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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173214
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】放射性医薬錯体
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/10 20060101AFI20221111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221111BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
A61K51/10 100
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136797
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2018547324の分割
【原出願日】2017-03-20
(31)【優先権主張番号】16162123.0
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】515280274
【氏名又は名称】バイエル・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラース・リンデン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・カスバートソン
(57)【要約】
【課題】トリウム-227とHER2抗原を標的にする組織標的化部分と複合化されている特定の八座配位子との錯体の形成のための方法を提供する。錯体、および疾患、特に新生物性疾患のそのような錯体の投与を含む治療を提供する。
【解決手段】本発明は、組織標的化トリウム錯体の形成のための方法を提供し、前記方法は、
a)N位がメチル基で置換された4個のヒドロキシピリジノン(HOPO)部分と、末端がカルボン酸基のカップリング部分とを含む八座キレート剤を形成するステップと、
b)前記配位キレート剤と、HER2を標的化する少なくとも1つの組織標的化部分とをカップリングさせるステップと、
c)前記組織標的化キレート剤を、少なくとも1つのα放出トリウム同位体のイオンを含む水溶液と接触させるステップと
を含む。
そのような組織標的化トリウム錯体の投与を含む新生物性または過形成性疾患の治療の方法、ならびに錯体および対応する医薬製剤も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物:
【化1】
を含む組織標的化トリウム錯体であって、
式中、
【化2】
は、
1)配列番号1及び配列番号2、
2)配列番号1及び配列番号3、
3)配列番号1及び配列番号4、
4)配列番号1及び配列番号5、又は、
5)配列番号1及び配列番号6
を含むトラスツズマブの変異体、並びに、227Thであるα放出トリウム放射性核種の4イオンを含む組織標的化部分を示す、組織標的化トリウム錯体。
【請求項2】
少なくとも1つの請求項1に記載の組織標的化トリウム錯体を含む、医薬製剤。
【請求項3】
更にクエン酸緩衝液を含む、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
p-アミノ酪酸(PABA)、並びに、任意選択でエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又は少なくとも1つのポリソルベートを更に含む、請求項2又は3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
乳癌、子宮内膜癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、若しくは、膵臓癌である過形成性疾患及び/又は新生物性疾患の治療において使用するための、請求項1に記載の組織標的化トリウム錯体又は請求項2から4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリウム-227とHER2抗原を標的にする組織標的化部分と複合化されている特定の八座配位子との錯体の形成のための方法に関する。本発明はまた、錯体、および疾患、特に新生物性疾患のそのような錯体の投与を含む治療にも関する。
【背景技術】
【0002】
特定の細胞を死滅させることは、哺乳動物被験体の多様な疾患の治療の成功に不可欠でありうる。この典型的な例は、肉腫および癌腫などの悪性疾患の治療である。しかし、特定の細胞種を選択的に排除することも、その他の疾患、特に過形成性疾患および新生物性疾患の治療において重要な役割を果たしうる。
【0003】
現在、選択的治療の最も一般的な方法は、外科手術、化学療法および外部ビーム照射療法である。しかし、標的化された放射性核種治療は、細胞毒性の高い放射線を疾患に関連する細胞種に特異的に送達する可能性をもつ、有望な発展途上の領域である。現在ヒトでの使用が認可されている放射性医薬品の最も一般的な形態は、β放出および/またはγ放出放射性核種を用いる。しかし、その特異性の高い細胞死滅の可能性のために、α線放射性核種を治療で使用することに関心が寄せられている。
【0004】
生理学的環境での典型的なα放射体の放射範囲は、通常100マイクロメートル未満であり、細胞直径のほんの数倍に相当する。このことにより、これらの供給源は微小転移を含む腫瘍の治療に非常に適したものになる。なぜなら、それらは腫瘍内の隣接細胞に届く範囲を有するが、それらが的を絞って標的化されるならば、放射されるエネルギーのほとんどは標的細胞を越えないためである。従って、あらゆる細胞を標的化する必要はなく、周囲の健康な組織への損傷が最小限に抑えられる(Feinendegenら、Radiat Res 148:195-201(1997)参照)。対照的に、β粒子の範囲は水中で1mm以上である(Wilbur、Antibody Immunocon Radiopharm 4:85-96(1991)参照)。
【0005】
α粒子線のエネルギーは、β粒子、γ線およびX線によって運ばれるエネルギーと比較して高く、一般に5~8MeV、すなわちβ粒子のエネルギーの5~10倍であり、γ線のエネルギーの20倍以上である。従って、この非常に短い距離での大量のエネルギーの蓄積により、γおよびβ線と比較して非常に高い線エネルギー付与(LET)、高い相対生物学的効力(RBE)および低い酸素効果比(OER)がα線に与えられる(Hall、「Radiobiology for the radiologist」、第5版、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia PA、USA、2000参照)。このことが、α線放射性核種の例外的な細胞毒性の理由であり、また、そのような同位体の生物学的な標的化ならびに容認できない副作用を回避するために必要なα線放射性核種分布の制御レベルおよび研究に厳しい要求を課している。
【0006】
現在まで、放射免疫治療での適用に関して、主な注目は211At、213Biおよび225Acに集中し、これらの3つの核種が免疫療法の臨床治験で調査されてきた。
【0007】
これまでに提案されてきた放射性核種のいくつかは短寿命、すなわち半減期が12時間未満である。そのような短い半減期は、商業的な方法でこれらの放射性核種に基づく放射性医薬品を製造し流通させることを困難にする。短寿命の核種を投与することも、標的部位に達するまでに体内で放出される放射線量の割合を増加させる。
【0008】
α放出からの反跳エネルギーは、多くの場合、親核種の崩壊の位置から娘核種を放出させる。この反跳エネルギーは、親核種を保持していたかもしれない化学的環境(例えば、親核種がキレート剤などの配位子によって錯化された場所)から多くの娘核種が飛び出すのに十分である。これは、娘核種が同じ配位子と化学的に適合性である、すなわち、同じ配位子によって錯化可能な場合でさえも起こる。同様に、娘核種がガス、特にラドンなどの希ガスである場合、または配位子と化学的に適合しない場合、この放出効果はさらに大きくなる。娘核種の半減期が数秒以上になると、娘核種は、親核種を保持する錯化剤(complexant)によって拘束されずに血液系に拡散する可能性がある。その後、これらの遊離放射性娘核種は、望ましくない全身毒性を引き起こす可能性がある。
【0009】
223Ra娘同位体の制御が維持される条件下でトリウム-227(T1/2=18.7日)を使用することが数年前に提案された(国際公開第01/60417号および国際公開第02/05859号参照)。これは、娘核種を閉じた環境に保持することのできる担体系を用いる状況での使用であった。一例では、放射性核種はリポソーム内に配置され、リポソームの(反跳距離と比較して)相当な大きさが娘核種をリポソーム内に保持するのを助ける。第2の例では、骨基質に取り込まれ、そのために娘核種の放出を制限する放射性核種の向骨性錯体が使用される。これらは非常に有利な方法である可能性があるが、リポソームの投与は一部の状況では望ましくなく、娘同位体を保持するように放射性核種を石灰化した基質で取り囲むことのできない多くの軟部組織の疾患がある。
【0010】
さらに最近には、227Thの崩壊によって放出される223Ra娘核種の毒性は、同等の核種での先の試験から予測されるよりも哺乳動物の体内ではるかに大幅に許容され得ることが確証された。上で考察したトリウム-227のラジウム娘核種を保持する具体的な手段がない場合、トリウム-227崩壊から得られる治療効果を達成するために必要な投与量は非常に毒性が高くなり、ラジウム娘核種の崩壊からの放射線量は致死的となる可能性が高くなるため、すなわち治療濃度域が存在しないため、ラジウム毒性に関する公開されている情報は、トリウム-227を治療薬として使用することが不可能であることを明らかにした。
【0011】
国際公開第04/091668号には、容認できない骨髄毒性を引き起こすのに十分な量のラジウム-223を生じることなく、治療上有効な量の標的化されたトリウム-227放射性核種を被験体(一般に哺乳動物)に投与することのできる治療処置濃度域が存在するという、予想外の知見が記載されている。そのため、これは骨組織と軟組織の両方の部位であらゆる種類の疾患の治療および予防に使用することができる。
【0012】
上記の進展を考慮して、生成された223Raに起因する致死的な骨髄毒性を伴わずに、体内放射性核種治療においてα放出トリウム-227核を用いることが現在可能である。それにもかかわらず、治療濃度域は比較的狭いままであり、α放出放射性同位体を絶対的に必要な量以上は被験体に投与しないことが全ての例において望ましい。そのため、α放出トリウム-227核が高度な信頼性で錯化され標的化されることができれば、この新しい治療濃度域の有用な開拓は非常に促進されるであろう。
【0013】
放射性核種は絶えず崩壊しているので、単離から対象への投与までの間の材料の取り扱いに費やされる時間は非常に重要である。また、好ましくは標的化実体の特性に不可逆的に影響を与えない、数ステップ、短いインキュベーション期間および/または温度を必要とする、α放出トリウム核が錯化され、標的化され、かつ/または迅速かつ簡便に調製される形態で投与されることができる場合もかなりの価値があるであろう。さらに、投与前に除去する必要のない溶媒中(実質的に水溶液中)で実行することのできるプロセスは、溶媒の蒸発または透析ステップを回避するというかなりの利点を有する。
【0014】
また、安定性が大幅に向上したことが示されたトリウム標識製剤を開発することができれば、大きな価値があると思われる。これは、頑強な製品品質基準が順守されると同時に、患者用量を送達する補給経路(logistical path)を可能にすることを確実にするために極めて重要である。従って1~4日の期間で放射線分解が最小の製剤が好ましい。
【0015】
ヒドロキシピリジノン基を含有する八座キレート剤は、α放射体トリウム-277を配位すること、その後の標的化部分との結合に適していることがこれまでに示されている(国際公開第2011098611号)。アミンに基づく足場にリンカー基によって連結された4個の3,2-ヒドロキシピリジノン基を含有し、標的化分子との複合化に使用される別個の反応性基を有する、八座キレート剤が記載されている。以前の発明の好ましい構造は、3,2-ヒドロキシピリジノン基を含み、化合物ALG-DD-NCSに示されるような抗体成分との好ましいカップリング化学としてイソチオシアネート部分を用いた。イソチオシアネートは、アミン基を介してタンパク質に標識を付けるために広く使用されている。イソチオシアネート基は、タンパク質のアミノ末端および第一級アミンと反応し、抗体を含む多くのタンパク質の標識に使用されてきた。これらの複合体に形成されるチオ尿素結は適度に安定しているが、蛍光イソチオシアネートから調製された抗体複合体は時間とともに劣化することが報告されている。[Banks PR、Paquette DM.、Bioconjug Chem(1995)6:447-458]フルオレセインイソチオシアネートとアミンとの反応によって形成されたチオ尿素も、塩基性条件下でグアニジンへ変換されやすい[Dubey I、Pratviel G、Meunier BJournal:Bioconjug Chem(1998)9:627-632]。生物学的半減期の長いモノクローナル抗体と結合したトリウム-227の長い崩壊半減期(18.7日)のために、より安定した結合部分を使用して、生体内でも貯蔵にも化学的により安定な複合体を生成することが望ましい。
