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特開2022-173278自己共振装置を備えたプラズマ点火装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173278
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】自己共振装置を備えたプラズマ点火装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20221111BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144735
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2020070119の分割
【原出願日】2016-01-27
(31)【優先権主張番号】14/616,089
(32)【優先日】2015-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505477121
【氏名又は名称】エムケイエス インストゥルメンツ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ショーン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ワルター、スティーブン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チェン
(57)【要約】
【課題】プラズマチャンバ内で処理プラズマに点火するための方法および装置が提供される。
【解決手段】1つまたは複数の自己共振装置が、プラズマチャンバ内のプラズマ生成空間に対してプラズマチャンバ内に配置される。プラズマ生成空間はプラズマチャンバによって形成される。自己共振装置のそれぞれは、点火プラズマを生成する。点火プラズマによって点火ガスの部分的なイオン化が引き起こされる。部分的にイオン化された点火ガスは、電界をプラズマ生成空間に印加することによって処理プラズマの点火を可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理プラズマに点火するための方法であって、
点火ガスをプラズマチャンバに流し込む工程と、
前記プラズマチャンバに対して配置された1つ以上の自己共振装置と、前記プラズマチャンバに結合された電力変圧器とを提供する工程と、
前記プラズマチャンバ内に1つ以上の点火プラズマを形成するために前記1つ以上の自己共振装置を使用する工程であって、前記1つ以上の点火プラズマによって前記点火ガスの少なくとも部分的なイオン化が引き起こされる工程と、
前記電力変圧器を用いて、前記プラズマチャンバに対して配置された前記1つ以上の自己共振装置によって前記プラズマチャンバ内に形成された前記1つ以上の点火プラズマに加えて、前記プラズマチャンバに電力を誘電結合させる工程であって、それにより前記プラズマチャンバ内で前記処理プラズマに点火する工程と、を備え、
前記1つ以上の自己共振装置によって、前記処理プラズマの点火中、低減された電力を用いて前記点火ガスの前記少なくとも部分的なイオン化が可能となる、方法。
【請求項2】
前記自己共振装置は、高周波またはマイクロ波周波数で共振する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の自己共振装置を前記プラズマチャンバ内のプラズマ生成空間に隣接させて配置する工程をさらに備え、前記プラズマ生成空間は、前記処理プラズマが形成される領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置を前記プラズマチャンバの入口に配置し、第2の自己共振装置を前記プラズマチャンバの出口に配置する工程をさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置および第2の自己共振装置をプラズマチャネルに沿って等間隔に配置する工程をさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の自己共振装置を100メガヘルツ~10ギガヘルツの間の周波数で動作させる工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の自己共振装置を300メガヘルツ~3ギガヘルツの間の周波数で動作させる工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の自己共振装置は、同軸共振器、リング共振器、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の自己共振装置は、マイクロストリップ共振器、ストリップライン共振器、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記処理プラズマは、約1~10キロボルト/メートルの間の平均電界で点火される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記点火プラズマは、100Vrms未満の電圧で持続する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記点火プラズマのピーク電圧は300Vrms未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の自己共振装置に50ワット未満の電力を供給する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記プラズマチャンバ内の圧力は6,666パスカル(50トル)未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
プラズマを生成するためのプラズマ源であって、
プラズマ点火ガスをプラズマチャンバに流し込むプラズマ点火ガス源と、
