(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173194
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】5-ハロウラシル修飾マイクロRNA及びがんの処置におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221111BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20221111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221111BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221111BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7115
A61P35/00
A61K48/00
A61P15/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133279
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2019523008の分割
【原出願日】2017-10-30
(31)【優先権主張番号】62/415,740
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/422,298
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/464,491
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジンファン・ジュ
(57)【要約】
【課題】1つには、がんの処置のための、より効果的、安定で且つ毒性の低い医薬品を提供すること。
【解決手段】本開示は、1つ以上のハロウラシル分子を組み込まれた核酸組成物を提供する。より具体的には、本開示は、マイクロRNAヌクレオチド配列内のウラシルヌクレオチドの5-ハロウラシルでの置き換えが、がん進行及び腫瘍形成を阻害するマイクロ-RNAの能力を増加させることを明らかにしている。そのため、本開示は、核酸配列に組み込まれた5-ハロウラシル分子を有する様々な核酸(例えば、マイクロRNA)組成物及びそれを使用する方法を提供する。本開示は、修飾核酸組成物を含む医薬組成物(例えば、製剤)、並びに結腸直腸、膵臓及び肺がん等のがんを処置する方法を更に提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウラシル核酸を含む修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を含む2本鎖核酸であって、B細胞リンパ腫2(BCL2)ヌクレオチド配列に対して相補的である前記修飾マイクロRNAヌクレオチド配列のシード領域を含む前記ウラシル核酸の全てが、マイクロRNAヌクレオチド配列及び5-フルオロウラシルの効力を組み合わせるように、5-フルオロウラシルであり、前記修飾マイクロRNAヌクレオチド配列が、配列番号1に示されるmiR-129マイクロRNAヌクレオチド配列又は配列番号2に示されるmiR-15aマイクロRNAヌクレオチド配列に対して相補的である前記B細胞リンパ腫2(BCL2)ヌクレオチド配列に結合する、2本鎖核酸。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの2本鎖核酸を含む医薬組成物。
【請求項3】
前記修飾マイクロRNAヌクレオチド配列が、前記miR-15aヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記修飾マイクロRNAヌクレオチド配列が、前記miR-129ヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記修飾マイクロRNAヌクレオチド配列が、前記miR-129ヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の2本鎖核酸。
【請求項6】
ヌクレオチド配列CGACGGCAUFAUFACACUFACAGUFG[配列番号32]を有する有効量の修飾マイクロRNAを対象に投与することを含む、乳がんを治療するための方法であって、前記対象が、乳がんを有すると診断されており、前記乳がんの進行が、前記修飾マイクロRNA核酸組成物の投与によって阻害され、前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんである、方法。
【請求項7】
前記対象が、ヒトである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾マイクロRNA核酸が、配列番号33に示されるMDC1 3’UTRヌクレオチド配列の相補的部分に結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記修飾マイクロRNA核酸組成物が、注射によって前記対象に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ヌクレオチド配列CGACGGCAUFAUFACACUFACAGUFG[配列番号32]からなる有効量の修飾マイクロRNAを対象に投与することを含む、乳がんを治療するための方法であって、前記対象が、乳がんを有すると診断されており、前記乳がんの進行が、前記修飾マイクロRNA核酸組成物の投与によって阻害される、方法。
【請求項11】
前記対象が、ヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がん、腺管癌及び小葉癌の群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記修飾マイクロRNA核酸が、配列番号33に示されるMDC1 3’UTRヌクレオチド配列の相補的部分に結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記修飾マイクロRNA核酸組成物が、注射によって前記対象に投与される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年2月28日出願の米国仮特許出願第62/464,491号;2016年11月15日出願の米国仮特許出願第62/422,298号及び2016年11月1日出願の米国仮特許出願第62/415,740号の優先権を主張し、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府援助
本開示は、National Institutes of Healthによって授与された許可番号HL127522及びCA19709802下の政府支援によりなされた。政府は、本開示において一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照による組込み
2017年10月30日に作成され、United States Patent and Trademark OfficeにEFS-Webを介して提出された、R8859_PCT_SequenceListing.txtと命名された、7KBのASCIIテキストファイル中の配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本開示の分野
本開示は、一般に、がんを処置する組成物及び方法、並びに、より詳細には、単独又は5-フルオロウラシルと組み合わせる修飾マイクロRNAが、がん、特に結腸直腸、肺又は膵がんの処置に使用される方法を対象とする。
【背景技術】
【0005】
背景
マイクロRNA(miRNA、miR)は、それらの標的遺伝子の発現をネガティブに制御し、このようにして、翻訳停止、mRNA切断又はその組合せを引き起こすことによる、細胞又は生物において翻訳を仲介する、高度に保存された、非コードスモールRNA分子(non-coding small RNA molecule)の1つのクラスである。Bartel DP. Cell. (2009) 136(2):215~33を参照されたい。複数の転写物を標的とすることによって、miRNAは、アポトーシス、分化及び細胞増殖を含む、広範囲の生物学的プロセスを制御しており、したがって、異常なマイクロRNA機能が、がんをもたらしうる(Ambros V. Nature. (2004) 431(7006):350~5を参照されたい)及び最近miRNAは、それ自体、バイオマーカー、癌遺伝子又は腫瘍サプレッサーとして同定されている。例えば、Croce、CM、Nat Rev Genet. (2009) 10:704~714を参照されたい。
【0006】
結腸直腸がん(CRC)は、米国において3番目に最も一般的な悪性疾患及び2番目に最も一般的ながん関連死である。Hegde SRら、Expert review of gastroenterology & hepatology. (2008) 2(1):135~49を参照されたい。がんを処置するため使用される多くの化学療法剤があるが;ピリミジンアンタゴニスト、例えば、フルオロピリミジンベースの化学療法剤(例えば、5-フルオロウラシル、S-1)が、結腸直腸がんを処置するためのゴールドスタンダードである。ピリミジンアンタゴニストは、ヌクレオチド(DNAにおいてシトシン及びチミン;RNAにおいてシトシン及びウラシル)を含有するピリミジンの合成を遮断する。内因性ヌクレオチドと比較した場合に、ピリミジンアンタゴニストは、類似する構造を有し、それらは、天然ピリミジンと競合して、DNA及び/又はRNA合成の防止及び細胞分裂の阻害をもたらす複製プロセスに関与する重大な酵素活性を阻害する。
【0007】
膵がんは、処置することが非常に困難な致死性のがんである。Siegel、RLら、CA Cancer J. Clin. (2015) 65: 5~29を参照されたい。膵がんの特有の態様には、7%未満の非常に低い5年生存率(同文献)、遅い提示、早期転移及び化学療法及び放射線照射に対する乏しい応答性が含まれる。Maitra A and Hruban RH、Annu Rev. Pathol. (2008) 3:157~188を参照されたい。現在まで、ゲムシタビンベースの化学療法(2',2'-ジフルオロ2'デオキシシチジン)は、膵がんの処置に関するゴールドスタンダードであるが、治療的介入の効果は、薬物耐性に起因して制限される。Oettle、Hら、JAMA (2013) 310: 1473~1481。
【0008】
5-フルオロウラシル(すなわち、5-FU、又はより具体的には、5-フルオロ-1H-ピリミジン-2,4-ジオン)は、多くのアジュバント化学療法的な医薬、例えば、Carac(登録商標)クリーム、Efudex(登録商標)、Fluoroplex(登録商標)、及びAdrucil(登録商標)に使用される周知のピリミジンアンタゴニストである。5-FUが、DNA生合成に必須なステップである、デオキシウリジン1リン酸(dUMP)からデオキシチミジン1リン酸(dTMP)へのメチル化を触媒する、重要な酵素、チミジル酸シンターゼ(TYMS又はTS)を標的とすることが、確立されている。Danenberg P. V.、Biochim. Biophys. Acta. (1977) 473(2):73~92。しかしながら、5-FUベースの治療が着実に改善しているにもかかわらず、5-FUベースの化学療法に対する患者応答率は、薬物耐性の発生に起因して、控えめなままである。Longley D. Bら、Apoptosis、Cell Signaling、and Human Diseases、(2007) p. 263~78。
【0009】
現存のがん治療は、依然として初期段階にあり、改善又は克服されるべき多くのハードルが依然として待ち受けている。例えば、5-FUが、種々のがんの処置にかなり効果的であるが、5-FUは、実質的に毒性があり、宿主に有害な副作用を誘発しうることが周知されている。miRNAに関して、これらの化合物は、投与される場合に、酵素分解に感受性となり、安定性が乏しくなることが知られている。そのうえ、腫瘍細胞は、一般的な治療剤、例えば、5-FU及びゲムシタビンに対して耐性を発生させることによってアポトーシス経路を回避することが知られている。Gottesman M. M.ら、Nature Reviews Cancer、(2002) 2(1):48~58を参照されたい。したがって、がんの処置のための、より効果的、安定で且つ毒性の低い医薬品に重大な利益が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0090636号
【特許文献2】国際PCT出願WO/1996/041809
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Bartel DP. Cell. (2009) 136(2):215~33
【非特許文献2】Ambros V. Nature. (2004) 431(7006):350~5
【非特許文献3】Croce、CM、Nat Rev Genet. (2009) 10:704~714
【非特許文献4】Hegde SRら、Expert review of gastroenterology & hepatology. (2008) 2(1):135~49
【非特許文献5】Siegel、RLら、CA Cancer J. Clin. (2015) 65: 5~29
【非特許文献6】Maitra A and Hruban RH、Annu Rev. Pathol. (2008) 3:157~188
【非特許文献7】Oettle、Hら、JAMA (2013) 310: 1473~1481
【非特許文献8】Danenberg P. V.、Biochim. Biophys. Acta. (1977) 473(2):73~92
【非特許文献9】Longley D. Bら、Apoptosis、Cell Signaling、and Human Diseases、(2007) p. 263~78
【非特許文献10】Gottesman M. M.ら、Nature Reviews Cancer、(2002) 2(1):48~58
【非特許文献11】J. Wuら、Cell Cycle、(2010) 9:9、1809~1818
【非特許文献12】Xie Tら、Clin Transl Oncol. (2015) 17(7):504~10
【非特許文献13】Acunzo M、and Croce CM、Clin. Chem. (2016) 62(4):655~6
【非特許文献14】Zhai、H.ら、Oncotarget. (2015) 6: 19735~46
【非特許文献15】Song、B.ら、Clin. Cancer Res. (2008)、14: 8080~8086
【非特許文献16】Song、B.ら、Mol. Cancer. (2010)、9:96 pp. 1476~4598
【非特許文献17】Zhai、Hら、Oncogene. (2013)、32:12 pp. 1570~1579
【非特許文献18】Li、J.ら、Oncotarget. (2016)、7:38 pp. 62778~62788
【非特許文献19】Li、J.ら、Oncogene. (2016) 35 pp. 5501~5514
【非特許文献20】C. M. Dunhamら、Nature Methods、(2007) 4(7)、pp. 547~548
【非特許文献21】"Remington's Pharmaceutical Sciences"、The Science and Practice of Pharmacy、19th Ed. Mack Publishing Company、Easton、Pa.、(1995)
【非特許文献22】R I Aqeilanら、Cell Death and Differentiation (2010) 17、pp. 215~220
【非特許文献23】Li、Jら、Oncogene. 35 pp. 5501~5514
【非特許文献24】Carreras et al、Annu. Rev. Biochem.、(1995) 64:721~762
【非特許文献25】S.A. Scaringe、F.E. Wincott、and M.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、120 (45)、11820~11821 (1998)
【非特許文献26】M.D. Matteucci、M.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、103、3185~3191 (1981)
【非特許文献27】S.L. Beaucage、M.H. Caruthers、Tetrahedron Lett. 22、1859~1862 (1981)
【発明の概要】
【0012】
本開示の要旨
本開示は、5-ハロウラシル塩基を組み込む核酸組成物(すなわち、マイクロRNA)が、抗がん剤として特別な有効性を有することを実証する。そのうえ、本明細書のデータは、本開示の修飾マイクロRNA組成物と細胞を接触させることにより、細胞周期進行並びにがん細胞増殖の低下及び化学療法剤の有効性の増加等による腫瘍形成の低下が制御されることを示す。本開示は、マイクロRNAのヌクレオチド配列内に5-ハロウラシル塩基を組み込むことにより、がん治療剤単独及び/又は天然マイクロRNAに対する、抗がん治療剤としてのマイクロRNA有効性が増加されるとの発見を前提にしている。
【0013】
したがって、本開示の一態様において、5-ハロウラシル、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)によって置き換えられている、少なくとも1つのウラシル塩基(U、U塩基)を有する修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を含む、核酸組成物が記載される。特定の実施形態において、修飾マイクロRNAは、5-ハロウラシルによって置き換えられている1を超える又は厳密に1つのウラシルを有する。いくつかの実施形態において、修飾マイクロRNAヌクレオチド配列には、5-ハロウラシルによって置き換えられている2、3、4、5、6、7、8つ又はそれ以上のウラシル塩基が含まれる。他の実施形態において、修飾mRNAの全てのウラシルヌクレオチド塩基は、5-ハロウラシルによって置き換えられている。
【0014】
いくつかの実施形態において、5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルである。特定の実施形態において、5-ハロウラシルは、5-フルオロウラシルである。
【0015】
特定の実施形態において、修飾マイクロRNAヌクレオチド配列には、1を超える5-ハロウラシルが含まれ、ここで、各々の5-ハロウラシルは同じである。他の実施形態において、修飾マイクロRNAヌクレオチド配列には、1を超える5-ハロウラシルが含まれ、ここで、各々の5-ハロウラシルは異なる。他の実施形態において、修飾マイクロRNAヌクレオチド配列には、2を超える5-ハロウラシルが含まれ、ここで、修飾マイクロRNAヌクレオチド配列には、異なる5-ハロウラシルの組合せが含まれる。
【0016】
