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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173298
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/855 20210101AFI20221111BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20221111BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20221111BHJP
【FI】
A61M60/855
A61M60/174
A61M60/237
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146750
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2021121205の分割
【原出願日】2017-02-10
(31)【優先権主張番号】16155240.1
(32)【優先日】2016-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アボウロースン ワリード
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホッフ フランク
(72)【発明者】
【氏名】ニックス クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル ゲルト
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、血流入口において、詳細にはフローカニューレの血液フロースルー開口部において、血流状態の改善をもたらす血液ポンプを提供することである。
【解決手段】血液ポンプ1はポンプ部分2とフローカニューレ3とを含む。該フローカニューレ3の近位端部14は、血液が血流入口11に進入することができるように、ポンプ部分2に接続されており、フローカニューレ3の遠位端部13は、フローカニューレ3に進入する血液のための少なくとも1つの血液フロースルー開口部16を含む。遠位端部13は拡大直径部15を含み、血液フロースルー開口部16の少なくとも主要部が拡大直径部15内に配設されている。血液ポンプ1は、拡大直径部15に重なっているスリーブ4をさらに含む。該スリーブ4は、その遠位端42が血液フロースルー開口部16内へ径方向内側に撓まないようにする構造を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部分(2)とフローカニューレ(3)とを含む血液ポンプ(1)であって、前記ポンプ部分(2)は血流入口(11)および血流出口(12)および前記血流入口(11)から前記血流出口(12)まで血液を運ぶ羽根を有し、前記フローカニューレ(3)は、遠位端部(13)および近位端部(14)と共に、全体的な長手方向軸(18)を有し、
前記フローカニューレ(3)の前記近位端部(14)は、前記血液が前記血流入口(11)に進入することができるように、前記ポンプ部分(2)に接続されており、前記フローカニューレ(3)の前記遠位端部(13)は、拡大直径部(15)および前記フローカニューレ(3)に進入する前記血液のための少なくとも1つの径方向血液フロースルー開口部(16)を含み、前記少なくとも1つの血液フロースルー開口部(16)の少なくとも主要部が前記拡大直径部(15)内に配設されており、
前記血液ポンプ(1)は、前記血液フロースルー開口部(16)の近位にある前記フローカニューレ(3)に取り付けられている近位端(41)および前記拡大直径部(15)に重なっている遠位端(42)を有するスリーブ(4)をさらに含み、前記スリーブ(4)は、患者体内での前記血液ポンプ(1)の遮られていない動作中に前記遠位端(42)が0.2mmより多く前記少なくとも1つの血液フロースルー開口部内へ径方向内側に撓まないようにする構造を有する、
ことを特徴とする、血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの少なくとも前記遠位端部が圧縮形態から拡張形態へ径方向に拡張可能であることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の血液ポンプであって、前記拡張形態が前記拡大直径部を画定し、一方、前記圧縮形態では、前記拡大直径部の直径が前記フローカニューレの残部の直径に実質的に等しいことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの前記遠位端部が、前記血液フロースルー開口部を画定している枠組構造を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の血液ポンプであって、前記枠組構造が、実質的に前記フローカニューレの長手方向軸の方向に延在している複数の支柱を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの少なくとも前記遠位端部が形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つの血液フロースルー開口部が前記フローカニューレの前記遠位端部の径方向円周面上に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが可撓性材料、好ましくはポリウレタンの膜を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの前記遠位端が前記拡大直径部の実質的に最大直径の所に配設されているか、または前記スリーブの前記遠位端が前記スリーブの前記近位端と前記拡大直径部の前記最大直径との間に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、血流を前記フローカニューレの前記血液フロースルー開口部内へ方向付けるために、じょうご形状を有することを