前記プラズマチャンバ内に1つ以上の点火プラズマを生成する1つ以上の自己共振装置であって、前記1つ以上の点火プラズマによって前記プラズマ点火ガスの少なくとも部分的なイオン化が引き起こされる、1つ以上の自己共振装置と、
前記プラズマチャンバと直接電気的に接続する電源と、
電力変圧器であって、前記プラズマチャンバ内の前記1つ以上の点火プラズマに加えて、前記プラズマチャンバに前記電源からの電力を結合させることにより、前記プラズマチャンバ内で前記処理プラズマに点火するように構成される電力変圧器と、を備え、
前記1つ以上の自己共振装置によって、前記処理プラズマの点火中、低減された電力を用いて前記プラズマ点火ガスの前記少なくとも部分的なイオン化が可能となる、プラズマ源。
【請求項16】
前記1つ以上の自己共振装置を前記プラズマチャンバ内のプラズマ生成空間に隣接させて配置することをさらに含み、前記プラズマ生成空間は前記処理プラズマが形成される領域である、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項17】
前記1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置および第2の自己共振装置は、前記プラズマ生成空間に沿って等間隔配置される、請求項16に記載のプラズマ源。
【請求項18】
前記1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置は前記プラズマチャンバの入口に配置され、第2の自己共振装置は前記プラズマチャンバの出口に配置される、請求項16に記載のプラズマ源。
【請求項19】
前記1つ以上の自己共振装置は、マイクロ波周波数または高周波で動作する、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項20】
前記1つ以上の自己共振装置は、100メガヘルツ~10ギガヘルツの間の周波数で動作する、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項21】
前記1つ以上の自己共振装置は、300メガヘルツ~3ギガヘルツの間の周波数で動作する、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項22】
前記1つ以上の自己共振装置は、同軸共振器、リング共振器、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項23】
前記処理プラズマは、10キロボルト/メートルの平均電界で点火される、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項24】
前記1つまたは複数の点火プラズマは、100Vrms未満の電圧で持続する、請求項15に記載のプラズマ源。
【請求項25】
前記点火プラズマのピーク電圧は300Vrms未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の自己共振装置に対し、50ワット未満の電力が供給される、請求項16に記載のプラズマ源。
【請求項27】
前記プラズマチャンバ内の圧力は6,666パスカル(50トル)未満である、請求項16に記載のプラズマ源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、イオン、フリーラジカル、原子および分子を含む活性化ガスを発生させるために、プラズマに点火し、それを持続させる分野に関する。詳細には、自己共振装置が処理プラズマ点火ガスを部分的にイオン化するとともにプラズマ生成空間に対して配置され、電界の存在下においてプラズマ点火ガスを発火させる。
【背景技術】
【0002】
プラズマ放電は、イオン、フリーラジカル、原子および分子を含む活性化ガスを生成するためにガスを励起すべく使用することができる。活性化ガスは、半導体ウェハなどの固体材料、粉末、および他のガスの処理を含む多くの産業的および科学的用途に使用される。プラズマのパラメータと処理される材料へのプラズマの曝露条件とは、用途に応じて大きく変わる。
【0003】
プラズマは、DC放電、高周波(RF)放電、およびマイクロ波放電を含む様々な方法で生成することができる。DC放電は、ガス中の2つの電極間に電位を印加することによって達成される。RF放電は、電源からプラズマに静電的または誘導的にエネルギーを結合することによって達成される。エネルギーをプラズマに静電的に結合するには、典型的には平行な平板が使用される。電流をプラズマに誘導するには、典型的には誘導コイルが使用される。マイクロ波放電は、ガスを含む放電チャンバにマイクロ波透過窓を介してマイクロ波エネルギーを直接的に結合することによって達成される。マイクロ波放電は、高度にイオン化された電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを含む広範囲の放電条件を支持するために使用できるので、有利である。
【0004】
容量結合型RF放電およびDC放電では高エネルギーイオンが生成されるので、処理される材料がプラズマと直接接触する用途向けにプラズマを生成するためにしばしば使用される。マイクロ波放電は、高密度の低イオンエネルギープラズマを生成する。また、マイクロ波放電は、低エネルギーでイオンを発生させることと、次いで印加電位によってイオンを処理表面に対して加速することとが望ましい用途に有用である。
【0005】
RF誘導結合プラズマは、半導体ウェハ処理のような用途向けに大面積プラズマを生成するのに特に有用である。しかしながら、一部のRF誘導結合プラズマは、駆動電流がプラズマに弱く結合しているだけなので、純粋に誘導性のものではない。その結果、RF誘導結合プラズマはしばしば非効率的であり、駆動コイル上で高電圧を使用する必要がある。この高電圧によって、反応器表面の高エネルギーイオン衝突を引き起こす高い静電界が生成される。イオン衝突は反応器を劣化させ、処理チャンバおよび処理される材料を汚染する可能性がある。イオン衝突はまた、処理される材料に損傷を与える可能性がある。
【0006】
