(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173215
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】光散乱減少物質を含む肌の光学特性改善用の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20221111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221111BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221111BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221111BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20221111BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20221111BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20221111BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q1/00
A61Q1/06
A61Q1/10
A61Q1/12
A61Q3/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136806
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2020542991の分割
【原出願日】2018-10-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0015933
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0067069
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り Skin Research and Technology,2018 vol.24 issue 3,pp.371-378
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒョン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソル-フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ネ-ギュ・カン
(57)【要約】
【課題】本発明は、肌の透明度、肌トーン、肌のキメを改善する組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、光散乱減少物質を組成物に含めることによって、角質細胞の間に光散乱減少物質が染み込んで構成成分の結晶化を減らし、角質細胞内に浸透した光学特性改善物質が角質細胞内に残留して水分と結合することで光散乱を減少させ、これによって肌の透明度、肌トーン、肌のキメを改善する効果を奏する。
【選択図】
図3a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、トレハロース、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ベタイン、オリゴヒアルロン酸、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、セリン、カルニチン及びカルノシンからなる群より選択されたいずれか一つ以上の光散乱減少物質を有効成分として含む、肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項2】
前記光散乱減少物質が、組成物総重量に対して0.01~40重量%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項3】
前記オリゴヒアルロン酸は、分子量が300~100,000Daであることを特徴とする、請求項1に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項4】
前記光散乱減少物質は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項5】
前記ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとが、1:0.01~20:0.01~20の重量比で含まれることを特徴とする、請求項4に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項6】
前記光散乱減少物質は、肌の透明度、肌トーンまたは肌のキメの改善効果を奏することを特徴とする、請求項1に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項7】
