IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特開-免疫反応が弱化された結合体 図1
  • 特開-免疫反応が弱化された結合体 図2
  • 特開-免疫反応が弱化された結合体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173593
(43)【公開日】2022-11-18
(54)【発明の名称】免疫反応が弱化された結合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20221111BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20221111BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20221111BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20221111BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K14/52
C07K14/475
C07K14/575
C07K14/705
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162477
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2019550535の分割
【原出願日】2017-12-05
(31)【優先権主張番号】10-2016-0164619
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】チョイ イン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ソン ヨプ
(57)【要約】
【課題】免疫反応が弱化された生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を提供すること。
【解決手段】本発明は、免疫反応が弱化された生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc結合体及びこれと関連する結合体の製造方法、前記結合体を含む免疫反応減少用組成物及び生理活性ポリペプチドの免疫反応の減少方法に関する。また、前記結合体のFcガンマ受容体及び/または補体との固有結合力の低下を維持させる方法及び前記結合体を含む組成物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発明は明細書に開示された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫反応が弱化された生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc結合体、及びこれと関連する結合体の製造方法、前記結合体を含む免疫反応減少用組成物及び生理活性ポリペプチドの免疫反応の減少方法に関する。また、前記結合体のFcガンマ受容体及び/または補体との固有結合力の低下を維持させる方法及び前記結合体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタンパク質治療医薬品はその血中半減期が短くて投薬間隔や投薬用量を増加させなければならないという短所がある。そこで、タンパク質の血中半減期を増加させるために、ポリエチレングリコール、アルブミン、脂肪酸、抗体のFc領域(Fc region)のような担体を結合させたタンパク質結合体または複合体に対する研究が多様に行われてきた。これまで知られている研究内容のほとんどは、血中半減期を増加させて薬物投与の間隔を減らし、患者の利便性を増大させることを目指している。しかし、従来の多くの技術が治療タンパク質と担体タンパク質間の非特異的な結合を介して空間障害などによるタンパク質の活性減少などの問題を示した。また、血中アルブミンとの可逆的な結合により血中半減期を増加させる脂肪酸結合体の場合、タンパク質と脂肪酸との可逆的結合により、タンパク質医薬品消失の大部分を占める腎クリアランス(renal clearance)を避けられず、その血中半減期を著しく延長するには限界がある。
【0003】
一方、タンパク質治療医薬品は、血中半減期の増加に対する問題だけでなく、タンパク質治療医薬品自体の免疫原性のために望ましくない免疫反応を起こして、患者の治療予測性を難しくするという問題点があり、望ましくない免疫反応を誘導してタンパク質医薬品の効能の減少、アナフィラキシー(anaphylaxis)及び場合によっては生命を脅かす自己免疫反応を引き起こすという問題がある(非特許文献1)。
【0004】
また、タンパク質をはじめとする生理活性物質の半減期を増加させるために、免疫グロブリン断片を利用しようとする努力が傾注されている。しかし、免疫グロブリンFcのCH2-CH3部分には抗体固有のFcガンマ受容体及び補体に結合して免疫エフェクター(effector)機能を示す部位が存在する。ヒト抗体のFc断片はFcガンマ受容体と補体(complement)に結合して、それぞれ抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)と補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity、CDC)を誘導して抗原に対する免疫機能を活性化させる。Fcガンマ受容体は、先天免疫反応である抗体依存性細胞傷害の作用に加えて、後天免疫反応にも多角的に関与することが知られている。具体的には、Fcガンマ受容体は抗原-抗体複合体に反応して樹状細胞(dendritic cell、DC)を成熟させ、抗原提示(antigen presentation)及びBリンパ球の活性と血液内の寿命を調節する。また、抗体の生成と特異性を調節し、樹状細胞の活性を調節して抗原ペプチドを認識した後、免疫原性/非免疫原性の反応を区分する役割を果たしたりする(非特許文献2)。Fcガンマ受容体I、IIA型は単核球(monocyte)、樹状細胞、マクロファージ(macrophage)及び顆粒球(granulocyte)に主に分布しており、NK細胞(natural killer cell)には、IIC、IIIA型の受容体が主に分布する。ガンマ受容体IIIBは顆粒球に分布して前記免疫反応を誘導する(非特許文献3)。一方、Fcガンマ受容体IIBはNK細胞とTリンパ球を除いた様々な種類のリンパ球、骨髄細胞、顆粒球に広く分布するが、これは他の受容体の種類とは異なって、Bリンパ球の活性抑制、体液性免疫反応を抑制して、自己免疫反応などの過剰な免疫反応を抑制する機能をする(非特許文献2)。
【0005】
したがって、免疫グロブリンFc断片を生理活性物質の血中半減期を増加させるための担体として用いる場合、前記免疫グロブリンFc断片を生理活性物質に連結して半減期を増加させることはできるが、この時、免疫グロブリンFc断片によって意図しない免疫反応が活性化されないようにする方法の開発が要求される。
【0006】
また、治療薬効を示すAPI(active pharmaceutical ingredient)、すなわち、生理活性物質自体の治療効果は維持させながらも、生理活性物質による不必要な免疫反応が起こらないようにする方法の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0007295号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2017-0026284号
【特許文献3】韓国公開特許第10-2012-0137271号
【特許文献4】韓国公開特許第10-2009-0008151号
【特許文献5】国際公開特許広報WO2017/131496号
【特許文献6】国際公開特許広報WO97/34631号
【特許文献7】国際公開特許広報WO96/32478号
【特許文献8】韓国公開特許公報第10-2007-0021079 A
【特許文献9】国際公開特許公報WO2007-021129 A1
【特許文献10】国際公開特許公報WO2014-133324 A1
【特許文献11】国際公開特許公報WO2008-082274 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Self Nonself. 2010 Oct-Dec; 1(4): 314-322
【非特許文献2】Nature review Immunology, 2008, 8:34-47
【非特許文献3】Nature review Immunology, 2010, 10: 328-343
【非特許文献4】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、免疫反応が弱化された生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を提供することにある。
【0010】
前記結合体は、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて免疫反応が弱化されたことを特徴とする、免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドが連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい。
【0011】
前記結合体は、下記(a)、(b)またはこれら両方の特性を有する、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に生理活性ポリペプチドが連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい:
(a)前記結合体は、生理活性ポリペプチド単独による免疫反応に比べても弱化された免疫反応を示す;
(b)前記結合体は、前記免疫グロブリンFc断片自体の免疫反応と相応したり、減少された程度の免疫反応を示す。
本発明のもう一つの目的は、生理活性ポリペプチドが免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を提供することにある。
【0012】
前記免疫反応の弱化は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて弱化されたものであってもよい。
前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、免疫グロブリンFc断片固有のFcガンマ受容体、補体との固有結合力が著しく低下したことが特徴である結合体であってもよい。
本発明の前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、Fcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(complement 1q、C1q)との結合力が血清由来のIgGに比べて著しく低いことが特徴である結合体であってもよい。
【0013】
前記結合力は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べてFcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)との結合力が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下に減少した生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい。
本発明の他の目的は、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含む免疫反応減少用組成物であって、前記免疫反応の減少は、免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応に比べて免疫反応が弱化されたものである、組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片に比べて免疫反応が弱化された結合体を分離する段階を含む、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)血清由来の免疫グロブリンGに比べて免疫反応が低下した結合体を分離する段階を含む免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の免疫反応を減少させる方法であって、前記免疫反応の減少は、免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応に比べて免疫反応が弱化されたものである、方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のFcガンマ受容体及び補体に対する低下した結合力を維持させる方法を提供することにある。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体、補体との固有結合力が低下したことを特徴とする組成物を提供することにある。前記免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体、補体との固有結合力が著しく低下したのは、免疫グロブリンFc断片の固有の免疫エフェクター機能が著しく低下したことを特徴とするものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するための本発明の一つの様態は、生理活性ポリペプチドが免疫グロブリンFc断片に連結され免疫反応が弱化された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体である。
【0017】
一つの具体例として、前記結合体は免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応に比べて免疫反応が弱化されたことを特徴とするものであってもよい。
【0018】
前記具体例に係る結合体であって、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、結合体を構成するそれぞれの一部(moiety)である生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片によって発生する免疫反応を減少させることを特徴とする。
【0019】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫反応は前記Fc断片、生理活性ポリペプチドまたは生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のT細胞の増殖またはT細胞のIL-2(Interleukin-2 )の分泌によることを特徴とする。ここで、免疫反応は生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片単独が示す免疫反応の水準に比べて弱化されたものであってもよい。
【0020】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記結合体はヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に生理活性ポリペプチドが連結されたことを特徴とする。前記免疫反応の弱化はヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて弱化されたものであってもよい。