マイクロ波プラズマ源および誘導結合プラズマ源は、高価で複雑な電力供給システムを必要とする場合がある。これらのプラズマ源は、精密なRF発電機またはマイクロ波発電機と、発電機のインピーダンスをプラズマ源に整合させるための複雑な整合ネットワークとを必要とする場合がある。加えて、プラズマに到達する実際の電力を確かめ、制御するために、精密な計器が通常必要とされる。
【0007】
プラズマに点火することはまた、プラズマガスのイオン化を引き起こすのに十分大きな電力を供給できる電力供給システムを必要とする場合がある。現在のシステムでは、プラズマに点火するには、プラズマが形成される状態までガスを励起するのに十分な高電界(例えば、絶縁破壊電界)を供給することが必要である場合があり、その高電界は、例えば、パッシェン曲線によって導かれる。マイクロ波プラズマ、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、および/またはグロー放電プラズマの場合、典型的には高電界(例えば、0.1~10kV/cm)が、ガスの初期絶縁破壊を引き起こすために印加される。
【0008】
プラズマに点火するために高電圧を印加すると、いくつかの困難、例えば点火ウィンドウ(例えば、圧力、ガス流、および/またはガス種についての正常な点火のための標準使用範囲)の外でのアーク放電、および/または誘電体の電気的絶縁破壊(例えばパンチスルー)を引き起こす可能性がある。付加的な望ましくないアーク放電と誘電体の電気的絶縁破壊とは、プラズマチャンバおよび/またはシステム部品を損傷させる可能性がある。部品が損傷すると頻繁な交換が必要となることがあり、高額になる可能性がある。点火のために高電圧を印加する別の困難は、様々なタイプ/形状のプラズマ源に対して、カスタムの点火設計が典型的に必要であることである。
【0009】
プラズマに点火するために高電圧を印加する現在の技術は、プラズマチャンバに結合された高電圧スパークプラグまたは高電圧電極の使用を含む。別の現在の技術は、高電圧をプラズマチャンバ自体の一部に直接印加すること(例えばブロック点火)である。上記の困難に加えて、これらの着火技術のそれぞれは困難を有する。
【0010】
スパークプラグは、典型的には、例えばスパークプラグにおいて使用されるリレーのために限定的な寿命を有し、したがって、頻繁な交換を必要とする。高電圧電極は、典型的には、処理中にプラズマへの暴露に耐えなければならない。これは、電極の限定的な寿命および/または電極のための限定的な材料の選択肢を引き起こす可能性がある。ブロック点火は、プラズマアーク放電の可能性を生じ、ブロック材料/コーティングの選択肢を制限する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、アーク放電もパンチスルーもなく、また部品および/またはプラズマチャンバ自体を高電圧、イオン衝突、ラジカルおよび/または望ましくないアーク放電/熱にさらすこともなく、プラズマに点火することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の利点は、プラズマ点火を引き起こすために高い電圧が必要でないことによる、アーク放電の最小化を含む。本発明の他の利点は、高電圧、アークおよび/またはパンチスルーへの暴露を相当排除することに起因する、部品交換頻度の低減を含む。
【0013】
他の利点は、高価な部品および/またはカスタム点火設計の必要性の最小化によるコストの削減を含む。他の利点は、材料がもはや高電圧、アーク放電および/またはパンチスルーに耐える必要がないので、より広い範囲のチャンバ材料/コーティングが許容されることを含む。
【0014】
他の利点は、高い点火電圧の要件の排除のために、以前には到達できなかった圧力および/または流れ領域で動作する他のプラズマ源のためのスタータープラズマとしてプラズマ源を使用することを含む。他の利点は、処理ガスを用いて発火し、典型的に現在必要とされる不活性ガス混合物からの切り替えを回避する能力のために、初期絶縁破壊のインピーダンス条件および処理条件が非常に異なる処理チャンバ内で、高速パルスプラズマ処理を実行する能力を含む。
【0015】
他の利点は、点火に必要な電界の低減による、誘導結合プラズマの同調範囲要件の低減を含む。他の利点は、自己共振装置の使用による単純化されたエレクトロニクス、および/または他の場合には必要とされる点火スイッチングスキームの排除を含む。
【0016】
一態様において、本発明は、処理プラズマに点火するための方法を含む。この方法は、点火ガスをプラズマチャンバに流し込むことを含む。この方法はまた、プラズマチャンバ内に1つ以上の点火プラズマを形成するために1つ以上の自己共振装置を使用することを含み、1つ以上の点火プラズマによって点火ガスの少なくとも部分的なイオン化が引き起こされる。この方法はまた、プラズマチャンバに電力を誘導結合させることによって、プラズマチャンバ内で処理プラズマに点火することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、自己共振装置は、高周波またはマイクロ波周波数で共振する。いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の自己共振装置を、プラズマチャンバ内のプラズマ生成空間に隣接させて配置することを含み、プラズマ生成空間は、処理プラズマが形成される領域である。
【0018】
いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置をプラズマチャンバの入口に配置し、第2の自己共振装置をプラズマチャンバの出口に配置することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置と第2の自己共振装置とをプラズマチャネルに沿って等間隔に配置することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の自己共振装置を100メガヘルツ~10ギガヘルツの間の周波数で動作させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の自己共振装置を300メガヘルツ~3ギガヘルツの間の周波数で動作させることを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置は、同軸共振器、リング共振器、スプリットリング共振器、半波長共振器、環状シングルスプリットリング共振器、環状スプリットリング共振器、ストリップラインスプリットリング共振器、2つの放電ギャップを有する半波長共振器、スプリットリング共振器を載せた半波長共振器、スプリットリング共振器を載せた伝達装置、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置は、マイクロストリップ共振器、ストリップライン共振器、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、処理プラズマは、約1~10キロボルト/メートルの平均電界で点火される。
【0021】
いくつかの実施形態では、点火プラズマは、100Vrms未満の電圧で持続する。いくつかの実施形態では、点火プラズマのピーク電圧は300Vrms未満である。いくつかの実施形態では、この方法は、1つ以上の自己共振装置に50ワット未満の電力を供給することを含む。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ内の圧力は6,666パスカル(50トル)未満である。
【0022】
一態様において、本発明は、プラズマを生成するためのプラズマ源を含む。プラズマ源は、プラズマ点火ガスをプラズマチャンバに流し込むプラズマ点火ガス源を含む。プラズマ源はまた、プラズマチャンバ内に1つ以上の点火プラズマを生成する1つ以上の自己共振装置を含み、1つ以上の点火プラズマによってプラズマ点火ガスの少なくとも部分的なイオン化が引き起こされる。プラズマ源はまた、プラズマチャンバ内の処理プラズマに点火するために、プラズマチャンバと直接電気的に接続する電源を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、プラズマ源は、1つ以上の自己共振装置をプラズマチャンバ内のプラズマ生成空間に隣接させて配置することを含み、プラズマ生成空間は処理プラズマが形成される領域である。
【0024】
いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置および第2の自己共振装置は、プラズマ生成空間に沿って等間隔配置される。いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置のうちの第1の自己共振装置はプラズマチャンバの入口に配置され、第2の自己共振装置はプラズマチャンバの出口に配置される。
【0025】
いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置は、マイクロ波周波数または高周波で動作する。いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置は、100メガヘルツ~10ギガヘルツの間の周波数で動作する。いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置は、300メガヘルツ~3ギガヘルツの間の周波数で動作する。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置は、同軸共振器、リング共振器、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、処理プラズマは、10キロボルト/メートルの平均電界で点火される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の点火プラズマは、100Vrms未満の電圧で持続する。
【0027】
いくつかの実施形態では、点火プラズマのピーク電圧は300Vrms未満である。いくつかの実施形態では、1つ以上の自己共振装置には、10ワット未満の電力が供給される。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ内の圧力は6,666パスカル(50トル)未満である。
【0028】
上述の本発明の利点は、さらなる利点とともに、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによってより深く理解され得る。図面は必ずしも一定の縮尺比ではなく、その代わりに全体的に本発明の原理の図示に強調が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の例示的な実施形態による、活性化ガスを生成するためのプラズマ源の概略図。
図2】本発明の例示的な実施形態による、プラズマチャンバの概略図。
図3】本発明の例示的な実施形態による、プラズマに点火するための方法の流れ図。
図4】本発明の例示的な実施形態による、点火電力対圧力のグラフ。
図5】本発明の例示的な実施形態による、自己共振装置の数に対する点火性能のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般に、1つまたは複数の自己共振装置が、プラズマチャンバによって形成されるプラズマ生成空間に対して配置される。点火の間、各自己共振装置は、プラズマ生成空間に流れ込むガス(例えば点火ガス)を少なくとも部分的にイオン化する、各自己共振装置自体のプラズマ(例えば点火プラズマ)を生成する。エネルギーがプラズマ生成空間へと結合され、プラズマ(例えば処理プラズマ)が点火される。
【0031】
点火ガスの部分イオン化は、部分イオン化なしに(例えば1つまたは複数の自己共振装置なしに)処理プラズマの点火を引き起こすために必要なエネルギーよりも少ないエネルギーで処理プラズマの点火が起こることを可能にする。
【0032】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、活性化されたガスを生成するためのプラズマ源10の概略図である。プラズマ源10は、活性化されたガスを半導体処理チャンバ22に提供する。プラズマ源10は、電力変圧器、プラズマチャンバ20、ガス入口32、第1自己共振装置15a、第2自己共振装置15b、第3自己共振装置、15n(総じて自己共振装置15)、スイッチング電源(電源24およびスイッチング素子26)およびフィードバックループ44を含む。