前記肌の光学特性改善用の組成物は、化粧料組成物または皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項1に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、ローション、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、オイルセラム、セラム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ゲル、ボディソープ、ボディローション、ボディオイル、ボディエッセンス、メイクアッププライマー、ファンデーション、メイクアップベース、パウダーファンデーション、パクト、パウダー、リップスティック、リップグロス、リップライナー、マスカラ、アイブロウ、アイシャドウ及びネイルエナメルからなる群より選択された剤形に剤形化したことを特徴とする、請求項7に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【請求項9】
前記皮膚外用剤は、クリーム、ゲル、軟膏、液体、パウダー、噴霧剤及びパッチからなる群より選択された剤形に剤形化したことを特徴とする、請求項7に記載の肌の光学特性改善用の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱減少物質を肌に適用することで、角化に伴って起こる肌の光学特性及びキメの変化、くすみなどのような肌トーンの変化などを改善する肌の光学特性改善用の組成物に関する。
【0002】
本出願は、2018年2月8日出願の韓国特許出願第10-2018-0015933号及び2018年6月11日出願の韓国特許出願第10-2018-0067069号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
角質は、表皮の下に存在する角化細胞(ケラチノサイト)が角層まで移動しながら分化するターンオーバーという角化細胞の分化過程を経ることで形成され、最終的に角質細胞になる。透明であった肌細胞は分化過程で水分を失いながら細胞構成成分が結晶化し、メラニン色素などが肌の表面に近くなりながら水分を失って酸化することによって、角層が不透明になってくすんで見えるようになる(
図1参照)。
【0004】
そこで、角質の脱落がターンオーバー期間(28日)に合わせて起こるように誘導するコンセプトの製品、強制的に剥ぎ取って(peeling)最外角質を脱落させる製品または施術などが挙げられるが、前者の場合、持続的に管理しなければ、効果が得られず、後者の場合、肌に一時的に透明感を付与するが、肌に刺激が強く、根本的に角質の透明度を調節できないという短所がある。しかし、角質管理から得られる長所(即ち、肌トーンを改善し、透明感のある肌に見える長所)から、このような不便を甘受しながら多くの人が持続的に上記のような方法で肌を管理している。また、最近は、肌の光散乱を補正するために、オイル(特許文献1参照)を用いて水分と共に薄い膜を形成する研究も進んでいるが、一時的な方法であり、自然なイメージ具現が容易でないという短所がある。
【0005】
生体組織は、コラーゲン、弾性繊維、細胞、細胞外基質(Extracellular matrix,ECM)などのような多様な物質から構成されている。これらの構成成分は、相異なる屈折率を有しているため、組織の種類、細胞の脱水分化の程度、構成成分の割合によって変わるが、肌組織の光散乱が起こることは避けることができない。したがって、光学においては、顕微鏡を用いて生体組織を鮮やかできれいに分析するために必須であるため、光透過率を高めるために、グリセリン、グルコース、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシドオレイン酸などのような光散乱減少物質(optical clearing agent,OCA)を用いている。
【0006】
G.Vargasは、グリセロールを肌に塗布するか、または注射で注入すれば、肌中の血管を分析するのに役に立つという研究結果を報告した(非特許文献1及び2参照)。また、日本のRiken研究所のH. Hiroshiは、4Mのウレアを処理してマウスの脳を透明化することに成功しており(非特許文献3参照)、同研究所のK.Meng-Tsenも、80%以上のフルクトース溶液を用いてマウス脳を透明化して生体光学研究に寄与したことがある(非特許文献4参照)。通常、OCAは、ECMの脱水、組織細胞の間に光散乱減少物質が吸収されることによる代替、コラーゲンの構造変化で屈折率を一定にすることが知られているが、未だ明確なメカニズムが明らかになっていない。
【0007】
光学においては、組織内の血管の分析及び診断あるいはレーザーを用いて肌中のタトゥー、色素沈着などの治療に集中しているため、組織中の深い部位までOCAを伝達して組織の透明度を高めるための研究が主に進んでいる。例えば、OCAを真皮層に直接注射する方法、表皮を損傷または除去して透過を高める方法、超音波を用いたOCAの真皮層への伝達などの多様な方法で表皮(角層)の皮膚バリアの役割を越えて生体組織の透明化を誘導する方法が研究されている。しかし、人体にOCAを注射するか、効果的な吸収を誘導すると、肌の刺激、紅斑、ひどい場合、壊死のような副作用が報告されていることから、通常的に光学的な測定に使用する方法では、角層の透明化に適用しにくい。
【0008】
このような問題を解決するために、OCA成分の濃度を減らして肌に使用するための研究が進んできた。例えば、ウレアの場合、化粧品法における許容限度内の含量を使用する方法で使われて来た。しかし、OCA成分そのものの有害性によって肌に刺激を感じるか、剤形内における不安定性によって使用が制限される問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0111968号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G.Vargas,Laser Sur.Med.1999,vol.24,pp.133
