(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017337
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/165 20060101AFI20220118BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P35/02
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021169810
(22)【出願日】2021-10-15
(62)【分割の表示】P 2019230648の分割
【原出願日】2014-08-22
(31)【優先権主張番号】61/870,747
(32)【優先日】2013-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/869,039
(32)【優先日】2013-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507021702
【氏名又は名称】ヴァンダ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロプーロス, ミハエル, エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】リカメル, ルイス, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ラヴダン, クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA16
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB27
4C206ZC20
4C206ZC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多発性骨髄腫の治療に用いられる剤を提供する。
【解決手段】CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子が過剰発現していると決定された個体における前記少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを減少させるための剤であって、トリコスタチンA(TSA)を有効成分として含有し、有効量のTSAが前記個体に投与されるように用いられる、剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、
有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記有効量は、個体における少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるのに十分な量であり、少なくとも1つの遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の各々の発現を減少させるのに十分な量である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量は約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有効量は約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
投与が経口投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
投与が静脈内投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、
個体の身体から得られた生物学的試料から、個体における1つ又は複数の遺伝子の発現のレベルを決定するステップであって、1つ又は複数の遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、ステップと、
1つ又は複数の遺伝子の発現のレベルが過剰発現を示す場合に、有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記有効量は、個体における少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるのに十分な量であり、少なくとも1つの遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記有効量は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の各々の発現を減少させるのに十分な量である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記有効量は約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記有効量は約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記有効量は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
投与が経口投与を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
投与が静脈内投与を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、
個体をMMと診断する又は既に診断しているステップと、
有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップと、
を含む方法。
【請求項22】
個体を診断する又は既に診断していることは、個体に対して少なくとも1つの診断検査を行う又は既に行っていることを含み、少なくとも1つの診断検査は、血清タンパク質電気泳動、無血清κ/λ軽鎖アッセイ、尿タンパク質電気泳動、骨髄検査、及びX線解析からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有効量は、個体における少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるのに十分な量であり、少なくとも1つの遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記有効量は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の各々の発現を減少させるのに十分な量である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記有効量は約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記有効量は約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記有効量は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
投与が経口投与を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
投与が静脈内投与を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、又はWEE1のうちの少なくとも1つの単独の又は主要な阻害剤としてのトリコスタチンA(TSA)と、
薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、
を含む医薬組成物。
【請求項33】
有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項35】
TSAが、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の単独の又は主要な阻害剤である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項36】
経口投与用に製剤化されている、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項37】
静脈内投与用に製剤化されている、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項38】
TSAを約0.1mg~約5000mgの量で含む、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項39】