【0033】
電力変圧器は、磁心16、一次コイル18と処理プラズマ14(点火された場合)とを含む。電力変圧器は、スイッチング電源から受け取った電力をプラズマ生成空間に結合する。プラズマ生成空間は、プラズマチャンバ20によって形成される。電力変圧器はまた、スイッチング電源から受け取った電力を、3つの点火プラズマ空間(自己共振装置15ごとに1つの点火プラズマ空間がある)に結合する。磁心16は、プラズマチャンバ20が磁心16を通過するようにプラズマチャンバ20の周囲を取り囲む。一次コイル18および磁心16は、プラズマ生成空間内で点火され持続される処理プラズマ14が電力変圧器の第2回路を形成することを可能にする。
【0034】
様々な実施形態において、電力変圧器は、2つ、4つまたは任意の数の磁心を含む。様々な実施形態において、プラズマチャンバ20は、石英、アルミナもしくはサファイアなどの誘電材料、またはアルミニウムなどの金属、または陽極処理アルミニウムなどの被覆金属から作製することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、自己共振装置15のそれぞれは、それ自体の個別の電源を有する。例えば、各個別電源は、約3ワット(電力)の電力を提供するマイクロ波増幅器であり得る。いくつかの実施形態では、各個別電源は、マイクロ波周波数が制御されることを可能にする電圧制御発振器である。いくつかの実施形態では、各個別電源は、その個別の自己共振装置と共にマイクロチップ上にある。これらの実施形態では、マイクロチップは、低電圧DC電源によって電力を供給される。いくつかの実施形態では、各個別電源は、その個別の自己共振装置と別に収容される。
【0036】
いくつかの実施形態では、スイッチング電源は、例えば、参照することによって完全な形で本明細書に組み込まれる米国特許第6,388,226号明細書の図7および図8に記載されているように、ソリッドステートスイッチング電源とすることができる。
【0037】
自己共振装置15は、プラズマチャンバ20に対して結合されている。動作中、点火ガスがプラズマチャンバ20に流れ込む。自己共振装置15のそれぞれは、全てプラズマチャンバ20内にあるその対応する点火プラズマ空間内で点火プラズマを生成する。自己共鳴装置によって生成された点火プラズマは、点火ガスを少なくとも部分的にイオン化する。
【0038】
自己共振装置15によって生成された部分的にイオン化されたガスは、処理プラズマに点火するために使用されるガス(例えば、点火プラズマおよび/または追加のガスを発生させるのに使用されるのと同じ点火ガス)の、自己共振装置なしの絶縁破壊が不可能な印加電界強度(例えば、パッシェン曲線から予想される強度よりも小さい強度)による絶縁破壊を可能にする。このようにして、処理プラズマに点火するのに必要な電界(例えば、約50ボルト/メートル)は、プラズマチャンバ内で自己共振装置15なしで処理プラズマに点火するのに必要な電界(例えば、300ボルト/メートル)よりも小さい。
【0039】
いくつかの実施形態では、自己共振装置の各プラズマを生成するのに必要な電力は、自己共振装置当たり10ワット未満である。このようにして、処理プラズマの点火を引き起こすのに必要な電力(例えば、自己共振装置当たり10ワット)は、自己共振装置15なしで処理プラズマの点火を引き起こすのに必要な電力(例えば、約100~300ワット)よりも小さい。
【0040】
部分的にイオン化された点火ガスが自己共振装置15および点火ガスによってプラズマ生成空間内で生成された状態で、電力変換器が電力をプラズマ生成空間に結合すると、処理プラズマ14が発火する。このようにして、処理プラズマは、点火電極および/またはプラズマチャンバ20に対して印加される高電圧を使用することなく発火する。処理プラズマ14の点火がいったん起こると、自己共振装置15は点火プラズマの生成を停止する。
【0041】
自己共振装置15のそれぞれは、処理プラズマの密度よりも密度が低く、および/または処理プラズマが内部に存在する空間よりも小さい空間内に存在するプラズマを生成することができる。したがって、自己共振装置15に供給するのに必要な電力(例えば、プラズマ点火のための電力)は、処理プラズマを持続させるのに必要な電力未満であることができる。
【0042】
ガスは、プラズマチャンバ20の出口を介してプラズマチャンバ20を出て、処理チャンバ22に入る。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ20は、複数のガス入口を含む。様々な実施形態において、プラズマチャンバ20は、磁心ごとに1つのガス出口を有する。様々な実施形態において、プラズマチャンバ20は、磁心より多くのガス出口を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、点火ガスとプラズマ14が持続している間に使用されるガス(例えば、処理プラズマガス)とは同じである。いくつかの実施形態では、処理ガスは、NH3、O2、H2、N2、NF3、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、点火ガスと処理プラズマガスとは異なる。様々な実施形態において、点火ガスは、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオン、ラドン、ウンウンオクチウム、水素、窒素またはこれらの任意の組み合わせである。点火ガスは、プラズマに点火することができる任意のガスであってよいことは、当業者には明らかである。
【0044】
処理される材料を支持するために処理チャンバ22内に試料ホルダ23を配置することができる。処理される材料は、プラズマの電位に対してバイアスされ得る。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ出口50と試料ホルダ23との間にシャワーヘッド(図示せず)が配置され、その結果、活性化ガスが、処理される材料の表面にわたって実質的に均一に分散される。
