(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173633
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】エレベータかご装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/04 20060101AFI20221115BHJP
B66B 7/04 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B66B5/04 D
B66B7/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079448
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中川 俊樹
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304CA13
3F304DA23
3F304DA33
3F304DA43
3F305BD27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】かごが設定加速度で下方向へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置によってかごをかごレールに停止させることができるエレベータかご装置を提供する。
【解決手段】エレベータかご装置は、かごと、電気信号を用いることなく、かごをかごレールに停止させる非常停止装置5と、を備え、非常停止装置5は、かごをかごレールに停止させるために、かごに対して上方向へ移動する可動部18と、可動部18に上方向への弾性復元力を加える停止弾性部と、可動部を保持し、かごが設定加速度で下方向へ移動したときに可動部の保持を解除する保持部19と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
電気信号を用いることなく、前記かごをかごレールに停止させる非常停止装置と、を備え、
前記非常停止装置は、
前記かごを前記かごレールに停止させるために、前記かごに対して上方向へ移動する可動部と、
前記可動部に上方向への弾性復元力を加える停止弾性部と、
前記可動部を保持し、前記かごが設定加速度で下方向へ移動したときに前記可動部の保持を解除する保持部と、を備える、エレベータかご装置。
【請求項2】
前記保持部は、弾性復元力によって前記可動部を保持する保持弾性部を備える、請求項1に記載のエレベータかご装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記可動部を上方から当て止めする保持当止部を備え、
前記保持弾性部は、前記保持当止部に、横方向に沿う方向へ弾性復元力を加える、請求項2に記載のエレベータかご装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記かごに対して可動であり、
前記非常停止装置は、
前記かごに対して回転可能に接続され、前記かごが移動することに伴って回転するようにレールに接するガバナローラと、
前記ガバナローラが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナローラと前記錘とを接続する錘接続部と、
前記保持部を上方から当て止めし、前記錘が設定位置まで移動したときに前記保持部の当て止めを解除する起動部と、をさらに備える、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかご装置。
【請求項5】
前記非常停止装置は、前記可動部が前記保持部に対して可動となるように、前記可動部と前記保持部とを接続する保持接続部をさらに備える、請求項4に記載のエレベータかご装置。
【請求項6】
前記非常停止装置は、
前記かごに対して回転可能に接続され、前記かごが移動することに伴って回転するようにレールに接するガバナローラと、
前記ガバナローラが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナローラと前記錘とを接続する錘接続部と、を備え、
前記錘が設定位置まで移動したときに、前記保持部に力を加えることによって前記保持部が前記可動部を保持することを解除させる起動部と、をさらに備える、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかご装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のエレベータかご装置を備える、エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータかご装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータかご装置は、かごと、かごをかごレールに停止させる非常停止装置と備えている(例えば、特許文献1)。ところで、例えば、かごが設定加速度(例えば、定格加速度よりも大きい過加速度)で移動した場合に、非常停止装置によってかごをかごレールに停止させたいという要望がある。そして、例えば、確実に動作する信頼性が必要であり、また、例えば、停電時でも動作する必要があるため、非常停止装置が電気信号によって動作する構成(例えば、特許文献2)であることは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-262472号公報