【非特許文献2】G.Vargas,Photochem.Photobiol.2003,vol.77(5),pp.541
【非特許文献3】H.Hiroshi,Nat.Neurosci.2011,vol.14(11),pp.1481
【非特許文献4】K.Meng-Tsen,Nat.Neurosci.2013,vol.16(8),pp.1154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、光散乱減少物質を組成物に含めることによって、角質細胞の間に光散乱減少物質が染み込んで構成成分の結晶化を減らし、角質細胞内に浸透した光学特性改善物質が角質細胞内に残留して水分と結合することで光散乱を減少させ、これによって、肌の透明度、肌トーン、肌のキメを改善する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するため、本発明は、キシリトール(Xylitol)、エリスリトール(Erythritol)、ソルビトール(Sorbitol)、トレハロース(Trehalose)、プロパンジオール(Propanediol)、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycol)、ベタイン(Betaine)、オリゴヒアルロン酸(Oligo Hyaluronic acid)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、硝酸カリウム(KNO3)、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)、炭酸カリウム(K2CO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2・6H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、セリン(Serine)、カルニチン(Carnitine)及びカルノシン(Carnosine)からなる群より選択されたいずれか一つ以上の光散乱減少物質(optical clearing agent)を有効成分として含む、肌の光学特性改善用の組成物を提供する。
【0013】
本発明の一態様において、前記光散乱減少物質は、組成物総重量に対して0.01~40重量%で含まれることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様において、前記オリゴヒアルロン酸は、分子量が300~100,000Daであることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様において、前記光散乱減少物質は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様において、前記ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとが、1:0.01~20:0.01~20の重量比で含まれることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様において、前記光散乱減少物質は、肌の透明度、肌トーンまたは肌のキメの改善効果を奏することを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様において、前記肌の光学特性改善用の組成物は、化粧料組成物または皮膚外用剤であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様において、前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、ローション、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、オイルセラム、セラム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ゲル、ボディソープ、ボディローション、ボディオイル、ボディエッセンス、メイクアッププライマー、ファンデーション、メイクアップベース、パウダーファンデーション、パウダーパクト、パウダー、リップスティック、リップグロス、リップライナー、マスカラ、アイブロウ、アイシャドウ及びネイルエナメルからなる群より選択された剤形に剤形化したことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様において、前記皮膚外用剤は、クリーム、ゲル、軟膏、液体、パウダー、噴霧剤及びパッチからなる群より選択された剤形に剤形化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、光散乱減少物質を組成物に含めることによって、角質細胞の間に光散乱減少物質が染み込んで構成成分の結晶化を減らし、角質細胞内に浸透した光学特性改善物質が角質細胞内に残留して水分と結合することで光散乱を減少させ、これによって、肌の透明度、肌トーン、肌のキメを改善する効果を奏するため、皮膚外用剤及び化粧料組成物として非常に有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】光線と肌の各層における相互作用を示した模式図である。
【
図2a】水を処理及び洗浄した後に乾燥した角質テープの写真、及び光散乱減少物質を処理及び洗浄した後に乾燥した角質テープの写真と偏光顕微鏡イメージである。
【
