(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173416
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】ケーブルアンテナ、ゲートアンテナ、アンテナユニット、自動搬送棚、および無人レジ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/20 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
H01Q13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154564
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2021505116の分割
【原出願日】2020-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】518329103
【氏名又は名称】ヨメテル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡野 好伸
(72)【発明者】
【氏名】和田 康志
(72)【発明者】
【氏名】若林 信
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、周囲全体にわたって電磁波を放出することができる無線通信用リーダ装置を提供する。
【解決手段】本発明のケーブルアンテナは、高周波電流を供給する発振器が一端部に接続されるケーブルアンテナであって、ケーブル状に延びる内側導体と、内側導体を被覆する絶縁層と、絶縁層を被覆する外側導体と、を有し、ケーブルアンテナの長手方向における中間部には、少なくとも外側導体が除去された露出部が1つだけ形成され、ケーブルアンテナの先端部と、露出部における先端部側の端部と、の間の距離Lは、高周波電流の波長λの1/4の3以上の奇数倍であり、露出部の長手方向の幅寸法Gは、下記式(1)を満たしていることを特徴とするケーブルアンテナ。
λ/20≦G<λ/4・・・(1)
λ:高周波電流の波長(mm)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流を供給する発振器が一端部に接続されるケーブルアンテナであって、
ケーブル状に延びる内側導体と、
前記内側導体を被覆する絶縁層と、
前記絶縁層を被覆する外側導体と、を有し、
前記ケーブルアンテナの長手方向における中間部には、少なくとも外側導体が除去された露出部が1つだけ形成され、
前記ケーブルアンテナの先端部と、前記露出部における先端部側の端部と、の間の距離Lは、前記高周波電流の波長λの1/4の3以上の奇数倍であり、
前記露出部の長手方向の幅寸法Gは、下記式(1)を満たしていることを特徴とするケーブルアンテナ。
λ/20≦G<λ/4・・・(1)
λ:高周波電流の波長(mm)
【請求項2】
内側導体、絶縁層、外側導体、および外被を有する同軸ケーブルから、外被、外側導体、および絶縁層が同じ幅寸法だけ除去されている請求項1に記載のケーブルアンテナ。
【請求項3】
複数の屈曲点が形成されながら、屈曲点を挟む両側が互いに並行とならないように屈曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブルアンテナ。
【請求項4】
4つの辺の長さが全て、前記波長λの半分となる四角形の開口部を1つ以上構成することを特徴とする請求項1に記載のケーブルアンテナ。
【請求項5】
前記四角形は正方形であることを特徴とする請求項4に記載のケーブルアンテナ。
【請求項6】
前記開口部を2つ以上構成し、
互いに隣り合う前記四角形それぞれの対角線の一方同士が、平面視で同一直線状に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のケーブルアンテナ。
【請求項7】
導電性の反射板と、
前記反射板に対して、前記反射板の表裏面と直交する直交方向のうちの一方向側に積層された非導電性の第1スペーサ部材と、
前記第1スペーサ部材に対して、前記直交方向のうちの一方向側に積層された請求項4から6のいずれか1項に記載のケーブルアンテナと、
前記ケーブルアンテナに対して、前記直交方向のうちの一方向側に積層された非導電性の第2スペーサ部材と、
前記第2スペーサ部材に対して、前記直交方向のうちの一方向側に積層された導電性の寄生素子と、を備えていることを特徴とするゲートアンテナ。
【請求項8】
前記反射板は幅方向と長手方向に延びる矩形状を成し、
前記寄生素子は、
前記幅方向に延びるとともに、前記長手方向に間隔をあけて配置された複数の第1部材と、
前記長手方向に延びるとともに、複数の前記第1部材の幅方向の端部同士を、長手方向に沿って片側ずつ交互に接続する複数の第2部材と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載のゲートアンテナ。
【請求項9】
前記ケーブルアンテナは、前記開口部を3つ以上構成し、
前記ケーブルアンテナの長手方向の両端に位置する四角形と、その長手方向に隣り合う四角形と、の接続部が位置する部分を起点として、長手方向の外側の部分が立設するように折り曲げて構成されることを特徴とする請求項7に記載のゲートアンテナ。