【0021】
ここで生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の免疫反応が弱化されたという意味は、生理活性ポリペプチドに比べてその生理活性ポリペプチドが引き起こす免疫反応の強度が弱化されたことを指すものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0022】
任意の生理活性ポリペプチドが引き起こす免疫反応は、この分野で知られている通常の方法で測定可能である。例えば、EpiScreen分析方法を活用したT細胞の増殖またはT細胞のIL-2の分泌を測定する方法などが用いられてもよい。
【0023】
ここで、任意の免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化されたという意味は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片が引き起こす免疫反応に比べて当該免疫グロブリンFc断片が引き起こす免疫反応の強度が弱化されたことを指す。
【0024】
任意の免疫グロブリンFc断片が引き起こす免疫反応は、この分野で知られている通常の方法であるFcガンマ受容体の結合力の評価で測定可能である。例えば、Fc受容体をコーティングしたプレートに複数の濃度に希釈された免疫グロブリンFc断片を入れて、結合力の程度をO.D値(450nm)で確認するELISA実験と、CM5センサーチップにFc受容体を固定化した後、複数の濃度で希釈されたヒト血清由来の免疫グロブリンGまたは免疫グロブリンFc断片を流して、受容体の結合定数(Ka)と解離定数(Kd)を介して算出される結合能(KD=Kd/Ka)を分析するSPR実験などで測定してもよい。また、この分野に知られている通常の方法である蛍光共鳴エネルギー転移(FRET、fluorescence Resonance Energy Transfer)、生体発光共鳴エネルギー伝達(BRET、Bioluminescence Resonance Energy Transfer)基盤の分析方法、AlphaScreenTM(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)、シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay)、等温滴定型熱量計(isothermal titration calorimetry)、示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)、電気泳動、ゲルろ過クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーなども用いてもよい。
【0025】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、T細胞の増殖またはT細胞のIL-2の分泌が減少したことを特徴とする。前記T細胞の増殖またはT細胞のIL-2の分泌の減少は、生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片に比べてT細胞の増殖またはIL-2の分泌が、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下に減少したものであってもよい。
【0026】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片はFcガンマ受容体との結合力が減少したことを特徴とする。前記結合力の減少は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べてFcガンマ受容体との結合力が、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下に減少されたものであってもよい。
【0027】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片は補体1qとの結合力が減少したことを特徴とする。前記結合力の減少は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べて補体1q(C1q)との結合力が、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下に減少したものであってもよい。
【0028】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片は非ペプチド性リンカーを介して連結されたことを特徴とする。
【0029】
前記具体例のいずれかに係る結合体として、前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0030】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記非ペプチド性リンカーは、下記式(1)で示されるポリエチレングリコール重合体であることを特徴とする。
【化1】
(1)
(式中、n=10~2400である。)
【0031】
前記具体例のいずれかに係る結合体として、前記非ペプチド性リンカーの反応基は、アルデヒドグループ、マレイミドグループ及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択されることを特徴とする。前記反応基は、プロピオンアルデヒドグループまたはブチルアルデヒドグループであってもよい。
【0032】
前記具体例のいずれかに係る結合体に適用されうる生理活性ポリペプチドとしては、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質のような様々な生理活性ポリペプチド及びこれらのアナログからなる群から選択されることを特徴とする。
【0033】
前記具体例のいずれかに係る結合体として、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルディン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクロナール抗体、抗体断片及びこれらのアナログからなる群から選択されることを特徴とする。
【0034】
前記具体例のいずれかに係る結合体として、前記酵素類は、イミグルセラーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、α-ガラクトシダーゼA、イズロニダーゼ(iduronidase;またはラロニダーゼ)、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)、β-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)、ガラクトース-6-スルファターゼ(Galactose-6-sulfatase)、酸性セラミダーゼ(acid ceramidase)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(acid sphingomyelinase)、ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidsase)、アリルスルファターゼA(arylsulfatase A)、アリルスルファターゼB(またはガルスルファーゼ)、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)A、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)B、ヘパリン-N-スルファターゼ(heparin N-sulfatase)、α-D-マンノシダーゼ(alpha-D-mannosidase)、β-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(N-acetylgalactosamine-6 sulfatase)、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase)、α-N-アセチル-グルコサミニダーゼ(alpha-N-acetyl-glucosaminidase、NAGLU)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(Chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(Uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(Platelet-Activating Factor Acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA-glucosaminide N-acetyltransferase)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(N-acetylglucosamine-6-sulfatase)、ガラクトサミン6-スルファターゼ(galactosamine 6-sulfatase、GALN)、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、α-フコシダーゼ(α-fucosidase)、β-マンノシダーゼ(β-mannosidase)、α-ノイラミニダーゼ(α-neuraminidase、sialidase)、N-アセチル-グルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(N-acetyl-glucosamine-1-phosphotransferase)、ムコリピン-1(mucolipin-1)、α-N-アセチル-ガラクトサミニダーゼ(α-N-acetyl-galactosaminidase)、N-アスパルチル-β-グルコサミニダーゼ(N-aspartyl-β-glucosaminidase)、LAMP-2、シスチノシン(Cystinosin)、シアリン(Sialin)、セラミダーゼ(ceramidase)、酸性-β-グルコシダーゼ(acid-β-glucosidase)、ガラクトシルセラミダーゼ(galactosylceramidase)、NPC1、カテプシンA(cathepsin A、protective protein)、SUMF-1、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase、LIPA)及びトリペプチジルペプチダーゼ(Tripeptidyl peptidase)1からなる群から選択されることを特徴とする。
【0035】
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、または両方を含むことを特徴とする。
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片は、非糖鎖化されたことを特徴とする。
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ(hinge)領域をさらに含むことを特徴とする。
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)及びこれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されることを特徴とする。
前記具体例のいずれかに係る結合体であって、前記免疫グロブリンFc断片は、IgG4 Fc断片であることを特徴とする。
【0036】
本発明を具現するための別の様態は、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含む免疫反応減少用組成物であって、前記免疫反応の減少は、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて免疫反応が弱化されたものである、組成物である。
【0037】
本発明を具現するための別の様態は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片に比べて免疫反応が弱化された結合体を分離する段階を含む、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法である。
【0038】
一つの具体例として、前記結合体の製造方法は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)血清由来の免疫グロブリンGに比べて免疫反応が低下した結合体を分離する段階を含む、免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化された生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法であることを特徴とする。
【0039】
前記具体例のいずれかに係る製造方法であって、前記免疫反応の弱化は、免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去されたことを特徴とする。
【0040】
前記具体例のいずれかに係る製造方法であって、前記免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片は、非糖鎖化されたFc断片であることを特徴とする。
【0041】
前記具体例のいずれかに係る製造方法であって、前記非ペプチド性リンカーは、下記式(1)で示されるポリエチレングリコール重合体であることを特徴とする。
【化2】
(1)
(式中、n=10~2400である。)
【0042】
前記具体例のいずれかに係る製造方法であって、前記(b)段階は、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合した形態の結合体を分離するためであることを特徴とする。
【0043】
本発明を具現するためのもう一つの様態は、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の免疫反応を減少させる方法であって、前記免疫反応の減少は、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて、免疫反応が弱化されたものである方法である。
【0044】
前記具体例のいずれかに係る免疫反応を減少させる方法であって、前記免疫反応は前記Fc断片、生理活性ポリペプチドまたは生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のT細胞の増殖またはT細胞のIL-2(Interleukin-2)の分泌によることを特徴とする。
【0045】
本発明を具現するためのもう一つの様態は、生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のFcガンマ受容体及び補体に対する低下した結合力を維持させる方法である。
【0046】
一つの具体例として、前記Fcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片は、非糖鎖化されたFc断片であることを特徴とする。
