により下方に押されブレード交換用凹部16内に下降する。
【0044】
フック35の長板部36の先端が下降すると、ブレード連結凸部37も一体に下降し、ブレード5の連結穴5aから抜ける。これにより、ブレード5とスライドユニット20との連結が解除され、ブレード5を先端側から引き抜くことができる。
【0045】
続いて、新しいブレード5の装着を行う。新しいブレード5を、連結穴5a側を頭にしてレール12の先端側から挿入し、連結穴5aがフック35のブレード連結凸部37の上方に位置するまで差し込む。
【0046】
スライダー本体21には、先端側の上面に、ブレード5の手元側端部に衝突して位置決めするための段差であるブレード端当て部21aが設置されており、ブレード5の先端をブレード端当て部21aに衝突させると、連結穴5aがブレード連結凸部37の上方に位置するように構成されている。
【0047】
ブレード5の連結穴5aがブレード連結凸部37の上方に位置する状態で、さらにブレード5を手元側に押し込むと、ブレード5とスライドユニット20が手元側にスライドし、先端下面爪38がブレード交換用凹部16から抜け出して上昇する。
【0048】
すなわち、ブレード連結凸部37も上昇して連結穴5aに挿入され、新しいブレード5がスライドユニット20と連結される。そのままブレード5を摘まんで手元側に押し続けると、スライドユニット20が通常スライド最先端位置まで進み、通常スライド範囲内に戻る。
【0049】
以上、第一実施形態によれば、先端側からブレード5を交換する際に、単にスライユニット20を先端側に移動するだけでは、ブレード5とスライドユニット20との連結が外れることはなく、使用者がロックレバー40を操作して、意図的に段差衝突部43を段差衝突位置から衝突回避位置へ移動させることで、ブレード5の交換が可能となるため、安全である。
【0050】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、カッターナイフを構成する部材の形状やサイズ、素材等は適宜変更可能である。また、ホルダーやスライドユニットを構成する部材は、適宜に一体に形成したり、さらに別の部材に分割したりすることができる。
【0052】
また、上記第一実施形態では、オートロックのために機能するスプリングをフックの先端部を下方に押すための第二弾性部として機能させているが、スプリングを兼用させることなく、例えば、フックの長板部の弾性力により、その先端部が下方に向けて付勢されるような構成にしても良い。
【0053】
(第二実施形態)
次に、
図8~
図14を参照しながら、本発明の第二の実施形態について説明する。
図13及び
図14は、ブレード5の交換作業を説明するための図であり、
図13(a)及び
図14(a)は、通常スライド最先端位置のときの状態を示し、
図13(b)及び
図14(b)は、ブレード交換位置のときの状態を示している。
【0054】
第二実施形態では、スライド位置をつまみネジで固定するネジ式の折り刃型カッターナイフ2について説明する。本実施形態では、上記第一実施形態と異なる部分を中心に説明し、共通する構成については、同じ部材名称を付し、説明を省略する。
【0055】
カッターナイフ2は、ブレード5と、ホルダー60と、スライドユニット70とを備える。ホルダー60は、ホルダー本体61と、レール62とを備える。レール62は、スライドユニット70を保持するために折り返された長手開口折返し部63が長手方向にわたって形成されている。
【0056】
断面形状が略括弧型(C型、コの字型)のレール62の長手方向に延在する長手開口部分には、スライドユニット70をスライド自在に保持するために内側に折り返された長手開口折返し部63が長手方向にわたって左右両側に形成されている。
【0057】
レール62の先端側には、先端方向に移動するスライドユニット70に衝突して、スライドユニット70の先端方向への移動を阻止するための段差である第一段差部65aが長手開口折返し部63に設置されている。上記第一実施形態と異なり、第一段差部65aは、片側(
図8において上側)の長手開口折返し部63のみに形成されており、長手開口の横幅を狭めるように内側に突出して形成されている。
【0058】
この第一段差部65aにより、スライドユニット70の通常スライド範囲の先端が規定されている。第一段差部65aの反対側(
図8において下側)の長手開口折返し部63には、レール62の中程から第一段差部65aの少し先端側まで形成された段差凹部65bが設置されており、段差凹部65bは長手開口の横幅を拡げるように外側に凹んで形成されている。
【0059】