【請求項10】
請求項9に記載のゲートアンテナを複数有し、
複数の前記ゲートアンテナは、それぞれの姿勢を互いに異ならせて配置されていることを特徴とするアンテナユニット。
【請求項11】
請求項4に記載のケーブルアンテナを有するゲートアンテナ。
【請求項12】
請求項11に記載のゲートアンテナと、自動搬送ロボットと、を有する自動搬送棚。
【請求項13】
請求項7に記載のゲートアンテナを有する無人レジ。
【請求項14】
請求項9に記載のゲートアンテナを有する無人レジ。
【請求項15】
請求項11に記載のゲートアンテナを有する無人レジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルアンテナ、ゲートアンテナ、アンテナユニット、自動搬送棚、および無人レジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、社員証等のIDカードや、在庫管理用のタグに用いられる無線通信タグとして、RFID(radio frequency identifier)システムを用いた非接触型の無線通信システムが知られている。
このような無線通信システムとして、下記特許文献1には、ハンディタイプの無線通信用リーダ装置から、電磁波を無線通信タグに向けて放出するとともに、無線通信タグから放出された電磁波を、無線通信用リーダ装置で読み取る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなハンディタイプの無線通信用リーダ装置では、放出する電磁波に指向性がある場合があり、無線通信用リーダ装置の周囲全体にわたって電磁波を放出することに改善の余地があった。また、ハンディタイプの無線通信用リーダ装置では、構造が比較的複雑になる傾向があった。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成により、周囲全体にわたって電磁波を放出することができる無線通信用リーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のケーブルアンテナは、高周波電流を供給する発振器が一端部に接続されるケーブルアンテナであって、ケーブル状に延びる内側導体と、内側導体を被覆する絶縁層と、絶縁層を被覆する外側導体と、を有し、ケーブルアンテナの長手方向における中間部には、少なくとも外側導体が除去された露出部が形成されている。
【0007】
また、ケーブルアンテナの先端部と、露出部における先端部側の端部と、の間の距離Lは、高周波電流の波長λの1/4の奇数倍であってもよい。
【0008】
また、露出部の長手方向の幅寸法Gは、下記式(1)を満たしてもよい。
λ/20≦G<L・・・(1)
λ:高周波電流の波長(mm)、L:ケーブルアンテナの先端部と、露出部における先端部側の端部と、の間の距離L(mm)
【0009】
また、複数の屈曲点が形成されながら、屈曲点を挟む両側が互いに並行とならないように屈曲していてもよい。
【0010】
また、4つの辺の長さが全て、波長λの半分となる四角形の開口部を1つ以上構成してもよい。
【0011】
また、四角形は正方形であってもよい。
【0012】
また、開口部を2つ以上構成し、互いに隣り合う四角形それぞれの対角線の一方同士が、平面視で同一直線状に並ぶように配置されてもよい。
【0013】
また、本発明のゲートアンテナは、導電性の反射板と、反射板に対して、反射板の表裏面と直交する直交方向のうちの一方向側に積層された非導電性の第1スペーサ部材と、第1スペーサ部材に対して、直交方向のうちの一方向側に積層された請求項5から6のいずれか1項に記載のケーブルアンテナと、ケーブルアンテナに対して、直交方向のうちの一方向側に積層された非導電性の第2スペーサ部材と、第2スペーサ部材に対して、直交方向のうちの一方向側に積層された導電性の寄生素子と、を備えている。
【0014】
また、反射板は幅方向と長手方向に延びる矩形状を成し、寄生素子は、幅方向に延びるとともに、長手方向に間隔をあけて配置された複数の第1部材と、長手方向に延びるとともに、複数の第1部材の幅方向の端部同士を、長手方向に沿って片側ずつ交互に接続する複数の第2部材と、を備えてもよい。
【0015】
また、ケーブルアンテナは、前記開口部を3つ以上構成し、ケーブルアンテナの長手方向の両端に位置する四角形と、その長手方向に隣り合う四角形と、の接続部が位置する部分を起点として、長手方向の外側の部分が立設するように折り曲げて構成されてもよい。
【0016】
また、本発明のアンテナユニットは、前述のゲートアンテナを複数有し、複数のゲートアンテナは、それぞれの姿勢を互いに異ならせて配置されてもよい。
【0017】
また、本発明のゲートアンテナは、前述のケーブルアンテナを有する。
【0018】
また、本発明の自動搬送棚は、前述のゲートアンテナと、自動搬送ロボットと、を有する。
【0019】
また、本発明の無人レジは、前述のゲートアンテナを有している。
【発明の効果】
【0020】