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが前記フローカニューレの前記遠位端部の円周面の周囲に配設されているか、または前記スリーブが前記フローカニューレの内部に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、好ましくは前記血流の結果として、径方向に拡張するかまたは広がるように構成されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの前記拡大直径部および前記スリーブの少なくとも1つが拡張機構を含み、前記部分または前記スリーブが拡張するかまたは広がり、また圧縮するかまたは潰れることを可能にすることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプであって、前記拡張機構が、少なくとも1つの蝶番、少なくとも1つの磁石、形状記憶合金またはバイメタルの少なくとも1つを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、前記血流を長手方向に方向付けるために、前記スリーブの内面に案内構造を含み、前記案内構造は複数のステータ翼を含むことが好ましいことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、補強構造であり、径方向に剛性が高い、少なくとも、前記長手方向軸に対して垂直な平面に前記補強構造が配設されている領域内に前記スリーブの凸横断面領域をもたらす補強構造を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項17】
請求項16に記載の血液ポンプであって、前記補強構造が少なくとも前記スリーブの前記遠位端にまたは前記遠位端に隣接して配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項18】
請求項16または17に記載の血液ポンプであって、前記補強構造が前記圧縮形態から前記拡張形態へ径方向に拡張可能であることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの可膨張性構造を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が少なくとも1つの環状バルーンを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの弾性部材を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在し、前記形状記憶合金、金属およびポリマー材料の少なくとも1つを含む少なくとも1つのバンドまたはワイヤを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの伸縮部材を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液が前記血液フロースルー開口部に向かって前記スリーブの各々に進入することができるように、少なくとも2つのスリーブが前記フローカニューレの前記遠位端部上に直列に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプが血管内血液ポンプであることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプが、軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または混合型血液ポンプであることを特徴とする、血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管内の血流を支持する血液ポンプ、詳細には血管内血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプまたは混合型血液ポンプなどの、様々なタイプの血液ポンプが既知であり、血流は軸方向力および径方向力の両方に起因する。血管内血液ポンプが、カテーテルにより、大動脈などの患者の血管内へ、また心臓弁内へ挿入される。血液ポンプは、通常、血流入口と血流出口とを備えたポンプ部分を含む。血流入口から血流出口への血流を引き起こすために、通常、羽根または回転子が、血液を運ぶために、回転軸を中心としてポンプケーシング内に回転自在に支持されている。血液ポンプは、ポンプ部分に隣接して血液ポンプ内に含まれているモータにより駆動されてもよいか、または別法として、患者の身体外にあるモータにより駆動されてもよく、その場合、該モータは、カテーテルを通って延在している可撓性駆動シャフトにより羽根に接続されている。
【0003】
血液ポンプは、ポンプ部分と流動連通していると共に大動脈弁などの心臓弁を通って延在していてもよいフローカニューレに接続されていてもよく、一方、ポンプ部分またはポンプ部分の少なくとも血流出口は、患者の心臓の外側の、大動脈などの血管内に配置されている。フローカニューレは、ポンプ部分の血流入口に向かってフローカニューレに進入する血液のための少なくとも1つの血液フロースルー開口部を有する。フローカニューレの血液フロースルー開口部は左心室などの患者の心臓内に配置されているので、左心室内の細糸などの軟組織が、血液フロースルー開口部内へ吸引される可能性がある。これはいくつかの理由で回避されるべきである。一方で、軟組織への損傷が回避されるべきである。他方で、血液フロースルー開口部が塞がれた場合、これは血液ポンプの故障をもたらし、血液ポンプは除去されなければならないか、または少なくとも再配置されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、血流入口において、詳細にはフローカニューレの血液フロースルー開口部において、血流状態の改善をもたらす血液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、独立請求項1の特徴を有する血液ポンプにより、本発明に基づいて達成される。本発明の好適な実施形態およびさらなる展開が、従属する請求項に明確に述べられている。