【0047】
本発明を具現するためのもう一つの様態は、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンGまたはその断片に比べて免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体及び/または補体との固有結合力が低下したことを特徴とする、組成物である。
【発明の効果】
【0048】
本発明の結合体は、タンパク質医薬品において治療効果を担当するタンパク質によって発生される望ましくない免疫反応を弱化させ、生体内で目的とする治療効果を達成しうる治療剤の構造を提供することができる。また、本発明の結合体は、免疫グロブリン固有のFcガンマ受容体及び補体と結合して免疫反応を活性化させるエフェクター機能を除去することにより、体内で不要な免疫機能を活性化させないため、これを生理活性ポリペプチドの血中半減期の増大と一緒に安全性を付与して有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】Fcガンマ受容体Iに対する免疫グロブリンFc及び結合体の濃度依存的な結合を吸光度(450nm)で示したものである。
図2】Fcガンマ受容体IIIAに対する免疫グロブリンFc及び結合体の濃度依存的な結合を吸光度(450nm)で示したものである。
図3】補体1q(C1q)に対する免疫グロブリンFc及び結合体の濃度依存的な結合を吸光度(450nm)で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では、本発明をさらに詳細に説明する。
一方、本願で開示される各説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用してもよい。つまり、本願で開示された様々な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記記述される具体的な叙述によって、本発明の範疇が限定されることはない。
【0051】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験だけで本出願に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知するか、確認することができる。さらに、これらの同等物は、本発明に含まれるものと意図される。
【0052】
本発明を具現するための一つの様態として、免疫反応が弱化された生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を提供する。
前記結合体は、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて免疫反応が弱化されたことを特徴とする、免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドが連結された生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい。
【0053】
前記結合体は、下記(a)、(b)またはこれら両方の特性を有する、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に生理活性ポリペプチドが連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい:
(a)前記結合体は、生理活性ポリペプチド単独による免疫反応に比べても弱化された免疫反応を示す;
(b)前記結合体は、前記免疫グロブリンFc断片自体の免疫反応と相応したり、減少された程度の免疫反応を示す。
【0054】
より具体的には、前記結合体はヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に生理活性ポリペプチドが連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であって、
(a)前記結合体は、生理活性ポリペプチド単独によるT細胞の増殖、T細胞のIL-2の分泌またはこれら両方に比べて弱化されたT細胞の増殖、T細胞のIL-2の分泌またはこれら両方を示し、
(b)前記免疫グロブリンFc断片自体は、免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べてFcガンマ受容体、補体、またはこれら両方に対して低下した結合力を示し、前記結合体は、これらの免疫グロブリンFc断片の低下した結合力を維持する結合体であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0055】
一般的に、タンパク質治療医薬品内の薬効を示すAPI(active pharmaceutical ingredient)は、それ自体が生体内で免疫原性として作用して望ましくない免疫反応を起こし、投与された個体における非予測的な治療結果を示す危険性があった。しかし、驚くべきことに、本発明者らによって提供される生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、結合された治療薬効を示す生理活性ポリペプチド自体または生理活性ポリペプチドの半減期を増加させる免疫グロブリンFc断片それぞれが示す免疫原性を著しく減少させたり、相殺させると同時に、治療学的な効果はそのまま維持させて、安全なタンパク質治療医薬品のプラットフォームを提供することができる。特に、本発明に係るヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に生理活性ポリペプチドが連結された結合体は、生理活性ポリペプチド自体が示す免疫反応に比べては減少した(あるいは弱化された)免疫反応を示しながらも、前記免疫グロブリンFc断片自体が保有する弱化された免疫反応はそのまま維持して、結合体の形態でも免疫グロブリンFc断片が誘発することができる免疫反応がヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて減少した(あるいは弱化された)ことを一つの特徴とする。
【0056】
前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、結合体を構成する個々の一部(moiety)である生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片によって発生する免疫反応を減少させるものであってもよい。
本発明において、用語、「免疫反応の弱化または免疫反応の減少」は、生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片それぞれの単独による免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)に比べて、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)が低いことをいう。
【0057】
より具体的には、前記生理活性ポリペプチド単独が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)に比べて、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)が低いことであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0058】
特にこれに制限されないが、特定種類の免疫反応に対して生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片それぞれの単独が示す当該免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)(100%);または生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片それぞれが示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)の合計を100%としたとき、これに比べて生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってもよく、より具体的には、特定種類の免疫反応に対して生理活性ポリペプチド単独が示す当該免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)(100%)に比べて生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0059】
前記免疫反応は、前記Fc断片、生理活性ポリペプチドまたは生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のT細胞の増殖またはT細胞のIL-2(Interleukin-2)の分泌によるものであってもよい。具体的には、前記免疫反応の弱化または減少は、T細胞の増殖の減少またはT細胞のIL-2の分泌の減少を介して測定してもよいが、特にこれに制限されない。
【0060】
特にこれに制限されないが、T細胞の増殖またはT細胞のIL-2の分泌が免疫反応である場合、生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片それぞれの単独が示す当該免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)(100%)に比べて生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってもよく、より具体的には、特定種類の免疫反応(特に、T細胞の増殖またはT細胞のIL-2の分泌)に対して生理活性ポリペプチド単独が示す当該免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)(100%)に比べて生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が示す免疫反応の強度(あるいは免疫反応の頻度)が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0061】
任意の生理活性ポリペプチドが引き起こす免疫反応は、この分野で知られている通常の方法で測定可能である。
【0062】
前記結合体は、生理活性ポリペプチドが免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を提供するものであってもよい。前記結合体は、生理活性ポリペプチドが免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に連結された物質である。ここで、任意の免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化されたという意味は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片が引き起こす免疫反応に比べて当該免疫グロブリンFc断片が引き起こす免疫反応の強度が弱化されたことを指す。
【0063】
一方、前記結合体は前記免疫グロブリンFc断片自体の免疫反応と相応したり、減少された程度の免疫反応を示したものであってもよい。具体的には、前記結合体は、前記免疫グロブリンFc断片自体の(ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて弱化された程度の)免疫反応と相応したり、それより低い程度の免疫反応を示すものであってもよい。すなわち、前記結合体は、前記免疫グロブリンFc断片自体が保有する免疫反応を維持するものであってもよい。ここで、前記免疫グロブリンFc断片は、Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去されたものであってもよく、前記免疫グロブリンFc断片が示す減少した免疫反応とは、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べてFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が低下したことを意味してもよい。
【0064】
従って、本発明において、「前記免疫グロブリンFc断片自体が保有する免疫反応を維持する」ということは、前記免疫グロブリンFc断片が示す免疫反応が、免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して生理活性ポリペプチドに連結されても、まだ免疫グロブリンFc断片自体が示す免疫反応と相応する程度の免疫反応を示すことをいう。より具体的には、Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片が示すヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べて低いFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が、前記Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して生理活性ポリペプチドに連結されても、まだ前記Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片自体が示す結合力に相応するFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力を示すことをいう。しかし、特にこれに制限されるものではない。
【0065】
ここで、「相応する」ということは、前記免疫グロブリンFc断片自体が示す免疫反応に比べて少なくとも±20%、±10%、±5%、または0%の差を示すことであり、より具体的には、Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片自体が示すFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力に比べて少なくとも±20%、±10%、±5%、または0%の差を示すことであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0066】
ここで、Fcガンマ受容体及び/または補体は、Fcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0067】
任意の免疫グロブリンFc断片が引き起こす免疫反応は、この分野で知られている通常の方法であるFcガンマ受容体の結合力の評価で測定可能である。例えば、Fc受容体をコーティングしたプレートに複数の濃度で希釈された免疫グロブリンFc断片を入れて、結合力の程度をOD値(450nm)で確認するELISA実験と、CM5センサーチップにFc受容体を固定化した後、複数の濃度で希釈されたヒト血清由来の免疫グロブリンGまたは免疫グロブリンFc断片を流して、受容体の結合定数(Ka)と解離定数(Kd)を介して算出される結合能(KD=Kd/Ka)を分析するSPR実験などで測定してもよい。また、この分野に知られている通常の方法である蛍光共鳴エネルギー転移(FRET、fluorescence Resonance Energy Transfer)、生体発光共鳴エネルギー伝達(BRET、Bioluminescence Resonance Energy Transfer)基盤の分析方法、AlphaScreenTM(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)、シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay)、等温滴定型熱量計(isothermal titration calorimetry)、示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)、電気泳動、ゲルろ過クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーなども用いてもよい。