【0016】
ヒドロキシピリジノン配位子の複合化について最も関連のある以前の研究が国際公開第2013/167754号に公開され、ヒドロキシアルキル官能基を含む水溶性部分を有する配位子を開示している。このキレートクラスのヒドロキシル基の反応性のために、活性化エステルとしての活性化は、複数の競合反応がエステル化反応を通じて生成物の複合混合物を導くことを可能にするので不可能である。そのため、国際公開第2013/167754号の配位子は、上記のように安定性の低いチオ尿素複合体を与えるイソチオシアネートなどの代替化学を介して組織標的化タンパク質と結合されなければならない。その上、国際公開第2013167755号および国際公開第2013167756号は、それぞれCD33およびCD22標的化抗体に適用されたヒドロキシアルキル/イソチオシアネート複合体を開示する。
【0017】
受容体チロシンキナーゼのHERファミリーは、細胞増殖、分化および生存の重要なメディエーターである。この受容体ファミリーには、上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB1、またはHER1)、HER2(ErbB2またはp185neu)、HER3(ErbB3)およびHER4(ErbB4またはtyro2)を含む4つの異なるメンバーが含まれる。
【0018】
HER2の過剰発現(頻繁であるが遺伝子増幅のため不均一でない)は、胃、子宮内膜、唾液腺、肺(Jung)、腎臓、結腸、甲状腺、膵臓および膀胱の癌腫を含む癌腫で観察されている。
【0019】
HER2は、モノクローナル抗体トラスツズマブの標的である。トラスツズマブは、1998年9月25日に米国食品医薬品局から、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌の患者の治療用に販売承認を受けた。トラスツズマブを作製するための方法は国際公開第92/22653号に開示される。
【0020】
本発明者らは今回、特定のキレート剤と、標的化部分としてHER2に対するモノクローナル抗体とをカップリングさせ、続いてα放出トリウムイオンを付加することによって組織標的化錯体を形成することにより、穏和な条件下で、錯体の貯蔵および投与に対してより安定なままである結合部分を用いて錯体を迅速に生成することを確立した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第01/60417号
【特許文献2】国際公開第02/05859号
【特許文献3】国際公開第04/091668号
【特許文献4】国際公開第2011098611号
【特許文献5】国際公開第2013/167754号
【特許文献6】国際公開第2013167755号
【特許文献7】国際公開第2013167756号
【特許文献8】国際公開第92/22653号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Feinendegenら、Radiat Res 148:195-201(1997)
【非特許文献2】Wilbur、Antibody Immunocon Radiopharm 4:85-96(1991)
【非特許文献3】Hall、「Radiobiology for the radiologist」、第5版、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia PA、USA、2000
【非特許文献4】Banks PR、Paquette DM.、Bioconjug Chem(1995)6:447-458
【非特許文献5】Dubey I、Pratviel G、Meunier BJournal:Bioconjug Chem(1998)9:627-632
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
そのため、第1の態様では、本発明は、組織標的化トリウム錯体の形成のための方法を提供し、前記方法は、
a)式(I)または(II)の八座キレート剤:
【化1】
を形成するステップであって、
上式で、RCは、末端がカルボン酸部分のリンカー部分、例えば
[-CH2-Ph-N(H)-C(=O)-CH2-CH2-C(=O)OH]、
[-CH2-CH2-N(H)-C(=O)-(CH2-CH2-O)1-3-CH2-CH2-C(=O)OH]または
[-(CH21-3-Ph-N(H)-C(=O)-(CH21-5-C(=O)OH]などであり、Phはフェニレン基、好ましくはパラ-フェニレン基である、ステップと、
b)前記八座キレート剤を、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖:
軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号1)
および次の配列2~6のいずれか1つと配列類似性または同一性をもつペプチド鎖:
重鎖
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号2)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号3)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号4)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号5) EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREENYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号6)
を含む組織標的化部分とカップリングさせ、
それにより組織標的化キレート剤を生成するステップと、
c)前記組織標的化キレート剤を、前記α放出トリウム同位体227Thの4イオンを含む水溶液と接触させるステップと
を含む。
【0024】
そのような錯体において(そして好ましくは本発明の全ての態様において)、トリウムイオンは、通常、八座ヒドロキシピリジノンを含有する配位子によって錯化され、それは次にアミド結合を介して組織標的化部分と結合される。
【0025】
一般に、この方法は、インサイチュ活性化によるか、または活性エステル自体の合成および単離によって、活性エステル(例えばN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル))の形で活性化され得る反応性カルボン酸塩官能基を含む3,2-ヒドロキシピリジノンに基づく八座キレートの合成のための方法となる。
【0026】
結果として得られるNHSエステルは、簡単な複合化ステップで使用して、広範囲のキレート修飾タンパク質形式を産生することができる。その上、安定性の高い抗体複合体はトリウム-227で容易に標識される。これは、周囲温度またはそれに近い温度で、一般に高い放射化学的収率および純度で行われてよい。
【0027】
本発明の方法は、好ましくは水溶液中で実行され、一実施形態では、有機溶媒の不在下または実質的な不在下(1容量%未満)で実行されてよい。
【0028】
本発明の組織標的化錯体は、ヒトまたは非ヒト動物対象への投与に適した薬剤に調剤されてよい。
【0029】
そのため、第2の態様では、本発明は、本明細書に記載される組織標的化錯体を形成するステップとそれに続いて少なくとも1つの製薬担体および/または賦形剤を添加するステップを含む医薬製剤の生成ための方法を提供する。適した担体および賦形剤としては、緩衝液、キレート剤、安定化剤、およびその他の当技術分野で公知であり本明細書のいずれの態様にも記載される適した成分が挙げられる。
【0030】
さらなる態様では、本発明は組織標的化トリウム錯体をさらに提供する。そのような錯体は、本明細書の全文にわたって記載される特長、特に本明細書に記載される好ましい特徴を有することになる。錯体は、本明細書に記載される方法のいずれかによって形成されるかまたは形成可能でありうる。そのような方法は、このように本明細書中の態様または実施形態に記載されるような少なくとも1つの組織標的化トリウム錯体をもたらす。
【0031】
なおさらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される錯体のいずれかを含む医薬製剤を提供する。製剤は、本明細書に記載される方法のいずれかによって形成されるかまたは形成可能であり、少なくとも1つの緩衝液、安定剤および/または賦形剤を含んでよい。緩衝液および安定剤の選択は、それらが一緒に組織標的化錯体を放射線分解から保護するのに役立つようなものであってよい。一実施形態では、製剤中の錯体の放射線分解は、製剤の製造の数日後でさえも最小限である。この技術の実施可能性および実際の適用のカギである製品品質および薬物供給の物流に関連する潜在的な問題を解決するので、これは重要な利点である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の文脈において、「組織標的化」は、問題の物質が(特に本明細書に記載される組織標的化錯体の形態の場合に)、その存在が(例えば放射性崩壊を送達するために)望まれる少なくとも1つの組織部位に優先的にそれ自体を局在化させる(特に任意の複合化トリウム錯体を局在化させる)働きをすることを示すために本明細書において使用される。従って、組織標的化基または部分は、標的化部分のない同等の錯体の濃度と比較して、対象に投与された後に、その対象の身体の少なくとも1つの望ましい部位に、より大きな局在化をもたらす働きをする。
【0033】
標的化部分は、この場合、HER2に対して特異性を有する。
【0034】
本明細書に記載される本発明の様々な態様は、特に罹患組織の選択的標的化のための疾患の治療、ならびにそのような方法において有用な関連する錯体、複合体、薬剤、製剤、キットなどに関する。全ての態様において、罹患組織は、身体の単一の部位に存在していてもよいし(例えば局在化した固形腫瘍の場合)、複数の部位に存在していてもよい(例えばいくつかの関節が関節炎に罹患している場合あるいは分散したかまたは転移した癌性疾患の場合)。
【0035】
標的化される罹患組織は、1つの軟部組織部位に存在してもよいし、1つの石灰化組織部位に存在してもよいし、全てが軟部組織に存在してもよいし全てが石灰化組織に存在してもよいし少なくとも1つの軟部組織部位および/または少なくとも1つの石灰化組織部位を含んでもよい複数の部位に存在してもよい。一実施形態では、少なくとも1つの軟部組織部位が標的化される。標的化の部位および疾患の起源の部位は同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい(転移性部位が特異的に標的化される場合など)。2以上の部位が関与している場合、この部位は原因の部位を含んでいてもよく、複数の第2の部位であってもよい。
【0036】
用語「軟部組織」は、本明細書において「硬い」石灰化した基質を有さない組織を示すために使用される。特に、軟部組織は、本明細書において骨格組織でない任意の組織であってよい。対応して、本明細書において「軟部組織疾患」は、本明細書において「軟部組織」に生じる疾患を示す。本発明は、癌、および、このように「軟らかい」(すなわち石灰化していない)組織に生じる癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫および混合型の癌を包含する「軟部組織疾患」、ならびにそのような組織のその他の非癌性疾患の治療に特に適している。癌性「軟部組織疾患」には、軟部組織において生じる固形腫瘍ならびに転移性腫瘍および微小転移性腫瘍が含まれる。実際に、軟部組織疾患は、同じ患者において、軟部組織の原発性固形腫瘍と、軟部組織の少なくとも1つの転移性腫瘍を含むことがある。あるいは、「軟部組織疾患」は、原発腫瘍のみからなっていてもよいし、原発腫瘍が骨格疾患である転移のみからなっていてもよい。
【0037】
本発明のヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)標的化剤を使用する治療に適した腫瘍の例としては、乳癌、胃癌、卵巣癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および子宮癌が挙げられる。
【0038】
抗体複合体が貯蔵時に容認できる期間安定していることが、本発明の成功の貢献に重要である。従って、非放射性抗体複合体と最終のトリウム標識製剤の両方の安定性が、放射性医薬品の製造および流通に要求される厳しい基準を満たさなければならない。組織標的化錯体を含む本明細書に記載される製剤が突出した貯蔵時の安定性を示すことは驚くべき知見であった。これは、加速安定性調査に一般に使用される高温でさえも当てはまる。
