(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173507
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】眼球治療装置、及び関連する使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 160
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159258
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2019533026の分割
【原出願日】2017-12-18
(31)【優先権主張番号】62/436,099
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518224358
【氏名又は名称】ニュー ワールド メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリク、ワイ.
(57)【要約】
【課題】眼球治療用の機器及び方法が提供される。
【解決手段】機器は、近位端部、遠位端部、空洞、及び中心長手方向軸を有するマイクロカニューレを備えることができる。機器は、マイクロカニューレの近位端部に連結されたハンドルを含むことができる。機器は、マイクロカニューレの遠位端部の周囲に延在する複数のオリフィスであって、各オリフィスが、中心長手方向軸に対して横方向に延在するチャネルを画定する、複数のオリフィスと、マイクロカニューレの周囲の1つ又は複数の溝とを含むことができる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部、遠位先端部、及び空洞を有するマイクロカニューレであって、中心長手方向軸を有するマイクロカニューレと、
前記マイクロカニューレの前記近位端部に連結されたハンドルと、
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部の周囲に延在する複数のオリフィスであって、各オリフィスは、前記中心長手方向軸に対してある角度で延在するチャネルを画定し、半径方向内側端部より半径方向において前記中心長手方向軸から遠くに位置決めされた半径方向外側端部を有し、各オリフィスは、前記マイクロカニューレの前記遠位先端部から半径方向外方に物質を送り出すように構成される、複数のオリフィスと、
前記マイクロカニューレの周囲の1つ又は複数の溝と、
外側管であって、前記マイクロカニューレは前記外側管の内部に収容され、前記外側管の遠位端部に位置付けられた開口を含む外側管と、
前記ハンドルの近位に位置付けられた制御機構であって、前記制御機構は、第1の位置から第2の位置に前記外側管を回転させるように構成され、前記複数のオリフィスのうちの第1のオリフィスが、前記第1の位置において前記外側管によって覆われ、前記制御機構は、前記第2の位置から前記第1の位置に前記外側管を回転させるように構成され、前記第1のオリフィスは、前記第2の位置において前記開口を通して露出される、制御機構と
を備える、医療装置。
【請求項2】
前記マイクロカニューレの外径は、前記マイクロカニューレの長さに沿って変動する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記マイクロカニューレの外径は、前記遠位先端部の端部に向かって第1の外径から第2の外径まで先細になり、前記中心長手方向軸に沿った前記遠位先端部の前記第1の外径の位置と前記遠位先端部の前記第2の外径の位置との間の距離は、前記第1の外径の長さより小さい、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記第1の外径は500μm~700μmの間であり、前記第2の外径は100μm~200μmの間である、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記第1のオリフィスは、前記複数のオリフィスのうちの第2のオリフィスから前記マイクロカニューレの前記中心長手方向軸を中心として周方向に180度離して配置される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記複数のオリフィスは、前記中心長手方向軸上の前記遠位先端部の端部から同じ距離に配置される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記1つ又は複数の溝は、前記マイクロカニューレの前記遠位先端部に位置付けられる、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記1つ又は複数の溝のそれぞれは、15μm~35μmの間の深さを有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記1つ又は複数の溝のそれぞれは、前記複数のオリフィスの近位に形成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数の溝は、等距離で配置された少なくとも3つの溝を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
前記物質は粘弾性流体であり、前記ハンドルは、前記粘弾性流体を含むリザーバと、前記粘弾性流体を半径方向外方に前記オリフィスを通して排出するように構成されたアクチュエーターとを備える、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記半径方向外側端部は、前記半径方向内側端部より遠位に位置決めされて、前記複数のオリフィスのそれぞれは、前記マイクロカニューレから遠位に且つ半径方向外方に前記物質を送り出すように構成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項13】
前記外側管は、遠位端部及び空洞を有する外側カニューレを備え、前記外側カニューレは、中心長手方向軸及び1つ又は複数の突出部を有し、前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記遠位端部で周囲に延在し、前記外側カニューレの前記空洞内に位置付けられる、請求項1に記載の医療装置。
【請求項14】
前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記遠位端部で周方向に等間隔で配置される複数の突出部である、請求項13に記載の医療装置。
【請求項15】
前記マイクロカニューレは、前記外側カニューレの内部に移動可能に収容され、1つ又は複数の突出部が、前記マイクロカニューレの外周表面に位置付けられる、請求項13に記載の医療装置。
【請求項16】
前記マイクロカニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記マイクロカニューレの前記外周表面上で周方向に等間隔で配置される複数の突出部である、請求項15に記載の医療装置。
【請求項17】
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部が前記外側カニューレの内部にある場合に、前記マイクロカニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部より近位にある、請求項15に記載の医療装置。
【請求項18】
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部の少なくとも一部が前記外側カニューレの前記遠位端部の外に動かされた場合に、前記マイクロカニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部より遠位にある、請求項15に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、「OCULAR TREATMENT DEVICES AND RELATED METHODS OF USE」と題する2016年12月19日出願の米国仮特許出願第62/436,099号の優先権の利益を主張し、これは参考として本明細書に全体として援用される。
【0002】
本開示の種々の態様は、一般に、眼組織の治療に関する。より詳細には、本開示は、眼圧を下げるための器具、及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
緑内障は、眼圧(IOP:intraocular eye pressure)の上昇に起因する疾患である。眼の自然の排液(たとえば眼の体液の排液)が妨げられる、減少する、又はその他の原因で遮られるとき、IOPが上昇する場合がある。眼の水晶体の前方の(たとえば上部の)空洞は、房水と呼ばれる粘性の流体で満たされている。眼に房水が絶え間なく流れることにより、眼の、血管をもたない部分(たとえば角膜及び水晶体)に栄養が与えられる。また、この房水の流れにより、これらの組織から老廃物(たとえば異物残屑)が取り除かれる。健康な眼では、毛様体の上皮細胞によって新しい房水が分泌されるとき、房水の流れは眼の前房から排出されて線維柱帯を通り、シュレム管に入る。排出された房水はシュレム管から静脈の血流に入り、静脈血とともに運ばれて、眼から出て行く。眼の自然の排液機構(たとえばシュレム管及び/又は線維柱帯)が適切に機能しなくなったとき、IOPが上昇し始める。