図2b】光散乱減少物質を処理及び洗浄した後に乾燥した角質テープの偏光顕微鏡イメージ(ブライトフィールドイメージ及びダークフィールドイメージ)である。
【
図2c】ウレア(10%)の光散乱減少結果を示すグラフである。
【
図3a】本発明の光散乱減少物質の光散乱減少の程度をウレアの光散乱減少効率と相対的に比較したグラフである。
【
図3b】本発明の光散乱減少物質の光散乱減少の程度をウレアの光散乱減少効率と相対的に比較したグラフである。
【
図4】ヒアルロン酸の分子量による光散乱減少の程度を比較したグラフである。
【
図5】トレハロース、プロパンジオール、ソルビトールの単一物及び混合物の組成による光散乱減少の程度を比較したグラフである。
【
図6】対照群1及び実験群11を処理した角質を3Dレーザー顕微鏡で測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記の課題を達成するための本発明は、キシリトール(Xylitol)、エリスリトール(Erythritol)、ソルビトール(Sorbitol)、トレハロース(Trehalose)、プロパンジオール(Propanediol)、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycol)、ベタイン(Betaine)、オリゴヒアルロン酸(Oligo Hyaluronic acid)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、硝酸カリウム(KNO3)、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)、炭酸カリウム(K2CO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2・6H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、セリン(Serine)、カルニチン(Carnitine)及びカルノシン(Carnosine)からなる群より選択されたいずれか一つ以上の光散乱減少物質(optical clearing agent)を有効成分として含む、肌の光学特性改善用の組成物を特徴とする。以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
【0024】
本明細書において使用された用語「肌の光散乱」とは、外部の光が肌内に浸透するとき、肌内の角層で光が散乱して散らばらず、表皮及び真皮層まで浸透した後、肌の外へ反射して出ることを意味する。即ち、肌の光散乱が増加するということは、肌に浸透した光の反射率が高いということを意味する。
【0025】
肌に化粧品や外用剤などの組成物を塗れば、肌の水分量、肌の表面粗さ、肌の状態などが変わる。各々の変数は、肌に対する光の挙動(屈折率、反射量、経路差)を変化させる重要な因子になる。
【0026】
本発明は、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、トレハロース、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ベタイン、オリゴヒアルロン酸、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、セリン、カルニチン及びカルノシンからなる群より選択されたいずれか一つ以上の光散乱減少物質を有効成分として含む肌の光学特性改善用の組成物を提供する。
【0027】
本発明の組成物に含まれる前記光散乱減少物質は、肌の最外層である角層に均一に伝達されて構成成分の結晶化を減らし、角質細胞内に浸透した光学特性改善物質が角質細胞内に残留して水分と結合することで光散乱を減少させ、これによって肌をさらに透明に見えるようにし、肌トーン及びキメを改善することができる。前記「肌キメの改善」とは、角層が乾燥して浮き出ず、これによって肌の柔軟性が増加、改善ないし向上するか、粗さが減少することを意味する。前記「肌トーンの改善」とは、自分の肌の色合いの強弱や濃淡の程度を意味する。したがって、光学特性改善物質が角質によるくすみを改善し、本然の透明な肌に改善することを意味する。
【0028】
本発明の組成物において、前記光散乱減少物質は、組成物の全重量に対して0.01~40重量%、詳しくは0.1~30重量%、より詳しくは1~20重量%で含まれ得る。前記光散乱減少物質が0.01重量%未満に含まれる場合、肌の光学特性の改善効果が微々であり、40重量%を超過して含まれる場合、肌が固くなって変形が生ずることがあり、肌を透明化しすぎて自然な肌ツヤを阻害し得る。
【0029】
本発明の組成物において、前記オリゴヒアルロン酸は、分子量が300~100,000Da、詳しくは300~50,000Da、より詳しくは500~10,000Daであり得る。前記オリゴヒアルロン酸の分子量が前記範囲を外れる場合には、光散乱減少の効能及び肌の光学特性の改善効果が低下する恐れがある。
【0030】
本発明の組成物において、前記光散乱減少物質は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物を含み得る。
【0031】
本発明の組成物において、前記ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとが、1:0.01~20:0.01~20の重量比、詳しくは1:0.1~15:0.1~15の重量比、より詳しくは1:0.5~10:0.5~10の重量比で含まれ得る。
【0032】
