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特開2022-173197導電フィルム、接続体の製造方法及び接続体
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  • 特開-導電フィルム、接続体の製造方法及び接続体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173197
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】導電フィルム、接続体の製造方法及び接続体
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20221111BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20221111BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20221111BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20221111BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20221111BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221111BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20221111BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H01B1/22 D
H01B1/22 B
H01B1/00 C
H01B5/16
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
C09J201/00
C09J163/00
H01L21/60 311Q
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133542
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2018067630の分割
【原出願日】2018-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】北爪 宏治
(72)【発明者】
【氏名】江島 康二
(57)【要約】
【課題】低圧条件の圧着でも高い接続信頼性を得ることができる異方性導電接着剤、及び
接続体の製造方法を提供する。
【解決手段】異方性導電接着剤は、絶縁性接着剤と、20%圧縮回復率が20%以上であ
り、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子とを
含有する。これにより、低圧条件の圧着でも高圧条件の圧着と同様に導電粒子が酸化物層
を突き破ること可能となり、高い接続信頼性を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着剤と、
圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm
上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電材料。
【請求項2】
前記樹脂コア導電粒子の圧縮回復率が45%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値
が4500N/mm以上である請求項1記載の導電材料。
【請求項3】
前記樹脂コア導電粒子の圧縮回復率が60%以上である請求項1記載の導電材料。
【請求項4】
前記樹脂コア導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さK値が8000N/mm以上である
請求項1記載の導電材料。
【請求項5】
前記樹脂コア導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さK値が20000N/mm以下であ
る請求項1記載の導電材料。
【請求項6】
前記絶縁性接着剤が、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、アニオン重合開始剤とを含有し
、当該導電材料が、フィルム状である求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項7】
絶縁性接着剤と、圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が40
00N/mm以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電材料を介して第1の電子部
品と第2の電子部品とを配置する配置工程と、
圧着ツールにより前記第2の電子部品を前記第1の電子部品に圧着させるとともに、前
記導電材料を硬化させる硬化工程とを有する接続体の製造方法。
【請求項8】
前記硬化工程では、40MPa~150MPaの条件で前記第2の電子部品を前記第1
の電子部品に圧着させる請求項7記載の接続体の製造方法。
【請求項9】
第1の電子部品と、第2の電子部品と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とが
接着された接着膜とを備え、
前記接着膜は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮
硬さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電材料が硬化
してなる接続体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えばIC(Integrated Circuit)チップとフレキシブル配線板とを接続させ
る導電材料、及び接続体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting
Diode)ディスプレイなどのアクティブマトリックス型の表示装置では、ガラス等の絶縁
基板上に、互いに交差する複数本の走査信号ライン及び画像信号ラインをマトリックス状
に配置形成するとともに、それら走査信号ライン及び画像信号ラインの各交点に薄膜トラ
ンジスタ(以下、「TFT」と記す。)を配置形成している。
【0003】
TFTのソース電極やドレイン電極などの電極用金属配線膜は、生産コストが高いIT
O(Indium Tin Oxide)に代わって、IZO(Indium Zinc Oxide)が用いられている。
IZO配線は、表面が平滑であり、表面に酸化物層(不動態)が形成されている。また、
例えばアルミニウム配線では、腐食を防止するために表面にTiOなどの酸化物層の保
護層が形成されることがある。もしくは、Al/Ti配線を使う場合もあるが、これもア
ルミニウム配線と同様になることがある。
【0004】
しかしながら、酸化物層は硬いため、例えばドライバICを異方性導電接着剤にて接続
させる場合、接続抵抗値が上昇する傾向にある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、導電粒子の圧縮回復率を低くし、導電粒子の反発力
を低く抑えることにより、電極及び回路接続材料間での剥離を抑制し、良好な接続信頼性
を得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-1562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、導電粒子の圧縮回復率が低いため、
配線との接触面積が小さくなる傾向にあり、導通抵抗値が高くなる傾向にある。このため
