IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トランスレイト バイオ, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図1
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図2
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図3
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図4
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図5
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図6
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図7
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図8
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図9
  • 特開-メッセンジャーRNAの皮下送達 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173314
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】メッセンジャーRNAの皮下送達
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20221111BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 38/45 20060101ALI20221111BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221111BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20221111BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20221111BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221111BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K9/127
A61K9/51
A61K48/00
A61K38/45
A61K38/47
A61P3/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C12N15/88 Z
C12N15/54 ZNA
C12N15/12
C12N9/26 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022149154
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2019524228の分割
【原出願日】2017-11-10
(31)【優先権主張番号】62/420,435
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517316797
【氏名又は名称】トランスレイト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュリラング カーブ
(72)【発明者】
【氏名】フランク デローサ
(72)【発明者】
【氏名】ザーナ バブサー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ハートレイン
(57)【要約】
【課題】メッセンジャーRNAの皮下送達の提供。
【解決手段】本発明は特に、核酸含有ナノ粒子を酵素と共に製剤化する方法を提供し、対象となる細胞または組織に皮下投与を介してペイロードを効率よく送達できるようにするものである。一部の実施形態では、本発明は、mRNA担持脂質ナノ粒子が様々な量のヒアルロニダーゼと共混合され、皮下投与を介して投与されるプロセスを提供する。得られたペイロードは、治療された対象の肝臓および他の器官または組織に効率よく送達され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年11月10日に出願された米国仮出願第62/420,435号に対する優先権を主張するものであり、その仮出願の開示は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(「MRT-1251WO_SL」という名称のテキスト(.txt)ファイルとして2017年11月10日に電子的に提出されたもの)を参照する。該テキストファイルは、2017年11月10日に作成されたものであり、サイズは10,421バイトである。配列表の全内容が、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
メッセンジャーRNA療法(MRT)は、様々な疾患の治療にますます重要なアプローチとなっている。MRTは、治療を必要とする患者にメッセンジャーRNA(mRNA)を投与し、患者体内でmRNAによってコードされるタンパク質を産生するものである。一般的には、効率よくmRNAをin vivoで送達するために、脂質ナノ粒子を使用してmRNAを送達する。
【0004】
通例、静脈点滴法または注入法を用いて、治療を必要とする患者に脂質ナノ粒子に封入されたmRNAを送達するが、このような方法は長時間になり、かつ投与に追加的な医学的注意を要するために患者に好まれない場合がある。患者に対してより配慮ある送達方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、とりわけ、皮下投与を介してmRNAを効果的にin vivoで送達するための改善された方法および組成物を提供する。詳細には、mRNAを、ヒアルロニダーゼなどの細胞外基質を分解できる酵素と共に皮下注射して、効率的に循環させる。本明細書に記載されるように、mRNAは、ヒアルロニダーゼと合わせて皮下注射されたとき、in vivoで、特に肝臓に、予想外に効率的なmRNAの送達とタンパク質発現とをもたらした。ヒアルロニダーゼは小分子およびタンパク質薬剤の皮下送達を増強するために使用されているが、ヒアルロニダーゼが、mRNA、特に脂質ナノ粒子(LNP)に封入されたmRNAの皮下送達を促進させるのに効果的であるかどうかは、LNP-mRNA調製物のサイズがかなり異なることやその複雑性の観点から、本発明の前にはわからなかった。抗体を含む典型的なタンパク質は、20nm未満の平均サイズを持つ。多くのmRNA担持LNPは、約100nmに近いか、または約100nmのサイズを持ち、これは典型的なタンパク質の少なくとも五倍大きいサイズである。したがって、本発明者らが観察した複数の疾患モデルにおいて、高効率のmRNAの送達、タンパク質産生、タンパク質活性、および治療効果が実証されたことは、実に驚くべきことであり、mRNA送達分野の著しい進歩を表している。肝臓における効率的なmRNA送達および高タンパク質発現の点から、本発明は、中でもオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症などの代謝疾患の治療において特に有用である。加えて、本出願におけるヒアルロニダーゼを用いたmRNAの皮下送達は、患者に対してより配慮があるものであり、医療コストを削減し、また病院での患者のスループットを高めることができる。
【0006】
一態様では、本開示は、mRNA療法によるオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症の治療方法を提供する。本方法は、OTCタンパク質をコードするメッセンジャーRNAとヒアルロニダーゼ酵素とを含む皮下送達用の組成物を、皮下経路を介して治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0007】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、50,000単位(U)以下の用量で投与される。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、40,000U未満、30,000U未満、20,000U未満、10,000U未満、9000U未満、8000U未満、7000U未満、6000U未満、5000U未満、4000U未満、3000U未満、2000U未満、1000U未満、900U未満、800U未満、700U未満、600U未満、または500U未満の用量で投与される。
【0008】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は1U以上の用量で投与される。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも5U、少なくとも10U、少なくとも20U、少なくとも30U、少なくとも40U、少なくとも50U、少なくとも60U、少なくとも70U、少なくとも80U、少なくとも100U、または少なくとも150Uの用量で投与される。
【0009】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも160U、少なくとも180U、少なくとも200U、少なくとも220U、少なくとも240U、少なくとも260U、少なくとも280U、少なくとも300U、少なくとも320U、少なくとも340U、少なくとも360U、少なくとも380U、または少なくとも400Uの用量で投与される。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、1~50,000U(例えば、50~50,000U、50~45,000U、100~40,000U、100~35,000U、100~30,000U、150~30,000U、160~30,000U、160~25,000U、200~50,000U、200~40,000U、200~30,000U、250~30,000U、250~25,000U、または250~20,000U)の用量範囲で投与される。
【0010】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、送達されたRNAの1mg当たり少なくとも1Uの用量で投与される。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼは、RNA1mg当たり少なくとも2U、RNA1mg当たり少なくとも5U、RNA1mg当たり少なくとも10U、mRNA1mg当たり少なくとも20U、mRNA1mg当たり少なくとも30U、mRNA1mg当たり少なくとも40U、mRNA1mg当たり少なくとも50U、mRNA1mg当たり少なくとも100U、mRNA1mg当たり少なくとも200U、mRNA1mg当たり少なくとも300U、mRNA1mg当たり少なくとも400U、mRNA1mg当たり少なくとも500U、RNA1mg当たり少なくとも1000U、RNA1mg当たり少なくとも2000U、RNA1mg当たり少なくとも3000U、RNA1mg当たり少なくとも4000U、またはRNA1mg当たり少なくとも5000Uの用量で投与される。
【0011】
一部の実施形態では、mRNAは、約0.5kb、1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、または15kb以上の長さを有する。
【0012】
一部の実施形態では、mRNAはナノ粒子内に封入されている。一部の実施形態では、ナノ粒子は脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である。一部の実施形態では、脂質ベースのナノ粒子はリポソームである。一部の実施形態では、リポソームはPEG化脂質を含む。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の少なくとも5%を構成する。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の約5%を構成する。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、または3%以下を構成する。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の5%以下を構成する。
【0013】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、一つ以上のカチオン性脂質を含む。一部の実施形態では、該一つ以上のカチオン性脂質は、C12-200、MC3、DLinDMA、DLinkC2DMA、cKK-E12、ICE(イミダゾール系)、HGT5000、HGT5001、OF-02、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、DODMAおよびDMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin-K-DMA、DLin-K-XTC2-DMA、HGT4003、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、一つ以上の非カチオン性脂質を含む。一部の実施形態では、該一つ以上の非カチオン性脂質は、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPE(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOPC(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホチジルコリン)、DPPE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOPG(,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール))、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、皮下注射は、対象の肝臓においてOTCタンパク質の発現をもたらす。
【0016】
一部の実施形態では、皮下注射はmRNAを肝細胞に送達する。一部の実施形態では、皮下注射は、肝細胞におけるOTC発現をもたらす。
【0017】
一部の実施形態では、皮下注射は、対象の血清中においてOTCタンパク質の発現をもたらす。
【0018】
一部の実施形態では、mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、投与の少なくとも24時間後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、または1カ月後に検出可能である。
【0019】
一部の実施形態では、mRNA投与後のOTC発現は、機能的アッセイにより検出され得る。
【0020】
一部の実施形態では、当該組成物の投与は、対照レベルと比較して、対象血清中のOTCタンパク質の発現レベルまたは活性レベルの増加を生じさせる。一部の実施形態では、対照レベルは、治療前の対象におけるベースライン血清OTCタンパク質の発現レベルまたは活性レベルである。一部の実施形態では、対照レベルは、治療を行わないOTC患者における血清OTCタンパク質の平均の発現レベルまたは活性レベルを示す参照値である。
【0021】
一部の実施形態では、当該組成物の投与は、対照のオロチン酸値と比較して、対象における尿オロチン酸値の低下を生じさせる。一部の実施形態では、対照オロチン酸値は、治療前の対象におけるベースライン尿オロチン酸値である。一部の実施形態では、対照オロチン酸値は、治療を行わないOTC患者における平均尿オロチン酸値を示す参照値である。
【0022】
一部の実施形態では、当該組成物の投与は、対照シトルリン値と比較して、対象血清中のシトルリン値の増加を生じさせる。一部の実施形態では、対照シトルリン値は、治療前の対象におけるベースライン血清シトルリン値である。一部の実施形態では、対照シトルリン値は、治療を行わないOTC患者における平均血清シトルリン値を示す参照値である。
【0023】
一部の実施形態では、OTCタンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とが、同時に注射される。
【0024】
一部の実施形態では、OTCタンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とが、一つの組成物で注射される。
【0025】
一部の実施形態では、OTCタンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とが、別個の組成物で注射される。
【0026】
一部の実施形態では、OTCタンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とが、逐次的に注射される。
【0027】
一部の実施形態では、OTCタンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とが、20ml未満、15ml未満、10ml未満、5ml未満、4ml未満、3ml未満、2ml未満、または1ml未満の体積で注射される。
【0028】
一部の実施形態では、皮下注射は、週に一回以下の頻度で実施される。一部の実施形態では、皮下注射は、月に二回以下の頻度で実施される。一部の実施形態では、皮下注射は月に一回以下の頻度で実施される。
【0029】
別の態様では、本発明は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするmRNAと、ヒアルロニダーゼ酵素とを含む、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を治療するための組成物を提供する。
【0030】
一部の実施形態では、OTC欠損症を治療するための組成物は、mRNAおよび/またはヒアルロニダーゼ酵素を含み、ここでmRNAおよび/またはヒアルロニダーゼ酵素はナノ粒子内に封入されている。
【0031】
特定の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは同一のナノ粒子内に封入されている。
【0032】
特定の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは別個のナノ粒子に封入されている。
【0033】
特定の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とを封入している別個のナノ粒子は同一の製剤を含む。
【0034】
特定の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とを封入している別個のナノ粒子は同一の製剤を含む。
【0035】
一部の実施形態では、mRNAはナノ粒子内に封入されており、ヒアルロニダーゼ酵素は封入されていない。
【0036】
一部の実施形態では、ナノ粒子は脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である。
【0037】
一部の実施形態では、脂質ベースのナノ粒子はリポソームである。
【0038】
一部の実施形態では、リポソームはPEG化脂質を含む。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の少なくとも5%を構成する。一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の約5%を構成する。
【0039】
一部の実施形態では、mRNAは、非修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、mRNAは、一個以上の修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、該一個以上の修飾ヌクレオチドは、シュードウリジン、N-1-メチル-シュードウリジン、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、4’チオウリジン、4’-チオシチジン、および/または2-チオシチジンを含む。
【0040】
一部の実施形態では、組成物は液体形態である。
【0041】
一部の実施形態では、組成物は凍結乾燥粉末である。
【0042】
一態様では、本発明は、in vivoでのタンパク質発現のためのメッセンジャーRNA(mRNA)送達方法であって、タンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とを皮下注射を介して対象に投与することを含み、前記皮下注射が、対象において該mRNAによりコードされるタンパク質のin vivo発現をもたらす、方法を提供する。
