(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173502
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】組織伸展装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/12 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
A61F2/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159187
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2021513860の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】62/731,033
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュスラー、デイヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フロレス、アルベルト ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス、ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】ソラノ、ルイス エム.
(57)【要約】
【課題】人間および/または動物を治療するために使用することができる組織伸展装置。
【解決手段】患者の皮膚の直下に一時的に手術によって埋め込まれ、上方に位置する組織の伸展の後に取り除かれる組織伸展装置であって、膨張可能なチャンバと、前部と、後部とを有する膨張可能なシェルと、膨張可能なチャンバの後部に結合された複数のタブであって、複数のタブのうちの第1のタブは、第1の色を有し、複数のタブのうちの残りのタブは、第1の色とは異なる第2の色を有する、複数のタブと、膨張可能なチャンバへの流体の注入を可能にするように構成された注入ポートとを備える装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚の直下に一時的に手術によって埋め込まれ、上方に位置する組織の伸展の後に取り除かれる組織伸展装置であって、
膨張可能なチャンバと、前部と、後部とを有する膨張可能なシェルと、
前記膨張可能なチャンバの前記後部に結合された複数のタブであって、前記複数のタブのうちの第1のタブは、第1の色を有し、前記複数のタブのうちの残りのタブは、前記第1の色とは異なる第2の色を有する、複数のタブと、
前記膨張可能なチャンバへの流体の注入を可能にするように構成された注入ポートと
を備える装置。
【請求項2】
前記第1の色は、白色または透明であり、前記第2の色は、非白色または透明である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の色は、青色である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のタブは、前記複数のタブのうちの他のタブの属性とは異なる属性を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記属性は、タブのサイズ、タブの形状、またはタブの材料のうちの少なくとも1つからなる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のタブは、前記膨張可能なチャンバの下部に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記複数のタブの各々は、当該装置の中央位置に対して半径方向外向きの方向に延びている、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のタブは、前記膨張可能なチャンバの前記後部の周囲を巡って配置され、前記複数のタブの各々は、前記複数のタブのうちの隣接するタブから約60°の間隔を空けている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のタブは、6つのタブを含み、前記6つのタブは、前記シェルの前記後部の周囲を巡って12時の位置、2時の位置、4時の位置、6時の位置、8時の位置、および10時の位置にそれぞれ配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のタブは、6時の位置に配置されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
組織伸展装置であって、
膨張可能なチャンバを形成し、前部と、滑らかな内面を形成するポリマー材料層とを有する、膨張可能なシェルと、
前記膨張可能なシェル内で前記ポリマー材料層に沿って前記滑らかな内面に隣接して表面テクスチャとして形成される配向インジケータであって、前記膨張可能なシェルの前記前部に沿って前記配向インジケータが可視である、配向インジケータと、
前記シェルの前記前部に結合され、前記チャンバと流体連通しており、皮下注射針から前記チャンバへの流体の注入を可能にするように構成された注入ポートと
を備える組織伸展装置。
【請求項12】
前記配向インジケータが、前記膨張可能なシェルの内面に沿って形成されており、前記膨張可能なシェルの前記前部に沿って可視である、請求項11に記載の組織伸展装置。
【請求項13】
前記配向インジケータが、前記膨張可能なシェルを正面から見たときに、前記配向インジケータが中心線に沿って垂直に延びるように、前記膨張可能なシェルの前記滑らかな内面に隣接する表面テクスチャを含む、請求項11または12に記載の組織伸展装置。
【請求項14】
前記配向インジケータが、前記膨張可能なシェルの中心位置を横切って延びている、請求項11~13のいずれか一項に記載の組織伸展装置。
【請求項15】
前記膨張可能なシェルを正面から見たときに、前記配向インジケータが、前記膨張可能なシェルの垂直方向の寸法の少なくとも50%にわたって延びている、請求項11~14のいずれか一項に記載の組織伸展装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月13日に出願された関連する米国特許仮出願第62/731,033号の利益および優先権を主張し、この米国特許仮出願の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、広くには、組織の伸展のためのシステムおよび方法に関し、より具体的には、インプラントの受け入れの準備における患者の組織の伸展に関する。
【背景技術】
【0003】
埋め込み型プロテーゼが、身体組織を置き換え、あるいは補うために、一般的に使用されている。乳がんの場合に、乳腺および周囲の組織の一部またはすべてを切除するために乳房切除術が必要になることがあり、切除の結果として空所が生じる。この空所を、流体で満たされた埋め込み型プロテーゼで埋めることができる。この埋め込み物は、周囲の組織を支え、身体の外観を維持する役目を果たす。身体の通常の外観の回復は、術後の患者にきわめて有益な心理的効果をもたらし、大がかりな外科的処置の後に生じることが多い精神的打撃および落ち込みの多くを軽減する。
【0004】
軟質埋め込み型プロテーゼは、典型的には、シリコーンエラストマーで作られた比較的薄くかつきわめて柔軟なエンベロープまたはシェルを含む。シェルに、シリコーンゲルまたは生理食塩水が充てんされる。シェルの充てんを、シェルを患者に埋め込む前に行うことができ、あるいはシェルを患者に埋め込んだ後に行うことができる。
【0005】