、特許文献1に記載された方法では、高圧条件で圧着しなければ、高い接続信頼性を得る
ことができず、実装部品へのダメージが懸念される。
【0008】
本技術は、前述した課題を解決するものであり、低圧条件の圧着でも高い接続信頼性を
得ることができる導電材料、及び接続体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者らは、鋭意検討した結果、適度に高い圧縮回復率と酸化物層を突き破る硬度
を有する樹脂コア導電粒子を用いることにより、低圧条件の圧着でも高い接続信頼性が得
られるとの知見に基づき、本技術を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本技術に係る導電材料は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が20%以上であり
、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子とを含
有する。
【0011】
また、本技術に係る接続体の製造方法は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が20%以上で
あり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子と
を含有する導電材料を介して第1の電子部品と第2の電子部品とを配置する配置工程と、
圧着ツールにより前記第2の電子部品を前記第1の電子部品に圧着させるとともに、前記
導電材料を硬化させる硬化工程とを有する。
【0012】
また、本技術に係る接続体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、前記第1の電子
部品と前記第2の電子部品とが接着された接着膜とを備え、前記接着膜は、絶縁性接着剤
と、圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm
以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電材料が硬化してなる。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、低圧条件の圧着でも樹脂コア導電粒子が酸化物層を突き破ること可能
となり、また、配線との接触面積を増大させることができるため、高い接続信頼性を得る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施の形態に係る接続体の製造方法を模式的に示す断面図であり、図1(A)は、配置工程(S1)を示し、図1(B)は、硬化工程(S2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する

1.導電材料
2.接続体の製造方法
3.実施例
【0016】
<1.導電材料>
本実施の形態に係る導電材料は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が20%以上であり、2
0%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子とを含有す
る。これにより、低圧条件の圧着でも樹脂コア導電粒子が酸化物層を突き破ること可能と
なり、樹脂コア導電粒子と配線との接触面積を増大させることができるため、高い接続信
頼性を得ることができる。これは、高い圧縮回復率及び20%圧縮時の圧縮硬さK値によ
り配線が押し潰されて変形し、追従性が向上するため、配線との接触面積が増大するとと
もに、高い20%圧縮時の圧縮硬さK値により酸化物層を突き破ることが可能であるから
だと考えられる。
【0017】
導電材料としては、フィルム状、ペースト状などの形状が挙げられ、例えば、異方性導
電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:A
nisotropic Conductive Paste)などが挙げられる。また、導電材料の硬化型としては、
熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられ、用途に応じて適宜選択することが
できる。
【0018】
以下、樹脂コア導電粒子を含有する導電粒子含有層と、樹脂コア導電粒子を含有しない
導電粒子非含有層とが積層された2層構造の熱硬化型の異方性導電フィルムを例に挙げて
説明する。また、熱硬化型の異方性導電フィルムとしては、例えば、カチオン硬化型、ア
ニオン硬化型、ラジカル硬化型、又はこれらを併用することができるが、ここでは、アニ
オン硬化型の異方性導電フィルムについて説明する。
【0019】
具体例として示す異方性導電フィルムは、樹脂コア導電粒子と、絶縁性接着剤として、
膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、アニオン重合開始剤とを含有する導電粒子含有層と、絶
縁性接着剤として、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、アニオン重合開始剤とを含有する導
電粒子非含有層とを備える。
【0020】
[樹脂コア導電粒子]
樹脂コア導電粒子の圧縮回復率は、20%以上であり、より好ましくは45%以上であ
り、さらに好ましくは60%以上であり、圧縮回復率の上限は90%程度である。圧縮回
復率が一定以上に高ければ、接続後に樹脂コア導電粒子と、これを挟持しているバンプ、
配線電極との接触状態が良好に保たれ易くなる。但し、圧縮硬さK値との組み合わせによ
っては、接続に高い圧力が必要となる。
【0021】
また、樹脂コア導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さK値は、4000N/mm以上で
あり、より好ましくは8000N/mm以上であり、さらに好ましくは10000N/
mm以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値の上限は、好ましくは22000N/m
未満であり、より好ましくは20000N/mm以下である。圧縮硬さK値が一定
以上に高ければ、接続時に樹脂コア導電粒子が配線電極表面の絶縁層を突き破り抵抗値が
得られ易くなる。但し、圧縮回復率との組み合わせによっては、接続に高い圧力が必要と
なる。
【0022】
樹脂コア導電粒子の圧縮回復率及び20%圧縮時の圧縮硬さK値の好ましい組み合わせ
は、圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm
以上、圧縮回復率が45%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm
以上、圧縮回復率が45%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が8000N/m
以上、又は、圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が800
0N/mm以上である。これにより、例えば130MPa程度の圧力条件の圧着におい
て、信頼性試験後の抵抗値の上昇を抑制し、高い接続信頼性を得ることができる。圧力は
、電子部品の薄型化や屈曲化(フレキシブル化)の要請などの事情により、低圧化される
ことが望まれている。また、連続して接続する(接続体を生産する)場合、圧力が常に一
定ではないことが予想されるため、圧力条件が変動しても良好な接続状態が得られること
が望ましい。例えば130MPaから80MPaの範囲において使用できることが好まし
く、130MPaから50MPaの範囲において使用できることがより好ましい。特に、
80MPaから50MPaの範囲において使用できれば、上述の電子部品の薄型化やフレ