【0006】
本発明によれば、血液ポンプはインフローカニューレなどのフローカニューレを含み、その近位端部は、血液がポンプ部分の血流入口に進入することができるように、ポンプ部分に接続されている。フローカニューレの遠位端部は、拡大直径部と、フローカニューレに進入する血液のための少なくとも1つの径方向血液フロースルー開口部とを含む。血液フロースルー開口部の少なくとも主要部が拡大直径部内に配設されている。血液ポンプは、血液フロースルー開口部の近位にある、フローカニューレ、詳細にはフローカニューレの遠位端部に取り付けられている近位端と、拡大直径部を覆っているかまたは拡大直径部に重なっている遠位端とを有するスリーブをさらに含む。
【0007】
スリーブは、少なくとも遠位端が、患者体内での血液ポンプの遮られていない動作中に、少なくとも1つの血液フロースルー開口部内へ0.2mmより多く径方向内側に撓まないようにする構造を有する。血液ポンプの遮られていない動作は、患者の身体内での、遮られていない普通の通常の状態の間の動作モード、例えば1分当たり約4リットル~5リットルの流量での血液ポンプの動作を意味する。スリーブは、以下により詳細に記載されている通り、血液ポンプの動作中にスリーブが潰れないようにする補強構造を有することが好ましい。
【0008】
上述の特徴および詳細にはそれらの組合せは、ポンプの血流入口における、詳細には、通常は血液ポンプの動作中に患者の心臓内に配置されているフローカニューレの血液フロースルー開口部における、血流を改善し得る。換言すれば、本発明の血液ポンプは流入特性の改善をもたらす。詳細には、開口部を塞ぐと考えられる組織、例えば患者の心臓の左心室内の細糸が、血液フロースルー開口部内へ吸引されないようにすることが可能である。これは、フローカニューレの拡大直径部を設けることにより既に改善され得るが、該拡大直径部すなわち詳細には血液フロースルー開口部の一部を覆うかまたは血液フロースルー開口部に重なるスリーブを設けることにより顕著に改善される。流入特性の別のさらなる改善は、血液ポンプの動作中にスリーブが潰れて血液フロースルー開口部内へそれ自体吸引されないようにする構造または補強構造を備えたスリーブを設けることにより、達成され得る。さらに、前記補強がスリーブを円錐形状に保ち、したがって、血液がカニューレの遠位端に進入する際、血液速度の漸増を可能にする。さらに、血液フロースルー開口部内へ引き込まれる血液量すなわち流量は、血流を血液フロースルー開口部に向かって方向付けるスリーブを設けることにより増加し得る。
【0009】
一態様によれば、フローカニューレの少なくとも遠位端部が、圧縮形態または潰れた形態から拡張形態へ径方向に拡張可能である。詳細には、拡張形態は拡大直径部を画定し、一方、圧縮形態または潰れた形態では、拡大直径部の直径がフローカニューレの残部の直径に実質的に等しくてもよく、該残部は同様に拡張可能であってもよいか、または一定の直径を有していてもよい。拡大直径部をもたらす拡張形態は、フローカニューレ内への組織吸引を回避するのを助け、血流動態を高め、一方、圧縮形態または潰れた形態は、血液ポンプが導入器シースを通して送達されることを可能にする。拡張特性を実現するために、フローカニューレの遠位端部は、ニチノールなどの形状記憶合金材料を含み得る。
【0010】
カニューレの流入直径を拡大することは、インフローカニューレにおける吸引減少、および流入領域内に吸引された組織がカニューレ内への血流に影響を及ぼす程度の減少をもたらすことが留意される。換言すれば、流入領域内の等しい流動条件および圧力条件を仮定すると、カニューレのより小さい直径内へ吸引される組織が、同量の組織がより大きな直径内へ吸引された場合より、カニューレ内への流量により大きな影響を及ぼす。
【0011】
フローカニューレの遠位端部、詳細には拡大直径部、より詳細には拡張可能な拡大直径部は、血液フロースルー開口部を画定している、ケージなどの枠組構造を含んでいてもよい。該枠組構造は、軸方向にすなわち実質的にフローカニューレの長手方向軸の方向に延在していることが好ましい複数の支柱を画定していてもよい。径方向支柱、螺旋支柱、もしくは長手方向軸と共に角度を囲む支柱、またはそれらの組合せなどの、支柱の他の設計が可能であることが理解されよう。少なくとも1つの血液フロースルー開口部は、フローカニューレの遠位端部の径方向円周面上に配設されていてもよい。径方向開口部は、組織吸引を減少させ得るので軸方向開口部よりも好適である。
【0012】
スリーブは、可撓性の高い材料の膜、好ましくはポリウレタンまたは任意の他の適切な生体適合性の高い材料、詳細にはポリマーを含むことが好ましい。該膜は、0.1mmなどの約0.05mm~0.3mmの厚さを有していてもよい。長手方向におけるスリーブの寸法に関しては、スリーブは、各血液フロースルー開口部の拡大直径部の少なくとも部分に沿って、例えば拡大直径部に半ばまで沿って、延在していてもよい。例えば、スリーブの遠位端は、実質的に拡大直径部の最大直径の所にまたはスリーブの近位端と拡大直径部の最大直径との間に配設されていてもよい。スリーブは、フローカニューレの遠位端部の円周面の周囲に配設されていることが好ましい。代替的実施形態では、スリーブは、フローカニューレ、詳細には枠組構造の内部に配設されていてもよい。
【0013】
スリーブは、血流をフローカニューレの血液フロースルー開口部内へ方向付けるために、じょうご形状を有していてもよい。すなわち、スリーブの直径がその遠位端に向かって増大して、テーパ形状をもたらす。詳細には、スリーブがもっぱら一方向に先細になっている場合すなわち最大直径に達した後にその直径が減少しないことが有利である。じょうご形状は、血液がじょうご形構造に進入する際に直線血流速度を徐々に上昇させるので、じょうご形状が、血液フロースルー開口部内へ引き込まれる血液量を増加させるために特に有用である。例えば、流量は、スリーブのない血液ポンプと比較して、1分当たり0.5リットル増加し得る。
【0014】