【0043】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、50,000U未満、40,000U未満、30,000U未満、20,000U未満、10,000U未満、9000U未満、8000U未満、7000U未満、6000U未満、5000U未満、4000U未満、3000U未満、2000U未満、1000U未満、900U未満、800U未満、700U未満、600U未満、または500U未満の用量で投与される。
【0044】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも1U、少なくとも5U、少なくとも10U、少なくとも20U、少なくとも30U、少なくとも40U、少なくとも50U、少なくとも60U、少なくとも70U、少なくとも80U、少なくとも100U、または少なくとも150Uの用量で投与される。
【0045】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも160U、少なくとも180U、少なくとも200U、少なくとも220U、少なくとも240U、少なくとも260U、少なくとも280U、少なくとも300U、少なくとも320U、少なくとも340U、少なくとも360U、少なくとも380U、または少なくとも400Uの用量で投与される。別の言い方をすると、ヒアルロニダーゼ酵素は1U~50,000Uの用量範囲で投与される。
【0046】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、mRNA1mg当たり少なくとも10U、mRNA1mg当たり少なくとも20U、mRNA1mg当たり少なくとも30U、mRNA1mg当たり少なくとも40U、mRNA1mg当たり少なくとも50U、mRNA1mg当たり少なくとも100U、mRNA1mg当たり少なくとも200U、mRNA1mg当たり少なくとも300U、mRNA1mg当たり少なくとも400U、またはmRNA1mg当たり少なくとも500Uの用量で投与される。
【0047】
一部の実施形態では、mRNAはナノ粒子内に封入されている。
【0048】
一部の実施形態では、ナノ粒子は脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である。
【0049】
一部の実施形態では、脂質ベースのナノ粒子はリポソームである。
【0050】
特定の実施形態では、リポソームはPEG化脂質を含む。
【0051】
一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、または3%以下を構成する。特定の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の5%以下を構成する。
【0052】
特定の実施形態では、皮下注射方法は、対象の肝臓においてタンパク質の発現をもたらす。
【0053】
特定の実施形態では、皮下注射方法は、対象の血清中においてタンパク質の発現をもたらす。
【0054】
一部の実施形態では、タンパク質は、注射の少なくとも24時間後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、または1カ月後に検出可能である。一部の実施形態では、タンパク質は機能的アッセイによって検出される。
【0055】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは同時に注射される。
【0056】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは一つの製剤で注射される。
【0057】
一つ以上の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは別個の製剤で注射される。
【0058】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは逐次的に注射される。
【0059】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは、20ml未満、15ml未満、10ml未満、5ml未満、4ml未満、3ml未満、2ml未満、または1ml未満で注射される。
【0060】
一態様では、本発明は、a)タンパク質をコードするmRNAと、b)ヒアルロニダーゼ酵素とを含む、in vivoタンパク質発現のためのmRNA送達用の組成物を提供する。
【0061】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とはナノ粒子内に封入されている。
【0062】
一部の実施形態では、mRNAは第一のナノ粒子内に封入されており、ヒアルロニダーゼ酵素は第二のナノ粒子内に封入されている。
【0063】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは、同一のナノ粒子内に封入されている。
【0064】
一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは、別個のナノ粒子に封入されている。
【0065】
一部の実施形態では、mRNAはナノ粒子内に封入されており、ヒアルロニダーゼ酵素は封入されていない。
【0066】
一部の実施形態では、ナノ粒子は脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である。
【0067】
一部の実施形態では、脂質ベースのナノ粒子はリポソームである。
【0068】
一部の実施形態では、リポソームはPEG化脂質を含む。
【0069】
一部の実施形態では、PEG化脂質は、リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する。
【0070】
一部の実施形態では、mRNAは、一個以上の修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、当該一個以上の修飾ヌクレオチドは、シュードウリジン、N-1-メチル-シュードウリジン、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および/または2-チオシチジンを含む。
【0071】
一部の実施形態では、mRNAは、修飾されない。
【0072】
一部の実施形態では、組成物は液体形態である。
【0073】
別の実施形態では、組成物は凍結乾燥粉末である。
【0074】
一態様では、本発明は上述の組成物を含む容器を提供する。容器はバイアルまたはシリンジである。シリンジは、単一皮下投与のために予め充填されていてもよい。バイアルは、組成物の凍結乾燥粉末または液体形態を含んでもよい。
【0075】
本発明の態様は、上述の方法に従って、治療を必要とする対象にメッセンジャーRNA(mRNA)を送達することを含む、疾患、障害、または症状を治療する方法であって、該mRNAが対象におけるタンパク質欠損部をコードする、方法を提供する。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、代謝障害の治療に有用である。一部の実施形態では、疾患、障害、または症状は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)欠損症(フェニルケトン尿症、PKU)、アルギニノコハク酸シンターゼ1(ASS1)欠損症、エリスロポエチン(EPO)欠損症、ファブリー病;血友病性疾患(例えば、血友病B(FIX)、血友病A(FVIII));SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側方硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠損症;X連鎖副腎白質ジストロフィー;フリートライヒ運動失調症;ペリツェウス・メルツバッハ病;TSC1およびTSC2関連結節性(脳)硬化症;サンフィリポB症候群(MPS IIIB);脆弱X症候群、脆弱X関連振戦/失調症候群、および脆弱X早期卵巣不全症候群を含むFMR1関連障害;プラダー・ウィリー症候群;遺伝性出血性毛細管拡張症(AT);ニーマン・ピック病タイプC1;若年型神経セロイドリポフスチノーシス(JNCL)、若年バッテン病、サンタヴォリ・ハルティア病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ならびにPTT-1およびTPP1欠損症を含む、神経セロイドリポフスチン症関連疾患;中枢神経系ミエリン形成不全/白質消失病を伴うEIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、およびEIF2B5関連小児期運動失調;CACNA1AおよびCACNB4関連一過性運動失調症2型;古典的レット症候群、MECP2関連重度新生児脳症、およびPPM-X症候群を含むMECP2関連障害;CDKL5関連非定型レット症候群;ケネディ病(SBMA);皮質下梗塞および白質脳症(CADASIL)を伴うノッチ-3関連常染色体優性脳動脈症;SCN1AおよびSCN1B関連の発作障害;アルパーズ・フッテンロッハー症候群、POLG関連感覚性運動失調型ニューロパチー、構音障害、および眼麻痺、ならびにミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性の進行性外眼筋麻痺を含む、ポリメラーゼG関連障害;X連鎖副腎低形成;X連鎖無ガンマグロブリン血症;ウィルソン病から選択される
【0077】
本出願において、「または」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。本開示において使用される場合、用語「含む(comprise)」、ならびに「含んでいる(comprising)」および「含み(comprises)」などの該用語の変化形は、他の付加物、成分、整数、または工程を除外することを意図するものではない。本出願において使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は同意語として用いられている。両方の用語は、当業者によって理解される任意の通常の変動を網羅することを意味する。
【0078】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲において明らかになる。しかしながら、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲は、本発明の実施形態を示すが、単に例示のために与えられるものであり、制限するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、当業者には明らかになるであろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を治療する方法であって、
治療を必要とする対象に、皮下注射を介して、
a)オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするmRNAと、
b)ヒアルロニダーゼ酵素と、を投与することを含む、方法。
(項目2)
前記皮下注射が、肝臓にmRNAの送達をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記皮下注射が、前記対象の肝臓において前記OTCタンパク質の発現をもたらす、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記皮下注射が、前記対象の血清中において前記OTCタンパク質の発現をもたらす、項目1から項目3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記OTCタンパク質が、注射の少なくとも24時間後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、または1カ月後に検出可能である、項目3または項目4に記載の方法。
(項目6)
前記OTCタンパク質が機能的アッセイによって検出される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が50,000U未満の用量で投与される、項目1から項目6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、40,000U未満、30,000U未満、20,000U未満、10,000U未満、9000U未満、8000U未満、7000U未満、6000U未満、5000U未満、4000U未満、3000U未満、2000U未満、1000U未満、900U未満、800U未満、700U未満、600U未満、または500U未満の用量で投与される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、少なくとも160U、少なくとも180U、少なくとも200U、少なくとも220U、少なくとも240U、少なくとも260U、少なくとも280U、少なくとも300U、少なくとも320U、少なくとも340U、少なくとも360U、少なくとも380U、または少なくとも400Uの用量で投与される、項目1から項目8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、mRNA1mg当たり少なくとも10U、mRNA1mg当たり少なくとも20U、mRNA1mg当たり少なくとも30U、mRNA1mg当たり少なくとも40U、mRNA1mg当たり少なくとも50U、mRNA1mg当たり少なくとも100U、mRNA1mg当たり少なくとも200U、mRNA1mg当たり少なくとも300U、mRNA1mg当たり少なくとも400U、またはmRNA1mg当たり少なくとも500Uの用量で投与される、項目1から項目6のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記mRNAがナノ粒子内に封入されている、項目1から項目10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記ナノ粒子が脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記脂質ベースのナノ粒子がリポソームである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記リポソームがPEG化脂質を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の少なくとも5%を構成する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の5%を構成する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記皮下注射が、対照のオロチン酸値と比較して、前記対象における尿オロチン酸値の低下を生じさせる、項目1から項目17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記対照のオロチン酸値が、前記治療前の前記対象におけるベースラインの尿オロチン酸値である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記対照のオロチン酸値が、治療を行っていないOTC患者における平均尿オロチン酸値を示す参照値である、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記皮下注射が、対照のシトルリン値と比較して、前記対象の血清中においてシトルリン値の増加を生じさせる、項目1から項目20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記対照のシトルリン値が、前記治療前の前記対象におけるベースラインの血清シトルリン値である、項目21に記載の方法。
(項目22)
前記対照シトルリン値が、治療を行っていないOTC患者における平均の血清シトルリン値を示す参照値である、項目21記載の方法。
(項目23)
前記OTCタンパク質をコードする前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが同時に注射される、項目1から項目22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記OTCタンパク質をコードする前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが一つの組成物として注射される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記OTCタンパク質をコードする前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが別個の組成物として注射される、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記OTCタンパク質をコードする前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが逐次的に注射される、項目1から項目25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記OTCタンパク質をコードする前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが、20ml未満、15ml未満、10ml未満、5ml未満、4ml未満、3ml未満、2ml未満、または1ml未満で注射される、項目1から項目26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を治療するための組成物であって、
a)オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするmRNAと、
b)ヒアルロニダーゼ酵素と、を含む、組成物。
(項目29)
前記mRNAおよび/または前記ヒアルロニダーゼ酵素がナノ粒子内に封入されている、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが同一のナノ粒子内に封入されている、項目28に記載の組成物。
(項目31)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが別個のナノ粒子内に封入されている、項目28に記載の組成物。
(項目32)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とを封入している前記別個のナノ粒子が同一の製剤を含む、項目28に記載の組成物。
(項目33)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とを封入している前記別個のナノ粒子が異なる製剤を含む、項目28に記載の組成物。
(項目34)
前記mRNAがナノ粒子内に封入されており、前記ヒアルロニダーゼ酵素が封入されていない、項目28に記載の組成物。
(項目35)
前記ナノ粒子が脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である、項目28から項目34のいずれかに記載の組成物。
(項目36)
前記脂質ベースのナノ粒子がリポソームである、項目35に記載の組成物。
(項目37)
前記リポソームがPEG化脂質を含む、項目36に記載の組成物。
(項目38)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する、項目37に記載の組成物。
(項目39)
前記mRNAが、一個以上の修飾ヌクレオチドを含む、項目28から項目38のいずれか一項に記載の組成物。
(項目40)
前記mRNAが修飾されていない、項目28から項目38のいずれか一項に記載の組成物。
(項目41)
前記組成物が液体形態である、項目28から項目40のいずれか一項に記載の組成物。
(項目42)
前記組成物が凍結乾燥粉末である、項目28から項目40のいずれか一項に記載の組成物。
(項目43)
in vivoタンパク質発現のためのメッセンジャーRNA(mRNA)送達方法であって、
対象に皮下注射を介して、
a)タンパク質をコードするmRNAと、
b)ヒアルロニダーゼ酵素と、を投与することを含む、方法。
(項目44)
前記皮下注射が、肝臓においてmRNAの送達をもたらす、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記皮下注射が、前記対象の肝臓におけるOTCタンパク質の発現をもたらす、項目43または項目44に記載の方法。
(項目46)
前記皮下注射が、前記対象の血清中において前記OTCタンパク質の発現をもたらす、項目43から項目45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記タンパク質が、注射の少なくとも24時間後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、または1カ月後に検出可能である、項目43から項目46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記タンパク質が機能的アッセイによって検出される、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が50,000U未満の用量で投与される、項目43に記載の方法。