本開示の例示的な実施形態において、少なくとも1つのウラシルヌクレオチド塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されているmiR-129ヌクレオチド配列を含有する核酸組成物が提供される。より具体的には、核酸組成物は、少なくとも以下の天然miR-129ヌクレオチド配列を含有する:CUUUUUGCGGUCUGGGCUUGC[配列番号1]、ここで、示される核酸配列中の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8又は全てのウラシル塩基又は示される配列に共有結合的に付属しうるものが、5-ハロウラシルによって置き換えられる。
【0017】
本開示の特定の実施形態において、修飾マイクロRNAは、CUFUFUFUFUFGCGGUFCUFGGGCUFUFGC[配列番号4]からなる核酸配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0018】
他の実施形態において、天然miR-129ヌクレオチド配列のシード部(GUUUUUGC)は、未修飾(すなわち、5-ハロウラシルを含まない)のままであるが、修飾miR-129ヌクレオチド配列の残部に残存するウラシルヌクレオチド塩基の1つ以上(又は全て)が、同等数の5-ハロウラシルによって置き換えられる。特定の実施形態において、本開示の修飾miR-129マイクロRNAは、CUUUUUGCGGUFCUFGGGCUFUFGC[配列番号5]からなる核酸配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0019】
いくつかの実施形態において、5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルである。特定の実施形態において、5-ハロウラシルは、5-フルオロウラシルである。
【0020】
本開示の別の実施形態において、少なくとも1つのウラシルヌクレオチド塩基を5-ハロウラシル、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)で置き換えることによって修飾されているmiR-15aヌクレオチド配列を含有する核酸組成物が提供される。具体的には、核酸組成物は、少なくとも以下の天然miR-15aヌクレオチド配列を含有する:UAGCAGCACAUAAUGGUUUGUG[配列番号2]、ここで、示される配列中の少なくとも1、2、3、4、5、6又は全てのウラシルヌクレオチド塩基又は示される配列に共有結合的に付属しうるものは、5-ハロウラシルである。
【0021】
本開示の特定の実施形態において、修飾miR-15aマイクロRNAは、UFAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号6]からなる核酸配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0022】
他の実施形態において、天然miR-15aヌクレオチド配列のシード部(UAGCAGCA)は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-15aヌクレオチド配列の残部(非シード部)に残存するウラシル塩基の1つ以上(又は全て)が、5-ハロウラシルによって置き換えられる。
【0023】
特定の実施形態において、修飾miR-129マイクロRNAは、UAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号7]からなる核酸配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0024】
別の例示的な実施形態において、本開示は、修飾されているmiR-140ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、天然miR-140ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0025】
1セットの実施形態において、天然miR-140核酸配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、天然miR-140ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルによって置き換えられる。別セットの実施形態において、miR-140ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、天然miR-140ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。いくつかの実施形態において、miR-140ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。更に他の実施形態において、miR-140ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-140ヌクレオチド配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0026】
例示的な実施形態において、本開示の修飾マイクロRNA核酸組成物は、CAGUFGGUUUUACCCUFAUGGUFAG[配列番号9]のヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0027】
別の例示的な実施形態において、本開示は、少なくとも1つのウラシル塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている修飾天然miR-192又はmiR-215ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、修飾miR-192ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-フルオロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0028】
別のセットの実施形態において、修飾miR-192ヌクレオチド配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、修飾miR-192ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、修飾miR-192ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、修飾miR-192又はmiR-215ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、核酸の天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、修飾miR-192又はmiR-215配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0029】
例示的な実施形態において、本開示の核酸組成物は、CUFGACCUFAUFGAAUFUFGACAGCC[配列番号11]の修飾miR-192又は修飾miR-215ヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0030】
別の例示的な実施形態において、本開示は、ウラシルを5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている修飾天然miR-502ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、修飾miR-502ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-フルオロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0031】
別のセットの実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、修飾miR-502ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも7つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-502ヌクレオチド配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0032】
例示的な実施形態において、本開示の修飾miR-502核酸組成物は、AUFCCUFUFGCUAUFCUFGGGUFGCUFA[配列番号13]の修飾ヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0033】
別の例示的な実施形態において、本開示は、5-ハロウラシルを含む修飾miR-506ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシル、例えば5-フルオロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0034】
別のセットの実施形態において、天然miR-506ヌクレオチド配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルによって置き換えられる。第2セットの実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも7つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、修飾miR-506ヌクレオチド配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0035】
例示的な実施形態において、本開示のmiR-506核酸組成物は、UFAUFUFCAGGAAGGUFGUFUFACUFUFAA[配列番号15]の修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0036】
いくつかの実施形態において、5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルである。特定の実施形態において、5-ハロウラシルは、5-フルオロウラシル、又はその組合せである。
【0037】
本開示は、本明細書に記載される修飾マイクロRNA組成物の製剤又はその組合せを含む製剤も対象とする。特定の実施形態において、製剤には、上述の核酸組成物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤が含まれうる。
【0038】
別の態様において、本開示は、対象に本明細書に記載される有効量の1つ以上の核酸組成物を投与する工程を含むがんを治療するための方法を対象とする。本方法の特定の実施形態において、核酸組成物には、修飾miR-129、miR-15a、miR-192、miR-215、miR-140、miR-502又はmiR-506ヌクレオチド配列が含まれ、ここで、天然(未修飾)ヌクレオチド配列中の少なくとも1、2、3、4、5、6つ又はそれ以上のウラシルヌクレオチド塩基が、5-ハロウラシルによって置き換えられている。特定の実施形態において、本方法には、がん又はがんに対する素因を有する対象に本開示の核酸組成物を投与する工程が含まれ、ここで、核酸組成物は、修飾miR-129又は修飾miR-15a核酸である。本開示の特定の実施形態において、投与される修飾マイクロRNAは、CUFUFUFUFUFGCGGUFCUFGGGCUFUFGC[配列番号4]、CUUUUUGCGGUFCUFGGGCUFUFGC[配列番号5]、UFAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号6]、UAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号7]、CAGUFGGUUUUACCCUFAUGGUFAG[配列番号9]、CUFGACCUFAUFGAAUFUFGACAGCC[配列番号1]、AUFCCUFUFGCUAUFCUFGGGUFGCUFA[配列番号13]、及びUFAUFUFCAGGAAGGUFGUFUFACUFUFAA[配列番号15]からなる群から選択される核酸配列を有する。
【0039】
特定の実施形態において、対象は、哺乳動物である。他の実施形態において、処置される対象は、ヒト、イヌ、ウマ、ブタ、マウス、又はラットである。特定の実施形態において、対象は、がんと診断されている又はがんを発症する素因を有すると識別されたヒトである。いくつかの実施形態において、処置されるがんは、例えば、結腸直腸、胃、食道、肺、卵巣、膵臓、又は子宮頚がんでありうる。特定の実施形態において、本開示の方法は、結腸直腸がん、膵がん又は乳がんの対象を処置する。
【0040】
驚くべきことに、本明細書に提供されるデータは、結腸直腸がん、膵臓がん、及び肺がんを含む、いくつかの異なるがんモデルにおける5-FU単独等の公知の抗がん剤と比較した場合に、本明細書に記載される修飾マイクロRNAの効力の増加を示す。例えば、本開示は、記載される修飾核酸組成物が、5-FU、miR-15a、miR-129、miR-140、miR-192、miR-215、miR-502若しくはmiR-506単独よりも、又は5-FU及び対応する天然マイクロRNAの組合せよりも、がん進行及び腫瘍形成の阻害において実質的により強力であるとの予想外の所見を提供する。
【0041】
そのため、本組成物及び方法は、より低度の投薬を許容するとの追加の利益を提供し、これにより、毒性がより低く及び副作用がより少なくなる。記載される核酸組成物によって呈される更に有意な利点は、即時調製組成物が、ハロウラシルで修飾されていないmiR-140、miR-192、miR-215、miR-502又はmiR-506配列と比較して有意に改善された有効性を有することである。したがって、少なくとも注目される観点で、本明細書に開示される核酸組成物は、がんの処置における実質的な進歩を示す。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1A】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(A)配列番号4に示される、全てのU塩基が、ハロウラシル(すなわち、U
F)によって置き換えられる、miR-129ヌクレオチド配列の化学的な表現。
【
図1B】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(B)配列番号5に示される、miR-129の非シード部のみが、ハロウラシルで置き換えられたU塩基を有する、miR-129の化学的な表現。
【
図1C】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(C)配列番号6に示される、全てのU塩基が、ハロウラシルで置き換えられる、miR-15aヌクレオチド配列の化学的な表現。
【
図1D】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(D)配列番号7に示される、miR-15aの非シード部のみが、ハロウラシルで置き換えられたU塩基を有する、miR-15aの化学的な表現。
【
図1E】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(E)配列番号9に示される、特定(3)のU塩基が、ハロウラシルによって置き換えられる、miR-140ヌクレオチド配列の化学的な表現。
【
図1F】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(F)配列番号11に示される、特定(5)のU塩基が、ハロウラシルによって置き換えられる、miR-192ヌクレオチド配列の化学的な表現。
【
図1G】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(G)配列番号13に示される、特定(7)のU塩基が、ハロウラシルによって置き換えられる、miR-502ヌクレオチド配列の化学的な表現。
【
図1H】本開示の例示的な修飾マイクロRNAヌクレオチド配列の化学的な表現。(H)配列番号15に示される、全て(すなわち、8)のU塩基が、ハロウラシルによって置き換えられる、miR-506ヌクレオチド配列の化学的な表現。
【
図2-1】例示的な修飾miR-129核酸は、がん細胞に入り、標的タンパク質発現を効果的に低下させる。(A)標的(E2F3)特異性並びに対照miRNA及び未修飾miR-129核酸と比較した修飾miR-129(全てのU塩基を5-FUで置き換えた、5-FU-miR-129)の能力を示すグラフである。
【
図2-2】例示的な修飾miR-129核酸は、がん細胞に入り、標的タンパク質発現を効果的に低下させる。(B)miR-129模倣体が、がん細胞に入ることを示す定量的リアルタイムPCR分析。(C)MiR-129模倣体は、がん細胞に入り、5-FU単独よりも有意に良好にTS-FdUMPを破壊する。
【化1】
)対照及び異所的に発現させた天然miR-129
【化2】
と比較した、全てが5-FUによって置き換えられたU塩基を有する例示的な修飾miR-129核酸(模倣体)
【化3】
による、4つの異なる結腸がん細胞株(HCT116、RKO、SW480及びSW620)における結腸がん細胞増殖の阻害を示すグラフである。
【
図4】本開示の5-FU及び修飾マイクロRNA組成物での併用療法は、がん細胞増殖を効果的に阻害する。陰性対照(NC)、天然miR-129、5-FU、本開示の例示的な修飾miR-129核酸模倣体(5-FU-miR-129)、及び5-FU及び本開示の例示的なmiR-129模倣体の組合せ(5-FU-miR-129+5-FU)で処置されたがん細胞に関する結腸がん細胞増殖のグラフ比較。
【
図5】例示的なマイクロRNA模倣体は、結腸がん細胞にアポトーシスを誘導し、細胞周期アレストの原因となる。(A)本開示の修飾miR-129核酸組成物が、陰性対照又はいくつかの異なる結腸直腸がん細胞株中で異所的に発現させた天然miR-129よりも有意に高いレベルでがん細胞アポトーシスを誘導することを示すため、FITC-アネキシンVアポトーシスアッセイによって細胞死が定量化された。(B)本開示の修飾miR-129核酸組成物(模倣体-1)が、陰性対照又は異所的に発現させた天然miR-129よりも有意に高いレベルでG1細胞周期アレストを増加させることを明らかにするため、フローサイトメトリーが行われた。
【
図6】本開示の修飾マイクロRNA核酸組成物は、化学療法耐性がん幹細胞を排除する。HCT116由来結腸がん幹細胞を、漸増濃度の本開示の例示的な修飾miR-129核酸
【化4】
又は5-FU
【化5】
で処置した。結果は、修飾miR-129核酸が、用量依存的様式で5-FU耐性がん幹細胞を殺傷したことを示す。
【
図7】例示的な修飾miR-129核酸組成物でのインビボ全身処置は、毒性副作用なく結腸がん転移を阻害する。結腸がん転移マウスモデルは、転移性ヒト結腸がん細胞の尾静脈注射を介して確立された。転移の確立の2週後、配列番号4に示される、40μgの修飾miR-129核酸組成物を、2週間隔日に1回の処置頻度の注射での静脈内注射で送達した。例示的な修飾miR-129核酸(模倣体)は、結腸がん転移(右のパネル)を阻害できたが、陰性対照miRNA(左のパネル)は、無効であった。修飾miR-129核酸で処置されたマウスは、毒性を呈さなかった。