【0004】
IOPを下げるためのこれまでの治療は、点眼薬及び他の薬剤の投与を含むことがある。こうした薬剤の投与は1日に複数回必要とされる場合があり、患者の生活の質を下げるおそれがある。さらに、IOPを下げるためにレーザ治療及び他の外科的処理が使用されることがあるが、こうした治療は侵襲的である場合があり、IOPを一時的にしか下げないことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示のシステム、装置、及び方法は、上記の欠点のうちのいくつかを是正し、又は従来技術の他の態様に対処することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの態様は、医療装置を対象とする。医療装置は、近位端部、遠位端部、空洞、及び中心長手方向軸を有するマイクロカニューレを含む。医療装置は、マイクロカニューレの近位端部に連結されたハンドルを含む。マイクロカニューレは、マイクロカニューレの遠位端部の周囲に延在する複数のオリフィスを含む。各オリフィスは、中心長手方向軸に対して横方向に延在するチャネル、及びマイクロカニューレの周囲の1つ又は複数の溝を画定する。
【0007】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレの外径は、マイクロカニューレの長さに沿って変動する。
【0008】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレの内径は、マイクロカニューレの長さに沿って変動する。
【0009】
いくつかの実装形態では、オリフィスのうちの第1のオリフィスは、複数のオリフィスのうちの第2のオリフィスから180度離して配置される。
【0010】
いくつかの実装形態では、1つ又は複数の溝のそれぞれは、15μm~35μmの間の深さを有する。
【0011】
いくつかの実装形態では、1つ又は複数の溝のそれぞれは、オリフィスの近位に形成される。
【0012】
いくつかの実装形態では、1つ又は複数の溝のそれぞれは、別の溝から40μm~60μmの間の距離だけ間隔をあけて配置される。
【0013】
少なくとも1つの態様は、遠位端部、空洞、中心長手方向軸、及び突出部を有する第1のカニューレを含む医療装置を対象とする。第1のカニューレの突出部は、第1のカニューレの遠位端部で周囲に延在し、第1のカニューレの空洞内に位置付けられる。この医療装置は、遠位端部及び空洞を有する第2のカニューレを含む。第2のカニューレは、第1のカニューレの内部に移動可能に収容され、中心長手方向軸、突出部、及び第2のカニューレの遠位端部の周囲に延在する複数のオリフィスを有する。第2のカニューレの突出部は、第2のカニューレの遠位端部で周囲に延在し、第2のカニューレの外周表面に位置付けられる。複数のオリフィスのうちの第1のオリフィスは、複数のオリフィスのうちの第2のオリフィスに対して平行に位置決めされる。
【0014】
いくつかの実装形態では、第2のカニューレは、第2のカニューレの周囲に1つ又は複数の溝を含む。
【0015】
いくつかの実装形態では、第2のカニューレの1つ又は複数の溝は、第2のカニューレの遠位端部に位置付けられる。
【0016】
いくつかの実装形態では、1つ又は複数の溝は、等間隔で配置される。
【0017】
いくつかの実装形態では、第1のカニューレの突出部のそれぞれは、等間隔で配置される。
【0018】
いくつかの実装形態では、第2のカニューレの遠位端部が第1のカニューレの中に収まっているとき、第2のカニューレの突出部は、第1のカニューレの突出部よりも使用者に近位になる。
【0019】
いくつかの実装形態では、第2のカニューレの遠位端部の少なくとも一部が第1のカニューレの遠位端部の外に動かされたとき、第2のカニューレの突出部は、第2のカニューレの突出部よりも使用者から遠位になる。
【0020】
少なくとも1つの態様は、眼に流体を送り出す方法を対象とする。方法は、眼の前房の切開部からマイクロカニューレを挿入するステップを含む。マイクロカニューレは、近位端部、遠位端部、及び空洞を含み、中心長手方向軸を有する。眼の線維柱帯から眼のシュレム管へとマイクロカニューレ遠位端部を進めるステップ。それぞれがシュレム管の中に位置決めされた複数のオリフィスから流体を送り出すステップであって、各オリフィスが、マイクロカニューレ遠位端部の周囲に延在するチャネルを画定する、ステップ。
【0021】
いくつかの実装形態では、複数のオリフィスのうちのオリフィスのチャネルは、中心長手方向軸に対して横方向に延在する。
【0022】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレは、マイクロカニューレの遠位端部において、マイクロカニューレの周囲に1つ又は複数の溝を含む。
【0023】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレは、マイクロカニューレの遠位端部で周囲に延在し且つマイクロカニューレの外周表面に位置付けられた1つ又は複数の突出部を含む。マイクロカニューレは、第2のカニューレの内部に移動可能に収容され、第2のカニューレは、第2のカニューレの遠位端部で周囲に延在し且つ第2のカニューレの空洞内に位置付けられる1つ又は複数の突出部を有する。
【0024】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレの遠位端部を進めるステップは、マイクロカニューレに力を加えて、マイクロカニューレの1つ又は複数の突出部を使用者から遠位に、且つ第2のカニューレの1つ又は複数の突出部を越えて動かすステップをさらに含む。
【0025】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成しており、また本開示の例示的な態様を示し、説明と併せて本開示の原理を説明するように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の態様による、ハンドル及びマイクロカニューレを有する例示的な装置を示す図である。
【
図2A】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの拡大図である。
【
図2B】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの拡大図である。
【
図2C】例示的な一実装形態による、
図2Bのマイクロカニューレの先端部の拡大図である。
【
図2D】例示的な一実装形態による、
図2Bのマイクロカニューレの締結機構の拡大図である。
【
図2E】例示的な一実装形態による、複数のカニューレを備えた例示的な装置を示す図である。
【
図2F】例示的な一実装形態による、複数のカニューレを備えた例示的な装置を示す図である。
【
図2G】例示的な一実装形態による、例示的な装置に含まれるアクチュエータを示す図である。
【
図2H】例示的な一実装形態による、例示的な装置に含まれるアクチュエータを示す図である。
【
図2I】例示的な一実装形態による、例示的な装置に含まれるアクチュエータを示す図である。
【
図2J】例示的な一実装形態による、例示的な装置に含まれるアクチュエータを示す図である。
【
図2K】例示的な一実装形態による、外側管を備えた例示的な装置を示す図である。
【
図2L】例示的な一実装形態による、外側管を備えた例示的な装置を示す図である。
【
図2M】
図1の装置のマイクロカニューレ及び外側シースの拡大断面図である。
【
図2N】
図1の装置のマイクロカニューレ及び外側シースの拡大断面図である。
【
図3A】例示的な一実装形態による、
図1の例示的な装置の断面図である。
【
図3B】例示的な一実装形態による、
図1の例示的な装置のリザーバの断面図である。
【
図3C】例示的な一実装形態による、
図1の例示的な装置の別の実装形態の断面図である。
【
図4A】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの斜視図である。
【
図4B】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4C】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4D】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4E】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4F】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4G】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4H】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4I】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図4J】例示的な一実装形態による、
図1の装置のマイクロカニューレの先端部の断面図である。
【
図5A】例示的な一実装形態による、