生理食塩水で満たされたインプラントは、片側に弁または充てんポートを有する数層のシリコーンエラストマーからなる外側シェルを含む。プロテーゼは、典型的には、空の状態または或る程度だけ満たされた状態で、乳房の空洞に埋め込まれる。その後に、弁または充てんポートによって、インプラントを最終的なサイズまで膨張させる。これは、必要な切開のサイズを小さくする役に立ち、外科医がインプラントの体積を調整し、さらには微調整することを可能にする。
【0006】
乳房再建においては、長期用プロテーゼを埋め込む前に、例えば「組織エキスパンダー」または「組織伸展装置」として知られるより一時的なインプラントを利用して、長期用プロテーゼに必要な空間を徐々に作り出すことが、一般的なやり方である。例えば、乳房切除術などのいくつかの状況において、胸部組織が平らで窮屈な場合があり、エキスパンダーを使用して、長期用プロテーゼの受け入れに向けて身体を準備することができる。また、組織エキスパンダーを、健康な組織を伸展させ、火傷または傷などの近傍の瑕疵を置き換えるために、身体の他の場所で使用することも可能である。本質的に、組織伸展装置は、膨張可能な本体を備え、膨張可能な本体に膨張弁が接続されている。弁は、膨張可能な本体自体に形成されても、離れて配置され、細長い導管によって膨張可能な本体に接続されてもよい。
【0007】
組織伸展装置の膨張可能な本体は、組織を伸展させるべき場所において、患者の皮下に配置される。膨張弁は、インプラント上にあっても、離れて配置されていても、やはり皮下に配置され、あるいは埋め込まれ、典型的には生理食塩水である流体をシリンジによる注入によって膨張体へと徐々に導入できるように構成されている。所定の間隔での漸進的な膨張の後に、エキスパンダーを覆っている皮膚および皮下組織は、結果として、溶液が膨張可能な本体へと徐々に導入されるときに、膨張可能な本体がそのような組織へと作用させる圧力に応答して引き伸ばされる。
【0008】
数週間または数ヵ月に及ぶ可能性もある所定の間隔での漸進的な膨張の後に、皮膚および皮下組織は、長期用プロテーゼの埋め込み、形成および再建外科手術、あるいは身体の他の部分に使用するための皮膚および皮下組織の利用などのさらなる医療処置を実行することができる程度にまで伸びる。
【発明の概要】
【0009】
本出願は、人間および/または動物を治療するために使用することができる組織伸展装置および関連の処置に関するさまざまな改善を開示する。装置および処置を、例えば、乳房再建手術、豊胸手術、および皮膚移植手術の状況において使用することができる。
【0010】
乳房インプラントおよび組織伸展装置などの埋め込み型の装置は、丸みを帯びていてよく、あるいは解剖学的に形作られてよい。本明細書に開示される実施形態のうちの少なくとも一部の実施形態の態様によれば、解剖学的に形作られた場合に、乳房インプラントは中心線に関しておおむね対称であり、したがって装置が適切な向きで埋め込まれるように、外科医がその中心線を認識する必要があると理解される。
【0011】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態によれば、組織伸展装置を、より効果的かつより経済的な配向の手段を提供することによって、現在の技術水準を改善するやり方で構成することができる。例えば、対照色の材料からなる細片などの別個の材料を、インプラントのシェルの生成とは別の製造工程にてシェルへと適用する代わりに、本開示は、シリコーンシェルの鋳造/成形プロセスの最中にシェル上に視覚的に対照なラインを設けることができる装置および方法を提供する。
【0012】
例えば、いくつかの実施形態においては、鋳型であっても、マンドレルであってもよいが、磨かれた表面または光沢のある表面として残される所望の配向ラインの特徴を除いてサンドブラストまたは他の手段によって粗面化された表面によって仕上げられてよい組織伸展装置を生成するためのシェル鋳造ツールを提供することができる。したがって、このツールから製作されて得られるシリコーンシェルは、追加のコンポーネントまたは組み立て工程を必要とせずに、シェル表面に対照的な可視の配向ラインを提供することにより、これら2つの異なる表面仕上げを本質的かつ明瞭に示すことができる。
【0013】
随意により、少なくとも1つの実施形態においては、埋め込み時の装置の位置の安定化に役立つように、外縁を巡って配置された縫合糸タブを備える組織伸展装置を提供することができる。縫合糸タブを、例えば、臨床医に視覚的な配向の手段を提供するために、6時または12時の位置に配置することができる。
【0014】
しかしながら、本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態によれば、伝統的な装置のようにすべての縫合糸タブが同じに見える場合、埋め込みの過程において装置が意図せずにわずかに回転し、或る縫合糸タブを別の縫合糸タブと誤認する可能性があると理解される。例えば、6時の縫合糸タブを、4時または8時の縫合糸などの隣接する縫合糸タブと誤認する可能性がある。したがって、いくつかの実施形態によれば、視覚的に区別可能であり、独特の外観であり、あるいは異なる色である縫合糸タブを、6時の位置などの単一の位置にのみ使用する組織伸展装置を提供することができる。このようにして、臨床医は、縫合糸タブを互いにより明瞭に区別して、処置の最中に装置の適切な向きを識別することができる。
【0015】
本主題の技術のさらなる特徴および利点が、以下の説明に記載され、一部は以下の説明から明らかになり、あるいは本主題の技術を実施することによって習得可能である。本主題の技術の利点は、本明細書およびその実施形態ならびに添付の図面に詳しく指摘される構造によって、実現および達成されるであろう。
【0016】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が、例示および説明のためのものであり、本主題の技術のさらなる説明の提供を意図していることを、理解されたい。
【0017】
本開示の例示的な実施形態の種々の特徴を、図面を参照して以下で説明する。例示される実施形態は、本開示の説明を意図しており、本開示の限定を意図したものではない。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】いくつかの実施形態による組織伸展装置の斜視図である。
【
図2】いくつかの実施形態による
図1の組織伸展装置の正面図である。
【
図3】いくつかの実施形態による
図1の組織伸展装置の背面図である。
【
図4A】いくつかの実施形態による
図1の組織伸展装置の一部分の側面図である。
【
図4B】いくつかの実施形態による
図1の組織伸展装置のタブおよび係合アセンブリの分解および組立図である。
【
図5】いくつかの実施形態による切断線5-5に沿って得た
図1の組織伸展装置の断面側面図である。
【
図6】いくつかの実施形態による
図1の組織伸展装置の分解図である。
【
図7A】いくつかの実施形態による組織伸展装置を製造するためのマンドレルの側面図である。
【
図7B】いくつかの実施形態による
図7Aのマンドレルの正面図である。
【
図8】いくつかの実施形態による組織伸展装置の別の実施形態の正面図である。
【
図9】いくつかの実施形態による組織伸展装置の別の実施形態の正面図である。
【
図10】いくつかの実施形態による組織伸展装置の別の実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明においては、本主題の技術の充分な理解をもたらすために、多数の具体的詳細が説明される。本主題の技術を、これらの具体的詳細のいくつかを備えずに実施してもよいことを、理解すべきである。他の場合には、本主題の技術を不明瞭にしてしまうことがないよう、周知の構造および技術は、詳細には示されていない。
【0020】
さらに、本明細書における説明は、種々の実施形態の具体的詳細を記載しているが、説明があくまでも例示にすぎず、決して限定として解釈されてはならないことを、理解できるであろう。さらに、本開示の特定の実施形態が、乳房再建または豊胸の文脈において開示または提示されるかもしれないが、そのような実施形態は、さまざまな装置およびインプラントとともに使用することができると考えられる。さらに、当業者であれば想到できるそのような実施形態のさまざまな応用および修正も、本明細書に記載される全体的な概念に包含される。