本発明の組成物において、前記光散乱減少物質は、肌の透明度、肌トーンまたは肌のキメを改善する効果を奏する。
【0033】
本発明の組成物において、前記肌の光学特性改善用の組成物は、化粧料組成物または皮膚外用剤であり得る。
【0034】
本発明の化粧料組成物は、化粧分野で使われる通常の補助剤、例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン性または非イオン性乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質素嚢のみならず、化粧品に通常使用される任意の他の成分のような化粧品学または皮膚科学分野で通常使用される補助剤と共に一般化粧品または機能性化粧品の構成要素として使われ得る。
【0035】
本発明の前記化粧料組成物は、通常の化粧料の剤形に剤形化できる。例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、ローション、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、オイルセラム、セラム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ゲル、ボディソープ、ボディローション、ボディオイル、ボディエッセンス、メイクアッププライマー、ファンデーション、メイクアップベース、パウダーファンデーション、パクト、パウダー、リップスティック、リップグロス、リップライナー、マスカラ、アイブロウ、アイシャドウ及びネイルエナメルからなる群より選択された剤形に剤形化し得る。
【0036】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚外用剤に使用される通常の補助剤、例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤または脂質素嚢のみならず、化粧品に通常使用される任意の他の成分のような化粧品学または皮膚科学分野で通常使用される補助剤を含み得る。また、前記成分は、皮膚科学分野で通常使用される量で仕込まれ得る。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、通常の皮膚外用剤の剤形に剤形化できる。例えば、クリーム、ゲル、軟膏、液体、パウダー、噴霧剤及びパッチからなる群より選択された剤形に剤形化し得る。
【0038】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。しかし、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであるだけで、本発明の権利範囲はこれによって限定されない。
【実施例0039】
[実施例1]
被験者の角質を角質テープ(D-Squame sampling disk,22mm diameter,CuDermTM)を用いて採取した後、100μLの水(対照群)とウレアを各々塗布してから3~4時間後、水洗して乾燥して光散乱効果を確認した。
【0040】
【0041】
実験結果、対照群(水)の場合、塗布及び水洗後に乾燥した場合、角質内に残っておらず散乱減少が示されなかった一方、ウレアの場合、処理及び水洗後に乾燥しても角質細胞内に浸透して水分子を保持していることから、散乱が減少して透明に見えることを確認することができた(
図2aの右下図)。
【0042】
図2bは、ウレア(10%)を処理した場合、偏光顕微鏡(Leica DM1000)のブライトフィールドイメージ及びダークフィールドイメージを示す。ブライトフィールドイメージは、特殊な光学ユニットを要せず、試料を単に拡大する基本的な観察方法で試料の構造を確認することに適しているが、散乱光を確認することには適していない。ダークフィールドイメージは、試料に届く直接照明光は外へ誘導し、もっぱらサンプルから出る散乱光のみを対物レンズで取る観察法であって、顕微鏡の上部光源からの光は角質細胞で散乱して白色に見え、散乱が減少するほど黒色に示される。その結果、ウレアを処理した場合、角質の散乱がより減少して黒色に見えることを確認した。
【0043】
図2cは、偏光顕微鏡のダークフィールドモードで角質テープから試料の塗布部位と非塗布部位の5個所のイメージを得た後、イメージ分析プログラム(Python)を用いて数値化して光散乱減少効率を比較した結果である。分析されたイメージの数値は30~200範囲で表され、イメージに白色が多いほど値が高く示される。非塗布部位イメージの数値の平均値及び塗布部位イメージの数値の平均値を求め、非塗布部位に対する塗布部位のイメージ数値の減少率を百分率で表した。実験結果、ウレアを10%処理した場合、光散乱減少が対照群(水)に対して17%水準であることを確認した。
【0044】
[実施例2]
本発明の光散乱減少物質、プロパンジオール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、ジプロピレングリコール、ベタイン、カルニチン、カルノシン及びセリンを10重量%含む組成物に対して、上述の実施例1と同様の方法で光散乱減少効果を確認した。
【0045】
一方、本発明の効果を同濃度における相対値として比較するために、同濃度(10重量%)のウレア、グリセロール、スクロース、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール400及びヘキサンジオール溶液を製造し、比較評価した(
図3a)。オリゴヒアルロン酸(500~10,000Da)及び塩化ナトリウムは1重量%溶液に製造し、同濃度(1重量%)のウレアと比較評価した(