図1の装置の例示的な使用方法を示す図である。
【
図5B】例示的な一実装形態による、
図1の装置の例示的な使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の特徴を限定しない。本明細書において、用語「備える」、「備えている」、又はこれらの他の変化形は、あるリストの要素を含むプロセス、方法、物品、又は機器が、これらの要素のみを含むのではなく、こうしたプロセス、方法、物品、若しくは機器に固有のものでない、又は明確に列挙されていない他の要素を含み得るように、非排他的な包含を含むことを意図している。さらに、用語「例示的な」は、本明細書では、「理想的な」という意味ではなく、「実例の」という意味で使用される。本明細書において、用語「約」、「実質的に」及び「ほぼ」は、記載された値の+/-5%以内の値の幅を示す。用語「遠位」は、装置を被験者に導入するときに使用者から最も遠い部分を指す。対照的に、用語「近位」は、被験者に装置を配置するときに使用者に最も近い部分を指す。
【0028】
図1に示すように、例示的な装置10は、コネクタ16を介してマイクロカニューレ14に連結されたハンドル12を含む。たとえば、マイクロカニューレ14の近位端部18又は近位領域が、コネクタ16を介して、ハンドル12の遠位端部20又は遠位領域に連結される。コネクタ16は、補強シャフト又は補強管24を通って延在する内腔22(
図3A)と、コネクタ本体26とを含む。コネクタ16の近位端部は、ハンドル12の遠位端部20にねじ式に又は固定的に連結することができ、一方、マイクロカニューレ14の近位端部18は、コネクタ16の内腔22を通って延在し、コネクタ16に固定的に連結(たとえば糊付け、溶接、又は他の方法で固着)される。このようにして、マイクロカニューレ14はハンドル12に固定的に連結される。
【0029】
医療従事者がよりしっかりとハンドル12を握ることができるように、コネクタ本体26の半径方向外周表面は、刻み目を付けられても、リブを付けられても、その他の方法でテクスチャを付けられてもよい。いくつかの構成では、コネクタ16及び遠位端部20の少なくとも一方は、流体ルアー・ポート(図示せず)を含む。流体ルアー・ポートは、コネクタ16及び/又は遠位端部20から半径方向に離れるように延在することができ、交換可能な外部リザーバに連結するように構成され得る。以下により詳細に説明するように、このようにして、ハンドル12の中に位置決めされたリザーバ28(
図3A)を、医療従事者の必要又は要望に応じて選択的に再充填することができる。
【0030】
図1に示すように、マイクロカニューレ14は、作動長L、たとえば管24の近位端部とマイクロカニューレ14の最遠位端部との間に延びる、約30mm~約40mmの間の長さを含む。いくつかの実装形態では、作動長Lは約36.150mmでもよい。いくつかの実装形態では、作動長Lは約20mmでもよい。
図2Aに示すように、いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の直径Dは、約500μm~約600μmの間でもよい。マイクロカニューレ14の遠位端部30は、丸くされるか又はその他の方法で非侵襲的になっており(たとえば先を丸める、鋭くしないなど)、複数のオリフィス32を含む。たとえば、マイクロカニューレ14の遠位端部30は、遠位端部30の周囲に等間隔で配置された4つのオリフィス32を含む(
図2Aでは2つのオリフィス32のみが見えている)。各オリフィス32のオリフィス直径Oは、30μm~70μmの間でもよい。いくつかの実装形態では、各オリフィス32の直径Oは約50μmである。いくつかの実装形態では、各オリフィス32の直径Oは約60μmである。等間隔で配置された4つのオリフィス32を図示及び説明しているが、他の構成では、これより多いか又は少ないオリフィス32が遠位端部30の周囲に位置決めされてもよく、また等間隔で配置されても、等間隔で配置されなくてもよい。たとえば、
図2Bに示すように、遠位端部30は2つのオリフィス32を含む。いくつかの実装形態では、
図2Bに示すように(
図2Bでは2つのオリフィス32の一方のみが見えている)、オリフィス32は、遠位端部30の周囲で、互いから約180度離して位置決めされる。さらに、いくつかの構成では、オリフィス32は、遠位端部30に沿って様々な軸方向位置に位置決めされてもよい。以下により詳細に説明するように、いくつかの実装形態では、オリフィス32は、リザーバ28(
図3A)から流体(たとえば液体若しくは気体)又は他の物質を送り出すように構成され、マイクロカニューレ14の中心軸Cに対して垂直でない角度で延在する。いくつかの実装形態では、オリフィス32は、リザーバ28から流体又は他の物質を送り出すように構成され、マイクロカニューレ14の中心軸Cに対して垂直な角度で延在する。
【0031】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の長さに沿ってサイズが変動する外径を有してもよい。たとえば、
図2Bに示すように、マイクロカニューレ14の近位端部の近くの外径OD1は、約600μmなど、約500μm~約700μmの間でもよく、マイクロカニューレ14の遠位端部の近くの外径OD2は、約150μmなど、約100μm~約200μmの間でもよい。マイクロカニューレ14の外径は、マイクロカニューレ14の末端部近くで先細りになってもよい。たとえば、
図2Bでは、マイクロカニューレ14の外径OD1は、マイクロカニューレ14の末端部98の近くで、OD2へと先細りになっている。マイクロカニューレ14の第1の外径は、マイクロカニューレ14の末端部から一定の距離のところから先細りになってもよい。たとえば
図2Bでは、外径OD1は、マイクロカニューレ14の末端部98から350μmのところから先細りになってもよい。マイクロカニューレ14の第1の外径は、第2の外径へと徐々に先細りになってもよい。たとえば
図2Bでは、外径OD1は、マイクロカニューレ14の末端部98から350μmのところで、600μmから末端部98近くの150μmの外径OD2へと、徐々に先細りになっている。
【0032】
マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の長さに沿ってサイズが変動する内径を有してもよい。たとえば、マイクロカニューレ14の近位端部の近くの内径は、400μmなど、約300μm~500μmの間でもよく、マイクロカニューレ14の遠位端部の近くの内径は、近位端部近くの内径とは異なるサイズでもよい。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の内径は、マイクロカニューレ14の末端部から一定の距離のところで、近位端部近くの内径から遠位端部近くの内径へと先細りになってもよい。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の内径は、マイクロカニューレ14の円周溝の場所、たとえば
図2Bの円周溝99aなど、マイクロカニューレ14の近位端部に最も近い円周溝の場所から先細りになってもよい。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の内径は、マイクロカニューレ14の外径が先細りになるのと同じ率で先細りにされ、したがって外径のサイズと内径のサイズの比は、一定、又はほぼ一定になる。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の内径は、マイクロカニューレ14の外径が先細りになるのと同じマイクロカニューレ14の場所から先細りにされる。たとえば、上述のように、マイクロカニューレ14の外径は、マイクロカニューレ14上の、マイクロカニューレ14の末端部98から350μmの場所で、OD1から先細りにされてもよく、同様に、マイクロカニューレ14の内径も、マイクロカニューレ14の末端部98から350μmの場所で、第1のサイズから先細りにされてもよい。
【0033】
マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の周囲に、円周溝99a、99b、99cなどの(本明細書では「円周溝」と呼ばれる)1つ又は複数の溝を含んでもよい。いくつかの実装形態では、
図2B及び
図2Cに示すように、マイクロカニューレ14は、3つのこうした円周溝を含む。
図2Bに示すように、各円周溝は、マイクロカニューレ14上で、別の円周溝から距離gdだけ間隔をあけて配置することができる。距離gdは、約40μm~約60μmの間でもよい。たとえば、
図2Bの円周溝99a、99b、及び99cの間の距離gdは、約50μmでもよい。
図2Cに示すように、各円周溝は、深さがgDeでもよい。深さgDeは、約15μm~35μmの間でもよい。いくつかの実装形態では、円周溝の深さgDeは25μmである。
図2Bに示すように、円周溝は、マイクロカニューレ14の遠位端部の近くに形成することができる。いくつかの実装形態では、円周溝は、マイクロカニューレ14上の、マイクロカニューレ14の末端部98から約500μm~250μm離れた場所から、たとえばマイクロカニューレ14の末端部98から約350μm離れた場所から形成されてもよい。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14上の、マイクロカニューレ14の末端部98から約500μm~250μm離れた場所から始まるマイクロカニューレ14の遠位部分は、粗面のシャフトになるように構成される。