【特許文献2】特開2016-166059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、かごが設定加速度で下方向へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置によってかごをかごレールに停止させることができるエレベータかご装置及びエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エレベータかご装置は、かごと、電気信号を用いることなく、前記かごをかごレールに停止させる非常停止装置と、を備え、前記非常停止装置は、前記かごを前記かごレールに停止させるために、前記かごに対して上方向へ移動する可動部と、前記可動部に上方向への弾性復元力を加える停止弾性部と、前記可動部を保持し、前記かごが設定加速度で下方向へ移動したときに前記可動部の保持を解除する保持部と、を備える。
【0006】
また、エレベータかご装置においては、前記保持部は、弾性復元力によって前記可動部を保持する保持弾性部を備える、という構成でもよい。
【0007】
また、エレベータかご装置においては、前記保持部は、前記可動部を上方から当て止めする保持当止部を備え、前記保持弾性部は、前記保持当止部に、横方向に沿う方向へ弾性復元力を加える、という構成でもよい。
【0008】
また、エレベータかご装置においては、前記保持部は、前記かごに対して可動であり、前記非常停止装置は、前記かごに対して回転可能に接続され、前記かごが移動することに伴って回転するようにレールに接するガバナローラと、前記ガバナローラが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナローラと前記錘とを接続する錘接続部と、前記保持部を上方から当て止めし、前記錘が設定位置まで移動したときに前記保持部の当て止めを解除する起動部と、をさらに備える、という構成でもよい。
【0009】
また、エレベータかご装置においては、前記非常停止装置は、前記可動部が前記保持部に対して可動となるように、前記可動部と前記保持部とを接続する保持接続部をさらに備える、という構成でもよい。
【0010】
また、エレベータかご装置においては、前記非常停止装置は、前記かごに対して回転可能に接続され、前記かごが移動することに伴って回転するようにレールに接するガバナローラと、前記ガバナローラが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナローラと前記錘とを接続する錘接続部と、前記錘が設定位置まで移動したときに、前記保持部に力を加えることによって前記保持部が前記可動部を保持することを解除させる起動部と、をさらに備える、という構成でもよい。
【0011】
また、エレベータは、前記のエレベータかご装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエレベータかご装置の要部正面図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るエレベータかご装置の要部正面図であって、(a)は非常停止装置が作動していない状態を示す図であり、(b)は非常停止装置が作動した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る非常停止装置の要部側面図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る非常停止装置の要部側面図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る非常停止装置の要部側面図であって、錘が初期位置に位置した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る非常停止装置の要部側面図であって、錘が設定位置に位置した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図であって、かごが設定速度で移動した状態を示す図である。
【
図10】
図10は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図であって、かごが設定加速度で移動した状態を示す図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図12】
図12は、さらに他の実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図13】