【0068】
一つの具体的な実施形態では、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、生理活性ポリペプチド及び免疫エフェクター機能が著しく低下した免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい。より具体的には、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、Fcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(complement 1q、C1q)との結合力が血清IgGに比べて、著しく低いことが特徴である結合体を提供する。
【0069】
免疫グロブリンFc断片の結合体がFcガンマ受容体I、IIIAまたは補体1qに対して示す結合力は、50mM炭酸ナトリウム緩衝溶液(pH9.0)の条件下で、ヒト血清由来の免疫グロブリンG及び免疫グロブリンFc断片を複数の濃度で希釈して、この分野で通常用いられるELISA法で測定してもよく、pH7.4であるHBS-EP緩衝溶液(10mM HEPES、150mM塩化ナトリウム、3mMエチレンジアミン酢酸(EDTA)、0.005%ポリソルベート20)の条件下で、この分野で通常用いられるSPR方法で測定してもよい。具体的には、前記結合力の減少は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べてFcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)との結合力が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下に減少した免疫グロブリンFc断片に連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい。
【0070】
具体的には、本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体、補体との固有結合力が著しく低下した免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体であってもよい。これは、酵素結合免疫吸着検査法(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を用いた補体1q(C1q)との結合度において、血清由来の免疫グロブリンG(IVI gG)に比べて著しく低下したことが特徴である結合体を提供する。また、Fcガンマ受容体I及びFcガンマ受容体IIIAとの結合度において、血清由来の免疫グロブリンG(IVI gG)に比べてほぼ結合しないことが特徴である結合体を提供する。
【0071】
本発明では、生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体、補体との固有結合力が著しく低下した免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーで共有結合的に連結させる場合、結合体の形態になっても、Fcガンマ受容体及び補体に対する低い結合力が維持されることを確認した。特に、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片に結合する場合、Fcガンマ受容体及び補体に対する低下した結合力に影響を与えず、非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールである場合、-[O-CH2-CH2]n-において、nが10以上、特に50以上であれば、生理活性ポリペプチド及びFc領域の生理活性機能及び抑制されたFcガンマ受容体、補体との固有結合力それぞれに影響を与えないことを確認した。本発明は、このような特徴に基づいたものである。
【0072】
本発明において、用語、「生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体」は、「生理活性ポリペプチド-免疫エフェクター機能が著しく低下した免疫グロブリンFc断片の結合体」、「生理活性ポリペプチド-免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片の結合体」または「持続型結合体」と混用してもよい。
前記結合体は、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して共有結合的に連結された結合体であって、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて免疫反応が弱化されたり、生理活性ポリペプチド単独の免疫反応が低下したことを特徴とする。
【0073】
前記結合体はまた、補体1q(C1q)との結合度において、血清由来の免疫グロブリンG(IV IgG)に比べて著しく低下したことが特徴であり、また、Fcガンマ受容体I及びFcガンマ受容体IIIAとの結合度において、血清由来の免疫グロブリンG(IV IgG)に比べてほぼ結合しないことを特徴とする。
前記結合体において、非ペプチド性リンカーは、免疫グロブリンFc断片のFcRn結合の領域、例えば、CH2の252~257、307~311及びCH3の 433~436(以上、Kabat numbering)領域から離れたアミノ酸の残基に結合したものであってもよく、その例として、免疫グロブリンFcのN末端またはC末端、具体的には、N末端に本発明の非ペプチド性リンカーが連結された形態であるが、これに制限されない。
本発明おいて、「N末端」は、ペプチドのアミノ末端を意味するもので、本発明の目的上、非ペプチド性重合体をはじめとするリンカーと結合することができる位置をいう。その例として、これに制限されないが、N末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、N末端周囲のアミノ酸残基をすべて含んでもよく、具体的には、最末端から1番目~20番目のアミノ酸残基を含んでもよい。
【0074】
免疫グロブリンFcのN末端またはC末端に本発明の非ペプチド性リンカーが結合すると、Fcガンマ受容体及び補体に対する低下した結合力に影響を与えず、Fcガンマ受容体及び補体との抑制された固有結合力を結合体の形態でも維持させことができる。
【0075】
本発明において、用語、「非ペプチド性リンカー」は、繰り返し単位が2つ以上の結合した生体適合性の重合体を意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなくて任意の共有結合を介して相互に連結される。このような非ペプチド性リンカーは、両末端または三末端を有してもよい。
【0076】
本発明に使用可能な非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸-グリコール酸、polylactic-glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組み合わせで構成された群から選択されてもよく、これに制限されないが、具体的には、ポリエチレングリコールであり、その例として、下記式(1)で示されるポリエチレングリコール重合体であるが、これに制限されない。
【化3】
(1)
(式中、n=10~2400であり、
具体的には、n=10~480であり、
より具体的には、n=50~250であるが、これに制限されない。)
【0077】
一方、前記式(1)で示されるポリエチレングリコールと相応する分子量を有する他の非ペプチド性リンカーも、本発明の範囲に含まれる。
【0078】
特にこれに制限されないが、本発明で前記重合体は、0を超え、約100kDaの範囲、具体的には、約1~約100kDaの範囲、より具体的には、約1~約20kDaの範囲であってもよいが、これに制限されない。
【0079】
また、当分野ですでに知られているこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造しうる非ペプチド性リンカーの誘導体も、本発明の範囲に含まれる。
【0080】
本発明で非ペプチド性リンカーとして用いられるポリエチレングリコールは、両側に結合した生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片間の空間障害をもたらすことなく、生理活性ポリペプチドの生理的活性を維持するのに利点があり、Fcガンマ受容体及び補体に対する結合力がなく不必要な免疫機能の活性化に影響を与えないという利点がある。
【0081】
既存のインフレーム融合(inframe fusion)方法で製造した融合タンパク質で用いられたペプチド性リンカーの場合、生体内でタンパク質分解酵素によって容易に切断されて、担体による活性薬物の血中半減期の増加効果を期待するほど得られないという欠点があり、本発明の非ペプチドリンカーを用いた結合体は、このような欠点を画期的に克服した。非ペプチドリンカーは、タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体を用いて、担体と同様にペプチドの血中半減期を維持することができる。したがって、本発明で用いてもよい非ペプチド性リンカーは、前記のような役割、すなわち、生体内のタンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば、制限なく用いてもよい。
また、前記免疫グロブリンFc断片と結合する本発明の非ペプチド性リンカーは、一種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよい。
また、本発明に用いられる非ペプチド性リンカーは、免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドと結合することができる反応基を有してもよい。
【0082】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基の例として、反応アルデヒドグループ、例えば、プロピオンアルデヒドグループもしくはブチルアルデヒドグループ、マレイミド(maleimide)グループ及びスクシンイミド(succinimide)誘導体からなる群から選択されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0083】
前記でスクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミド、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが用いられてもよいが、これに制限されない。
【0084】
特に、前記非ペプチド性リンカーが両末端に反応アルデヒドグループの反応基を有する場合、非特異的反応を最小化し、非ペプチド性リンカーの両末端で生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンとそれぞれ結合するのに効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりもはるかに安定的である。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0の条件ではリジン残基と共有結合を形成することができる。ここで、非ペプチド性リンカーは、それ自体で2つ以上のアルデヒド基を含んだものであるか、または2つ以上のアルコール基がアルデヒドを含む官能基で置換されたものであってもよい。
【0085】
前記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は、互いに同一であってもよく、異なってもよい。例えば、一方の末端にはマレイミドグループ、もう一方の末端にはアルデヒドグループ、プロピオンアルデヒドグループ、またはブチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒドグループを有してもよい。
【0086】
両端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性リンカーとして用いる場合には、公知の化学反応によって前記ヒドロキシ基を前記様々な反応基で活性化したり、商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて、本発明の結合体を製造してもよい。
【0087】
本発明において、用語、「生理活性ポリペプチド」は、生体内で任意の生理作用を有するポリペプチドを総称する概念であって、ポリペプチドの構造を有するという共通点を有し、様々な生理活性を示すことができる。前記生理活性ポリペプチドは、遺伝表現と生理機能を調整して生体内での機能の調節に関与する物質の欠乏や過剰な分泌によって異常な病態を示すときに、これを正しくする役割をすることを含み、一般的なタンパク質治療剤も含んでもよい。また、前記生理活性ポリペプチドは、天然型ポリペプチドに加えて、そのアナログもすべて含む概念である。
【0088】
本発明の結合体において、生理活性ポリペプチドは、本発明の結合体の構造を介して血中半減期の増大を示すことができる生理活性ポリペプチドであれば、特にその種類及びサイズに制限されないが、例えば、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質のような様々な生理活性ポリペプチド及びこれらのアナログからなる群から選択されるものであってもよい。しかし、これに制限されるものではない。
【0089】
本発明の一実施例では、代表的な生理活性ポリペプチドの例として、インスリンアナログ、GLP-1Rアゴニスト及び酵素類の様々な生理活性ポリペプチドを用いて結合体を製造し、前記ポリペプチドの種類及びサイズに関係なくポリペプチド自体によって生成される免疫反応が減少されるだけではなく、免疫グロブリンFc断片自体のFcガンマ受容体、補体との固有結合力を低下させうることを確認した。
【0090】
これらの生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルディン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクロナール抗体、抗体断片及びこれらのアナログからなる群から選択されるものであってもよいが、特にこれに制限されず、本発明の目的に合う生理活性ポリペプチドであれば、様々な生理活性ポリペプチドが該当されうる。
【0091】
