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特開2022-173177再生原料の製造方法、該製造方法により得られる再生原料を用いたことを特徴とするフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173177
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】再生原料の製造方法、該製造方法により得られる再生原料を用いたことを特徴とするフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20221111BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20221111BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221111BHJP
   B29C 48/691 20190101ALI20221111BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20221111BHJP
   B29B 9/02 20060101ALI20221111BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C08J11/06
C08J3/20 Z CES
C08J5/18
B29C48/691
B29C48/08
B29B9/02
C08L23/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079398
(22)【出願日】2021-05-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)▲1▼配布日 令和3年3月25日 ▲2▼配布場所 株式会社TACやつしろ (2)▲1▼配布日 令和3年4月7日 ▲2▼配布場所 株式会社Sora (3)▲1▼配布日 令和3年3月24日 ▲2▼配布場所 株式会社上山種苗 他14件
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹林 賢三
(72)【発明者】
【氏名】松田 博行
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 俊良
(72)【発明者】
【氏名】山内 卓弥
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4F201
4F207
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA28
4F070AB11
4F070AB26
4F070DA42
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC05
4F071AA15
4F071AA15X
4F071AA19
4F071AA28X
4F071BA01
4F071BB09
4F071BC01
4F201AA03
4F201AA50
4F201AC04
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC12
4F201BD05
4F201BL06
4F201BL29
4F207AA04
4F207AA50
4F207AC01
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KL64
4F207KL84
4F401AA09
4F401AD07
4F401BA09
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA59
4F401CA79
4F401CA82
4F401CB18
4F401DC02
4F401EA74
4F401FA07Z
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB062
4J002GA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大量に回収することが容易な農業用フィルムを用いて再生原料を製造する方法であって、樹脂圧が高くならず長時間連続生産できる再生原料の製造方法を提供する。
【解決手段】農業用ハウスに展張された農業用フィルムであって、ポリエチレン系樹脂を主成分とする使用後の農業用フィルムを用いて再生原料を製造する方法であって、使用後の農業用フィルムを粉砕する前処理工程と、前記前処理工程により得られる粉砕済み原料に、必要に応じエチレン-酢酸ビニル共重合体を加え、ポリエチレン系樹脂100重量%に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10~60重量%となるように調整する原料調整工程と、前記原料調整工程により得られる調整後原料を溶融させてペレット状に成形するペレット成形工程と、を順に備えることを特徴とする再生原料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウスに展張された農業用フィルムであって、ポリエチレン系樹脂を主成分とする使用後の農業用フィルムを用いて再生原料を製造する方法であって、
使用後の農業用フィルムを粉砕する前処理工程と、
前記前処理工程により得られる粉砕済み原料に、必要に応じエチレン-酢酸ビニル共重合体を加え、ポリエチレン系樹脂100重量%に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10~60重量%となるように調整する原料調整工程と、