【0039】
本発明の全ての適合する態様に適用可能な一実施形態では、組織標的化錯体は、適した緩衝液に溶解されてよい。特に、クエン酸緩衝液を使用すると驚くほど安定な製剤が提供されることが見出された。これは、好ましくは1~100mM(pH4~7)の範囲、特に10~50mMの範囲のクエン酸緩衝液、最も好ましくは20~40mMのクエン酸緩衝液である。
【0040】
本発明の全ての適合する態様に適用可能なさらなる実施形態では、組織標的化錯体は、p-アミノ酪酸(PABA)を含有する適した緩衝液に溶解されてよい。好ましい組合せは、PABAと組み合わせた、(好ましくは本明細書に記載される濃度の)クエン酸緩衝液である。その他の薬剤との組合せを含む、本発明の任意の態様で用いるPABAの好ましい濃度は、約0.005~5mg/ml、好ましくは0.01~1mg/ml、より好ましくは0.01~1mg/mlである。0.1~0.5mg/mlの濃度が最も好ましい。
【0041】
本発明の全ての適合する態様に適用可能なさらなる実施形態では、組織標的化錯体は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する適した緩衝液に溶解されてよい。好ましい組合せは、EDTAとクエン酸緩衝液の使用である。特に好ましい組合せは、PABAの存在下でのEDTAとクエン酸緩衝液の使用である。そのような組合せでは、クエン酸塩、PABAおよびEDTAが必要に応じて濃度範囲で存在することが好ましく、好ましい濃度範囲は本明細書に示される。その他の薬剤との組合せを含む、本発明の任意の態様で用いるEDTAの好ましい濃度は、約0.02~200mM、好ましくは0.2~20mM、最も好ましくは0.05~8mMである。
【0042】
本発明の全ての適合する態様に適用可能なさらなる実施形態では、組織標的化錯体は、少なくとも1つのポリソルベート(PEGグラフト化ソルビタン脂肪酸エステル)を含有する適した緩衝液に溶解されてよい。好ましいポリソルベートとしては、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)およびそれらの混合物が挙げられる。ポリソルベート80(P80)が最も好ましいポリソルベートである。その他の薬剤との組合せを含む、本発明の任意の態様で用いるポリソルベート(特に本明細書で示される好ましいポリソルベート)の好ましい濃度は、約0.001~10%w/v、好ましくは0.01~1%w/v、最も好ましくは0.02~0.5%w/vである。
【0043】
PABAは以前にラジオスタビライザー(radiostabilizer)として記載されているが(米国特許第4880615号参照)、本発明のPABAのプラスの効果が貯蔵に関して非放射性複合体で観察された。組織標的化キレート剤の合成は一般にトリウムイオンとの接触の前にかなり行われるので、放射線分解がない場合のこの安定化効果は、特に驚くべき利点となる。従って、組織標的化キレート剤は、トリウムイオンとの接触の1時間から3年前に生成されてよく、好ましくはその期間の少なくとも一部の間にPABAと接触させて貯蔵される。つまり、本発明のステップa)およびb)は、ステップc)の1時間から3年前に、ステップb)とc)の間に行われてよく、組織標的化キレート剤は、PABAと接触して、特に緩衝液、例えばクエン酸緩衝液中で、所望によりEDTAおよび/またはポリソルベートとともに貯蔵されてよい。好ましくは全ての材料は、本明細書に示される種類および濃度である。従って、PABAは本発明の製剤の非常に好ましい成分であり、組織標的化キレート剤の、かつ/または組織標的化トリウム錯体の長期安定性をもたらすことができる。
【0044】
本明細書に記載されるクエン酸緩衝液の使用は、本発明の製剤中の組織標的化トリウム錯体安定性に関してさらなる驚くべき利点を提供する。緩衝溶液の過酸化水素生成への作用に関する照射研究を本発明者らが実施すると予期せぬ結果が出た。過酸化水素は水の放射線分解の結果として生じ、溶液中のタンパク質複合体の化学修飾に寄与することが知られている。そのため過酸化水素の生成は、生成物の純度および安定性望ましくない作用を有する。図2は、試験した他の全ての緩衝液と比較して、クエン酸緩衝液中でCo-60(10kGy)で照射された本発明の抗体HOPO複合体溶液において低レベルの過酸化水素が測定されたという驚くべき知見を示す。従って、本発明の製剤は、本明細書に記載されるクエン酸緩衝液を含むことが好ましい。
【0045】
本発明者らは、本発明の製剤中の特定の成分の複合作用に関するさらなる驚くべき知見をさらに確立した。この場合もやはり、これは放射性標識された複合体の安定性に関する。クエン酸塩は最も効果的な緩衝液であることが見出されているが、驚くべきことにこの効果がPABAの添加によってなおさらに改善されることが見出された。
【0046】
本発明の方法、錯体および製剤の重要な成分は八座キレート剤部分である。トリウムイオンのヒドロキシピリジノン配位子による錯化に関するこれまでに最も関連のある研究は、国際公開第2011/098611号として公開され、HOPO含有八座配位子によって錯化されたトリウムイオンの生成が比較的容易であることを開示する。
【0047】
これまでに公知のトリウムのキレート剤としては、酸性(例えば、カルボキシアルキル)基が主鎖の窒素に結合した、直鎖状、環状または分枝状のポリアザアルカン主鎖を含むポリアミノポリ酸キレート剤も挙げられる。そのようなキレート剤の例としては、p-イソチオシアナトベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bz-DOTA)などのDOTA誘導体およびp-イソチオシアナトベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸(p-SCN-Bz-DTPA)などのDTPA誘導体が挙げられ、前者は環状キレート剤、後者は直鎖状キレート剤である。
【0048】
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸の誘導体がこれまでに例証されているが、標準的な方法を用いてDOTA誘導体でトリウムをキレートすることは容易にはできない。DOTA誘導体を金属で加熱する加熱すると効率的にキレートされるが、収率が低くなる場合が多い。少なくとも一部の配位子が処理中に不可逆的に変性する傾向がある。さらに、標的化部分は不可逆的変性に対する感受性が比較的高いため、通常全ての加熱段階が完了するまで標的化部分の結合を避ける必要がある。これにより、α放出トリウム同位体の崩壊寿命の間に実行しなければならない余分な化学的段階(全ての必要な後処理および分離とともに)が加わる。明らかに、α放出材料をこのように取り扱うこと、または付随する廃棄物を必要以上に生成することは好ましくない。さらに、複合体の調製に費やされる時間は全て、この調製時間中に崩壊する一部のトリウムを浪費する。
【0049】
本発明の主要な態様は、あらゆる点で式(I)または(II)の八座キレート剤の使用である:
【化2】
上式で、RCは、末端がカルボン酸部分のリンカー部分、例えば
[-CH2-Ph-N(H)-C(=O)-CH2-CH2-C(=O)OH]、
[-CH2-CH2-N(H)-C(=O)-(CH2-CH2-O)1-3-CH2-CH2-C(=O)OH]または
[-(CH21-3-Ph-N(H)-C(=O)-(CH21-5-C(=O)OH]などであり、Phはフェニレン基、好ましくはパラ-フェニレン基である。
【0050】
特定の以前の開示、例えば国際公開第2013/167756号、国際公開第2013/167755号および国際公開第2013/167754号において、3,2-HOPO部分のN-原子と結合するメチル基は、主にヒドロキシまたはヒドロキシアルキルなどの可溶化基(例えば-CH2OH、-CH2-CH2OH、-CH2-CH2-CH2OHなど)であった。これは溶解度が高いという点で一定の利点を有するが、そのようなキレート剤はアミド結合を用いて標的化部分と連結することが困難である。
【0051】
キレート部分は、当分野で公知の方法によって形成することができ、それには米国特許第5,624,901号(例えば実施例1および2)および国際公開第2008/063721号(両方とも参照により本明細書に援用される)に記載される方法が含まれる。
【0052】
RCはカップリング部分を表す。適した部分としては、末端がカルボン酸基のアルキルまたはアルケニル(akenyl)基などのヒドロカルビル基が挙げられる。カルボン酸連結部分を使用してアミドを形成することが、例えば本発明の方法によるなど、キレート剤と組織標的化部分との間により安定な複合体をもたらすことが本発明者らによって確立された。
【0053】
本発明の最も好ましい実施形態では、八座配位子と標的化部分を連結するカップリング部分(RC)は、
[-CH2-Ph-N(H)-C(=O)-CH2-CH2-C(=O)OH]、
[-CH2-CH2-N(H)-C(=O)-(CH2-CH2-O)1-3-CH2-CH2-C(=O)OH]または
[-(CH21-3-Ph-N(H)-C(=O)-(CH21-5-C(=O)OH]であるように選択され、Phはフェニレン基、好ましくはパラ-フェニレン基である。
【0054】
好ましい実施形態では、RCは、[-(CH21-3-Ph-N(H)-C(=O)-(CH21-5-C(=O)OH]である。より好ましい実施形態では、RCは、[-(CH2)-パラ-フェニレン-N(H)-C(=O)-(CH22-C(=O)OH]である。
【0055】
非常に好ましい八座キレート剤としては、下の式(III)および(IV)のキレート剤が挙げられる:
【化3】
【0056】
化合物(III)の合成は、本明細書下文に記載され、本明細書下文に記載される合成経路に従う。
【0057】
本発明の方法のステップa)は、任意の適した合成経路によって実行されてよい。合成方法の一部の具体例が以下の実施例に記載される。そのような方法は、具体的な例を提供するが、その中で例示される合成方法は、当業者によれば一般的な状況でも使用可能である。そのため、実施例に例示される方法は、状況が許容する本発明の全ての態様および実施形態に適用可能な一般的開示としても意図される。
【0058】
α放出トリウムと八座配位子の錯体は、本発明の全態様において60℃よりも高く加熱せずに(例えば50℃よりも高く加熱せずに)、好ましくは38℃よりも高く加熱せずに、最も好ましくは25℃(例えば20~38℃の範囲内など)よりも高く加熱せずに形成されるかまたは形成可能であることが好ましい。典型的な範囲は、例えば15~50℃または20~40℃でありうる。錯化反応(本発明の方法の部分c))は、合理的な期間実行されてよいが、これは好ましくは1~120分の間、好ましくは1~60分の間、より好ましくは5~30分の間となるであろう。
【0059】
標的化部分と八座配位子の複合体は、α放出トリウム同位体227Th4+イオンの添加の前に調製されることがさらに好ましい。このように、本発明の生成物は、八座配位子と組織標的化部分の複合体(組織標的化キレート剤)によるα放出トリウム同位体(227Th4+イオン)の錯化によって形成されるかまたは形成可能であることが好ましい。
【0060】
八座キレート剤(本明細書に記載されるカップリング部分を含む)を介して様々な種類の標的化化合物がトリウム(例えばトリウム-227)に連結されることができる。
【0061】
一般に、本明細書において、組織標的化部分は、二次構造および三次構造の特徴を含むまたは含まないアミノ酸成分間のアミド主鎖から主に形成される構造である、「ペプチド」または「タンパク質」となる。
【0062】
本発明によれば、227Thは、本明細書に記載される組織標的化部分とアミド結合によって連結されるかまたは連結可能である標的化錯化剤によって錯化される。
【0063】
一般に、標的化部分の分子量は、100g/molから数百万g/mol(特に100g/mol~100万g/mol)となり、好ましくは疾患関連受容体に対する親和性を直接に有し、かつ/あるいは227Th投与の前に疾患に標的化されている分子と結合した適した前投与結合剤(例えばビオチンまたはアビジン)を含む。
【0064】
本発明の特異的結合剤(組織標的化部分)は、HER2抗原を標的化するように選択される。
【0065】
本発明の組織標的化部分は、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖:
軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号1)
および以下の配列2~6のいずれか1つと配列類似性または同一性をもつペプチド鎖:
重鎖
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号2)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号3)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号4)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号5)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREENYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号6)