【
図8A】本開示の第2の例示的な修飾マイクロRNAの抗がん活性。(A)結腸がん細胞におけるタンパク質発現をモジュレートする未修飾miR-15a(miR-15a)及び修飾miR-15a核酸組成物(模倣体-1)の能力を比較する代表的なウエスタンブロット。配列番号6(模倣体-1)に示される、修飾miR-15aは、miR-15a標的(YAP1、BMI-1、DCLK1及びECL2)を制御する能力を保持し、結腸直腸がん細胞においてTS-FdUMPを破壊する。
【
図8B】本開示の第2の例示的な修飾マイクロRNAの抗がん活性。(B)修飾miR-15a(模倣体-1)は、未修飾miR-15a(miR-15a)と比較した3種の異なる結腸直腸がん細胞株(HCT116、RKO、SW620)における結腸がん細胞増殖を阻害する能力の増強を示す。
【
図9】対照(陰性)、未修飾miR-15a(miR-15a)及び配列番号6(模倣体-1)に示される例示的な修飾miR-15a核酸組成物に関する細胞周期制御を示すグラフである。修飾miR-15a核酸の投与は、天然miR-15aを異所的に発現する細胞及び陰性対照と比較した場合、修飾miR-15aを発現する結腸直腸がん細胞によって呈される増加したG1/S比によって示されるように、未修飾miR-15aと比較して細胞周期アレストを誘導する。
【
図10】修飾miR-15a発現は、がん細胞コロニー形成を誘導するがん幹細胞の能力を低下させる。非特異的な対照マイクロRNA(陰性)を供給されたがん幹細胞の能力と比較した場合、結腸がん幹細胞において、未修飾miR-15a(miR-15a)の発現は、がん細胞コロニー形成を阻害した。本開示の例示的な修飾miR-15a(5-FU-miR-15a)での処置により、がん細胞コロニー形成が完全に防止された。
【
図11】修飾miR-15aは、インビボで有効な抗がん剤である。結腸がん転移マウスモデルは、転移性ヒト結腸がん細胞の尾静脈注射を介して確立された。転移の確立の2週後、配列番号6に示される、40μgの修飾miR-15a核酸組成物を、2週間隔日に1回の処置頻度の注射での静脈内注射で送達した。例示的な修飾miR-15a核酸(模倣体)は、結腸がん転移を阻害できたが、陰性対照miRNA(陰性)は、無効であった。修飾miR-15a核酸で処置されたマウスは、毒性を呈さなかった。
【
図12-1】本開示の例示的な修飾miR-15a及びmiR-129模倣体は、未修飾miR-15a(miR-15a)又は未修飾miR-129(miR-129)又は陰性対照で処置した細胞と比較して、膵がん(Panc-1(A);AsPC-1(B))細胞増殖を阻害する能力の増強を呈する。
【
図12-2】本開示の例示的な修飾miR-15a及びmiR-129模倣体は、未修飾miR-15a(miR-15a)又は未修飾miR-129(miR-129)又は陰性対照で処置した細胞と比較して、ヒト乳がん(A549;C,D)細胞増殖を阻害する能力の増強を呈する。
【
図13】本開示の例示的な修飾マイクロRNAは、ヒト結腸直腸がん細胞増殖を阻害する能力の増強を呈する。追加の例示的な修飾マイクロRNAを、HCT116ヒト結腸直腸がん細胞における結腸直腸がん細胞増殖を阻害する能力について試験した。(A)配列番号9に示される例示的な修飾miR-140模倣体を、ヒト結腸直腸がん細胞に投与したところ、陰性対照マイクロRNAと比較した場合に、結腸直腸がん細胞増殖を阻害する能力を増強することが明らかにされた。(B)配列番号11に示される例示的な修飾miR-192模倣体を、ヒト結腸直腸がん細胞に投与したところ、陰性対照マイクロRNAと比較した場合に、結腸直腸がん細胞増殖を阻害する能力を増強することが明らかにされた。
【
図14-1】本開示の例示的な修飾マイクロRNAは、ヒト膵臓及び乳がん細胞増殖を阻害する能力の増強を呈する。追加の例示的な修飾マイクロRNAを、がん細胞増殖におけるそれらの影響を実験することによって、ヒトがんの異なるタイプを阻害する能力について試験した。配列番号13に示される例示的な修飾miR-502模倣体を、ヒト膵がん細胞(PANC1、A)に投与したところ、陰性対照マイクロRNAと比較した場合に、がん細胞増殖を阻害する能力を増強することが明らかにされた。更に別の例示的な修飾マイクロRNAである、配列番号15に示されるmiR-506模倣体を、ヒト膵がん細胞(PANC1、B)に投与したところ、陰性対照マイクロRNAと比較した場合に、がん細胞増殖を阻害する能力を増強することが明らかにされた。
【
図14-2】本開示の例示的な修飾マイクロRNAは、ヒト膵臓及び乳がん細胞増殖を阻害する能力の増強を呈する。追加の例示的な修飾マイクロRNAを、がん細胞増殖におけるそれらの影響を実験することによって、ヒトがんの異なるタイプを阻害する能力について試験した。配列番号13に示される例示的な修飾miR-502模倣体を、ヒト乳がん(A549、C)に投与したところ、陰性対照マイクロRNAと比較した場合に、がん細胞増殖を阻害する能力を増強することが明らかにされた。更に別の例示的な修飾マイクロRNAである、配列番号15に示されるmiR-506模倣体を、ヒト乳がん(A549、D)に投与したところ、陰性対照マイクロRNAと比較した場合に、がん細胞増殖を阻害する能力を増強することが明らかにされた。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示の詳細な説明
本開示は、1つ以上のハロウラシル分子を組み込まれた核酸組成物を提供する。何らかの1つの特定の理論に拘束されるものではないが、驚くべきことに、本開示は、マイクロRNAオリゴヌクレオチド配列内のウラシルヌクレオチドの5-ハロウラシルでの置き換えが、がん発症、がん進行及び腫瘍形成の能力を増加させることを明らかにしている。そのため、本開示は、核酸配列に組み込まれた5-ハロウラシル分子を有する様々な核酸(例えば、マイクロRNA)組成物及びそれを使用する方法を提供する。本開示は、修飾核酸組成物を含む医薬組成物等の製剤及びそれを必要とする対象にそれを投与する工程を含むがんを処置する方法を更に提供する。
【0044】
核酸組成物。
用語「マイクロRNA」又は「miRNA」又は「miR」は、互換的に使用され、メッセンジャーRNA分子(mRNA)、DNA又はタンパク質との相互作用により遺伝子の発現を制御する能力があるスモール非コードリボース核酸(RNA)分子を指す。典型的には、マイクロRNAは、約19~25ヌクレオチド(塩基)の核酸配列から構成され、哺乳動物細胞において見出される。
【0045】
用語「修飾マイクロRNA」、「修飾miRNA」、「修飾miR」又は「模倣体」は、本明細書に互換的に使用され、天然又は内因性マイクロRNA(未修飾マイクロRNA)ポリヌクレオチドと異なるマイクロRNAを指す。より具体的には、本開示において、修飾マイクロRNAは、1つ以上の塩基により不変又は未修飾マイクロRNA核酸配列と異なる。本開示のいくつかの実施形態において、本開示の修飾マイクロRNAには、5-ハロウラシルによって置き換えられた少なくとも1つのウラシル(U)ヌクレオチド塩基が含まれる。他の実施形態において、修飾マイクロRNAには、追加のヌクレオチド(すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、ウラシル(U)、及びグアニン(G))及び5-ハロウラシルで置換された少なくとも1つのウラシル塩基が含まれる。
【0046】
本開示の一態様において、5-ハロウラシル、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)で置き換えられている、少なくとも1つのウラシル塩基(U、U塩基)を有する修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を含む、核酸組成物が記載される。本明細書において更に論じられるように、本開示の核酸組成物は、がん、特に結腸直腸がん、膵臓がん及び乳房がんの処置において、少なくとも、有用である。
【0047】
いくつかの実施形態において、核酸組成物は、5位でハロゲン原子に類似する効果を提供する基で少なくとも1つのウラシル核酸塩基を誘導体化することによって修飾されているヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態において、類似する効果を提供する基は、20、30、40、50、60、70、80、90、又は80g/molまで又はそれ未満の分子量等のハロゲン原子に対する質量又は空間的な容積において類似するサイズを有する。特定の実施形態において、ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、例えば、メチル基、トリハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)基、擬ハロゲン化物(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩、シアノ、又はシアン酸)又は重水素(D)原子であってもよい。ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、マイクロRNAヌクレオチド配列における5-ハロウラシル塩基の非存在下で又はそれに付加して存在してもよい。
【0048】
そのうえ、他の実施形態において、ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、当業者によって容易に識別される、マイクロRNAヌクレオチド配列の天然(又はシード)部及び/又は付属部に位置していてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の(又は全て)の上記のタイプのハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、修飾miRNAヌクレオチド配列から除かれる。全てのそのような代替基が除かれる場合、1つ以上のハロゲン原子だけが、マイクロRNAヌクレオチド配列中の1つ以上のウラシル基の5位における置換基として存在する。
【0049】
特定の実施形態において、修飾マイクロRNAは、5-ハロウラシルで置き換えられている1を超える又は厳密に1つのウラシルを有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、修飾マイクロRNAヌクレオチド配列には、5-ハロウラシルで置き換えられている3、4、5、6、7、8つ又はそれ以上のウラシル塩基が含まれる。
【0051】
他の実施形態において、修飾mRNAの全てのウラシルヌクレオチド塩基は、5-ハロウラシルによって置き換えられている。
【0052】
いくつかの実施形態において、5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルである。特定の実施形態において、5-ハロウラシルは、5-フルオロウラシルである。
【0053】
本明細書で使用される用語「miR-129」は、用語「マイクロRNA-129」又は「miRNA-129」と同義であることが意図され、以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す:CUUUUUGCGGUCUGGGCUUGC[配列番号1]、ここで、C=シトシン、U=ウラシル、及びG=グアニン塩基であると理解される。前述のヌクレオチド配列は、別の特定がない限り、本明細書において、未修飾miR-129(すなわち、「天然」)配列と呼ばれる。MiR-129は、当分野において、hsa-miR-129又はhsa-miR-129-5p(受託番号MI0000252及びMIMAT0000242)とも呼ばれうる。MiR-129は、周知されており、詳細に研究されている。例えば、J. Wuら、Cell Cycle、(2010) 9:9、1809~1818を参照されたい。当技術分野において周知されているように、miR-129配列は、「miR-129模倣体」を産生するため修飾されてもよく、これは、天然配列から修飾された配列を有するが、天然miR-129の公知の機能又は活性を保持する。別の記載がない限り、全てのそのような修飾miR-129組成物は、本明細書において、本明細書で使用される用語「miR-129模倣体」の範囲内であると考えられる。
【0054】
対象の特定の修飾miR-129核酸配列(模倣体)は、miR-129天然配列、例えば、CUUUUUGCGGUCUGGGCUUGC-UU[配列番号3]の端に共有結合的に付属される2つのU塩基(すなわち、2つのU含有ヌクレオチド)を含有する。前述の配列において、2つの末端U塩基は、継続する又はmiR-129天然配列を21ヌクレオチド塩基から23ヌクレオチド塩基に延長する。一般に、miR-129模倣体は、miR-129天然配列に共有結合的に付属される1、2、3、4、又は5つ以下の追加の塩基(すなわち、追加のヌクレオチド)を含有し、ここで、追加の塩基はC、U、G、及びCから独立に選択される又は追加の塩基は排他的にUであってもよい。典型的には、miR-129は、単一鎖形態で使用されるが、2本鎖バージョンも本明細書において考えられる。
【0055】
一実施形態において、本開示は、少なくとも1つのウラシル核酸塩基(すなわち、U塩基)を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されているmiR-129ヌクレオチド配列を含有する核酸組成物を対象とし、すなわち、ここで、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-129配列中の少なくとも1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルであってもよい。
【0056】
第1セットの実施形態において、miR-129配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-129配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第3セットの実施形態において、miR-129配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第4セットの実施形態において、miR-129配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第5セットの実施形態において、miR-129配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第6セットの実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-129配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0057】
特定の実施形態において、本開示の核酸組成物は、配列番号4に示されるCUFUFUFUFUFGCGGUFCUFGGGCUFUFGCの修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0058】
miR-129配列中で5-ハロウラシルで置き換えられるU塩基は、上に提供されたような、miR-129配列の未修飾部分に位置してもよく、又はmiR-129模倣体のケースでは、同様に上に提供されたような、天然miR-129に共有結合的に付属される1つ以上のU塩基に位置してもよい。他の実施形態において、天然miR-129ヌクレオチド配列のシード部(GUUUUUGC)は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-129ヌクレオチド配列の残部に残存するU塩基の1つ以上(又は全て)が、同等数の5-ハロウラシルで置き換えられる。
【0059】
例えば、特定の実施形態において、本開示の核酸組成物は、配列番号5に示されるCUUUUUGCGGUFCUFGGGCUFUFGCの修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0060】
代替の実施形態において、核酸組成物は、5位でハロゲン原子に類似する効果を提供する基で少なくとも1つのウラシル(U)核酸塩基を誘導体化することによって修飾されているmiR-129ヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態において、類似する効果を提供する基は、20、30、40、50、60、70、80、90、又は80g/molまで又はそれ未満の分子量等のハロゲン原子に対する質量又は空間的な容積において類似するサイズを有する。ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、例えば、メチル基、トリハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)基、擬ハロゲン化物(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩、シアノ、又はシアン酸)又は重水素(D)原子であってもよい。ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、miR-129ヌクレオチド配列における5-ハロウラシル塩基の非存在下で又はそれに付加して存在してもよい。そのうえ、ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、miR-129ヌクレオチド配列の天然(又はシード)部中及び/又は付属部中に位置してもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の(又は全て)の上記のタイプのハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、miR-129ヌクレオチド配列から除かれる。全てのそのような代替基が除かれる場合、1つ以上のハロゲン原子だけが、miR-129ヌクレオチド配列中の1つ以上のウラシル基の5位における置換基として存在する。
【0061】
別の例示的な実施形態において、本開示は、修飾されているmiR-15aヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、miR-15aヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0062】
本明細書で使用される用語「miR-15a」は、用語「マイクロRNA-15a」又は「miRNA-15a」と同義であることが意図され、以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す: UAGCAGCACAUAAUGGUUUGUG[配列番号2]、ここで、A=アデニン、C=シトシン、U=ウラシル、及びG=グアニン塩基であると理解される。前述のヌクレオチド配列は、別の特定がない限り、本明細書において、miR-15a未修飾(すなわち、「天然」)配列と呼ばれる。MiR-15aは、当分野において、hsa-miR-15a又はhsa-miR-15a-5p(受託番号MI0000069)とも呼ばれうる。MiR-15aは、周知されており、詳細に研究されている、例えば、Xie Tら、Clin Transl Oncol. (2015) 17(7):504~10;及びAcunzo M、and Croce CM、Clin. Chem. (2016) 62(4):655~6。miR-129模倣体について上に記載のように、miR-15a模倣体を作出する方法は、当業者に知られている。別の記載がない限り、全てのそのような修飾miR-15a形態は、本明細書において、本明細書で使用される用語「miR-15a模倣体」の範囲内であると考えられる。