【0034】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の周囲に(本明細書では「円周突出部」と呼ばれる)1つ又は複数の突出部を含んでもよい。各円周突出部は、マイクロカニューレ14上で、別の円周突出部から約40μm~約60μmの間の距離など、一定の距離だけ間隔をあけて配置することができる。いくつかの実装形態では、各円周突出部は約50μmでもよい。各円周突出部は、約15μm~35μmの間の一定の高さでもよい。いくつかの実装形態では、円周突出部の高さは25μmである。円周突出部は、マイクロカニューレ14の遠位端部の近くに形成されてもよい。いくつかの実装形態では、円周突出部は、マイクロカニューレ14上の、マイクロカニューレ14の末端部98から約500μm~250μm離れた場所から、たとえばマイクロカニューレ14の末端部98から約350μm離れた場所から形成されてもよい。マイクロカニューレ14は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、デュロメータ硬さが高いシリコーンなどの種々のタイプのシリコーンなどを含むがこれらに限定されない、種々の材料で形成することができる。マイクロカニューレ14は、締結機構を含んでもよく、締結機構に連結されてもよい。こうした締結機構の一実例は、
図2Dに示したルアー・ロック102などのルアー・ロックである。いくつかの実装形態では、締結機構は、
図2Dに示したルアー・ロック102の外面ねじ部プロファイル103など、外面のねじ部プロファイルとともに構成されてもよい。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の近位端部で、ルアー・ロック102などの締結機構に取り付けられ、又は連結される。いくつかの実装形態では、コネクタ本体26は、締結機構を受けるように構成されてもよい。たとえば、締結機構が外面ねじ部プロファイルを含む場合、コネクタ本体26は、コネクタ本体26の遠位端部の近くに内面ねじ部プロファイル(図示せず)を備えて、締結機構を受けるように構成されてもよい。
【0035】
いくつかの実装形態では、例示的な装置10は、
図2Eに示すように、外側カニューレ210、内側カニューレ230などの複数のカニューレ及び/又はマイクロカニューレを含んでもよい。
図2Eに示すように、内側カニューレ230は、外側カニューレの内部に収容することができる。
図2Eでは、外側カニューレ210は、約250μm、300μm、又は350μmなど、200~400μmの間の外径を有することができる。いくつかの実装形態では、外側カニューレ210の内径は、100μm~200μmの間である。外側カニューレ210は、合わせて突出部220である、突出部220a、220bなど、1つ又は複数の突出部を含む。突出部220は、外側カニューレ210の内周表面など、外側カニューレ210の内側に位置付けられる。突出部220は、互いから等間隔で配置されても、等間隔で配置されなくてもよい。突出部220は、突出した刻み目、拡張部などでもよい。いくつかの実装形態では、突出部220は互いに向かって延在する。外側カニューレ210は、コネクタ16を介して、遠位端部20など、ハンドル12の遠位端部に連結される。上述のように、内側カニューレ230は外側カニューレ210の内部に収容される。内側カニューレ230はハンドル12の内部にも収容され、ハンドル12から外に延出し、ハンドル12の中に後退するように構成される。アクチュエータ38などの制御ユニットが、内側カニューレ230の延出及び後退を制御するように構成される。
【0036】
図2Eに示すように、内側カニューレ230は、本明細書では合わせて突出部240と呼ばれる突出部240a、240bなどの、1つ又は複数の突出部を含む。突出部240は、互いから等間隔で配置されても等間隔で配置されなくてもよく、また内側カニューレ230の外周表面に位置付けることができる。突出部240は、突出部220に揃う場所で内側カニューレ230に位置付けることができ、したがって、内側カニューレ230が遠位端部20などのハンドル12の遠位端部から一定の距離を延出したとき、突出部220は突出部240に係合し、内側カニューレ230をさらに延出させる閾値量の力がアクチュエータに加えられるまで、内側カニューレ230がそれ以上延出しないようにする。アクチュエータに閾値量の力が加えられると、突出部240が突出部220を押し下げることにより、内側カニューレ230が延出する。突出部220は、外側カニューレ210の中に押し下げられるように構成することができる。
図2Fに示すように、閾値量の力が加えられると、内側カニューレ230が素早く線維柱帯86を貫通する。いくつかの実装形態では、内側カニューレ230は、
図2Bに示すように、円周溝99a、99b、99cなどの円周溝を含んでもよい。いくつかの実装形態では、内側カニューレ230は、内側カニューレ230の遠位端部の周囲に位置決めされた、オリフィス32などの1つ又は複数のオリフィスを含んでもよい。内側カニューレ230のオリフィスは、等間隔で配置されてもよく、等間隔で配置されなくてもよい。いくつかの実装形態では、内側カニューレ230のオリフィスは、上述の、また
図2Bに示したオリフィス32の位置と同様に、内側カニューレ230の遠位端部の周囲で、互いから約180度離して位置決めされる。いくつかの実装形態では、内側カニューレ230のオリフィスは、内側カニューレ230の遠位端部に沿って様々な軸方向位置に位置決めされてもよく、
図3Aに示すように、リザーバ28などのリザーバから、流体(たとえば液体若しくは気体)又は他の物質を送り出すように構成される。いくつかの実装形態では、内側カニューレ230のオリフィスは、内側カニューレ230の中心軸に対して垂直でない角度、又は内側カニューレ230の中心軸に対して横方向の角度で延在する。
【0037】
ハンドル12は、手に、たとえば医療従事者の利き手の手のひらに楽に把持されるように設計された、人間工学的な形状をとることができる。ハンドル12の長さは、約12.7cm(5インチ)~約25.4cm(10インチ)の間でもよい。以下により詳細に説明するように、ハンドル12は、近位端部34、遠位端部20、及びこれらの間に延在するチャネル又はトラック36を含むことができる。近位端部34及び遠位端部20は、概ね円形の断面形状をもつ。別法として、近位端部34及び遠位端部20は、本開示の範囲から逸脱しない限り、任意の他の断面形状(たとえば楕円形、多角形、不規則な形状など)を有してもよい。いくつかの構成では、近位端部34及び/又は遠位端部20の断面形状は、ハンドル12の長さに沿って変動してもよく、且つ/又は互いに異なってもよい。任意選択で、近位端部34は、図示してあるように、近位方向に先細りにされてもよく、細くされてもよい。
【0038】
ハンドル12は、アクチュエータ38を含む。アクチュエータ38は、ハンドル12のトラック36の中に受けられるボタン又は摺動部40を含む。いくつかの構成では、
図1及び
図3に示すように、摺動部40は、少なくとも部分的に曲げられるか又は折り畳まれてもよい。別法として、摺動部40は任意の適当な形状を有してもよい。摺動部40の第1の端部42(たとえば遠位端部)は、ハンドル12の内部で(たとえば摺動可能、並進可能など)移動可能に位置決めされた滑走部、往復台、及び/又はアクチュエータ本体44に固定することができる(たとえば永続的に固定する、分離不能にする、使用中はずっと固定する、溶接する、糊付けする、且つ/又は熱かしめするなど)。たとえば、以下により詳細に説明するように、アクチュエータ本体44は、ハンドル12に対してある軸(たとえばハンドル12の中心長手方向軸、又はそれに平行な軸)に沿って移動、摺動、又は並進することができる。さらに、以下により詳細に説明するように、摺動部40の第2の端部46(たとえば近位端部)は、トラック36の中に受けられるサイズにされた突出部又は突起部を含む。示してあるように、第2の端部46は、以下により詳細に説明するように、トラック36に沿った移動を容易にするように角度を付けられ、先細りにされ、又は傾斜する。いくつかの実装形態では、アクチュエータ38は、
図2Gに示した押しボタン250などの押しボタン、
図2Hに示したスクロール・ホイール251、
図2Iに示したスライダ252などでもよい。いくつかの実装形態では、アクチュエータ38は、
図2Jに示したアクチュエータ253のように押しつぶされて、マイクロカニューレ14を介した流体の送出を制御するように構成されてもよい。
【0039】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14は、
図2Kに示すように、外側管254などの外側管の内部に収容される。外側管254は、開口255などの開口又は切抜き部を含む。いくつかの実装形態では、
図2Kに示すように、開口又は切抜き部255は、外側管254の遠位端部に位置付けられる。外側管254はハンドル12へと延在し、ハンドル12の近位に位置付けられた制御機構によって回転されるように構成される。外側管254を回転させることにより、遠位端部のオリフィス32など、マイクロカニューレ14の1つ又は複数のオリフィスを露出させ、又は隠すことができる。たとえば、