本発明のケーブルアンテナによれば、長手方向の中間部に、外側導体が除去された露出部が形成されている。このため、露出部において、外側導体から電磁波が発生しないことで、内側導体から発生する電磁波が相殺されることなく、露出部から外部に向けて放出されることになる。これにより、ケーブルアンテナの周囲に配置された無線通信タグと、ケーブルアンテナと、の間での通信が可能となる。このようにして、簡易な構成により、ケーブルアンテナの周囲全体にわたって電磁波を放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るケーブルアンテナの外観図である。
【
図2】
図1に示すケーブルアンテナの断面構造を説明する図である。
【
図3】
図1に示すケーブルアンテナの先端側を示す図である。
【
図4】
図3に示すケーブルアンテナの先端側の拡大図である。
【
図5】検証試験における損失係数の評価結果を示す図である。
【
図6】検証試験における電流分布の評価結果を示す図である。
【
図7】
図1に示すケーブルアンテナに流れる電流の波形を示す図である。
【
図8】
図1に示すケーブルアンテナを配置して複数の開口部を形成した際の平面図である。
【
図9】
図8に示すケーブルアンテナに電流を流した際の状態を説明する図である。
【
図10】本発明に係るゲートアンテナにおける(a)斜視模式図、(b)正面模式図である。
【
図11】本発明のゲートアンテナの変形例の斜視模式図である。
【
図12】本発明のゲートアンテナの使用例における(a)1つでの使用例を示す図、(b)2つでの使用例を示す図、(c)3つでの使用例を示す図である。
【
図13】本発明のケーブルアンテナの配置を変更した状態を説明する図である。
【
図15】本発明の自動搬送棚を使用する際の動きを説明する第1図である。
【
図16】本発明の自動搬送棚を使用する際の動きを説明する第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るケーブルアンテナ1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るケーブルアンテナ1は、無線通信タグ2に搭載された無線ICチップ3と、電磁波の授受による無線通信を行う通信リーダの一部を構成する。
図1は、本実施形態に係るケーブルアンテナ1の外観図である。
【0023】
このような無線通信として、本実施形態では、周波数が300MHz~3GHzといったUHF帯の電磁波を用いたRFIDシステムを例に挙げて説明する。
無線ICチップ3としては、RFIDシステムにおいて一般的に用いられるものを採用することができる。
【0024】
ケーブルアンテナ1の一端部には、高周波電流を供給する発振器4が接続される。
ケーブルアンテナ1は、複数の屈曲点1Aが形成されながら、屈曲点1Aを挟む両側が互いに並行とならないように屈曲している。図示の例では、ケーブルアンテナ1は、いわゆる九十九折状態となっている。
図1では、ケーブルアンテナ1の周囲に、複数の無線通信タグ2が、無作為な向きに配置されている。
【0025】
図2に示すように、ケーブルアンテナ1は、内側導体11と、絶縁層12と、外側導体13と、を有している。
図2は、ケーブルアンテナ1の断面構造を説明する図である。内側導体11および外側導体13には、
図2において直線矢印で示すように、互いに逆行する電流が流れている。発振器4は、内側導体11および外側導体13それぞれと接続され、内側導体11および外側導体13が、ひとつの連続した電流の経路を構成している。
【0026】
内側導体11は、ケーブル状に延びる導線であり、材質としては例えば軟銅線等を採用することができる。なお、内側導体11の材質は、導線として使用できる材質であれば、任意に変更することができる。
【0027】
絶縁層12は、内側導体11を径方向の外側から被覆する絶縁部材であり、材料としては例えば発泡ポリウレタン等を採用することができる。なお、絶縁層12の材質は、絶縁部材として使用できる材質であれば、任意に変更することができる。
【0028】
外側導体13は、絶縁層12を径方向の外側から被覆する導電性の導体であり、材料としてはアルミニウム箔やアルミニウム製の編組体等を採用することができる。なお、外側導体13の材質は、導体として使用できる材質であれば、任意に変更することができる。外側導体13は、絶縁性の外被14により被覆されている。
【0029】
そして
図3に示すように、ケーブルアンテナ1の長手方向における中間部には、少なくとも外側導体13が除去された露出部15が形成されている。
図3は、ケーブルアンテナ1の先端側を示す図である。
図示の例では、露出部15において、外側導体13とともに絶縁層12が除去され、内側導体11が露出している。すなわち、露出部25とは、外側導体13よりも径方向の内側にある部分が露出している部分という意味である。
【0030】
露出部15において、外側導体13および絶縁層12は、ケーブルアンテナ1の中心軸線周りに周回する周方向の全周にわたって除去されている。
図3に示すように、ケーブルアンテナ1のうち、露出部15よりも先端部側にある部分は、露出部15から真っすぐ延びている。露出部15は、ケーブルアンテナ1に一つだけ設けられている。
【0031】
このようなケーブルアンテナ1として、いわゆる同軸ケーブルと呼ばれる電気通信に使われる被覆電線に追加工を施して用いることができる。
同軸ケーブルは、
図2に示す内部構造をしており、同軸ケーブルの外側導体を所定の幅寸法Gだけ除去することで、本発明のケーブルアンテナ1を得ることができる。