キシブル性の要請に応え易くなる。これは必ずしも連続的に接続する際に、上述の範囲で
変動してよいことを示すものではなく、この範囲で接続できれば連続接続時の変動に対し
てある程度許容できることを述べているにすぎない。この許容できる程度は、接続条件や
電子部品の条件、連続接続の装置の条件など、組み合わせによって変動するため、適宜調
整すればよい。
【0023】
樹脂コア導電粒子の圧縮回復率は、次のように測定することできる。微小圧縮試験機を
用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で樹脂コア導電粒子を圧
縮し、初期荷重時(荷重0.4mN)から荷重反転時(荷重5mN)までの変位をL2と
し、荷重反転時から最終荷重時(荷重0.4mN)までの変位をL1としたときの、L1
/L2×100(%)の値を圧縮回復率とすることができる。
【0024】
また、樹脂コア導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さK値(20%K値)は、次のように
測定することできる。微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)
の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gfの条件下で樹脂
コア導電粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得
られた測定値から、20%K値を下記式により求めることができる。なお、微小圧縮試験
機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられ
る。
K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:導電粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電粒子の半径(mm)
【0025】
樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子を被覆する導電層とを備える。ま
た、樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面に複数配置され、突起を
形成する絶縁性粒子と、樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを
備えることが好ましい。これにより、樹脂コア導電粒子が電極表面の酸化物層を突き破っ
て十分に食い込み、優れた導通信頼性を得ることができる。
【0026】
第1の構成例の樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面に複数付着
され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、樹脂コア粒子及び絶縁性粒子を被覆する導電層と
を備える。第1の構成例の樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子の表面に絶縁性粒子を付着
させた後、導電層を形成する方法により得ることができる。樹脂コア粒子の表面上に絶縁
性粒子を付着させる方法としては、例えば、樹脂コア粒子の分散液中に、絶縁性粒子を添
加し、樹脂コア粒子の表面に絶縁性粒子を、例えば、ファンデルワールス力により集積さ
せ、付着させることなどが挙げられる。また、導電層を形成する方法としては、例えば、
無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法などが挙げられ
る。これらの中でも導電層の形成が簡便である無電解めっきによる方法が好ましい。
【0027】
第2の構成例の樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面に複数付着
され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、樹脂コア粒子及び絶縁性粒子の表面を被覆する第
1の導電層と、導電層を被覆する第2の導電層とを備える。すなわち、第2の構成例は、
第1の構成例の導電層を2層構造としたものである。導電層を2層構造とすることにより
、最外殻を構成する第2の導電層の密着性を向上させ、導通抵抗を低下させることができ
る。第2の構成例の樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子の表面に絶縁性粒子を付着させた
後、第1の導電層を形成した後、第2の導電層を形成する方法により得ることができる。
樹脂コア粒子の表面上に絶縁性粒子を付着させる方法としては、例えば、樹脂コア粒子の
分散液中に、絶縁性粒子を添加し、樹脂コア粒子の表面に絶縁性粒子を、例えば、ファン
デルワールス力により集積させ、付着させることなどが挙げられる。また、第1の導電層
及び第2の導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっ
きによる方法、物理的蒸着による方法などが挙げられる。これらの中でも導電層の形成が
簡便である無電解めっきによる方法が好ましい。
【0028】
第3の構成例の樹脂コア導電粒子は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面を被覆する
第1の導電層と、第1の導電層の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、
第1の導電層及び絶縁性粒子の表面を被覆する第2の導電層とを備える。すなわち、第3
の構成例は、第1の導電層の表面に絶縁性粒子を付着させ、さらに第2の導電層を形成し
たものである。これにより、圧着時に絶縁性粒子が樹脂コア粒子に食い込むのを防止し、
突起が電極表面の酸化物層を容易に突き破ることができる。第3の構成例の樹脂コア導電
粒子は、樹脂コア粒子の表面に第1の導電層を形成した後、絶縁性粒子を付着させ、第2
の導電層を形成する方法により得ることができる。第1の導電層の表面上に絶縁性粒子を
付着させる方法としては、例えば、第1の導電層が形成された樹脂コア粒子の分散液中に
、絶縁性粒子を添加し、第1の導電層の表面に絶縁性粒子を、例えば、ファンデルワール
ス力により集積させ、付着させることなどが挙げられる。また、第1の導電層及び第2の
導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方
法、物理的蒸着による方法などが挙げられる。これらの中でも導電層の形成が簡便である
無電解めっきによる方法が好ましい。
【0029】
樹脂コア粒子としては、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコ
ーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などが挙げられ、また、これらの樹脂を構成するモノマー
に基づく繰り返し単位の少なくとも2種以上を組み合わせた構造を有する共重合体が挙げ
られる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、テトラメチロールメタンテトラアクリレー
ト、及びスチレンを組合せて得られる共重合体を用いることが好ましい。
【0030】
絶縁性粒子は、樹脂コア粒子の表面に複数付着され、電極表面の酸化物層を突き破るた
めの突起の芯材となる。絶縁性粒子は、モース硬度が7より大きく、9以上であることが
好ましい。絶縁性粒子の硬度が高いことにより、突起が電極表面の酸化物層を突き破るこ
とができる。また、突起の芯材が絶縁性粒子であることにより、導電粒子を使用したとき
に比べマイグレーションの要因が少なくなる。
【0031】