(項目50)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、40,000U未満、30,000U未満、20,000U未満、10,000U未満、9000U未満、8000U未満、7000U未満、6000U未満、5000U未満、4000U未満、3000U未満、2000U未満、1000U未満、900U未満、800U未満、700U未満、600U未満、または500U未満の用量で投与される、項目49に記載の方法
(項目51)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、少なくとも160U、少なくとも180U、少なくとも200U、少なくとも220U、少なくとも240U、少なくとも260U、少なくとも280U、少なくとも300U、少なくとも320U、少なくとも340U、少なくとも360U、少なくとも380U、または少なくとも400Uの用量で投与される、項目43から項目50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、mRNA1mg当たり少なくとも10U、mRNA1mg当たり少なくとも20U、mRNA1mg当たり少なくとも30U、mRNA1mg当たり少なくとも40U、mRNA1mg当たり少なくとも50U、mRNA1mg当たり少なくとも100U、mRNA1mg当たり少なくとも200U、mRNA1mg当たり少なくとも300U、mRNA1mg当たり少なくとも400U、またはmRNA1mg当たり少なくとも500Uの用量で投与される、項目43に記載の方法。
(項目53)
前記mRNAがナノ粒子内に封入されている、項目43から項目52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記ナノ粒子が脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記脂質ベースのナノ粒子がリポソームである、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記リポソームがPEG化脂質を含む、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する、項目56に記載の方法
(項目58)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の5%以下を構成する、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが同時に注射される、項目43から項目59のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが一つの製剤で注射される、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが別個の製剤で注射される、項目43に記載の方法。
(項目62)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが逐次的に注射される、項目43に記載の方法。
(項目63)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが、20ml未満、15ml未満、10ml未満、5ml未満、4ml未満、3ml未満、2ml未満、または1ml未満で注射される、項目43に記載の方法。
(項目64)
in vivoタンパク質発現のためのmRNA送達用の組成物であって、
a)タンパク質をコードするmRNAと、
b)ヒアルロニダーゼ酵素と、を含む、組成物。
(項目65)
前記mRNAおよび/または前記ヒアルロニダーゼ酵素がナノ粒子内に封入されている、項目64に記載の組成物。
(項目66)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが前記同一のナノ粒子内に封入されている、項目64に記載の組成物。
(項目67)
前記mRNAと前記ヒアルロニダーゼ酵素とが別個のナノ粒子内に封入されている、項目64に記載の組成物。
(項目68)
前記mRNAがナノ粒子内に封入されており、前記ヒアルロニダーゼ酵素が封入されていない、項目67に記載の組成物。
(項目69)
前記ナノ粒子が脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子である、項目64から項目68のいずれかに記載の組成物。
(項目70)
前記脂質ベースのナノ粒子がリポソームである、項目69に記載の組成物。
(項目71)
前記リポソームがPEG化脂質を含む、項目70に記載の組成物。
(項目72)
前記PEG化脂質が、前記リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成する、項目70に記載の組成物。
(項目73)
前記mRNAが、一個以上の修飾ヌクレオチドを含む、項目64から項目72のいずれか一項に記載の組成物。
(項目74)
前記mRNAが修飾されていない、項目64から項目72のいずれか一項に記載の組成物。
(項目75)
前記組成物が液体形態である、項目64から項目74のいずれか一項に記載の組成物。
(項目76)
前記組成物が凍結乾燥粉末である、項目64から項目74のいずれか一項に記載の組成物。
(項目77)
項目28から項目42および項目64から項目76のいずれか一項に記載の組成物を含む容器。
(項目78)
前記容器がシリンジまたはバイアルである、項目77に記載の容器。
(項目79)
項目43から項目63のいずれか一項に記載の方法に従って、治療を必要とする対象にメッセンジャーRNA(mRNA)を送達することを含む、疾患、障害または症状を治療する方法であって、前記mRNAが前記対象におけるタンパク質欠損部をコードする、方法。
(項目80)
項目64から項目76のいずれか一項に記載の組成物を、治療を必要とする対象に送達することを含む、疾患、障害または症状を治療する方法であって、前記mRNAが前記対象におけるタンパク質欠損部をコードする、方法。
(項目81)
前記疾患、障害、または症状が代謝障害である、項目79または80に記載の方法。
(項目82)
前記疾患、障害、または症状が、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)欠損症(フェニルケトン尿症、PKU)、アルギニノコハク酸シンターゼ1(ASS1)欠損症、エリスロポエチン(EPO)欠損症、ファブリー病;血友病性疾患(例えば、血友病B(FIX)、血友病A(FVIII));SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側方硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠損症;X連鎖副腎白質ジストロフィー;フリートライヒ運動失調症;ペリツェウス・メルツバッハ病;TSC1およびTSC2関連結節性(脳)硬化症;サンフィリポB症候群(MPS IIIB);脆弱X症候群、脆弱X関連振戦/失調症候群、および脆弱X早期卵巣不全症候群を含むFMR1関連障害;プラダー・ウィリー症候群;遺伝性出血性毛細管拡張症(AT);ニーマン・ピック病タイプC1; 若年型神経セロイドリポフスチノーシス(JNCL)、若年バッテン病、サンタヴォリ・ハルティア病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ならびにPTT-1およびTPP1欠損症を含む、神経セロイドリポフスチン症関連疾患;中枢神経系ミエリン形成不全/白質消失病を伴うEIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、およびEIF2B5関連小児期運動失調;CACNA1AおよびCACNB4関連一過性運動失調症2型;古典的レット症候群、MECP2関連重度新生児脳症、およびPPM-X症候群を含むMECP2関連障害;CDKL5関連非定型レット症候群;ケネディ病(SBMA);皮質下梗塞および白質脳症(CADASIL)を伴うノッチ-3関連常染色体優性脳動脈症;SCN1AおよびSCN1B関連の発作障害;アルパーズ・フッテンロッハー症候群、POLG関連感覚性運動失調型ニューロパチー、構音障害、および眼麻痺、ならびにミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性の進行性外眼筋麻痺を含む、ポリメラーゼG関連障害;X連鎖副腎低形成;X連鎖無ガンマグロブリン血症;ウィルソン病から選択される、項目79から項目81のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図面は単に例示を目的とするものであり、限定するためのものではない。
【0080】
図1図1は、ヒアルロニダーゼを含む脂質ナノ粒子(LNP)mRNA製剤および ヒアルロニダーゼを含まない脂質ナノ粒子(LNP)mRNA製剤の静脈内投与または皮下投与の24時間後の、OTCノックアウト(KO)spfashマウス肝臓におけるヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(hOTC)タンパク質のシトルリン活性を比較した例を示す。
【0081】
図2図2は、ヒアルロニダーゼを含むLNP mRNA製剤およびヒアルロニダーゼを含まないLNP mRNA製剤の静脈内投与または単回皮下投与の24時間後の、OTC KOspfashマウス肝臓におけるコドン最適化ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(CO-hOTC)mRNAのコピー数を比較した例を示す。
【0082】
図3図3は、ヒアルロニダーゼを含むLNP mRNA製剤の静脈内投与またはヒアルロニダーゼを含むLNP mRNA製剤の皮下投与の24時間後の、OTC KOspfashマウス肝臓におけるシトルリン産生の例を示す。
【0083】
図4図4は、生理食塩水で静脈内処置した野生型マウス、生理食塩水で静脈内処置したOTC KOspfashマウス、およびヒアルロニダーゼを含むCO-hOTC mRNA LNP製剤で皮下処置したKOspfashマウス肝臓におけるシトルリン産生の例を示す。投与の24時間後にシトルリン値を測定した。
【0084】
図5図5は、OTC活性と該組成物に含まれる種々のヒアルロニダーゼ用量との関係の例を示す。図に示すように、5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgのOTC mRNAと、0、560U、2800U、または5600Uのヒアルロニダーゼとを用いてOTC-KOマウスを処置し、シトルリン値を測定した。
【0085】
図6図6は、ヒアルロニダーゼを含むコドン最適化hPAH(CO-hPAH)LNP mRNA製剤の皮下投与、またはCO-hPAH LNP mRNA製剤の静脈内投与の24時間後の、PAH KOマウスにおける血清フェニルアラニンレベル(投与前および投与後)の例を示す。
【0086】
図7図7は、ヒアルロニダーゼを含むコドン最適化hASS1(CO-hASS1)mRNA LNP製剤の皮下投与、またはCO-hASS1 mRNA LNP製剤の静脈内投与の24時間後の、ASS1 KOマウス肝臓におけるヒトアルギニノコハク酸シンテターゼ(hASS1)タンパク質レベルの例を示す。
【0087】
図8図8は、全身in vivoルミノメーター を用いて発光出力によって評価したFirefly Luciferase(FFL)タンパク質活性の測定例を示す。FFLタンパク質発光を、ヒアルロニダーゼを含むFFL mRNA LNP製剤の皮下投与3時間後および24時間後の野生型マウス肝臓で観察した。測定期間中、発光強度は維持されていた。
【0088】
図9図9は、ヒアルロニダーゼを含むhEPO mRNA LNP製剤の皮下投与、またはhEPO mRNA LNP製剤の静脈内投与の1~4日後の、マウス血清中におけるヒトエリスロポエチン(hEPO)タンパク質レベルの例を示す。
【0089】
図10図10は、ヒアルロニダーゼを含むかまたは含まないhEPO mRNA の皮下投与後の、マウス血清中におけるヒトEPOタンパク質発現の例を示す。静脈内投与の場合のhEPO発現を比較のために示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
定義
本発明をより容易に理解するために、いくつかの用語を最初に以下に定義する。以下の用語および他の用語の追加の定義は、明細書全体を通して述べられている。
【0091】
動物:本明細書で使用される場合、用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを意味する。一部の実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階でのヒトを意味する。一部の実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階での非ヒト動物を意味する。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳類(例えば、ゲッ齒類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。一部の実施形態では、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/または蠕虫類が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子組換え動物、及び/またはクローンであり得る。
【0092】
略または約:本明細書で使用する場合、関心のある一つ以上の値に適用される「約(approximately)」または「約(about)」という用語は、記載された基準値に類似する値を指す。特定の実施形態では、「約(approximately)」または「約(about)」という用語は、特段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)、いずれかの方向(より大きいまたは小さい)で25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満の値の範囲を指す。
【0093】
送達:本明細書で使用される場合、用語「送達」は局所送達及び全身送達の両方を包含する。例えば、mRNAの送達は、mRNAが標的組織に送達され、そのコードされたタンパク質が発現され、そしてその標的組織内で保持される状況(「局所分布」または「局所送達」とも称される)、mRNAが標的組織に送達され、そのコードされたタンパク質が発現され、そして患者の循環系(例えば、血清)内に分泌され、そして全身に分布され、他の組織によって取り込まれる状況(「全身分布」または「全身送達」とも称される)を包含する。
【0094】
封入:本明細書で使用される場合、用語「封入」または文法的等価物は、ナノ粒子内に個々のmRNA分子を閉じ込めるプロセスを指す。
【0095】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、mRNAをポリペプチドへと翻訳すること、複数のポリペプチドをインタクトなタンパク質(例えば、酵素)へと構築すること、及び/またはポリペプチドもしくは完全に構築されたタンパク質(例えば、酵素)の翻訳後修飾をすることを指す。この用途において、用語「発現」及び「産生」ならびに文法的等価物は互換的に使用される。
【0096】
半減期:本明細書で使用される場合、用語「半減期」は、核酸またはタンパク質の濃度または活性などの量が、ある期間の開始時に測定された値の半分まで下がるのに要する時間である。
【0097】
ヒアルロニダーゼ:本明細書で使用される場合、用語「ヒアルロニダーゼ」は、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)を分解することができる酵素のファミリーを指す。
【0098】
改善、増加または低減:本明細書で使用される場合、「改善」、「増加」、もしくは「低減」という用語、または文法的等価物は、本明細書に記載される治療の開始前の同一個体での測定値、または本明細書に記載される治療を受けていない対照被験体(または複数の対照被験体)での測定値などのベースライン測定値に対する相対的な値を示唆するものである。「対照被験体」とは、治療を受けている対象と同じ疾患形態を患っており、治療を受けている対象とほぼ同じ年齢の対象のことである。
【0099】
in vitro:本明細書で使用される場合、用語「in vitro」は、多細胞生物体内ではなく、例えば、試験管または反応容器中、細胞培養液中などの人工的な環境で生じる事象を意味する。
【0100】
in vivo:本明細書で使用される場合、用語「in vivo」は、ヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物体内で生じる事象を意味する。細胞型系の文脈において、該用語は、生細胞内で生じる事象を意味するのに(例えばin vitro系の対語として)使用され得る。
【0101】
局所分布または局所送達:本明細書において使用される場合、「局所分布」、「局所送達」またはその文法的に均等な用語は、組織特異的な送達または分布を指す。典型的には、局所分布または局所送達は、細胞内で翻訳および発現される、または分泌が限定的で、患者の循環系へ入ることを回避する、mRNAにコードされるタンパク質(たとえば酵素)を必要とする。
【0102】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA(mRNA)」という用語は、少なくとも一つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。本明細書で使用されるmRNAは、修飾および未修飾の両方のRNAを包含する。mRNAは一つ以上のコード領域および非コード領域を含み得る。mRNAは、自然源から精製されてもよく、組換え発現系を用いて産生されてもよく、また任意選択的に精製、化学合成などをされてもよい。必要に応じて、例えば、化学的に合成された分子の場合、mRNAは、化学修飾された塩基または糖類、骨格修飾などを有する類似体といった、ヌクレオシド類似体を含み得る。mRNA配列は、別段に示されない限り、5’から3’の方向に提示される。一部の実施形態では、mRNAは、天然のヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、及び2-チオシチジン);化学修飾された塩基;生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基);介在塩基(intercalated base);修飾された糖類(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース);及び/もしくは修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエート及び5’-N-ホスホルアミダイト結合)であるか、またはそれらを含む。
【0103】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、提供される組成物が、例えば、実験、診断、予防、美容、及び/または治療目的のために投与され得る任意の生物体を意味する。典型的な患者には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及び/またはヒトなどの哺乳類)が含まれる。一部の実施形態では、患者はヒトである。ヒトには、出生前及び出生後の形態が含まれる。
【0104】
医薬的に許容される:本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的な利益/リスクの比率に相応で、ヒト及び動物の組織に接触させて使用することに適した物質を指す。
【0105】
皮下投与:本明細書で使用される場合、「皮下投与」または「皮下注射」という用語は、皮膚と筋肉の間の組織層である皮下組織へのボーラス注射を意味する。
【0106】
対象:本明細書で使用する「対象」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を意味する。ヒトには、出生前及び出生後の形態が含まれる。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は患者である場合があり、これは、疾患の診断または治療のために医療機関に来院するヒトを意味する。用語「対象」は、本明細書において「個体」または「患者」と交換可能に使用される。対象は、疾患または障害に罹患している可能性があるか、またはそれに感受性を有するが、疾患または障害の症状を表していてもいなくてもよい。
【0107】