【0063】
一般に、修飾miR-15a(すなわち、miR-15a模倣体)は、miR-15a天然配列に共有結合的に付属される1、2、3、4、又は5つ以下の追加のヌクレオチドを含有し、ここで、追加の塩基はC、U、G、及びCから独立に選択される又は追加の塩基は排他的にUであってもよい。典型的には、miR-15aは、単一鎖形態で使用されるが、2本鎖バージョンも本明細書において考えられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-15a配列中の少なくとも1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルであってもよい。
【0065】
1セットの実施形態において、miR-15a配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-15a配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、miR-15aオリゴヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-15a配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。いくつかの実施形態において、miR-15a配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。更に他の実施形態において、miR-15a配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-15a配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0066】
一実施形態において、本開示の核酸組成物は、UFAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号6]の修飾マイクロRNAヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0067】
miR-15a配列中で5-ハロウラシルで置き換えられるU塩基は、上に提供されたような、miR-15a配列の未修飾部分に位置してもよく、又はmiR-15a模倣体のケースでは、同様に上に提供されたような、天然miR-15aに付属される1つ以上のウラシル塩基に位置してもよい。
【0068】
他の実施形態において、天然miR-15aヌクレオチド配列のシード部(UAGCAGCA)は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-15aヌクレオチド配列の残部(非シード部)に残存するU塩基の1つ以上(又は全て)が、5-ハロウラシルで置き換えられる。
【0069】
特定の実施形態において、本開示の核酸組成物は、UAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号7]の修飾miR-15aヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0070】
特定の実施形態において、核酸組成物は、5位でハロゲン原子に類似する効果を提供する基で少なくとも1つのウラシル(U)核酸塩基を誘導体化することによって修飾されているmiR-15aヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態において、類似する効果を提供する基は、20、30、40、50、60、70、80、90、又は80g/molまで又はそれ未満の分子量等のハロゲン原子に対する質量又は空間的な容積において類似するサイズを有する。ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、例えば、メチル基、トリハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)基、擬ハロゲン化物(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩、シアノ、又はシアン酸)又は重水素(D)原子であってもよい。ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、miR-15aヌクレオチド配列における5-ハロウラシル塩基の非存在下で又はそれに付加して存在してもよい。そのうえ、ハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、miR-15aヌクレオチド配列の天然(又はシード)部中及び/又は付属部中に位置してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、1つ以上の(又は全て)の上記のタイプのハロゲン原子に類似する効果を提供する基は、miR-15aヌクレオチド配列から除かれる。全てのそのような代替基が除かれる場合、1つ以上のハロゲン原子だけが、miR-15aヌクレオチド配列中の1つ以上のウラシル基の5位における置換基として存在する。
【0072】
別の例示的な実施形態において、本開示は、修飾されているmiR-140ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、miR-140ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0073】
本明細書で使用される用語「miR-140」は、用語「マイクロRNA-140」又は「miRNA-140」と同義であることが意図され、以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す:CAGUGGUUUUACCCUAUGGUAG[配列番号8]、ここで、A=アデニン、C=シトシン、U=ウラシル、及びG=グアニン塩基であると理解される。前述のヌクレオチド配列は、別の特定がない限り、本明細書において、miR-140未修飾(すなわち、「天然」)配列と呼ばれる。MiR-140は、受託番号NT_010498によって又はmiRBase受託番号MI0000456によっても呼ばれうる。MiR-140は、周知されており、詳細に研究されている、例えば、Zhai、H.ら、Oncotarget. (2015) 6: 19735~46。例示的な模倣体miR-129及びmiR-15aについて上に記載のように、miR-140模倣体を作出する方法は、当業者に知られている。別の記載がない限り、全てのそのような修飾miR-140形態は、本明細書において、本明細書で使用される用語「miR-140模倣体」の範囲内であると考えられる。
【0074】
一般に、修飾miR-140核酸(すなわち、miR-140模倣体)は、miR-140天然配列に共有結合的に付属される1、2、3、4、又は5つ以下の追加のヌクレオチドを含有し、ここで、追加の塩基はC、U、G、及びCから独立に選択される又は追加の塩基は排他的にUであってもよい。典型的には、miR-140模倣体は、単一鎖形態で使用されるが、2本鎖バージョンも本明細書において考えられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-140配列中の少なくとも1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルであってもよい。
【0076】
1セットの実施形態において、miR-140模倣体配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-140配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、miR-140オリゴヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-140配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。いくつかの実施形態において、miR-140模倣体配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。更に他の実施形態において、miR-140模倣体配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-140配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0077】
例示的な実施形態において、本開示の核酸組成物は、CAGUFGGUUUUACCCUFAUGGUFAG[配列番号9]の修飾miR-140ヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0078】
miR-140模倣体配列中で5-ハロウラシルで置き換えられるU塩基は、上に提供されたような、miR-140配列の未修飾部分に位置してもよく、又は上に提供されたような、天然miR-140に付属される1つ以上のウラシル塩基に位置してもよい。
【0079】
他の実施形態において、天然miR-140ヌクレオチド配列のシード部は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-140ヌクレオチド配列の残部(非シード部)に残存するU塩基の1つ以上(又は全て)が、5-ハロウラシルで置き換えられる。
【0080】
別の例示的な実施形態において、本開示は、修飾されているmiR-192ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、miR-192ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0081】
本明細書で使用される用語「miR-192」は、用語「マイクロRNA-192」、「miRNA-192」「マイクロRNA-215」、「miR-215」又は「miRNA-215」と同義であることが意図され、以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す:CUGACCUAUGAAUUGACAGCC[配列番号10]、ここで、A=アデニン、C=シトシン、U=ウラシル、及びG=グアニン塩基であると理解される。前述のヌクレオチド配列は、別の特定がない限り、本明細書において、miR-192未修飾(すなわち、「天然」)配列と呼ばれる。MiR-192は、hsa-mir-192、has-mir-215又はmiRBase受託番号によってMI0000234若しくはMIMAT0000222とも呼ばれうる。MiR-192は、周知されており、詳細に研究されている、例えば、Song、B.ら、Clin. Cancer Res. (2008)、14: 8080~8086、及びSong、B.ら、Mol. Cancer. (2010)、9:96 pp. 1476~4598。例示的な模倣体miR-129、miR-140及びmiR-15aについて上に記載のように、miR-192模倣体を作出する方法は、当業者に知られている。別の記載がない限り、全てのそのような修飾miR-192核酸形態は、本明細書において、本明細書で使用される用語「miR-192模倣体」の範囲内であると考えられる。
【0082】
一般に、修飾miR-192(すなわち、miR-192模倣体)は、miR-192天然配列に共有結合的に付属される1、2、3、4、又は5つ以下の追加のヌクレオチドを含有し、ここで、追加の塩基はC、U、G、及びCから独立に選択される又は追加の塩基は排他的にUであってもよい。典型的には、miR-192模倣体は、単一鎖形態で使用されるが、2本鎖バージョンも本明細書において考えられる。
【0083】
いくつかの実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-192又はmiR-215配列中の少なくとも1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルであってもよい。
【0084】
別のセットの実施形態において、miR-192模倣体配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-192配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、miR-192オリゴヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-192配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-192配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0085】
例示的な実施形態において、本開示の核酸組成物は、CUFGACCUFAUFGAAUFUFGACAGCC[配列番号11]の修飾miR-192ヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0086】
miR-192模倣体配列中で5-ハロウラシルで置き換えられるU塩基は、上に提供されたような、miR-192配列の未修飾部分に位置してもよく、又は上に提供されたような、天然miR-192に付属される1つ以上のウラシル塩基に位置してもよい。
【0087】
他の実施形態において、天然miR-192ヌクレオチド配列のシード部は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-192ヌクレオチド配列の残部(非シード部)に残存するU塩基の1つ以上(又は全て)が、5-ハロウラシル又はその組合せで置き換えられる。
【0088】
別の例示的な実施形態において、本開示は、修飾されているmiR-502ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、miR-502ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0089】
本明細書で使用される用語「miR-502」は、用語「マイクロRNA-502」又は「miRNA-502」と同義であることが意図され、以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す:AUCCUUGCUAUCUGGGUGCUA[配列番号12]、ここで、A=アデニン、C=シトシン、U=ウラシル、及びG=グアニン塩基であると理解される。前述のヌクレオチド配列は、別の特定がない限り、本明細書において、miR-502未修飾(すなわち、「天然」)配列と呼ばれる。MiR-502は、hsa-mir-502又はmiRBase受託番号によってMI0003186若しくはMIMAT0002873とも呼ばれうる。MiR-502は、周知されており、詳細に研究されている、例えば、Zhai、Hら、Oncogene. (2013)、32:12 pp. 1570~1579。例示的な模倣体miR-129、miR-140、miR-192及びmiR-15aについて上に記載のように、miR-502模倣体を作出する方法は、当業者に知られている。別の記載がない限り、全てのそのような修飾miR-502核酸形態は、本明細書において、本明細書で使用される用語「miR-502模倣体」の範囲内であると考えられる。
【0090】
一般に、修飾miR-502(すなわち、miR-502模倣体)は、miR-502天然配列に共有結合的に付属される1、2、3、4、又は5つ以下の追加のヌクレオチドを含有し、ここで、追加の塩基はC、U、G、及びCから独立に選択される又は追加の塩基は排他的にUであってもよい。典型的には、miR-502模倣体は、単一鎖形態で使用されるが、2本鎖バージョンも本明細書において考えられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-502配列中の少なくとも1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルであってもよい。
【0092】
別のセットの実施形態において、miR-502模倣体配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-502配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、miR-502オリゴヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-502配列中の正確に又は少なくとも7つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-502配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0093】
例示的な実施形態において、本開示の核酸組成物は、AUFCCUFUFGCUAUFCUFGGGUFGCUFA[配列番号13]の修飾miR-502ヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0094】
miR-502模倣体配列中で5-ハロウラシルによって置き換えられるU塩基は、上に提供されたような、miR-502配列の未修飾部分に位置してもよく、又は上に提供されたような、天然miR-502に付属される1つ以上のウラシル塩基に位置してもよい。
【0095】
他の実施形態において、天然miR-502ヌクレオチド配列のシード部は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-502ヌクレオチド配列の残部(非シード部)に残存するU塩基の1つ以上(又は全て)が、5-ハロウラシル又はその組合せによって置き換えられる。
【0096】
別の例示的な実施形態において、本開示は、修飾されているmiR-506ヌクレオチド配列を含む核酸組成物を対象とする。いくつかの実施形態において、miR-506ヌクレオチド配列は、少なくとも1つのU塩基を5-ハロウラシルで置き換えることによって修飾されている。
【0097】