前記原料調整工程により得られる調整後原料を溶融させてペレット状に成形するペレット成形工程と、
を順に備えることを特徴とする再生原料の製造方法。
【請求項2】
前記ペレット成形工程では、調整後原料を、混練押出機を用いて溶融混練し、押出成形することを特徴とする請求項1記載の再生原料の製造方法。
【請求項3】
前記混練押出機における調整後原料の充填率が50~90体積%であることを特徴とする請求項2記載の再生原料の製造方法。
【請求項4】
前記混練押出機が、デュアルピストンタイプのスクリーンチェンジャーを備えることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の再生原料の製造方法。
【請求項5】
前記再生原料がフィルム成形用であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の再生原料の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法により得られる再生原料を25重量%以上用いることを特徴とするフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生原料の製造方法に関する。詳しくは、ポリエチレン系樹脂を主成分とする農業用フィルムであって、農業用ハウスに使用された後の農業用フィルムを原料として、再生原料を製造する方法に関する。また該再生原料を用いてフィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の目的でプラスチックフィルムの再利用が求められている。農業用ハウスに展張されるフィルムや農業用トンネルフィルム、マルチフィルムといった農業用フィルムは、作物が収穫されるタイミング等で廃棄されることが多く、比較的容易に大量の廃プラスチックを回収することができる。よって、使用後の農業用フィルムを再生原料に加工することができれば、大量の廃プラスチックをマテリアルリサイクルすることが可能である。しかしながら、農業用フィルムは屋外で長期間使用されるため、泥や砂、植物片といった異物が多く付着しており、高品質の再生原料に加工することは困難であった。
【0003】
特許文献1は、ポリエチレン系フィルム廃材を、フィルム成形機にて所定温度でフィルムに成形することを特徴とするポリエチレン系半透明ごみ収集袋に関する発明である。当該発明において廃材として例示されているのは、ポリエチレン系樹脂素材の包装用フィルム、包装用袋の製袋ロス、インフレションフィルムの切断端部、廃版のポリエチレン系フィルム印刷物等からなるポリエチレン系フィルム等、比較的、異物の付着が少ないものである。
【0004】
特許文献2は、農業用ポリエチレン製フィルムを回収し、これを破砕し、更に洗浄、乾燥した後、ペレット化する農業用ポリエチレンの再生方法に関する発明である。特許文献2[請求項3]には、ペレット化された再生原料に、バージン原料(=再生原料ではない原料)、添加剤又は着色量を混合してポリエチレン袋を製袋することが開示されているが、具体的にどのようなバージン原料をどの程度混合すればよいかは開示されていない。
【0005】
特許文献3は、少量の不溶性の固形異物が混在する熱可塑性樹脂を主要成分とする廃プラスチック材料を原料として用いて、外観に欠陥のない合成樹脂製品を製造するための樹脂組成物を提供することを課題とする。廃プラスチック材料粉砕物に、光遮蔽性顔料や光遮蔽性フィラー等の光遮蔽性成分を混合し、得られるシートの明度と光透過度との関係を特定範囲内とすることにより、得られる合成樹脂製品の外観を改善することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-151301号公報
【特許文献2】特開2008-179075号公報
【特許文献3】特開2013-241608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、回収された農業用フィルムを、洗浄して粉砕した後、粉砕された原料を混練押出機により溶融混練し、直径数mm程度の管状に押出しながら、数mm~数cmの長さ毎に切断し、粒状に成形すること(以下、直径数mm程度の粒状に成形することを必要に応じ「ペレット化」と称す)を検討したところ、混練押出機内の樹脂圧が高くなり、連続生産することができなかった。そこで押出機の温度を高くしたところ、混練押出機内において樹脂劣化(焦げ)が確認された。
【0008】
本発明は、大量に回収することが容易な農業用フィルムを用いて再生原料を製造することを目的とする。詳しくは、樹脂圧が高くならず長時間連続生産できる再生原料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明によると以下の[1]~[5]記載の再生原料の製造方法が提案される。
[1] 農業用ハウスに展張された農業用フィルムであって、ポリエチレン系樹脂を主成分とする使用後の農業用フィルムを用いて再生原料を製造する方法であって、使用後の農業用フィルムを粉砕する前処理工程と、前記前処理工程により得られる粉砕済み原料に、必要に応じエチレン-酢酸ビニル共重合体を加え、ポリエチレン系樹脂100重量%に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10~60重量%となるように調整する原料調整工程と、前記原料調整工程により得られる調整後原料を溶融させてペレット状に成形するペレット成形工程と、を順に備えることを特徴とする再生原料の製造方法。