例えば、同軸ケーブルから外被14を所定の幅寸法だけ除去し、その後に外側導体13を同じ幅寸法だけ除去する。最後に絶縁層12を同じ幅寸法だけ除去することで、ケーブルアンテナ1が得られる。なおここで、幅寸法とは長手方向の寸法を指す。
【0032】
一般に、同軸ケーブルでは、内側導体11に流れる電流により発生する磁界と、外側導体13に流れる電流により発生し、かつ内側導体11により発生する磁界とは逆向きとなる磁界と、が互いに相殺している。このため、外部に電磁波エネルギーを放出することなく、効率的に信号伝送できるように構成されている。
【0033】
そして
図4に示すように、同軸ケーブルの外側導体13の一部を除去すると、除去される前の状態で相殺されていた外側導体13の周辺の周回磁界と、内側導体11の周辺の周回磁界と、のバランスが崩れることとなる。ここで、
図4は、ケーブルアンテナ1の先端側の拡大図である。
これにより、露出部15では内側導体11の周辺の周回磁界が相殺されず、ケーブルアンテナ1全体としては、露出部15にのみ、円環状の磁界が発生したのと同じ状態となる。
【0034】
この状態は、実際のケーブルアンテナ1と発振器4との位置関係に依らず、露出部15に電源が接続され、その前後に電圧が印加されるのと同等の働きをする。このため、
図3に示すようにケーブルアンテナ1全体には、先端部が少なく、露出部15で多くなるように電流が分布する。電流は、ケーブルアンテナ1の外被14をつたって長手方向に流れることとなる。
【0035】
ここで、
図4に示すように、ケーブルアンテナ1の先端部と、露出部15における先端部側の端部と、の間の距離L(mm)は、高周波電流の波長λの1/4の奇数倍とすることが好ましい。これにより、電流の振幅を大きくできるからである。また、使用するケーブルアンテナ1全体の直径に応じて、露出部15の幅寸法Gを調節すれば、放射電界強度を調整可能することができる。
【0036】
ここで、露出部15の長手方向の幅寸法Gは、下記式(1)を満たしている。
λ/20≦G<L・・・(1)
この式において、λは高周波電流の波長(mm)を示し、Lは、前述の通り、ケーブルアンテナ1の先端部と、露出部15における先端部側の端部と、の間の距離L(mm)を指している。
【0037】
露出部15の長手方向の幅寸法Gがあまりにも小さい場合には、露出部15を形成した効果が得られにくくなることが懸念される。
露出部15の幅寸法Gが微小である場合には、物理的には外側導体13が除去されていても、露出部15を長手方向に挟む外側導体13同士の間が、電気的には導通している状態となるためである。このため、式(1)のλ/20≦Gが要求される。
【0038】
また、露出部15の長手方向の幅寸法Gが大きすぎる場合には、外部に放出される電磁波は弱くなることが懸念される。露出部15の寸法が大きいことで、露出部15で発生した円環状の磁界が発散し、その影響が小さくなるためである。このため、式(1)のG<Lが要求される。
【0039】
(検証試験)
次に、本実施形態に係るケーブルアンテナ1におけるアンテナ入力特性の評価結果について説明する。この試験では、ケーブルアンテナ1における先端部から露出部15までの距離Lを変更した場合におけるアンテナ特性の変化を評価した。
【0040】
まず、第1検証試験では、露出部15から先端部までの距離L=10mm、80mm、160mm、240mmの4つのサンプルについて、反射損失S 11の推移を評価した。
ここで、反射損失S 11とは、ケーブルへの入力電力に対するケーブルから電源への反射電力の比をデシベル表示した値であり、下記式(2)により算出され、その値が小さいほど、ケーブルアンテナ1の効率が良いとされる値である。
【数1】
そしてこの検証試験では、周波数が850MHzから1000MHzの電磁波を入力した。その結果として、反射損失S 11の推移を
図5に示す。
【0041】
図5に示すように、L=10mmおよびL=160mmでは、S 11が大きな値を示している。これは、電源からケーブルに電力を送り込む場合、反射電力が極めて大きいことを意味している。この場合、電力が効率的にケーブルアンテナ1に注入されないことにより、ケーブルアンテナ1からの電磁波放射も減退していることが確認できる。
【0042】
一方、L=80mmおよびL=240mmでは、S 11が小さな値を示している。この場合、入力電力が効率的にケーブルアンテナ1に注入され、ケーブルアンテナ1からの電磁波放射も増進されていることが確認できる。ここで、L=80mmは、顕著にS 11が減少した周波数において、電磁波の波長λのほぼ1/4に相当する。したがって、Lを1/4の奇数倍にするとケーブルアンテナ1と発振器4の整合状態は良好となることが確認できる。ここで、整合状態が良好であるとは、インピーダンスマッチングが取れるという意味である。
【0043】
次に、第2検証試験では、露出部15から先端部までの距離Lを変化させた場合の、ケーブルアンテナ1上に誘導する電流の分布を評価した。評価サンプルは、第1検証試験と同様にL=10mm、80mm、160mm、240mmの4つである。その結果として、ケーブル上に誘導する電流の分布を
図6に示す。なお、
図6では、Lの大きさによって変動する誘導電流の最大振幅を1とした場合において、ケーブルアンテナ1の先端部からの距離Dにおける相対的な電流分布が示されている。
【0044】