絶縁性粒子としては、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、
炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)などが挙げられ
、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で
も、経済性の観点からアルミナを用いることが好ましい。
【0032】
また、絶縁性粒子の平均粒子径は、好ましくは50nm以上250nm以下、より好ま
しくは100nm以上200nm以下である。また、樹脂コア粒子20の表面に形成され
た突起の個数は、好ましくは1~500、より好ましくは30~200である。このよう
な平均粒子径の絶縁性粒子20を用いて、樹脂コア粒子20の表面に所定数の突起を形成
することにより、突起が電極表面の酸化物を突き破り、電極間の接続抵抗を効果的に低く
することができる。
【0033】
導電層は、樹脂コア粒子及び絶縁性粒子を被覆し、複数の絶縁性粒子により隆起された
突起を有する。導電層は、ニッケル又はニッケル合金であることが好ましい。ニッケル合
金としては、Ni-W-B、Ni-W-P、Ni-W、Ni-B、Ni-Pなどが挙げら
れる。これらの中でも、低抵抗であるNi-W-Bを用いることが好ましい。
【0034】
また、導電層の厚みは、好ましくは50nm以上250nm以下、より好ましくは80
nm以上150nm以下である。導電層30の厚みが小さすぎると導電性粒子として機能
させるのが困難となり、厚みが大きすぎると突起の高さがなくなってしまう。
【0035】
樹脂コア導電粒子の平均粒子径は、1~30μmであってもよく、2~10μmである
ことが好ましい。本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求
めた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味する。また、画像型粒度分
布測定装置(例として、FPIA-3000(マルバーン社))によりN=1000以上
で測定して求めたものであってもよい。
【0036】
[絶縁性接着剤]
膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム
形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜
形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステ
ルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げ
られ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの
中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ま
しい。
【0037】
エポキシ樹脂は、3次元網目構造を形成し、良好な耐熱性、接着性を付与するものであ
り、固形エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。ここで、固形エ
ポキシ樹脂とは、常温で固体であるエポキシ樹脂を意味する。また、液状エポキシ樹脂と
は、常温で液状であるエポキシ樹脂を意味する。また、常温とは、JIS Z 8703で
規定される5~35℃の温度範囲を意味する。
【0038】
固形エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂と相溶し、常温で固体状であれば特に限
定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能
型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキ
シ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙られ、これらの
中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも
、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例と
しては、新日鉄住金化学(株)の商品名「YD-014」などを挙げることができる。
【0039】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型
エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂
、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以
上を組み合わせて用いることができる。特に、フィルムのタック性、柔軟性などの観点か
ら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例
としては、三菱化学(株)の商品名「EP828」などを挙げることができる。
【0040】
アニオン重合開始剤としては、通常用いられる公知の硬化剤を使用することができる。
例えば、有機酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、アミン化合物、ポリアミドアミン化合
物、シアナートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物、カルボン酸、三級アミン化
合物、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド酸塩、ポリメルカプタン系硬化剤、ユリ
ア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などが挙
げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる
。これらの中でも、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなる
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例とし
ては、旭化成イーマテリアルズ(株)の商品名「ノバキュア3941HP」などを挙げる
ことができる。
【0041】
また、絶縁性接着剤として、必要に応じて、応力緩和剤、シランカップリング剤、無機
フィラー等を配合してもよい。応力緩和剤としては、水添スチレン-ブタジエンブロック
共重合体、水添スチレン-イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。また、
シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、
メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。また、無機フィラーと
しては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げるこ
とができる。
【0042】
また、絶縁性接着剤中の樹脂コア導電粒子の分散方式は、塗布前の絶縁性接着剤に混ぜ
込むことで混練りさせてもよく、型を使用するなどしてフィルム状にした絶縁性接着剤に
導電粒子を個々に離間させてもよい。またこの場合、導電粒子を規則的に配列させてもよ
い。導電粒子を規則的に配列させる場合、フィルムの長手方向に繰り返し単位を有してい
ることが好ましい。
【0043】
このような導電材料によれば、樹脂コア導電粒子の圧縮回復率及び20%圧縮時の圧縮
硬さK値が大きいことにより、低圧条件の圧着でも樹脂コア導電粒子が酸化物層を突き破
ること可能となり、高い接続信頼性を得ることができる。
【0044】
<2.接続体の製造方法>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が20%以上で