[2] 前記ペレット成形工程では、調整後原料を、混練押出機を用いて溶融混練し、押出成形することを特徴とする[1]記載の再生原料の製造方法。
[3] 前記混練押出機における調整後原料の充填率が50~90体積%であることを特徴とする[2]の再生原料の製造方法。
[4] 前記混練押出機が、デュアルピストンタイプのスクリーンチェンジャーを備えることを特徴とする[2]又は[3]のいずれかに記載の再生原料の製造方法。
[5] 前記再生原料がフィルム成形用であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の再生原料の製造方法。
【0010】
また、以下の[6]記載のフィルムの製造方法が提供される。
[1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法により得られる再生原料を25重量%以上用いることを特徴とするフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の再生原料の製造方法によれば、農業用ハウスに展張された農業用フィルムを原材料として用いる為、泥や砂、植物片などの付着物が比較的少なく、高品質の再生原料を得ることができる。更に、ポリエチレン系樹脂を主成分とする農業用フィルムを用いる為、樹脂組成にばらつきが少なく、付加価値の高い再生原料を得ることができる。
更にまた、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン等と相溶性が良く、融点の低いエチレン-酢酸ビニル共重合体を必要に応じ加え、ポリエチレン系樹脂におけるエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合を調製している。その為、ペレット化する際の混練押出機の温度を高くする必要がなく、樹脂劣化を抑制することができる。
【0012】
また調整後原料を溶融させてペレット状に成形する際に、混練押出機を用いると、組成においてばらつきの極めて少ない再生原料を得ることができる。
混練押出機における調整後原料の充填率が50~90体積%であると樹脂劣化が極めて少ない再生原料を得ることができる。
更に前記混練押出機が、デュアルピストンタイプのスクリーンチェンジャーを備えると長時間連続して再生原料を製造することができる。
本発明による再生原料は、泥・砂・植物片等の異物が少なく、樹脂の劣化の程度も低いため、数μm~数百μmのフィルムの製造に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく同様の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
【0014】
<使用後の農業用フィルム>
本発明において再生原料の材料として用いられる農業用フィルムは、農業用ハウスにおいて展張されたフィルムであって、ポリエチレン系樹脂を主成分とするものである。上述したように、農業用フィルムは比較的容易に大量の使用後のフィルムを集めることができる。使用後の農業用フィルムの中でも、農業用ハウスにおいて使用されたフィルムは、泥や砂、植物片といった異物の付着が少なく、また樹脂組成が比較的均一であるので、本発明の再生原料の原材料として適する。
【0015】
農業用ハウスに用いられるフィルムは、ポリ塩化ビニルを主成分とするもの、ポリエチレン系樹脂を主成分とするもの、フッ素系樹脂を主成分とするものなどが知られているが、ポリ塩化ビニルやフッ素系樹脂を主成分とするものは、既にマテリアルリサイクルが進んでいる。本発明では、あまりマテリアルリサイクルされていないポリエチレン系樹脂を主成分とする農業用フィルムを原材料として用いる。尚、本発明において「主成分とする」とは少なくとも50重量%以上含まれていることを意味する。使用後のフィルムであることに鑑みると、ポリエチレン系樹脂のみからなるフィルムを揃えることは難しいと思われるが、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上がポリエチレン系樹脂からなるように農業用フィルムを回収し、再生原料の材料として使用することが好ましい。
【0016】
本発明においてポリエチレン系樹脂とは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の、エチレンモノマーの単独重合体や、エチレンモノマーと他のモノマーの共重合体であって、エチレンモノマーの重量割合が50重量%以上である樹脂を指す。尚、エチレンモノマーの重量割合は80重量%以上であることが好ましく、特に85重量%以上であることが好ましい。
農業用ハウスに展張されるフィルムは、低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とするものが市場に多く投入されている為、これらの樹脂を主成分とするフィルムが大量回収しやすい。またこれらの樹脂を主成分とするフィルムは、融点や溶融粘度等が似通っている為、再生原料に加工しやすい。尚、回収されたポリエチレン系の農業用フィルムには、通常、0~80重量%、特に0~60重量%エチレン-酢酸ビニル共重合体が含まれている。
【0017】
<前処理工程>
回収された農業用フィルムは、押出機に投入しやすいように、予め粉砕される。粉砕の方法は特に限定されるものではないが、湿式洗浄粉砕機、乾式洗浄粉砕機等を用いるとよい。また、回収されたフィルムは粉砕前、或いは粉砕中や粉砕後に、洗浄され、土や砂、植物片といった付着物が除去されることが望ましい。