図6に示すように、Lをλ/4の奇数倍にすると、ケーブルアンテナ1と発振器4との整合状態が改善するばかりでなく、電磁波放射の源となる誘導電流も大きくなることが確認された。このことから、ケーブルアンテナ1の先端部と、露出部15における先端部側の端部と、の間の距離Lを、使用したい電磁波の波長λの1/4の奇数倍に設定することが望ましいと考えられる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るケーブルアンテナ1によれば、長手方向の中間部に、外側導体13が除去された露出部15が形成されている。このため、露出部15において、外側導体13から電磁波が発生しないことで、内側導体11から発生する電磁波が相殺されることなく、露出部15から外部に向けて放出されることになる。これにより、ケーブルアンテナ1の周囲に配置された無線通信タグ2と、ケーブルアンテナ1と、の間での通信が可能となる。このようにして、簡易な構成により、ケーブルアンテナ1の周囲全体にわたって電磁波を放出することができる。
【0046】
そして、本発明のケーブルアンテナ1では、
図1のような構成で配置した場合には、ケーブル総延長で数mから十数m程度の沿線で通信可能となり、無線通信タグ2の識別・管理に使用した場合、極めて低コストのRFIDタグシステムの構築を可能にすると考えられる。
【0047】
また、ケーブルアンテナ1の先端部と、露出部15における先端部側の端部と、の間の距離Lが、高周波電流の波長λの1/4の奇数倍となっているので、露出部15から放出される電流の振幅を大きくすることができる。
また、露出部15の長手方向の幅寸法Gが、式(1)を満たしているので、露出部15から実効的に電磁波を放出させることができる。
【0048】
また、ケーブルアンテナ1が、九十九折状態に配置され、複数の屈曲点1Aが形成されながら、屈曲点1Aを挟む両側が互いに並行とならないように屈曲している。これにより、ケーブルアンテナ1の周辺には、露出部15に発生した円環状磁界によって励振された電流による電磁波が放射される。
【0049】
このとき放射される電磁波は、ケーブルアンテナ1近傍ではある程度のレベルに達するが、ケーブルアンテナ1から離れた位置では、例えばハンディリーダのように、特定の方向に効率的に電磁波を放射するためのアンテナに信号を注入した場合と異なり、微弱となる。
【0050】
一方、ケーブルアンテナ1から発生する磁界(電界)は一律とはならない。このため、ケーブルアンテナ1近傍に無作為な向きで配置された無線通信タグ2それぞれから発生する電磁波の向きにばらつきがあっても、そのばらつきを吸収し、ケーブルアンテナ1近傍に配置された多数の無線通信タグ2からの情報を、包括的に識別することが期待される。
そこで、このような特性を持つケーブルアンテナ1を、例えば商品棚などに配置し、商品棚に陳列された商品に無線通信タグ2を付した場合には、効率的な商品管理に供することが期待される。
【0051】
ここで、
図7は、
図6に示すケーブルアンテナ1上の電流を、便宜上、区間ごと(#1、#2・・・)に色分けした図である。
図7に示すように、ケーブルアンテナ1に流れる実効的な電流分布は正弦波状となり、ケーブル上で周期的に変化する。そして、実効的な電流の向きは、時間とともに変化するが、ある瞬間では奇数番号区間または偶数番号区間では、実効的な電流の方向が一致することになる。
【0052】
次に、ケーブルアンテナ1により構成されるゲートアンテナ50(
図10参照)について説明する。まず、ゲートアンテナ50に用いられるケーブルアンテナ1の形状について
図8を用いて説明する。
図8は、ケーブルアンテナ1を配置して複数の開口部30を形成した際の平面図である。
【0053】
図8に示すように、本発明のゲートアンテナ50は、ケーブルアンテナ1により複数の四角形の開口部30を形成するように屈曲されて配置されている。
詳述すると、ケーブルアンテナ1は、互いに隣り合う四角形それぞれの対角線の一方同士が、平面視で同一直線状に並ぶように構成されている。
【0054】
そして、図示の例では、ケーブルアンテナ1により構成される四角形は、4つの辺の長さが全て同じ長さとなる正方形状の開口部30となっている。四角形の辺の長さ(
図7に示す寸法S)は、波長λの半分、すなわち、電流の振幅が極小となる位置となっている。
なお、図示の例では開口部30は正方形状となっているが、4つの辺の長さが全て同じ長さであれば、菱形状であってもよい。
【0055】
また、四角形は、4つの辺の長さが全て同じではない、長方形や平行四辺形であってもよい。また、開口部30の形状は、四角形に限られず、電流分布形状が変移しない配置であれば、三角形や円形等でもよい。
【0056】
このようにケーブルアンテナ1が配置されると、正方形の開口部30を形成するケーブルの隣接辺同士は、互いに平行にならないので、互いの電磁干渉は小さく抑えられる。
このため、開口部30における各辺の電流の向きが、ケーブルアンテナ1を直線上に配置した場合と、各辺単位で同じになる。
【0057】
一方、互いに並行に並ぶ辺同士は、必ず
図7に示す偶数番号区間または奇数番号区間(
図7における白抜き正弦波同士または黒塗り正弦波同士)の組み合わせとなるため、互いに補完の関係が成立し、正方形の開口部30の配列に沿って、安定的に強い電磁波放射を作り出すことが可能となる。
【0058】
また、開口部30の各辺からの電磁波の放射は、概ね互いに直交する形となるため、