【0021】
ここで図面を参照すると、
図1が、豊胸、乳房再建、または皮膚移植などの別の処置に先立って、患者に一時的に手術によって埋め込むために使用することができる組織伸展装置10の斜視図を示している。組織伸展装置10を、皮膚の下方に配置して、上方の組織および皮膚を組織伸展装置10の所与の体積へと成長させ、あるいは調整できるように、或る期間にわたってその場に残すことができる。
【0022】
図1および
図2に示されるように、臨床医は、必要に応じて、組織伸展装置10に、装置10の注入ポート12を介して流体を注入または充てんすることができる。例えば、臨床医は、装置10の充てんのために、シリンジの針を使用して注入ポート12において組織伸展装置10を穿刺することができる。注入ポート12は、組織伸展装置10に出入りする制御可能な流れをもたらすことができる。さらに、注入ポート12は、針の除去時にセルフシール式であってよい。
【0023】
図1に示されるように、組織伸展装置10は、前部14、後部16、上部極20、および下部極22を備えることができる。さらに、組織伸展装置10は、膨張可能なシェル30をさらに備えることができる。膨張可能なシェル30またはその一部を、シリコーンゴム、さまざまな形態のシリコーンの積層体、シリコーンコポリマー、ポリウレタン、および種々の組み合わせの種々の他のエラストマーなど、生体適合性ポリマー材料から形成することができる。
【0024】
図2の正面図に示されるように、組織伸展装置10の膨張可能なシェル30は、上部極20と下部極22との間の位置にある中点または中心位置18を定めることができる。いくつかの実施形態では、膨張可能なシェル30の中心位置18は、円形シェルの幾何学的中心に配置することができる。例えば、
図2は、中心位置18が、膨張可能なシェル30の対向するエッジ、円周、または境界の間の直径の中点に位置することを示している。しかしながら、シェル30が円形でない実施形態において、中心位置18は、必ずしもシェルの幾何学的中心を呈する必要はなく、例えば、中心位置18は、シェル30の上部24のエッジからシェル30の下部26のエッジまで延びる線(例えば、高さ寸法または差し渡し)に沿った中点を呈することができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、シェル30の外面32は、滑らかな仕上げまたは光沢のある仕上げを有することができる。装置10は、自然の乳房形状または所望の乳房形状を模倣するために、丸、円形、長円形、三日月形、解剖学的形状、または他の適切な形状であってよい。
【0026】
少なくとも1つの実施形態において、組織伸展装置10は、シェル30の後部16に結合した複数のタブ40を備えることができる。タブ40を、臨床医が、組織伸展装置10を患者の埋め込み部位において周囲の組織へと係止し、係合させ、あるいは固定するために使用することができる。
図1および
図2に示されるように、タブ40は、随意により、組織伸展装置10を患者の組織へと容易に係止できるように、縫合糸または他の固定手段をタブ40に結合させることができる開口42を備えることができる。
【0027】
図3を参照すると、タブ40は、シェル30の後部の周りに周状に間隔を空けつつ位置することができる。タブ40は、膨張可能なシェル30の中心位置18に対して半径方向外向きに延びることができる。例えば、装置10が6つのタブを使用する場合、タブ40は、約60°の角度50で周状に間隔を空けつつ位置することができる。しかしながら、装置が2つ、3つ、4つ、5つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、またはさらに多くのタブを使用する場合、タブは、タブの数に基づき、あるいはタブの数に対応する角度50で、間隔を空けて位置することができる。例えば、少なくとも1つの実施形態において、タブは、
図3に示される実施形態のように、タブの数に応じて等間隔で周状に位置することができる(例えば、タブは、360度をタブの数で割ったものに等しい角度で間隔を空けて周状に位置する)。したがって、
図3において、6つのタブ40は、シェルの後部の周囲を巡って12時の位置、2時の位置、4時の位置、6時の位置、8時の位置、および10時の位置にそれぞれ配置される。
【0028】
さらに、少なくとも1つの実施形態においては、タブのうちの1つ以上が、残りのタブのうちの1つ以上のタブの属性とは異なる属性を備えることができる。属性は、タブの色、タブのサイズ、タブの形状、またはタブの材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。タブのうちの1つ以上が、残りのタブのうちの1つ以上のタブとは異なる色であってよく、あるいは異なる形状、サイズ、または材料を有することができる。少なくとも1つの実施形態においては、タブのうちの1つ以上が、白色、黄褐色、黄色、オレンジ色、赤色、ピンク色、紫色、青色、緑色、茶色、灰色、黒色、および/またはそれらの任意の色合いであってよい。
【0029】
例えば、6つのタブを有する少なくとも1つの実施形態において、6時のタブ60が白色であってよく、12時、2時、4時、8時、および10時に位置する残りのタブが、青色であってよい。
【0030】
さらに、少なくとも1つの実施形態においては、1つのタブを除くすべてのタブが白色であってよく、残りのタブが非白色を有する。
【0031】
さらに、少なくとも1つの実施形態においては、1つ以上のタブが第1の色であってよく、1つ以上のタブが第2の色であってよく、1つ以上のタブが第3の色であってよく、1つ以上のタブが第4の色であってよく、1つ以上のタブが第5の色であってよく、さらには/あるいは1つ以上のタブが第6の色であってよい。
【0032】
本明細書でさらに説明されるように、1つ以上のタブの識別性の属性は、臨床医が装置10を患者内に配置するときに助けとなり得る。例えば、タブ40は、装置10の上部24、および/または下部26、ならびに/あるいは側部28の識別または認識において臨床医を助けることができる。例えば、臨床医は、上部24が上部極20に隣接し、下部26が下部極22に隣接し、側部28が上部と下部との間に位置することを認識することができ、これは、装置10の配置または整列において臨床医を支援することにより、装置10の形状が患者の身体に対して適切に整列することを保証することができる。さらに、本明細書においてさらに詳しく開示されるように、タブの色、テクスチャ、または形状などの特定の属性を、臨床医が所与のタブが位置する装置10の部位または部分を迅速に識別するうえで助けとなるように、変更または設計することができる。
【0033】
例えば、装置10の上部、下部、および/または整列の識別または認識において臨床医を支援するために、複数のタブをシェル30の上部24、下部26、および/または側部28の辺りに配置することができる。少なくとも1つの実施形態においては、6つのタブが12時、2時、4時、6時、8時、および10時の位置に配置され、4時、6時、および8時の位置のタブを第1の色にすることができる一方で、2時および10時の位置のタブを第2の色にすることができる。随意により、12時のタブを第1の色または第2の色にすることができる。そのような実施形態において、4時、6時、および8時の位置にあるタブは、装置10の上部または下部を示すために役立つことができる。さらに、12時のタブが第1の色(4時、6時、および8時の位置のタブと同じ色)である実施形態において、臨床医は、装置10の上部および下部の両方、ならびに装置10の整列を容易に認識できる可能性がある。さらに、少なくとも1つの実施形態においては、4時および8時の位置にあるタブが残りのタブとは異なる色を有するように、配色を変えることができる。
【0034】