を含む。
【0066】
好ましい実施形態では、組織標的化部分は、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖:
軽鎖 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号1)
および配列2と配列類似性または同一性をもつペプチド鎖:
重鎖 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
(配列番号2)
を含む。
【0067】
実質的な配列同一性/類似性は、完全な配列と少なくとも少なくとも80%の配列類似性/同一性ならびに/または特異的結合領域(上記配列の太字で示される領域および所望により下線部分)と少なくとも90%の配列類似性/同一性を有するものであると考えてよい。好ましい配列類似性またはより好ましくは同一性は、太字の領域について、また好ましくは全配列について少なくとも92%、95%、97%、98%または99%であってよい。配列類似性および/または同一性は、ウィスコンシン大学のGenetics Computer Group Version 10ソフトウェアパッケージの「BestFit」プログラムを用いて求めることができる。このプログラムは、スミスおよびウォーターマンのlocal hadアルゴリズムをデフォルト値:ギャップ生成ペナルティ=8、ギャップ伸長ペナルティ=2、平均マッチ=2.912、平均ミスマッチ2.003で使用する。
【0068】
好ましい実施形態では、組織標的化部分は、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖、および配列2~6のいずれか1つと98%以上の配列類似性または同一性をもつペプチド鎖を含む。
【0069】
より好ましい実施形態では、組織標的化部分は、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖、および配列2~6のいずれか1つと99%以上の配列類似性または同一性をもつペプチド鎖を含む。
【0070】
もう一つの好ましい実施形態では、組織標的化部分は、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖、および配列2と98%以上の配列類似性または同一性をもつペプチド鎖を含む。
【0071】
より好ましい実施形態では、組織標的化部分は、配列1と配列同一性をもつペプチド鎖、および配列2と99%以上の配列類似性または同一性をもつペプチド鎖を含む。
【0072】
本発明の組織標的化部分は、トラスツズマブの変異体になる:
配列番号1および2:C末端リジンを含まないトラスツズマブ
配列番号1および3:C末端リジンおよび重鎖突然変異E359D、M361Lを含まないトラスツズマブ
配列番号1および4:C末端リジンおよび重鎖突然変異N300A、E359D、M361Lを含まないトラスツズマブ
配列番号1および5:C末端リジンおよび重鎖突然変異N300Q、E359D、M361Lを含まないトラスツズマブ
配列番号1および6:C末端リジンおよび重鎖突然変異Q298N、N300Q、E359D、M361Lを含まないトラスツズマブ
【0073】
本発明のHER2に対する抗体は、宿主細胞において軽鎖および重鎖またはその部分をコードする核酸配列の組換え発現によって作製することができる。抗体、抗原結合部分、またはその変異体を組換えによって発現させるために、軽鎖および重鎖が宿主細胞で発現するように、軽鎖および/または重鎖またはその部分をコードするDNA断片を有する1以上の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることができる。標準的な組換えDNA方法論、例えばSambrook、Fritsch and Maniatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor、N.Y.,(1989)、Ausubel、F.M.ら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates,(1989)およびBossらによる米国特許第4,816,397号に記載される方法を用いて重鎖および軽鎖をコードする核酸を作製および/または入手し、これらの核酸を組換え発現ベクターに組み込み、ベクターを宿主細胞に導入する。
【0074】
その上、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする核酸配列は、例えば、全長抗体鎖をコードする核酸配列、Fab断片に、またはscFvに変換することができる。VL-またはVH-をコードするDNA断片は、例えば抗体定常領域または可動性リンカーをコードする別のDNA断片と作動可能に(これら2つのDNA断片にコードされるアミノ酸配列がインフレームであるように)連結することができる。ヒト重鎖および軽鎖定常領域の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。
【0075】
scFvをコードするポリヌクレオチド配列を作製するために、VHおよびVL領域が可動性リンカーによって連結された隣接する単鎖タンパク質としてVHおよびVL配列が発現することのできるように、VHおよびVLをコードする核酸は、可動性リンカーをコードする別の断片と作動可能に連結することができる(例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCaffertyら,Nature(1990)348:552-554参照)。
【0076】
抗体、その抗原結合フラグメントまたはその変異体を発現させるために、標準的な組換えDNA発現方法を使用することができる(例えば、Goeddel;Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)参照)。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクターに挿入し、それを次に適した宿主細胞にトランスフェクトする。適した宿主細胞は、原核細胞および真核細胞である。原核宿主細胞の例は、例えば細菌であり、真核宿主細胞の例は、酵母、昆虫および昆虫細胞、植物および植物細胞、トランスジェニック動物、または哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするDNAは、別々のベクターに挿入される。他の実施形態では、重鎖および軽鎖をコードするDNAは、同じベクターに挿入される。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベル、および発現が恒常的かまたは誘導性であるかどうかなどの要因の影響を受けることは当然理解される。
【0077】
細菌での使用に有用な発現ベクターは、望ましいタンパク質をコードするDNA配列を、機能性プロモーターと作動可能なリーディング相(operable reading phase)の翻訳開始および終止シグナルと共に挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターを確実に維持して、所望であれば宿主内で増幅を行えるように、1以上の表現型選択マーカーおよび複製起点を含むことが好ましい。形質転換に適した原核宿主としては、限定されるものではないが、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)ならびにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus)の様々な種が挙げられる。
【0078】
細菌ベクターは、例えば、バクテリオファージ系、プラスミド系またはファージミド系ベクターであってよい。これらのベクターは、一般に周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の要素を含む市販のプラスミドから誘導される選択マーカーおよび細菌複製起点を含むことができる。適した宿主株の形質転換および宿主株の適当な細胞密度までの増殖の後、選択したプロモーターは適切な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)によって抑制解除/誘導され、細胞はさらなる期間培養される。細胞は一般に遠心分離によって回収され、物理的または化学的手段によって破壊され、得られる粗抽出物がさらなる精製のために保持される。
【0079】
細菌系では、発現させるタンパク質に意図される用途に応じて多くの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、例えば抗体の生成またはペプチドライブラリーのスクリーニングのために、そのようなタンパク質を大量に産生させる場合には、直ちに精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を誘導するベクターが望ましいことがある。
【0080】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたはその変異体には、天然に精製された生成物、化学合成手順の生成物、ならびに、例えば、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌ならびにシュードモナス属、ストレプトマイセス属、およびスタフィロコッカス属の様々な種をはじめとする原核宿主から、好ましくは大腸菌細胞から組換え技術によって産生された生成物が含まれる。
【0081】
哺乳動物宿主細胞発現に好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサーなど)、サルウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどが挙げられる。抗体の発現は、恒常的であってもよいし制御されていてもよい(例えばTet系と組み合わせたテトラサイクリンなどの小分子誘導原の付加または除去によって誘導可能)。ウイルス調節エレメント、およびその配列のさらなる記述に関しては、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。組換え発現ベクターは、複製起点および選択マーカーも含むことができる(例えば、米国特許第4,399,216号、4,634,665号および米国特許第5,179,017号参照)。適した選択マーカーとしては、G418、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ゼオシン/ブレオマイシンまたはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する遺伝子、あるいはベクターが導入された宿主細胞でグルタミン合成酵素などの栄養要求性を利用する選択マーカー(Bebbingtonら、Biotechnology(N Y).1992 Feb;10(2):169-75)が挙げられる。例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子は、メトトレキサートに対する耐性を付与し、neo遺伝子は、G418に対する耐性を付与し、アスペルギルス・テレウス由来のbsd遺伝子は、ブラストサイジンに対する耐性を付与し、ピューロマイシンN-アセチル-トランスフェラーゼは、に対する耐性を付与し、Sh ble遺伝子産物は、ゼオシンに対する耐性を付与し、ハイグロマイシンに対する耐性は、大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hygまたはhph)によって付与される。DHFRまたはグルタミン合成酵素のような選択可能マーカーも、MTXおよびMSXと組み合わせた増幅技術に有用である。
【0082】
発現ベクターの宿主細胞へのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション、ポリカチオンに基づくトランスフェクション、例えばポリエチレンイミン(PEI)に基づくトランスフェクションおよびDEAE-デキストラントランスフェクションなどの標準的な技法を用いて実行することができる。
【0083】
本明細書において記載される抗体、その抗原結合フラグメントまたはその変異体を発現させるために適した哺乳動物宿主細胞としては、限定されるものではないが、CHO-K1、CHO-S、CHO-K1SVなどのチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)[例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載されるDHFR選択マーカー;およびFanら,Biotechnol Bioeng.2012 Apr;109(4):1007-15に例証されるその他のノックアウト細胞とともに使用される、Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220およびUrlaubら,Cell.1983 Jun;33(2):405-12に記載されるdhfr-CHO細胞を含む]、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293細胞、HKB11細胞、BHK21細胞、CAP細胞、EB66細胞、およびSP2細胞が挙げられる。