【0045】
プラズマ源10はまた、一次巻線18の電気的パラメータを測定するための測定回路36を含むことができる。一次巻線18の電気的パラメータは、一次巻線18を駆動する電流、一次巻線18を跨いだ電圧、電源24によって生成されたバス電圧または線間電圧、一次巻線18の平均電力、および一次巻線18のピーク電力を含む。一次巻線の電気的パラメータは、連続的に監視することができる。
【0046】
プラズマに対して供給される電力は、電力制御回路42と、一次巻線18の電気的パラメータを測定する測定回路36と、1つまたは複数のスイッチング半導体デバイスを含むスイッチング回路26とを含むフィードバックループ44によって正確に制御することができる。加えて、フィードバックループ44は、電圧プローブおよび電流プローブを含むことができる。
【0047】
プラズマ源10はまた、一次巻線18の電気的パラメータを測定するための測定回路36を含むことができる。一次巻線18の電気的パラメータは、一次巻線18を駆動する電流、一次巻線18を跨いだ電圧、電源24によって生成されたバス電圧または線間電圧、一次巻線18の平均電力、および一次巻線18のピーク電力を含む。一次巻線の電気的パラメータは、連続的に監視することができる。
【0048】
プラズマに対して供給される電力は、RFセクションに給電するDCバスに基づく電力測定値を監視することによって正確に制御することができる。
プラズマ源10は、固体表面、粉末、および気体などの多数の材料を処理するのに有用である。プラズマ源10は、薄膜堆積システムおよびエッチングシステムなどの半導体処理装置に活性化ガスを供給するのに特に有用である。プラズマ源10はまた、フォトレジスト剥離、原子層堆積、ウェハ洗浄、およびゲート酸化膜、処理チャンバ洗浄または誘電体改質に特に有用である。
【0049】
プラズマ源は、ケイ素と、二酸化ケイ素と、窒化ケイ素と、アルミニウムと、モリブデンと、タングステンと、フォトレジスト、ポリイミドおよび他のポリマー材料のような有機材料となどの多数の材料をエッチングするために使用することができる。プラズマ源10は、ダイヤモンド薄膜、二酸化ケイ素、窒化ケイ素および窒化アルミニウムなどの多数の薄膜材料のプラズマ強化堆積に使用することができる。
【0050】
加えて、プラズマ源10は、原子状フッ素、原子状塩素、原子状水素、原子状臭素、原子状窒素および原子状酸素などの反応性ガスを生成するために使用することができる。プラズマ源は、NHと、NFと、OHと、安定な前駆体の他の分子フラグメントとなどの分子ラジカルを生成するために使用することができる。このような反応性ガスは、二酸化ケイ素、酸化スズ、酸化亜鉛および酸化インジウムスズなどの種々の酸化物を還元、変換、安定化または不動態化するのに有用である。特定の用途には、フラックスレスはんだ付けと、ケイ素表面からの二酸化ケイ素の除去と、ウェハ処理前のケイ素表面の不動態化と、銅、ケイ素、酸化ケイ素などの様々な金属および誘電材料の表面洗浄とが含まれる。
【0051】
プラズマ源10の他の用途には、ポリマー、金属、セラミックおよび紙の表面特性の改質が含まれる。加えて、プラズマ源10は、滅菌のための原子状酸素、原子状塩素、または原子状フッ素の高粒子束を生成するために使用されてもよい。
【0052】
種々の実施形態において、プラズマチャンバの表面材料は、用途および/または特定のプロセス中に使用されるガスの化学的性質に基づいて選択される。例えば、石英は酸素プラズマおよび塩素プラズマに対して比較的安定であるが、フッ素および水素プラズマでエッチングされる可能性がある。フッ素を含むプラズマを生成するために、プラズマチャンバの表面は、アルミニウム、マグネシウム、イットリウム、またはそれらの化合物から作製することができる、というのも、これらの元素には安定なフッ化物が存在するためである。
【0053】
様々な実施形態において、処理ガスの組成は、プラズマチャンバ表面の侵食を最小限に抑えるように調整することができる。例えば、サファイア、アルミナ、または陽極処理アルミニウムなどの酸化アルミニウムを含む表面は、水素プラズマによって侵食される可能性がある。水素イオンは、最初に酸化アルミニウムを還元し、続いてそれを揮発性の水素化アルミニウムに変換する。OまたはHOの形態でおよび1~1000ppmの範囲で少量の酸素を水素に添加することにより、酸化アルミニウム表面を安定化させ、その侵食を実質的に低減することができる。
【0054】
プラズマ源10によって生成されるプラズマ14のプラズマ電流およびプラズマ電流密度は、特定の用途のための特定のガスの解離を最適化するように選択することができる。例えば、プラズマ電流およびプラズマ電流密度は、NF3解離を最適化するように選択することができる。NF3は、チャンバ洗浄および他の多くの用途のためのフッ素源として広く使用されている。NF3は比較的高価である。高いNF3解離速度についてプラズマ源10を最適化することによって、ガス利用率が改善され、システムを稼動させる全体的なコストが低減される。加えて、NF3の解離速度を高めることは、環境に有害な気体の大気中への放出を減少させるので望ましい。
【0055】
NF3の解離は、プラズマ中のNF3分子と電子と高温ガスとの間の衝突によって引き起こされる。プラズマ源内の電子の密度は、プラズマ電流密度にほぼ比例する。NF3分子の解離を最大にするプラズマ電流密度の最適範囲が存在する。一実施形態では、約40~60cmの長さを有するトロイダルプラズマ14の場合、NF3ガスを効率的に解離させるのに最適なプラズマ電流密度は5~20A/cmである。一実施形態では、3~10cmの断面積を有するトロイダルプラズマ14の場合、この電流密度範囲は、約20~200Aの範囲の合計トロイダルプラズマ電流に対応する。
【0056】