図2Lに示すように、開口255が
図2Kの位置から
図2Lの位置へと移動するように外側管254を回転させると、
図2Kでは露出しているオリフィス32が、
図2Lではもう隠れている。
【0040】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14は、
図2Mに示すように、外側シース260などの外側シースの内部に移動可能に収容される。マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の先端部などのマイクロカニューレ14の少なくとも一部を外側シース260から延出させ且つ外側シース260の中へと後退させるように構成された制御機構と使用者との相互作用に応じて、外側シース260の遠位端部から延出するように構成される。たとえば、
図2Nに示すように外側シース260の外にマイクロカニューレ14を延出させるには、使用者は、マイクロカニューレ14を外側シース260の外に延出させるように構成された方向で、マイクロカニューレ14に連結されたアクチュエータに閾値量の力を加えることができる。いくつかの実装形態では、外側シース260は、医療装置10の使用者に近位な方向に移動して、
図2Nに示すようにマイクロカニューレ14の先端部などのマイクロカニューレ14の少なくとも一部を外側シース260の外に露出させるように構成される。外側シース260は、外側シース260の遠位部分が患者の線維柱帯に押し付けられるのに応じて、使用者に近位な方向に移動してもよい。
【0041】
マイクロカニューレ14に連結されたアクチュエータに閾値量の力を加えてマイクロカニューレ14の少なくとも一部を外側シース260の外に延出させることにより、マイクロカニューレ14が患者の線維柱帯の近くに進んだとき、マイクロカニューレ14の少なくともその部分が、(
図5A及び
図5Bに示した)線維柱帯86などの、患者の線維柱帯を貫通する。同様に、外側シース260の遠位部分が線維柱帯に押し付けられるのに応じて外側シース260が医療装置10の使用者に近位な方向に移動するように構成された実装形態では、マイクロカニューレ14の露出した部分、又はマイクロカニューレ14の露出した部分の一部が、線維柱帯を貫通することができる。
【0042】
トラック36は、ハンドル12の中心長手方向軸に対して、ハンドル12の半径方向外側壁部を通って延在する。したがって、摺動部40は、トラック36を通って、中心軸から半径方向外方に延在することができる。示してあるように、内側に突出した複数対の刻み目、拡張部、又はフランジ48が互いに向かって延在して、トラック36の長さに沿って、軸方向に間隔をあけた複数の場所でトラック36の幅を狭めるように、トラック36に刻み目を付けることができる。言い換えれば、トラック36はハンドル12に沿って長手方向に延在し、トラック36の長手方向の長さに対して垂直方向に延在する幅をもつ。トラック36の、1対のフランジ48を備えた各場所の幅が、1つ又は複数のフランジ48がない場所でのトラック36の幅よりも小さく、又は狭くなるように、トラック36の幅は、トラック36の長さに沿って変動する。以下により詳細に説明するように、フランジ48の隣接した対同士の間の軸方向の間隔は、マイクロカニューレ14を介して注入する物質(たとえば流体又は気体)の1回の投与量又は分量に、直接的に相関し得る。さらに、本開示の範囲から逸脱しない限り、摺動部40は、任意の適当なアクチュエータ、たとえばホイール、ボタン、トグルなどに置き換えられてもよいことが理解される。
【0043】
図3A及び
図4Aに目を向けると、上記のように、コネクタ16により、マイクロカニューレ14とハンドル12の間の連結が容易になる。たとえば、コネクタ16の近位端部50は、ハンドル12の遠位端部20の空洞52の中に半径方向に受けられてもよい。近位端部50と空洞52には、互いに対応するようにねじを切って、これらの間の確実な係合を容易にしてもよい。上記のように、マイクロカニューレ14の近位端部18はコネクタ16の内腔22を通って延在し、コネクタ16に固定的に連結(たとえば糊付け、溶接、又はその他の方法で固着)することができる。さらに、コネクタ16は、コネクタ16の内腔22及びハンドル12の遠位端部20の内腔56の中に受けられる、管、シャフト、又は他のこうした支持体54を含む。
【0044】
ピストン・ロッド58を含むピストン組立体が、マイクロカニューレ14の中心内腔60、コネクタ16の内腔22、ハンドル12の遠位端部20の内腔56を通り、ハンドル12の空洞62の中に収容されたアクチュエータ本体44に向かって、近位方向に延在する。ピストン・ロッド58は、中心内腔60の中に、往復運動するように設けることができる。ピストン・ロッド58の近位端部はアクチュエータ本体44に固定的に連結されており、したがって、アクチュエータ本体44を遠位方向に進めると、ピストン・ロッド58も同様に遠位方向に進むことになる。
図4Aに示してあるように、ピストン・ロッド58はピストン・ヘッド64に連結され、マイクロカニューレ14の中心内腔60に対して軸方向に移動することができる。ピストン経路66がピストン・ロッド58、ピストン・ヘッド64を通って延在し、遠位方向にはピストン・オリフィス68を末端とする。ピストン経路66の中に一方向弁、又は他の適した弁70を配置して、流体又は他の物質の逆流、たとえば近位方向に送り出される流れを防止、抑制、又は阻止してもよい。
【0045】
リザーバ28から流体又は他の物質を送り出すために、医療従事者は、マイクロカニューレ14に向かって遠位方向に摺動部40を進めることができる。第1の端部42とアクチュエータ本体44が連結していること、またアクチュエータ本体44とピストン・ロッド58が連結していることにより、摺動部40を遠位方向に進めると、ピストン・ヘッド64がオリフィス32に向かって進み、それにより、中心内腔60の中の流体又は他の物質が、オリフィス32を通って送り出される。任意の適当な機構を使用して、リザーバ28の中の流体又は物質がピストン経路66を通り、ピストン経路66内の一方向弁70を通り、空洞60へと至るように押し進めることができる。たとえば、リザーバ28を圧縮し、それにより、流体又は他の物質をピストン経路66の中に、またピストン経路66を通るように押し進めてもよい。別法として、毛管作用、マイクロ・ポンプ(たとえばMEMSポンプ)、又は任意の他の適したポンプ(図示せず)により、流体又は他の物質をピストン経路66に引き込んでもよい。
【0046】
いくつかの実装形態では、
図3Bに示すように、充填ポート350がリザーバ28に流体連通していてもよく、粘性物質(visco)が充填ポートを介してリザーバ28に注入されてもよい。一方向弁351がリザーバ28の遠位端部に取り付けられ、プランジャ352がリザーバ28の近位端部に取り付けられてもよい。弁ばね353が、プランジャ352及び一方向弁351に連結される。プランジャ352を作動させる、又は縮めると、粘性物質が圧縮され、一方向弁351が開き、それにより、マイクロカニューレ14の遠位端部30のオリフィス32から粘性物質が吐出される。プランジャ352は、機械的に作動されてもよく、電気的に作動されてもよい。いくつかの実装形態では、プランジャ352は、二酸化炭素(CO2)などの気体によって作動されてもよい。いくつかの実装形態では、プランジャ352は超音波水晶体乳化吸引術(phaco)システムに連結され、超音波水晶体乳化吸引術システムによって作動されてもよい。
【0047】
いくつかの実装形態では、ハンドル12は、粘性物質バッグ、及び粘性物質バッグに通じるように連結されたボタンを含んでもよく、粘性物質バッグは、遠位端部30のオリフィス32と連通する。ボタンを押し下げると、粘性物質バッグが圧縮され、粘性流体が遠位端部30のオリフィス32から吐出される。いくつかの実装形態では、
図3Cに示すように、ハンドル12は、一方向弁361a、361bと連通したフレキシブルな球状部360を含む。フレキシブルな球状部を圧縮すると、一方向弁が開き、ハンドル12の中の粘性物質が遠位端部30のオリフィス32へと送り出される。
【0048】
図4Aに示すように、各オリフィス32は、マイクロカニューレ14の中心軸Cなど、マイクロカニューレ14の軸に対して角度を付けられたチャネルでもよい。上述のように、オリフィス32は、マイクロカニューレ14の軸に対して垂直な角度で延在しても、垂直でない角度で延在してもよく、したがって、チャネルはマイクロカニューレ14の軸に対して垂直な角度、又は垂直でない角度を付けられる。加えて、各オリフィスは、先細りになった構成をもつ1つ又は複数の開口を有してもよい。たとえば、各オリフィス32の第1の端部(たとえば半径方向内側の端部)は、マイクロカニューレ14の長さLに沿った第1の軸方向位置に位置決めされてもよく、各オリフィス32の第2の端部(たとえば半径方向外側の端部)は、マイクロカニューレ14の長さLに沿った第2の軸方向位置に位置決めされてもよい。いくつかの実施例では、第2の軸方向位置は、第1の軸方向位置より近位でもよい。他の実施例では、第2の軸方向位置は、第1の軸方向位置より遠位でもよい。このように、各オリフィス32によって画定されるチャネルは、中心長手方向軸Cに対して角度を付けられてもよい。言い換えれば、各オリフィス32の第1の端部は、半径方向において中心長手方向軸Cにより近いところに(且つ中心長手方向軸Cに平行な軸に沿って、各オリフィス32の第2の端部より遠位又は近位に)位置決めされ、各オリフィス32の第2の端部は、半径方向において中心長手方向軸Cからより遠いところに(且つ中心長手方向軸Cに平行な軸に沿って、各オリフィス32の第1の端部より近位又は遠位に)位置決めされる。たとえば、オリフィス32によって画定されるチャネルは、中心長手方向軸Cに対し、約5°~約45°である角度αで延在してもよい。したがって、中心内腔60からオリフィス32を通して流体又は他の物質を送り出している間、流体又は他の物質は、必ず(たとえば遠位位置から近位位置への)近位方向、又は遠位方向に、且つマイクロカニューレ14から半径方向に遠ざかるように流れることになる。