本明細書で使用される用語「miR-506」は、用語「マイクロRNA-506」又は「miRNA-506」と同義であることが意図され、以下のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す:UAUUCAGGAAGGUGUUACUUAA[配列番号14]、ここで、A=アデニン、C=シトシン、U=ウラシル、及びG=グアニン塩基であると理解される。前述のヌクレオチド配列は、別の特定がない限り、本明細書において、miR-506未修飾(すなわち、「天然」)配列と呼ばれる。MiR-506は、hsa-mir-506又はmiRBase受託番号によってMI0003193若しくはMIMAT0022701とも呼ばれうる。MiR-506は、周知されており、詳細に研究されている、例えば、Li、J.ら、Oncotarget. (2016)、7:38 pp. 62778~62788、及びLi、J.ら、Oncogene. (2016) 35 pp. 5501~5514。例示的な模倣体miR-129、miR-140、miR-502、miR-192及びmiR-15aについて上に記載のように、miR-506模倣体を作出する方法は、当業者に知られている。別の記載がない限り、全てのそのような修飾miR-506核酸形態は、本明細書において、本明細書で使用される用語「miR-506模倣体」の範囲内であると考えられる。
【0098】
一般に、修飾miR-506(すなわち、miR-506模倣体)は、miR-506天然配列に共有結合的に付属される1、2、3、4、又は5つ以下の追加のヌクレオチドを含有し、ここで、追加の塩基はC、U、G、及びCから独立に選択される又は追加の塩基は排他的にUであってもよい。典型的には、miR-506模倣体は、単一鎖形態で使用されるが、2本鎖バージョンも本明細書において考えられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-506配列中の少なくとも1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル、又は5-ヨードウラシルであってもよい。
【0100】
別のセットの実施形態において、miR-506模倣体配列中の正確に1つのU塩基は、5-ハロウラシルである。第2セットの実施形態において、miR-506配列中の正確に又は少なくとも2つのU塩基は、5-ハロウラシルである。別セットの実施形態において、miR-506オリゴヌクレオチド配列中の正確に又は少なくとも3つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-506配列中の正確に又は少なくとも4つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-506配列中の正確に又は少なくとも5つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-506配列中の正確に又は少なくとも6つのU塩基は、5-ハロウラシルである。他の実施形態において、miR-506配列中の正確に又は少なくとも7つのU塩基は、5-ハロウラシルである。特定の実施形態において、天然中であろうと及び/又は付属部中であろうと、miR-506配列中の全てのU塩基は、5-ハロウラシルである。
【0101】
例示的な実施形態において、本開示の核酸組成物は、UFAUFUFCAGGAAGGUFGUFUFACUFUFAA [配列番号15]の修飾miR-506ヌクレオチド配列を有し、ここで、UFは、ハロウラシル、具体的には、5-フルオロウラシルである。
【0102】
miR-506模倣体配列中で5-ハロウラシルで置き換えられるU塩基は、上に提供されたような、miR-506配列の未修飾部分に位置してもよく、又は上に提供されたような、天然miR-506に付属される1つ以上のウラシル塩基に位置してもよい。
【0103】
他の実施形態において、天然miR-506ヌクレオチド配列のシード部は、5-ハロウラシルで未修飾のままであるが、miR-506ヌクレオチド配列の残部(非シード部)に残存するU塩基の1つ以上(又は全て)が、5-ハロウラシル又はその組合せで置き換えられる。
【0104】
本明細書に記載される修飾マイクロRNA核酸組成物は、核酸を合成するための周知の方法のいずれかを使用して合成されうる。特定の実施態様において、核酸組成物は、自動化オリゴヌクレオチド合成、例えば、ホスホラミダイト化学を使用する周知のプロセスのいずれかによって製造される。修飾miR配列(例えば、miR-15a配列、miR-140配列、miR-192配列、miR-502配列、miR-506配列又はmiR-129配列)に1つ以上の5-ハロウラシル塩基を導入するため、5-ハロウラシルヌクレオシドホスホラミダイトが、核酸配列に含まれる天然塩基(例えば、A、U、G、及びC)を含有するヌクレオシドのホスホラミダイト誘導体と共に、前駆体塩基として含まれうる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸組成物は、生合成、例えば、プラスミド、PCR断片、若しくは合成DNAテンプレートからのインビトロRNA転写を使用することによって又は組換え(インビボ)RNA発現法を使用することによって製造されうる。例えば、C. M. Dunhamら、Nature Methods、(2007) 4(7)、pp. 547~548を参照されたい。マイクロRNA配列(例えば、miR-15a配列、miR-140配列、miR-192配列、miR-502配列、miR-506配列又はmiR-129配列)は、例えば、当技術分野において周知の技術により、ポリエチレングリコール(PEG)又は炭化水素又はターゲティング因子、特にがん細胞ターゲティング因子、例えば葉酸で官能性をもたせることによって、更に化学的に修飾されてもよい。そのような基を含ませるために、所望の官能基を付属させるのに使用することができる反応性基(例えば、アミノ、アルデヒド、チオール、又はカルボキシレート基)は、オリゴヌクレオチド配列に最初に含ませてもよい。そのような反応性又は官能基は、製造された核酸配列に組み込まれてもよいが、反応性又は官能基は、非ヌクレオシドホスホラミダイト含有反応性基又は反応性前駆体基が含まれる、自動化オリゴヌクレオチド合成を使用することによって、より容易に含ませうる。
【0106】
修飾核酸製剤
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される修飾核酸組成物の製剤を対象とする。例えば、本核酸組成物は、薬学的用途のため製剤化されうる。特定の実施形態において、製剤は、本明細書に記載される核酸組成物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物である。他の実施形態において、本開示の製剤は、修飾miR-129核酸、修飾miR-15a核酸、修飾miR-140核酸、修飾miR-192核酸、修飾miR-502、修飾miR-506核酸又はその組合せ及び薬学的に許容される担体を含む。より具体的には、以下のヌクレオチド配列に示される修飾マイクロRNA核酸は、薬学的適用及び使用のため製剤化されうる;CUFUFUFUFUFGCGGUFCUFGGGCUFUFGC[配列番号4]、CUUUUUGCGGUFCUFGGGCUFUFGC[配列番号5]、UFAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号6]、UAGCAGCACAUFAAUFGGUFUFUFGUFG[配列番号7]、CAGUFGGUUUUACCCUFAUGGUFAG[配列番号9]、CUFGACCUFAUFGAAUFUFGACAGCC[配列番号1]、AUFCCUFUFGCUAUFCUFGGGUFGCUFA[配列番号13]、及びUFAUFUFCAGGAAGGUFGUFUFACUFUFAA[配列番号15]。
【0107】
用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される希釈剤、ビヒクル、又は賦形剤と同義であるように本明細書に使用される。医薬組成物のタイプ及び意図される投与の様式に応じて、核酸組成物は、薬学的に許容される担体中に溶解又は懸濁(例えば、エマルジョンとして)されうる。薬学的に許容される担体は、対象の組織と接触して使用するため適切な医学的な判断から発する範囲内である、液体若しくは固体化合物、材料、組成物、及び/又は剤形のいずれかのものであってもよい。担体は、それが提供される対象に対して傷害性ではないという意味で「許容される」べきであり、製剤の他の成分と適合性である、すなわち、それらの生物学的又は化学的な機能を変化させない。
【0108】
薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの非限定的な例には:糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテート;ゼラチン;タルク;ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;グリコール、例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤;水;等張性生理食塩水;pH緩衝溶液;及び医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合物質が含まれる。薬学的に許容される担体には、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウム又は亜鉛、又はステアリン酸)、溶媒、又は封入材も含まれうる。所望であれば、特定の甘味及び/又は矯味及び/又は発色剤が添加されうる。他の適切な賦形剤は、標準的な薬学のテキスト、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences"、The Science and Practice of Pharmacy、19th Ed. Mack Publishing Company、Easton、Pa.、(1995)に見出されうる。
【0109】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体には、固体医薬組成物のかさを増し、患者及び介護者にとって扱い易い医薬剤形を作る、希釈剤が含まれうる。固体組成物のための希釈剤には、例えば、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標))、ミクロファインセルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化でんぷん、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート(dextrate)、デキストリン、デキストロース、2塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標))、塩化カリウム、粉末化セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール及びタルクが含まれる。
【0110】
本開示の核酸組成物は、当技術分野において知られている方法に従って組成物及び剤形に製剤化されうる。特定の実施形態において、製剤化された組成物は、以下に適合させたものを含む、固体又は液体形態での投与のため特別に製剤化されうる:(1)錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤、水性若しくは非水性溶液又は懸濁剤、ドレンチ(drenche)、或いはシロップ等の経口投与;(2)例えば、無菌溶液又は懸濁液として、例えば、皮下、筋肉内又は静脈内注射による非経口投与;(3)皮膚、肺、又は粘膜に適用される、クリーム、軟膏又は噴霧剤として等の局所適用;又は(4)ペッサリー、クリーム又は発泡剤として等の腟内又は直腸内;(5)舌下又は口腔内;(6)眼内(ocularly);(7)経皮;又は(8)経鼻。
【0111】
いくつかの実施形態において、本開示の製剤には、錠剤等の、ある剤形にコンパクト化した固体医薬品が含まれ、また圧縮後一緒に活性成分及び他の賦形剤の結合を助けることを含む機能をもつ賦形剤が含まれうる。固体医薬組成物のための結合剤には、アカシア、アルギン酸、カルボマー(例えば、カルボポール)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアールガム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、液体グルコース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)、Plasdone(登録商標))、アルファ化でんぷん、アルギン酸ナトリウム及びデンプンが含まれる。
【0112】
対象の胃におけるコンパクト化した固体医薬組成物の溶解速度は、組成物への崩壊剤の付加によって増加しうる。崩壊剤には、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(登録商標)、Primellose(登録商標))、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)、Polyplasdone(登録商標))、グアールガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末化セルロース、アルファ化でんぷん、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、Explotab(登録商標))及びデンプンが含まれる。
【0113】
したがって、特定の実施形態において、流動促進剤は、非コンパクト化固体剤の流動性を改善する及び投薬の正確性を改善するため、製剤に添加されうる。流動促進剤として機能しうる賦形剤には、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末化セルロース、デンプン、タルク及び三塩基性リン酸カルシウムが含まれる。
【0114】
錠剤等の剤形が粉末化組成物のコンパクションより作られる場合、組成物は、パンチからの圧力及び色素に供される。いくつかの賦形剤及び活性成分は、パンチ及び色素の表面に接着する傾向があり、これは、産物がくぼみ及び他の表面不規則性を有する原因となりうる。滑沢剤は、組成物に添加され、接着性を低下させ、色素からの産物の放出を容易にすることができる。滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、水素化ヒマシ油、水素化植物油、ミネラル油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム(sodium stearyl fumarate)、ステアリン酸、タルク及びステアリン酸亜鉛が含まれる。
【0115】
錠剤化又はカプセル充填に関する製剤化された医薬組成物は、湿式造粒によって調製することができる。湿式造粒では、粉末形態におけるいくつかの又は全ての活性成分及び賦形剤は、ブレンドされ、次に、液体(典型的には、粉剤の顆粒への凝集を引き起こす水)の存在下で更に混合される。顆粒は、スクリーニング及び/又は粉砕され、乾燥され、次にスクリーニング及び/又は粉砕され、所望の粒径にされる。顆粒は、次に錠剤化されてもよく、又は他の賦形剤が、錠剤化前に添加されてもよい(例えば、流動促進剤及び/又は滑沢剤)。錠剤化組成物は、従来の乾式混合によって調製されうる。例えば、活性剤及び賦形剤の混合された組成物は、スラグ又はシートにコンパクト化され、次にコンパクト化された顆粒へと粉砕されうる。コンパクト化された顆粒は、引き続いて錠剤へと圧縮されうる。
【0116】
他の実施形態において、乾式造粒の代替として、混合された組成物は、直接圧縮技術を使用して、コンパクト化された剤形へと直接的に圧縮されうる。直接圧縮により、顆粒のないより均一な錠剤が製造される。直接圧縮錠剤化のため特に良好に適した賦形剤には、微結晶性セルロース、スプレー乾燥ラクトース、リン酸二カルシウム二水和物及びコロイド状シリカが含まれる。これらの及び他の賦形剤の直接圧縮錠剤化における適切な使用は、特に直接圧縮錠剤の製剤化の試みに経験度及び熟練度をもつ当業者に知られている。カプセル充填には、錠剤化を参照して記載された任意の前述の混合物及び顆粒が含まれうる;しかしながら、それらは、最終的な錠剤化工程には供されない。
【0117】
本開示の液体医薬組成物において、剤及び任意の他の固体賦形剤は、液体担体、例えば水、注射用水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリンに溶解又は懸濁される。液体医薬組成物は、液体担体中で可溶性ではない活性成分又は他の賦形剤を組成物の全体に均一に分散させるための乳化剤を含有してもよい。液体製剤は、製剤の注射可能、腸内、又は軟化剤タイプとして使用されうる。本発明の液体組成物において有用でありうる乳化剤には、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシア、トラガカント、ツノマタ(chondrus)、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール及びセチルアルコールが含まれる。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示の液体医薬組成物は、産物の食感及び/又は胃腸管の裏打ちの被膜を改善する粘性増強剤も含有する。そのような剤には、アカシア、アルギン酸ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム又はナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチングアールガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、炭酸プロピレン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、デンプントラガカント(starch tragacanth)及びキサンタンガムが含まれる。他の実施形態において、本開示の液体組成物は、緩衝剤、例えばグルコン酸、乳酸、クエン酸若しくは酢酸、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウムも含有する。
【0119】
甘味剤、例えばソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖は、食味を改善するため、本開示の特定の製剤に添加されうる。矯味剤及び矯味増強剤は、剤形を患者の口により合うようにされうる。本開示の組成物に含まれうる医薬製品のための共通矯味剤及び矯味増強剤には、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸が含まれる。
【0120】
保存剤及びキレート剤、例えばアルコール、安息香酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール及びエチレンジアミン四酢酸は、貯蔵安定性を改善する摂取のため安全なレベルで添加されうる。固体及び液体組成物はまた、それらの出現及び/又は産物及び単位剤形レベルの患者識別の促進を改善するための任意の薬学的に許容される着色剤を使用して染色されうる。
【0121】
本開示の剤形製剤は、ハード又はソフトシェル内で、開示の粉末化又は顆粒化された固体組成物等の組成物を含有するカプセルであってもよい。シェルは、ゼラチンから作られても、場合によりグリセリン及びソルビトール、及び乳白剤又は着色剤等の可塑剤を含有してもよい。
【0122】
がんを治療するための方法