【0084】
また、発現は、HEK293、HEK293T、HEK293-EBNA、HEK293E、HEK293-6E、HEK293-Freestyle、HKB11、Expi293F、293EBNALT75、CHO Freestyle、CHO-S、CHO-K1、CHO-K1SV、CHOEBNALT85、CHOS-XE、CHO-3E7またはCAP-T細胞などの発現系において一過性または準安定性でありうる(例えばDurocherら,Nucleic Acids Res.2002 Jan 15;30(2):E9)。
【0085】
一部の実施形態では、発現ベクターは、宿主細胞が増殖している培地に発現したタンパク質が分泌されるように設計される。抗体、その抗原結合フラグメントまたはその変異体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収されることができる。
【0086】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたはその変異体は、限定されるものではないが、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿法、酸抽出、プロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホ-セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって組換え細胞培養から回収され精製されることができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に用いることができる。例えば、各々が参照により全体的に本明細書に援用されるCurrent Protocols in Immunology,or Current Protocols in Protein Science,John Wiley&Sons,NY,N.Y.,(1997-2001)、例えば1、4、6、8、9、10章を参照されたい。
【0087】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたはその変異体には、天然に精製された生成物、化学合成手順の生成物、および組換え技術によって、例えば、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌ならびにシュードモナス属、ストレプトマイセス属、およびスタフィロコッカス属の様々な種をはじめとする原核宿主から、好ましくは、大腸菌細胞から産生された生成物が含まれる。組換え産生手順に用いる宿主に応じて、本発明の抗体は、グリコシル化型か、または非グリコシル化型であってよい。そのような方法は、多くの標準的な実験室マニュアル、例えば上記Sambrook、17.37-17.42節;上記Ausubel、10、12、13、16、18および20章に記載されている。
【0088】
好ましい実施形態では、抗体は、(1)例えばローリー法、UV-Vis分光法によってまたはSDS-キャピラリーゲル電気泳動によって(例えばCaliper LabChip GXII、GX 90またはBiorad Bioanalyzer装置で)測定して抗体の95重量%超まで、さらに好ましい実施形態では99重量%超まで、(2)N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いて還元もしくは非還元条件下でSDS-PAGEによって均一になるまで精製される。単離された天然に存在する抗体には、組換え細胞内のインサイチュの抗体が含まれる、それは抗体の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しないことになるためである。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップで作製されることになる。
【0089】
α放出トリウム成分に関して、最近の重要な知見は、227Thが、治療上効果的であって容認しがたい骨髄毒性を生成しない量で投与され得ることである。本明細書において、用語「容認できる非骨髄毒性」は、最も重要なことに、投与されたトリウム-227放射性同位体の崩壊によって生成されるラジウム-223の量が、対象に直接致命的であるには一般に不十分であることを示すために用いられる。しかし、そのような治療の容認できる副作用となる骨髄損傷の量(および致命的な反応の可能性)は、治療される疾患の種類、治療計画の目標、および対象の予後によって大幅に変化することは、当業者には明らかであろう。本発明の好ましい対象はヒトであるが、その他の哺乳動物、特にイヌなどのコンパニオンアニマルは本発明の使用の利益を得、容認できる骨髄損傷のレベルが対象の種を反映することもある。容認できる骨髄損傷のレベルは、一般に、非悪性疾患の治療よりも悪性疾患の治療において高くなる。骨髄毒性のレベルの周知の尺度の1つは好中球細胞数であり、本発明において、容認できる非骨髄毒性量の223Raは一般にその最低点(最下点)の好中球画分が治療前の数の10%以上になるように制御された量になる。好ましくは、223Raの容認できる非骨髄毒性量は、好中球細胞画分が最下点で少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%であるような量になる。少なくとも40%の最下点好中球細胞画分が最も好ましい。
【0090】
さらに、放射性227Th含有化合物を、幹細胞支持または同等の回復法が含められている場合に、生じた223Raの骨髄毒性が通常容認されない高線量の投与計画に使用することができる。そのような場合、好中球細胞数は、適切な予防措置が取られ、その後、幹細胞支持が与えられる場合に、最下点で10%未満に低減されてもよく、例外的に5%まで、必要に応じて5%未満に低減される。このような手法は当技術分野において周知である。
【0091】
トリウム-227は比較的製造が容易であり、中性子照射した226Raから間接的に作製することができる、これは227Thの母核種、すなわち227Ac(T1/2=22年)を含むことになる。アクチニウム-227は、226Ra標的からかなり容易に分離することができ、227Thのジェネレータとして使用される。このプロセスは、必要に応じて工業的規模にスケールを変えることができ、従って、分子標的化放射線療法の候補と考えられる大部分のその他のα放射体に見られる供給問題を回避することができる。
【0092】
トリウム-227は、容認しがたい骨髄抑制を引き起こすほど多くのラジウム-223を生成することなく望ましい治療効果を提供するために十分な量で投与されることができる。さらなる治療効果がその崩壊から引き出されるように、娘同位体を標的化領域に維持することが望ましい。しかし、容認できない骨髄毒性を誘発することなく有用な治療効果を得るために、トリウム崩壊生成物の制御を維持する必要はない。
【0093】
腫瘍細胞死滅効果が主にトリウム-227に由来するものでありその娘核種に由来するものでないと仮定すると、この同位体の可能性のある治療量は、他のα放射体との比較によって確立することができる。例えば、アスタチン-211に関して、動物での治療量は、一般に2~10MBq/kgであった。半減期およびエネルギーを修正することによって、トリウム-227の対応する線量は、少なくとも36~200kBq/体重kgとなる。これは、治療効果を期待して有用に投与され得る227Thの量の下限を設定する。この計算は、アスタチンとトリウムの同等の保持を仮定している。しかし、明らかにトリウムの18.7日の半減期によって、ほぼ間違いなく、この同位体がその崩壊前により多く除去される。そのため、この計算された用量は、最小有効量と通常見なされるべきである。完全に保持された227Th(すなわち、身体から排出されない227Th)に関して表される治療線量は一般に少なくとも18または25kBq/kg、好ましくは少なくとも36kBq/kg、より好ましくは少なくとも75kBq/kg、例えば100kBq/kg以上になる。それよりも多くの量のトリウムは、より大きな治療効果を有すると予想されるが、容認しがたい副作用が生じる場合には投与することができない。同様に、トリウムが短い生物学的半減期(すなわち、依然としてトリウムを保持している身体から排出される前の半減期)を有する形態で投与される場合は、多くのトリウムがその崩壊の前に排出されるので、より多くの量の放射性同位体が治療効果のために必要となる。しかし、生成されるラジウム-223の量はそれに対応して減少するであろう。同位体が完全に保持されている場合に投与されるトリウム-227の上記量は、それよりも短い生物学的半減期を有する同等の用量と容易に関連していることがある。そのような計算は当技術分野において周知であり、国際公開第04/091668号(例えば、本文の実施例1および2)に記載されている。
【0094】
放射標識した化合物が娘核種を放出する場合、適用可能であれば、1個または複数の全ての放射性娘核種の運命を知ることが重要である。227Thに関して、主な娘生成物は223Raであり、これはその向骨性のために臨床評価されている。ラジウム-223は、血液から非常に迅速に取り除かれ、骨格に濃縮されるか、または腸および腎の経路を介して排泄される(Larsen、J Nucl Med 43(5,Supplement):160P(2002)参照)。そのため、227Thから生体内で放出されたラジウム-223は、健康な軟部組織に大きな影響を及ぼさない可能性がある。溶解したクエン酸塩としての227Thの分布に関するInt.J.Radiat.Biol.20:233-243(1971)におけるMullerによる研究では、軟部組織中の227Thから生成された223Raが骨に容易に再分布されたり、または排泄されたりすることが見出された。従って、α放出ラジウムの特に骨髄に対する既知の毒性は、トリウム投与量による問題である。
【0095】
国際公開第04/091668号において、実際に少なくとも200kBq/kgの223Raの線量がヒト対象に投与され、許容され得ることが最初に確立された。これらのデータはその刊行物に示されている。そのため、全く予想外に、現在はかかる対象が重篤または致死的でさえある骨髄毒性の容認できないリスクに見舞われることを予想せずに治療上有効な量の227Th(例えば36kBq/kg超)を哺乳動物対象に投与することのできる治療濃度域が存在することが分かる。それにもかかわらず、この治療濃度域を最大限に活用することが極めて重要であり、そのために、最大限の割合の用量が標的部位に送達されるように、放射性トリウムが迅速かつ効率的に錯化され、非常に高い親和性で保持されることが必要である。
【0096】
227Th医薬品から生成される223Raの量は、放射標識化合物の生物学的半減期に依存する。理想的な状況は、腫瘍細胞への内部移行、強い腫瘍保持および正常組織における短い生物学的半減期を含む、迅速な腫瘍取り込みによる錯体の使用であろう。しかし、理想的な生物学的半減期に満たない錯体は、223Raの用量が許容できるレベル内に維持される限り有用でありうる。生体内で生成されるラジウム-223の量は、投与されるトリウムの量およびトリウム錯体の生物学的保持時間の要因となる。任意の特定の場合に生成されるラジウム-223の量は、当業者によって容易に計算することができる。227Thの最大投与量は、生体内で生成されるラジウムの量によって決まり、容認しがたいレベルの副作用、特に骨髄毒性を生じる量よりも少なくなければならない。この量は通常、300kBq/kg未満、特に200kBq/kg未満、より好ましくは170kBq/kg未満(例えば、130kBq/kg未満)である。最小有効線量は、トリウムの細胞毒性、生成されるα線の照射に対する患部組織の感受性、ならびに標的化錯体(この場合、配位子と標的化部分の組合せ)によってトリウムが効率的に結合、保持および送達される程度によって決定される。
【0097】
本発明の方法において、トリウム錯体は、望ましくは、18~400kBq/kg体重、好ましくは36~200kBq/kg(例えば50~200kBq/kgなど)、より好ましくは75~170kBq/kg、特に100~130kBq/kgのトリウム-227線量で投与される。対応して、単一線量は、適した体重、例えば30~150Kg、好ましくは40~100Kgを掛けたこれらの範囲のいずれかの付近を含んでよい(例えば540kBq~4000KBq/用量の範囲など)。トリウム線量、錯化剤および投与経路は、さらに望ましくは、生体内で生成されるラジウム-223線量が300kBq/kg未満、より好ましくは200kBq/kg未満、さらにより好ましくは150kBq/kg未満、特に100kBq/kg未満であるようなものになる。この場合もやはり、これは示したいずれかの体重とこれらの範囲を掛けることによって示される223Raへの暴露をもたらす。上記線量レベルは、好ましくは227Thの完全に保持された線量であるが、一部の227Thがその崩壊の前に身体から排出されることを考慮した投与線量であってよい。