湿式洗浄粉砕機は、フィルムを粉砕すると共に、フィルムに付着した土や砂を洗浄することができるので、高品質の再生原料を得るために有効である。本発明では前処理工程において、湿式洗浄粉砕機を一~二度使用することを提案する。一度目で、フィルムを20~30cm角程度の大きさに粉砕すると共に、フィルムに付着した大まかな土や砂を循環水により洗浄し、二度目で、該粉砕物を2~3cm角程度の大きさに粉砕し、二次洗浄することが望ましい。また洗浄後の樹脂は水分を多く含む傾向にあるが、当該水分は後述するペレット成形工程において水蒸気等のガスを発生させる恐れがある。よって、洗浄後は十分に乾燥することが望まれる。
【0018】
<原料調整工程>
本検討の過程で、使用後の農業用フィルムを、一般的なポリエチレン系樹脂を押出成形する温度(220~240℃)でペレット化すると、樹脂劣化(焦げ)が発生することが判明した。そこで本発明では、原料調整工程を設け、ポリオレフィン系樹脂の中でも比較的融点の低いエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が特定の範囲内となるように調製することとする。詳しくは、粉砕済み原料に、必要に応じエチレン-酢酸ビニル共重合体を添加し、ポリエチレン系樹脂100重量%中に、エチレン-酢酸ビニル共重合体が10~60重量%含まれるように調整する。エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が上記範囲であると、後述するペレット成形工程において樹脂圧が高くなりにくい為、押出機の温度を上げたり、再生原料を製造する速度を落としたりする必要がない。また押出機における原料の充填率を50体積%以上にすることができる為、押出機内で樹脂が酸化劣化しにくい。尚、原料の調整は、後述する混練押出機に原料を投入する際に行ってもよい。
【0019】
農業用ハウスの多くは、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又は低密度ポリエチレンを原料としている。当該フィルムを原材料とし、エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が10~60重量%となるように調整し、再生原料を製造すると、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又は低密度ポリエチレン:エチレン酢酸ビニル共重合体=90~40重量%:10~60重量%の再生原料となる。エチレン-酢酸ビニル共重合体が60重量%を超えて含まれていると、使用後の農業用フィルムの割合が40重量%未満となる恐れがある。この場合、資源循環の効果に乏しい。
【0020】
特に好ましい調整後原料の樹脂組成は、樹脂成分の80重量%以上、特に90重量%がポリエチレン系樹脂である。そして該ポリエチレン系樹脂100重量%のうち、直鎖状低密度ポリエチレンが20~60重量%、低密度ポリエチレンが20~40重量%、エチレン-酢酸ビニル共重合体が10~60重量%である。特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンが25~55重量%、低密度ポリエチレンが25~35重量%、エチレン-酢酸ビニル共重合体が15~50重量%である。当該樹脂組成であると、再ペレット化する際に樹脂劣化がほとんど発生せず、高品質の再生原料を得ることができる。尚、各樹脂の配合割合は、DSC(示差走査熱量計)の二度目の昇温時に観測される融解ピーク強度や融解ピーク面積から算出する。また当該樹脂組成物に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体の配合割合は重量分析により当該樹脂組成物をクロロホルムやテトラヒドロフランに溶解させてエチレン-酢酸ビニル共重合体を定量して算出することができる。
【0021】
<ペレット成形工程>
原料調整工程により、エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合が調整された原料を、ペレット状に成形する。成形方法は特に限定されるものではないが、樹脂を均一に混練しながら成形できる混練押出機を用いることが望ましく、特にベントを備えた単軸または二軸の混練押出機が好適に使用される。また、ベントの真空度としては、0.085MPa以上とするのが好ましく、さらに好ましくは0.090MPa以上である。
混練押出機における調整後原料の充填率は50~90体積%であることが好ましく、特に60~80体積%であることが好ましい。充填率が50体積%を下回ると、押出機内で樹脂が酸化しやすく、焦げなどが発生しやすい。また充填率が90体積%を超えるとベントから樹脂が噴き出す恐れがある。尚、調整後原料の充填率は、押出機内の樹脂(溶融状態の樹脂)の体積を押出機の容積で除した値である。
【0022】
混練押出機内には、異物を取り除くスクリーンチェンジャーが配されていることが好ましい。該スクリーンチェンジャーのタイプは、プレートタイプでも良く、デュアルピストンタイプでも良く、バックフラッシュタイプでも良く、レーザーフィルターでも良い。しかしながらデュアルピストンタイプを用いると、樹脂が空気に触れる機会を減らすことができる為、樹脂が酸化劣化しにくく連続生産性に優れる。
【0023】
混練押出機により、調整後原料を直径数mmの管状に押出成形し、これを数mm~数cm(例えば3mm程度)の長さにカットすれば、粒状の再生原料を得ることができる。尚、押出機から押出された樹脂を管状に成形後、冷却することなく、数mm(例えば3mm)程度押出される毎に樹脂を切断し、粒状に成形してもよい。