随意により、組織伸展装置10は、配向インジケータ70をさらに備えることができる。上述のように、本開示は、解剖学的に形作られた場合に、胸部インプラントが一般に中心線に関して対称であり、したがって装置が適切な向きで埋め込まれるように、外科医がその中心線を認識する必要があるという理解に注目する。特定の組織伸展装置には、触覚および視覚インジケータをもたらすためのシェルの表面上の隆起シリコーンドット、あるいは中心線を示すための青色または白色などの対比色のシェル上の可視ラインが前もって取り入れられているが、これらのドットまたはラインは、補助的な組み立て作業においてインプラントのシェルに適用される。したがって、製造コストが高く、追加の材料または色が失われる可能性があり、あるいは正確に適用されない可能性がある。したがって、組織伸展装置または胸部インプラントを患者の解剖学的構造に対して適切に整列させるという課題に加えて、インジケータドットおよびラインを生成する製造プロセスが不適切または不正確である可能性があり、この不正確さは、臨床医にとって認識または克服が困難であり得る。対照的に、本開示は、シェル30の内面によって形成され、さらには/あるいはシェル30の内面に沿って形成される配向インジケータ70を生み出す解決策を提供することにより、追加の製造コストを回避するとともに、配向インジケータ70がシェル30およびその形状に対して正確に配置されることを保証する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、配向インジケータ70は、シェル30の前部14に沿って可視である。配向インジケータ70を、シェル30の下部極22に沿って配置することができる。しかしながら、配向インジケータ70は、シェル30の上部極20に沿って延びてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、配向インジケータ70は、上部極20および下部極22の両方に沿って延びることができる。
【0036】
配向インジケータ70は、シェル30の中心位置18まで延びてよく、さらには/あるいは中心位置18を超えて延びてよい。さらに、配向インジケータ70は、注入ポート12を通り過ぎて延びても、注入ポート12を通って延びても、あるいは注入ポート12までしか延びていなくてもよい。
【0037】
図2に示されるように、配向インジケータ70は、垂直方向の寸法に沿った垂直線として延びることができる。しかしながら、配向インジケータ70は、水平方向の寸法に沿っておおむね水平な線として延びることもできる。配向インジケータ70の長手方向の範囲は、垂直方向または水平方向の寸法に相当することができる。例えば、
図2の正面図を参照すると、配向インジケータ70は、下部26から上方へと膨張可能なシェル30の直径または高さの少なくとも50%にわたって延びることができる。いくつかの実施形態によれば、配向インジケータ70は、膨張可能なシェル30の所与の寸法、直径、または高さの最大約50%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または全体まで延びることができる。配向インジケータ70の幅、パターン、形状、および/または長手方向の範囲を、装置10の配置および整列のための容易な視覚的ツールを提供するように好都合に設計することができる。この専用の特徴は、製造および臨床の両方の観点から、独自の費用効果の高い利点をもたらす。
【0038】
配向インジケータ70は、患者の空洞内に組織伸展装置10を埋め込む際に臨床医による装置10の態様および/または向きの識別を可能にできる1つ以上の幾何学的パターンまたは形状を提供することができる。
図2に示されるように、配向インジケータ70は、シェル30に沿って延び、シェル30に沿って可視であるバンド、ストリップ、またはラインを含むことができる。さらに、配向インジケータ70を、組織伸展装置10の1つ以上のコンポーネントまたは態様に整列させることができる。例えば、配向インジケータ70を、複数のタブ40のうちの少なくとも1つに整列させることができる。ラインまたは直線パターンの場合、配向インジケータ70は、垂直軸、水平軸、または他の軸に沿って延びることができる。配向インジケータ70の視覚による知覚は、臨床医が、水平面または垂直面あるいは他のしるしに対して配向インジケータ70を整列させることによって、空洞内の組織伸展装置10の位置を調整することを可能にすることができる。
【0039】
種々の構成が生成可能であるが、
図2に示される実施形態は、配向インジケータ70が、6時のタブ60に隣接するシェル30のエッジと注入ポート12との間をおおむね垂直な平面に沿って延びることを示している。配向インジケータ70は、シェル30の下部極22に沿って、そのような経路に沿って部分的または完全に延びることができる。随意により、配向インジケータ70は、同じ垂直な平面に沿って上部極20に沿って延びることができる。しかしながら、
図2に示される実施形態は、下部極22にのみ現れるとともに、視覚インジケータとして充分に長いラインももたらすがゆえに、組織伸展装置10の向きについての明瞭な表示を臨床医に好都合に提供する。
【0040】
いくつかの実施形態において、配向インジケータ70は、シェル30のエッジに隣接する第1の端部72と、シェルのエッジから遠い第2の端部74とを有するラインを含む。注入ポート12は、配向インジケータ70の第2の端部と交わることができる。随意により、配向インジケータの第2の端部74は、注入ポート12の外周13まで延び、あるいは注入ポート12の外周13に整列する。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、好都合なことに、患者内での装置の整列および適切な配置を容易にするだけでなく、配向インジケータ70を使用して、装置10の製造を容易にすることもできる。例えば、配向インジケータ70を使用して、各々の装置10の製造効率および精度、ならびに複数の装置10間の製造の一貫性を向上させることができる。例えば、シェル30が配向インジケータ70を備えて製造された後に、注入ポート12を、注入ポート12の一部分を配向インジケータ70の一部分に整列させることによって、シェル30に沿って配置することができる。例えば、注入ポート12の外周13(例えば、周囲の最下部または中央部分)を、配向インジケータの第2の端部74に当接または他のかたちで整列するように配置することができる。
【0042】
ここで
図3~
図4Bを参照すると、タブ40を、接着剤によってシェル30に結合させることができ、あるいはシェル30の一部分と一緒に成形することができる。
図4Aおよび
図4Bは、タブ40の側面図および斜視組立図を示している。
図4Aは、6時のタブ60およびその係合構造80を、側面図にて示している。
図4Bは、タブ40を備えた係合構造80の分解図および組立図を示している。係合構造80は、タブ40を間に挟む上部および下部係合層82、84を備えることができる。係合構造80およびタブ40を、シェル30に取り付け、加硫することができる。タブ40は、その外面に沿って、装置10の位置を操作するためのタブ40の把持を助けることができ、かつ上部および下部係合層82、84との係合をさらに強化するための表面構造またはメッシュパターンを備えることができる。
図4Aに示されるように、係合構造80およびタブ40を、シェル30の後部16に結合させることができる。
【0043】
図5および
図6は、それぞれ組み立てられた状態および分解された状態の組織伸展装置10の側面断面図を示している。
図5に示されるように、装置10の注入ポート12を、シェル30の空洞90内に配置することができる。注入ポート12は、シェル30の内面102に結合した注入リザーバアセンブリ100を備えることができる。注入リザーバアセンブリ100を、本出願の出願人が所有する米国特許第4,671,255号に開示されている注入リザーバアセンブリと同様に製造することができ、この米国特許の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