【0098】
227Th錯体の生物学的半減期が物理的半減期と比べて短い場合(例えば、7日未満、特に3日未満)、同等保持線量を提供するために、さらに著しく大きな投与線量が必要であることがある。従って、例えば、完全に保持された150kBq/kgの線量は、711kBq/kgの線量で投与された半減期が5日の錯体と同等である。任意の適切な保持線量と同等の投与線量は、当技術分野で周知の方法を用いて錯体の生物学的クリアランス速度から計算することができる。
【0099】
1個の227Th核の崩壊は、1個の223Ra原子をもたらすので、227Thの保持および治療活性は、患者が受けた223Ra線量に直接関係する。任意の特定の状況において生成される223Raの量は、周知の方法を用いて計算することができる。
【0100】
そのため、好ましい実施形態では、本発明は、(本明細書に記載の)哺乳動物対象における疾患の治療のための方法を提供し、前記方法は、前記対象に、治療上有効な量の本明細書に記載の少なくとも1つの組織標的化トリウム錯体を投与するステップを含む。
【0101】
この特性が有用に用いられる場合を除いて、223Ra娘同位体への対象の暴露を最小にすることは明らかに望ましい。特に、生体内で生成されるラジウム-223の量は一般に、40kBq/kgよりも大きく、例えば、60kBq/kgよりも大きくなる。一部の例では、生体内で生成される223Raは、80kBq/kgよりも大きいこと、例えば、100または115kBq/kgよりも大きいことが必要になる。
【0102】
適切な担体溶液中のトリウム-227標識複合体は、静脈内、腔内(例えば、腹腔内)、皮下、経口的または局所的に、単回投与として、または分割した投与計画で投与されてよい。好ましくは、標的化部分と複合化した錯体は、溶液として非経口(例えば、経皮)経路、特に静脈内または腔内経路によって投与される。好ましくは、本発明の組成物は、非経口投与用の無菌溶液に調剤される。
【0103】
本発明の方法および生成物中のトリウム-227は、単独で、あるいは外科手術、外照射療法、化学療法、その他の放射性核種または組織温調節などを含むその他の治療様式と組み合わせて使用することができる。これは本発明の方法の別の好ましい実施形態を形成し、製剤/薬剤は、それに応じて別の放射性薬剤または化学療法薬などの少なくとも1つのさらなる治療活性のある薬剤を含んでよい。
【0104】
特に好ましい一実施形態では、対象には、ラジウム-223誘導性骨髄毒性の影響を低減するために幹細胞治療および/または他の支持療法も施される。
【0105】
本発明のトリウム(例えば、トリウム-227)標識分子は、疾患関連受容体を標的化することによる癌性または非癌性疾患の治療に使用されてよい。一般に、227Thのそのような医学的使用は、癌性または非癌性疾患の治療のために227Thをキレート剤で抗体、抗体フラグメント、あるいは抗体または抗体フラグメントの構築物と連結することに基づく。本発明による方法および医薬品における227Thの使用は、乳癌、胃癌、卵巣癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および子宮癌の治療に特に適している。
【0106】
本発明のさらなる実施形態では、軟部組織疾患と骨系統疾患をもつ患者は、227Thによって、そして投与されるトリウムによって生体内で生成された223Raによって治療することができる。この特に有利な態様では、治療に対する追加の治療成分が、骨系統疾患の標的化によって容認できる非骨髄毒性量の223Raから誘導される。この治療法では、227Thは一般に軟部組織に適切に標的化することにより軟部組織の原発性および/または転移性癌を治療するために利用され、227Thの崩壊から生じた223Raは、同じ対象の関連する骨系統疾患を治療するために利用される。この骨系統疾患は、原発性の軟部組織癌に起因する骨格への転移であってもよいし、軟部組織治療が転移性癌に対処するためである場合の原疾患であってもよい。時に、軟部組織および骨系統疾患は無関係であってもよい(例えば、リウマチ性軟部組織疾患の患者における骨格疾患のさらなる治療)。
【0107】
いくつかの合成例を下に示す。これらの合成に示されるステップは、発明の多くの実施形態に適用可能である。例えば、ステップa)は、本明細書に記載される多くの実施形態または全ての実施形態において中間体AGC0021を介して進めてよい。
【0108】
AGC0020主要中間体の合成
N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジアミン
【化4】
a)ジメチルマロナート、水素化ナトリウム、THF、b)DIBAL-H、THF、c)MsCl、NEt3、CH2Cl2
d)イミダゾール、Boc2O、CH2Cl2、トルエン、e)DIPEA、アセトニトリル、f)MeOH、水、AcCl
【0109】
AGC0021主要中間体の合成
3-(ベンジルオキシ)-1-メチル-4-[(2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)カルボニル]ピリジン-2(1H)-オン
【化5】
a)シュウ酸ジエチル、カリウムエトキシド、トルエン、EtOH、b)Pd/C、p-キシレン、c)MeI、K2CO3、DMSO、アセトン、
d)i)BBr3、DCM、ii)BnBr、K2CO3、KI、アセトン、e)NaOH、水、MeOH、f)
【化6】
、DCC、DMAP、DCM
【0110】
式(VIII)の化合物のキレートの合成
4-{[4-(3-[ビス(2-{[(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-イル)カルボニル]アミノ}エチル)アミノ]-2-{[ビス(2-{[(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-イル)カルボニル]アミノ}エチル)アミノ]メチル}プロピル)フェニル]アミノ}-4-オキソブタン酸
【化7】
【0111】
本発明の錯体の形成方法において、八座キレート剤と組織標的化部分との間のカップリング反応は、水溶液中で行われることが好ましい。これにはいくつかの利点がある。第1に、それは全ての溶媒を容認できるレベルよりも下まで除去し、その除去を証明する製造業者の負担をなくす。第2に、それは廃棄物を減らし、最も重要なことに、分離または除去ステップを回避することによって、製造を加速させる。本放射性医薬品の状況において、放射性同位体は常に崩壊していて、調製に費やされる時間は価値のある材料を浪費し、混入物質である娘同位体を取り込むので、合成はできる限り迅速に行われることが重要である。
【0112】
適した水溶液には、精製水、および当技術分野において周知の多くの緩衝液のいずれかなどの緩衝液が含まれる。酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩(例えば、PBS)およびスルホン酸塩緩衝液(例えばMESなど)が、周知の緩衝水溶液の典型例である。
【0113】
一実施形態では、本方法は、(本明細書全体にわたって記載される)八座ヒドロキシピリジノン含有配位子の第1の水溶液および(本明細書全体にわたって記載される)組織標的化部分の第2の水溶液を生成するステップと、前記第1および前記第2の水溶液を接触させるステップとを含む。
【0114】
適したカップリング部分は上で詳細に考察されており、カップリング基および/または連結基として本明細書中で考察される全ての基および部分は、標的化部分と配位子をカップリングさせるために適切に使用することができる。一部の好ましいカップリング基には、アミド、エステル、エーテルおよびアミンカップリング基が含まれる。エステルおよびアミドは、活性化エステル基の生成によってカルボン酸から好都合に生成されてよい。そのようなカルボン酸は、標的化部分、カップリング部分および/または配位子部分に存在することがあり、一般にアルコールまたはアミンと反応してエステルまたはアミドを形成する。そのような方法は当技術分野で十分周知であり、N-ヒドロキシマレイミド、カルボジイミドおよび/またはアゾジカルボキシラート活性化試薬、例えばDCC、DIC、EDC、DEAD、DIADなどを含む周知の活性化試薬を利用してもよい。
【0115】
好ましい実施形態では、N位でメチルアルキル基に置換されている4つのヒドロキシピリジノン部分および末端がカルボン酸基のカップリング部分を含む八座キレート剤は、少なくとも1つのカップリング試薬(例えば本明細書に記載される試薬のいずれかなど)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などの活性化剤を用いて活性化され、それにより八座キレート剤のNHSエステルを形成することができる。この活性化された(例えばNHS)エステルは、(例えばリジン側鎖上などの)遊離アミン基を有する任意の組織標的化部分とのカップリングのために分離されずに、分離または使用されてよい。その他の活性化エステルは当技術分野で周知であり、効果的な脱離基、例えば、フッ素化基、トシラート、メシラート、ヨージドなどの任意のエステルであってよい。しかし、NHSエステルが好ましい。
【0116】
カップリング反応は、好ましくは、比較的短時間で周囲温度前後で行われる。1-ステップまたは2-ステップカップリング反応の典型的な時間は、約1~240分、好ましくは5~120分、より好ましくは10~60分となる。カップリング反応の典型的な温度は、0~90℃の間、好ましくは15~50℃の間、より好ましくは20~40℃の間となる。約25℃または約38℃が適切である。
【0117】
八座キレート剤と標的化部分とのカップリングは一般に標的化部分の結合に有害な(または少なくとも不可逆的ではない)影響を及ぼさない条件下で実行される。結合剤は通常ペプチドまたはタンパク質に基づく部分であるので、これは二次/三次構造の変性または喪失を避けるために比較的穏和な条件を必要とする。水性条件(本明細書中の全ての文脈において考察される)が好ましいであろうし、極端なpHおよび/または酸化還元を避けることが望ましいであろう。従ってステップb)は、pH3~10の間、好ましくは4~9の間、より好ましくは4.5~8の間で実行されてよい。酸化還元に関して中性であるか、または空気中での酸化を避けるために非常に穏やかに還元する条件が望ましいことがある。
【0118】
本発明の全ての態様に適用可能な好ましい組織標的化キレート剤は、本明細書に記載されるAGC0018である。AGC0018と227Thのイオンとの錯体は、本発明の錯体および対応する製剤、使用、方法などの好ましい実施形態を形成する。本発明の全てのそのような態様において使用可能なその他の好ましい実施形態には、HER2に対する結合親和性をもつモノクローナル抗体を含む(本明細書に記載される)組織標的化部分と複合化したAGC0019の227Th錯体が含まれる。
【0119】
本発明はこれから以下の限定されない例によって説明される。実施例で例証される全ての化合物は、本発明の好ましい実施形態(好ましい中間体および前駆体を含む)をなし、状況が許すどんな態様においても個別にまたは任意の組合せで使用されることができる。
【0120】
実施例1
式(III)の化合物の合成
【化8】
【0121】
実施例1.1
ジメチル2-(4-ニトロベンジル)マロナートの合成
【化9】
水素化ナトリウム(60%分散物、11.55g、289mmol)を450mLのテトラヒドロフラン(THF)に0℃で懸濁させた。ジメチルマロナート(40.0mL、350mmol)を約30分間にわたって滴下した。反応混合物を0℃で30分間撹拌した。THF 150mLに溶解した4-ニトロベンジルブロミド(50.0g、231mmol)を0℃でおよそ30分にわたって滴下し、続いて周囲温度で2時間にわたって滴下した。
酢酸エチル(EtOAc)500mLおよびNH4Cl(飽和水溶液)250mLを添加した後、溶液を濾過した。相を分離した。水相をEtOAc 250mLで2回抽出した。有機相を合し、ブライン250mLで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。
ヘプタン300mLおよびメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)300mLを残渣に添加し、60℃に加熱した。溶液を濾過した。濾液を冷凍庫に一晩入れ、濾過した。濾過ケーキをヘプタン200mLで洗浄し、減圧下で乾燥させ、標題化合物を灰白色の固体として得た。
収量:42.03g、157.3mmol、68%。
1H-NMR(400 MHz,CDCl3):3.30(d,2H,7.8 Hz),3.68(t,1H,7.8 Hz),3.70(s,6H),7.36(d,2H,8.7 Hz),8.13(d,2H,8.7 Hz).