あり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子と
を含有する導電材料を介して第1の電子部品と第2の電子部品とを配置する配置工程と、
圧着ツールにより第2の電子部品を前記第1の電子部品に圧着させるとともに、導電材料
を硬化させる硬化工程とを有する。ここで導電材料がフィルム体でない場合は、フィルム
状に塗布してもよく、接続箇所にピンポイントに導電材料を設けてもよい。
【0045】
また、本実施の形態に係る接続体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電
子部品と第2の電子部品とが接着された接着膜とを備え、接着膜は、絶縁性接着剤と、圧
縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm以上で
ある樹脂コア導電粒子とを含有する導電材料が硬化してなる。ここで導電材料がフィルム
体でない場合であっても、導電材料は圧着により層状(フィルム状)となる。
【0046】
本実施の形態によれば、低圧条件の圧着でも高圧条件の圧着と同様に樹脂コア導電粒子
が酸化物層を突き破ることが可能となり、高い接続信頼性を得ることができる。
【0047】
以下、前述の熱硬化型の異方性導電フィルムを用いた接続体の製造方法について説明す
る。図1は、本実施の形態に係る接続体の製造方法を模式的に示す断面図であり、図1
A)は、配置工程(S1)を示し、図1(B)は、硬化工程(S2)を示す。なお、異方
性導電フィルムは、前述と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0048】
[配置工程(S1)]
図1(A)に示すように、配置工程(S1)では、第1の電子部品10上に異方性導電
フィルム20を配置する。
【0049】
第1の電子部品10は、第1の端子列11を備え、第1の端子列11上に酸化物層が形
成されている。酸化物層は、配線の腐食を防止する保護層として機能し、例えばTiO
、SnO、SiOなどが挙げられる。
【0050】
第1の電子部品10は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第
1の電子部品10としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機E
L(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途な
どの透明基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、
特に限定されず、例えば、FR-4基材などのガラエポでもよく、熱可塑性樹脂などのプ
ラスチック、セラミックなども用いることができる。特に、第1の電子部品10が、PE
T(Poly Ethylene Terephthalate)基板などの低弾性率のプラスチック基板である場合
、圧着時の圧力を高くすることなく、基材変形の影響を軽減して低抵抗を実現できるため
、非常に有効である。なお、プラスチック基板の弾性率は、接続体に求められるフレキシ
ビリティや、屈曲性と後述する駆動回路素子3等の電子部品との接続強度との関係等の要
素を考慮して求められるが、一般に2000MPa~4100MPaとされる。また、透
明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板な
どが挙げられる。耐熱性の観点からは、セラミック基板が好適に用いられる。
【0051】
異方性導電フィルム20は、前述した異方性導電フィルムと同様であるため、ここでは
詳細な説明を省略する。異方性導電フィルム20の厚みは、接続する対象によって適宜調
整することができるため特に制限はないが、取り扱いを容易にするためには下限を10μ
m以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。上限は、巻装体にした場合のはみ出し
防止の観点から、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。また、導電粒
子含有層及び導電粒子非含有層からなる2層型の異方性導電フィルムを用いてもよい(3
層型以上の多層であってもよい)。上述の異方性導電フィルム20の厚みは、多層の場合
は全体の合計の厚みを指す。
【0052】
[硬化工程(S2)]
図1(B)に示すように、硬化工程(S2)では、異方性導電フィルム20上に第2の
電子部品30を配置し、熱圧着ツール40により第2の電子部品30を第1の電子部品1
0に熱圧着させる。
【0053】
第2の電子部品30は、第1の端子列11に対向する第2の端子列31を備える。第2
の電子部品30は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電
子部品30としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC
:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板、ICをF
PCに実装したCOF(Chip On Film)などが挙げられる。
【0054】
硬化工程(S2)では、圧着ツール40を用いて、一例として40MPa~150MP
aの圧力、好ましくは50MPa~130MPaの圧力、低圧としてはより好ましくは5
0MPa~80MPaの圧力で押圧する。また、硬化工程(S2)では、圧着ツール40
を用いて、好ましくは250℃以下の温度、より好ましくは230℃以下の温度、さらに
好ましくは220℃以下の温度で押圧する。これにより、圧着ツール40の熱により樹脂
が溶融し、圧着ツール40により第2の電子部品が十分に押し込まれ、樹脂コア導電粒子
21が端子間に挟持された状態で樹脂が熱硬化するため、優れた導通性を得ることができ
る。尚、40MPa~150MPaとは40MPa以上、150MPa以下を指す。他の
表記においても同様の趣旨である。
【0055】
また、硬化工程(S2)では、圧着ツール40と第2の電子部品30との間に緩衝材を
使用してもよい。緩衝材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetraf
luoroethylene)、シリコンラバーなどを用いることができる。
【0056】
このような接続体の製造方法によれば、樹脂コア導電粒子21の圧縮回復率及び20%
圧縮時の圧縮硬さK値が大きいことにより、低圧条件の圧着でも樹脂コア導電粒子が酸化
物層を突き破ること可能となり、高い接続信頼性を得ることができる。
<3.実施例>
【実施例0057】
以下、本技術の実施例について説明する。本実施例では、異方性導電接着剤の一形態と
して異方性導電フィルムを作製し、接続体を作製した。そして、接続体の初期の導通抵抗
、及び信頼性試験後の導通抵抗を測定した。なお、本技術は、これらの実施例に限定され
るものではない。
【0058】
[異方性導電フィルムの作製]
表1に示す樹脂コア導電粒子を含有する導電粒子含有層と導電粒子非含有層とが積層さ
れた2層構造の異方性導電フィルムを作製した。先ず、フェノキシ樹脂(YP50、新日
鐵化学(株))20質量部、液状エポキシ樹脂(EP828、三菱ケミカル(株))30
質量部、固形エポキシ樹脂(YD-014、新日鐵化学(株))10質量部、マイクロカ
プセル型潜在性硬化剤(ノバキュア3941H、旭化成イーマテリアルズ(株))30質
量部、樹脂コア導電粒子を配合して、厚み8μmの導電粒子含有層を得た。樹脂コア導電
粒子は、フィルム乾燥後に個数密度が約50000個/mmになるように調整して配合
した。個数密度は、金属顕微鏡により100μm×100μmの領域を、任意に抜き取っ
た10箇所以上で観察することで計測し、求めた。