一態様によれば、スリーブは、好ましくは血流の結果として、径方向に拡張するかまたは広がり、また潰れるように構成されていてもよい。詳細には、スリーブは拡張機構を含んでおり、スリーブが拡張するかまたは広がり、また潰れることを可能にしてもよい。拡張機構は、例えば、少なくとも1つの蝶番、少なくとも1つの磁石、形状記憶合金またはバイメタルの少なくとも1つを含んでいてもよい。さらにまたはあるいは、そのような拡張機構は、フローカニューレ、詳細にはその拡大直径部内に、より詳細には上述の枠組構造内に含まれていてもよい。
【0015】
スリーブは、少なくとも1つのまたは複数のステータ翼など、スリーブの内面に案内構造を含んでいてもよい。該案内構造は、血流が回転しないように、血液のポテンシャルエネルギーを消散させると考えられる渦を生じさせないようにすることができ、血流を長手方向に方向付けることができる。
【0016】
一態様によれば、本明細書前段に短く述べられている通り、血液ポンプは、径方向に剛性を高めて、スリーブの径方向の潰れを防止する補強構造を含んでいてもよい。すなわち、該補強構造は、長手方向軸に対して垂直な平面における血液ポンプの動作中、少なくとも、補強構造が配設されている領域内のスリーブの横断面領域が凸、例えば円形、であることを確実にする。一般に、「凸」横断面領域は、横断面領域が、いかなる刻み目、切取り部、もしくは長手方向軸に対して垂直な平面に対して径方向内側に撓んだ部分も形成しない、径方向外側に湾曲した縁部または真っ直ぐな縁部のみを有することを意味する。補強構造は、少なくともスリーブの遠位端内にまたは遠位端内に隣接して配設されていることが好ましい。換言すれば、血液ポンプの動作中、端部が潰れず、開いた状態に維持されて、血液がスリーブおよびフローカニューレの血液フロースルー開口部に進入することを可能にするように、スリーブの開いた端部すなわち血液がスリーブに進入する端部が補強された場合、それは有利であるかまたはまさに十分である可能性がある。しかし、当然のことながら、それにもかかわらず、補強構造は、以下により詳細に記載されている通り、詳細にはカテーテルを通した血液ポンプの挿入または除去のために、折畳み式であってもよい。すなわち、血液ポンプの動作中、補強は、スリーブが潰れないように、生じるいかなる力、詳細には径方向力にも耐えることができる。しかし、例えばカテーテル内への挿入前の血液ポンプの除去中または準備中、十分に強い力がかけられた場合、補強構造の径方向剛性は、スリーブを潰れた形態に潰すかまたは折り畳むために克服され得る。
【0017】
したがって、一態様によれば、補強構造は、潰れた形態から拡張形態へ径方向に拡張可能であってもよいかまたは広がることができ、それにより、血液ポンプは導入器シースを通して送達可能になる。補強構造は、逆に、折畳み式(collapsible or foldable)でもあり、患者の身体からの血液ポンプの除去を容易にすることが好ましい。また、同時に、補強構造は、拡張形態において十分に高い剛性をもたらして、血液ポンプの動作中、スリーブが潰れないようにしてもよい。しかし、補強構造は、十分に強い力をかけることにより、例えば患者の身体からの除去のために血液ポンプをカテーテル内へ引き込むことにより、それが潰され得るように設計されていてもよい。
【0018】
一実施形態では、スリーブの構造または詳細には補強構造は、スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの可膨張性構造を含んでいてもよい。補強構造は、例えば、少なくとも1つの環状バルーンを含んでいてもよい。該バルーンは、それがスリーブから径方向外側に突出すると共に軟組織を血液フロースルー開口部から離した状態に保つのを助けるように、スリーブの外面上に配設されていてもよい。あるいはまたは環状バルーンに加えて、スリーブ全体が可膨張性であってもよいか、またはスリーブを補強しかつスリーブが潰れないようにする環状構造ばかりでなく含んでいてもよい。さらに、可膨張性構造はフローカニューレを設けられて、剛性を高めるかまたは軟組織を入口開口部から離した状態に保ってもよい。例えば、可膨張性であってもよい、ピグテールまたはJ先端部などの柔らかい先端部が、カニューレの遠位端に設けられていてもよい。当然のことながら、また、上述の可膨張性構造のいずれかが収縮可能であり、患者の身体からの除去を容易にしてもよい。
【0019】
あるいはまたはさらに、スリーブの構造または詳細には補強構造は、スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの弾性部材を含んでいてもよい。例えば、補強構造は、スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在しておりかつ形状記憶合金、金属およびポリマー材料の少なくとも1つを含む少なくとも1つのバンドまたはワイヤを含んでいてもよい。該バンドまたはワイヤは、直線に沿ってまたは起伏もしくはジグザグ形状を有して、スリーブの円周に沿って延在していてもよい。
【0020】
あるいはまたはさらに、スリーブの構造または詳細には補強構造は、スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの伸縮部材を含んでいてもよい。該伸縮部材は、ワイヤ部分の自由端が管部分の自由端内へ挿入されて、伸縮リングを形成し得るように、例えば、管部分と、管部分の端部に取り付けられているワイヤ部分とを含んでいてもよい。伸縮部材は、ニチノールなどの形状記憶合金から作製されていてもよい。
【0021】
一実施形態では、血液が血液フロースルー開口部に向かってスリーブの各々に進入することができるように、2つ、3つまたは4つのスリーブなどの少なくとも2つのスリーブがフローカニューレの遠位端部上に直列に配設されていてもよい。例えば、スリーブは、1つのスリーブの近位端が隣接したスリーブの遠位端の領域内に配設されておりかつ血液が各スリーブの遠位端に進入することができるように配置されていてもよい。あるいは、1つのスリーブの遠位端は、血液が遠位端からスリーブの各々に進入することができるように開口部をもたらす構造により、隣接したスリーブの近位端と接続されていてもよい。スリーブは、松かさの鱗片の様式で配置されていてもよいかまたは毛虫様形状を形成してもよい。
【0022】