上述したとおり、本開示の修飾マイクロRNA核酸組成物及びその製剤は、天然マイクロRNA及び/又は公知のがん治療(化学療法)、例えば、5-FUによって示される活性と比較した場合に、予想外の及び特別な抗がん活性を示す。したがって、本開示の別の態様は、哺乳動物に本開示の有効量の1つ以上の修飾マイクロRNA核酸組成物又はその製剤を投与する工程による、哺乳動物におけるがんを治療するための方法を提供する。
【0123】
図2A及び
図8Aに示されるように、本開示の例示的な修飾マイクロRNA核酸、すなわち、修飾miR-15a及び修飾MiR-129は、対象のがん細胞におけるBCL2発現及び活性を抑制し、これにより、利用可能なプロアポトーシスタンパク質の量を増加させ、最終的にがん細胞死の増加をもたらす。例えば、miR-129は、BCL2を直接的に標的とすることによって並びに他の重要な細胞死関連タンパク質に影響を与えることによってアポトーシスを制御する。更に、
図2Aは、miR-129が、細胞周期進行を制御する転写因子タンパク質である、E2F3の発現及びしたがって活性を低下させ、チミジル酸シンターゼ(TS)タンパク質レベルの発現又は活性を低下させ、これにより、細胞増殖が増加し、化学療法剤の有効性が増加することを示す。
【0124】
他の例示的なマイクロRNA、例えば修飾miR-506、miR-140、miR-192及びmiR-502はまた、
図13A-B及び
図14A-Dに示されるように、がん細胞増殖及びがん細胞アポトーシスをモジュレートする。
【0125】
実際に、
図7及び
図11は、本開示の2種の例示的な修飾マイクロRNA(例えば、修飾miR-129及び修飾miR-15a)での静脈内処置が、腫瘍成長及び発生を阻害することによって結腸直腸がんを効果的に処置することを示す。
【0126】
一般に、本開示のがんを処置するための方法は、本開示の核酸組成物(例えば、修飾マイクロRNA、例えば、修飾miR-129核酸、修飾miR-15a核酸、修飾miR-140核酸、修飾miR-192核酸、修飾miR-502、修飾miR-506核酸又はその組合せ)を対象に投与する工程を含む。特定の実施形態において、核酸組成物は、核酸組成物及び担体を含む製剤として投与されうる。他の実施形態において、本開示の核酸組成物は、担体の非存在下(すなわち、ネイキッド)で投与されうる。
【0127】
本明細書で使用される用語「対象」は、任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、任意の哺乳動物であってもよいが、本明細書の方法は、より典型的には、ヒトを対象とする。本明細書で使用される語句「それを必要とする対象」は、用語「対象」内に含まれ、特にがんの処置を必要とする又はがん性若しくは前がん性状態のリスクの上昇が医学的に判定された哺乳動物の対象を指す。特定の実施形態において、対象には、ヒトがん患者が含まれる。いくつかの実施形態において、対象は、結腸直腸がんを有する又は結腸直腸がんになるリスクの上昇が医学的に判定されている。他の実施形態において、対象は、膵がんを有する又は慢性膵炎と診断されている等、膵がんになるリスクの上昇が医学的に判定されている。更に他の実施形態において、本開示の対象は、肺がんを有する又は肺がんになるリスクの上昇が医学的に判定されている。
【0128】
用語「処置(treatment)」、「処置する(treat)」及び「処置すること(treating)」は、用語「有効量を投与すること(to adminster an effective amount)」と同義である。これらの用語は、1つ以上の症状を治癒、寛解、安定化、低下させること又は疾患、病理学的状態、又は障害、例えばがんを予防することを意図した対象の医学的な管理を意味する。これらの用語は、積極的処置、すなわち、疾患、病理学的状態又は障害の改善を具体的に対象とする処置を含み、原因処置、すなわち、関連疾患、病理学的状態又は障害の原因の除去を対象とする処置も含む。加えて、処置することは、緩和的処置、すなわち、疾患、病理学的状態又は障害の治癒よりもむしろ症状の軽減のために設計された処置であり、以下のものが含まれる;予防的処置、すなわち、関連疾患、病理学的状態若しくは障害の発生を最小化すること又は部分的若しくは完全に阻害することを対象とする処置である;及び支持処置、すなわち、関連疾患、病理学的状態又は障害の改善を対象とする補助的な別の具体的な治療に用いられる処置である。処置は、疾患、病理学的状態、又は障害を治癒、寛解、安定化、又は予防することが意図されるが、実際に治癒、寛解、安定化、又は予防しなくてもよいことが理解される。処置の効果は、本明細書に記載されるように及び疾患、病理学的状態、又は障害に適切であるような、当技術分野において知られているように、測定又は評価されうる。そのような測定及び評価は、定性的及び/又は定量的用語でなされうる。したがって、例えば、疾患、病理学的状態、又は障害の特性若しくは特徴及び/或いは疾患、病理学的状態、又は障害の症状は、任意の効果又は任意の量まで低下されうる。
【0129】
特定の実施形態において、本開示の核酸組成物を使用して、がん、例えば結腸直腸がんが処置される。
【0130】
本明細書で使用される用語「がん」には、例えば、腫瘍の悪性及び転移性成長を含む、異常な細胞の非制御分裂及び成長によって引き起こされる任意の疾患が含まれる。用語「がん」には、前がん性状態又はがん性又は前がん性状態のリスクの上昇によって特徴付けられる状態も含まれる。したがって、がんの処置は、がんを予防するための方法又はがん性状態若しくは完全に非がん性状態に変換することから前がん性状態を予防するための方法も含むと本明細書において考えられる。がん又は前がん(新生物状態)は、内部器官及び皮膚を含む、身体の任意の部分に位置しうる。がん細胞を含有する適用可能な身体部分のいくつかの例には、結腸、直腸(肛門を含む)、胃、食道、消化器官、肺、膵臓、及び肝臓が含まれる。がん又は新生物には、1つ以上の癌、肉腫、リンパ腫、芽細胞腫、又は奇形腫(生殖細胞腫瘍)の存在も含まれうる。いくつかの実施形態において、がんはまた、白血病の形態であってもよい。
【0131】
特定の実施態様において、本明細書に記載される核酸組成物は、以下に更に記載されるように、結腸直腸(すなわち、結腸又は直腸)、膵臓又は肺がんを、その任意のステージにおいて、処置するため使用される。周知されているように、がんは、リンパ節及び管を介して、腫瘍の周囲の正常な非がん性組織に侵入することによって並びに腫瘍が、対象の静脈、毛細血管及び動脈に侵入した後の血液によって対象中に拡散する。がん細胞が原発腫瘍から剥離する(「転移する」)場合、二次腫瘍が罹患した対象の全体に生じ、転移性傷害が形成される。
【0132】
例えば、転移の程度によって一般に特徴付けられる、4つのステージの結腸直腸がんが存在する。ステージ0又は上皮内癌では、異常な潜在的ながん性細胞が、結腸壁の粘膜(最内層)に見出される。ステージIでは、がん性細胞が、結腸壁の粘膜に形成される及び粘膜下層(粘膜下の組織の層)に拡散する及び結腸壁の筋肉層に拡散しうる。ステージIIは、以下の3つのサブクラスから構成される:ステージIIAでは、がん性組織が、結腸壁の筋肉層を通して結腸壁の漿膜(最外層)に拡散する;ステージIIBでは、腫瘍が、結腸壁の漿膜を通して拡散するが、隣接器官に拡散しない;並びにステージIICでは、がんが、結腸壁の漿膜を通して拡散する及び隣接器官に侵入する。ステージIIIはまた、以下の3つのサブクラスに分類される:ステージIIIAでは、がんが、結腸壁の漿膜を通して粘膜下層及び筋肉層に拡散しうる及び1つから3つの隣接リンパ節又はリンパ節に近い組織に拡散する;又はがんが、粘膜を通して粘膜下層及び4つから6つの隣接リンパ節に拡散する;ステージIIIBでは、腫瘍が、結腸壁の筋肉層を通して漿膜に拡散するが、漿膜を通して隣接器官には拡散しない及びがんが1つから3つの隣接リンパ節又はリンパ節に近い組織に拡散する;又は筋肉層若しくは漿膜及び4つから6つの隣接リンパ節に拡散する;又は粘膜を通して粘膜下層に拡散する及び筋肉層に拡散しうる及び7つ又はそれ以上の隣接リンパ節に拡散される。ステージIIIC結腸直腸がんでは、腫瘍が、結腸壁の漿膜を通して漿膜に拡散するが、隣接器官には拡散しない及びがんが4つから6つの隣接リンパ節に拡散する;又はがんが筋肉層を通して漿膜に拡散する又は漿膜を通して拡散するが、隣接器官には拡散しない及びがんが7つ又はそれ以上の隣接リンパ節に拡散する;又はがんが漿膜を通して隣接器官及び1つ以上の隣接リンパ節又はリンパ節に近い組織に拡散する。最後に、ステージIV結腸がんは、以下の2つのサブクラスに分類される:ステージIVAでは、がんが、結腸壁を通して隣接器官に拡散する及び結腸に近くない1つの器官又は遠くのリンパ節に拡散する;及びステージIVBでは、がんが、結腸壁を通して隣接器官に拡散する及び結腸に近くない1つを超える器官又は腹壁の裏打ちに拡散する。
【0133】
腫瘍病期分類の更に別の例には、結腸直腸がんに関するDukes分類体系が含まれる。ここでは、ステージはステージAと識別され、ここで、腫瘍は腸壁に限定される;ステージBでは、腫瘍は、腸を通した侵入を呈するが、リンパ節には侵入しない;ステージCでは、がん性細胞又は組織は、対象のリンパ節内に見出される;及びステージDでは、腫瘍は、対象のいくつかの器官への広範な転移を呈する。
【0134】
Astler Coller分類体系が、代替的に使用されうる。ここでは、ステージA結腸直腸がんが、腸の粘膜にのみ存在する、がんとして識別される;ステージB1では、腫瘍は固有筋層に広がるが、それを通して浸透しない及び腫瘍はリンパ節に転移しない、ステージB2結腸直腸がんは、固有筋層を通して浸透する腫瘍によって表される及び腫瘍はリンパ節に転移しない;ステージC1は、固有筋層に広がるが、それを通して浸透しない腫瘍及び腫瘍がリンパ節に転移することによって特徴付けられる;ステージC2結腸直腸がんは、腫瘍がリンパ節に転移する、固有筋層を通して浸透する腫瘍として分類される;及びステージDは、生物又は対象の全体に転移する腫瘍を記載する。
【0135】
いくつかの実施形態において、本開示の処置方法は、より詳細には、低下したレベルのmiR-129発現、miR-15a発現、miR-506発現、miR-502、miR-140又はその組合せを呈するがん対象を対象とする。この点において、miR-15aが、がんにおいて下方制御されることは知られている。例えば、R I Aqeilanら、Cell Death and Differentiation (2010) 17、pp. 215~220を参照されたい。更に、低下したレベルのmiR-129発現を有するがん性細胞が、例えば、その内容が参照により、それらの全体において組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0090636号に記載されるように、5-フルオロウラシルに耐性であることは知られている。加えて、膵がん細胞が、低下したレベルのmiR-506を呈することは知られている。例えば、Li、Jら、Oncogene. 35 pp. 5501~5514を参照されたい。
【0136】
更に別の実施形態において、本開示のマイクロRNA模倣体を使用して、膵がんが処置される。膵がんは、膵臓上皮内新生物又はPanINsと呼ばれる前駆傷害から生じる。これらの傷害は、外分泌性膵臓の小管に典型的に位置し、細胞学的な非定型性の程度に応じて、低度異形成、中等度異形成又は高度異形成傷害として分類されうる。そのような傷害は、KRAS遺伝子における活性化変異が、CDKN2A、TP53及びSMAD4における特定の不活性化変異と共に存在することを典型的に示す。集団的に、これらの遺伝的な変異は、浸潤がんの形成をもたらす。膵がんは、原発腫瘍のサイズ及びそれが膵臓の外側で周囲器官へと成長したかどうか;腫瘍が、隣接リンパ節に拡散したかどうか、及びそれが身体の他の器官(例えば、肝臓、肺、腹部)に転移したかどうかに基づいてステージ分けされる。この情報を、次に組み合わせて使用して、特定のステージ、すなわち、0、1A、1B、2A、2B、3及び4を提供する。ステージゼロ(0)について、膵臓腫瘍は、膵管細胞の最上層に限定され、より深部の組織には侵入しない。原発腫瘍は、膵臓の外側に拡散しない(例えば、膵臓上皮内癌又は膵臓上皮内新生物III)。ステージ1A膵臓腫瘍は、膵臓に典型的には限定され、直径2cm又はそれよりも小さい。更にステージ1A膵臓腫瘍は、隣接リンパ節又は遠い部位に拡散しない。ステージ1B膵臓腫瘍は、膵臓に限定され、直径2cmより大きい。ステージ1B膵臓腫瘍は、隣接リンパ節又は遠い部位に拡散しない。ステージ2A膵臓腫瘍は、膵臓の外側に成長するが、主要な血管又は神経には成長しない腫瘍を呈するが、がんは隣接リンパ節又は遠い部位に拡散しない。ステージ2B膵がんを呈する対象は、膵臓に限定される又は膵臓の外側に成長するが、主要な血管又は神経には成長しなく、隣接リンパ節に拡散する、腫瘍を提示する。ステージ3膵がんを呈する対象は、膵臓の外側で主要な血管又は神経に成長するが、遠い部位に拡散する、腫瘍を提示する。ステージ4膵がんは、遠い部位、リンパ節及び器官に転移する。
【0137】
別の例において、本開示の修飾マイクロRNA核酸組成物を使用して、肺がんが処置される。本方法には、非小細胞肺がん、例えば扁平上皮癌、腺癌、及び大細胞癌の処置が含まれる。肺がんは、肺の気管支に悪性腫瘍をしばしば生じ、身体の他の部分(例えばリンパ節)に拡散する。例えば、小細胞肺がんのケースでは、がん性傷害は、一度の肺にたびたび見出されたら、次に第2の肺、肺(胸膜)又は隣接する器官の周囲の液体に拡散する。肺がんは、原発腫瘍のサイズ及びそれが肺の外側でリンパ節へと成長したかどうか及びそれが身体の他の器官(例えば、骨、肝臓、乳房、脳)に転移したかどうかに基づいてステージ分けされる。この情報を、次に組み合わせて使用して、特定のステージ、すなわち、0、1、2、3及び4を提供する。ステージゼロ(0)(すなわち、上皮内癌)について、がんは、サイズが小さく、より深部の肺組織又は肺の外側に拡散しない。ステージ1肺がんは、基礎を成す肺組織に存在するが、リンパ節は影響を受けないままである、がん性細胞を示す。ステージ2肺がんは、がんが、隣接リンパ節に又は胸壁へと拡散することを明らかにする。ステージ3肺がんは、肺から、リンパ節又は隣接構造及び器官、例えば心臓、気管及び食道への連続的な拡散により分類される。ステージ4肺がんは、体全体に転移がんを呈し、これにより肝臓、骨又は脳が影響されうる。
【0138】
本開示に従う核酸組成物は、一般に当技術分野において知られている任意の経路により投与されうる。これには、例えば、(1)経口投与;(2)例えば、皮下、筋肉内又は静脈内注射による非経口投与;(3)局所投与;又は(4)腟内又は直腸内投与;(5)舌下又は口腔内投与;(6)眼内(ocular)投与;(7)経皮投与;(8)経鼻投与;及び(9)それを必要とする器官又は細胞に対して直接的な投与が含まれる。
【0139】
投与される本開示の核酸組成物の量(投与量)は、がんのタイプ及びステージ、補助又はアジュバント薬物の存在又は非存在、及び対象の体重、年齢、健康、及び剤に対する耐性を含む、いくつかの因子に依存する。これらの様々な因子に応じて、投与量は、例えば、約2mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約15mg/kg体重、約20mg/kg体重、約25mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約60mg/kg体重、約70mg/kg体重、約80mg/kg体重、約90mg/kg体重、約100mg/kg体重、約125mg/kg体重、約150mg/kg体重、約175mg/kg体重、約200mg/kg体重、約250mg/kg体重、約300mg/kg体重、約350mg/kg体重、約400mg/kg体重、約500mg/kg体重、約600mg/kg体重、約700mg/kg体重、約800mg/kg体重、約900mg/kg体重、又は約1000mg/kg体重であってもよく、ここで、用語「約」は、示した値の±10%、5%、2%、又は1%内であると一般に理解される。投与量はまた、2つの前の値に拘束される範囲内であってもよい。ルーチンの実験法を使用して、化合物のがん性若しくは前がん性状態における効果、又はマイクロRNA発現レベル若しくは活性(例えば、miR-15a、miR-129、miR-140、miR-192、miR-502、miR-506)における効果、又はBCL2レベル若しくは活性における効果、又はTSレベル若しくは活性における効果、又はE2F3レベル若しくは疾患病状における効果をモニターすることによって、各患者についての適切な投与計画を決定してもよく、その全ては、当技術分野において知られている方法に従って頻繁に及び容易にモニターすることができる。上記において論じられている様々な因子に応じて、核酸の任意の上記の例示的な用量は、1日当たり1、2、以上回投与することができる。
【0140】
現行の方法で使用するための、本明細書に記載される核酸組成物及び場合により任意の追加の化学療法剤の能力は、当技術分野において周知の薬理学的モデル、例えば細胞傷害性アッセイ、アポトーシス染色アッセイ、異種移植片アッセイ、及び結合アッセイを使用して決定することができる。
【0141】
本明細書に記載される核酸組成物は、1つ以上の化学療法剤と同時投与してもよく又は同時投与しなくてもよく、これは、本明細書に記載される核酸組成物と異なる補助又はアジュバント薬物であってもよい。
【0142】
本明細書で使用される、「化学療法」又は語句「化学療法剤」は、がんの処置に有用な剤である。本明細書に記載される方法と組み合わせて有用な化学療法剤には、BCL2、E2F3又はTSを直接的若しくは間接的にモジュレートする任意の剤が含まれる。化学療法剤の例には:代謝拮抗物質、例えばメトトレキセート及びフルオロピリミジンベースのピリミジンアンタゴニスト、5-フルオロウラシル(5-FU)(Carac(登録商標)クリーム、Efudex(登録商標)、Fluoroplex(登録商標)、Adrucil(登録商標))及びS-1;ポリグルタミン酸化葉酸代謝拮抗薬化合物(polyglutamatable antifolate compound)を含む葉酸代謝拮抗薬;ラルチトレキセド(raltitrexed)(Tomudex(登録商標))、GW1843及びペメトレキセド(Alimta(登録商標))及び非ポリグルタミン酸化葉酸代謝拮抗薬化合物;ノラトレキセド(nolatrexed)(Thymitaq(登録商標))、プレビトレキセド(plevitrexed)、BGC945;葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;及びプリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクシウリジンが含まれる。本開示の特定の実施形態において、化学療法剤は、異常な細胞増殖又はアポトーシスに関わるシグナル伝達経路に関与する遺伝子又は遺伝子産物の発現又は活性を阻害する能力がある化合物であり、例えば、YAP1、BMI1、DCLK1、BCL2、チミジル酸シンターゼ又はE2F3;及び任意の上記の薬学的に許容される塩、酸又は誘導体である。
【0143】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、抗がん薬、又は組織感作物質又は抗がん薬のための他のプロモーターである。いくつかの実施形態において、共薬物(co-drug)は、別の核酸、又は別のmiRNA、例えば、本開示のマイクロRNA模倣体、ゲムシタビン(gemctiabine)又はフリー5-FUであってもよい。