【0059】
次に、フェノキシ樹脂(YP50、新日鐵化学(株))20質量部、液状エポキシ樹脂
(EP828、三菱ケミカル(株))30質量部、固形エポキシ樹脂(YD-014、新
日鐵化学(株))10質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤(ノバキュア3941H
、旭化成イーマテリアルズ(株))30質量部を配合して、厚み6μmの導電粒子非含有
層を得た。
【0060】
そして、導電粒子含有層と導電粒子非含有層とを貼り合わせて、厚み14μmの2層構
造の異方性導電フィルムを得た。
【0061】
[接続体の作製]
以下の方法により接続体を製造し、以下に示す評価を行った。ガラス基板として、Ti
/Al膜がパターニングされた平均厚み0.3mmのTi/Al配線板を用いた。電子部
品として、ICチップ(1.8×20mm、t(厚み)=0.5mm、Au-plate
d bump 30μm×85μm、h(高さ)=9μm)を用いた。
【0062】
異方性導電フィルムを所定幅にスリットして、Ti/Al配線板に張り付けた。その上
にICチップを仮固定した後、緩衝材として平均厚み50μmのテトラフルオロエチレン
が被覆されたヒートツールを用いて、温度220℃、圧力130MPa、時間5secの
圧着条件1、温度220℃、圧力80MPa、時間5secの圧着条件2、温度220℃
、圧力50MPa、時間5secの圧着条件3で圧着を行い、接続体を完成させた。
【0063】
[導通抵抗の測定]
ICチップとTi/Al配線板との接続状態について、デジタルマルチメータを使用し
て、初期及び信頼性試験後における導通抵抗(Ω)を測定した。導通抵抗値の測定は、ベ
アチップのバンプに接続されたフレキシブル配線板の配線にデジタルマルチメータを接続
し、50Vの電圧測定でいわゆる4端子法にて導通抵抗値を測定した。信頼性試験は、温
度85℃、湿度85%、時間500hrの条件とした。
【0064】
[導通抵抗の評価]
初期の導通抵抗値は、1Ω未満を「A」、1Ω以上2Ω未満を「B」、2Ω以上を「C
」と評価した。また、信頼性試験後の導通抵抗値は、2Ω未満を「A」、2Ω以上5Ω未
満を「B」、5Ω以上を「C」と評価した。実用上はB以上であればよく、Aであれば好
ましい。
【0065】
また、初期の導通抵抗値に対する信頼性試験後の導通抵抗値の上昇率を算出した((信
頼性試験後の導通抵抗値/初期の導通抵抗値)×100)。抵抗値上昇率は200%以下
であることが好ましいが、初期導通抵抗評価、及び信頼性試験後導通抵抗評価がA評価で
あれば、抵抗値上昇率が200%を超えても問題ない。信頼性試験後導通抵抗値が2Ω未
満における抵抗値の変動のためである。初期導通抵抗評価、及び信頼性試験後導通抵抗評
価が異なる圧力条件でA評価であり、且つ抵抗値上昇率が200%以下であれば、圧力変
動の影響にも耐えられることから好ましく、50MPaおよび80MPaが満足されてい
れば低圧で使用できる点でより好ましく、全ての圧力条件で満足されていれば更により好
ましい。また、初期導通抵抗評価、及び信頼性試験後導通抵抗評価がA評価であり、且つ
抵抗値上昇率が160%以下であれば、抵抗値の変動はより狭い範囲で安定していること
になるため、より好ましい。抵抗値上昇率が160%以下であることは、初期抵抗値が1
Ω弱であっても、信頼性試験抵抗値が2Ω未満に十分な余裕をもてることを表す。圧力条
件による違いについては、上記同様のため省略する。
【0066】
[実験例1]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が64%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が12600N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した
【0067】
樹脂コア導電粒子は、次のようにして作製した。ジビニルベンゼン、スチレン、ブチル
メタクリレートの混合比を調整した溶液に重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを
投入して高速で均一攪拌しながら加熱を行い、重合反応を行うことにより微粒子分散液を
得た。微粒子分散液をろ過し、減圧乾燥することにより微粒子の凝集体であるブロック体
を得た。そして、ブロック体を粉砕(解砕)することにより、平均粒子径3.0μmのジ
ビニルベンゼン系樹脂粒子を得た。
【0068】
また、絶縁性粒子として、平均粒子径が150nmであるアルミナ(Al)を使
用した。また、導電層用のメッキ液として、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチル
アミンボラン0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッ
ケルめっき液(pH8.5)を含むニッケルメッキ液を使用した。
【0069】
先ず、パラジウム触媒液を5wt%含むアルカリ溶液100質量部に対し、樹脂コア粒
子10質量部を超音波分散器で分散させた後、溶液をろ過し、樹脂コア粒子を取り出した
。次いで、樹脂コア粒子10質量部をジメチルアミンボラン1wt%溶液100質量部に
添加し、樹脂コア粒子の表面を活性化させた。そして、樹脂コア粒子を十分に水洗した後
、蒸留水500質量部に加え、分散させることにより、パラジウムが付着された樹脂コア
粒子を含む分散液を得た。
【0070】
次に、絶縁性粒子1gを3分間かけて分散液に添加し、絶縁性粒子が付着された粒子を
含むスラリーを得た。そして、スラリーを60℃で撹拌しながら、スラリー中にニッケル
メッキ液を徐々に滴下し、無電解ニッケルメッキを行った。水素の発泡が停止するのを確
認した後、粒子をろ過し、水洗し、アルコール置換した後に真空乾燥し、アルミナで形成
された突起と、Ni-Bメッキの導電層とを有する導電性粒子を得た。この導電性粒子を
走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、導電層の厚みは約100nmであった
【0071】
樹脂コア導電粒子の圧縮回復率及び20%圧縮時の圧縮硬さK値は、樹脂コア粒子を作
製する際のジビニルベンゼン、スチレン、ブチルメタクリレートの混合比を調整すること
により、所定値を得た。
【0072】
そして、異方性導電フィルムを用いて温度220℃、圧力130MPa、時間5sec
の圧着条件1、温度220℃、圧力80MPa、時間5secの圧着条件2、温度220
℃、圧力50MPa、時間5secの圧着条件3で接続体を製造した。
【0073】
[実験例2]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が72%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が10000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した
以外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0074】
[実験例3]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が67%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が9700N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した以
外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0075】