段差凹部65bの先端側の内側に突出した段差が第二段差部65cであり、第二段差部65cは、通常スライド範囲よりも先端側に移動したスライドユニット70の先端側への移動を阻止する先端ストッパーとして機能する。また、段差凹部65bの後端側の内側に突出する段差が第三段差部65dである。レール62の段差凹部65bの先端側の底面には、ブレード交換用凹部66が設置されている。
【0060】
スライドユニット70は、
図12に示すように、上方から順に、ダイヤルノブ75と、スライダー本体71と、スプリング80と、フック85とを備えている。スライダー本体71は、全体的に略長方形状板であり、中央から後側端にかけて上方に突出する直方体形状の角柱凸部72が形成されている。
【0061】
角柱凸部72の長手方向に直交する横方向の幅は、レール62の長手開口の横幅よりも僅かに短い。スライダー本体71がレール62にスライド自在に保持された状態では、角柱凸部72のみがレール62の長手開口から外側に突出している。また、先端側を向いて角柱凸部72の右側(
図8において上側)の先端部が、通常スライド最先端位置において、第一段差部65aに衝突する第一段差衝突部72aである。
【0062】
スライダー本体71は、先端側を向いて左側の片側の側面に略長手方向に延在しながら側方外側に突出する棒状部材である側方弾性バネ部74を備えている。スライダー本体71の側面から前方に突出する側方弾性バネ部74と、後方に突出する側方弾性バネ部74の2本が設置されている。
【0063】
スライドユニット70がレール62にスライド自在に設置されると、側方弾性バネ部74はレール62の左側の内側面に接触し、突出位置からスライダー本体71側へ押し戻される。したがって、レール62内に保持されたスライダー本体71は、第一弾性部として機能する側方弾性バネ部74の弾性力により、側方弾性バネ部74が設置された側と反対側の右側に常に押される。
【0064】
これにより、レール62のサイズがスライダー本体71とのサイズよりも若干大きく、レール62内に設置されたスライダー本体71の幅方向に遊びが発生するような場合であっても、スライダー本体71が側方弾性バネ部74により片側に押されるため、レール62に対して、安定してスライドさせることができる。
【0065】
ここで、スライダー本体71の角柱凸部72の長手方向の全長は、上述したレール62の長手方向において、第三段差部65dから第一段差部65aまでの長さ(段差凹部65bの長さ)と略同じであり、僅かに短い。
【0066】
スライドユニット70が通常スライド最先端以外に位置する際には、スライダー本体71の角柱凸部72の横方向両側面がレール62の両側の長手開口折返し部63に挟まれ、横幅方向に移動することはできないが、通常スライド最先端位置に位置すると、角柱凸部72全体が段差凹部65bの横に位置することになり、側方弾性バネ部74の弾性力に抗して、角柱凸部72を段差凹部65b側(先端側を向いて左側)へ移動させることが可能となる。
【0067】
角柱凸部72が段差凹部65b内に嵌まると、角柱凸部72の第一段差衝突部72aと、第一段差部65aとの衝突が回避され、レール62の長手開口から外側に露出している角柱凸部72をさらに先端側に移動させることが可能となる。
【0068】
スライドユニット70が通常スライド最先端位置よりも先端側に移動すると、角柱凸部72の左側(
図8において下側)の先端部が、段差凹部65bの先端側の第二段差部65cに衝突して停止し、この位置がブレード交換位置となり、この角柱凸部72の左側の先端部が第二段差衝突部72cとなる。
【0069】
ダイヤルノブ75は、雄ネジ75aと、クリックバネ76とを備えている。スライダー本体71の角柱凸部72の上面には、雄ネジ75aがねじ込まれる雌ネジ72bが形成されており、ダイヤルノブ75は、クリックバネ76を介して、ねじ留めによりスライダー本体71に連結されている。
【0070】
ダイヤルノブ75の雄ネジ75aの先端は、スライドユニット70の底面側に突出しており、ねじ込まれる雄ネジ75aの先端がレール62の底面に接触することで、スライドユニット70のスライド位置が所望の位置に固定される。
【0071】
スプリング80は、上方のスライダー本体71と下方のフック85との間に挟まされて設置されており、その一端がスライダー本体71の下面に形成されたスプリング連結凹部(不図示)に連結されている。スプリング80は、リターンバネであり、その下面に接触するフック85の先端側を弾性力で下方に付勢する。
【0072】
フック85は、長手方向に延在する長板部86と、長板部86の先端上面に設置されたブレード連結凸部87と、長板部86の先端下面に形成された先端下面爪88とを備えている。フック85は、スプリング80を挟んで、その根元端部が下方からスライダー本体71に連結固定される。
【0073】
以上、スライドユニット70の構成について説明したが、続いて、ブレード5を交換する際の作業について説明する。作業にあたっては、まず、スライドユニット70を通常スライド範囲の最先端へとスライドさせる。