TSAの量が、約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日の用量に相当する、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項40】
TSAの量が、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量に相当する、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
TSAの量が、約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日の用量に相当する、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
TSAの量が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性を阻害するのに有効である、請求項32に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、同時係属の米国仮特許出願第61/869039号(2013年8月22日出願)及び米国仮特許出願第61/870747号(2013年8月27日出願)(各々本明細書に組み入れられている。)の利益を主張するものである。
【背景】
【0002】
多発性骨髄腫(MM)は、時に形質細胞性骨髄腫と称されるが、骨系の多発性形質細胞癌であり、概して高齢個体に発症する。診断した場合、大半の個体は症候性(symptomatic)である。診断は、典型的には、血清タンパク質電気泳動、無血清κ/λ軽鎖アッセイ、尿タンパク質電気泳動(MMの患者の99%は、血液中の免疫グロブリン(Ig)クラス及び/又は尿中の軽鎖のうちの1つのレベルの増加を示す)、骨髄検査、又はX線解析の1つ又は複数によって行われる。MMは概して化学療法に反応するが、そのような治療が癌幹細胞を標的にしていないため、再発もよく見られる。
【0003】
Naraらは、近年、MMの腫瘍開始サブポピュレーション(SP)細胞すなわち癌幹細胞を標的にするいくつかの候補遺伝子を特定した。これらは、細胞周期及び有糸分裂に関連するタンパク質をコードするいくつかの遺伝子を含み、そのすべてがMM細胞においてアップレギュレートされることが見出された。これらには、cyclin B1(CCNB1)、cell division cycle 2(CDC2)、baculoviral IAP repeat-containing 5(BIRC5)、abnormal spindle homolog,microcephaly-associated(ASPM)、topoisomerase(DNA)II alpha 170kDa(TOP2A)、aurora kinase B(AURKB)、kinesin family member 11(KIF11)、及びkinesin family member 2c(KIF2C)が含まれる。
【0004】
同様に、Shaughnessyらは、多発性骨髄腫の70遺伝子高リスクプロファイルを報告している。この高リスクプロファイルにおいてアップレギュレートされている遺伝子のうちの2つは、CDC28 protein kinase regulatory subunit 1B(CKS1B)及びWEE1 homolog(S.pombe)(WEE1)である。
【概要】
【0005】
本発明の一実施形態は、個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、個体の身体から得られた生物学的試料から、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現のレベルを決定するステップと、少なくとも1つの遺伝子の発現のレベルが過剰発現を示す場合に、有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップと、を含む方法を提供する。
【0007】
さらに別の実施形態では、本発明は、個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、個体をMMと診断する又は既に診断しているステップと、有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップと、を含む方法を提供する。
【0008】
さらに別の実施形態では、本発明は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、又はWEE1の単独の又は主要な阻害剤としてのトリコスタチンA(TSA)と、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態では、TSAによる治療は1つ又は複数の他の多発性骨髄腫治療と組み合わされる。そのような他の治療は例えば小分子阻害を含み得る。
【詳細な説明】
【0010】
トリコスタチンA(trichostatin A)(TSA又は7-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-N-ヒドロキシ-4,6-ジメチル-7-オキソヘプタ-2,4-ジエンアミド)は抗真菌性抗生物質である。TSAの構造を下記式Iに示す。
【化1】
【0011】
出願人は、TSAが、これまでクラスI及びIIのヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤として知られていたが、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の発現を阻害することもできることを驚くべきことに見出した。したがって、TSAは、MMの治療において1つ又は複数のそのような遺伝子の主要な又は単独の阻害剤として使用され得る。
【0012】
ヒト網膜色素上皮細胞株をトリコスタチン又はビヒクルで24時間処理し、12490個の遺伝子をカバーする22238個のプローブセットに対する遺伝子発現を、Affymetrix社製機器を用いて生じさせた。CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の発現に対するトリコスタチンAの効果を下記表1に示し、各遺伝子の発現の顕著なダウンレギュレーションを示す。
【0013】
【0014】
これらの結果はMMの治療におけるTSAの使用を支持する。例えば、個体のMMは、有効量のTSAを個体に投与することによって治療され得、ここで、有効量とは、個体におけるCCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1のうちの1つ又は複数の発現を阻害するのに十分な量である。そのような量は、個体におけるHDAC活性を阻害するのに十分なものでもあり得る。本発明のいくつかの実施形態において、有効量は、約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日、例えば、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日、又は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である。
【0015】
いくつかの実施形態では、個体を治療することは、個体の身体から得られた生物学的試料から、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、又はWEE1のうちの1つ又は複数の発現のレベルを決定することをさらに含み得る。そのような決定は、任意の既知の又は後に開発される方法又は技術、例えば、定量的抗原-抗体相互作用、標識されたヌクレオチドプローブの使用等を含み得る。
【0016】
本発明の他の実施形態では、個体を治療することは、TSAを個体に投与する前に個体をMMと診断する又は既に診断していることを含み得る。そのような診断は、例えば、血清タンパク質電気泳動、無血清κ/λ軽鎖アッセイ、尿タンパク質電気泳動、骨髄検査、又はX線解析を含む、そのような診断をするための1つ又は複数の技術又は方法を含み得る。
【0017】
TSAは、治療される個体に医薬組成物の形態で投与され得る。本発明の種々の実施形態に従って使用される医薬組成物は、治療有効量のTSA若しくはTSAの活性代謝物又はその薬学的に許容可能な塩若しくは他の形態(例えば溶媒和物)を、1種又は複数種の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体とともに含む。「医薬組成物」という語は、医療用途における投与に適した組成物を指す。特定の患者に対する適切な剤形、用量、及び投与の経路の決定は、薬学及び医学の技術分野における通常の技能のレベルの範囲内にあることが理解されるべきである。