本開示において、注入リザーバアセンブリ100は、シェル30の内面102に結合し、あるいはシェル30の内面102へと積層された注入リザーバ110を備えることができる。注入リザーバアセンブリ100は、針が注入ポート12へと進められ、その後に注入ポート12から引き抜かれるときに、針によって生じた穿刺または開口を封じようとする傾向を有するセルフシール弁または注入ポートを提供することができる。
【0045】
図5は、シェル30の中心位置18と上部24におけるシェル30の上端との間に位置する上部極20、およびシェル30の中心位置18と下部26におけるシェル30の下端との間に位置する下部極22を示している。注入ポート12は、完全に上部極20内に位置することができる。しかしながら、いくつかの実施形態においては、注入ポート12の一部分のみが上部極20内に位置してよく、注入ポート12の一部分が中心位置18を横切って延びる。いくつかの実施形態においては、注入ポート12の少なくとも50%が上部極20内に位置する。
【0046】
図2の装置10の正面図に示されるように、配向インジケータ70が、注入ポート12からシェル30の下端に向かって延びることができる。さらに、いくつかの実施形態において、配向インジケータ70は、注入ポート12からシェル30の上端または側端などのシェル30の別のエッジに向かって延びることができる。さらに、いくつかの実施形態において、配向インジケータ70は、注入ポート12から、上部極20の一部分を横切り、下部極22を横切って延びることができる。
【0047】
図6に示されるように、注入リザーバ110を、結合層112を介して内面102に結合させることができる。少なくとも1つの実施形態において、結合層112は、強化リング114およびフィラープラグ116を含むことができる。強化リング114は、シリコーンなどのポリマーと一緒に成形されたメッシュまたは布地材料を含むことができる。強化リング114は、注入リザーバアセンブリ100の耐久性を高める役に立つことができる。強化リング114を、随意により、引き裂き抵抗層として構成することができる。
【0048】
注入リザーバ110は、リザーバ本体111と、リザーバ本体111から半径方向外向きに延びるフランジ113とを含むことができる。フランジ113は、リザーバ本体111から離れるにつれて先細になる厚さを備えることができる。リザーバ本体111が、注入リザーバ110の中間周囲を形成することができる一方で、フランジ113が、注入ポートの外周13を形成でき、あるいは注入ポートの外周13に沿って延びることができる。配向インジケータ70が、例えば注入ポート12を配置するための製造時の基準点として使用される場合、フランジ113を、注入リザーバ110を装置10に結合させるときに、配向インジケータの第2の端部74に整列するように配置することができる。
【0049】
先細フランジ113は、注入リザーバ110の可撓性(あるいは、より剛直な)部分をもたらすことができる。例えば、フランジ113は、リザーバ本体111に対して曲がることによって、注入リザーバ110と装置10の隣接部分との間の滑らかであまり急激でない遷移を提供することができる。したがって、力(シェル30に対して加えられる曲げ力または点応力など)が注入リザーバ110または注入リザーバ110に隣接する領域に対して向けられるとき、フランジ113は曲がり、あるいは注入ポート12の剛直で触覚的に識別可能な周囲をもたらす傾向を有することができる。さらに、フランジ113は、注入リザーバ110をシェルの内面102に結合させるために、リザーバ本体111に関して表面積を増加させることにより、注入リザーバ110と内面102との間のより大きなシールを好都合に保証することができる。したがって、フランジ113の材料、構造、および半径方向の広がりを、注入ポート12について所望の大きさの表面積および所望の構造的挙動をもたらすように選択することができる。
【0050】
さらに、組織伸展装置10は、シェルの後部16に沿ってシェル30の内面102に結合させた安定なベース120を備えることができる。図示のように、シェル30は、シェル30の後部を通って延びるマンドレル開口122を備えることができる。安定なベース120を後部16に結合させて、とくにはマンドレル開口122の周りにおいて後部16に構造的支持をもたらすことができる。さらに、組織伸展装置は、マンドレル開口122の充てんおよびシールに使用することができるフィラープラグ124およびパッチ126を備えることができる。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、すでに述べたように、シェル30は、不透明または半透明の外観を備えることができる。不透明または半透明の外観を達成するために、シェル30を、内面102が粗面化されたテクスチャを備えるように製造することができる。したがって、シェル30を通過する光は回折させられ、光の通過が妨げられ、したがってシェル30の不透明または半透明の外観が達成される。
【0052】
本明細書に開示される少なくとも1つの実施形態の実現によれば、安定なベース120をシェル30の内面102に結合させ、あるいは積層した場合、内面102の粗面化されたテクスチャの微視的なギャップおよびポケットの多くが、積層プロセスの結果として、安定なベース120からの材料が埋められ、除去される。内面102の粗面化されたテクスチャが積層プロセスによって除去されるため、光の回折が大幅に減少し、したがって、これらの安定なベース120とシェル30との間の結合の領域に沿って、透明または光を通す外観が生み出される。いくつかの場合、これらの領域に沿った今や透明または光を通す外観は、これらのコンポーネント間の積層のエアポケット、縞模様、破損、またはその他の欠陥に注意を引き付ける傾向を有することができる。注入リザーバアセンブリ110とシェル30の内面102との間の積層においても同様の結果が検出され得るが、強化リング114を、積層プロセスにおける視覚的欠陥をマスクまたは隠蔽する傾向を有することができるメッシュパターンを含むように構成することができる。
【0053】
魅力的な外観を提供し、安定なベース120とシェル30の内面102との間の積層における視覚的欠陥を隠蔽するために、少なくとも1つの実施形態を、安定なベース120がテクスチャを有する内面130を備えるように構成することができる。テクスチャを有する内面130は、強化リング114のメッシュパターンに視覚的に類似した外観をもたらすことができる。積層された安定なベース120および内面102が、テクスチャを有する内面130のおおむね透明なビューを提供するため、組織伸展装置は、装置10の前部114の注入ポート12、後部16、およびタブ40に沿って一貫したパターンを備えることができる。さらに、図示の実施形態におけるパターンは、メッシュパターンであるとして説明されているが、他のパターンを設けることも可能である。さらに、テクスチャを有する内面130のパターンを、注入ポート12の強化リング114および/またはタブ40によってもたらされるパターンとは異なるように選択することも可能である。
【0054】
シェル30は、シェルの外面と内面102との間を延びる厚さを有する。シェルの厚さは、装置の前部14および後部16のそれぞれに沿ってほぼ一定であり得る。シェル30の一定の厚さは、シェル30における一貫した光の透過および/または回折をもたらすことができ、シェル30のすべての部分に沿って一貫した抵抗を提供することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、シェル30の厚さを、シェルの任意の部分に沿って増加および/または減少させることができる。例えば、シェル30の厚さを、前部114から後部16に向かって減少させることができる。いくつかの実施形態においては、シェル30の厚さを、下部極22から上部極20に向かって減少させることができる。厚さのそのような変化は、装置10を患者の解剖学的構造に対して整列させようとする臨床医を支援するための所望の触覚フィードバックを好都合に提供することができる。