前記酵素類は、イミグルセラーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、α-ガラクトシダーゼA、イズロニダーゼ(iduronidase;またはラロニダーゼ)、α-グルコシダーゼ(alpha-glucosidase)、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)、β-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase)、ガラクトース-6-スルファターゼ(Galactose-6-sulfatase)、酸性セラミダーゼ(acid ceramidase)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(acid sphingomyelinase)、ガラクトセレブロシダーゼ(galactocerebrosidsase)、アリルスルファターゼA(arylsulfatase A)、アリルスルファターゼB(またはガルスルファーゼ)、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)A、β-ヘキソサミニダーゼ(beta-hexosaminidase)B、ヘパリン-N-スルファターゼ(heparin N-sulfatase)、α-D-マンノシダーゼ(alpha-D-mannosidase)、β-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(N-acetylgalactosamine-6 sulfatase)、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase)、α-N-アセチル-グルコサミニダーゼ(alpha-N-acetyl-glucosaminidase、NAGLU)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(Chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(Uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(Platelet-Activating Factor Acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、アセチル-CoA-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA-glucosaminide N-acetyltransferase)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(N-acetylglucosamine-6-sulfatase)、ガラクトサミン6-スルファターゼ(galactosamine 6-sulfatase、GALN)、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、α-フコシダーゼ(α-fucosidase)、β-マンノシダーゼ(β-mannosidase)、α-ノイラミニダーゼ(α-neuraminidase、sialidase)、N-アセチル-グルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(N-acetyl-glucosamine-1-phosphotransferase)、ムコリピン-1(mucolipin-1)、α-N-アセチル-ガラクトサミニダーゼ(α-N-acetyl-galactosaminidase)、N-アスパルチル-β-グルコサミニダーゼ(N-aspartyl-β-glucosaminidase)、LAMP-2、シスチノシン(Cystinosin)、シアリン(Sialin)、セラミダーゼ(ceramidase)、酸性-β-グルコシダーゼ(acid-β-glucosidase)、ガラクトシルセラミダーゼ(galactosylceramidase)、NPC1、カテプシンA(cathepsin A、protective protein)、SUMF-1、リソソーム酸性リパーゼ(lysosomal acid lipase、LIPA)及びトリペプチジルペプチダーゼ(Tripeptidyl peptidase)1からなる群から選択されるものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0092】
また、本発明において、前記生理活性ポリペプチドは、天然型の形態の生理活性ポリペプチドだけでなく、各ポリペプチドのアナログで各ポリペプチドと同様の生体内の機能を保有したポリペプチドであって、このようなポリペプチドは、アゴニスト、前駆物質、誘導体、断片または変異体をすべて包括する概念である。
【0093】
ここで、インスリンアナログの例は、特許文献1及び2、オキシントモジュリン誘導体の例は、特許文献3に開示されたものをすべて含み、インスリン分泌ペプチドの誘導体の例としては、特許文献4に開示されたものもすべて含むが、これに制限されない。また、酵素の例としては、特許文献5に開示されたものもすべて含むが、特にこれに制限されない。前記公開特許の明細書の全文は、本願の参考文献として含まれる。
【0094】
本発明において、「免疫グロブリンFc断片」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖不変領域1(CH1)と軽鎖不変領域(CL1)を除いた、重鎖不変領域を意味する。ただし、前記Fc断片は、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。本発明において、前記免疫グロブリンFc断片は、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合力を維持する必要があるため、CH2ドメイン、CH3ドメイン、または両方を含むことが望ましい。
【0095】
また、本発明の免疫グロブリンFc断片は、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性リンカーと互いに連結されても、固有のFcRn結合力を維持する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域のみを除き、一部または全体の重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc断片であってもよい。
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち1つまたは 2つ以上のドメインと免疫グロブリンのヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ(例えば、CH2ドメイン及びCH3ドメインとヒンジ領域またはその一部との組み合わせ、そして前述した組み合わせを有するポリペプチド2つの二量体の形態)、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。
【0096】
また、一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc領域は、二量体の形態(dimeric form)であってもよいが、これに制限されない。
【0097】
これらの免疫グロブリンFc断片は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるため、薬物の担体として用いるのに安全である。また、免疫グロブリンFc断片は、免疫グロブリン全体分子に比べて相対的に分子量が小さいため、結合体の製造、精製及び収率の面で有利であるのみならず、アミノ酸配列が抗体ごとに異なるため、高い非均質性を示すFab部分が除去されて物質の同質性が大きく増加して、血中抗原性の誘発可能性も低くなる効果も期待できる。
【0098】
本発明において、前記免疫グロブリンFc断片は、天然型のアミノ酸配列だけでなく、その配列変異体(mutant)を含む。アミノ酸配列の変異体とは、天然のアミノ酸配列の1つまたは1つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を有することを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214~238、297~299、318~322または327~331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として用いられてもよい。
【0099】
また、ジスルフィド結合を形成しうる部位が除去されるか、天然型FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去され、または天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されることもあるなど、様々な種類の変異体が可能である。また、エフェクター機能をなくすために、補体の結合部位、例えば、C1qの結合部位が除去されることもあり、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)の部位が除去されることもある。これらの免疫グロブリンFc断片の配列誘導体を製造する技術は、特許文献6及び7などに開示されている。
【0100】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドでのアミノ酸交換は、当該分野で知られている(非特許文献4)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、 ファルネシル化 (farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化 (amidation)などで修飾( modification)されてもよい。
【0101】
前述したFc変異体は、本発明のFc断片と同様の生物学的活性を示し、Fc断片の熱、pHなどに対する構造的な安定性を増大させたものであってもよい。
【0102】
また、これらのFc断片は、ヒト及び牛、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内で分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組換え型またはその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は、全体の免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得てもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF'cを分離してもよい。
より具体的には、ヒト由来のFc断片を微生物から収得した組換え型の免疫グロブリンFc断片である。
【0103】
また、免疫グロブリンFc断片は、天然型の糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖または糖鎖が除去された形態であってもよい。これらの免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的方法のような通常の方法を用いてもよい。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc断片は、補体(C1q)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害または補体依存性細胞傷害が減少または除去されるため、生体内での不要な免疫反応を誘発しない。この点で、薬物の担体としての本来の目的により合致する形態は、糖鎖が除去されたり、非糖鎖化された免疫グロブリンFc断片である。
【0104】
本発明において、「糖鎖の除去(Deglycosylation)」は、酵素で糖を除去したFc断片をいい、「非糖鎖化(Aglycosylation)」は、原核動物、具体的には、大腸菌で生産して糖鎖化されないFc断片を意味する。
【0105】
一方、免疫グロブリンFc断片は、ヒトまたは牛、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、具体的には、ヒト起源である。また、免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらの混成(hybrid)によるFc断片であってもよい。具体的には、ヒトの血液に最も豊富なIgGまたはIgM由来であり、最も具体的には、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知されたIgG由来である。
【0106】
一方、本発明において、「組み合わせ(combination)」は、二量体または多量体を形成するとき、同じ起源の短鎖の免疫グロブリンFc断片を暗号化するポリペプチドが異なる起源の短鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。つまり、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなるグループから選択された2つ以上の断片から二量体または多量体の製造が可能である。
【0107】
本発明において、「ハイブリッド(hybrid)」は、短鎖の免疫グロブリンFc断片内に2つ以上の異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、様々な形態のハイブリッドが可能である。つまり、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなるグループから1つ~4つのドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0108】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明では、これらの組み合わせまたはこれらの混成化も可能である。具体的には、IgG2及びIgG4のサブクラスであり、より具体的には、補体依存性細胞傷害(CDC、complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクター機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc断片である。つまり、より具体的な本発明の薬物の担体用免疫グロブリンFc断片は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化されたFc断片である。ヒト由来のFc断片は、ヒト生体で抗原として作用して、これに対する新しい抗体を生成するなどの望ましくない免疫反応を引き起しうる非ヒト由来のFc断片に比べて望ましい。
【0109】
本発明を具現するための別の様態は、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べてFcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)との結合力が90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下に減少した生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を提供する。
【0110】