【0122】
実施例1.2
2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジオールの合成
【化10】
2-(4-ニトロベンジル)ジメチルマロナート(28.0g、104.8mmol)を0℃でTHF 560mLに溶解した。水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)(ヘキサン中1M、420mL、420mmol)を0℃でおよそ30分にわたって滴下した。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。
水20mLを反応混合物に0℃で滴下した。NaOH 20mL(水溶液、15%)を反応混合物に0℃で滴下し、それに続いて水20mLを反応混合物に滴下した。混合物を0℃で20分間撹拌した後、およそ150gのMgSO4を添加した。混合物を室温で30分間撹拌した後、それをブフナー漏斗で濾過した。濾過ケーキをEtOAc 500mLで洗浄した。濾過ケーキを取り出し、EtOAc 800mLおよびMeOH 200mLと共におよそ約30分間撹拌した後、溶液を濾過した。濾液を合し、減圧下で乾燥させた。
ヘプタン中EtOAcの勾配、続いてEtOAc中MeOHの勾配を用いるシリカでのDFCにより、標題化合物を淡黄色の固体として得た。
収量:15.38g、72.8mmol、69%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):1.97-2.13(m,3H),2.79(d,2H,7.6 Hz),3.60-3.73(m,2H),3.76-3.83(m,2H),7.36(d,2H,8.4 Hz),8.14(d,2H,8.4 Hz).
【0123】
実施例1.3
2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジイルジメタンスルホナートの合成
【化11】
2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジオール(15.3g、72.4mmol)をCH2Cl2 150mLに0℃で溶解した。トリエチルアミン(23mL、165mmol)を添加し、それに続いてメタンスルホニルクロリド(12mL、155mmol)をおよそ15分にわたって滴下し、それに続いて周囲温度で1時間撹拌した。
CH2Cl2 500mLを添加し、混合物をNaHCO3(飽和水溶液)250mLで2回、HCl(水溶液、0.1M)125mLおよびブライン250mLで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させ、標題化合物を橙色の固体として得た。
収量:25.80g、70.2mmol、97%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):2.44-2.58(m,1H),2.87(d,2H,7.7 Hz),3.03(s,6H),4.17(dd,2H,10.3,6.0 Hz),4.26(dd,2H,10.3,4.4 Hz),7.38(d,2H,8.6 Hz),8.19(d,2H,8.6 Hz).
【0124】
実施例1.4
ジ-tert-ブチル(アザンジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメートの合成
【化12】
イミダゾール(78.3g、1.15mol)を室温でCH2Cl2 500mLに懸濁させた。ジ-tert-ブチルジカルボナート(Boc2O)(262.0g、1.2mol)を少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水750mLで3回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。
残渣をトルエン250mLに溶解し、ジエチレントリアミン(59.5mL、550mmol)を添加した。反応混合物を60℃で2時間撹拌した。
CH2Cl2 1Lを添加し、有機相を水250mLで2回洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で減らした。
トリエチルアミンを含むCH2Cl2中メタノール(MeOH)の勾配を用いるシリカでのDFCにより、標題化合物を無色の固体として得た。
収量:102g、336mmol、61%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):1.41(s,18H),1.58(bs,1H),2.66-2.77(m,4H),3.13-3.26(m,4H),4.96(bs,2H).
【0125】
実施例1.5
テトラ-tert-ブチル(((2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラキス(エタン-2,1-ジイル))テトラカルバメートの合成
【化13】
2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジイルジメタンスルホナート(26.0g、71mmol)およびジ-tert-ブチル(アザンジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメート(76.0g、250mmol)をアセトニトリル700mLに溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(43mL、250mmol)を添加した。反応混合物を還流で4日間撹拌した。
揮発性物質を減圧下で除去した。
ヘプタン中EtOAcの勾配を用いるシリカでのDFCにより、標題化合物を淡黄色の固体泡沫として得た。
収量:27.2g、34.8mmol、49%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):1.40(s,36H),1.91-2.17(m,3H),2.27-2.54(m,10H),2.61-2.89(m,2H),2.98-3.26(m,8H),5.26(bs,4H),7.34(d,2H,8.5 Hz),8.11(d,2H,8.5 Hz).
【0126】
実施例1.6
N1,N1’-(2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、AGC0020の合成
【化14】
テトラ-tert-ブチル(((2-(4-ニトロベンジル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラキス(エタン-2,1-ジイル))テトラカルバメート(29.0g、37.1mmol)をMeOH 950mLおよび水50mLに溶解した。塩化アセチル(50mL、0.7mol)をおよそ20分にわたって30℃で滴下した。反応混合物を一晩撹拌した。
揮発性物質を減圧下で除去し、残渣を水250mLに溶解した。CH2Cl2 500mLを添加し、続いてNaOH(水溶液、5M、NaClで飽和)175mLを添加した。相を分離し、水相をCH2Cl2 250mLで4回抽出した。有機相を合し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させ、標題化合物を粘稠な赤褐色の油状物質として得た。
収量:11.20g、29.3mmol、79%。純度(HPLC図9):99.3%。
1H-NMR(300MHz,CDCl3):1.55(bs,8H),2.03(dt,1H,6.6,13.3 Hz),2.15(dd,2H,12.7,6.6),2.34-2.47(m,10H),2.64-2.77(m,10H),7.32(d,2H,8.7 Hz),8.10(d,2H,8.7 Hz).
13C-NMR(75MHz,CDCl3):37.9,38.5,39.9,58.0,58.7,123.7,130.0,146.5,149.5
【0127】
実施例1.7
5-ヒドロキシ-6-オキソ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-カルボン酸エチルの合成
【化15】
2-ピロリジノン(76mL、1mol)およびシュウ酸ジエチル(140mL、1.03mol)をトルエン1Lに室温で溶解した。カリウムエトキシド(EtOK)(EtOH中24%、415mL、1.06mol)を添加し、反応混合物を90℃に加熱した。
反応混合物の濃厚化のために反応の最初の1時間の間にEtOH 200mLを少量ずつ添加した。反応混合物を一晩撹拌し、室温まで冷却した。HCl(5M、水溶液)210mLを撹拌しながらゆっくりと添加した。
ブライン200mLおよびトルエン200mLを添加し、相を分離した。
水相をCHCl3 400mLで2回抽出した。合した有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空で減量した。残渣をEtOAcから再結晶化させ、標題化合物を淡黄色の固体として得た。
収量:132.7g、0.72mmol、72%。
【0128】
実施例1.8
エチル3-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキシラートの合成
【化16】
{エチル5-ヒドロキシ-6-オキソ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-カルボン酸塩}(23.00g、124.2mmol)をp-キシレン150mLに溶解し、パラジウム炭素(10%、5.75g)を添加した。反応混合物を還流で一晩撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物をMeOH 300mLで希釈し、セライト(登録商標)のショートパッドに通して濾過した。パッドをMeOH 300mLで洗浄した。溶媒を真空除去し、標題化合物を薄い赤褐色の固体として得た。
収量:19.63g、107.1mmol、86%。MS(ESI,pos):206.1[M+Na],389.1[2M+Na]
【0129】
実施例1.9
エチル3-メトキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキシラートの合成
【化17】
{エチル3-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキシラート}(119.2g、0.65mol)をジメチルスルホキシド(DMSO)600mLおよびアセトン1.8Lに室温で溶解した。K2CO3(179.7g、1.3mol)を添加した。アセトン600mLに溶解したヨウ化メチル(MeI)(162mL、321mmol)をおよそ1時間にわたって室温で滴下した。
反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した後、MeI(162mL、2.6mol)を添加した。反応混合物を還流で一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で減らし、EtOAc 2.5Lを添加した。
混合物を濾過し、減圧下で減らした。ヘプタン中EtOAcの勾配を用いるSiO2でのドライフラッシュクロマトグラフィー(DFC)により精製して、標題化合物を得た。
収量:56.1g、210.1mmol、32%。MS(ESI,pos):234.1[M+Na],445.1[2M+Na]
【0130】
実施例1.10
エチル3-(ベンジルオキシ)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキシラートの合成
【化18】
{エチル3-メトキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキシラート}(5.93g、28.1mmol)を-78℃のジクロロメタン(dichlormethane)(DCM)80mLに溶解し、DCM20mLに溶解したBBr3(5.3mL、56.2mmol)を滴下した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した後、反応物を0℃に加熱した。tert-ブチルメチルエーテル(tert-BuOMe)25mLおよびMeOH25mLを滴下することにより反応を停止させた。揮発性物質を真空除去した。残渣をDCM 90mLおよびMeOH 10mLに溶解し、SiO2のショートパッドに通して濾過した。パッドをDCM中10%MeOH 200mLで洗浄した。揮発性物質を真空除去した。残渣をアセトン400mLに溶解した。K2CO3(11.65g、84.3mmol)、KI(1.39g、8.4mmol)および臭化ベンジル(BnBr)(9.2mL、84.3mmol)を添加した。反応混合物を還流で一晩撹拌した。反応混合物をEtOAc 200mLで希釈し、水50mLで3回およびブライン50mLで洗浄した。合した水相をEtOAc 50mLで2回抽出した。合した有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、揮発性物質を真空除去し、ヘプタン中EtOAc(40~70%)を溶離剤として用いるSiO2でのドライフラッシュクロマトグラフィーによって精製して標題化合物を得た。