前述の概要、および好適な実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読まれると、より良く理解されるであろう。本開示を例示する目的のために、図面が参照される。しかし、本開示の範囲は、図面において開示されている特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】血液ポンプの一実施形態を伴う、患者の心臓の部分横断面図である。
図2A】第1の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図2B】第1の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図2C】第1の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図3A】第2の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図3B】第2の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図4A】第3の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図4B】第3の形態における、図1の血液ポンプの端部の異なる図である。
図5A】別の実施形態による血液ポンプの端部の異なる図である。
図5B】別の実施形態による血液ポンプの端部の異なる図である。
図6】別の実施形態による血液ポンプの端部の側面立面図である。
図7】スリーブ用の補強部材の図である。
図8】2つ以上のスリーブを含む、別の実施形態による血液ポンプの端部の側面立面図である。
図9】別の実施形態による血液ポンプの端部の側面立面図である。
図10A】別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの図である。
図10B】別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの図である。
図11A】別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの図である。
図11B】別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの図である。
図12A】別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの異なる図である。
図12B】別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの異なる図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1では、血液ポンプ1が、患者の心臓100内に挿入されて示されている。より具体的には、血液ポンプ1は、血液ポンプ1が、下行大動脈102と大動脈弓103とを含む大動脈101を介して患者の心臓100の左心室105内へそれにより挿入されるカテーテル10に接続されている。動作中、血液ポンプ1は大動脈弁104を通して配置される。血液ポンプ1はポンプ部分2とフローカニューレ3とを含む。該ポンプ部分2は、大動脈102内に患者の心臓100の外側に配設されている血流出口12を有し、一方、ポンプ部分2の血流入口(11で示されている)がフローカニューレ3と流動連通している。血流を生じさせるために、羽根(図示せず)が設けられている。フローカニューレ3は大動脈弁104を通って左心室105内へ延在しており、ポンプ部分2に接続されている近位端部14と遠位端部13とを有する。フローカニューレ3を通してポンプ部分2内へ、また血流出口12から外へ、血液をポンプで送るために、遠位端区域13は、以下により詳細に記載される血液フロースルー開口部16を備えた拡大直径部15を有する。血液ポンプ1の遠位端に、ピグテールまたはJ先端部などの柔らかい先端部20が配置されており、周囲組織へのいかなる損傷も引き起こすことなく、血液ポンプ1の患者の心臓100内への挿入を容易にする。また、柔らかい先端部20は、軟組織をフローカニューレ3から離した状態に保つのを助ける。血液ポンプ1の端部はEPで示されており、それは図2Aにより詳細に示されている。一般に、用語「近位」はユーザに向かう方向を指し、一方、用語「遠位」はユーザから離れる方向を指す。
【0025】
図2A図2Cを参照すると、遠位端部EPは、血液ポンプ1の動作中、すなわち心圧および流量、例えば1分当たり4リットルの流量、を含む通常条件下で、第1の形態においてより詳細に示されている。血液フロースルー開口部16は、該血液フロースルー開口部16を互いに分離している支柱17を含むケージなどの枠組構造により形成されている。本実施形態では、支柱17は、フローカニューレ3の長手方向軸18に沿って、実質的に軸方向に延在して示されている。当然のことながら、また、支柱17は径方向にもしくは螺旋状に延在していてもよいか、または任意の他の適切な形状を形成し、血液フロースルー開口部16を形成していてもよい。本実施形態では、5本の支柱17が、血液フロースルー開口部16を備えたケージを形成している。しかし、3本もしくは4本などのより少ない支柱、または6本、7本もしくは8本などのより多くの支柱が存在し得る。
【0026】
フローカニューレ3の遠位端部13の拡大直径部15の、より具体的には血液フロースルー開口部16の部分を覆っているかまたは血液フロースルー開口部16の部分に重なっているスリーブ4が設けられている。該スリーブ4は、血液フロースルー開口部16の近位の位置で、フローカニューレ3の遠位端部13に取り付けられている近位端41と、遠位端42とを有する。すなわち、スリーブ4は、血液フロースルー開口部16の近位部分、例えば血液フロースルー開口部16の近位半分、を覆っている。スリーブ4を設けることにより、血液フロースルー開口部16内への組織吸引が減少し得る。スリーブ4はじょうご形状を有する。すなわちその直径が近位端41から遠位端42への方向に増大する。スリーブ4はその遠位端42において細くならないことが好ましい。じょうご形状は血液ポンプ1の血流量を増大させ得る。
【0027】