図3b)。
【0046】
実験結果は、偏光顕微鏡によって得たイメージを分析して得られた光散乱減少効率を、ウレア(10重量%)の光散乱減少効率を100%にした相対値(相対光散乱改善率)で表して
図3aに示し、ウレア(1重量%)の光散乱減少効率を100%にした相対値(相対光散乱改善率)で表して、
図3aに示した。
【0047】
実験結果、本発明の光散乱減少物質のいずれも各々有意味な光散乱減少効率を示すことを確認することができた。この中でも特に、オリゴヒアルロン酸、トレハロース、プロパンジオール、ソルビトール、ジプロピレングリコール及び塩化ナトリウムの場合、ウレアは勿論、グリセロール、スクロース、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール400及びヘキサンジオールの全てに比べてそれと類似であるか、またはそれより高い散乱減少効率を示すことを確認した。
【0048】
[実施例3]
本発明の光散乱物質であるオリゴヒアルロン酸の光散乱減少効果を確認するために、相異なる分子量を有するヒアルロン酸と比較実験した。
【0049】
具体的に、上述した実施例1と同様の方法を用いて下記の表1の物質を処理し、結果値は、ウレアの光散乱減少効率を100%にした相対値で表して
図4に示した。
【0050】
【0051】
実験結果、実験群1及び2の相対光散乱減少率が50%程度にとどまった一方、分子量10,000Da以下のヒアルロン酸である実験群3の場合、光散乱減少率が18%で非常に高く示されたことを確認した(
図4)。このような結果は、分子量が小さいヒアルロン酸の場合、角質内のケラチンへ浸透して水を保持するためであると考えられる。
【0052】
[実施例4]
本発明の光散乱物質であるトレハロースと、プロパンジオールと、ソルビトールとの混合割合による光散乱減少効果を実験した。
【0053】
具体的な実験方法は、実験例1と同様の方法を用いて下記の表2の組成物を処理し(含量は、重量%である。)、結果値は、ウレアの光散乱減少効率を100%にした相対値で表して、
図5に示した。
【0054】
【0055】
実験結果、各々の単一物質を処理した実験群1~3に比べて、各物質を全て組み合わせた実験群4~7で散乱減少効率が大幅上昇するだけでなく、ウレアに対する相対値で表した光散乱改善率も非常に高いことから、顕著な上昇効果を奏することを確認した(
図5)。
【0056】
[実施例5]
本発明の肌キメの改善を確認するために角質テープを用いて被験者の角質を採取した後、200μLの水(対照群1)及び実験群11(下記の表を参照)を塗布してから4時間後、水洗して乾燥した。肌キメの改善は、3次元レーザー顕微鏡(Keyence VK-X200)を用いて表面厚さ(surface thickness)及び表面粗さ(surface roughness)を測定した。実験結果を下記の表3及び
図6に示した。
【0057】
【0058】
具体的に、対照群に比べて実験群11を処理したサンプルにおいて、角質の厚さは15%増加し、粗さが14%減少したことを確認することができた。これは、本発明の光散乱減少物質が角質細胞内へ浸透して乾燥後にも水分を保持しているため角質の厚さが増加し、これによって粗さが減少したといえる。
【0059】
[実施例6]
本発明の肌の透明度改善を確認するために、被験者10人を対象にして対照群2及び実験群12、13(下記の表を参照)を塗布してから3時間後、ボディソープで洗浄した後、塗布前とは変わった肌の透明度を、皮膚透明度測定器(Translucency Meter,TLS850)を用いて評価した。
【0060】
【0061】
実験結果を表4に示しており、対照群2に比べて実験群12、13を処理した場合、肌の透明度が大幅に改善したことを確認した。
【0062】
以上、本発明の望ましい実施例を説明したが、このような実施例は本発明の技術的思想を具現する一実施例であるだけで、本発明の技術的思想を具現する限り、如何なる変形例または修正例も、本発明の範囲に属すると解釈すべきである。
本発明は、光散乱減少物質を組成物に含めることによって、角質細胞の間に光散乱減少物質が染み込んで構成成分の結晶化を減らし、角質細胞内に浸透した光学特性改善物質が角質細胞内に残留して水分と結合することで光散乱を減少させ、これによって、肌の透明度、肌トーン、肌のキメを改善する効果を奏するため、皮膚外用剤及び化粧料組成物として非常に有用に活用することができる。
前記ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとの混合物は、ソルビトールと、トレハロースと、プロパンジオールとが、1:0.01~20:0.01~20の重量比で含まれることを特徴とする、請求項3に記載の肌の光散乱減少用の化粧料組成物。
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、ローション、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、オイルセラム、セラム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ゲル、ボディソープ、ボディローション、ボディオイル、ボディエッセンス、メイクアッププライマー、ファンデーション、メイクアップベース、パウダーファンデーション、パクト、パウダー、リップスティック、リップグロス、リップライナー、マスカラ、アイブロウ、アイシャドウ及びネイルエナメルからなる群より選択された剤形に剤形化したことを特徴とする、請求項1に記載の肌の光散乱減少用の化粧料組成物。