本発明の一実施例では、インスリン及びGLP-1アゴニストそれぞれをFcガンマ受容体及び補体との結合能が著しく低下した免疫グロブリンFc断片と非ペプチド性重合体と連結して、免疫グロブリンFc断片固有の免疫エフェクター機能を保有しない可能性のある結合体を製造することができることを確認した(図1、2及び3)。
【0111】
本発明を具現するための別の様態は、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含む免疫反応減少用組成物であって、前記免疫反応の減少は、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて、免疫反応が弱化されたものである組成物を提供する。
【0112】
前記組成物は、生理活性ポリペプチド単独によって発生する免疫反応を著しく減少させたり、相殺させることを特徴とする。
【0113】
前記組成物は、薬学的組成物の形態であってもよい。
【0114】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよい。これらの薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤は、非自然に発生したものであってもよい。
【0115】
本発明において、用語、「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すほどの十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合または同時に用いられる薬物などの医学分野でよく知られている要素に応じて、当業者によって容易に決定してもよい。
【0116】
本発明のペプチドを含む薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。前記担体は、特にこれに制限されないが、経口投与の際には、結合剤、滑沢剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いてもよく、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いてもよく、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを用いてもよい。
【0117】
本発明の組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容可能な担体と混合して多様に製造してもよい。例えば、経口投与の際には、錠剤、トローチ、カプセル、エリクサー、サスペンション、シロップ、ウェーハなどの形態で製造してもよく、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造してもよい。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放型製剤などに剤形化してもよい。
【0118】
一方、製剤化に適合した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが用いられてもよい。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0119】
また、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有してもよい。
【0120】
また、前記組成物は、薬学的分野で通常の方法によって患者の身体内投与に適した単位投与型の製剤、具体的には、タンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態で剤形化して、当業界で通常用いられる投与方法を用いて、経口、または皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髓膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内または直腸経路を含む非経口投与経路によって投与されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0121】
また、前記結合体は、生理食塩水または有機溶媒のような薬剤で許可された色々な担体(carrier)と混合して用いられてもよく、安定性や吸収性を増加させるためにグルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)またはグルタチオンのような抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質または他の安定化剤(stabilizers)などが薬剤として用いられてもよい。
【0122】
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度などのいくつかの関連因子と一緒に、活性成分である薬物の種類に応じて決定される。
【0123】
本発明の組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与してもよく、複数の投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与してもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量が異なってもよい。具体的には、本発明の結合体の望ましい全体容量は一日に患者の体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであってもよい。しかし、前記結合体の容量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食物及び排泄率などのさまざまな要因を考慮して、患者に対する有効投与量が決定されるため、このような点を考慮すると当分野の通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定してもよい。本発明に係る薬学的組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0124】
本発明の薬学的組成物は、生体内持続性及び治療効果を示す生理活性ポリペプチド自体の免疫原性が著しく減少して投与回数及び頻度を著しく減少させることができるほか、不要な免疫反応が起こらず、所望の治療効果をなしうる。
【0125】
本発明を具現するための別の様態は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片に比べて免疫反応が弱化された結合体を分離する段階を含む、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法を提供する。
【0126】
前記製造方法は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)血清由来の免疫グロブリンGに比べて免疫反応が低下した結合体を分離する段階を含む免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法であってもよい。
【0127】
前記製造方法は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片単独が示すT細胞の増殖水準に比べてT細胞の増殖水準が減少した結合体を分離する段階を含む免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法であってもよい。
【0128】
前記製造方法は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片単独が示すT細胞のIL-2の分泌水準に比べてT細胞のIL-2の分泌水準が減少した結合体を分離する段階を含む免疫グロブリンFc断片の免疫反応が弱化された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法であってもよい。前記免疫反応の弱化については、前述したことがすべて適用される。
【0129】
前記製造方法は、(a)生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーの両末端にそれぞれ結合させ、Fcガンマ受容体、補体との固有結合力が低下した生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び(b)Fcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)に対する結合力が血清由来の免疫グロブリンGに比較して著しく低下した生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法であってもよい。
【0130】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、非ペプチド性リンカー及び結合体については、前記で説明した通りである。
本発明の方法において、前記(a)段階は、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して共有結合的に相互連結する段階である。(a)段階は、(i)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片のいずれかを先に非ペプチド性リンカーの一方の末端の反応基に連結する段階及び(ii)非ペプチド性リンカーの他の末端の反応基に残りの一つを連結する段階を含んでもよく、ここで(i)及び(ii)段階の間に、さらに非ペプチド性リンカーの一方の末端に生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片が結合されたものを分離する段階を含んでもよい。このような過程を介して結合体を製造する場合には、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する結合体のほか、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合力が阻害された結合体などの副産物が発生しうる。したがって、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結する反応の後で、これらの混合物から免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体、補体との固有結合力が低下して/したり、T細胞の増殖水準及び/またはT細胞のIL-2の分泌水準が減少された生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を分離する過程がさらに必要である。
【0131】
したがって、本発明の方法は、(b)Fcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)に対する結合力が血清由来の免疫グロブリンGに比べて著しく低下して/したり、T細胞の増殖水準及び/またはT細胞のIL-2の分泌水準が減少された結合体を分離する段階を含む。
【0132】
本発明を具現するための別の様態は、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の免疫反応を減少させる方法であって、前記免疫反応の減少は、(a)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応;または(b)免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応の合計に比べて免疫反応が弱化されたものである方法を提供する。
【0133】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、非ペプチド性リンカー及び結合体については、前記で説明した通りである。
【0134】
本発明を具現するための別の様態は、生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べて生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のFcガンマ受容体及び/または補体に対して低下した結合力を維持させる方法を提供する。前記固有結合力の維持は、インビトロで行われてもよい。
【0135】
本発明において、用語、「結合力の維持」とは、Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片が示す、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べて低いFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が、前記Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して生理活性ポリペプチドに連結されても、まだ前記Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片自体が示す結合力に相応するFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力を示すことをいう。ここで、「相応する」ということは、Fcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片自体が示すFcガンマ受容体及び/または補体に対する結合力に比べて少なくとも±20%、±10%、 ±5%、または0%の差を示すことをいう。
【0136】
ここで、Fcガンマ受容体及び/または補体は、Fcガンマ受容体I、IIIA及び/または補体1q(C1q)であってもよいが、特にこれに制限されない。
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、非ペプチド性リンカー及び結合体については、前記で説明した通りである。
本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体、補体との固有結合力が低下した免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーで連結させ、免疫グロブリンFc断片の低下したFcガンマ受容体、補体との結合力により、免疫グロブリンFc断片のエフェクター機能により体内で誘導できる不必要な免疫反応を効果的に抑制することができる利点を有する。
【0137】
本発明を具現するための別の様態は、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べて免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体及び/または補体との固有結合力が著しく低下したことを特徴とする、組成物を提供する。
【0138】
また、本発明を実施するための別の様態は、前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片それぞれが示すT細胞の増殖水準及び/またはT細胞のIL-2の分泌水準に比べて減少したT細胞の増殖水準及び/またはT細胞のIL-2の分泌水準を示すことを特徴とする、組成物を提供する。
【0139】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片及び結合体については、前記で説明した通りである。