【0049】
上記のように、トラック36のフランジ48の隣接した対同士の間の軸方向の間隔は、マイクロカニューレ14を介して注入する流体又は他の物質の1回の投与量又は分量に相関する。たとえば、摺動部40を進める前には、摺動部40の第2の端部46はフランジ48の2つの第1の隣接対の間に位置決めされており、それにより、摺動部40を不注意で進め(又は後退させ)、オリフィス32から流体又は他の物質を注入することが防止される。摺動部40を進め、オリフィス32を介して流体又は他の物質を注入するには、医療従事者は、まずフランジ48の2つの第1の隣接対が摺動部40の第2の端部46に与える抵抗に勝たなければならず、次いで、引き続き摺動部40を進めて、ピストン・ヘッド64より遠位な中心内腔60内の流体又は他の物質をオリフィス32から押し出す、又は押し進めなければならない。つまり、摺動部40が遠位方向に前方へ押し進められるとき、第2の端部46の角度の付いた、又は傾斜した表面は、第2の端部46がハンドル12の中心軸に向かって半径方向内側にたわんでフランジ48の下に位置決めされるまで、フランジ48の表面に沿って摺動又は移動することになり、第2の端部46がフランジ48の下に位置決めされたとき、摺動部40は引き続き遠位方向に進むことができる。
【0050】
摺動部40が遠位に進み続けるとき、第2の端部46は、フランジ48の2つの第2の隣接対の間に受けられ、そこに保持されてもよく、これにより、不注意でさらに進むことが防止される。たとえば、第2の端部46は、ハンドル12の中心軸から離れるように、半径方向に外側へたわむ(たわんでいない配向に戻る)ことができる。第2の端部46は、たわんでいない配向に向かって、半径方向に外側へ付勢され得ることが理解される。フランジ48の2つの第2の隣接対は、フランジ48の2つの第1の隣接対に隣接していてもよい(たとえばそのすぐ隣でもよい)。言い換えれば、摺動部40が遠位方向に進められるとき、フランジ48のそれぞれの2つの隣接対と第2の端部46との間の相互作用により、医療従事者に及ぼされる抵抗が増すことになり、これにより、指定された投与量又は量の流体又は物質がオリフィス32から送り出されたことが触知的に示される。
【0051】
いくつかの実装形態では、
図4Bの分解図に示すように、マイクロカニューレ14の先端部は、
図4Cに示すようにマイクロカニューレ14の先端部にレーザ溶接することができる、機械加工されたキャップ401を含む。いくつかの実装形態では、
図4Dの分解図に示すように、エポキシなどの接着材料を使用して、マイクロカニューレ14の先端部にワイヤ402を接着してもよい。その結果得られる先端部が、
図4Eに示してある。いくつかの実装形態では、ワイヤはマイクロカニューレ14の先端部にレーザ溶接されてもよい。いくつかの実装形態では、
図4Fに、また回転した図である
図4Gに示すように、マイクロカニューレ14の先端部は、シリコーンのオーバーモールド403で包まれてもよい。いくつかの実装形態では、
図4Hに示すように、ケイ素のオーバーモールド403は、もう1つのスリット404を含んでもよい。いくつかの実装形態では、
図4Iの分解図に示すように、ポリイミドのオーバーモールド406a及び406b、並びにコアとなるピン405を使用してマイクロカニューレ14の先端部を包んでもよく、それにより、90度回転した図である
図4Jに示す、マイクロカニューレ14及び先端部の構成が得られる。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の先端部は、強膜など、患者の特定の部分を貫通することを防止するために、柔らかいポリマー材料で構成される。いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14の先端部は発光ダイオードなどの光源を含み、これは、光源への給電など、光を発生させる入力を受けたのに応答して、線維柱帯において光を発するように構成される。
【0052】
いくつかの実装形態では、マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の遠位端部にニチノール(NiTi)の管を含む。遠位端部のNiTi管は、NiTi管が一定の距離を進んだ後、一定の方向に曲がるように構成される。いくつかの実装形態では、ハンドル12はNiTi管に連結された制御機構を含み、制御機構は、入力を受けたのに応答して、又は使用者が制御機構と相互作用するのに応答して、NiTi管を180度回転させるように構成される。
【0053】
図5A及び
図5Bには、装置10を使用してたとえばシュレム管80又は患者の眼の任意の他の適した部分に物質(たとえば流体又は気体)を送り出す、例示的な方法が示してある。上記のように、健康な眼では、房水82の流れは眼の前房84から排出されて線維柱帯86を通り、次いでシュレム管80及び遠位集合管に入る。次いで、房水82は、シュレム管80から出て集合管及び遠位静脈系に入る。房水82のこの流路が(たとえば線維柱帯86及び/又はシュレム管80の組織が疾患にかかるか又は損傷したことによって)遮断されたとき、眼のIOPが上昇することがあり、それにより、場合によっては種々の健康上の懸念(たとえば緑内障、視力喪失、視神経の損傷など)が生じる。房水82の流路を改善するために、医療従事者は、
図5Aに示すように、前房84に形成した切開部88からマイクロカニューレ14を挿入し、マイクロカニューレ14の遠位端部30を線維柱帯86からシュレム管80へと進めることができる。任意選択で、マイクロカニューレ14の最遠位端部によってシュレム管80に直接押し入るのではなく、(たとえばIVニードルを静脈に挿入するのと類似した方式で)遠位端部30をシュレム管80に対して接線方向に挿入することによってマイクロカニューレ14をシュレム管80に挿入することができるように、遠位端部30は湾曲していてもよい。
【0054】
次に
図5Bに目を向けると、各オリフィス32がシュレム管80の中に完全に収まるようにマイクロカニューレ14の遠位端部30をシュレム管80に挿入すると、医療従事者は、上記のように摺動部40(
図1、
図3A、及び
図4A)を作動させることにより、リザーバ28から既定の投与量又は量の流体又は他の物質を注入することができる。さらに、摺動部40の進行は第2の端部46とフランジ48の相互作用によって制限されているので、摺動部40を各増分単位で進めると注入される流体又は物質の既定の各投与量又は量は、正確且つ精密である。たとえば、各「投与量」は、200マイクロリットル+/-50マイクロリットルでもよい。
【0055】
オリフィス32(
図2A及び
図4A)から既定の投与量又は量の流体又は他の物質を注入した後、マイクロカニューレ14は、マイクロカニューレ14の中心軸C(
図4A)を中心に、約50°~約120°、たとえば約60°~約90°回転されてもよい。回転されると、医療従事者は、上記のように摺動部40(
図1、
図3、及び
図4)を作動させることにより、リザーバ28から追加の既定の投与量又は量の流体又は他の物質を注入することができる。このプロセスは、任意の適当な回数、たとえば約6回繰り返されてもよく、次いで、マイクロカニューレ14は切開部88から取り出されてもよい。
【0056】
任意選択で、(たとえばマイクロカニューレ14の遠位端部30を(回転させる以外に)位置変更することなく)シュレム管80内の特定の場所で、1回又は複数回既定の投与量の流体又は他の物質を注入した後、遠位端部30を眼の中で後退させ、再配置してもよい。いくつかの構成では、こうした再配置は、切開部88(たとえば第1の切開部88)からマイクロカニューレ14を抜き取り、第1の切開部88から間隔をあけられた追加の切開部88から再挿入することによって行われる場合がある。いくつかの実装形態では、流体はシュレム管80と線維柱帯86に同時に送り出されてもよく、それにより、シュレム管80が開いて、線維柱帯86の種々の層へと流体を送り出す。別法として、こうした再配置は、シュレム管80及び/又は線維柱帯86から遠位端部30を後退させ、次いで、第1の切開部88からマイクロカニューレ14を取り出すことなくシュレム管80の新しい部分へと位置変更することを含んでもよい。いずれの場合でも、マイクロカニューレ14の遠位端部30は、元の挿入箇所から約30~90°離して位置決めされ得る。
【0057】