収量:5.21g、18.1mmol、65%。MS(ESI,pos):310.2[M+Na],597.4[2M+Na]
【0131】
実施例1.11
3-(ベンジルオキシ)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボン酸の合成
【化19】
{エチル3-(ベンジルオキシ)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキシラート}(27.90g、97.1mmol)をMeOH 250mLに溶解し、NaOH(5M、水溶液)60mLを添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、反応混合物をおよそ1/3に真空濃縮した。残渣を水150mLで希釈し、塩化水素(HCl)(5M、水溶液)を用いてpH2に酸性化した。沈殿を濾過し、真空乾燥させて標題化合物を無色の固体として得た。収量:22.52g、86.9mmol、89%。
【0132】
実施例1.12
3-(ベンジルオキシ)-1-メチル-4-(2-チオキソチアゾリジン-3-カルボニル)ピリジン-2(1H)-オン(AGC0021)の合成
【化20】
{3-(ベンジルオキシ)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボン酸}(3.84g、14.8mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(196mg、1.6mmol)および2-チアゾリン-2-チオール(1.94g、16.3mmol)をDCM 50mLに溶解した。N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(3.36g、16.3mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌した。反応物を濾過し、固体をDCMで洗浄し、濾液を真空で減らした。得られる黄色の固体をイソプロパノール/DCMから再結晶させて、AGC0021を得た。収量:4.65g、12.9mmol、87%。MS(ESI、pos):383[M+Na]、743[2M+Na]
【0133】
実施例1.13
AGC0023の合成
【化21】
AGC0020(8.98g;23.5mmol)をCH2Cl2(600mL)に溶解した。AGC0021(37.43g;103.8mmol)を添加した。反応物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。
EtOAcおよびCH2Cl2の1:1混合物中のメタノールの勾配を用いるSiO2でのDFCにより、AGC0023を固体泡沫として得た。
平均収量:26.95g、20.0mmol、85%。
【0134】
実施例1.14
AGC0024の合成
【化22】
AGC0023(26.95g;20.0mmol)をエタノール(EtOH)(675mL)に溶解した。鉄(20.76g;0.37mol)およびNH4Cl(26.99g;0.50mol)を添加し、続いて水(67mL)を添加した。反応混合物を70℃で2時間撹拌した。さらに鉄(6.75g;121mmol)を添加し、反応混合物を74℃で1時間撹拌した。さらに鉄(6.76g;121mmol)を添加し、反応混合物を74℃で1時間撹拌した。反応混合物を冷却した後、反応混合物を減圧下で減らした。
CH2Cl2中のメタノールの勾配を用いるSiO2でのDFCにより、AGC0024を固体泡沫として得た。
収量18.64g、14.2mmol、71%。
【0135】
実施例1.15
AGC0025の合成
【化23】
AGC0024(18.64g;14.2mmol)をCH2Cl2(750mL)に溶解し、0℃に冷却した。BBr3(50g;0.20mol)を添加し、反応混合物を75分間撹拌した。0℃で撹拌しながらメタノール(MeOH)(130mL)を注意深く添加することにより反応を停止させた。揮発性物質を減圧下で除去した。HCl(EtOH中1.25M、320mL)を残渣に添加した。次に、気圧および周囲温度でロータリーエバポレーターを用いてフラスコを15分間回転させた後、揮発性物質を減圧下で除去した。
水中アセトニトリル(ACN)勾配を用いる非エンドキャップC18シリカでDFCのにより、AGC0025をわずかに橙色のガラス状固体として得た。
収量13.27g、13.9mmol、98%。
【0136】
実施例1.16
AGC0019の合成
【化24】
AGC0025(10.63g;11.1mmol)をACN(204mL)および水(61mL)に室温で溶解した。無水コハク酸(2.17g;21.7mmol)を添加し、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で減らした。水中ACNの勾配を用いる非エンドキャップC18シリカでDFCのにより、緑色がかったガラス状固体を得た。
固体をMeOH(62mL)および水(10.6mL)に40℃で溶解した。この溶液を超音波処理下、EtOAc(750mL)に滴下した。沈殿を濾過し、EtOAcで洗浄し、減圧下で乾燥させて、AGC0019を緑色がかった色合いの灰白色固体として得た。
収量:9.20g、8.7mmol、78%。H-NMR(400 MHz,DMSO-d6),13C-NMR(100 MHz,DMSO-d6).
【0137】
実施例2
純粋なトリウム-227の単離
トリウム-227を、アクチニウム-227ジェネレータから単離する。アクチニウム-227を、ラジウム-226の熱中性子照射とそれに続くラジウム-227(t1/2=42.2m)のアクチニウム-227への崩壊によって生成した。陰イオン交換クロマトグラフィーによって8M HNO3溶液中のアクチニウム-227崩壊混合物からトリウム-227を選択的に保持した。70mgのAG(登録商標)1-X8樹脂(200~400メッシュ、硝酸型)を含有する内径2mm、長さ30mmのカラムを使用した。アクチニウム-227、ラジウム-223および娘核種をカラムから溶出した後、トリウム-227を12M HClでカラムから抽出した。トリウム-227を含有する溶出液を蒸発乾固させて、標識化ステップの前に残渣を0.01M HClに再懸濁した。
【0138】
実施例3
実施例3.1
HER2に対するモノクローナル抗体(AGC1100)の生成
本発明のIgGsのアミノ酸配列を含有するDNA配列をGeneart/Life Technologies(ドイツ、レーゲンスブルク)で合成し、適した発現ベクターにクローニングした。全ての遺伝子は、CHO発現のために最適化されたコドンであった。IgGsを、NRC Canada(Durocherら、Nucleic Acids Res.2002 Jan 15;30(2):E9)による発現系を用いてHEK293 6E細胞に一過性に発現させるか、またはCHO-K1細胞の安定したトランスフェクションの後に発現させた。以前に記載されるようにプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびその後のサイズ排除クロマトグラフィーによって抗体を精製した(Hristodorovら、Mol Biotechnol(2013)53:326-335)。
【0139】
実施例3.2複合体AGC1118を得るためのmAb AGC1100とキレート剤AGC0019(式(VIII)の化合物)とのカップリング
【化25】
複合化の前に、リン酸緩衝液pH7.5を抗体溶液(AGC1100)に添加して溶液の緩衝能を高める。容器中のAGC1100(mAb)の量を測定する。
PBS中のトラスツズマブに、11%1Mリン酸緩衝液pH7.4を添加する。
キレート剤AGC0019を1:1、DMA:0.1M MES緩衝液pH5.4に溶解する。NHSおよびEDCを0.1M MES緩衝液pH 5.4に溶解する。
キレート剤/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)/1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の1/1/3モル当量溶液を調製してキレート剤を活性化させる。
抗体との複合化のために、8/8/25/1(キレート剤/NHS/EDC/mAb)のモル比の活性化したキレート剤をmAbに加える。20~40分後、12%v/v 0.3Mクエン酸で複合化反応を停止させて、pHを5.5に調整する。
AGC0118複合体の精製および30mMクエン酸塩pH 5.5、154mM NaClへの緩衝液交換を、AKTAシステム(GEヘルスケア)に接続されたSuperdex 200(GEヘルスケア)カラムでのゲル濾過によって実施する。Abs 280nmでのタンパク質濃度を測定した後、生成物を緩衝液とともに調剤した(クエン酸塩30mM、NaCl 154mM、EDTA 2mM、2mg/mL pABA、pH 5.5中2.5mg/mL AGC0118を得た)。最後に、溶液を0.2μmフィルターに通して濾過して滅菌瓶に入れた後、貯蔵する。
【0140】
実施例3.3
227Th-AGC0118注入による線量の調製
標識化は以前に記載されるように実施する:
バイアル1個分の20MBq塩化トリウム-227フィルムを8M HNO3溶液2mlに溶解し、15分間放置した後、経時的に増加したラジウム-223を除去するために陰イオン交換カラムに適用するために溶液を除去する。カラムを8M HNO3 3mLと水1mLで洗浄した後、トリウム-227を3M HCl 3mLで溶出する。溶出したトリウム-227の放射能を測定し、10MBqの線量を空の10mLガラスバイアルに移す。次に、真空ポンプを使用し、バイアルを加熱ブロック(120℃に設定)に30~60分間入れて酸を蒸発させる。室温に達した後、AGC0118複合体2.5mg/ml 6mLを放射標識のために添加する。バイアルを穏やかに混合し、室温で15分間放置する。その後、溶液を滅菌バイアルに滅菌濾過し、iTLC分析のために試料を取り出して使用前のRCPを求める。
【0141】
実施例3.4
異なる全放射能をもつ227Th-AGC0118のSKOV-3に対する細胞傷害性
4時間のインキュベーション時間の間にウェルに加える全放射能を変化させることによって様々な線量の227Th-AGC0118に対する細胞毒性を試験する。実験前日に96ウェルプレートにウェル当たり10000個のSKOV-3細胞を播種した。比放射能20kBq/μgのキレート化227Th-AGC0118の一連の全放射能5、10、20および40kBq/mlを1日目に細胞に添加する。インキュベーション期間の終了後、残存する非結合227Th-AGC0118をマルチアレイピペットにより除去し、それに続いて培地でもう1回洗浄し、その後新鮮な培地で洗浄する。SKOV-3細胞を10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むMc-Coy培地で培養する。227Th-AGC0118によるインキュベーションの間に血清フリー培地で培地を置き換える。4日目に細胞生存力を測定するためにCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を使用する。図6を参照されたい。
【0142】
実施例4
アミドおよびイソチオシアネートで結合した複合体の安定性の比較
AGC1118およびイソチオシアネートカップリング部分を有する対応する複合体(AGC1115)を40℃の水溶液中で11日間貯蔵する。定期的に試料を採取する。
それから、アミド結合複合体について複合体濃度の測定可能な低下が見られなかったことが分かる。対照的に、イソチオシアネート複合体は低下する。
【配列表】
2022173214000001.app
【外国語明細書】