図8の紙面上に平行におかれた小型アンテナや無線タグがどの方向を向いていても、安定的な通信が可能となることが期待される。
なお、
図8は正方形の開口部30が4つの場合の例であるが、正方形の開口部30の数量は、1つ以上であれば任意に選択することができる。
【0059】
さらに、本発明のケーブルアンテナ1による正方形の開口部30を流れる電流による電磁波放射を詳細に説明する。
図9に示すように、正方形の開口部30の対向する2辺をA-A’で参照した場合の電流と、これによる電磁波放射の様子は、吹き出し部分に示す断面図のようになる。
この断面図において、実線は左側の電流により生じる電磁波の放射、破線は、右側の電流により生じる電磁波の放射を示している。
【0060】
図9(a)に示すように、A-A’の各々から上方(正方形の開口部30面で考えれば、紙面に直角に裏面から表面、または表面から裏面の方向)へは互いに補完関係を保って放射される。
【0061】
一方吹き出し部分(b)に示すように、AからA’、またはその逆の方向(正方形の開口部30面に対して平行な方向)では、1辺の長さ、すなわち、AとA’との間の距離が、λ/2程度となっている。
このため、仮にA’側から放射された正弦波状の電磁波はAの位置にたどりつく頃には位相が180°変移し、Aから放射された正弦波状電磁波と逆位相となり、相殺関係が成立する。
【0062】
そしてケーブルアンテナ1により、
図8、
図9のような正方形の開口部30の配列を形成した場合、紙面に直角な方向には良好な放射が形成されるが、紙面に平行な放射は抑圧される。
例えば、商品棚等に、このケーブルアンテナ1による正方形の開口部30の配列を設置した場合、正方形の開口部30の配列面上に平行に、任意の方向でおかれた無線タグであれば良好に識別可能となる。
【0063】
一方、正方形の開口部30の配列の外に置かれた無線タグは、たとえ同じ棚に置かれていても識別困難となるため、棚上の無線タグ付き商品の収納位置判定に有益な特性を発揮させることが可能となる。
【0064】
次に、このように開口部30が配置されたケーブルアンテナ1を備えたゲートアンテナ50の構成について説明する。
ケーブルアンテナ1による開口部30の配列からの電磁波の放射は、基本的に開口面と直交する直交方向のうちの両方向に向けた放射となる。これを商品棚等に適用する場合、棚上の無線タグ付き商品のみを識別するには、商品が位置する片方のみの放射であることが望ましい。
このため、
図10に示すように、ケーブルアンテナ1による開口部30の配列の直下に反射板51を配置することが有効である。
【0065】
すなわち、
図10に示すように、本発明のゲートアンテナ50では、導電性の反射板51と、ケーブルアンテナ1と、導電性の寄生素子52と、が反射板51の表裏面と直交する直交方向に積層されている。
また、
図10(b)に示すように、反射板51とケーブルアンテナ1との間には、非導電性の第1スペーサ部材53が直交方向に挟まれて積層されている。また、ケーブルアンテナ1と寄生素子52との間には、非導電性の第2スペーサ部材54が直交方向に挟まれて積層されている。
なお、
図10(a)および
図11では、第1スペーサ部材53および第2スペーサ部材54の図示を省略している。
【0066】
反射板51は、幅方向と長手方向に延びる矩形状を成している。
第1スペーサ部材53は、反射板51に対して、直交方向のうちの一方向側に積層された非導電性の板状部材である。
ケーブルアンテナ1は、第1スペーサ部材53に対して直交方向のうちの一方向側に積層されている。このように、第1スペーサ部材53が設けられていることで、ケーブルアンテナ1は、反射板51に直接接触することなく、反射板51に対して直交方向に間隔を開けて配置されている。
【0067】
第2スペーサ部材54は、ケーブルアンテナ1に対して、直交方向のうちの一方向側に積層された非導電性の板状部材である。
第2スペーサ部材54が設けられていることで、ケーブルアンテナ1は、寄生素子52に直接接触することなく、ケーブルアンテナ1に対して直交方向に間隔を開けて配置されている。
【0068】
寄生素子52は、第2スペーサ部材54に対して、直交方向の一方向側に積層されている。寄生素子52は、第1部材52Aと第2部材52Bとにより構成されている。
第1部材52Aは、幅方向に延びるとともに、長手方向に間隔をあけて複数配置されている。
第2部材52Bは、長手方向に延びるとともに、複数の第1部材52Aの幅方向の端部同士を接続している。第2部材52Bは、複数の第1部材52Aを長手方向に沿って片側ずつ交互に接続している。
【0069】
ここで、寄生素子52の役割について説明する。
ケーブルアンテナ1による開口部30の配列と反射板51を組み合わせた場合、開口部30の配列形成に関わらない線状ケーブル部と反射板51との相互作用によって、放射される電界強度の均等性が崩れることがある。これにより、反射板51の長手方向、または短辺方向に偏った放射が形成される場合が生じる。
【0070】
このため、
図10(a)、
図10(b)に示すように、ケーブルアンテナ1とは電気的に接触しない導体で構成された寄生素子52を近接させる。
これにより、放射電界強度の均等性を修正し、さらに片面放射を補強することが可能となる。放射電界は、
図10(a)に示す第2部材52Bの寸法比(M1:M2)によって、反射板51の長手方向の放射が強化するか、または短辺方向の放射が強化するかを調整可能となる。