リザーバ28の中に配置され、オリフィス32を介して注入される物質は、任意の適当な物質でもよい。たとえば、物質は、たとえばヒアルロン酸ナトリウムやコンドロイチン硫酸などの粘弾性流体を含んでもよい。粘弾性流体は、非常に柔らかいゲル状の材料であり、これは、互いから離れるように組織構造を広げて房水82の流路を再び開くか又は広げることにより、適切に排液して眼圧を軽減するのに十分な空間を提供する助けとなる。粘弾性流体は、出血している構造を互いから離れるように広げて視認性を改善することにより、遮られている視界をはっきりさせることもできる。
【0058】
別の構成では、リザーバ28は、幹細胞、薬物、気体(たとえばSF6若しくはC3F8)、及び/又は染料(たとえばトリパン・ブルー染料)で充填されてもよい。注入された染料は、たとえば線維柱帯86のどの区域が閉塞し、つぶれたままになっているか、又は房水82の流れを妨害しているかを(こうした区域があれば)決定するために、線維柱帯86を流れて、房水82の流体の流れの視認性を向上させることになる。一方、注入された幹細胞は、眼内の健康な組織の成長を引き起こすことができる(たとえば、健康な線維柱帯86を作り出して、そこを通る房水82の排液を向上させる)。
【0059】
いくつかの構成では、第1の物質を眼の1つ又は複数の場所に注入し、第1の物質とは異なる第2の物質でリザーバ28を再充填し、次いで、第2の物質を眼の1つ又は複数の場所に注入する。さらに、このプロセスは、選択された各物質を送り出すために、必要に応じて繰り返されてもよい。たとえば、上記のように、コネクタ16と遠位端部20の一方又は両方が流体ルアー・ポート(図示せず)を含んでもよく、リザーバ28はそこから選択的に再充填されてもよい。したがって、複数の物質、たとえば粘弾性物質、薬物、幹細胞、及び染料を患者の眼に注入して、所望の結果(たとえば房水82の流路を可視化する、シュレム管80を広げる、組織の再生を促す、又はその他の方法で疾患組織を医学的に治療すること)を得ることができる。したがって、処置中、医療従事者が必要であり且つ/又は有益であると考える種々の物質を送り出すために、単一の(たとえば1つだけの)切開部88が必要とされ、したがって外傷、回復時間、医療従事者の時間、及び関連する手数料などを減らすことができる。
【0060】
前述の説明ではオリフィス32から流体又は他の物質を注入する装置及び方法を説明したが、本開示はそれに限定されないことを理解されたい。実際、本明細書に記載の装置10は、流体又は他の物質を、精度を制御して眼から吸引するように構成されてもよい。たとえば、摺動部40を遠位に進めて、既定の「投与量」又は分量の物質又は流体を、オリフィス32を介してマイクロカニューレ14の半径方向外方に徐々に注入するのではなく、摺動部40を近位に後退させることにより、シュレム管80から流体又は他の物質(たとえば組織、血液、房水82など)を徐々に引き込んで(たとえば吸引する、引っ張るなど)、眼から取り除くことができる。言い換えれば、上に述べたものとは逆の方式で装置10を作動させて、流体又は他の物質を眼から除去することができる。流体又は他の物質を眼から除去するように装置10を位置決めする構成では、装置10の1つ又は複数の構成要素を逆にすることができる(たとえば、一方向弁70は、ピストン経路66に沿って流体又は他の物質が近位方向に流れることは可能にするが、流体又は他の物質が遠位方向に流れることは防止するように配向することができる、など)。いくつかの実施例では、マイクロカニューレ14は、吸引力を発生させるための適した真空源に動作可能に連結されてもよい。
【0061】
装置10は、任意の適当な材料から構成されてもよい。たとえば、マイクロカニューレ14は、1つ又は複数の金属(たとえばステンレス鋼、チタン、ニチノールなど)、或いは剛性の(たとえば曲がるか又は変形することなく線維柱帯86及びシュレム管80を押して進むのに十分な剛性の)ポリマー(たとえばPEEK、ポリイミドなど)を含んでもよい。例示的な材料は、光干渉断層計(OCT:optical coherence tomography)に対して透過的なポリマー(たとえばグリコール変性ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、及び/又はポリフェニルスルホンなど)も含んでもよく、それにより、OCTによって得られる画像への干渉を最小限に抑えながら、マイクロカニューレ14の位置決め及び/又はオリフィス32を介した物質の注入と同時にOCTによる撮像を行うことができる。
【0062】
さらに、マイクロカニューレ14の任意の1つ又は複数の部分、たとえば遠位端部30は、処置中の医療従事者による視認性を向上させるために、放射線不透過性でもよい。同様に、ハンドル12は、必要に応じて、1つ又は複数の任意の金属又はポリマーを含んでもよい。追加的に、又は別法として、遠位端部30は、発光ダイオード(LED)(図示せず)を含んでもよい。LEDが点灯されたとき、医療従事者は、眼の強膜を通してその光を見ることができ、それにより、眼の中でのマイクロカニューレ14の位置が使用者に示される。いくつかの構成では、1つ又は複数の放射線不透過性の印、又は他のマーキングをマイクロカニューレ14の遠位端部30に位置付けて、患者の眼の中でのマイクロカニューレ14の深さを可視化するのを容易にすることができる。さらに、マイクロカニューレ14は、遠位端部30に隣り合った切断装置(たとえばナイフ、ブレード、尖端など)(図示せず)を含んでもよい。使用に際して、こうした切断装置により、オリフィス32を介して物質を注入する前又は後に、医療従事者が組織(たとえば線維柱帯86及び/又はシュレム管80)を切断することが可能になり得る。たとえば、切断装置を含むマイクロカニューレ14を左右に動かして、オリフィス32を介して物質を注入したことによって押し上げられた組織を切断することができる。
【0063】
特定用途向けの例示的な実施例を参照して本開示の原理を本明細書に記載したが、本開示はこれに限定されないことを理解されたい。本明細書に提供した教示を利用することができる当業者には、追加の修正形態、応用例、実施例、及び均等物との置換はすべて本明細書に記載の実施例の範囲に含まれることが認識されよう。したがって、本発明は、前述の説明によって限定されるとみなされるべきではない。
【0064】
ある要素を単数形で言及することは、具体的にそう示されていなければ、1つ、及びただ1つを意味するものではなく、むしろ、1つ又は複数を意味するものである。たとえば、「a」モジュールは、1つ又は複数のモジュールを指す場合がある。「a」、「an」、「the」、又は「said」が前に付く要素は、別の制約がない限り、追加の同じ要素の存在を除外しない。
【0065】
見出し及び小見出しがある場合、これらは単に便宜のために使用されており、本発明を限定しない。例示的な、という語は、実例又は説明として機能することを意味するために使用される。含む、有するなどの用語が使用されている範囲内では、こうした用語は、備えるという用語が請求項の移行句として利用されるときに解釈されるのと同様に、包括的であることを意図している。第1の、第2の、などの関係を示す用語は、ある主体又は動作を別の主体又は動作から区別するために、こうした主体又は動作間の実際のそのような関係又は順序を必ずしも要求又は示唆することなく、使用される場合がある。
【0066】
一態様、態様、別の態様、いくつかの態様、1つ又は複数の態様、一実装形態、実装形態、別の実装形態、いくつかの実装形態、1つ又は複数の実装形態、一実施例、実施例、別の実施例、いくつかの実施例、1つ又は複数の実施例、一構成、構成、別の構成、いくつかの構成、1つ又は複数の構成、本技術、本開示(the disclosure)、本開示(the present disclosure)、これらの他の変化形などの語句は、便宜上のものであり、こうした語句に関連する開示が本技術に不可欠であること、又はこうした開示が本技術のすべての構成に適用されることを示唆するものではない。こうした語句に関連する開示は、すべての構成に適用される場合もあり、1つ又は複数の構成に適用される場合もある。こうした語句に関連する開示は、1つ又は複数の実例を示す場合もある。一態様、又はいくつかの態様などの語句は、1つ又は複数の態様を示す場合があり、逆の場合もまた同様であり、このことは、前述の他の語句にも同様に当てはまる。
【0067】
一連の品目に先行し、これら品目のうちのいずれかを分離する「及び」又は「又は」という用語を含む、「~のうちの少なくとも1つ」という語句は、リストの各構成物ではなく、リスト全体を修飾する。語句「~のうちの少なくとも1つの」は、少なくとも1つの品目を選択することを求めるものではない。むしろ、この語句により、これら品目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又はこれら品目の任意の組合せのうちの少なくとも1つ、及び/又はこれら品目のそれぞれのうちの少なくとも1つ、を含む意味が与えられる。一例として、語句「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、或いは「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」という各語句は、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCの任意の組合せ;並びに/或いはA、B、及びCのそれぞれのうちの少なくとも1つを指す。
【0068】