[実験例4]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が57%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が9000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した以
外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0076】
[実験例5]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が65%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が4800N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した以
外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0077】
[実験例6]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が15%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が22000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した
以外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
[実験例7]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が25%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が14000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した
以外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
[実験例8]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が24%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が11000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した
以外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
[実験例9]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が40%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が6000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した以
外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
[実験例10]
表1に示すように、平均粒径が3μm、圧縮回復率が37%、20%圧縮時の圧縮硬さ
K値が1000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いて異方性導電フィルムを作製した以
外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0078】
【表1】
【0079】
実験例10のように、20%圧縮時の圧縮硬さK値が4000N/mm未満である樹
脂コア導電粒子を用いた場合、圧力50MPaの条件、圧力80MPaの条件、及び圧力
130MPaの条件での初期及び信頼性試験後の導通抵抗評価がCであった。
【0080】
実験例6のように、20%圧縮回復率が20%未満であり、20%圧縮時の圧縮硬さK
値が20000N/mmを超える樹脂コア導電粒子を用いた場合、圧力50MPaの条
件及び圧力80MPaの条件での初期及び信頼性試験後の導通抵抗評価がCであったもの
の、圧力130MPaの条件での初期及び信頼性試験後の導通抵抗評価がBであった。
【0081】
実験例9のように、20%圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK
値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子を用いた場合、圧力50MPaの条
件での初期の導通抵抗評価がCであったものの、圧力80MPaの条件及び圧力130M
Paの条件での信頼性試験後の導通抵抗評価がBであった。
【0082】
実験例7、8のように、20%圧縮回復率が20%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬
さK値が10000N/mm以上である樹脂コア導電粒子を用いた場合、圧力50MP
aの条件での初期の導通抵抗評価がCであったものの、圧力80MPaの条件での信頼性
試験後の導通抵抗評価がBであり、圧力130MPaの条件での信頼性試験後の導通抵抗
評価がAであった。
【0083】
実験例1~5のように、20%圧縮回復率が45%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬
さK値が4000N/mm以上である樹脂コア導電粒子を用いた場合、圧力50MPa
の条件、圧力80MPaの条件、及び圧力130MPaの条件での信頼性試験後の導通抵
抗評価がAであった。
【0084】
また、表1から、130MPaおよび80MPaの圧力条件の実験例1から5及び7か
ら9が実用上問題ないことが分かった。特に、実験例1~5が良好であり、接続時の圧力
範囲が広いことから、実仕様に適していることが分かった。また、130MPa、80M
Pa、50MPaの圧力条件の全てで良好であることからも、実験例1~5が実仕様に適
していることが分かった。特に、実験例1及び2は、全ての圧力条件で初期および信頼性
試験後の導通抵抗評価がAであり、且つ抵抗値上昇率が160%以下と安定していること
から、より優れた効果を示している。
【0085】
実装部品へのダメージが懸念されるため、低圧条件で圧着して高い接続信頼性を得るこ
とが要求される。50MPaの信頼性試験後の実験例1~5の抵抗値は、「実験例1<実
験例2<実験例3<実験例4<実験例5」の関係となり、最も高い実験例5でも0.7Ω
未満であった。尚、実験例1は実験例5の約50%の抵抗値であった。実験例3は抵抗値
上昇率が200%を超えているが、これは抵抗値が十分に小さい上でのことであり、A評
価である2Ω未満(正確には0.7Ω未満)と良好であるため問題はない。実験例1と実
験2に関しては、抵抗値上昇率も比較的低く、比較的低圧な50MPaでも良好な実装状
態が得られていることが分かった。
【0086】
[粒子分散方式]
次に、実験例1、2で用いた樹脂コア導電粒子を用いて、ランダム系又は配列系の粒子
分散方式の違いによる粒子捕捉性及び接続信頼性について検討した。接続信頼性について
は、上述と同様に、接続体の初期の導通抵抗、及び信頼性試験後の導通抵抗を測定した。
【0087】
[粒子捕捉性(捕捉率、粒子捕捉効率)]
下記式により捕捉率を算出した。
[(接続後のバンプ1個に捕捉されている粒子個数(個)/バンプ1個の面積(mm
)) / (接続前の異方性導電フィルムの個数密度(個/mm))]×100
接続後のバンプに捕捉されている粒子個数は、ガラス基板側から金属顕微鏡で観察した
圧痕を、金属顕微鏡により観察し、計測して求めた。尚、捕捉数を確認したバンプは12
0個(N=120)とし、捕捉率の平均値を粒子捕捉効率とした(小数点以下は四捨五入
した)。
【0088】
[実験例11]
表2に示すように、実験例1と同様の、平均粒径が3μm、圧縮回復率が64%、20
%圧縮時の圧縮硬さK値が12600N/mmの樹脂コア導電粒子を用いた。樹脂コア