【0071】
ケーブルアンテナ1による開口部30の配列形成と反射板51、さらに寄生素子52等の積層により構成されたゲートアンテナ50では、反射板51と平行におかれた無線タグは、どの方向を向いていても概ね識別可能となる。しかし、反射板51と直角におかれた無線タグでは識別が困難となることが懸念される。
【0072】
この場合には、
図11に示すようにケーブルアンテナ1本来の柔軟性を生かし、ゲートアンテナ50Bの端部を跳ね上げるように成形することが考えられる。このようにすれば、3次元的に任意の方向を向く無線タグを安定的に識別可能となる。なお、
図11では、寄生素子52、第1スペーサ部材53、および第2スペーサ部材54の図示を省略している。
【0073】
すなわち、変形例に係るゲートアンテナ50Bは、ケーブルアンテナ1の長手方向の両端に位置する四角形と、その長手方向に隣り合う四角形と、の接続部が位置する部分を起点として、長手方向の外側の部分が立設するように折り曲げて構成されている。これにより、ゲートアンテナ50Bは、正面視でU字型を成している。
【0074】
そして、このようなゲートアンテナ50Bを用いて、
図12(a)に示すように、無線タグ付き商品が収納された買い物かご100やコンテナを、板状電磁放射素子の端部を跳ね上げることで成形されたU字型の受け皿部分に置くことで、タグの貼り付け方向の差異によらず、識別し管理可能となる。すなわち、ゲートアンテナ50Bを有する無人レジでは、精度よく、買い物かご100の内部の商品を検出することができる。
また、無人レジに用いるゲートアンテナとしては、前述したU字型を成していない平板状に形成されたゲートアンテナ50であってもよい。この場合にも、同様の効果を奏することができる。
【0075】
また、このようなゲートアンテナ50Bを複数用いて、アンテナユニットを構成することができる。
図12(b)に示すように、本発明のアンテナユニットは、ゲートアンテナ50Bを複数有し、複数のゲートアンテナ50Bは、それぞれの姿勢を互いに異ならせて配置されている。
すなわち、U字型の受け皿部分は、
図12(b)に示すように、平面視でU字型となる向きで使用してもよい。
【0076】
また、
図12(b)に示すように、2つのU字型の受け皿部分が、互いに逆の向きになって対向するように配置する。そして、その空洞部分に買い物かご100やコンテナを投入することで、四方から電磁波を放射し、買い物かご100やコンテナ内部の無線タグ付き商品の識別確度を向上させることができる。
【0077】
また、
図12(c)に示すようにU字型の受け皿部分を3つ以上利用し、底部、前左右の5方向から電磁波放射することで、その空洞に挿入された買い物かご100やコンテナに収納された無線タグ付き商品の識別確度を向上させてもよい。
そして、本発明のゲートアンテナ50、50Bでは、従来のアンテナと比較して、構成がシンプルになるので、製造コストを大幅に抑えることができる。
【0078】
このように、ケーブルアンテナ1を折り曲げて、正方形の開口部30の配列を形成する場合、白い正弦波状電流の組み合わせによって形成される放射電界(同図中の白抜き矢印)と、黒塗り正弦波状電流の組み合わせによって形成される放射電界(同図中の黒塗り矢印)は互いに直交する形となる。そして、ケーブルアンテナ1の屈曲部を概ねλ/2程度にすると、これらは、ほぼ同じタイミングで振動的に変化する。
【0079】
一方、
図13に示すように、ケーブルアンテナ1の屈曲周期をさらに0.1λ程度延長すると、すなわち、正方形の1辺が0.6λとなるようにすると、白抜き矢印の振動タイミングに対し、黒塗り矢印の振動タイミングは0.2周期程度遅れる形となる。
これは位相角に換算すると90°に近い差異となるため、白抜き矢印で示される電界と黒塗り矢印で示される電界の合成電界は時間的にも空間的にも旋回する電界を構成することになる。
【0080】
これにより、任意の方向を向く無線タグを識別するのに優位であるとして、RFIDシステムで一般に使用される識別用アンテナと同じ円偏波を放射可能なアンテナを形成可能となる。ケーブルアンテナ1による開口部30の配列は円偏波を形成する都合上、回転対称であることが望まれるが、正方形で以外の多角形や円形でもよい。
【0081】
なお、上述の実施形態は、本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に対して種々の変形を行ってもよい。
【0082】
例えば、上記実施形態では、
図1に示すようにケーブルアンテナ1が九十九折状態となっている構成を示したが、このような態様に限られない。
ケーブルアンテナ1を、例えば平面視で円形状をなすループ状に配置してもよいし、並行する2辺が一定の距離を置くように、平面視で矩形状をなすように配置してもよい。
また、ケーブルアンテナ1をらせん状に配置した場合には、立体的に配置した無線通信タグ2に対して、効率的に無線通信を行うことができる。
【0083】
また、上記実施形態では、ケーブルアンテナ1として、UHF帯の電磁波を用いたRFIDシステムを例に挙げて説明したが、このような態様に限られない。無線通信として使用する電磁波の周波数は任意に変更することができる。
【0084】