プラズマチャンバ20の内部表面に使用される材料とプラズマチャンバ20の出力を処理チャンバ22に接続する要素とは、特にプラズマ源が化学的に反応性の種を生成するために使用される場合には注意深く選択され得る。いくつかの要件を満たすように該材料を選択することができる。該材料の1つの要件は、該材料と処理ガスとの相互作用によって生じる材料の腐食または劣化に起因する汚染の発生を最小限に抑えることである。該材料の別の要件は、処理ガスに対して暴露されたときにそれらが最小の侵食しか有しないことである。該材料の別の要件は、反応性ガスの再結合および不活性化を最小限に抑え、従って処理チャンバへの反応物の供給を最大にすることである。
【0057】
陽極処理アルミニウムは、半導体処理用途にいくつかの利点を有する。1つの利点は、陽極処理アルミニウムは電解プロセスを通して下にあるアルミニウム基体上に直接成長できることである。得られる膜は優れた接着特性を有する。別の利点は、陽極処理アルミニウムは石英の熱伝導率より約15倍高い熱伝導率を有することである。したがって、陽極処理アルミニウムで形成された処理チャンバの内部表面は、著しい入射電力密度であっても、比較的低温のままである。
【0058】
別の利点は、陽極処理アルミニウムは、イオン衝突が存在しないか、低エネルギーのイオン衝突しか存在しない限り、多くの原子種(F、O、Cl等)に対して化学的に不活性であることである。陽極処理アルミニウムは、原子状フッ素に対して低い再結合係数を有するので、フッ素化学的性質に対して特に有利である。また、陽極処理アルミニウムは、半導体材料処理用途に一般に使用され、受け入れられている材料である。
【0059】
同じく石英は半導体処理用途にいくつかの利点を有する。石英は極めて高純度で入手可能であり、半導体業界で一般に使用され、受け入れられている。また、石英は、O、H、N、Cl、およびBrを含む多数の反応種に対し安定である。特に、石英は原子状酸素および原子状水素に対して低い表面再結合係数を有する。また、石英は低い熱膨張係数を有し、熱衝撃に対して比較的高い耐性を有する。加えて、石英は高い軟化点および融点を有するので、石英から処理チャンバを形成することは比較的簡単である。
【0060】
同じくフルオロポリマーは半導体処理用途にいくつかの利点を有する。いくつかのフルオロポリマーの例は、PTFE、PFE、PFA、FEP、およびテフロン(Teflon)(登録商標)である。多くのフルオロポリマーの再結合率は比較的低い。フルオロポリマーはまた、原子状フッ素および原子状酸素を含むほとんどの原子種に対して比較的不活性である。加えて、フルオロポリマーの純度は比較的高く、フルオロポリマーはバルク形態(チューブ、シートなど)および薄膜形態の両方で入手可能である。
【0061】
しかしながら、いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、プラズマ中のイオンによって侵食される可能性がある。また、フルオロポリマーが許容できる最大使用温度は、石英が許容できる最大温度よりも著しく低い。加えて、フルオロポリマーの熱伝導率は比較的低い。したがって、いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、プラズマチャンバの外の輸送セクションを構築するために最も有用である。
【0062】
上で図1に示したプラズマ源はプラズマ生成空間内で処理プラズマに点火し持続させることができるプラズマ源の1つの例示的な構成であること、およびプラズマ源の数多くの可能な構成が本発明に可能でありかつ適用できることは当業者には明白である。様々な実施形態において、当技術分野で知られている他のプラズマ源構成は、プラズマ生成空間内の自己共振装置励起ガスを許容し、処理プラズマが中性点火ガスに必要な電界強度よりも低い電界強度で発火することを可能にするように修正される。
【0063】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、プラズマチャンバ200の概略図である。プラズマチャンバ200はトロイダル形状であり、プラズマチャンバによって形成されるプラズマ生成空間を含む。プラズマチャンバ200はまた、4つの自己共振装置230a、230b、230c、230d(総じて自己共振装置230)と、入口205と出口210とを含む。プラズマチャンバ200は、磁心240aおよび240bによって取り囲まれている。
【0064】
様々な実施形態において、自己共振装置230の1つまたは複数のそれぞれは、同軸共振器、リング共振器、またはそれらの任意の組み合わせである。様々な実施形態において、自己共振装置230の1つまたは複数のそれぞれは、マイクロストリップ共振器、ストリップライン共振器、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の自己共振装置のそれぞれは、当技術分野で知られている自己共振装置である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるデービッド M.ポザール(David M.Pozar)著、「マイクロ波工学(Microwave Engineering)」、ワイリー・アンド・サンズ(Wileys & Sons)、2011年の第6章に記載されているような自己共振装置。
【0065】
様々な実施形態において、より多いまたは少ない自己共振装置230が存在する。様々な実施形態において、1、2、3、5、6または任意の数の自己共振装置が存在する。様々な実施形態において、自己共振装置の数は、プラズマチャンバ200のサイズ、点火パラメータ(例えば、種混合、ガス圧、および/またはガス流量)の所望の範囲に依存する。いくつかの実施形態では、自己共振装置の数は、ガス流中のまたはプラズマチャンバの表面上の汚染物質に対する所望の許容度に依存する。例えば、自己共振装置の数が多いほど、汚染物質に対する許容度が大きくなることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ200の入口225に1つの自己共振装置があり、プラズマチャンバ200の出口に1つの自己共振装置がある。いくつかの実施形態では、自己共振装置230はプラズマチャネルに沿って等間隔で配置される。いくつかの実施形態では、各自己共振装置230は、プラズマ生成空間に隣接して配置される。
【0067】