実質的:本明細書で使用される場合、用語「実質的」は、関心対象の特徴または特性の全てもしくはほぼ全ての範囲または程度を示す、定性的な状態を意味する。生物学分野の当業者であれば、生物学的及び化学的な現象が、完了すること及び/もしくは完了の域に到達すること、または絶対的な結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしても稀であることを理解するであろう。したがって、用語「実質的」は、本明細書において、多くの生物学的及び化学的現象に固有の潜在的な完全性の欠如を捉えるのに用いられる。
【0108】
全身分布または全身送達:本明細書で使用される場合、用語「全身分布」、「全身送達」、または文法的等価物は、全身もしくは生物体全体に影響を及ぼす送達または分布のメカニズムまたはアプローチを意味する。典型的には、全身分布または全身送達は、身体の循環系、例えば、血流を介して成し遂げられる。「局所分布または局所送達」の定義と比較される。
【0109】
標的組織:本明細書で使用される場合、用語「標的組織」は、治療される疾患の影響を受ける任意の組織を意味する。一部の実施形態では、標的組織には、疾患関連病態、症状、または特徴を現す組織が含まれる。
【0110】
治療有効量:本明細書で使用される場合、治療剤の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、及び/もしくは症状に罹患しているか、または感受性を有する対象に投与される場合、その疾患、障害、及び/または症状の徴候を治療する、診断する、予防する、及び/またはその開始を遅延するのに十分な量を意味する。当業者は、治療有効量が少なくとも一つの単位用量を含む投与レジメンによって投与されるのが典型的であることを理解するであろう。
【0111】
治療:本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療」または「治療している」は、ある特定の疾患、障害、及び/または症状の一つ以上の徴候または特徴を、部分的にまたは完全に軽減する、寛解させる、緩和する、抑制する、予防する、その開始を遅延する、その重篤度を低減する、及び/またはその発症率を低減するために使用する任意の方法を意味する。疾患の症状を提示していない対象、及び/または疾患の初期の症状のみを提示している対象に対して、該疾患に関連する病態を発症させる危険性を減らすために、治療が行われる場合もある。
[発明を実施するための形態]
【0112】
本発明は、特に、ヒアルロニダーゼ酵素と共に皮下注射することによって改善されたmRNA送達の方法および組成物を提供する。予想外に、ヒアルロニダーゼ酵素との同時注射により、mRNA担持脂質ナノ粒子が驚くほど効率的に全身曝露され、かつ分散された。得られたペイロードは、処置した動物の肝臓(および他の器官または組織)に効率的に送達された。こうしたヒアルロニダーゼを用いる方法は、それを用いなければ不耐性となる薬剤の新規な送達プロファイルを作成するのに大きな利点を持つ。複数の疾患モデルにおいて、効率的なmRNAの定着、タンパク質産生、タンパク質活性および有効性を示すいくつかの例が本明細書に提示されている。
【0113】
本発明は特に、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするmRNAとヒアルロニダーゼ酵素とを、治療を必要とする対象に皮下注射を介して投与することによって、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を治療するための方法および組成物を提供する。また、本発明を使用して、様々な他の疾患、障害、および症状、特に代謝の疾患、障害、および症状を治療することができる。
【0114】
本発明の様々な態様は、以下のセクションで詳細に説明される。セクションの使用は、本発明を限定することを意味しない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、「または」の使用は、他に記載がない限り、「および/または」を意味する。
ヒアルロニダーゼ酵素
【0115】
様々なヒアルロニダーゼ酵素を使用して、本発明を実施してもよい。例えば、ヒアルロニダーゼには作用機序に基づく三つの群がある。それらの群のうちの二つはエンド-β-N-アセチル-ヘキソサミニダーゼ類である。一つの群には、基質の加水分解を利用する脊椎動物酵素類が含まれる。脊椎動物のヒアルロニダーゼ類(EC 3.2.1.35)は、触媒として基質の加水分解を利用するエンド-β-N-アセチル-ヘキソサミニダーゼ類である。脊椎動物のヒアルロナン類はまた、トランスグリコシダーゼ活性を有し、HA鎖を架橋する能力と、HA鎖とChSまたはChとを架橋し得る能力を持つ。脊椎動物のヒアルロニダーゼ類は、非進行性のエンド分解(endolytic)プロセスを通してHAを分解し、多くの場合、四糖類を生成する。哺乳類のヒアルロニダーゼ類は、グリコシダーゼファミリー56と呼ばれる炭水化物活性酵素(CAZy)群のメンバーであり、β1,4グリコシド結合においてHAの触媒作用で加水分解を利用するエンド-β-アセチル-ヘキソサミニダーゼ類として定義される。
【0116】
第二の群は、主に細菌性であり、グリコシド結合をβ脱離して不飽和結合を導入する機能を有するエリミナーゼ類を含む。また、細菌性ヒアルロニダーゼ類は、エンド-β-アセチル-ヘキソサミニダーゼ類であるが、リアーゼ機構を利用する。これらは異なるCAZyファミリーに属し、多糖類リアーゼファミリー8に属する。一般的に、これらの多糖類リアーゼ類(EC 4.2.2.*)はβ脱離によって切断し、新しい非還元末端に二重結合をもたらす。ヒアルロン酸リアーゼ類(EC 4.2.2.1;細菌性Hyal)は、ファミリー8内の一つのサブグループのみからなり、コンドロイチンABCリアーゼ類(EC 4.2.2.4)、コンドロイチンACリアーゼ類(EC 4.2.2.5)、およびキサンタンリアーゼ類(EC 4.2.2.12)も含む。これらの細菌性酵素類、ヒアルロニダーゼ類、コンドロイチナーゼ類、およびキサンタナーゼ類は全て、有意な配列的、構造的および機械的な相同性を共有している。
【0117】
第三の群はエンドβ-グルクロニダーゼ類である。これらは、環形動物のヒルや特定の甲殻類で見られる。
【0118】
また、ヒトゲノムのヒアルロニダーゼ様配列であるHyal-1、Hyal-2、Hyal-3、Hyal-4、およびPH-20/Spam1、ならびに偽遺伝子Phyal1(翻訳されず)をコードする六つの既知の遺伝子があり、その全ての相同性の程度が高い。マウスは同様に、ヒト遺伝子と高い相同性の程度を有するヒアルロニダーゼ類をコードする六つの遺伝子を持つ(Stern et al.,Chem.Rev.2006,106(3):818-839)。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼはまた、他の任意の動物性物質を含まない滅菌調製物としてウシまたはブタから得ることができる。
【0119】
ウシPH-20は一般的に使用されるヒアルロニダーゼであり、適度に純粋な形態で市販されている(シグマカタログ番号H3631、タイプVI-S、ウシ精巣由来、3,000~15,000NFU(National Formulary Unit)単位/mgの活性有)。
【0120】
注射用ヒアルロニダーゼは、粉末形態または溶液で市販されている。例えば、FDA承認されたウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素は、無色の無秩序な溶液として入手可能である。
【0121】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼの国際単位は、0.1mgの国際標準調製物の活性として定義されてもよく、以下の反応に基づく1混濁度軽減単位(TRU)(Humphrey JH et al.,”International Standard for Hyaluronidase,”Bull World Health Organ.1957;16(2):291-294)に等しい:
ヒアルロニダーゼ
ヒアルロン酸------------>二糖類と単糖類+小ヒアルロン酸断片
したがって、ヒアルロニダーゼ活性の一単位は、2.0mlの反応混合物において、pH5.3にて37℃で毎分0.330のA600の変化を引き起こす(45分アッセイ)。%透過率は600nmで算出され、光経路は1cmである。
【0122】
一部の実施形態では、組換え酵素、または任意の既知の方法もしくは利用可能な標準方法によって人工的に産生された酵素が、本目的のために使用され得る。
【0123】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼは、皮下注射について1単位~50,000単位の範囲の用量で使用される。このタイプの例示的な組換えヒアルロニダーゼは、エンドグリコシダーゼHylenexである。ヒアルロニダーゼの皮下投与量は、約1単位~50,000単位である。ヒアルロニダーゼは、40,000U未満、30,000U未満、20,000U未満、10,000U未満、9000U未満、8000U未満、7000U未満、6000U未満、5000U未満、4000U未満、3000U未満、2000U未満、1000U未満、900U未満、800U未満、700U未満、600U未満、または500U未満の用量で投与される。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも1U、少なくとも5U、少なくとも10U、少なくとも20U、少なくとも30U、少なくとも40U、少なくとも50U、少なくとも60U、少なくとも70U、少なくとも80U、少なくとも100U、または少なくとも150Uの用量で投与される。一部の他の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも160U、少なくとも180U、少なくとも200U、少なくとも220U、少なくとも240U、少なくとも260U、少なくとも280U、少なくとも300U、少なくとも320U、少なくとも340U、少なくとも360U、少なくとも380U、または少なくとも400Uの用量で投与される。一つ以上の実施形態では、ブタ(豚)ヒアルロニダーゼを1単位~50,000単位の範囲の用量で使用する。ヒアルロニダーゼ酵素は、40,000U未満、30,000U未満、20,000U未満、10,000U未満、9000U未満、8000U未満、7000U未満、6000U未満、5000U未満、4000U未満、3000U未満、2000U未満、1000U未満、900U未満、800U未満、700U未満、600U未満、または500U未満の用量で投与される。前記ヒアルロニダーゼ酵素が、少なくとも1U、少なくとも5U、少なくとも10U、少なくとも20U、少なくとも30U、少なくとも40U、少なくとも50U、少なくとも60U、少なくとも70U、少なくとも80U、少なくとも100U、または少なくとも150Uの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。一部の他の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、少なくとも160U、少なくとも180U、少なくとも200U、少なくとも220U、少なくとも240U、少なくとも260U、少なくとも280U、少なくとも300U、少なくとも320U、少なくとも340U、少なくとも360U、少なくとも380U、または少なくとも400Uの用量で投与される。
【0124】
一つ以上の実施形態では、ヒアルロニダーゼはmRNAと同時に投与される。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼは、mRNAの投与の前に投与され得る。一部の実施形態では、mRNAとヒアルロニダーゼ酵素とは同一製剤の一部である。一部の実施形態では、RNAとヒアルロニダーゼ酵素とは、別個の製剤として注射される。
【0125】
一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、水溶液で投与され得る。一部の実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は生理食塩水溶液で投与される。いくつかの実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素はmRNA製剤の一部であり、同じ溶液中に含まれ、この溶液はmRNA封入脂質ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、mRNA封入脂質とヒアルロニダーゼ酵素とを含む凍結乾燥調製物が治療用途のために製剤化される。
メッセンジャーRNA(mRNA):
【0126】
本発明を使用して、任意のmRNAを送達することができる。本明細書で使用される場合、mRNAは、コードされるタンパク質を翻訳するためにDNAからリボソームに情報を伝えるタイプのRNAである。mRNAは様々な公知の方法のいずれかにより合成され得る。たとえば本発明に従うmRNAは、in vitro転写(IVT)を介して合成することができる。簡潔に述べると、IVTは多くの場合、プロモーターを含む直線状または環状のDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTTおよびマグネシウムイオンを含み得る緩衝系、ならびに適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、またはSP6RNAポリメラーゼ)、DNAseI、ピロホスファターゼ、ならびに/またはRNAse阻害剤を用いて行われる。厳密な条件は具体的なアプリケーションに従い変化するであろう。
【0127】
一部の実施形態では、in vitro合成されたmRNAを製剤化および封入前に精製して、mRNA合成中に使用する様々な酵素および他の試薬を含む望ましくない不純物を除去してもよい。
【0128】
本発明を使用して、様々な長さのmRNAを送達することができる。一部の実施形態では、本発明を使用して、長さ約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、または20kb以上のin vitro合成されたmRNAを送達することができる。一部の実施形態では、本発明を使用して、長さ約1~20kb、約1~15kb、約1~10kb、約5~20kb、約5~15kb、約5~12kb、約5~10kb、約8~20kb、または約8~15kbの範囲のin vitro合成されたmRNAを送達することができる。
【0129】
本発明を使用して、未修飾のmRNA、または安定性を一般的に強化する一つ以上の修飾を含むmRNAを送達することができる。一部の実施形態では、修飾は、修飾ヌクレオチド、修飾糖リン酸骨格、ならびに5’および/または3’非翻訳領域(UTR)から選択される。
【0130】
一部の実施形態では、mRNAの修飾は、RNAのヌクレオチドの修飾を含み得る。本発明の修飾mRNAは、例えば骨格修飾、糖修飾、または塩基修飾を含み得る。一部の実施形態では、mRNAは、以下に限定されないが、プリン類(アデニン(A)、グアニン(G))またはピリミジン類(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))をはじめとする天然ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体(修飾ヌクレオチド)から合成されてもよく、ならびに例えば1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(pseudouracil)(5-ウラシル)、ジヒドロウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチルシュードウラシル、キューオシン、ベータ-D-マンノシル-キューオシン、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、ならびにホスホロアミデート類、ホスホロチオエート類、ペプチドヌクレオチド類、メチルホスホネート類、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシンおよびイノシンなどのプリン類ならびにピリミジン類の修飾ヌクレオチド類似体または誘導体として合成されてもよい。こうした類似体の調製は、米国特許第4,373,071号、同第4,401,796号、同第4,415,732号、同第4,458,066号、同第4,500,707号、同第4,668,777号、同第4,973,679号、同第5,047,524号、同第5,132,418号、同第5,153,319号、第5,262,530号および第5,700,642号から当業者に公知であり、これらの開示は参照によりその全範囲が本明細書に含まれる。
【0131】
一部の実施形態では、mRNAはRNA骨格修飾を含んでもよい。典型的には、骨格修飾は、RNAに含まれるヌクレオチドの骨格のリン酸塩が化学的に修飾される修飾である。例示的な骨格修飾として、典型的には、以下に限定されないが、メチルホスホネート、メチルホスホルアミデート、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート(例えば、シチジン5’-O-(1-チオフォスフェート))、ボラノリン酸塩、正荷電グアニジウム基などからなる群由来の修飾が挙げられ、これは、ホスホジエステル結合を他のアニオン基、カチオン基、または中性基で置き換えることに基づくことを意味する。
【0132】
一部の実施形態では、mRNAは糖修飾を含み得る。典型的な糖修飾は、mRNAが有するヌクレオチドの糖の化学修飾であり、糖修飾として、以下に限定されないが、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミン-オリゴリボヌクレオチド(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン5’-三リン酸、2’-メチルウリジン5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、及びこれらの異性体(2’-アラシチジン5’-三リン酸、2’-アラウリジン5’-三リン酸)、またはアジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)からなる群から選択される糖修飾が挙げられる。
【0133】
一部の実施形態では、mRNAはヌクレオチドの塩基の修飾(塩基修飾)を含み得る。塩基修飾を含む修飾されたヌクレオチドは、塩基修飾ヌクレオチドとも称される。こうした塩基修飾ヌクレオチドの例として、以下に限定されないが、2-アミノ-6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、2-アミノアデノシン5’-三リン酸、2-チオシチジン5’-三リン酸、2-チオウリジン5’-三リン酸、4-チオウリジン5’-三リン酸、5-アミノアリルシチジン5’-三リン酸、5-アミノアリルウリジン5’-三リン酸、5-ブロモシチジン5’-三リン酸、5-ブロモウリジン5’-三リン酸、5-ヨードシチジン5’-三リン酸、5-ヨードウリジン5’-三リン酸、5-メチルシチジン5’-三リン酸、5-メチルウリジン5’-三リン酸、6-アザシチジン5’-三リン酸、6-アザウリジン5’-三リン酸、6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、7-デアザアデノシン5’-三リン酸、7-デアザグアノシン5’-三リン酸、8-アザアデノシン5’-三リン酸、8-アジドアデノシン5’-三リン酸、ベンゾイミダゾールリボシド5’-三リン酸、N1-メチルアデノシン5’-三リン酸、N1-メチルグアノシン5’-三リン酸、N6-メチルアデノシン5’-三リン酸、O6-メチルグアノシン5’-三リン酸、プソイドウリジン5’-三リン酸、ピューロマイシン5’-三リン酸、またはキサントシン5’-三リン酸が挙げられる。
【0134】
mRNA合成には、5’末端への「キャップ」及び3’末端への「テール」の付加が含まれるのが典型的である。キャップの存在は、大半の真核生物細胞に見られるヌクレアーゼへの耐性を付与するのに重要である。「テール」の存在は、エキソヌクレアーゼ分解からmRNAを保護するのに役立つものである。
【0135】
したがって、一部の実施形態では、mRNAは5’キャップ構造を含む。5’キャップは、典型的には次のように付加される:最初に、RNA末端ホスファターゼが5’ヌクレオチドから末端リン酸基のうちの一つを除去して二つの末端リン酸を残し、次に、グアノシン三リン酸(GTP)がグアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加されて5-’5’逆三リン酸結合を生成し、次いで、グアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによりメチル化される。2’-O-メチル化は、7-メチルグアノシン三リン酸残基に続く第一の塩基および/または第二の塩基でも生じ得る。キャップ構造の例には、以下に限定されないが、m7GpppNp-RNA、m7GpppNmp-RNA、およびm7GpppNmpNmp-RNAが含まれる(mは2’-Oメチル残基を示す)。