図2Aおよび図2Bに認められる通り、長手方向軸18に対して垂直な平面にあるスリーブ4の横断面領域は実質的に円形である。図示の通り、スリーブ4はケージにより支持されてもよい。しかし、スリーブ4はケージより大きな直径をもたらしてもよい。ある理想的条件下で、スリーブ4は血流により開いて保持される可能性があり、血液ポンプ1の動作中に潰れに耐えるのに十分な安定性を実現する可能性がある。これは、スリーブ4の適切な材料を選択することにより、または以下により詳細に記載されている補強構造を設けることにより、達成されてもよい。
【0028】
血液ポンプ1の動作中、スリーブ4は、実質的に円形でない他の形態を取り得る。図3Aおよび図3Bに示されている通り、ケージが5本の支柱17を含む場合、スリーブの横断面領域が五角形を形成するように、スリーブ4は支柱17の周囲にぴったり合わせられてもよい。詳細には、図4Aおよび図4Bに示されている通り、スリーブ4の遠位端42における圧力分布の結果として、スリーブ4はまた、血液フロースルー開口部16内へ支柱17から内側に若干撓んでもよい。当然のことながら、該撓みは、血流への悪影響を回避するために、径方向内側に各側面において0.2mm以下であるべきである。詳細には、スリーブ4は、血液フロースルー開口部を塞ぐ可能性があると考えられる該スリーブが血液フロースルー開口部16内へ吸引されないようにするのに十分な剛性を有する。
【0029】
一般に、ケージおよびスリーブ4および場合によりまたフローカニューレ3は拡張特性をもたらし得る。すなわち、血液ポンプ1の上述の部品は拡張形態を取り、拡大直径をもたらしてもよく、潰れた形態または圧縮形態がより小さい直径をもたらす。詳細には、拡大直径部15は拡張形態において画定されてもよく、一方、圧縮形態では、部分15の直径はフローカニューレ3の残部の直径と実質的に同一であり、血液ポンプ1が導入器シースを通して送達されることを可能にする。目標部位、例えば図1に関連して前述のように患者の心臓に送達されると、血液ポンプ1は拡張形態を取るように解放されてもよい。
【0030】
スリーブ4は、血液ポンプ1の動作中にスリーブ4が潰れないようにするのに十分な径方向剛性をもたらす構造、例えばポリウレタンなどの適切な材料の膜を含む構造を有し得るが、スリーブ4に取り付けられているかまたはスリーブ4に埋め込まれているさらなる補強構造が設けられていてもよい。当然のことながら、補強構造は血液ポンプ1の動作中に高い径方向剛性をもたらすが、同時に、前述のように拡張特性および圧縮特性をもたらし、血液ポンプが拡張形態または広がった形態および圧縮形態または潰れた形態を取ることを可能にする。
【0031】
図5Aおよび図5Bを参照すると、スリーブ4は、環状バルーン30などの可膨張性デバイスの形の補強構造を有する。該バルーン30は、気体または液体などの適切な流体を有する管(図示せず)により、膨張し、また収縮し得る。バルーン30は、スリーブ4の遠位端42の外周に取り付けられていてもよいか、または任意の他の適切な位置でスリーブ4に取り付けられていてもよいか、またはスリーブ4内に埋め込まれていてもよい。さらに、2つ以上の可膨張性環状バルーン、またはスリーブ4のために径方向剛性をもたらす別の可膨張性構造が設けられていてもよい。また、該可膨張性構造は収縮可能であり、患者の身体からの血液ポンプ1の除去を容易にすることが好ましい。
【0032】
可膨張性バルーン30の別法としてまたは場合により可膨張性バルーン30に加えて使用され得る補強構造のさらなる実施形態が、図6および図7に示されている。図6では、ニチノールなどの形状記憶合金を含むバンド31により形成されている補強構造が示されている。例えば、バンド31はニチノールワイヤのジグザグ構造を含んでいてもよい。しかし、バンド31は、血液ポンプ1の動作中に径方向剛性と同時に拡張特性および圧縮特性をもたらす他の構造を含んでいてもよいか、または金属もしくはポリマーなどの他の材料を含んでいてもよい。
【0033】
図7に示されている補強構造は伸縮部材32により形成されている。該伸縮部材32は、管部分34と、該管部分34に取り付けられているワイヤ部分33とを含み、ワイヤ部分33の自由端が、管部分34内へ摺動可能に挿入可能であり、伸縮リングを形成している。伸縮部材32はスリーブ4のための径方向剛性をもたらすが、その直径の変化を可能にして、前述のように拡張形態および圧縮形態を可能にする。バンド31および伸縮部材32は、スリーブの遠位端42においてスリーブ4に取り付けられていてもよく、遠位端42を開いた状態に保つ。しかし、当然のことながら、バンド31および伸縮部材32は、前述の特性をもたらすために他の適切な位置において、スリーブ4に取り付けられていてもよいか、またはスリーブ4に埋め込まれていてもよい。
【0034】
図8は、2つ以上の、ここでは3つのスリーブ4’、4’’、4’’’が、支柱17’、17’’、17’’’により形成されている各血液フロースルー開口部16’、16’’、16’’’に重なっている実施形態を示す。血液フロースルー開口部16’、16’’、16’’’および支柱17’、17’’、17’’’は、本明細書前段に記載されている血液フロースルー開口部16および支柱17それぞれのように形成されていてもよい。同様に、スリーブ4’、4’’、4’’’は、さらなる補強構造を備えてまたは備えずに、本明細書前段に記載されているスリーブ4ように形成されていてもよい。この配置は、軟組織を血液フロースルー開口部から離した状態に保つのを助ける可能性がある。
【0035】
血液ポンプの遠位端部EPの別の実施形態が図9に示されている。本実施形態では、スリーブ40は、その周囲にではなくケージの内部に配設されている。すなわち、スリーブ40は内側から血液フロースルー開口部16に重なっている。血液は、軟組織を吸引することなく、スリーブ40、およびしたがってフローカニューレ3に進入することができる。軟組織は、支柱17により、スリーブの開いた端部から離れた状態に保たれている。さらに、スリーブ40は、接着剤または任意の他の手段により、支柱17(図示せず)の内面に取り付けられて、常時、スリーブ40を開いた状態に保ち得るか、または、図9に示されている通り、それは支柱17から自由なままにされ得る。図5Aおよび図5Bに示されているバルーン30に類似の補強用可膨張性円形バルーン(図9に図示せず)は前述のように使用されて、デバイスの使用中、スリーブ40を開いた状態にかつ円形形状に保ち得ると考えられる。図7に示されている伸縮部材32に類似の伸縮部材(図9に図示せず)は前述のように使用されて、デバイスの使用中、スリーブ40を開いた状態にかつ円形形状に保ち得ると考えられる。