【0018】
投与は経口であり得るが、他の投与経路、例えば、非経口、経鼻、頬側、経皮、舌下、筋肉内、静脈内、直腸内、膣内等も採用され得る。経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を含む。そのような固体剤形において、化合物は少なくとも1種の不活性な薬学的に許容可能な賦形剤と混合されている。そのような賦形剤は、例えば、(a)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア、(c)保湿剤、例えばグリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯若しくはタピオカ澱粉、アルギン酸、一部の複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール、(h)吸着剤、例えば、カオリン及びベントナイト、及び(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、或いはそれらの混合物である。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形が緩衝剤を含んでもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤などの固体剤形は、コーティング及びシェル(例えば、腸溶性コーティング及び当技術分野で周知の他のもの)を用いて調製することもできる。固体剤形は乳白剤を含有してもよく、また、1種又は複数種の活性化合物を腸管のある特定の部分に遅延した様式で放出するような組成物でもあり得る。使用可能な包埋組成物の例はポリマー物質及びロウである。活性化合物はまた、上記賦形剤の1種又は複数種を適宜含むマイクロカプセル化形態のものであり得る。そのような固体剤形は、概して1%~95%(重量/重量)の活性化合物を含有し得る。ある実施形態では、活性化合物は5%~70%(重量/重量)の範囲である。
【0019】
経口投与用の固体組成物は、各用量が約0.1mg~約5000mgの活性成分を含有する単位剤形に製剤化することができる。「単位剤形」という語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位用量として適した物理的に離散した単位を指し、ここで、各単位は、治療期間にわたって所望の効果を生じるように計算された所定量の活性成分を所要の医薬担体とともに含有する。TSAは、例えば、賦形剤に加えて0.1~5000mgの活性成分を有するカプセルである単位剤形に製剤化することができる。
【0020】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容可能な乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルを含む。化合物又は組成物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有し得る。そのような不活性希釈剤は、例えば、水若しくは他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、又はそれらの物質の混合物である。そのような不活性希釈剤に加えて、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、香味料、及び芳香剤などの補助剤を含み得る。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、TSAは液体形態で提供され、個体に静脈内投与される。本発明のいくつかの実施形態によれば、TSAは持続又は制御放出製剤の形態で提供される。
【0022】
上で概略が記載された特定の実施形態と併せて本発明を説明したが、多くの代替形態、修正形態及び変更形態が当業者に明らかであり、又はそうでなければそれらが包含されることが意図されていることは明白である。すなわち、上述の本発明の実施形態は説明を意図したものであり、限定を意図したものではない。特許請求の範囲に規定された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得る。本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、科学論文及び他の公開された文献は、その開示の内容についてそれらの全体がここに組み入れられている。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
上で概略が記載された特定の実施形態と併せて本発明を説明したが、多くの代替形態、修正形態及び変更形態が当業者に明らかであり、又はそうでなければそれらが包含されることが意図されていることは明白である。すなわち、上述の本発明の実施形態は説明を意図したものであり、限定を意図したものではない。特許請求の範囲に規定された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得る。本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、科学論文及び他の公開された文献は、その開示の内容についてそれらの全体がここに組み入れられている。
本発明の実施形態は例えば下記実施形態1~42を含む。
実施形態1:
個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、
有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップ
を含む方法。
実施形態2:
前記有効量は、個体における少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるのに十分な量であり、少なくとも1つの遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:
前記有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態2に記載の方法。
実施形態4:
前記有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態2に記載の方法。
実施形態5:
前記有効量は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の各々の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態2に記載の方法。
実施形態6:
前記有効量は約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日である、実施形態1に記載の方法。
実施形態7:
前記有効量は約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である、実施形態1に記載の方法。
実施形態8:
前記有効量は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である、実施形態7に記載の方法。
実施形態9:
投与が経口投与を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態10:
投与が静脈内投与を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態11:
個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、
個体の身体から得られた生物学的試料から、個体における1つ又は複数の遺伝子の発現のレベルを決定するステップであって、1つ又は複数の遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、ステップと、
1つ又は複数の遺伝子の発現のレベルが過剰発現を示す場合に、有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップと、
を含む方法。
実施形態12:
前記有効量は、個体における少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるのに十分な量であり、少なくとも1つの遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、実施形態11に記載の方法。