【0136】
一部の実施形態では、mRNAは、3’ポリ(A)テール構造を含む。mRNAの3’末端のポリAテールは多くの場合、約10~300個のアデノシンヌクレオチド(例えば、約10~200個のアデノシンヌクレオチド、約10~150個のアデノシンヌクレオチド、約10~100個のアデノシンヌクレオチド、約20~70個のアデノシンヌクレオチド、または約20~60個のアデノシンヌクレオチド)を含む。一部の実施形態では、mRNAは3’ポリ(C)テール構造を含む。mRNAの3’末端の好適なポリCテールは多くの場合、約10~200個のシトシンヌクレオチド(例えば、約10~150個のシトシンヌクレオチド、約10~100個のシトシンヌクレオチド、約20~70個のシトシンヌクレオチド、約20~60個のシトシンヌクレオチド、または約10~40個のシトシンヌクレオチド)を含む。ポリCテールは、ポリAテールに付加され得るか、またはポリAテールを置換し得る。
【0137】
一部の実施形態では、mRNAは、5’および/または3’の非翻訳領域を含む。一部の実施形態では、5’非翻訳領域には、mRNAの安定性または翻訳に影響を及ぼす一つ以上の要素、例えば、鉄応答要素が含まれる。一部の実施形態では、5’非翻訳領域は、長さ約50~500のヌクレオチドであり得る。
【0138】
一部の実施形態では、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、細胞中のmRNAの位置の安定性に影響を及ぼすタンパク質の結合部位、またはmiRNAの一つ以上の結合部位のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、3’非翻訳領域は、長さ約50~500ヌクレオチドであるか、またはそれ以上の長さであり得る。
キャップ構造
【0139】
一部の実施形態では、mRNAは、5’キャップ構造を含む。5’キャップは、典型的には次のように付加される:最初に、RNA末端ホスファターゼが5’ヌクレオチドから末端リン酸基のうちの一つを除去して二つの末端リン酸を残し、次に、グアノシン三リン酸(GTP)がグアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加されて5’-5’逆三リン酸結合を生成し、次いで、グアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによりメチル化される。キャップ構造の例としては、m7G(5’)ppp(5’)A、G(5’)ppp(5’)A、及びG(5’)ppp(5’)Gが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
天然に存在するキャップ構造は7-メチルグアノシンを含み、これは、三リン酸架橋を介して第一の転写ヌクレオチドの5’末端に連結され、その結果、mG(5’)ppp(5’)N(Nは任意のヌクレオシドである)のジヌクレオチドキャップをもたらす。in vivoにおいて、キャップは酵素を用いて付加される。キャップは、核に付加され、酵素グアニリルトランスフェラーゼによる触媒作用を受ける。RNAの5’末端へのキャップの付加は、転写の開始直後に生じる。末端ヌクレオシドは、グアノシンであるのが典型的であり、全ての他のヌクレオチドとは逆の方向になっており、すなわち、G(5’)ppp(5’)GpNpNpである。
【0141】
in vitro転写により生成されたmRNAに対する普遍的なキャップは、mG(5’)ppp(5’)Gであり、これをin vitroでのT7 RNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼを用いた転写においてジヌクレオチドキャップとして使用し、その5’末端にキャップ構造を有するRNAが取得される。キャップ化されたmRNAの一般的なin vitro合成方法では、転写の開始因子として、形態がmG(5’)ppp(5’)G(「mGpppG」)である予め形成されたジヌクレオチドが用いられている。
【0142】
従来より、in vitro翻訳実験に使用される合成ジヌクレオチドキャップの通常の形態は、アンチリバースキャップ類似体(「ARCA」)または修飾されたARCAであり、これは、2’OH基または3’OH基が-OCHで置換される、修飾されたキャップ類似体であるのが一般的である。
【0143】
さらなるキャップ類似体として、mGpppG、mGpppA、mGpppC;非メチル化キャップ類似体(例えば、GpppG);ジメチル化キャップ類似体(例えば、m2,7GpppG)、トリメチル化キャップ類似体(例えば、m2,2,7GpppG)、ジメチル化対称キャップ類似体(例えば、mGpppmG)、またはアンチリバースキャップ類似体(例えば、ARCA;m2’OmeGpppG、m72’dGpppG、m7,3’OmeGpppG、m7,3’dGpppG、及びそれらの四リン酸誘導体)からなる群から選択される化学構造が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Jemielity,J.et al.,“Novel‘anti-reverse’cap analogs with superior translational properties”,RNA,9:1108-1122(2003)を参照のこと)。
【0144】
一部の実施形態では、好適なキャップは7-メチルグアニル酸(「mG」)であり、これは、三リン酸架橋を介して第一の転写ヌクレオチドの5’末端に連結され、その結果、mG(5’)ppp(5’)N(Nは任意のヌクレオシドである)をもたらすものである。本発明の実施形態に利用されるmGキャップの好適な実施形態は、mG(5’)ppp(5’)Gである。
【0145】
一部の実施形態では、キャップはキャップ0構造である。キャップ0構造は、塩基1及び塩基2に結合したリボースの2’-O-メチル残基を欠く。一部の実施形態では、キャップはキャップ1構造である。キャップ1構造は、塩基2に2’-O-メチル残基を有する。一部の実施形態では、キャップはキャップ2構造である。キャップ2構造は、塩基2及び塩基3の両方に結合した2’-O-メチル残基を有する。
【0146】
様々なmGキャップ類似体が当該技術分野において既知であり、その多くは市販されている。これらには、上述のmGpppG、ならびにARCA 3’-OCH及び2’-OCHキャップ類似体が含まれる(Jemielity,J.et al.,RNA,9:1108-1122(2003))。本発明の実施形態において使用するためのさらなるキャップ類似体として、N7-ベンジル化ジヌクレオシド四リン酸類似体(Grudzien,E.et al.,RNA,10:1479-1487(2004)に記載)、ホスホロチオエートキャップ類似体(Grudzien-Nogalska,E.,et al.,RNA,13:1745-1755(2007)に記載)、ならびに米国特許第8,093,367号及び同第8,304,529号(参照により本明細書に援用される)に記載されるキャップ類似体(ビオチン化キャップ類似体を含む)が挙げられる。
テール構造
【0147】
多くの場合、「テール」の存在はエキソヌクレアーゼ分解からmRNAを保護するという役割を果たす。ポリAテールは、天然のメッセンジャーセンスRNAおよび合成センスRNAを安定させると考えられている。したがって、ある実施形態では、長いポリAテールをmRNA分子に付加することにより、そのRNAをさらに安定化することができる。ポリAテールは、当該技術分野において認識されている様々な技術を使用して付加することができる。例えば、長いポリAテールは、ポリAポリメラーゼを使用して合成RNAまたはin vitro転写RNAに付加することができる(Yokoe,et al.Nature Biotechnology.1996;14:1252-1256)。転写ベクターが、長いポリAテールをコードすることもできる。加えて、ポリAテールは、PCR産物から直接転写することによって付加することができる。ポリAは、RNAリガーゼを用いてセンスRNAの3’末端にライゲーションすることもできる(例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1991
edition)を参照のこと)。
【0148】
一部の実施形態では、mRNAは3’テール構造を含む。テール構造は典型的に、ポリ(A)テールおよび/またはポリ(C)テールを含む。mRNAの3’末端上のポリAテールまたはポリCテールは、典型的には、少なくとも50個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも150個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも200個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも250個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも300個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも350個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも400個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも450個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも500個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも550個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも650個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも700個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも750個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも800個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも850個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも900個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも950個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、または少なくとも1kbのアデノシヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチドをそれぞれ含む。一部の実施形態では、ポリAテールまたはポリCテールはそれぞれ、約10~800個のアデノシンヌクレオチドまたはシトシンヌクレオチド(例えば、約10~200個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~300個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~400個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~500個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~550個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約50~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約100~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約150~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約200~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約250~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約300~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約350~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約400~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約450~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約500~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~150個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~100個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約20~70個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、または約20~60個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド)であり得る。一部の実施形態では、テール構造は、本明細書に記載の様々な長さを有するポリ(A)テールおよびポリ(C)テールの組み合わせを含む。一部の実施形態では、テール構造は、少なくとも50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアデノシンヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、テール構造は、少なくとも50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のシトシンヌクレオチドを含む。
【0149】
一部の実施形態では、ポリAテールまたはポリCテールの長さを調節して、本発明の修飾センスmRNA分子の安定性を制御し、それにともなってタンパク質の転写を制御する。例えば、ポリAテールの長さはセンスmRNA分子の半減期に影響を及ぼし得るため、ポリAテールの長さを調節して、ヌクレアーゼに対するmRNAの耐性のレベルを改変し、それによって、標的細胞におけるポリヌクレオチドの発現及び/またはポリペプチドの産生の時間経過を制御してもよい。
5’および3’の非翻訳領域
【0150】
一部の実施形態では、mRNAは、5’および/または3’の非翻訳領域を含む。一部の実施形態では、5’非翻訳領域には、mRNAの安定性または翻訳に影響を及ぼす一つ以上の要素、例えば、鉄応答要素が含まれる。一部の実施形態では、5’非翻訳領域は、長さ約50~500のヌクレオチドであり得る。
【0151】
一部の実施形態では、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、細胞中のmRNAの位置の安定性に影響を及ぼすタンパク質の結合部位、またはmiRNAの一つ以上の結合部位のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、3’非翻訳領域は、長さ約50~500ヌクレオチドであるか、またはそれ以上の長さであり得る。
【0152】
例示的な3’および/または5’のUTR配列は、センスmRNA分子の安定性を強化するために、安定なmRNA分子(例えば、グロビン、アクチン、GAPDH、チューブリン、ヒストン、またはクエン酸回路酵素)から誘導されてもよい。例えば、5’UTR配列は、ヌクレアーゼ耐性を改善するため、及び/またはポリヌクレオチドの半減期を改善するために、CMV最初期1(IE1)遺伝子またはその断片の部分配列を含み得る。ポリヌクレオチドをさらに安定化させるために、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の3’末端または非翻訳領域にヒト成長ホルモン(hGH)またはその断片をコードする配列を含めることも想定される。一般に、これらの修飾は、ポリヌクレオチドの安定性及び/または薬物動態特性(例えば、半減期)を、それらの未修飾の対応物に比べて改善するものであり、例えば、in vivoヌクレアーゼ消化に対するポリヌクレオチド耐性を改善するように行われる修飾を含む。
【0153】
in vitro転写反応から得られたmRNAが一部の実施形態では望ましいことがあるが、細菌、真菌、植物、および/または動物から産生されたmRNAを含めたmRNAの他の供給源も、本発明の範囲内であると意図される。
【0154】
本発明を使用して、様々なタンパク質をコードするmRNAを送達することができる。本発明に適したmRNAの非限定的な例には、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)、ホタルルシフェラーゼ(FFL)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、およびオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)などの標的タンパク質をコードするmRNAが含まれる。
mRNA配列の例
【0155】
一部の実施形態では、本発明は、標的タンパク質欠損の治療を目的に、標的タンパク質をコードするmRNAを対象に送達するための方法および組成物を提供する。例示的なmRNA配列を以下に示す。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【0156】
一部の実施形態では、適切なmRNA配列は、標的タンパク質の相同体または類似体をコードし得る。例えば、標的タンパク質の相同体または類似体は、実質的な標的タンパク質の活性を保持しながら、野生型または天然型の標的タンパク質と比較した場合に一つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を含む修飾標的タンパク質であってもよい。一部の実施形態では、本発明に適したmRNAは、上記の例示的な配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同であるアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、本発明に適したmRNAは、標的タンパク質と実質的に同一であるタンパク質をコードする。一部の実施形態では、本発明に適したmRNAは、上記の例示的な配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、本発明に適したmRNAは、標的タンパク質の断片または一部をコードする。一部の実施形態では、本発明に適したmRNAは標的タンパク質の断片または一部をコードし、該タンパク質の断片または一部は、野生型タンパク質と類似した標的活性を依然として維持している。一部の実施形態では、本発明に適したmRNAは、上記の例示的な配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列を有する。
【0157】
一部の実施形態では、適切なmRNAは、別のタンパク質に融合した標的タンパク質(例えばN末端またはC末端融合物)の全長、断片、または一部を含む融合タンパク質をコードする。一部の実施形態では、標的タンパク質の全長、断片、または一部をコードするmRNAに融合したタンパク質は、シグナル配列または細胞標的化配列をコードする。
脂質ナノ粒子
【0158】
本発明によると、mRNAはナノ粒子に封入されるかまたは複合体化され得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、「送達ビヒクル」、「移送ビヒクル」、またはそれらの文法的等価物とも称される。
【0159】
様々な実施形態によると、好適なナノ粒子として、以下に限定されないが、ポリエチレンイミン(PEI)などのポリマー系担体、脂質ナノ粒子およびリポソーム、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム、プロテオリポソーム、天然および合成由来のエキソソーム、天然層状体、合成層状体および半合成層状体、ナノ粒子、カルシウムリン-ケイ酸塩ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、微結晶微粒子、半導体ナノ粒子、ポリ(D-アルギニン)、ゾルゲル、ナノデンドリマー、デンプンベース送達系、ミセル、エマルジョン、ニオソーム、多ドメインブロックポリマー(ビニルポリマー、ポリプロピルアクリル酸ポリマー、動的多抱合体)、乾燥粉末製剤、プラスミド、ウイルス、リン酸カルシウムヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、ならびに他の指向性タグが挙げられる。