図13は、さらに他の実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図14】
図14は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図であって、かごが設定加速度で移動した状態を示す図である。
【
図15】
図15は、さらに他の実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図16】
図16は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図であって、かごが設定速度で移動した状態を示す図である。
【
図17】
図17は、さらに他の実施形態に係る非常停止装置の要部正面図である。
【
図18】
図18は、同実施形態に係る非常停止装置の要部正面図であって、かごが設定速度で移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、エレベータ及びエレベータかご装置における一実施形態について、
図1~
図10を参照しながら説明する。なお、各図(
図11~
図18も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1に示すように、エレベータ1は、例えば、人が乗るエレベータかご装置(以下、単に「かご装置」ともいう)2と、かご装置2を案内するかごレール3とを備えていてもよい。そして、かご装置2は、かごレール3に案内されることによって、上下方向D3に移動してもよい。
【0015】
図示していないが、エレベータ1の駆動方式(かご装置2を移動させる駆動方式)は、特に限定されない。例えば、エレベータ1は、ロープレスであるリニアモータ式の駆動方式でもよい。また、エレベータ1は、例えば、ロープレスである油圧式の駆動方式でもよく、また、例えば、ロープ式の駆動方式でもよい。
【0016】
かご装置2は、例えば、本実施形態のように、かご4と、電気信号を用いることなく、かご4をかごレール3に停止させる非常停止装置5とを備えていることが好ましい。そして、かご4は、例えば、人が乗るかご室4aと、かご室4aの周囲に配置されるかご枠4bとを備えていてもよい。
【0017】
非常停止装置5は、例えば、本実施形態のように、かご4に取り付けられる装置本体6と、かご4の移動速度を検出する調速部7と、かご4をかごレール3に停止させるために、かご4に対して待機位置から停止位置へ移動する動作部8と、動作部8に力を加える加力部9と、動作部8の移動を阻止し、調速部7の検出に基づいて、動作部8の移動の阻止を解除することによって動作部8を起動させる起動部10とを備えていることが好ましい。
【0018】
また、非常停止装置5は、例えば、かご4に固定される固定停止部11と、固定停止部11に対して可動であり、固定停止部11と協働することによって、かご4をかごレール3に停止させる可動停止部12とを備えていることが好ましい。そして、動作部8が待機位置(
図2(a)参照)から停止位置(
図2(b)参照)へ移動することに伴って、可動停止部12は、固定停止部11と協働して、かご4をかごレール3に停止させる、という構成でもよい。
【0019】
図2に示すように、加力部9は、例えば、動作部8に弾性復元力を加える停止弾性部13と、停止弾性部13の弾性復元力を動作部8に伝達する伝達部14とを備えていることが好ましい。これにより、停止弾性部13は、動作部8に、待機位置(
図2(a)参照)から停止位置(
図2(b)参照)に移動する方向へ、弾性復元力を加えることができる。なお、例えば、本実施形態のように、動作部8が待機位置から停止位置に移動する方向は、上方向とすることができる。
【0020】
伝達部14は、例えば、本実施形態のように、かご4のかご枠4bに回転可能に接続される第1及び第2回転材14a,14bと、各端部が第1及び第2回転材14a,14bにそれぞれ回転可能に接続される長尺材14cとを備えていてもよい。そして、例えば、動作部8及び第1の可動停止部12は、第1回転材14aに回転可能に接続されており、第2の可動停止部12は、第2回転材14bに回転可能に接続されている、という構成でもよい。
【0021】
また、例えば、伝達部14は、かご4のかご枠4bに固定されて停止弾性部13の第1端を保持する第1保持材14dと、長尺材14cに固定されて停止弾性部13の第2端を保持する第2保持材14eとを備えており、停止弾性部13は、長尺材14cの長手方向に弾性変形する、という構成でもよい。なお、停止弾性部13の構成は、特に限定されないが、停止弾性部13は、例えば、本実施形態のように、弦巻ばねとしてもよい。
【0022】
これにより、
図2(a)に示すように、動作部8の移動が阻止されることによって、動作部8が停止位置に位置している場合には、停止弾性部13は、弾性変形しており、停止弾性部13の弾性復元力は、伝達部14を経由して、動作部8及び可動停止部12に加えられている。即ち、停止弾性部13は、動作部8に、待機位置から停止位置に移動する方向(具体的には、上方向)へ、弾性復元力を加えている。
【0023】
一方で、