実施形態13:
前記有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態12に記載の方法。
実施形態14:
前記有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態12に記載の方法。
実施形態15:
前記有効量は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の各々の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態12に記載の方法。
実施形態16:
前記有効量は約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日である、実施形態11に記載の方法。
実施形態17:
前記有効量は約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である、実施形態16に記載の方法。
実施形態18:
前記有効量は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である、実施形態17に記載の方法。
実施形態19:
投与が経口投与を含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態20:
投与が静脈内投与を含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態21:
個体における多発性骨髄腫(MM)を治療する方法であって、
個体をMMと診断する又は既に診断しているステップと、
有効量のトリコスタチンA(TSA)を個体に投与するステップと、
を含む方法。
実施形態22:
個体を診断する又は既に診断していることは、個体に対して少なくとも1つの診断検査を行う又は既に行っていることを含み、少なくとも1つの診断検査は、血清タンパク質電気泳動、無血清κ/λ軽鎖アッセイ、尿タンパク質電気泳動、骨髄検査、及びX線解析からなる群から選択される、実施形態21に記載の方法。
実施形態23:
前記有効量は、個体における少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるのに十分な量であり、少なくとも1つの遺伝子は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される、実施形態21に記載の方法。
実施形態24:
前記有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態23に記載の方法。
実施形態25:
前記有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態23に記載の方法。
実施形態26:
前記有効量は、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の各々の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態23に記載の方法。
実施形態27:
前記有効量は約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日である、実施形態21に記載の方法。
実施形態28:
前記有効量は約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である、実施形態27に記載の方法。
実施形態29:
前記有効量は約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日である、実施形態28に記載の方法。
実施形態30:
投与が経口投与を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態31:
投与が静脈内投与を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態32:
CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、又はWEE1のうちの少なくとも1つの単独の又は主要な阻害剤としてのトリコスタチンA(TSA)と、
薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、
を含む医薬組成物。
実施形態33:
有効量は、個体におけるCCNB1及びAURKBのいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態34:
有効量は、CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方の発現を減少させるのに十分な量である、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態35:
TSAが、CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1の単独の又は主要な阻害剤である、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態36:
経口投与用に製剤化されている、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態37:
静脈内投与用に製剤化されている、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態38:
TSAを約0.1mg~約5000mgの量で含む、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態39:
TSAの量が、約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日の用量に相当する、実施形態32に記載の医薬組成物。
実施形態40:
TSAの量が、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日の用量に相当する、実施形態39に記載の医薬組成物。
実施形態41:
TSAの量が、約0.5mg/kg/日~約5mg/kg/日の用量に相当する、実施形態40に記載の医薬組成物。
実施形態42:
TSAの量が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性を阻害するのに有効である、実施形態32に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子が過剰発現していると決定された個体における前記少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを減少させるための剤であって、トリコスタチンA(TSA)を有効成分として含有し、有効量のTSAが前記個体に投与されるように用いられる、剤。
【請求項2】
前記有効量は0.1mg/kg/日~10mg/kg/日である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記有効量は0.5mg/kg/日~5mg/kg/日である、請求項2に記載の剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つの遺伝子はCCNB1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つの遺伝子はAURKBである、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
前記少なくとも1つの遺伝子はCKS1Bである、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項7】
前記少なくとも1つの遺伝子はWEE1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
前記少なくとも1つの遺伝子は、
(a)CCNB1及びAURKBのいずれか又は両方、
(b)CKS1B及びWEE1のいずれか又は両方、又は
(c)CCNB1、AURKB、CDC2、BIRC5、KIF11、KIF2C、TOP2A、ASPM、CKS1B、及びWEE1のすべて
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【外国語明細書】