いくつかの実施形態では、自己共振装置230は、マイクロ波周波数によって共振する。いくつかの実施形態では、自己共振装置230は高周波によって共振する。いくつかの実施形態では、自己共振装置230は、100メガヘルツ~10ギガヘルツの間の周波数で共振する。いくつかの実施形態では、自己共振装置230は、300メガヘルツ~3ギガヘルツの間の周波数で共振する。
【0068】
自己共振装置230は、ガスの部分的なイオン化を引き起こすのに十分なプラズマ(例えば、点火プラズマ)をそれぞれ生成することができる。ガスの部分的イオン化を生成するために使用されるプラズマは、より小さい密度を有することができ、次いで処理プラズマの密度。従って、ガスの部分イオン化を発生させるのに必要な電力は、処理プラズマを持続させるのに必要な電力よりも低くすることができる。例えば、ガスを部分的にイオン化するために、必要な電力は数ワットから10ワットであり得るが、プラズマを持続させるための電力は1キロワットよりも大きい可能性がある。
【0069】
いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ200は、自己共振装置230にガスを供給するための1つまたは複数の追加のガス入口を含む。例えば、自己共振装置230ごとに、プラズマチャンバ200は、各自己共振装置230に近い場所でガスを注入するための対応するガス入口を含むことができる。このようにして、自己共振装置230のそれぞれは、その対応するプラズマの点火のために各自己共振装置自体のガス源を有することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、プラズマに点火するために自己共振装置230のそれぞれによって使用されるガスは、処理プラズマに点火するために使用される点火ガスとは異なる種類のガスである。例えば、点火ガスは、アルゴン、ヘリウム、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。これらの実施形態では、各自己共振装置230がいったんプラズマに点火すると、点火ガスがプラズマチャンバ200に流し込まれ、その結果、自己共振装置230のそれぞれのプラズマが点火ガスを少なくとも部分的にイオン化できるようにする。
【0071】
図2を参照すると、動作中、点火ガスがプラズマチャンバ200の入口225を介して流し込まれる。点火ガスはプラズマチャンバ200を通って流れ、自己共振装置230のそれぞれはそれ自身の点火プラズマに点火する。各点火プラズマは、点火ガスを少なくとも部分的にイオン化させる。点火ガスの部分的イオン化は、自己共振装置230のそれぞれの近くに配置されたイオン化領域232内のプラズマチャンバ200内に見出すことができる。例えば、自己共振装置230aは対応するイオン化領域232aを有し、自己共振装置230bは対応するイオン化領域232bを有し、自己共振装置230cは対応するイオン化領域232cを有し、自己共振装置230dは対応するイオン化領域232dを有する。
【0072】
イオン化領域のそれぞれにおいて生成された部分的にイオン化されたガスの少なくとも一部は、プラズマ生成空間に流れ込む。電界が磁心240aおよび240bを介してプラズマ生成空間に対して印加され、処理プラズマがプラズマ生成空間内で発火する。
【0073】
様々な実施形態において、プラズマチャンバ200は、誘導結合プラズマ源、容量結合プラズマ源、中空陰極、マイクロ波放電プラズマ源、またはグロー放電プラズマ源の一部である。
【0074】
図3は、プラズマチャンバ(例えば、上で図2に示したようなプラズマチャンバ200)内で処理プラズマに点火するための方法の流れ図300である。
この方法は、点火ガスをプラズマチャンバに流し込むことを含む(ステップ310)。この方法はまた、1つ以上の自己共振装置(例えば、図2で上述したような自己共振装置230)を使用することを含む。各自己共振装置は、プラズマチャンバ内に1つ以上の対応する点火プラズマを形成する(ステップ320)。各点火プラズマによって、点火ガスの少なくとも部分的なイオン化が引き起こされる。点火ガスを部分的にイオン化させることにより、電力がプラズマチャンバに対して直接結合されると、処理プラズマが発火することができる。処理プラズマは、部分的にイオン化されたガスなしで処理プラズマに点火するのに必要な電力(例えば1キロワット)よりも小さい電力(例えば10ワット未満)を印加することによって、発火することができる。
【0075】
この方法はまた、プラズマチャンバに電力を誘導結合させることによって、プラズマチャンバ内で処理プラズマに点火することを含む(ステップ330)。
いくつかの実施形態では、部分的にイオン化されるガスのパーセンテージは、所定の点火電圧に基づく。例えば、自己共振装置によって高度の点火イオン化が達成されるほど、処理プラズマに点火するのに必要な電力を低減することができる。
【0076】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、点火電力対プラズマチャンバ圧力のグラフ400である。自己共振装置を含むプラズマチャンバ(例えば、上で図2に示したようなプラズマチャンバ200)の場合、処理プラズマに点火するのに必要な電力は、約33パスカル(0.25トル)~299パスカル(2.25トル)のプラズマチャンバ圧力に対して約1~7ワットの範囲を有する。
【0077】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、自己共振装置の数に対する点火性能のグラフ500である。12Wの印加電力の場合、4つの自己共振装置を含むプラズマチャンバ(例えば、上で図2に示したようなプラズマチャンバ200)は、3つの自己共振装置を含むプラズマチャンバよりも高い点火性能を有する。
【0078】
特定の実施形態を参照して本発明を具体的に示し記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部における様々な変更をその中に施すことができることは当業者に理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に記載の発明。