導電粒子を配線基板上に所定の配列パターンに整列させた後、絶縁性樹脂層が設けられた
フィルムによって樹脂コア導電粒子を転写することにより導電粒子含有層を形成した。配
列パターンは、導電粒子をフィルム面視野で六方格子に配置した形状であり、粒子個数密
度を28000個/mmとした。これ以外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0089】
[実験例12]
表2に示すように、実験例2と同様の、平均粒径が3μm、圧縮回復率が72%、20
%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mmの樹脂コア導電粒子を用いた。樹脂コア
導電粒子を配線基板上に所定の配列パターンに整列させた後、絶縁性樹脂層が設けられた
フィルムによって樹脂コア導電粒子を転写することにより導電粒子含有層を形成した。配
列パターンは、導電粒子をフィルム面視野で六方格子に配置した形状であり、粒子個数密
度を28000個/mmとした。これ以外は、実験例1と同様に接続体を製造した。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示すように、粒子分散方式がランダムの場合の粒子捕捉効率は、実験例1が26
%、実験例2が28%であった。また、粒子分散方式が配列の場合の粒子捕捉効率は、実
験例11が52%、実験例12が51%であった。即ち、粒子分散方式が配列であるほう
が、接続時の導電粒子の粒子捕捉効率が高いことが分かった。
【0092】
また、実験例1、2、11、12より、粒子分散方式がランダム系であっても配列系と
同等の接続信頼性が得られることが分かった。すなわち、粒子分散方式としてランダム系
を採用することにより、材料コストを抑えることが可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0093】
10 第1の電子部品、11 第1の端子列、20 異方性導電接着フィルム、21
樹脂コア導電粒子、30 第2の電子部品、31 第2の端子列、40 圧着ツール


図1
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着剤と、
圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mm 以上である樹脂コア導電粒子とを含有し、
前記樹脂コア導電粒子が、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子を被覆する導電層とを有する導電フィルム
【請求項2】
前記導電層の厚みが、80nm以上150nm以下である請求項1記載の導電フィルム。
【請求項3】
前記導電層の厚みが、80nm以上120nm以下である請求項1記載の導電フィルム。
【請求項4】
前記圧縮回復率が、初期荷重時(荷重0.4mN)から荷重反転時(荷重5mN)までの変位をL2とし、荷重反転時から最終荷重時(荷重0.4mN)までの変位をL1としたときの、L1/L2×100(%)の値である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電フィルム
【請求項5】
前記樹脂コア導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さK値が20000N/mm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電フィルム
【請求項6】
前記絶縁性接着剤が、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、アニオン重合開始剤とを含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電フィルム
【請求項7】
前記樹脂コア導電粒子を含む導電粒子含有層と、前記樹脂コア導電粒子を含まない導電粒子非含有層とを備える請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電フィルム
【請求項8】
前記樹脂コア導電粒子が、面視野で配列されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の導電フィルム
【請求項9】
絶縁性接着剤と、圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mm 以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電フィルムを介して第1の電子部品と第2の電子部品とを配置する配置工程と、
圧着ツールにより前記第2の電子部品を前記第1の電子部品に圧着させるとともに、前記導電フィルムを硬化させる硬化工程とを有し、
前記樹脂コア導電粒子が、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子を被覆する導電層とを有する接続体の製造方法。
【請求項10】
前記硬化工程では、40MPa~150MPaの条件で前記第2の電子部品を前記第1の電子部品に圧着させる請求項7記載の接続体の製造方法。
【請求項11】
第1の電子部品と、第2の電子部品と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とが接着された接着膜とを備え、
前記接着膜は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mm 以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電フィルムが硬化してなり、
前記樹脂コア導電粒子が、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子を被覆する導電層とを有する接続体。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
すなわち、本技術に係る導電フィルムは、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mm 以上である樹脂コア導電粒子とを含有し、前記樹脂コア導電粒子が、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子を被覆する導電層とを有する
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本技術に係る接続体の製造方法は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mm 以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電フィルムを介して第1の電子部品と第2の電子部品とを配置する配置工程と、圧着ツールにより前記第2の電子部品を前記第1の電子部品に圧着させるとともに、前記導電フィルムを硬化させる硬化工程とを有し、前記樹脂コア導電粒子が、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子を被覆する導電層とを有する
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本技術に係る接続体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とが接着された接着膜とを備え、前記接着膜は、絶縁性接着剤と、圧縮回復率が60%以上であり、20%圧縮時の圧縮硬さK値が10000N/mm 以上である樹脂コア導電粒子とを含有する導電フィルムが硬化してなり、前記樹脂コア導電粒子が、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子を被覆する導電層とを有する