【0055】
例えば
図5に示されるように、断面で見た場合、装置10は、後部16と前部14との間を延びる幅を有する。装置10の幅は、下部極22から上部極20に向かって先細になっている。いくつかの実施形態においては、下部26から上部24に向かって移動するとき、装置10の幅は、下部極22に沿って増加し、次いで、装置10の幅は、上部極20に沿って減少する。いくつかの実施形態において、装置10は、下部極22において中心位置18に近くで最大幅を有し、上部極20において上部24に隣接して最小幅を有する。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、前部14に沿ったシェル30の外面は、おおむね凸状の形状を備えることができる。しかしながら、シェル30の一部分が、凸状の形状または凹状の形状を有することができることに注意すべきである。例えば、下部極22の一部分に沿ったシェル30の外面が、凸状であってよく、一方で、上部極20の一部分に沿ったシェル30の外面が、凹状であってよい。いくつかの実施形態において、シェル30の外面は、上部極20の一部分に沿って凸状の形状から凹状の形状に遷移する。
【0057】
ここで
図7Aおよび
図7Bを参照すると、本明細書に開示される少なくとも1つの実施形態の製造において使用することができるマンドレル150が示されている。鋳造ツールまたはマンドレル150は、外面152を備えることができる。装置10の製造時に、マンドレル150を、マンドレルの結合凹部154を使用して別のツールまたは支持装置に結合させることができる。いくつかの実施形態において、結合凹部154は、マンドレルの中心156に配置される。結合凹部154は、シェルのマンドレル開口122に対応することができ、マンドレルの中心156は、
図1~
図6の実施形態において論じたシェル30などのシェルの中心位置18に対応することができる。
【0058】
図7Bのマンドレル150の正面図に示されるように、外面152は、滑らかな領域160および粗い領域162を有することができる。滑らかな領域160は、
図1~
図6の実施形態において論じた配向インジケータ70などの配向インジケータに対応することができる。いくつかの実施形態においては、外面152の粗い領域が、配向インジケータに対応することができ、外面152の別の部分が、滑らかな領域を有することができる。
図7Bは、配向インジケータに対応することができる滑らかな領域160が、シェルの中心位置18に対応することができるマンドレルの中心156を横切ってどのように延びるかをさらに示している。
【0059】
組織伸展装置10の少なくとも1つの製造方法によれば、マンドレル150をポリマー溶液に浸漬させ、その後に乾燥させることにより、シェルを製造することができる。シェルは、マンドレル150の外面152の形状に一致する形状を有すると考えられる。しかしながら、これに加えて、シェルは、マンドレル150の外面152の滑らかな領域160および粗い領域162に対応する内面を有することができる。このようにして、上述したシェル30の内面102の所望のテクスチャ、ならびに配向インジケータ70の任意の形状またはパターンを、達成することができる。このようにして、これまでの装置および製造方法に比べてさまざまな利点を達成することができる。
【0060】
図8、
図9、および
図10が、組織伸展装置10のさまざまな実施形態を示している。例えば、
図8は、複数のタブ40、配向インジケータ70、および組織伸展装置10と同様の他のそのような特徴を備える組織伸展装置170の実施形態を示しており、その詳細は、簡潔にするためにここでは説明されないが、上記の開示から参照によって援用される。しかしながら、装置170を、可視または外側リング174を有する注入ポート172を備えるように構成することができる。注入ポート172は、コンパクトであってよく、注入ポート12の結合領域よりもサイズが小さい外側リング174に沿った結合領域を有することができる。
【0061】
図9を参照すると、タブを備えていない組織伸展装置180の実施形態が示されている。装置180の特徴は、装置10に関して上述した特徴と同様であってよく、簡潔にするためにここでは説明されないが、上記の開示から参照によって援用される。しかしながら、装置180は、装置10に関してすでに開示したタブを備えずに製造および使用することができる。さらに、装置180をタブを備えずに構成することができるが、他の実施形態は、本明細書に開示されるように、1つ以上のタブを含むように構成されてよい。
【0062】
例えば、
図10は、互いに120°で周状にずらして配置された3つのタブを備える組織伸展装置190の実施形態を示している。装置190の特徴は、装置10に関して上述した特徴と同様であってよく、簡潔にするためにここでは説明されないが、上記の開示から参照によって援用される。さらに、注入ポート192は、強化リングからの下方のパターンを有さずに、装置190の透明または不透明な非白色部分を形成することができる。さらに、装置190を、注入ポート192に対して、装置の後部および/またはタブの対応する外観または異なる外観を備えるように構成することができる。
【0063】
さらなる考慮事項
いくつかの実施形態において、本明細書におけるいずれの条項も、独立条項のうちのいずれか1つまたは従属条項のうちのいずれか1つに従属することができる。一態様において、いずれの条項(例えば、従属条項または独立条項)も、任意の他の1つ以上の条項(例えば、従属条項または独立条項)と組み合わせることができる。一態様において、請求項は、条項、文、句、または段落に記載されている単語(例えば、ステップ、動作、手段、または構成要素)の一部またはすべてを含むことができる。一態様において、請求項は、1つ以上の条項、文、句、または段落に記載されている単語の一部またはすべてを含むことができる。一態様において、各々の条項、文、句、または段落における単語のうちの一部を削除することができる。一態様において、追加の単語または要素を、条項、文、句、または段落に追加することができる。一態様においては、本主題の技術を、本明細書に記載の構成要素、要素、機能、または動作のうちの一部を利用せずに実施することができる。一態様においては、本主題の技術を、追加の構成要素、要素、機能、または動作を利用して実施することができる。
【0064】
本主題の技術は、例えば、以下に記載されるさまざまな態様に従って例示される。本主題の技術の態様のさまざまな例が、便利のために番号付けされた条項(1、2、3、など)として記載される。これらは例として提示されており、本主題の技術を限定するものではない。いずれの従属条項も、任意の組み合わせにて組み合わせて、例えば条項1または条項5などのそれぞれの独立条項に配置できることに、注意すべきである。他の条項も同様のやり方で提示され得る。
【0065】
条項1。患者の皮膚の直下に一時的に手術によって埋め込まれ、上方に位置する組織の所定の伸展の後に取り除かれる組織伸展装置であって、膨張可能なチャンバを形成しており、前部および後部を有している膨張可能なシェルと、前記膨張可能なシェルの前記前部において可視であり、前記膨張可能なシェルを前方から見たときに前記膨張可能なシェルの垂直方向の寸法の少なくとも50%にわたって延びている配向インジケータと、前記シェルの前記前部に結合し、前記チャンバに連通しており、皮下注射針から前記チャンバへの流体の注入を可能にするように構成された注入ポートとを備える装置。
【0066】
条項2。前記シェルの前記後部に結合した複数のタブをさらに備える、条項1に記載の装置。
【0067】
条項3。前記膨張可能なシェルの上部、下部、および側部の近くに配置された複数のタブをさらに備える、条項1に記載の装置。