【0036】
図10Aおよび図10Bは、別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージを示す。本実施形態は前述の実施形態に実質的に類似しており、同様の参照番号が同様の要素を指す。例示目的のために、図10Aおよび図10Bでは、スリーブは省かれている。拡大直径部15を形成している該流入ケージは、4本の支柱17と血液フロースルー開口部16とを含む。流入ケージは、スリーブのためのさらなる支持をもたらす支持構造をさらに含む。該支持構造は、流入ケージの近位端から、流入ケージの長さの実質的に半分もしくは流入ケージの半分未満、延在していてもよいか、またはスリーブの長さに対応していてもよい。
【0037】
支持構造は、隣接した支柱17に接続しているアーチ19、すなわち本実施形態では4つのアーチ19を含む。該アーチ19は、尖った形状、丸い形状または別の方法で湾曲した形状などの、任意の適切な形状を有していてもよく、突起様形状を有していてもよい。アーチ19は、図10Aに示されている通り、支柱17に対して径方向内側にもしくは支柱17と実質的に同一半径の所に配設されていてもよいか、または図10Bに示されている通り、支柱17を越えて径方向外側に延在していてもよい。ある実施形態では、図10Aに示されている形態は圧縮形態と呼ばれる可能性があり、図10Bに示されている形態は拡張形態と呼ばれる可能性がある。流入ケージは、ニチノールなどの形状記憶合金で作製されていてもよい。
【0038】
図11Aおよび図11Bは、別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージを示し、それは図10Aおよび図10Bに示されている実施形態と実質的に同一である。該流入ケージはニチノールで作製されていてもよく、圧縮および拡張などの様々な形態をもたらし得る。図11Aに示されている通り、アーチ19は支柱17に対して径方向内側に配設されているのに対して、図11Bでは、支柱は支柱17に対して径方向外側に配設されている。
【0039】
図12Aおよび図12Bは、別の実施形態による血液ポンプの端部の流入ケージの異なる図を示し、それは図10Aおよび図10Bに示されている実施形態と類似している。該流入ケージは、その他の実施形態における支柱と実質的に同一の5本の支柱17を含む。流入ケージは、スリーブ(図11Aおよび図11Bに示されていないスリーブ)のためのさらなる支持をもたらす支持構造を含む。該支持構造は、さらなる支柱19’’が別個の分岐19’’’へ分岐するように、近位端に向かうフォーク部19’を有するさらなる支柱19’’を含む。図10A図11Bの実施形態を参照すると、フォーク部19’はアーチ19と見なされ得ると考えられ、それにより、さらなる支柱19’’はアーチ19の各々の自由遠位端に接続されている。または換言すれば、図12Aおよび図12Bの実施形態の流入ケージは、複数の支柱17および19’’を有していると見なされ得ると考えられ、それにより、支柱の少なくともいくつかが、それらの近位端に向かって分岐しており(fork or branch)、スリーブのための支持構造を形成している。各支柱19’’の分岐19’’’は、図12Aおよび図12Bに示されている通り、隣接した支柱17に接続していてもよい。前の実施形態と同様に、流入ケージはニチノールで作製されていることが好ましい。
【0040】
当然のことながら、記載されている実施形態は例示的なものに過ぎず、制限的なものではない。詳細には、該実施形態の様々な態様および特徴が、異なる実施形態において組み合わされ得ると考えられるか、または単独で使用され得ると考えられる。例えば、スリーブおよび補強構造に関して記載されている特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、可変的に組み合わせられ得ると考えられる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部分(2)とフローカニューレ(3)とを含む血液ポンプ(1)であって、前記ポンプ部分(2)は血流入口(11)および血流出口(12)および前記血流入口(11)から前記血流出口(12)まで血液を運ぶ羽根を有し、前記フローカニューレ(3)は、遠位端部(13)および近位端部(14)と共に、全体的な長手方向軸(18)を有し、
前記フローカニューレ(3)の前記近位端部(14)は、前記血液が前記血流入口(11)に進入することができるように、前記ポンプ部分(2)に接続されており、前記フローカニューレ(3)の前記遠位端部(13)は、拡大直径部(15)および前記フローカニューレ(3)に進入する前記血液のための少なくとも1つの径方向血液フロースルー開口部(16)を含み、前記少なくとも1つの血液フロースルー開口部(16)の少なくとも主要部が前記拡大直径部(15)内に配設されており、
前記血液ポンプ(1)は、前記血液フロースルー開口部(16)の近位にある前記フローカニューレ(3)に取り付けられている近位端(41)および前記拡大直径部(15)に重なっている遠位端(42)を有するスリーブ(4)をさらに含み、前記スリーブ(4)は、患者体内での前記血液ポンプ(1)の遮られていない動作中に前記遠位端(42)が0.2mmより多く前記少なくとも1つの血液フロースルー開口部内へ径方向内側に撓まないようにする構造を有
前記フローカニューレ(3)の前記拡大直径部(15)および前記スリーブ(4)の少なくとも1つが拡張機構を含み、前記拡大直径部(15)または前記スリーブ(4)が拡張するかまたは広がり、また圧縮するかまたは潰れることを可能にする、