図2(b)に示すように、動作部8の移動の阻止が解除された場合には、動作部8は、停止弾性部13の弾性復元力によって、停止位置まで上方向へ移動し、可動停止部12も、停止弾性部13の弾性復元力によって、停止位置まで上方向へ移動する。即ち、可動停止部12は、動作部8と連動して、待機位置から停止位置まで上下方向D3へ移動する。
【0024】
そして、可動停止部12は、停止位置まで移動することによって、固定停止部11と協働して、かご4をかごレール3に停止させる。このように、停止弾性部13の弾性復元力が、動作部8及び可動停止部12に加えられており、動作部8の移動の阻止が解除された場合に、動作部8及び可動停止部12が停止位置へ移動することによって、かご4をかごレール3に停止させることができる。
【0025】
特に限定されないが、例えば、可動停止部12は、楔状に形成されていてもよい。そして、例えば、動作部8及び可動停止部12が待機位置に位置する場合に、可動停止部12は、かごレール3から離れており、動作部8及び可動停止部12が停止位置まで連動して移動した場合に、可動停止部12は、固定停止部11と協働してかごレール3を挟み込むことによって、かご4をかごレール3に停止させる、という構成でもよい。
【0026】
図3及び
図4に示すように、調速部7は、例えば、本実施形態のように、かご4に対して回転可能に接続されるガバナローラ15と、ガバナローラ15が回転することに伴って、公転軸A1を軸にして公転する錘16,16と、錘16が公転することに伴って錘16が遠心力によって公転軸A1から離れるように、ガバナローラ15と錘16とを接続する錘接続部17とを備えていることが好ましい。なお、
図4においては、錘16及び錘接続部17の一部は、図示されていない。
【0027】
ガバナローラ15は、例えば、装置本体6の第1支持部6aに回転可能に接続されていてもよい。そして、ガバナローラ15は、例えば、本実施形態のように、かごレール3に接するように配置されていてもよい。これにより、かご4が移動することに伴って、ガバナローラ15は、回転する。
【0028】
なお、例えば、ガバナローラ15は、かごレール3とは別のレールに接することによって、かご4の移動に伴って回転する、という構成でもよい。このように、本実施形態に係る非常停止装置5は、ガバナロープがない調速部7、即ち、ガバナロープレスの調速部7とすることができる。
【0029】
動作部8は、例えば、本実施形態のように、加力部9(
図2参照)によって停止弾性部13(
図2参照)の上方向への弾性復元力を受ける可動部18と、可動部18を保持する保持部19と、可動部18が保持部19に対して可動となるように、可動部18と保持部19とを接続する保持接続部20とを備えていることが好ましい。なお、可動部18の下端部は、例えば、加力部9、具体的には、伝達部14の第1回転材14aに回転可能に接続されていてもよい(
図2参照)。
【0030】
起動部10は、例えば、本実施形態のように、かご4に対して回転可能に接続され且つ動作部8を当て止めする回転部21と、錘接続部17に接続され且つ回転部21の回転を阻止するために回転部21を当て止めする回転阻止部22とを備えていることが好ましい。なお、回転部21は、例えば、装置本体6の第2支持部6bに回転可能に接続されていてもよく、また、回転阻止部22は、例えば、装置本体6の第3支持部6cに回転可能に接続されていてもよい。
【0031】
図5及び
図6に示すように、可動部18は、例えば、加力部9(
図2参照)に接続される長尺な可動本体部18aと、保持部19に保持される被保持部18bと、可動本体部18aと被保持部18bとを接続する可動接続部18cとを備えていてもよい。被保持部18bは、例えば、可動接続部18cから突出するように、形成されていてもよい。
【0032】
そして、可動部18は、加力部9によって、上方向への力を受けている。それに対して、保持部19は、例えば、本実施形態のように、可動部18の被保持部18bを上方から当て止めする保持当止部19aと、弾性復元力によって可動部18の被保持部18bを保持するために、保持当止部19aに、横方向D2に沿う方向へ弾性復元力を加える保持弾性部19bとを備えることが好ましい。
【0033】
これにより、保持当止部19aが、可動部18の被保持部18bを上方から当て止めすることによって、保持部19は、可動部18を保持する。そして、保持当止部19aが横方向D2に沿う方向へ移動することによって、保持部19は、可動部18の保持を解除する。したがって、保持部19が可動部18を保持しているときに、可動部18が保持部19に対して移動することを抑制することができる。
【0034】
その結果、例えば、保持部19が可動部18を保持しているときに、可動停止部12(
図2参照)が固定停止部11(
図2参照)に対して移動することを抑制することができる。なお、横方向D2に沿う方向とは、例えば、横方向D2と30°以下で交差する方向とすることができ、また、例えば、横方向D2と15°以下で交差する方向であることが好ましい。
【0035】