【0068】
条項4。前記複数のタブの各々は、当該装置の中央位置に対して半径方向外向きの方向に延びている、条項2に記載の装置。
【0069】
条項5。前記複数のタブは、6つのタブを含む、条項2~4のいずれか一項に記載の装置。
【0070】
条項6。前記複数のタブは、6つのタブを含み、前記6つのタブは、前記シェルの前記後部を周状に巡って12時の位置、2時の位置、4時の位置、6時の位置、8時の位置、および10時の位置にそれぞれ配置されている、条項2~5のいずれか一項に記載の装置。
【0071】
条項7。前記複数のタブのうちの少なくとも1つのタブは、前記複数のタブのうちの残りのタブの属性とは異なる属性を備える、条項2~6のいずれか一項に記載の装置。
【0072】
条項8。前記属性は、タブの色、タブのサイズ、タブの形状、またはタブの材料のうちの少なくとも1つを含む、条項7に記載の装置。
【0073】
条項9。前記複数のタブは、6つのタブを含み、前記6つのタブのうちの第1のタブが、第1の色を有し、前記6つのタブのうちの残りのタブが、第2の色を有する、条項2~8のいずれか一項に記載の装置。
【0074】
条項10。前記6つのタブのうちの前記第1のタブは、前記膨張可能なシェルの下部に配置されている、条項9に記載の装置。
【0075】
条項11。前記複数のタブの各々は、縫合糸を通す開口を備える、条項2~10のいずれか一項に記載の装置。
【0076】
条項12。前記配向インジケータは、前記シェルの内面に沿って形成されている、条項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【0077】
条項13。前記配向インジケータは、ラインを含む、条項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【0078】
条項14。前記配向インジケータは、前記注入ポートから前記シェルのエッジに向かって延びるラインを含む、条項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【0079】
条項15。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの寸法の少なくとも約50%にわたって延びている、条項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【0080】
条項16。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの寸法の少なくとも約55%にわたって延びている、条項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【0081】
条項17。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの寸法の少なくとも約60%にわたって延びている、条項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【0082】
条項18。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの寸法の少なくとも約65%にわたって延びている、条項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【0083】
条項19。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの寸法の少なくとも約70%にわたって延びている、条項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【0084】
条項20。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの寸法の少なくとも約75%にわたって延びている、条項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【0085】
条項21。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの中心位置を横切って延びている、条項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【0086】
条項22。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの垂直方向の寸法の少なくとも約50%にわたって延びている、条項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【0087】
条項23。前記シェルの前記後部に結合した複数のタブをさらに備え、前記複数のタブのうちの第1のタブは、前記シェルに6時の位置において結合し、前記配向ラインは、前記注入ポートから前記6時の位置の前記第1のタブに向かって延びている、条項1に記載の装置。
【0088】
条項24。前記シェルの前記後部に結合した複数のタブをさらに備え、前記配向インジケータは、前記複数のタブのうちの少なくとも1つに整列している、条項1に記載の装置。
【0089】
条項25。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの表面テクスチャを備える、条項1~24のいずれか一項に記載の装置。
【0090】
条項26。前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの内面の表面テクスチャを備える、条項1~25のいずれか一項に記載の装置。
【0091】
条項27。前記膨張可能なシェルの外面は、滑らかな仕上げを備え、前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの内面上の滑らかな仕上げを備え、前記膨張可能なシェルの前記内面の残りの部分は、粗い仕上げを備える、条項1~26のいずれか一項に記載の装置。
【0092】
条項28。前記配向インジケータは、前記シェルのエッジに隣接した第1の端部と、前記シェルの前記エッジから遠い第2の端部とを有するラインを含み、前記第2の端部は、前記注入ポートと交わる、条項1~27のいずれか一項に記載の装置。
【0093】
条項29。前記配向インジケータの前記第2の端部は、前記注入ポートの外周に整列する、条項28に記載の装置。
【0094】
条項30。前記配向インジケータは、前記シェルの透明部分である、条項1~29のいずれか一項に記載の装置。
【0095】
条項31。前記シェルの外面は、滑らかな仕上げを備える、条項1~30のいずれか一項に記載の装置。
【0096】
条項32。条項1~31のいずれか一項に記載の組織伸展装置を埋め込む方法であって、前記組織伸展装置を患者の空洞内に配置するステップと、配向インジケータを水平面または垂直面に対して整列させることによって前記空洞内の前記組織伸展装置の位置を調整するステップとを含む方法。
【0097】
条項33。前記配向インジケータは、前記組織伸展装置の前記シェルの透明部分を含み、前記調整するステップは、前記配向インジケータを垂直面に対して整列させることを含む、条項32に記載の方法。
【0098】
条項34。組織伸展装置は、該組織伸展装置の後部に結合した複数のタブを備え、前記配向インジケータは、前記複数のタブのうちの6時の位置に位置する第1のタブに整列させられ、前記調整するステップは、前記配向インジケータおよび前記第1のタブを垂直面に対して整列させることを含む、条項33に記載の方法。
【0099】