【0144】
特定の実施形態において、他の核酸は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、siRNA、又はBCL2 3'UTRの一部に対して相補的な核酸である。
【0145】
他の実施形態において、化学療法は、任意の以下のがん薬、例えば、1つ以上のメトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、シスプラチン、オキサリプラチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エピルビシン、フォリン酸、パクリタキセル、及びドセタキセルであってもよい。化学療法剤は、核酸組成物での開始治療の前、間、又は後に投与されてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、共薬物である。
【0147】
E2F転写因子3、E2F3(RefSeq NG_029591.1、NM_001243076.2、NP_001230005.1)は、DNAを結合し、細胞周期制御に関与する遺伝子の発現を制御する、網膜芽細胞腫タンパク質を含むが限定されないエフェクタータンパク質と相互作用する、転写因子である。したがって、E2F3の発現を阻害する任意の薬物は、本明細書において共薬物と考えられうる。
【0148】
アイソフォームα(NM_000633.2、NP_000624.2)及びアイソフォームβ(NM_000657.2、NP_000648.2)を含むB細胞リンパ腫2(BCL2)、(RefSeq NG_009361.1、NM_000633、NP_000624)は、内因性アポトーシス経路を介してミトコンドリア制御性細胞死を制御する、BCL2ファミリーの制御因子タンパク質のメンバーである、Bcl-2遺伝子によりコードされる。BCL2は、BAD及びBAKタンパク質を結合することによって細胞のアポトーシス死を遮断する、複合的なミトコンドリア外膜タンパク質である。BCL2阻害剤の非限定的な例には、アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、Oblimersen(Genasense;Genta Inc.,)、ABT-737(Abbott Laboratories、Inc.)、ABT-199(Abbott Laboratories、Inc.)、及びObatoclax(Cephalon Inc.)を含むBH3模倣性小分子阻害剤が含まれる。BCL2の発現を阻害する任意の薬物は、本明細書において共薬物と考えられうる。
【0149】
チミジル酸シンターゼ(RefSeq:NG_028255.1、NM_001071.2、NP_001062.1)は、dUMPの必須なメチル化を触媒してDNAを作る4種の塩基の1つであるdTMPを生成する、遍在性の酵素である。反応は、(メチル基ドナーとして及び固有の還元体としての両方の)コファクターとしてCH H4-葉酸を必要とする。CH H4-葉酸についての定常的な要求性は、チミジル酸シンターゼ活性が、細胞の葉酸プールの補給を荷う2つの酵素であるジヒドロ葉酸レダクターゼ及びセリントランスヒドロキシメチラーゼの活性に強く関連していることを意味する。チミジル酸シンターゼは、30~35kDaサブユニットのホモ二量体である。活性部位は、同時に葉酸コファクター及びdUMP基質の両方に結合し、dUMPは求核性システイン残基を介して酵素に共有結合的に結合する(Carreras et al、Annu. Rev. Biochem.、(1995) 64:721~762を参照されたい)。チミジル酸シンターゼ反応は、DNAへの組込みのためdCTP及びdTTPを生成する、ピリミジン生合成経路の重大な部分である。この反応は、DNA複製及び細胞成長に必要とされる。したがって、チミジル酸シンターゼ活性は、がん細胞等の全ての急速に分裂している細胞に必要とされる。チミジル酸シンターゼは、DNA合成及びしたがって細胞複製との関連性に起因して、抗がん薬に関する長年の標的となっている。チミジル酸シンターゼ阻害剤の非限定的な例には、葉酸及びdUMPアナログ、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)が含まれる。チミジル酸シンターゼの発現を阻害する任意の薬物は、本明細書において共薬物と考えられうる。
【0150】
所望であれば、本明細書に記載される核酸組成物の投与は、1つ以上の非薬物治療、例えば、放射線治療及び/又は手術と組み合わされてもよい。当技術分野で周知されているように、放射線療法及び/又は化学療法剤の投与(このケースでは、本明細書に記載される核酸組成物及び、場合により、任意の追加の化学療法剤)を、手術前に与えて、例えば、手術前に腫瘍を縮小又はがんの拡散を停止させてもよい。また当技術分野で周知されているように、放射線療法及び/又は化学療法剤の投与を、手術後に与えて、あらゆる残存するがんも破壊することができる。
【0151】
実施例は、例示の目的で以下に示され、本発明の特定の具体的な実施形態を記載する。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に示される実施例によっていかなる点においても限定されない。
【実施例0152】
(実施例1)
材料及び方法。
修飾miR-129:5-FU修飾miR-129分子を、自動化オリゴヌクレオチド合成プロセスによって合成し、HPLCによって精製した。2つの鎖をアニールして、成熟修飾5-FU-miR-129を作った。より具体的には、「2'-ACE RNA合成」と呼ばれるプロセスを使用した。2'-ACE RNA合成は、シリルエーテルを用いて、2'-ヒドロキシにおける酸不安定性オルトエステル保護基(2'-ACE)を組み合わせて5'-ヒドロキシル基を保護する、保護基スキームに基づく。この保護基の組合せは、次に標準的なホスホラミダイト固相合成技術で使用される。例えば、それらの各々の全体の内容が本明細書に明示的に組み込まれる、S.A. Scaringe、F.E. Wincott、and M.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、120 (45)、11820~11821 (1998);国際PCT出願WO/1996/041809;M.D. Matteucci、M.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、103、3185~3191 (1981);S.L. Beaucage、M.H. Caruthers、Tetrahedron Lett. 22、1859~1862 (1981)を参照されたい。
【0153】
ウラシルを5-ハロウラシルで置き換えた、例示的な修飾miR-15a核酸、修飾miR-140核酸、修飾miR-192核酸、修飾miR-502、修飾miR-506核酸又は任意の他の修飾マイクロRNAは、miR-129aと同じ様式で合成することができる。
【0154】
現在使用される、保護して官能性をもたせたリボヌクレオシドホスホラミダイトのいくつかの例示的な構造が、以下に示される:
【0155】
【0156】
細胞培養。ヒト結腸がん細胞株HCT116、RKO、SW480、SW620、及び正常結腸細胞株CCD 841 CoN、膵がん細胞株ASPC-1、Panc-1、及び肺がん細胞株A549を、American Type Culture Collection(ATCC)から得て、McCoy's 5A培地(HCT-116)、DMEM(RKO、SW480、SW620)及びMEM(CCD 841 CoN)(Thermo Fischer)で維持した。培地を、10%ウシ胎児血清(Thermo Fischer)で補充した。
【0157】
トランスフェクションについて、1×105の細胞を、6ウェルプレートに配置し、製造者のプロトコールに従って、オリゴフェクタミン(Thermo Fischer)を使用した24時間後に、100nMのmiR-15a前駆体、非特異的なmiRNA(Thermo Fischer)又は修飾miR-15a模倣体(Dharmacon)のいずれかでトランスフェクトした。試薬なしのトランスフェクションについて、細胞を、6ウェルプレートにウェル当たり(1x105)個の細胞を配置した。24時間後、100pmol miRNA(対照、miR-15a、模倣体-1)を、Optimem(Thermo Fischer)に希釈し、プレートに添加した。培地を、24時間後交換した。培地を、10%ウシ胎児血清(Thermo Fischer)で補充した。簡潔に述べると、細胞を、超低付着フラスコ中で、B27、10ng/mL bFGF、及び20ng/mL EGF(Life Technologies)を補充したDMEM/F12で培養した。球状細胞(spheroid cell)を、穏やかな遠心分離により収集し、単一細胞に解離し、再プレートすることによって維持した。
【0158】
ウエスタン免疫ブロット分析:トランスフェクション48時間後、プロテアーゼ阻害剤(Sigma)を有するRIPA緩衝剤中で溶解させた細胞から抽出した等量のタンパク質(15μg)を、標準的な手順を使用して10%~12%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルで分離した。分析のため使用される一次抗体は、ウサギ抗YAP1モノクローナル抗体(1:10000)(Cell Signaling Technologies)、抗DLCK1(1:500)(Abcam)、抗BCL2(1:500)(NeoMarkers)、抗BMI-1(1:10000)(Cell Signaling Technologies)、マウス抗ヒトTS抗体(1:500)、抗αチューブリン(1:50000)(Santa Cruz Biotech Inc.)、抗GAPDH(1:100000)(Santa Cruz Biotech Inc.)、抗E2F3(1:500)(Santa Cruz Biotech Inc.)であった。マウス又はウサギに対する西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(1:5000、Santa Cruz Biotech Inc.)を、二次抗体として使用した。タンパク質バンドを、SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Thermo Fischer)を使用するオートラジオグラフィーフィルムで可視化した。ウエスタンブロット密度を、Image Jソフトウェアを使用して定量した。
【0159】
細胞増殖アッセイ:トランスフェクション24時間後、細胞を、ウェル当たり2000個の細胞の密度で96ウェルプレートに播種した。細胞増殖アッセイを、1時間培養培地中で10μl WST-1(Roche Applied Science、Mannheim、Germany)をインキュベートし、吸光度を450及び630nmで読みとることによって1から5日に実施した。細胞増殖速度を、450nmでの吸光度を630nmでの吸光度から減算することによって計算した。細胞増殖アッセイに関する実験を、少なくとも3回実施した。O.D.を、630nmでの吸光度を450nmでの吸光度から減算することによって計算した。増殖実験を、3回実施した。
【0160】
足場非依存性増殖を、がん細胞コロニー形成能力を決定するため研究した。がん細胞を、トリプシン処理し、計数し、ウェル当たり合計1×105個の細胞を、6ウェルプレート中で25nM修飾マイクロRNA又は天然miR又は陰性対照miRNAでオリゴフェクタミンと共にトランスフェクトし、トランスフェクション6時間後、細胞を再計数した。0.35%寒天(Bacto Agar;Becton Dickinson)中の合計20,000細胞を、35mmの皿中で1mLの凝固させた0.6%寒天層の上部に層状に重ねた。B27、10ng/mL bFGF、及び20ng/mL EGFを有する成長培地を、両層に含ませた。2週のインキュベーション後、直径50mm超のコロニーを計数した。
【0161】
細胞周期分析:トランスフェクション24時間後、細胞を、収穫し、0.02mg/mL RNaseH及び0.05mg/mLヨウ化プロピジウムを補充した修飾Krishan's緩衝剤中で0.5から1x106細胞/mLに再懸濁した。染色した細胞を、フローサイトメトリーで検出し、結果を、Modfit LT(商標)ソフトウェアで分析した。細胞周期分析に関する実験を、少なくとも3回実施した。
【0162】
アポトーシスアッセイ。早期アポトーシスと後期アポトーシスとの間を区別するため、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-アネキシンアッセイ(Becton Dickinson)を行った。HCT116、RKO、SW480及びSW620細胞を、6ウェルプレートにウェル当たり(1×105)個の細胞で配置し、24時間後、細胞を、オリゴフェクタミンを使用して25nM修飾miRNAでトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後、細胞を、収穫し、製造者のプロトコールに従って、ヨウ化プロピジウム及び抗アネキシンV抗体(アネキシンV-FITCアポトーシス検出キット、Invitrogen、CA、USA)で染色し、染色した細胞を、フローサイトメトリーで検出した。
【0163】
5-FU処置及び細胞毒性アッセイ:トランスフェクション24時間後、がん細胞を、96ウェルプレート中でウェル当たり2x103個の細胞を100μLの培地中に三連で配置した。24時間後、2μM 5-FU単独、50nM天然マイクロRNA、50nM修飾マイクロRNA(例えば、修飾miR-129)、又は2mM 5-FUと本開示の50nM修飾マイクロRNA、例えば修飾miR-129の組合せを含有する新鮮な培地を添加し、細胞を追加の72時間培養した。細胞生存度を、WST-1アッセイを使用して測定した。
【0164】
レンチウイルス産生:簡潔に述べると、1.5x106個の293T細胞を、10cmの皿に10mLのDMEM+10%FBSと共に配置した。2日後、miR-129又はhsa-miR-15aを発現するレンチウイルスプラスミドpEZX-MR03を、製造者のプロトコールに従って、Lenti-Pac HIV発現パッケージングキットでトランスフェクトした。48時間後、ウイルスを、収穫し、Lenti-Pacレンチウイルス濃縮溶液で濃縮した。次に、ウイルスの力価(およそ1011ウイルス粒子/ml)を、Lenti-Pac(商標)HIV qRT-PCR滴定キットで決定した。加えて、ウイルスの系列希釈(0.1μL、0.5μL、2μL、10μL、50μL)を使用して、5x104個のHCT116 CSCに形質導入し、形質導入効率を決定した。100%陽性発現を達成する最低濃度(2μL)を使用して、マウスインビボ処置実験のため細胞を感染させた。
【0165】
核酸発現のリアルタイムqRT-PCR分析。がん細胞におけるマイクロRNAの発現レベルを、定量した。簡潔に述べると、対象のマイクロRNA及び内部対照RNU44遺伝子に特異的なプライマーは、Ambionから購入した。cDNA合成を、miRNA特異的プライマーでHigh Capacity cDNA Synthesis Kit (Applied Biosystems)によって実施した。リアルタイムqRT-PCRを、TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)でmiRNA特異的プライマーを用いてApplied Biosystems 7500 Real-Time PCR機器で実行した。本開示の例示的なmiRの発現レベルを、対照群に対して標準化した内部対照RNU44に基づくΔΔCT法によって計算し、相対的な定量化としてプロットした。
【0166】
ヒトがん幹細胞プロファイラー:RNAを、製造者のプロトコールに従って、TRIzol試薬(Thermo Fischer)を使用して、本開示の例示的なマイクロRNA又は陰性miRNAのいずれかでトランスフェクトされたがん細胞から抽出した。RNAを、RT2 First Strand Kit(Qiagen)を使用して第一鎖cDNAに転写した。次に、cDNAは、RT2 SYBR Green Mastermix(Qiagen)と混合され、この混合物は、Human Cancer Stem Cells RT2 Profiler PCR Array(Qiagen)のウェルにアリコートした。Applied Biosystems 7500 Real-Time PCR機器をqRT-PCR(Applied Biosystems)に使用し、相対発現値をΔΔCT法を使用して決定した。
【0167】
マウス皮下腫瘍移植モデル:注射2日前、HCT116がん幹細胞を、6ウェルの超低付着プレート中に5x105/ウェルで配置した。20μLのウイルス又は100pmoleの例示的な修飾miR-129又は修飾miR-15aを使用して、細胞に形質導入又はトランスフェクトした。48時間後、細胞を収集し、30%マトリゲルを有するDMEM/F12ノックアウト培地中に106個/mlで再懸濁した。10~12週齢NOD/SCIDマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、MA、USA)を、腫瘍移植に使用した。マウスを、イソフルラン吸入で麻酔した。100μLの細胞懸濁液を、下部背部領域の両側に皮下注射した。腫瘍サイズをノギスを使用して測定し、腫瘍体積を式V=長さx幅2/2を使用して計算した。
【0168】
インビボmiRNA送達実験について、本発明者らは、組換えレンチウイルスで親HCT116細胞を感染させることによってlenti-lucレポーター遺伝子を発現する結腸がん細胞を作出した。ルシフェラーゼ発現HCT116細胞(マウス一匹当たり2.0x106個の細胞)を、0.1mLのPBS溶液に懸濁し、各マウスの尾静脈を通して注射した。結腸がん細胞の注射の2週後、マウスを、in vivo-jetPEI(Polyplus Transfection)でパッケージされた40μgの陰性対照又は修飾miRでの尾静脈注射で処置した。マウスを、2週間隔日で処置した(8回)。処置後、マウスを、IVISスペクトルインビボイメージングシステム(IVIS)(PerkinElmer)を使用してスクリーニングした。
【0169】
RNA単離:マウス異種移植片について、組織切片を、それぞれ、脱パラフィンし、水和させ、プロテイナーゼKで消化した。引き続いて、総RNAを、TRIzol(登録商標)試薬を使用して単離した。総RNAを、TRIzol(登録商標)ベースのアプローチによって臨床検体からも単離した。
【0170】
統計分析。全ての実験を、少なくとも3回繰り返した。全ての統計学的分析を、SigmaPlotソフトウェアで実施した。2群間の統計学的な有意性を、スチューデントのt検定(臨床サンプルに関して対応のあるt検定及び全ての他のサンプルに関して対応のないt検定)を使用して決定した。2群を超える比較について、一元配置ANOVAに続いてBonferroni-Dunn検定を使用した。データを、平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。統計学的な有意性は、図の説明に記載されるか又はアスタリスク(*)で示されるかのいずれかである。*=P<0.05;**=P<0.01;***=P<0.001.