ことを特徴とする、血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの少なくとも前記遠位端部が圧縮形態から拡張形態へ径方向に拡張可能であることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の血液ポンプであって、前記拡張形態が前記拡大直径部を画定し、一方、前記圧縮形態では、前記拡大直径部の直径が前記フローカニューレの残部の直径に実質的に等しいことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの前記遠位端部が、前記血液フロースルー開口部を画定している枠組構造を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の血液ポンプであって、前記枠組構造が、実質的に前記フローカニューレの長手方向軸の方向に延在している複数の支柱を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記フローカニューレの少なくとも前記遠位端部が形状記憶合金材料を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つの血液フロースルー開口部が前記フローカニューレの前記遠位端部の径方向円周面上に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが可撓性材料の膜を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの前記遠位端が前記拡大直径部の実質的に最大直径の所に配設されているか、または前記スリーブの前記遠位端が前記スリーブの前記近位端と前記拡大直径部の前記最大直径との間に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、血流を前記フローカニューレの前記血液フロースルー開口部内へ方向付けるために、じょうご形状を有することを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが前記フローカニューレの前記遠位端部の円周面の周囲に配設されているか、または前記スリーブが前記フローカニューレの内部に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、径方向に拡張するかまたは広がるように構成されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記拡張機構が、少なくとも1つの蝶番、少なくとも1つの磁石、形状記憶合金またはバイメタルの少なくとも1つを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、前記血流を長手方向に方向付けるために、前記スリーブの内面に案内構造を含ことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、補強構造であり、径方向に剛性が高い、少なくとも、前記長手方向軸に対して垂直な平面に前記補強構造が配設されている領域内に前記スリーブの凸横断面領域をもたらす補強構造を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項16】
請求項15に記載の血液ポンプであって、前記補強構造が少なくとも前記スリーブの前記遠位端にまたは前記遠位端に隣接して配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項17】
請求項15または16に記載の血液ポンプであって、前記補強構造が前記圧縮形態から前記拡張形態へ径方向に拡張可能であることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの可膨張性構造を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が少なくとも1つの環状バルーンを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの弾性部材を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在し、前記形状記憶合金、金属およびポリマー材料の少なくとも1つを含む少なくとも1つのバンドまたはワイヤを含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記スリーブの構造が、前記スリーブの周囲に少なくとも部分的に円周方向に延在している少なくとも1つの伸縮部材を含むことを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液が前記血液フロースルー開口部に向かって前記スリーブの各々に進入することができるように、少なくとも2つのスリーブが前記フローカニューレの前記遠位端部上に直列に配設されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプが血管内血液ポンプであることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプが、軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または混合型血液ポンプであることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項26】
請求項6に記載の血液ポンプであって、前記形状記憶合金材料がニチノールであることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項27】
請求項8に記載の血液ポンプであって、前記可撓性材料がポリウレタンであることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項28】
請求項12に記載の血液ポンプであって、前記スリーブが、前記血流の結果として、径方向に拡張するかまたは広がるように構成されていることを特徴とする、血液ポンプ。
【請求項29】
請求項14に記載の血液ポンプであって、前記案内構造が複数のステータ翼を含むことを特徴とする、血液ポンプ。