前記T細胞の増殖水準及び/またはT細胞のIL-2の分泌水準の減少については、前述の免疫反応の減少または弱化で説明したことがすべて適用される。
以下、本発明を下記例により、より詳細に説明する。ただし、下記の例は本発明を例示的に説明するためのもので、下記の例により本発明の範疇が制限されるものではない。
【0140】
本発明で用いられる持続型結合体は、天然または組換え起源の任意の方法で製造したタンパク質もしくはペプチドと天然IgGを特定タンパク質の分解酵素で処理したり、組換え技術を用いて、形質転換細胞から製造した免疫グロブリンFc領域を結合して製造してもよい。この時、用いられる結合方法では、タンパク質あるいはペプチドと免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体を用いて交差結合させる形態の融合タンパク質で製造してもよい。
【0141】
製造例1:免疫グロブリンFc断片及び生理活性タンパク質結合体の製造
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれに制限されるものではない。本発明で用いられる持続型結合体は、天然または組換え起源の任意の方法で製造したタンパク質もしくはペプチドと天然IgGを特定のタンパク質分解酵素で処理したり、組換え技術を用いて、形質転換細胞から製造した免疫グロブリンFc領域を結合させて製造してもよい。このとき、用いられる結合方法では、タンパク質あるいはペプチドと免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体を用いて交差結合させるか、組換え技術を用いて、タンパク質もしくはペプチドと免疫グロブリンFc領域が連結された形態の融合タンパク質で製造してもよい。
【0142】
(1)ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)由来の非糖鎖化されたFc断片の製造
持続型結合体の製造に用いられるIgG4由来の非糖鎖化されたFc断片は、特許文献8(特許文献9)に記載された方法で製造した。
要約すると、持続型結合体の製造に用いられるIgG4由来の非糖鎖化されたFc断片を製造するために、形質転換された大腸菌の培養を用いて目的タンパク質を過発現した後、細胞を破砕し、凝集体形態のFc断片を収得した。その後、リフォールディング過程を経て天然形態の構造を回復した後に、精製を介して最終的にIgG4由来の非糖鎖化されたFc断片を収得した。
【0143】
(2)ヒトインスリンアナログ-Fc結合体の製造
ヒトインスリンアナログ-Fc結合体は、特許文献10に記載された方法で製造した。ヒトインスリンアナログも前記文献に記載されたものを用いた。
要約すると、3.4kDa propion-ALD2 PEG(IDB社、韓国)をインスリンアナログβ鎖のN末端に特異的にPEG化(PEGylation)させるために反応させた。反応液は陽イオン交換カラムを用いて精製した。インスリン結合体の製造のために、精製されたモノPEG化されたインスリンとヒト免疫グロブリンG4由来の非糖鎖化されたFc断片(約50kDa)のアミノ(N)末端に結合させた。この時、反応は免疫グロブリンFcのN末端に特異的に結合させるためにpH6.0~8.2で行った。反応が終結した後、反応液は陰イオン交換カラムを用いて1次精製した後、疎水性カラムを用いて2次精製し、位置特異的に連結されたインスリンアナログ-Fc結合体を収得した。
【0144】
(3)GLP-1R アゴニスト-Fc結合体の製造
GLP-1R アゴニスト-Fc結合体は、特許文献11に記載された方法で製造した。
要約すると、3.4kDa propion-ALD2 PEG(IDB、韓国)をGLP-1R アゴニスト(Glucagon-like peptide-1 receptor agonist)であるイミダゾアセチルエクセンディン-4(CAエクセンディン-4、Bachem、スイス)のリジンと位置特異的に反応させた。その後、PEGとGLP-1R アゴニストが1:1で結合された連結体を得るために、前記反応混合物を陽イオン交換カラムを行ってモノPEG化された(mono-PEGylated)CAエクセンディン-4を精製した。免疫グロブリンFcのN末端と特異的にモノPEG化されたCAエクセンディン-4が連結されたGLP-1R アゴニスト結合体を製造するために、pH5.0~8.2の条件で反応した。カップリング反応後、疎水性カラムと陰イオン交換カラムを用いた2段階の精製方法を用いて、最終的に位置特異的に結合されたGLP-1R アゴニスト-Fc結合体を精製した。
【0145】
(4)イミグルセラーゼ持続型結合体の製造
アルデヒド-ポリエチレングリコール(Mw=10000Da)-アルデヒド(ALD-PEG-ALD)(SUNBRIGHT DE-100AL2、NOF CORPORATION、Japan)リンカーをイミグルセラーゼのN末端に結合させるために、イミグルセラーゼとALD-PEG-ALDとのモル比を1:50にし、イミグルセラーゼの濃度を1mg/mLで25℃で約1時間反応させた。この時、反応は、100mMリン酸カリウム(Potassium phosphate)pH6.0で行われ、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応液は、20mMリン酸ナトリウム(Sodium phosphate)(pH6.0)、2.5%(v/v)グリセロールを含むバッファーと塩化ナトリウムの濃度勾配を利用したSource 15S(GE、米国)カラムを用いて、反応しないイミグルセラーゼとモノ結合されたイミグルセラーゼを精製した。
【0146】
次に、前記精製されたポリエチレングリコールリンカーと結合したイミグルセラーゼと免疫グロブリンFc断片のモル比が1:50になるようにして、全体のタンパク質濃度を40mg/mLにし、4~8℃で12~16時間反応させた。この時、反応液は、100mMリン酸カリウム(Potassium phosphate)pH6.0であり、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応が終了した後、前記反応液を10mMクエン酸塩(Sodium citrate)(pH5.0)バッファーと塩化ナトリウム(Sodium chloride)濃度勾配を利用したSource 15S(GE、米国)カラムと、20mMトリス(Tris)(pH7.5 )、5%(v/v)グリセロールと100mMクエン酸ナトリウム(Sodium citrate)(pH3.7)、塩化ナトリウム、10%グリセロールバッファーの濃度勾配を利用したProtein A(GE、米国)に適用し、最後に塩化ナトリウムが含まれた50mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH6.1)を用いたSuperdexTM200(GE、米国)に適用して、イミグルセラーゼに免疫グロブリンFcがポリエチレングリコールリンカーによって共有結合的に連結された結合体を精製した。
【0147】
具体的には、前記精製した非ペプチド性重合体の酵素と免疫グロブリンFc領域とを非ペプチド性重合体の未反応した他方のアルデヒド(aldehyde、-CHO)基と免疫グロブリンFc領域N末端の-NH2基とを共有結合をさせて、共有結合の反応後に精製を介して酵素結合体の製造を完成した。
【0148】
最終的に製造したイミグルセラーゼ-ポリエチレングリコールリンカー-免疫グロブリンFc結合体は、イミグルセラーゼの単量体が2つの鎖からなる免疫グロブリンFcの一方の鎖にポリエチレングリコールリンカーで連結された形態である。
【0149】
実験例1:Fcガンマ受容体I、IIIA(FcγRI、FcγRIIIA)に対する結合力の評価
Fcガンマ受容体との結合力をタンパク質の水準で評価するために、Fcガンマ受容体IとIIIAタンパク質をCHO(Chinese hamster ovary)細胞発現システムを利用して収得した。具体的には、Fcガンマ受容体I及びIIIAの細胞外領域及びGST(glutathione S-transferase)タグをコードする遺伝子をサイトメガロウイルスプロモーター(CMV promoter)で発現される発現ベクターを製造し、これを用いてCHO細胞を形質転換した。形質転換された細胞を1mg/mL G418(Geneticin、Cellgro、USA)で選別し、細胞増殖させて無血清培地でFcガンマ受容体の発現を誘導した。GST特異的カラムを用いてFcガンマ受容体I、IIIAタンパク質を精製した。
【0150】
実験例2:Fcガンマ受容体I(FcγRI)に対する結合力の評価
前記Fcガンマ受容体Iを50mM炭酸ナトリウムの緩衝液(pH9.0)に1.5μg/mLの濃度に希釈した後、酵素結合免疫吸着検査(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)用の96ウェルプレート(96 well plate)にコーティングした(4℃、16時間)。3回水洗した後、非特異的タンパク質の結合を抑制するために、1%ゼラチンを含むD-PBS(dulbecco's phosphate buffered saline)を入れて、37℃で1時間静置した後、除去した。ヒト血清由来の免疫グロブリンGと前記製造例1で製造した免疫グロブリンFc断片;及び生理活性タンパク質-Fc結合体であるインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体とを10μg/mL、または1μg/mLから3倍順次希釈して96ウェルプレートに添加した。模擬試料(Mock sample)では反応溶液(1%ゼラチンを含むD-PBS)のみを用いた。その後、室温で2時間培養してFcガンマ受容体Iとの結合反応を誘導した。Fcガンマ受容体Iと結合した免疫グロブリンG、免疫グロブリンFc及び結合体の量を検出するために、ペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase)が結合している抗ヒト免疫グロブリンG抗体を添加して結合させた後(室温、2時間)、TMB(3,3'、5,5'-Tetramethylbenzidine)基質を添加して発色させた。2N HClを添加して反応を停止させた後、450nmでの吸光度を測定した。
【0151】
その結果、図1(a)及び図1(b)で確認できるように、本発明の免疫グロブリンFc断片及びインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体は、それぞれヒト血清由来の免疫グロブリンGに比べて著しく低下したFcガンマ受容体I(FcγRI)に対する結合能を示した。このような結果は、本発明の結合体は人体に投与される場合にも免疫反応を誘発するFcガンマ受容体I(FcγRI)との結合力がほとんどなく、不必要な免疫反応を誘発しないことを示唆する。
【0152】
実験例3:Fcガンマ受容体IIIA(FcγRIIIA)に対する結合力の評価
ヒト血清由来の免疫グロブリンGと前記製造例1で製造した免疫グロブリンFc断片;及び生理活性タンパク質-Fc結合体であるインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体を50mM炭酸ナトリウムの緩衝液(pH9.0)を用いて、9μg/mLから3倍順次希釈した後、酵素結合免疫吸着検査用の96ウェルプレートにコーティングした(4℃、16時間)。3回水洗した後、非特異的タンパク質の結合を抑制するために、5%脱脂粉乳を含むD-PBSを入れて37℃で1時間静置した後、除去した。Fcガンマ受容体IIIAを1μg/mLで希釈した後、室温で2時間培養してヒト血清由来の免疫グロブリンG、前記製造例1で製造した免疫グロブリンFc断片;及び生理活性タンパク質-Fc結合体であるインスリン誘導体-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体との結合反応を誘導した。結合したFcガンマ受容体IIIAの量を検出するために、ウサギ由来の抗GST抗体を添加して反応させた。その後、ペルオキシダーゼが結合している抗ウサギ免疫グロブリンG抗体を添加して結合させた後(室温、各2時間)、TMB基質を添加して発色させた。2N HClを添加して反応を停止させた後、450nmでの吸光度を測定した。
【0153】
その結果、図2(a)及び図2(b)で確認できるように、本発明の免疫グロブリンFc断片及びインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体は、それぞれヒト血清由来の免疫グロブリンGに比べて著しく低下したFcガンマ受容体IIIA(FcγRIIIA)に対する結合能を示した。このような結果は、本発明の結合体は、人体に投与される場合にも免疫反応を誘発するFcガンマ受容体IIIA(FcγRIIIA)との結合力がほとんどなく、不必要な免疫反応を誘発しないことを示唆する。
【0154】
実験例4:補体1q(C1q)に対する結合力の評価
ヒト血清由来の免疫グロブリンGと前記製造例1で製造した免疫グロブリンFc断片;及び生理活性タンパク質-Fc結合体であるインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体を50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)を用いて、9μg/mLから3倍、または10μg/mLから2倍順次希釈した後、酵素結合免疫吸着検査用の96ウェルプレートにコーティングした(4℃、16時間)。3回水洗した後、非特異的タンパク質の結合を抑制するために、1%ゼラチンを含むD-PBSを入れて、37℃で1時間静置した後、除去した。 C1q(Quidel、USA)を4μg/mLに希釈した後、室温で2時間培養して免疫グロブリンG、前記製造例1で製造した免疫グロブリンFc断片;及び生理活性タンパク質-Fc結合体であるインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体との結合反応を誘導した。結合したC1qの量を検出するために、ペルオキシダーゼが結合している抗ヒトC1q抗体を添加して結合させた(室温、各2時間)。その後、TMB基質を添加して発色させた。2N HClを添加して反応を停止させた後、450nmでの吸光度を測定した。
【0155】
その結果、図3(a)及び図3(b)で確認できるように、本発明の免疫グロブリンFc断片及びインスリンアナログ-Fc結合体及びGLP-1R アゴニスト-Fc結合体は、それぞれヒト血清由来の免疫グロブリンGに比べて著しく低下したC1qに対する結合能を示した。このような結果は、本発明の結合体は、人体に投与される場合にも免疫反応を誘発するC1qとの結合力がほとんどなく、細胞毒性、炎症などの免疫反応を誘発する危険性が非常に低いことを特徴とするなど、不必要な免疫反応を誘発しないことを示唆する。
【0156】
実験例5:EpiScreen分析を介した免疫原性の確認
インスリンアナログ及び免疫グロブリンFc及びインスリンアナログ-免疫グロブリンFc結合体の免疫原性を確認するために、タンパク質医薬品に対するT細胞の反応を定量して、免疫原性をエクスビボで測定するEpiScreen分析を用いた。特に、T細胞の増殖頻度とIL-2の分泌度を確認した。
EpiScreenは、ドナーの血液の軟膜から末梢血単核球細胞(Peripheral blood mononuclear cells、PBMC)を分離して用い、AIM-V培地(Invitorogen)を用いて培養及び維持した。計50人のドナーから分離したPBMCを試験に用いた。