【0171】
(実施例2)
本開示の修飾マイクロRNAは抗がん活性を有する。
図3、
図8B、
図12A-B、
図13A-B及び
図14A-Dに示されるように、修飾miRNA(修飾miR:129、15a、192(215)、140、502、及び506)は、非修飾miRNA前駆体よりも、結腸がん、膵がん及び肺がん細胞増殖の阻害においてより有効である。加えて、修飾miRNAは、トランスフェクション試薬なしでがん細胞に送達することができる(データ示さず)。とりわけ、結果は、いくつかの異なる結腸直腸がん細胞株、膵臓がん細胞株、及び肺がん細胞株を越え、がん細胞増殖が、対照マイクロRNAで処置したがん細胞と比較した場合に、有意に阻害されることを示している。
【0172】
(実施例3)
修飾miR-129核酸は抗がん活性を有する。
以下の実験では、5-FUを、miR-129に組み込んだ。1つの実験では、miR-129中の全てのU塩基を、
図1Aに提供される構造に示されるように、5-FUで置き換えた、ここで、「U
F」は、5-フルオロウラシル又は他の5-ハロウラシルを表す。別の実験では、miR-129のシード領域を除く、全てのU塩基を、
図1Bに提供される構造に示されるように、5-FUで置き換えた。
【0173】
標的特異性の分析:結腸がんHCT-116細胞におけるウエスタン免疫ブロット実験の結果は、本開示の例示的な修飾miR-129ポリヌクレオチドが、TS、BCL2及びE2F3 viaに対してそれらの標的特異性を保持できることを実証している。結果は、
図2A及び
図2Bに示されており、これは、配列番号4に示される2つの別個のオペレーターによって得られように、全てのU塩基を5-FUで置き換えた修飾miR-129核酸に関する結果を示している。更に有意なことには、例示的なmiR-129模倣体は、TS、BCL2及びE2F3の発現レベルを低下させることに、未修飾(対照)miR-129よりも強力であることが見出された。
【0174】
本開示の修飾マイクロRNAの機能増強。結腸がん細胞増殖における例示的な修飾miR-129の影響を、天然miR-129のものと比較した。結果は、50nM濃度で5-FU-miR-129が、HCT-116腫瘍細胞成長を完全に抑制することができることを示している。そのうえ、
図3の結果によって示されるように、5-FU-miR-129は、天然miR-129よりもはるかに強力であり、それによって有意に高い阻害効果を提供する。スクランブル対照miRは細胞増殖に効果を有していないので、そのような阻害は特異的である。
【0175】
次に、細胞増殖における修飾miR-129及び5-FUの効力を、HCT-116結腸がん細胞を使用して比較した。
図4に提供される結果によって示されるように、50nM(5-FUよりも40倍低い)の修飾miR-129は、腫瘍細胞増殖の阻害において2μM 5-FUよりも予想外にはるかに強力である。
【0176】
本開示の例示的な修飾マイクロRNAは、結腸がん細胞にアポトーシスを誘導する。BCL2はmiR-129の重要な標的であることから、アポトーシスにおける本開示の修飾miRの影響を調査した。より具体的には、細胞死を、陰性対照miRNA、天然miR-129又は配列番号4の例示的なmiR-129模倣体でトランスフェクトされたHCT116、RKO、SW480、及びSW620結腸がん細胞でアポトーシスアッセイを使用して定量した。結果は、miR-129模倣体が、蛍光活性化セルソーティング(FACS)ベースのFITC-アネキシンアッセイにより、天然miR-129及び陰性対照miRNAと比較して、全て4種の結腸がん細胞株において、2から30倍までアポトーシスを誘導できることを示す(
図5A)。
【0177】
miR-129模倣体は、G1/S細胞周期チェックポイント制御をトリガーする。細胞周期分析を、スクランブル対照、miR-129前駆体、及び例示的なmiR-129模倣体で処置されたHCT-116細胞にフローサイトメトリーを使用して実施した。
図5Bに示すように、細胞周期分析は、miR-129模倣体が、G1アレストを誘導することによって結腸がん細胞成長に影響を与え、そのような影響が、天然miR-129よりもはるかに強力(2倍超)であることを明らかにした。
【0178】
miR-129模倣体は、化学療法耐性結腸がん幹細胞を排除する。5-FU耐性結腸がん幹細胞における本開示の特定の例示的な修飾マイクロRNA(すなわち、miR-129模倣体)の影響を決定するため、HCT116由来結腸がん幹細胞を、様々な濃度の模倣体-1又は5-FUで処置した。
図6に示されるデータにより、本開示の例示的なマイクロRNA模倣体が、100nM濃度で80%超まで5-FU耐性結腸がん幹細胞を排除できるが、100μMで致死量の5-FUが、腫瘍幹細胞生存度に最小の効果を有することが明らかとされる。
【0179】
まとめると、これらの結果は、本開示の例示的な修飾マイクロRNAポリヌクレオチドが、HCT116結腸がん幹細胞の細胞増殖を阻害できたことを示す(
図6)。そのような修飾miR-129による阻害効果は、天然miR-129よりもはるかに強力であり、増殖が6日での25nM miR-129でほとんど完全に遮断された(
図6)。本発明者らは、軟寒天アッセイを使用して足場非依存性細胞成長における修飾miR-129での細胞の処置の影響を実証した。修飾miR-129処置結腸がん幹細胞は、天然miR-129又は対照miRNAで処置された細胞と比較して、視認可能な球を形成しなかった(
図10に認められるものに類似)。
【0180】
miR-129模倣体は、インビボでの結腸がん転移を阻害する。miR-129核酸を修飾することの治療上の影響を、結腸がん転移モデルを使用して評価した。転移の確立の2週後、配列番号4の40μgのmiR-129核酸を、2週間隔日に1回の処置頻度の注射での静脈内注射で送達した。
【0181】
図7に示される結果により、修飾マイクロRNA-129が結腸がん転移を阻害するが、陰性対照miRNAは効果がなく、毒性副作用を呈しないことが明らかとされる。
【0182】
(実施例3)
修飾miR-15a及びその抗がん活性。
例示的な修飾miR-15a組成物は、抗がん活性を有する。
図1C及び
図1Dに示されるように、miR-15a核酸配列の全てのウラシル塩基(
図1C)又は非シード領域中のウラシル塩基のみ(
図1D)が、5-ハロウラシル(すなわち、5-フルオロウラシル)で置き換えられた、例示的な修飾miR-15aを、上記に示されるように合成した。
【0183】
HCT-116結腸がん幹細胞への
図1Cに示される例示的な修飾miR-15aのトランスフェクション3日後、タンパク質を収集し、ウエスタンブロッティングを実施して、本開示の修飾miR-15a核酸組成物が、鍵となるmiR-15a標的を制御する能力を維持していることを確認した。
図8Aに示されるように、miR-15a標的YAP1、BMI1、DCLK1及びBCL2は、未修飾miR-15a(天然-miR15a)又は修飾miR-15a組成物のいずれかによるトランスフェクション時に低下したタンパク質レベルを呈しており、5-ハロウラシル修飾が、それらの細胞における標的を制御する、miR-15aの能力を阻害しなかったことを示している。
【0184】
修飾miR-15aは、インビトロでの治療有効性を増加させた。本開示の修飾miR-15a組成物が、未修飾miR-15aと比較して、結腸がん細胞株における効力の増加を実証するかどうかを決定するため、HCT-116結腸がん細胞を、陰性対照(非特異的なオリゴヌクレオチド)、未修飾miR-15a又は
図1Cに示される例示的な修飾miR-15a組成物でトランスフェクトした。
【0185】
WST-1アッセイを使用して、がん細胞増殖を評価した。
図8Bに示されるように、トランスフェクション6日後、未修飾miR-15aは、対照と比較して、53%まで細胞増殖を減少させた。修飾miR-15aのケースでは、細胞増殖は、84%まで減少した。まとめると、実験結果は、修飾miR-15aが、未修飾miR-15aと比較して、がん細胞増殖の減少により有効であることを示している。
【0186】
修飾miR-15a核酸を、それらのがん細胞における細胞周期進行を阻害する能力についても分析した。
図9は、未修飾miR-15aが、細胞周期アレストを誘導し、G1/S比において約3倍増加をもたらすことを示す。
図9は、本開示の例示的な修飾miR-15a組成物が、それらの天然対応物と比較した場合に、細胞周期進行をより効果的に停止させることも示す。例えば、対照と比較した場合に、G1/S比における7倍増加が、本開示の例示的な修飾miR-15a核酸を発現する細胞によって呈された。したがって、修飾miR-15aは、未修飾miR-15aよりも結腸がん細胞における細胞周期アレストを誘導することに効果的である。
【0187】
マトリゲルマトリックス中の結腸がん幹細胞によるコロニー形成における例示的な修飾miR-15a組成物の効果も試験した。
図10に示されるように、多くのコロニーが、対照miRNAでトランスフェクトされた細胞によって生成されるが(
図10、陰性)、ほんの数個のコロニーが、未修飾miR-15aでトランスフェクトされた細胞によって生成された(
図10、miR-15a)。対照的に、修飾miR-15aでトランスフェクトされた細胞のケースでは、コロニーは、観察されなかった(
図10、5-FU-miR-15a)。これらの結果は、本開示の例示的な修飾miR-15a組成物が、腫瘍形成及び結腸直腸がん進行の実際により強力な阻害剤であることを示す。
【0188】
修飾miR-15aは、インビボでのがん発症及び進行を阻害する。結腸CSCにおけるmiR-15aの本発明者らの理解に加えて、修飾miR-15a又は陰性対照miRNAのいずれかでプレトランスフェクトされている結腸直腸がん細胞が含まれるマウス異種移植片モデルが確立された。注射8週後、腫瘍を、測定及び収穫した。修飾miR-15a模倣体を発現するCSCから確立された腫瘍についての腫瘍サイズの劇的な低下(>25x)(n=8)が、
図11に示される。
【0189】
本明細書に提示されたデータは、ハロウラシル(例えば、5-FU)が、miRNA核酸配列に組み込まれ、他の化学療法剤の使用の存在下又は不在下で天然マイクロRNA分子の化学療法的な機能を増強する、新規の修飾の実行可能性を支援する。