【0160】
一部の実施形態では、mRNAは一個以上のリポソーム内に封入される。本明細書において使用される場合、「リポソーム」という用語は、任意の層状、多重層状、または固形のナノ粒子小胞を指す。典型的には、本明細書において使用されるリポソームは、1種以上の脂質を混合することにより、または1種以上の脂質とポリマーを混合することにより形成され得る。ゆえに本明細書において使用される「リポソーム」という用語は、脂質系ナノ粒子およびポリマー系ナノ粒子の両方を包含する。一部の実施形態では、本発明に適したリポソームは、カチオン性または非カチオン性の脂質、コレステロール系脂質、および/またはPEG修飾脂質を含む。
PEG化脂質
【0161】
一部の実施形態では、適切な脂質溶液は、一つ以上のPEG化脂質を含む。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質と、N-オクタノイル-スフィンゴシン-l-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)-2000](C8 PEG-2000セラミド)を含めた誘導体化されたセラミド(PEG-CER)などの誘導体化脂質との使用も、本発明により企図される。企図されるPEG修飾脂質は、長さがC-C20のアルキル鎖を有する脂質に共有結合された長さ最大5kDaのポリエチレングリコール鎖を含むが、これに限定されない。一部の実施形態では、PEG修飾またはPEG化脂質は、PEG化コレステロールまたはPEG-2Kである。一部の実施形態では、特定の有用な交換可能な脂質は、より短いアシル鎖(例えば、C14またはC18)を有するPEGセラミドである。
【0162】
PEG修飾リン脂質および誘導体化脂質は、リポソーム内の総脂質の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%を構成し得る。
カチオン性脂質
【0163】
本明細書で使用される場合、語句「カチオン性脂質」は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を有する多数の脂質種のいずれかを指す。いくつかのカチオン性脂質は文献に記載されており、その多くは市販されている。本発明の組成物および方法に使用するのに特に好適なカチオン性脂質は、国際特許公開第2010/053572号(具体的には、段落[00225]に記載されているC12-200)および同第2012/170930号に記載されている脂質を含み、その両方の文献は参照により本明細書に援用される。特定の実施形態では、本発明の組成物および方法に適したカチオン性脂質として、例えば、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-l-イル)テトラコサ-15,18-ジエン-1-アミン(HGT5000)、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-4,15,18-トリエン-l-アミン(HGT5001)、および(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-5,15,18-トリエン-1-アミン(HGT5002)などの、2012年3月29日に出願された米国仮特許出願第61/617,468号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたイオン化可能なカチオン性脂質が挙げられる。
【0164】
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法に適したカチオン性脂質は、3,6-ビス(4-(ビス((9Z,12Z)-2-ヒドロキシオクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン(OF-02)などのカチオン性脂質を含む。
【0165】
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法に適したカチオン性脂質は、3-(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)-6-(4-((2-ヒドロキシドデシル)(2-ヒドロキシウンデシル)アミノ)ブチル)-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(Target23)、3-(5-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ペンタン-2-イル)-6-(5-((2-ヒドロキシドデシル)(2-ヒドロキシウンデシル)アミノ)ペンタン-2-イル)-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(Target24)などの、「Biodegradable lipids for delivery of nucleic acids」と題する国際公開第2015/184256 A2号(参照により本明細書に援用される)に記載のカチオン性脂質を含む。
【0166】
一部の実施形態では、発明の組成物および方法に適したカチオン性脂質は、国際公開第2013/063468号と、「Lipid Formulations for Delivery of Messenger RNA」と題する米国仮出願(これらの両方の文献は、参照により本明細書に援用される)とに記載されるカチオン性脂質を含む。
【0167】
一部の実施形態では、本発明に適した一つ以上のカチオン性脂質はN-[l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、すなわち「DOTMA」であってもよい。(Feigner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987);米国特許第4,897,355号)。他の好適なカチオン性脂質として、例えば、5-カルボキシスペルミルグリジンジオクタデシルアミド(carboxyspermylglycinedioctadecylamide)すなわち「DOGS」、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウムすなわち「DOSPA」(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982 (1989);米国特許第5,171,678号、米国特許第5,334,761号)、l,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパンすなわち「DODAP」、l,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンすなわち「DOTAP」が挙げられる。
【0168】
さらなる例示的なカチオン性脂質として、l,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DSDMA」、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DODMA」、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DLinDMA」、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DLenDMA」、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリドすなわち「DODAC」、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミドすなわち「DDAB」、N-(l,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミドすなわち「DMRIE」、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-l-(シス,シス-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパンすなわち「CLinDMA」、2-(5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-l-(シス,シス-9’,l-2’-オクタデカジエノキシ)プロパンすなわち「CpLinDMA」、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミンすなわち「DMOBA」、1,2-N,N’-ジオレイルカルミバル-3-ジメチルアミノプロパンすなわち「DOcarbDAP」、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミンすなわち「DLinDAP」、l,2-N,N’-ジリノレイルカルミバル-3-ジメチルアミノプロパンすなわち「DLincarbDAP」、l,2-ジリノレオイルカルミバル-3-ジメチルアミノプロパンすなわち「DLinCDAP」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソランすなわち「DLin- -DMA」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソランすなわち「DLin-K-XTC2-DMA」、および2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,l 2-ジエン-1-イル)-l,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA))(国際公開第2010/042877号;Semple et al.,Nature Biotech. 28:172-176(2010)を参照のこと)、またはこれらの混合物が挙げられる。(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276-287(2005);Morrissey,DV.,et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003-1007(2005);PCT公開第WO2005/121348A1号)。一部の実施形態では、カチオン性脂質のうちの一つ以上は、イミダゾール部分、ジアルキルアミノ部分、またはグアニジウム部分のうちの少なくとも一つを含む。
【0169】
一部の実施形態では、一つ以上のカチオン性脂質は、XTC(2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン)、MC3(((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノアート)、ALNY-100((3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン))、NC98-5 (4,7,13-トリス(3-オキソ-3-(ウンデシルアミノ)プロピル)-N1,N16-ジウンデシル-4,7,10,13-テトラアザヘキサデカン-1,16-ジアミド)から選択されてもよい。
【0170】
一部の実施形態では、カチオン性脂質は、適切な脂質溶液において、重量%またはモル%で総脂質の少なくとも約5%、10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%を構成する。一部の実施形態では、カチオン性脂質は、重量%またはモル%で、総脂質混合物の約30~70%(例えば、約30~65%、約30~60%、約30~55%、約30~50%、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する。
非カチオン性/ヘルパー脂質
【0171】
本明細書で使用される場合、語句「非カチオン性脂質」は、任意の中性脂質、双性イオン脂質、またはアニオン性脂質を意味する。本明細書で使用される場合、語句「アニオン性脂質」は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の負電荷を保有する多数の脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質として、以下に限定されないが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、l-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0172】
一部の実施形態では、非カチオン性脂質は、適切な脂質溶液において、重量%またはモル%で総脂質の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%を構成し得る。一部の実施形態では、非カチオン性脂質は、適切な脂質溶液において、重量%またはモル%で総脂質の約30~50%(例えば、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する。
コレステロール系脂質
【0173】
一部の実施形態では、適切な脂質溶液は、一つ以上のコレステロール系脂質を含む。好適なコレステロール系カチオン性脂質として、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、1,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991);Wolf et al.BioTechniques 23,139(1997);米国特許第5,744,335号)、またはICEが挙げられる。一部の実施形態では、コレステロール系脂質は、適切な脂質溶液において、重量%またはモル%で総脂質の少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%を構成する。一部の実施形態では、コレステロール系脂質は、適切な脂質溶液において、重量%またはモル%で総脂質の約30~50%(例えば、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する。
【0174】
カチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール系脂質、およびPEG修飾脂質の例示的組み合わせが実施例のセクションに記載されている。例えば、適切な脂質溶液は、cKK-E12、DOPE、コレステロールおよびDMG-PEG2K;C12-200、DOPE、コレステロールおよびDMG-PEG2K;HGT5000、DOPE、コレステロールおよびDMG-PEG2K;HGT5001、DOPE、コレステロールおよびDMG-PEG2K;cKK-E12、DPPC、コレステロールおよびDMG-PEG2K;C12-200、DPPC、コレステロールおよびDMG-PEG2K;HGT5000、DPPC、コレステロールおよびDMG-PEG2K;またはHGT5001、DPPC、コレステロールおよびDMG-PEG2Kを含み得る。脂質混合物を含む、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および/またはPEG修飾脂質の選択、ならびにこれらの脂質の相互の相対モル割合の選択は、選択される脂質の特徴、性質、封入されるmRNAの特徴に基づいて行われる。さらなる考慮すべき事項には、例えば、選択される脂質のアルキル鎖の飽和度、ならびに大きさ、電荷、pH、pKa、融合性、及び毒性が含まれる。したがって、モル割合はそれらに応じて調節され得る。
mRNA担持ナノ粒子
【0175】
望ましい任意の脂質は、mRNAの封入に適した任意の比で混合され得る。一部の実施形態では、適切な脂質溶液は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール、および/またはPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。
【0176】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子にmRNAを封入するプロセスは、mRNA溶液と脂質溶液を混合することを含み、該mRNA溶液および/または脂質溶液は、混合前に周囲温度よりも高い所定温度に加熱されて、mRNAを封入する脂質ナノ粒子を形成する(2015年7月2日に出願された「Encapsulation of messenger RNA」と題する米国特許出願公開第14/790,562号、および2014年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/020,163号を参照されたく、これらの開示はその全体が本明細書に援用される)。
【0177】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子にmRNAを封入するプロセスは、予め形成した脂質ナノ粒子をmRNAと混合することを含む(2016年11月10日に出願された米国仮特許出願第62/420,413号、および2017年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/580,155号を参照されたく、これらの開示は参照により本明細書に援用される)。一部の実施形態では、予め形成された脂質ナノ粒子をmRNAと混合することで、mRNAを細胞内に送達する効率を改善する脂質ナノ粒子が生じる。一部の実施形態では、予め形成された脂質ナノ粒子をmRNAと混合することで、極めて高い封入効率(すなわち、90~95%の範囲)でmRNAを脂質ナノ粒子に封入することになる。一部の実施形態では、予め形成された脂質ナノ粒子とmRNAとを、プロセス全体にわたって脂質/mRNA(N/P)比を一定に維持し、かつ量産化を容易にするポンプシステムを用いて混合している。
【0178】
本発明による好適なリポソームは、様々な大きさに作製することができる。一部の実施形態では、提供されるリポソームは、従来から知られているmRNA封入リポソームよりも小さく作製され得る。一部の実施形態では、リポソームの大きさが減少すると、mRNAの送達効率が高くなる。適切なリポソームの大きさは、標的細胞または標的組織の部位を考慮し、また作製されるリポソームの用途をある程度考慮して選択することができる。
【0179】
一部の実施形態では、適切な大きさのリポソームを選択して、mRNAによりコードされる抗体の全身分布を促進する。一部の実施形態では、特定の細胞または組織へのmRNAのトランスフェクションを限定することが望ましい場合がある。例えば、肝細胞を標的とするには、リポソームは、その寸法が肝臓の肝類洞を覆う内皮層の開窓よりも小さくなるように寸法決定されてもよく、こうした場合、リポソームは、その内皮開窓を容易に貫通して、標的肝細胞に達することができようになる。
【0180】
あるいはまたは加えて、リポソームは、リポソームの寸法が特定の細胞もしくは組織内への分布を制限するか、または意図的に分布しないようにするのに十分な直径であるように寸法決定されてもよい。例えば、リポソームは、その寸法が肝類洞を覆う内皮層の開窓より大きくなるように寸法決定されてもよく、それによって、リポソームの肝細胞への分布を制限する。
【0181】
一部の実施形態では、リポソームの大きさは、リポソーム粒子の最大直径の長さによって決定される。一部の実施形態では、好適なリポソームは、約250nm以下(例えば、約225nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、または50nm以下)の大きさを有する。一部の実施形態では、好適なリポソームは、約10~250nmの範囲(例えば、約10~225nm、10~200nm、10~175nm、10~150nm、10~125nm、10~100nm、10~75nm、または10~50nmの範囲)の大きさを有する。一部の実施形態では、好適なリポソームは、約100~250nmの範囲(例えば、約100~225nm、100~200nm、100~175nm、100~150nmの範囲)の大きさを有する。一部の実施形態では、好適なリポソームは、約10~100nmの範囲(例えば、約10~90nm、10~80nm、10~70nm、10~60nm、または10~50nmの範囲)の大きさを有する。ある特定の実施形態では、好適なリポソームは、約100nm未満の大きさを有する。
【0182】
リポソーム集団の寸法決定に対して、当該技術分野において既知の様々な別の方法を利用することができる。こうした寸法決定方法の一つは、米国特許第4,737,323号に記載されており、この文献は参照によって本明細書に援用される。バス超音波処理またはプローブ超音波処理のいずれかによるリポソーム懸濁液の超音波処理によって、直径が約0.05マイクロメートル未満の小さいULVまでサイズ漸減する。ホモジナイゼーションは別の方法であり、大きいリポソームをより小さいものに断片化するのに剪断エネルギーを利用する。典型的なホモジナイゼーション手順において、MLVは、選択されたリポソームの大きさ、典型的には約0.1~0.5マイクロメートルの大きさが観察されるまで、標準的なエマルジョンホモジナイザーを用いて再循環される。リポソームの大きさは、Bloomfield,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421-150(1981)(参照によって本明細書に援用される)に記載された準電気光散乱(QELS)によって算出され得る。平均リポソーム直径を、形成されたリポソームを超音波処理することによって減少させることができる。断続的な超音波処理サイクルをQELS評価と交互に行って、効率的なリポソーム合成を導くことができる。