開示されたステップ、動作、又はプロセスの特定の順序又は階層構造は、例示的な手法の説明であることが理解される。明らかにそうでないことが示されていなければ、ステップ、動作、又はプロセスの特定の順序又は階層構造は、異なる順序で実施されてもよいことが理解される。ステップ、動作、又はプロセスのうちのいくつかは、同時に実施されてもよい。添付の方法クレームがあれば、それは種々のステップ、動作、又はプロセスの要素をサンプルの順序で提示しており、提示した特定の順序又は階層構造に限定されることは意図していない。これらは、連続的に実施されてもよく、直線的に実施されてもよく、平行して実施されてもよく、異なる順序で実施されてもよい。記載した指示、動作、及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア/ハードウェア製品に一緒に組み込まれる場合もあり、複数のソフトウェア/ハードウェア製品にパッケージ化される場合もあることを理解されたい。
【0069】
一態様では、連結される、などの用語は、直接的に連結されることを指す場合がある。別の態様では、連結される、などの用語は、間接的に連結されることを指す場合がある。
【0070】
上、下、前、後ろ、横、水平、垂直などの用語は、普通の重力基準系ではなく、任意の基準系を指す。したがって、こうした用語は、重力基準系の上方、下方、斜め、又は横向きに延びる場合がある。
【0071】
本開示は、本明細書に記載の種々の態様を当業者が実施するのを可能にするために提供されている。いくつかの例では、本技術の概念を不明瞭にすることを避けるために、よく知られている構造及び構成要素が、ブロック図の形態で示してある。本開示は、本技術の種々の実例を提供しており、本技術は、これらの実例に限定されない。当業者にはこれらの態様の種々の修正形態が容易に明らかになり、本明細書に記載の原理は、他の態様に適用されてもよい。
【0072】
当業者に知られているか又は今後知られることになる、本開示を通して説明された種々の態様の要素のあらゆる構造的及び機能的な均等物は、参考として明確に本明細書に組み込まれており、また特許請求の範囲によって包含されるものである。さらに、本明細書に開示されたものはいずれも、こうした開示が特許請求の範囲に明確に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に供されるものではない。いかなるクレーム要素も、その要素が語句「~のための手段(means for)」を使用して明確に記載されていない限り、又は方法クレームの場合にはその要素が語句「~のためのステップ(step for)」を使用して記載されていない限り、米国特許法112条第6パラグラフの既定の下で解釈されるべきではない。
【0073】
発明の名称、背景技術、図面の簡単な説明、要約書、及び図面は、ここで本開示に組み込まれ、限定的な説明としてではなく、本開示の例示的な実例として提供される。これらが特許請求の範囲に記載の範囲又は意味を限定するように使用されないという理解の下で、本開示を提示する。加えて、詳細な説明では、説明が例示的な実例を提供しており、また本開示を簡素化する目的で種々の特徴が種々の実装形態に一緒にまとめられていることが理解され得る。開示の方法は、クレームに記載の主題が、各クレームに明確に記載されているものよりも多くの特徴を必要とするという意図を示していると解釈されるべきではない。むしろ、特許請求の範囲が示すように、発明の主題は、開示される単一の構成又は動作のすべての特徴よりも少ない特徴に存在する。特許請求の範囲は、本明細書において詳細な説明に組み込まれ、各クレームは、別々に請求される主題として、それ自体で成り立つ。
【0074】
特許請求の範囲は、本明細書に記載の態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の文言と矛盾しないすべての範囲に一致し、あらゆる法的な均等物を包含する。しかし、特許請求の範囲に記載のいずれも、適用可能な特許法の要求条件を満たしていない主題を包含するものではなく、またそのように解釈されるべきでない。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部、遠位先端部、及び空洞を有するマイクロカニューレであって、中心長手方向軸を有するマイクロカニューレと、
前記マイクロカニューレの前記近位端部に連結されたハンドルと、
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部の周囲に延在する複数のオリフィスであって、前記複数のオリフィスはそれぞれ、前記中心長手方向軸に対して横方向に延在するチャネルを画定し、半径方向内側端部より半径方向において前記中心長手方向軸から遠くに位置決めされた半径方向外側端部を有し、前記複数のオリフィスはそれぞれ、前記マイクロカニューレの前記遠位先端部から半径方向外方に物質を送り出すように構成される、複数のオリフィスと、
外側管であって、前記マイクロカニューレは前記外側管の内部に収容され、前記外側管の遠位端部に位置付けられた開口を含む外側管と、
前記ハンドルの近位に位置付けられた制御機構であって、前記制御機構は、第1の位置から第2の位置に前記外側管を動かすように構成され、第1のオリフィスが、前記第1の位置において覆われ、前記第1のオリフィスは、前記第2の位置において露出される、制御機構と
を備える、医療装置。
【請求項2】
前記マイクロカニューレの外径は、前記マイクロカニューレの長さに沿って変動する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記マイクロカニューレの第1の外径は、前記遠位先端部の端部における前記マイクロカニューレの第2の外径まで先細になり、前記中心長手方向軸に沿った前記第1の外径と前記第2の外径との間の距離は、前記第1の外径より小さい、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記第1の外径は500μm~700μmの間であり、前記第2の外径は100μm~200μmの間である、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記複数のオリフィスのうちの第1のオリフィスが、前記複数のオリフィスのうちの第2のオリフィスから180度離して配置される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記複数のオリフィスは、前記中心長手方向軸上の前記遠位先端部から同じ距離に配置される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部に位置付けられた1つ又は複数の溝を更に含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記1つ又は複数の溝のそれぞれは、15μm~35μmの間の深さを有する、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記1つ又は複数の溝のそれぞれは、前記複数のオリフィスの近位に形成される、請求項7に記載の医療装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数の溝は、等距離で配置された少なくとも3つの溝を含む、請求項7に記載の医療装置。
【請求項11】
前記物質は粘弾性流体であり、前記ハンドルは、前記粘弾性流体を含むリザーバと、前記粘弾性流体を半径方向外方に前記オリフィスを通して排出するように構成されたアクチュエーターとを備える、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記半径方向外側端部は、前記半径方向内側端部より遠位に位置決めされて、前記複数のオリフィスのそれぞれは、前記マイクロカニューレから遠位に且つ半径方向外方に前記物質を送り出すように構成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項13】
遠位端部及び空洞を有する外側カニューレを更に備え、
前記外側カニューレは、中心長手方向軸及び1つ又は複数の突出部を有し、前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記遠位端部で周囲に延在し、前記外側カニューレの前記空洞内に位置付けられる、請求項1に記載の医療装置。
【請求項14】
前記マイクロカニューレは、前記外側カニューレの内部に移動可能に収容され、1つ又は複数の突出部が、前記マイクロカニューレの外周表面に位置付けられる、請求項13に記載の医療装置。
【請求項15】
前記外側カニューレ及び前記マイクロカニューレのうちの1つの前記1つ又は複数の突出部は、等間隔で配置される複数の突出部を含む、請求項14に記載の医療装置。
【請求項16】
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部が前記外側カニューレの内部にある場合に、前記マイクロカニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部より近位にある、請求項14に記載の医療装置。
【請求項17】
前記マイクロカニューレの前記遠位先端部の少なくとも一部が前記外側カニューレの前記遠位端部の外に動かされた場合に、前記マイクロカニューレの前記1つ又は複数の突出部は、前記外側カニューレの前記1つ又は複数の突出部より遠位にある、請求項14に記載の医療装置。