また、上記実施形態では、露出部15において、外側導体13とともに絶縁層12が除去されている構成を示したが、このような態様に限られない。露出部15において、絶縁層12を残したまま、外側導体13のみが除去されてもよい。また、露出部15は屈曲点1Aに設けられてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、ゲートアンテナ50が、反射板51と、第1スペーサ部材53と、ケーブルアンテナ1と、第2スペーサ部材54と、寄生素子52とを備えて構成を説明したが、このような態様に限られない。すなわち、ゲートアンテナは、反射板51と、第1スペーサ部材53と、第2スペーサ部材54と、寄生素子52と、を備えていなくてもよい。
【0086】
具体的には、廉価版のゲートアンテナとして、本発明のケーブルアンテナ1を、互いに隣り合う四角形それぞれの対角線の一方同士が、平面視で同一直線状に並ぶように配置するとともに、このケーブルアンテナの周りを保護材で覆った構成を採用してもよい。このような構成であっても、充分にゲートアンテナとしての機能を発揮することができる。
そして、このような廉価版のゲートアンテナを、無人レジに採用することで、無人レジの製造コストを抑えることができる。
【0087】
次に、ケーブルアンテナ1の応用例について
図14を用いて説明する。
図14は、本発明の自動搬送棚60の斜視図である。自動搬送棚60は、倉庫内を自動で搬送される棚である。
図14に示すように、自動搬送棚60は、棚本体61と、自動搬送ロボット62(AGV:Automatic Guided Vehicle)と、ケーブルアンテナ1と、を備えている。棚本体61には、上下方向および左右方向に複数の棚部63が並ぶように設けられている。棚部63の内部には、各種の商品や備品が収容される。
【0088】
自動搬送ロボット62は、内部電源を有するとともにAI(人工知能)が塔載され、棚本体61が設置された倉庫内を自動制御により走行する。そして、図示の例では自動搬送ロボット62は、棚の下方に配置されている。この自動搬送ロボット62の動きについて、
図15および
図16を用いて説明する。
図15は、自動搬送棚60を使用する際の動きを説明する第1図である。
図16は、自動搬送棚60を使用する際の動きを説明する第2図である。
【0089】
図15に示すように、自動搬送ロボット62は、ユーザが所望する商品が保管された棚の下方まで走行する。次に、自動搬送ロボット62は、その上部を上方に向けて突き出すことで、棚本体61の底部を上方に向けて押し上げる。これにより、棚本体61の脚部が倉庫の床から少し浮き上がる。
この状態で、
図16に示すように、自動搬送ロボット62が棚本体61とともに、ユーザが位置するピックアップスペースまで移動する。
そして、ユーザが所望する商品を棚本体61の棚部63から取出す。
【0090】
その後、自動搬送ロボット62は、棚本体61を既定の保管位置まで案内し、棚本体61の上方への押し上げを解除する。これにより、棚本体61は既定の保管位置に載置される。そして、自動搬送ロボット62は、既定の充電ステーションに戻り、充電される。
【0091】
そして、
図14に示すように、ケーブルアンテナ1は、自動搬送棚60に設けられた複数の棚部63の底部にそれぞれ設けられている。
複数の棚部63それぞれの底部にケーブルアンテナが配置され、棚部63に保管される商品にRFIDタグを取り付けることで、それぞれの棚部63に商品が保管されているかどうかを自動で瞬時に把握することができる。
【0092】
ケーブルアンテナ1は、前述した廉価版のゲートアンテナの構造を成してもよい。複数の棚部63の底部にそれぞれ設けられた複数のケーブルアンテナ1の端部は、棚本体61の底部に配置されている。
そして、自動搬送ロボット62が棚本体61の底部を押し上げる際に、自動搬送ロボット62の上面に設けられたコネクタと、複数のケーブルアンテナ1の端部に接続されたコネクタとが連結することで、自動搬送ロボット62に内蔵された内部電源から、ケーブルアンテナに電流が供給される。
【0093】
自動搬送ロボット62には、RFIDリーダが設けられている。このため、電流が供給されたアンテナが検出したRFIDタグの情報をRFIDリーダが読み取り、無線通信を用いて、外部に送信することができる。RFIDリーダは、自動搬送ロボット62に内蔵されてもよいし、外付けされてもよい。
これにより、ゲーブルアンテナ1が設けられた自動搬送棚60では、棚部63にどのような商品が保管されているのかを自動で検出することができるので、商品の自動棚卸しや、自動入出荷管理を可能とすることができる。
【0094】
また、前述した変形例に限られず、これらの変形例を選択して適宜組み合わせてもよいし、その他の変形を施してもよい。
(付記)
【0095】
自動搬送棚と、
自動搬送ロボットと、
請求項3に記載のケーブルアンテナ、あるいは請求項7、請求項11に記載のゲートアンテナと、を有し、
前述のいずれかのアンテナと、無人自動搬送ロボットに設けられたリーダーライターとが、有線接続されることで、棚上に配置された商品、物品のRFID個品情報を自動で読み取り、読み取った商品・物品情報が無線システムにより、上位システムに転送され、入出荷や在庫の情報管理を自動的に行う自動搬送棚システム。
【符号の説明】
【0096】
1 ケーブルアンテナ
1A 屈曲点
2 無線通信タグ
3 無線ICチップ
4 発振器
11 内側導体
12 絶縁層
13 外側導体
15 露出部