医薬組成物
【0183】
in vivoでのmRNAの発現を促進するために、リポソームを含めた脂質ナノ粒子などの送達ビヒクルは、一つ以上の追加の核酸、担体、標的化リガンドまたは安定化試薬と組み合わせて製剤化されても、好適な賦形剤と混合されている薬理学的組成物に製剤化されてもよい。一部の実施形態では、mRNAを封入している脂質ナノ粒子は、ヒアルロニダーゼと同時に投与される。薬物の製剤化及び投与の技術は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,latest editionで知ることができる。
【0184】
提供されるリポソーム封入mRNA、またはリポソーム結合mRNA、及びそれを含む組成物は、対象の臨床状態、投与の部位及び投与方法、投与スケジュール、対象の年齢、性別、体重、ならびに当該技術分野の臨床医に関連する他の要因を考慮して、現在の医療行為に従い投与及び投薬され得る。本明細書における目的に適う「有効量」は、実験臨床研究、薬理学、臨床、及び医療分野の当業者に既知のこうした適切な考慮すべき事項により決定され得る。一部の実施形態では、投与される量は、症状や、当業者によって疾患の進行、退行、または改善の適切な基準として選択される他の指標を、少なくともいくらか安定化、改善、または排除するのに有効である。例えば、好適な量及び投薬レジメンは、少なくとも一過性タンパク質(例えば、酵素)の産生をもたらすものである。
【0185】
本発明は、皮下組織(皮膚と筋肉の間の組織層)へのボーラス注射といった皮下送達に焦点を当てているが、その他の適切な投与経路として、例えば、経口投与、直腸投与、膣投与、経粘膜投与、気管内もしくは吸入を含む肺投与、または腸投与;皮内注射、経皮(局所)注射、筋肉内注射、髄内注射、ならびにくも膜下腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、もしくは鼻腔内を含めた非経口送達が挙げられる。特定の実施形態では、筋肉内投与は、骨格筋、平滑筋、及び心筋からなる群から選択される筋肉に行う。一部の実施形態では、投与の結果、mRNAが筋細胞に送達される。一部の実施形態では、投与の結果、mRNAが肝細胞(すなわち肝臓細胞)に送達される。特定の実施形態では、筋肉内投与の結果、mRNAが筋細胞に送達される。
【0186】
代替的または追加的に、本発明のリポソームに封入されたmRNAおよび組成物は、全身的な方法ではなく局所的な方法で投与され得る。
【0187】
本発明の提供される方法は、本明細書に記載される治療剤(例えば、治療用タンパク質をコードするmRNA)の治療有効量の単回投与ならびに複数回投与を企図する。治療剤は、対象の状態(たとえばOTC欠損症)の性質、重篤度、及び程度によって規則的な間隔で投与されてもよい。一部の実施形態では、本発明の治療剤(例えば、治療用タンパク質をコードするmRNA)の治療有効量を、規則的な間隔で(例えば、年に一回、六カ月に一回、五カ月に一回、三カ月に一回、隔月(二カ月に一回)、毎月(毎月一回)、隔週(二週間に一回)、月二回、30日に一回、28日に一回、14日に一回、10日に一回、7日に一回、毎週、週二回、毎日、または連続して)、周期的に皮下投与してもよい。
【0188】
一部の実施形態では、提供されるリポソーム及び/または組成物は、その中に含まれるmRNAの徐放に適するように製剤化される。こうした徐放性組成物は、投薬間隔を延長させて対象に適宜投与することができる。例えば、一部の実施形態では、本発明の組成物は、一日二回、毎日、または一日おきに対象に投与される。好適な実施形態では、本発明の組成物は、週二回、週一回、7日に一回、10日に一回、14日に一回、28日に一回、30日に一回、二週間に一回、三週間に一回もしくはより好ましくは四週間に一回、一か月に一回、一か月に二回、六週間に一回、八週間に一回、隔月に一回、三か月に一回、四か月に一回、六か月に一回、八か月に一回、九か月に一回、または毎年対象に投与される。長期間にわたるmRNAの送達または放出のいずれかを行うために、デポ投与(例えば、筋肉内、皮下、硝子体内)用に製剤化される組成物およびリポソームも企図される。好ましくは、採用される徐放手段は、安定性を強化するためにmRNAに施される修飾と組み合わされる。
【0189】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、主として、本発明の医薬組成物に含まれる治療剤の総量に基づいている。一般に、治療有効量は、対象に対して意義のある利益を得る(例えば、OTC欠損症を治療、調節、治癒、防止、及び/または改善する)のに十分な量である。例えば、治療有効量は、所望の治療作用及び/または予防作用を得るのに十分な量であり得る。通常、必要とする対象に投与される治療剤(例えば、治療用タンパク質をコードするmRNA)の量は、該対象の特徴によって異なる。このような特徴には、対象の状態、疾患重篤度、全般的健康、年齢、性別および体重が含まれる。当業者は、これらおよび他の関連因子に応じて適切な用量を容易に決定することができるであろう。さらに、最適な投薬量範囲を同定するために、客観的および主観的アッセイの両方を任意に用いることができる。
【0190】
治療上有効な量は、複数の単位用量を含み得る投薬レジメンで一般的に投与される。任意の特定の治療用タンパク質について、治療上有効な量(および/または有効な投与レジメン内の適切な単位投与量)は、例えば、投与経路に応じて、他の医薬品と組み合わせて変化し得る。また、任意の特定の患者に固有の治療有効量(及び/または単位用量)は、治療される障害及び障害の重篤度;採用される特定の医薬作用剤の活性;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;投与時間、投与経路、及び/または採用される特定のタンパク質の排出または代謝速度;治療期間;ならびに医療分野において周知の類似要因を含む様々な要因に依存し得る。
【0191】
一部の実施形態では、治療有効投与量は、約0.005mg/kg(体重)~500mg/kg(体重)、例えば、約0.005mg/kg(体重)~400mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~300mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~200mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~100mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~90mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~80mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~70mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~60mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~50mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~40mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~30mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~25mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~20mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~15mg/kg(体重)、約0.005mg/kg(体重)~10mg/kg(体重)の範囲である。
【0192】
一部の実施形態では、治療有効投与量は、約0.1mg/kg(体重)超、約0.5mg/kg(体重)超、約1.0mg/kg(体重)超、約3mg/kg(体重)超、約5mg/kg(体重)超、約10mg/kg(体重)超、約15mg/kg(体重)超、約20mg/kg(体重)超、約30mg/kg(体重)超、約40mg/kg(体重)超、約50mg/kg(体重)超、約60mg/kg(体重)超、約70mg/kg(体重)超、約80mg/kg(体重)超、約90mg/kg(体重)超、約100mg/kg(体重)超、約150mg/kg(体重)超、約200mg/kg(体重)超、約250mg/kg(体重)超、約300mg/kg(体重)超、約350mg/kg(体重)超、約400mg/kg(体重)超、約450mg/kg(体重)超、約500mg/kg(体重)超である。特定の実施形態では、治療有効投与量は1.0mg/kg(体重)である。一部の実施形態では、1.0mg/kg(体重)の治療有効投与量が筋肉内または静脈内に投与される。
【0193】
また、本明細書に開示されるリポソームのうちの一つ以上を含む凍結乾燥された医薬組成物と、例えば、2012年6月8日に出願された国際特許出願PCT/US12/41663に開示されるような、かかる組成物を使用するための関連方法も、本明細書において企図される。当該出願の教示内容はその全体で参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本発明による凍結乾燥された医薬組成物は、投与前に戻されるか、またはin vivoで戻され得る。例えば、凍結乾燥された医薬組成物は、適切な剤形(例えば、ディスク、ロッド、または膜などの皮内剤形)に製剤化され、剤形が個体の体液によってin
vivoで経時的に再水和されるように投与され得る。
【0194】
提供されるリポソーム及び組成物は、任意の所望の組織に投与され得る。一部の実施形態では、mRNAを含む提供されるリポソームおよび組成物は皮下に送達され、mRNAは皮下組織以外の細胞または組織型で発現する。一部の実施形態では、提供されるリポソームまたは組成物によって送達される標的タンパク質をコードするmRNAは、リポソームおよび/または組成物が投与された組織で発現する。一部の実施形態では、送達されるmRNAは、リポソーム及び/または組成物が投与された組織とは異なる組織で発現される。送達されるmRNAが送達および/または発現され得る場所となる組織の例としては、限定されないが、肝臓、腎臓、心臓、脾臓、血清、脳、骨格筋、リンパ節、皮膚、および/または脳脊髄液が挙げられる。
【0195】
一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、投与されるmRNAの発現が増加するか、または対象由来の生体試料におけるmRNAコードタンパク質の活性レベルが、治療もしくは投与前のベースライン発現レベルもしくは活性レベルと比較して増加する。一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、対象由来の生体試料において、提供される組成物のmRNAによりコードされる治療用タンパク質の発現レベルまたは活性レベルが、治療前のベースライン発現レベルまたは活性レベルと比較して増加する。通例、ベースラインレベルは、治療直前に測定される。生体試料としては、例えば、全血、血清、血漿、尿、及び組織試料(例えば、筋肉、肝臓、皮膚線維芽細胞)が含まれる。一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、治療用タンパク質(投与されたmRNAによってコードされるタンパク質)の発現レベルまたは活性レベルが、治療直前のベースラインレベルと比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%増加する。一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、対象由来の生体試料におけるmRNA発現レベルまたは活性レベルが、治療されていない対象と比較して増加する。一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、対象由来の生体試料において、提供される組成物のmRNAによってコードされる治療用タンパク質の発現レベルまたは活性レベルが、治療されていない対象と比較して増加する。
【0196】
様々な実施形態によると、送達されるmRNAの発現の時期を、特定の医学的要求に合うように調整することができる。一部の実施形態では、送達されるmRNAによってコードされるタンパク質の発現は、提供されるリポソーム及び/または組成物の投与の1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、または1カ月後に検出可能である。
【0197】
一部の実施形態では、提供される組成物の治療有効投与量は、定期的に投与された場合、対象において、治療前のベースラインのシトルリン産生と比較してシトルリン産生の増加をもたらす。典型的には、治療前または治療後のシトルリン値は、例えば血液、血漿もしくは血清、尿、または固形組織抽出物などの対象から取得された生体試料において測定され得る。一部の実施形態では、本発明に従う治療により、生体試料(例えば血漿、血清または尿)中のシトルリン値が、ベースラインのシトルリン値と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、または3倍増加する。
【0198】
本発明によると、提供される組成物の治療有効投与量は、定期的に投与された場合、タンパク質欠損症の少なくとも一つの症状または特徴の強度、重篤度、もしくは頻度の低下をもたらすか、または発症の遅延をもたらす。
治療用途
【0199】
本発明を使用して、様々な疾患、障害、および症状を治療することができる。一部の実施形態では、本発明は、肝疾患、例えばOTC欠損症の治療に有用である。ヒアルロニダーゼ酵素と、OTCタンパク質をコードするmRNAとの同時注射により、対象の肝臓細胞(例えば、肝細胞)におけるOTC酵素(タンパク質)のレベルが、治療前のベースラインレベルと比較して増加する。典型的には、ベースラインレベルは、治療前に(例えば、治療の12カ月前まで、一部の場合においては治療の直前に)測定される。一部の実施形態では、本発明の皮下注射により、肝臓細胞におけるOTCタンパク質のレベルが、治療前のベースラインレベルと比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%増加する。一部の実施形態では、本発明の皮下注射により、肝臓細胞におけるOTCタンパク質のレベルが、治療をしていない対象の肝臓細胞におけるOTCタンパク質のレベルと比較して増加する。
【0200】
一部の実施形態では、本発明の皮下注射により、対象の血漿または血清におけるOTCタンパク質のレベルが、治療前のベースラインのレベルと比較して増加する。典型的には、ベースラインレベルは、治療前に(例えば、治療の12カ月前まで、一部の場合においては治療の直前に)測定される。一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、血漿または血清におけるOTCタンパク質のレベルが、治療直前のベースラインのレベルと比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%まで増加する。一部の実施形態では、提供される組成物を投与することにより、血漿または血清におけるOTCタンパク質のレベルが、治療をしていない対象の血漿または血清におけるOTCタンパク質のレベルと比較して増加する。
【0201】
本発明の組成物および方法は、多数の障害を治療するためのmRNAの送達を提供する。特に、本発明の組成物および方法は、肝臓に排出または分泌されるタンパク質および/または酵素の欠損に関する疾患または障害の治療に適している。これらの疾患または障害には、以下に限定されないが、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)欠損症(フェニルケトン尿症(PKU)として従来より知られている)、肝臓の尿素サイクル異常シトルリン血症を引き起こすアルギニノコハク酸シンテターゼ1(ASS1)欠損症、貧血を引き起こすエリスロポエチン(EPO)欠損症(エリスロポエチンは腎臓内および肝臓内の両方で産生されるタンパク質)が含まれる。
【0202】
本発明が有用となる障害には、以下に限定されないが、ファブリー病などの障害;血友病性疾患(例えば、血友病B(FIX)、血友病A(FVIII));SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側方硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠損症;X連鎖副腎白質ジストロフィー;フリートライヒ運動失調症;ペリツェウス・メルツバッハ病;TSC1およびTSC2関連結節性(脳)硬化症;サンフィリポB症候群(MPS IIIB);脆弱X症候群、脆弱X関連振戦/失調症候群、および脆弱X早期卵巣不全症候群を含むFMR1関連障害;プラダー・ウィリー症候群;遺伝性出血性毛細管拡張症(AT);ニーマン・ピック病タイプC1;若年型神経セロイドリポフスチノーシス(JNCL)、若年バッテン病、サンタヴォリ・ハルティア病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ならびにPTT-1およびTPP1欠損症を含む、神経セロイドリポフスチン症関連疾患;中枢神経系ミエリン形成不全/白質消失病を伴うEIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、およびEIF2B5関連小児期運動失調;CACNA1AおよびCACNB4関連一過性運動失調症2型;古典的レット症候群、MECP2関連重度新生児脳症、およびPPM-X症候群を含むMECP2関連障害;CDKL5関連非定型レット症候群;ケネディ病(SBMA);皮質下梗塞および白質脳症(CADASIL)を伴うノッチ-3関連常染色体優性脳動脈症;SCN1AおよびSCN1B関連の発作障害;アルパーズ・フッテンロッハー症候群、POLG関連感覚性運動失調型ニューロパチー、構音障害、および眼麻痺、ならびにミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性の進行性外眼筋麻痺を含む、ポリメラーゼG関連障害;X連鎖副腎低形成;X連鎖無ガンマグロブリン血症;ウィルソン病が含まれる。
【0203】
一部の実施形態では、本発明の核酸、特にmRNAは、細胞外空間に分泌される機能的タンパク質または酵素をコードしてもよい。例えば、分泌されたタンパク質には、クロッティング因子、補体経路成分、サイトカイン、ケモカイン、ケモアトラクタント、タンパク質ホルモン(例えば、EGF、PDF)、血清のタンパク質成分、抗体、分泌トール様受容体などが含まれる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、エリスロポエチン、α1-アンチトリプシン、カルボキシペプチダーゼN、またはヒト成長ホルモンをコードするmRNAを含み得る。
【実施例0204】
本発明の特定の化合物、組成物、及び方法について、特定の実施形態に従って具体的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明の化合物を単に説明するという役割を果たすものであり、それを制限することを意図するものではない。
脂質材料
【0205】
以下の実施例に記載される製剤は、特に記載しない限り、種々の核酸材料を封入するように設計された、一種以上のカチオン性脂質、ヘルパー脂質(例えば非カチオン性脂質および/またはコレステロール系脂質)、およびPEG化脂質を用いた様々な比率の多成分脂質混合物を含む。プロセス用のカチオン性脂質としては、以下に限定されないが、cKK-E12(3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン)、OF-02、Target23、Target24、ICE、HGT5000、HGT5001、HGT4003、DOTAP(1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2-ジオレイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DLinDMA(Heyes,J.;Palmer,L.;Bremner,K.;MacLachlan,I.”Cationic lipid saturation influences intracellular delivery of encapsulated nucleic acids”J.