【0157】
T細胞の増殖頻度を確認するために、各ドナーから分離したPBMCは4~6×106細胞数/mLで培地に希釈して24ウェルプレートに1mLずつ接種した。インスリンアナログを最終濃度が5μMになるように適正濃度に希釈し、インスリンアナログ-免疫グロブリンFc結合体、免疫グロブリンFc、ヒト化されたA33及びKLH(Keyhole limpet haemocyanin)は、最終濃度が0.3μMになるように希釈して、細胞がある24ウェルプレートにウェル当たり0.5 mLずつ入れた。 37℃、二酸化炭素5%の条件で、計8日間培養した。5日、6日、7日、そして8日目には、各ウェルの細胞を再浮遊して、100μLずつ3ウェルにn=3になるように96ウェルプレートに移した。AIM-V培地に0.75μCiで3H-チミジン(Perkin Elmer)を希釈した後、前記96ウェルに100μLずつ入れた後、18時間培養した。細胞回収機(Cell harvester)で96ウェルフィルターに細胞を移し、Meltilex(Perkin Elmer)を用いてマイクロβカウンターでCPM(Counts per minute)の値を読み出した。
【0158】
IL-2の分泌度はELISpotを用いて測定した。ELISpotプレートにIL-2の捕獲抗体を一晩コーティングした後、PBS(Phosphate buffered saline)で3回洗浄した。ブロッキングバッファー(1%bovine serum albumin/PBS)を用いて一晩維持させた後、AIM-V培地で洗浄した。ウェルあたりAIM-V培地を50μLずつ入れた後、4~6×106細胞数/mLで培地に希釈したPBMCを100μLずつ入れた。インスリンアナログを最終濃度が5μMになるように適正濃度に希釈し、インスリンアナログ-免疫グロブリンFc結合体、免疫グロブリンFc、ヒト化されたA33及びKLH(Keyhole limpet haemocyanin)は、最終濃度が0.3μMになるように希釈し、適正ウェルにn=6で接種した。8日間培養した後、蒸留水で1回、PBSで3回洗浄した後、ビオチン(Biotin)がラベリングされたIL-2抗体を37℃で1時間30分間反応させた。PBSで3回洗浄した後、ストレプトアビジン-AP(AlKaline phosphate)を常温で1時間30分間反応させた後、PBSで3回追加洗浄した。BCIP/NBT(5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphate/Nitro blue tetrazolium)を基質として追加し、30分間発色反応させた後に蒸留水で洗浄して反応を停止させた。プレートを乾燥させた後、イムノスキャン分析機(Immunoscan Analyser)を利用してスキャンした後、イムノスキャンソフトウェア(Immunoscan Software、Version 5)を利用してspw(Spots per well)を分析した。
【0159】
T細胞の増殖頻度とIL-2の分泌度は、SI(Stimulating index)を計算して分析し、SIが2以上である時に陽性と判断した。
【0160】
下記表1は、生理活性ポリペプチドであるインスリンアナログ及び免疫グロブリンFcそれぞれの単独及びインスリンアナログ-免疫グロブリンFc結合体及び陽性対照群であるヒト化されたA33抗体及びKLH(Keyhole limpet haemocyanin)のエクスビボのT細胞の増殖頻度を示した表である。
【0161】
【表1】


下記表2は、生理活性ポリペプチドであるインスリンアナログ及び免疫グロブリンFcそれぞれの単独及びインスリンアナログ-免疫グロブリンFc結合体及び陽性対照群であるヒト化されたA33抗体及びKLH(Keyhole limpet haemocyanin)のエクスビボのT細胞のIL-2の分泌頻度を示した表である。
【0162】
【表2】


前記表1及び2の結果から分かるように、本発明の生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体は、それぞれの構成要素である生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc単独により発生する免疫反応を画期的に減少させることが確認できた。さらに、このような結果は、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーによって結合体を構成することにより、APIである生理活性ポリペプチドによって発生されうる不必要な免疫反応を相殺できる構造であることを示唆する。また、一般的には、血中内で持続性を増加させるFc断片の結合により、血中内の半減期も増加された形態で生体内で過剰な免疫反応なしに治療剤として用いられることを示唆する。
【0163】
実験例6:持続型結合体の治療効果の確認
イミグルセラーゼ持続型結合体のM6P受容体の結合力の確認
M6PRに対する結合力を確認するために、SPR(surface Plasmon resonance、BIACORE T200)を用いてイミグルセラーゼ(対照群)と、前記で製造したイミグルセラーゼ持続型結合体(試験群)の結合力を確認した。M6PRは、Rnd systemsから購入し、CM5チップにアミン結合法を用いて固定化させた後、対照群は100nM~6.24nMの濃度で、試験群は200nM~12.5nMの濃度で流し、その結合力を確認した。
【0164】
pH7.5のHEPESバッファー(HBS-EP)を基本バッファー(running buffer)として用い、すべての試験物質は基本バッファーで希釈して結合を誘導し、解離も基本バッファーで行った。チップに固定化されたM6PRに試験物質を10分間流して結合を誘導した後、6分間解離過程を経た。
その後、他の濃度の対照群または試験群を結合させるために、M6PRに結合された結合体に5mM NaOH/50mM NaClを約30秒間流した。M6PRとイミグルセラーゼまたはイミグルセラーゼ持続型結合体間の結合力は、BIAevaluationプログラムを用いて分析した。Ka(association rate constant)、Kd(dissociation rate constant)及びKD(affinity constant)は、1:1 Langmuir結合モデルを用いて算出した。
【0165】
本発明のイミグルセラーゼ持続型結合体の活性を確認した結果をまとめると、下記の通りである。下記値は、イミグルセラーゼの活性(100%)に比べた持続型結合体の活性を示したものである。
【0166】
【表3】


以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、制限的なものではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明より、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
次に、本発明のまた別の好ましい態様を示す。
1. 下記(a)、(b)またはこれら両方の特性を有する、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片に生理活性ポリペプチドが連結された、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体:
(a)前記結合体が、生理活性ポリペプチド単独による免疫反応に比べても弱化された免疫反応を示す;
(b)前記結合体が、前記免疫グロブリンFc断片自体の免疫反応と相応したり、減少された程度の免疫反応を示す。
2. 前記免疫反応が、前記免疫グロブリンFc断片、生理活性ポリペプチドまたは生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のT細胞の増殖またはT細胞のIL-2(Interleukin-2)の分泌によるものである、上記1に記載の結合体。
3. 前記免疫グロブリンFc断片が、Fcガンマ受容体との結合力がヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて90%以下に減少したことが特徴である、上記1に記載の結合体。
4. 前記免疫グロブリンFc断片が、補体1qとの結合力がヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べて90%以下に減少したことが特徴である、上記1に記載の結合体。
5. 前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が、生理活性ポリペプチドに比べて90%以下に減少したT細胞の増殖を示すことが特徴である、上記1に記載の結合体。
6. 前記生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体が、生理活性ポリペプチドに比べて90%以下に減少したT細胞のIL-2(Interleukin-2)の分泌を示すことが特徴である、上記1に記載の結合体。
7. 前記生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片が、非ペプチド性リンカーを介して連結された、上記1に記載の結合体。
8. 前記非ペプチド性リンカーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、上記7に記載の結合体。
9. 前記非ペプチド性リンカーが、下記式(1)で示されるポリエチレングリコール重合体である、上記7に記載の結合体:

(1)
(式中、n=10~2400である)。
10. 前記生理活性ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体、細胞表面抗原、または受容体拮抗物質である、上記1に記載の結合体。
11. 前記生理活性ポリペプチドが、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルディン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクロナール抗体、抗体断片及びこれらのアナログからなる群から選択されるものである、上記1に記載の結合体。
12. 前記免疫グロブリンFc断片が、CH2ドメイン、CH3ドメイン、または両方を含むものである、上記1に記載の結合体。
13. 前記免疫グロブリンFc断片が、非糖鎖化されたものである、上記1に記載の結合体。
14. 前記免疫グロブリンFc断片が、ヒンジ(hinge)領域をさらに含むものである、上記1に記載の結合体。
15. 前記免疫グロブリンFc断片が、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)及びこれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されるものである、上記1に記載の結合体。
16. 前記免疫グロブリンFc断片が、IgG4 Fc断片である、上記1に記載の結合体。
17. (a)前記生理活性ポリペプチド単独による免疫反応が、T細胞の増殖、T細胞のIL-2の分泌またはこれら両方であり、
前記結合体が、生理活性ポリペプチド単独による前記免疫反応に比べて弱化された免疫反応を示し、
(b)前記免疫グロブリンFc断片自体が、免疫グロブリンGまたはそのFc断片に比べてFcガンマ受容体、補体、またはこれら両方に対して低下した結合力を示し、前記結合体が、これらの免疫グロブリンFc断片の低下した結合力を維持する、
上記1に記載の結合体。
18. 上記1~17のいずれか一項に記載の生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含む、免疫反応減少用組成物であって、
前記免疫反応の減少が、免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応に比べて免疫反応が弱化されたものである、組成物。
19. (a)生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び
(b)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc断片に比べて免疫反応が弱化された結合体を分離する段階を含む、
上記1~17のいずれか一項に記載の生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法。
20. (a)生理活性ポリペプチド及び免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造する段階;及び
(b)血清由来の免疫グロブリンGに比べて免疫反応が弱化された結合体を分離する段階を含む、
上記1~17のいずれか一項に記載の生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の製造方法。
21. 前記免疫反応の弱化が、免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去されたことが特徴である、上記20に記載の方法。
22. 前記免疫反応が弱化された免疫グロブリンFc断片が、非糖鎖化されたFc断片である、上記20に記載の方法。
23. 前記(b)段階が、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合された形態の結合体を分離するためのものである、上記20に記載の方法。
24. 生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体の免疫反応を減少させる方法であって、前記免疫反応の減少が、
免疫グロブリンFc断片または生理活性ポリペプチドそれぞれの単独による免疫反応に比べて免疫反応が弱化されたものである、方法。
25. 前記免疫反応が、前記Fc断片、生理活性ポリペプチドまたは生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のT細胞の増殖またはT細胞のIL-2(Interleukin-2)の分泌によるものである、上記24に記載の方法。
26. 生理活性ポリペプチド及びFcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結して、ヒト血清由来の免疫グロブリンGまたはその断片に比べて、生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体のFcガンマ受容体及び補体に対する低下した結合力を維持させる方法。
27. 前記Fcガンマ受容体及び補体に対する結合力が除去された免疫グロブリンFc断片が、非糖鎖化されたFc断片である、上記26に記載の方法。
28. 上記1~17のいずれか一項に記載の生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンGまたはその断片に比べて免疫グロブリンFc断片のFcガンマ受容体または補体との固有結合力が低下したことが特徴である、組成物。
29. 上記1~17のいずれか一項に記載の生理活性ポリペプチド-免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、生理活性ポリペプチド単独に比べてT細胞の増殖、T細胞のIL-2の分泌、またはこれら両方が減少したことが特徴である、組成物。
図1
図2
図3