【0074】
図13(a)及び
図14(a)に示すように、スライドユニット70が通常スライド最先端位置まで移動すると、角柱凸部72の第一段差衝突部72aがレール62の第一段差部65aに衝突して停止する(段差衝突位置)。さらに、先端側に移動させるために、側方弾性バネ部74の弾性力に抗して、作業者の指等でスライダー本体71を第一段差部65aと逆側へと横方向に移動させる。
【0075】
角柱凸部72が段差凹部65b内に嵌まると、衝突回避位置となり、第一段差衝突部72aと第一段差部65aとの衝突が回避される。衝突回避位置では、角柱凸部72が先端側にスライド可能になるため、指で角柱凸部72を先端側に押すと、スライドユニット70がさらに先端側に移動する。
【0076】
通常スライド範囲の最先端位置よりも先端側に移動したスライドユニット70は、角柱凸部72の先端側を向いて左側先端角部の第二段差衝突部72cがレール62の左側の第二段差部65cに衝突することで、ブレード交換位置で停止し、それ以上先端側には移動できなくなる。
【0077】
図13(b)及び
図14(b)に示すように、スライドユニット70がブレード交換位置まで移動すると、フック85の先端の先端下面爪88がブレード交換用凹部66の位置に到達する。フック85の長板部86の上面は、第二弾性部として機能するスプリング80に接触して下方に付勢されているため、先端下面爪88がブレード交換用凹部66に到達し、下方が開放されると、先端下面爪88は、下方に押されてブレード交換用凹部66内に下降する。
【0078】
フック85の長板部86の先端が下降すると、ブレード連結凸部87も一体に下降し、ブレード5の連結穴5aから抜ける。これにより、ブレード5とスライドユニット70との連結が解除され、ブレード5を先端側から引き抜くことができる。
【0079】
新しいブレード5に交換後、スライドユニット70を後端側に押してスライドさせる。角柱凸部72の後端側が段差凹部65bの後端である第三段差部65dに接触する位置まで戻ると、長手方向において、角柱凸部72の第一段差衝突部72aも第一段差部65aの位置まで戻る。
【0080】
そうすると、側方弾性バネ部74により先端側を向いて右側である第一段差部65aの方向へ常に付勢されているスライダー本体71は、右側に移動し、左側の段差凹部65bから抜け、通常スライド最先端位置に戻る。
【0081】
以上、第二実施形態について説明したが、本実施形態によれば、上記第一実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、第二実施形態では、段差衝突部を横方向に水平に動かすことで、段差衝突位置と衝突回避位置との間で移動可能に構成されており、簡素な構造で部品点数の少ないスライドユニット70を実現することができる。
【0082】
以上、本発明の第二実施形態について説明したが、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様に種々の変形が可能である。また、上記第二実施形態では、フックの先端部を下方に付勢するためにスプリングを設置しているが、フックの長板部の弾性力により、その先端部が下方に向けて付勢されるような構成にしても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 カッターナイフ
10 ホルダー
11 ホルダー本体
12 レール
13 長手開口折返し部
14 スライド凹部
14a 凹部
15 段差部
16 ブレード交換用凹部
17 先端ストッパー
19 キャップ
20 スライドユニット
21 スライダー本体
21a ブレード端当て部
21b ブレード連結凸部用穴
22 角筒凸部
22a スプリング横棒露出開口
23 スプリング収納部
24 ロックレバー連結凹部
25 スライドノブ
26 スプリング押下凹部
27 つまみ用開口
30 スプリング
31 横棒部
32 板バネ部
35 フック
36 長板部
37 ブレード連結凸部
38 先端下面爪
40 ロックレバー
41 フレーム部
42 スライダー本体連結凸部
43 段差衝突部
44 つまみ
2 カッターナイフ
60 ホルダー
61 ホルダー本体
62 レール
63 長手開口折返し部
65a 第一段差部
65b 段差凹部
65c 第二段差部
65d 第三段差部
66 ブレード交換用凹部
70 スライドユニット
71 スライダー本体
72 角柱凸部
72a 第一段差衝突部
72b 雌ネジ
72c 第二段差衝突部
74 側方弾性バネ部
75 ダイヤルノブ
75a 雄ネジ
76 クリックバネ
80 スプリング
85 フック
86 長板部
87 ブレード連結凸部
88 先端下面爪
5 ブレード
5a 連結穴