Contr.Rel.2005, 107,276-287)、DLin-KC2-DMA(Semple,S.C.et al.”Rational Design of Cationic Lipids for siRNA Delivery”Nature Biotech. 2010, 28,172-176)、C12-200(Love,K.T.et al.”Lipid-like materials for low-dose in vivo gene silencing”PNAS 2010,107,1864-1869)、ジアルキルアミノ系、イミダゾール系、グアニジニウム系などが挙げられ得る。ヘルパー脂質としては、以下に限定されないが、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPE(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DPPE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール))、DOPC(1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-3-ホスホチジルコリン)、コレステロールなどが挙げられ得る。PEG化脂質としては、以下に限定されないが、C-C20の長さのアルキル鎖を有する脂質に共有結合された、長さが最大5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖が挙げられ得る。
mRNA材料
【0206】
一部の実施形態では、標的タンパク質をコードするコドン最適化されたメッセンジャーRNAを、該遺伝子をコードするプラスミドDNA鋳型からのin vitro転写により合成した。その後、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.;Brownlee,G.G.”Recognition of mRNA cap structures by viral and cellular proteins”J.Gen.Virology 2005,86,1239-1249)と3’ポリ(A)を付加した。各mRNA産物中に存在する5’および3’の非翻訳領域はそれぞれXおよびYと表されており、前述したとおりに定義される。
実施例1.マウスにおける発現hOTCのin vivo活性
【0207】
本実施例は、OTC KO spfashマウスで、ヒトOTC(hOTC)mRNA担持脂質ナノ粒子を用いて、それぞれ所定の投与レベルで、ヒアルロニダーゼを伴わない静脈内投与と、ヒアルロニダーゼを伴う皮下投与およびヒアルロニダーゼを伴わない皮下投与とを比較した結果を示す。図1は、異なる条件下でのhOTC mRNAの単回投与24時間後のOTC KO spfashマウス肝臓における発現hOTCタンパク質の活性(シトルリン産生に換算)の例を示す。
【0208】
カスタムex vivo活性アッセイによるシトルリン産生レベルの測定から明らかになるように、hOTCタンパク質は酵素的にも活性であることがわかっていた。一般的に、シトルリンの産生を用いて、発現したhOTCタンパク質の活性を評価できる。図1に示すように、hOTC mRNAを封入した脂質ナノ粒子の20mg/kgでの単回用量を、それぞれヒアルロニダーゼを伴って皮下送達した24時間後およびヒアルロニダーゼを伴わないで皮下送達した24時間後に、マウスの肝臓におけるhOTCタンパク質の例示的なシトルリン活性を測定した。さらに、比較として、マウスの肝臓のシトルリン活性を、hOTC mRNA脂質ナノ粒子溶液を0.50mg/kgで静脈内注射した24時間後に測定した。生理食塩水で処理したOTC KOマウスの肝臓におけるシトルリン活性も測定した。
【0209】
図1に示すようにヒアルロニダーゼと共に製剤化していないhOTC mRNAの皮下投与後には、有意なhOTCタンパク質活性が観察されなかった。これらの動物におけるhOTCタンパク質活性は、生理食塩水で処置した動物に見られる活性と同様であった。対照的に、hOTCタンパク質活性(シトルリンタンパク質レベルによって証明される)は、hOTC mRNA LNP組成物を静脈内投与したマウスの肝臓と、ヒアルロニダーゼと共に製剤化されたhOTC mRNA LNP組成物を皮下投与したマウスの肝臓で同様であった。
実施例2.マウスにおけるCO-hOTC mRNA送達のin vivoでの効率
【0210】
この例は、OTC KO spfashマウスにおいて、CO-hOTC(コドン最適化されたヒトOTC)mRNA担持脂質ナノ粒子を用いて、それぞれ所定の用量レベルで、ヒアルロニダーゼを伴わない静脈内投与と、ヒアルロニダーゼを伴う皮下投与およびヒアルロニダーゼを伴わない皮下投与とを比較した結果を示す。本実施例は、皮下送達された、ヒアルロニダーゼと共に製剤化されたCO-hOTC mRNA脂質ナノ粒子が、皮下送達されたヒアルロニダーゼを含まないmRNA脂質ナノ粒子よりも効果的であったことを示している。
【0211】
図2は、異なる条件下でのCO-hOTC mRNAの単回投与24時間後のOTC KO spfashマウス肝臓における、CO-hOTC mRNA封入ナノ粒子の送達効率(CO-hOTC mRNAコピー数に換算)の例を示す。
【0212】
様々な治療群の肝臓におけるCO-hOTC mRNAコピー数を比較することによって、投与の効率を算出した。図2に示すように、マウスの肝臓におけるCO-hOTC mRNAコピー数を、ヒアルロニダーゼを含むCO-hOTC mRNA LNP製剤、およびヒアルロニダーゼを含まないCO-hOTC mRNA LNP製剤の20mg/kgでの皮下単回投与24時間後に測定した。また比較として、CO-hOTC mRNA LNP溶液を0.50mg/kgで静脈内注射した24時間後のマウスの肝臓において、CO-hOTC mRNAコピー数を測定した。同様に対照として、生理食塩水で処理した野生型(WT)マウス、生理食塩水で処理したOTC KOマウス、およびhOTC LNP溶液を用いて静脈内処置されたか、ヒアルロニダーゼを含まないhOTC LNP製剤で皮下処置されたか、またはヒアルロニダーゼと共に製剤化されたhOTC LNPを用いて皮下処置されたOTC KOマウスの肝臓で、mOTC mRNAコピー数を測定した。
【0213】
図2には、ヒアルロニダーゼ共製剤を用いずに皮下投与した後、生理食塩水で処理された肝臓と比べて、肝臓におけるCO-hOTC mRNAコピー数がわずかに増加した結果を示す。対照的に、ヒアルロニダーゼと共に製剤化されたCO-hOTC mRNA LNPで処置したマウスの肝臓において、静脈内投与と比較して同等レベルのCO-hOTC mRNAコピーを検出した。具体的には、ヒアルロニダーゼと共に製剤化されたCO-hOTC LNPの皮下投与24時間後に、少なくとも12倍の内因性レベルとなった。
実施例3.ヒアルロニダーゼと共にmRNA LNP投与した後のマウスにおける発現hOTCのin vivo活性
【0214】
この実施例は、OTC KO spfashマウスにおいて、ヒトOTC(hOTC)mRNA担持脂質ナノ粒子を用いて、それぞれ所定の用量レベルで、ヒアルロニダーゼを伴う静脈内投与と、ヒアルロニダーゼを伴う皮下投与とを比較した結果を示す。
【0215】
図3は、異なる条件下でのhOTC mRNAの単回投与24時間後のOTC KO spfashマウス肝臓における発現hOTCタンパク質の活性(シトルリン産生に換算)の例を示す。ヒアルロニダーゼと共にhOTC mRNA LNP20mg/kgの単回用量が皮下送達された24時間後に、マウスの肝臓におけるhOTCタンパク質の例示的なシトルリン活性を測定した。比較として、ヒアルロニダーゼと共に製剤化したhOTC mRNA脂質ナノ粒子溶液の0.50mg/kg静脈内注射の24時間後に、マウスの肝臓におけるシトルリン活性を測定した。生理食塩水で処理されたOTC KO spfashマウスの肝臓におけるシトルリン活性も測定した。
【0216】
図3に示した結果は、ヒアルロニダーゼを含むhOTC mRNA LNP製剤の静脈内投与および皮下投与の両方の単回投与により、生理食塩水で処理した対照と比較して、hOTCタンパク質活性(シトルリン産生によって測定される)が増加したことを示す。実施例4.野生型マウスと比較した場合のマウスにおける発現OTCのin vivo活性
【0217】
この実施例は、未処置の野生型マウス、およびヒアルロニダーゼ共製剤を含むhOTC
mRNA担持脂質ナノ粒子の皮下投与で処置したOTC KO spfashマウスの肝臓における、OTCタンパク質活性のレベルの比較を示す。
【0218】
図4に示すように、560Uのヒアルロニダーゼと共に製剤化したCO-hOTC mRNA LNPの単回用量10mg/kgを皮下送達した24時間後に、マウスの肝臓におけるhOTCタンパク質発現の結果としての例示的なシトルリン産生量を測定した。比較として、野生型マウスとOTC KO spfashマウスの肝臓におけるシトルリン産生量を、生理食塩水を静脈内注射した後に測定した。
図4に示す結果は、ヒアルロニダーゼと共に製剤化したCO-hOTCで皮下処置したOTC KOマウスの肝臓において測定されたシトルリンタンパク質のレベルが、生理食塩水で処置した野生型マウスの肝臓で測定されたシトルリンタンパク質のレベルと同様であることを示す。
実施例5.マウスにおけるOTC発現に対する酵素とmRNAの種々比率の作用
【0219】
表1に示す結果は、皮下送達によって組成物中のヒアルロニダーゼとmRNAの種々比率を投与したマウスにおけるOTC発現レベルの変化を示す。表1Aは、マウスの11グループに投与されたmRNAとヒアルロニダーゼの用量を示す。組成物の単回投与後2日目および8日目の各グループのOTC発現量を表1Bに示す。表1Bに示すように、OTC発現レベルは、調査された範囲内のヒアルロニダーゼの用量増加に伴い著しく変化することはなかった。しかしながら、0.3ml溶液で送達された560単位のヒアルロニダーゼと混合した5mg/KgのmRNAで、ベースラインを超える良好なOTC発現レベルを観察した。データはまた、組成物の単回投与が、少なくとも8日間、持続的なタンパク質発現を効果的にもたらすことを示す。
表1A
【表1】

表1B
【表2】

対照的に、図5に示すように、シトルリンアッセイで測定した場合、OTCノックアウトマウスで得られるOTC活性において、より高い用量のmRNA(20mg/Kg)でヒアルロニダーゼ投与の明確な効果を観察した。投与24時間後、5600Uのヒアルロニダーゼは、560Uのヒアルロニダーゼと比べて、シトルリンにより測定されるOTC活性を二倍誘発した(図5)。また、以前から示されていたように、ヒアルロニダーゼが組成物で投与されなかった場合、シトルリンはほぼ検出不能であることが明らかであった。実施例6.マウスにおける発現PAHのin vivo活性
【0220】
この例は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)KOマウス(フェニルケトン尿症(PKU)のマウスモデル)において、CO-hPAH(コドン最適化ヒトPAH)mRNA担持脂質ナノ粒子を用いた、ヒアルロニダーゼを伴わない静脈内投与とヒアルロニダーゼを伴う皮下投与の比較を示す。
【0221】
図6は、異なる条件下でのhOTC mRNA脂質ナノ粒子の単回投与24時間後のPAH KOマウスにおける血清フェニルアラニンレベルの例を示す。
【0222】
図6に示すように、PAH KOマウスにおける例示的な血清フェニルアラニンレベルを、5600Uのヒアルロニダーゼと共に製剤化されたCO-hPAHmRNA LNP20mg/kgの皮下単回投与の前に、かつ該単回投与24時間後に測定した。また、PAH KOマウスにおける血清フェニルアラニンレベルを、1.0mg/kgのCO-hPAHmRNA LNP溶液の静脈内注射前、かつ該静脈注射24時間後に測定した。未処置のPAH KOマウスにおける血清フェニルアラニンレベルも測定した。図6に示す結果によると、臨床的に関連性のあるフェニルアラニンバイオマーカーが、両方の投与経路を介して同等に正常化された。
実施例7.マウスにおけるASS1のin vivo発現
【0223】
この実施例は、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)KOマウス(マウスモデルシトルリン血症)において、CO-hASS1(コドン最適化ヒトASS1)mRNA担持脂質ナノ粒子を用いた、ヒアルロニダーゼを伴わない静脈内投与と、ヒアルロニダーゼを伴う皮下投与との比較を示す。
【0224】
図7は、異なる条件下でのhASS1 mRNA脂質ナノ粒子の単回投与24時間後のASS1 KOマウス肝臓におけるhASS1タンパク質レベルの例を示す。
【0225】
図7に示すように、ASS1 KOマウスの肝臓における例示的なhASS1タンパク質レベルを、5600Uのヒアルロニダーゼと共に製剤化されたCO-hASS1 mRNA LNP20mg/kgの皮下単回投与24時間後に測定した。また、ASS1 KOマウスにおける肝臓のASS1タンパク質レベルを、1.0mg/kgのCO-hASS1mRNA LNP溶液の静脈内注射24時間後に測定した。同様に、生理食塩水で処置したASS1 KOマウスにおける肝臓のASS1タンパク質レベルも測定した。図7に示す結果によると、投与の両経路で処置したマウスの肝臓において有意なhASS1タンパク質レベルを観察した。
実施例8.マウスにおけるホタルルシフェラーゼタンパク質のin vivo発現
【0226】
本実施例は、ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNA担持LNPを投与する例示的な方法、および標的組織におけるホタルルシフェラーゼをin vivoで分析するための例示的な方法を示す。
【0227】
ヒアルロニダーゼ(5600U)と共に製剤化された、FFLをコードするmRNA封入LNP20mg/kgで、野生型マウスを皮下送達により処置した。図8左側のグラフは、皮下投与3時間後に観察された、FFLタンパク質によって産生された発光を示す。右側のグラフは、皮下投与24時間後に観察された、FFLタンパク質によって産生された発光を示す。
【0228】
図8に示した結果は、皮下経路を介してヒアルロニダーゼと共に注射された脂質ナノ粒子mRNA製剤により、広範囲の標的タンパク質活性が生じたことを示す。これらのマウスの肝臓における活性FFLタンパク質が成功裏に産生したことを表す顕著な発光が観察された。さらに、持続的FFL活性が少なくとも24時間維持され、強度の減少はほとんどないか全くなかった。
実施例9.マウスにおけるヒトエリスロポエチン(hEPO)のin vivo発現
【0229】
本実施例は、開示された方法を用いて、mRNAをコードするhEPOの皮下投与後のヒトエリスロポエチン(hEPO)タンパク質発現の例示的な時間経過を、同一のものを静脈内投与した場合と比較して示す。
【0230】
雄のCD1マウスに、1日目に一回、hEPO mRNA担持脂質ナノ粒子を投与量1mg/kgで静脈内投与するか、または5600Uのヒアルロニダーゼと共に製剤化したhEPO mRNA担持脂質ナノ粒子を投与量5mg/kgで皮下投与した。ヒトEPOタンパク質発現を、hEPO特異的ELISAにより血清試料で4日間調べた。
【0231】
図9に示すように、mRNA投与(1日目)6時間後および2日目でのマウスの静脈内投与群と皮下投与群の両方で、高レベルのEPOタンパク質発現が観察された。驚くべきことに、3日目および4日目に、血清hEPO発現レベルは、静脈内注射を受けたマウスと比較して皮下注射を受けたマウスで高かった。
【0232】
図10は、ヒアルロニダーゼを伴ってまたは伴わずにヒトEPOコードmRNAを皮下投与(SubQ)した後のマウスにおけるヒトEPOの発現を示す。他のmRNAに対して示されるように、ヒアルロニダーゼを伴わない場合、mRNA LNPの皮下投与は発現不良をもたらす一方、ヒアルロニダーゼを伴う場合には血清中のタンパク質が有意に増加する。その発現レベルは、同じmRNA LNPの静脈内投与に匹敵している。
実施例10. LNPにおけるPEG化脂質のタンパク質発現への作用
【0233】
表2に示すように、mRNAが皮下送達を介して送達された場合(20mg/Kg mRNA)、PEG化脂質-LNPの割合が高いと、より高いタンパク質の発現が誘発されることが示された。マウスの四つのグループに、静脈内送達経路または皮下送達経路を介して生理食塩水またはLNPを投与した。皮下投与組成物が5%のPEG-LNPを含む場合、3%のPEG-LNPと比較して、ASS1発現が劇的に増加した。静脈内投与組成物は反対の作用を示した。PEG化脂質の濃度が低いと、高レベルのASS1発現が誘発された。
表2.
【表3】

均等
【0234】
当業者は、日常的な実験手法を越えない手法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等を認識するか、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の記載に限定されることは意図されず、むしろ以下の特許請求の範囲に記述されるとおりである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022173314000001.app
【外国語明細書】