【0024】
<再生原料を用いたフィルムの製造方法>
本発明により得られる再生原料は、比較的高品質であるため、インフレーション押出成形法やTダイ押出成形法といった従来公知の製膜方法によりフィルム状に成形することができる。尚、成形に際して、本発明の製造方法により得られた再生原料だけでなく、フィルムの用途に応じ、別の樹脂を添加してもよい。また、インフレーション共押出法やTダイ共押出法等により、多層のフィルムを製膜することもできる。フィルムにおける再生原料の割合は20~100重量%であることが好ましく、特に30~50重量%以上であることが好ましい。再生原料の割合が少ないと、資源循環の効果に乏しく、多いとフィルム表面に凸状の欠陥が発生しやすい。
【0025】
また、本発明の再生原料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を一定量以上含むため、耐候性や展張性に優れる。よって、畑の畝を覆うマルチフィルムの生産に特に適する。マルチフィルムの原材料として使用する際は、必要に応じ、着色料を適宜添加することができる。
【実施例0026】
以下、実施例に基づき本発明の効果を詳説する。各実施例、比較例の評価は以下の方法により行った。
[連続生産性]
小型押出機に#40のフィルタと#60フィルタを重ねて取り付け、吐出量4kg/hで再生原料を2時間押出し、その圧力上昇の平均値(MPa/h)で評価する。詳しくは以下の式により算出する。
圧力上昇の平均値=1/2×(2時間後の圧力-初期圧力)
圧力上昇の平均値が0.5MPa以下であると、問題なく押出成形することができるため、連続生産性は良好であると評価できる。
[凸状の欠陥数]
得られた再生原料を用いて、厚さ20μmのマルチフィルムを製造する。得られたマルチフィルムから100mm角の試験片を6枚用意し、フィルム表面が凸状になった欠陥の数を測定し、1m当たりの欠陥数を算出する。欠陥数が5個/m以下であると欠陥が少ない(表面形状が良好)と評価できる。
【0027】
[実施例1]
農業用ハウスに使用されたポリエチレン系のフィルムを、湿式洗浄粉砕機により、一度洗浄と粉砕し、3~5cm程度の大きさにグラッシュ化した(前処理工程)。次いで、該粉砕済み原料にエチレン-酢酸ビニル共重合体を添加し、ポリエチレン系樹脂(PE)100重量%に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の重量割合が表1に示す値になるように、エチレン-酢酸ビニル共重合体を添加し、原料を調製した(原料調整工程)。調整後の原料を一軸混練押出機により、ペレット化し(ペレット成形工程)、再生原料を製造した。成形条件(押出機の温度、押出機における調整後原料の充填率、スクリーンチェンジャーのタイプ)を表1に合わせて記す。更に得られた再生原料の連続生産性についても、表1に記す。尚、EVAの配合割合は、DSC(示差走査熱量計)の二度目の昇温時に観測される融解ピーク強度から算出した。
次いで、得られた再生原料に未使用の直鎖状低密度ポリエチレンを、再生原料:直鎖状低密度ポリエチレン=30重量%:70重量%となるように添加し、インフレーション押出成形法にて農業用マルチフィルムを製造した。該フィルムの凸状の欠陥数を表2に記す。
【0028】
[実施例2~4、比較例1~2]
調整後原料におけるエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合を表1に記すように変更した。また押出機の温度、充填率、スクリーンチェンジャーのタイプについても表1に記すように変更し、再生原料を製造した。尚、比較例2では、農業用ハウスに展張された農業用フィルムだけでなく、マルチフィルムとして使用された農業用フィルムも原材料として用いた。比較例2の、農業用ハウスとマルチフィルムの割合は25重量%:75重量%である。実施例2~4、比較例1~2により得られた再生原料の連続生産性について評価した。結果を表1に合わせて記す。
次いで、実施例2~4、比較例1で得られた再生原料に、表2に記すように、未使用の直鎖状低密度ポリエチレンを添加し、インフレーション押出成形法にて農業用マルチフィルムを製造した。該フィルムの凸欠陥を表2に合わせて記す。尚、比較例2では製膜に必要な量の再生原料を得ることができなかった。尚、比較例2の再生原料は連続生産性に劣る為、フィルムには成形しなかった。
【0029】
【表1】
【0030】
農業用ハウスにおいて展張されていたフィルムのみを材料として使用した実施例1~4のフィルムは、一般的なポリエチレン系樹脂の押出温度である220~235℃で樹脂を押出しても樹脂圧が高くなることはなく、連続生産性に優れていた。特にデュアルピストンタイプのスクリーンチェンジャーを用いた実施例3のフィルムは、連続生産性に優れる。一方、原料としてマルチフィルムとして使用された農業用フィルムを含む比較例2のフィルムは、樹脂圧が高くなり、連続生産性に適さない。これは農業用マルチフィルムには異物が多く含まれるためと推察される。
【0031】
【表2】
【0032】
エチレン-酢酸ビニル共重合体の含有率が高い実施例1、3の再生原料を用いたフィルムは、凸状欠陥が少なかった。特にデュアルピストンタイプのスクリーンチェンジャーを用いた実施例3の再生原料を用いたフィルムは凸状欠陥が少なかった。またエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有率が10重量%を下回る比較例1の再生原料を用いたフィルムは、凸状欠陥の量が多かった。これは押出機内の樹脂の流れが悪く、樹脂劣化が発生したためと推察される。