条項35。組織伸展装置を製造する方法であって、外面がテクスチャを有する部分と滑らかな部分とを有している鋳造ツールを、ポリマー溶液に浸漬させ、前記鋳造ツールの前記外面に沿ったシェルを形成するステップと、前記シェルの乾燥を可能にするステップと、前記シェルを前記鋳造ツールから取り外すステップとを含んでおり、前記シェルは、前記テクスチャを有する部分に対応する第1の部分と、前記滑らかな部分に対応する第2の部分とを備える内面を有し、前記シェルは、滑らかな外面を有し、前記シェルの前記滑らかな外面と前記第2の部分とが協働して、透明な配向インジケータを定め、前記シェルの前記滑らかな外面と前記シェル内面の前記第1の部分とが協働して、前記透明な配向インジケータに対して視覚的対照をなす前記シェルの半透明または不透明な部分を定め、前記配向インジケータは、前記膨張可能なシェルの直径の少なくとも50%にわたって延びている、方法。
【0100】
条項36。複数のタブを前記シェルの後部に結合させるステップをさらに含む、条項35に記載の方法。
【0101】
条項37。前記結合させるステップは、前記複数のタブを前記シェルの前記後部を周状に巡って12時の位置、2時の位置、4時の位置、6時の位置、8時の位置、および10時の位置にそれぞれ結合させることを含む、条項36に記載の方法。
【0102】
条項38。前記複数のタブのうちの第1のタブが、前記複数のタブのうちの残りのタブの属性とは異なる属性を備え、当該方法は、前記第1のタブを前記シェルの前記後部の6時の位置に配置することをさらに含む、条項37に記載の方法。
【0103】
条項39。前記属性は、タブの色、タブのサイズ、タブの形状、またはタブの材料のうちの少なくとも1つを含む、条項38に記載の方法。
【0104】
条項40。注入リザーバアセンブリを前記シェル内面の注入ポート部分において前記シェル内面へと結合させて、前記注入ポート部分において前記半透明または不透明な部分を透明に変化させるステップをさらに含む、条項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
条項41。前記注入リザーバアセンブリは、第1のパターンが形成された強化リングを備え、前記第1のパターンは、前記注入リザーバアセンブリを前記シェルに結合させたときに前記透明な注入ポート部分を介して可視である、条項40に記載の方法。
【0106】
条項42。前記第1のパターンは、メッシュパターンを含む、条項41に記載の方法。
【0107】
条項43。安定なベースを前記シェルの後部において前記シェル内面へと結合させて、前記後部の一部分において前記半透明または不透明な部分を透明に変化させるステップをさらに含む、条項35から42のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
条項44。前記安定なベースは、第2のパターンが形成されたパターン化された内面を備え、前記第2のパターンは、前記安定なベースを前記シェルに結合させたときに前記後部の前記透明な部分を介して可視である、条項43に記載の方法。
【0109】
条項45。前記第2のパターンは、メッシュパターンを含む、条項44に記載の方法。
【0110】
条項46。注入リザーバアセンブリを前記シェルの注入ポート部分において前記シェル内面に結合させるステップをさらに含み、前記注入リザーバアセンブリを結合させるステップは、前記注入リザーバの外周を前記配向インジケータの端部に整列させることを含む、条項35~45のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
以上の説明は、本明細書に記載の種々の構成の実施を当業者にとって可能にするために提示されている。本主題の技術が、種々の図および構成を参照して詳細に記載されているが、これらがあくまでも説明の目的のためのものにすぎず、本主題の技術の範囲を限定するものとして解釈されてはならないことを、理解すべきである。
【0112】
本主題の技術の実施について、多数の他のやり方が存在し得る。本明細書に記載の種々の機能および要素を、本主題の技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に示されたやり方とは異なるやり方で実施することができる。これらの構成に対する種々の変更は、当業者にとって容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の構成にも適用可能である。したがって、本主題の技術の範囲から逸脱することなく、当業者であれば、本主題の技術に多数の変更および修正を加えることができる。
【0113】
開示されたプロセスにおけるステップの特定の順序または階層が、典型的な手法の例示にすぎないことを理解すべきである。設計の好みに基づいて、プロセスにおけるステップの特定の順序または階層を並べ替えてもよいことを、理解すべきである。ステップのうちのいくつかを、同時に実行することも可能である。添付の方法の請求項は、さまざまなステップの要素を一例示の順序で提示しており、提示された特定の順序または階層への限定を意図していない。
【0114】
本明細書において使用されるとき、「および(and)」または「または(or)」という用語によっていずれかを隔ててなる項目の列挙に関し、そのような項目の列挙に先行する「・・・のうちの少なくとも1つ」という表現は、列挙の各々の構成員(すなわち、各々の項目)を修飾するのではなく、むしろ列挙の全体を修飾する。「・・・のうちの少なくとも1つ」という表現は、列挙された各々の項目を少なくとも1つ選択することを必要とせず、むしろこの表現は、項目のうちの任意の1つを少なくとも1つ含むこと、および/または項目の任意の組み合わせを少なくとも1つ含むこと、および/または各々の項目を少なくとも1つ含むことを意味することができる。例として、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」または「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」という表現は、それぞれ、Aだけ、Bだけ、またはCだけ、A、B、およびCの任意の組み合わせ、ならびに/あるいはA、B、およびCの各々を少なくとも1つを指す。
【0115】
本開示において使用されるとき、「上」、「下」、「前部」、「後部」などの用語は、通常の重力基準系ではなく、任意の基準系を指すものとして理解されるべきである。したがって、上面、下面、前面、および背面は、重力基準系において上向き、下向き、斜め、または水平方向に延びることができる。
【0116】
さらに、「・・・を含む(include)」、「・・・を有する(have)」、などの用語が本明細書または特許請求の範囲で使用される限りにおいて、そのような用語は、請求項においてつなぎの語として使用されるときの用語「・・・を備える(comprise)」の解釈と同様のやり方で、包括的であるように意図される。
【0117】
「典型的」という用語は、本明細書において、「例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。本明細書で「典型的」として説明されたいかなる実施形態も、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。
【0118】
単数形での要素への言及は、とくに具体的に述べられない限り、「1つだけ」を意味するのではなく、むしろ「1つ以上」を意味するように意図される。男性の代名詞(例えば、「彼の」)は、女性および中性の性別(例えば、「彼女の」および「その」)を含み、逆もまた同様である。「いくつか」という用語は、1つ以上を指す。下線および/または斜体の見出しおよび小見出しは、便宜上使用されているにすぎず、本主題の技術を限定するものではなく、本主題の技術の説明の解釈に関連して参照されるものでもない。本開示の各所において説明した種々の構成の要素の構造的および機能的な等価物であって、当業者にとって公知であり、あるいは後に当業者に知られることになるすべての構造的および機能的な等価物は、参照により本明細書に明確に組み込まれ、本主題の技術に包含されるように意図される。さらに、本明細書に開示したいかなる内容も、そのような開示が以上の説明において明示的に述べられているか否かにかかわらず、公衆への開放は意図されていない。