また、保持部19は、例えば、本実施形態のように、保持当止部19a及び保持弾性部19bを有する一対の弾性片19c,19cと、剛性を有し、一対の弾性片19c,19cの端部を固定する保持本体部19dとを備えていてもよい。そして、一対の弾性片19c,19c、即ち、一対の保持当止部19a,19aは、可動部18の被保持部18bを横方向D2に沿う方向で挟んで保持してもよい。
【0036】
また、動作部8は、例えば、本実施形態のように、回転部21に当て止めされる動作被止部8aを備えていてもよい。具体的には、保持部19は、例えば、回転部21に当て止めされる保持被止部19eを備えていてもよい。そして、保持被止部19eは、例えば、保持本体部19dから突出するように、形成されていてもよい。
【0037】
保持接続部20は、例えば、本実施形態のように、保持部19の保持本体部19dに固定される固定部20aと、可動部18の可動本体部18aが挿通される挿通孔20bとを備える、という構成でもよい。これにより、可動部18と保持部19とが分離されないように、可動部18と保持部19とを接続することができる。
【0038】
回転部21は、例えば、本実施形態のように、動作部8の動作被止部8a(保持部19の保持被止部19e)を当て止めする回転当止部21aと、回転阻止部22に当て止めされる回転被止部21bと備えていることが好ましい。なお、例えば、回転当止部21aと回転被止部21bとは、回転部21の回転軸A2に対して同じ側(
図6においては、左側)に配置されていてもよい。
【0039】
即ち、例えば、本実施形態のように、回転当止部21aは、回転部21の回転軸A2と回転被止部21bとの間に配置されている、という構成でもよい。なお、例えば、回転部21の回転軸A2は、回転当止部21aと回転被止部21bとの間に配置されている、という構成でもよい。
【0040】
回転阻止部22は、例えば、回転部21の回転被止部21bを当て止めする阻止当止部22aを備えていてもよい。そして、回転阻止部22の回転軸A3方向視において、阻止当止部22aは、例えば、円弧状(曲線状)に形成されていてもよい。なお、回転阻止部22は、例えば、本実施形態のように、回転移動する、という構成だけでなく、例えば、直線移動する、という構成でもよい。
【0041】
回転部21の回転軸A2と回転被止部21bとの距離は、回転部21の回転軸A2と回転当止部21aとの距離よりも、大きいことが好ましい。これにより、回転当止部21aが動作部8を当て止めすることによって、回転当止部21aが動作部8から停止弾性部13(
図2参照)の弾性復元力を受けていることに対して、回転被止部21bに働く力を、回転当止部21aに働く力よりも小さくすることができる。したがって、例えば、回転阻止部22は、回転部21の回転被止部21b上を円滑にスライドすることができる。
【0042】
また、回転部21は、例えば、回転当止部21aを有する回転本体部21cと、回転本体部21cに回転可能に接続される転動部(例えば、ローラ)21dとを備えていてもよい。そして、回転被止部21bは、転動部21dの外周部で構成されていてもよい。これにより、例えば、回転阻止部22は、回転部21の回転被止部21b上をさらに円滑にスライドすることができる。
【0043】
また、回転部21は、例えば、本実施形態のように、動作部8の動作被止部8aが内部に挿入される凹部21eを備えており、回転当止部21aは、凹部21eの内縁で構成されている、という構成でもよい。なお、本実施形態においては、回転部21の回転当止部21aは、動作部8の動作被止部8aから上方向の力を受けているため、回転部21は、
図6において時計回り方向の力を受けている。
【0044】
凹部21eは、例えば、本実施形態のように、動作部8の動作被止部8aが内部から抜け出すために、一部を開放する開口21fを備えていてもよい。そして、回転当止部21aは、例えば、本実施形態のように、回転部21の回転軸A2方向視において、開口21fまで延びる直線状に形成されていてもよい。
【0045】
なお、回転部21の回転軸A2方向視において、動作部8が待機位置から停止位置へ移動する方向(本実施形態においては、上方向)に対する回転当止部21aの交差角度θ1は、例えば、5°~30°とすることが好ましく、また、例えば、10°~20°とすることがより好ましい。そして、回転部21の回転当止部21aが動作部8の動作被止部8aを当て止めするときに、開口21fは、動作部8が待機位置から停止位置に移動する方向(本実施形態においては、上方向)へ、凹部21eを開放することが好ましい。
【0046】
これにより、例えば、回転部21が当該交差角度θ1だけ回転することによって、回転部21の回転当止部21aが、動作部8の動作被止部8aの当て止めを解除し、動作部8は、停止位置へ移動する。したがって、例えば、動作部8を停止位置へ移動させるために必要となる、回転部21の回転角度を小さくすることができる。
【0047】
図7に示すように、錘接続部17は、例えば、公転軸A1方向へ移動する第1移動材17aと、第1移動材17aに回転可能に接続され、第1移動材17aと共に公転軸A1方向へ移動する第2移動材17bと、錘16と第2移動材17bとを接続する第1リンク材17cと、錘16とガバナローラ15とを接続する第2リンク材17dと、錘16に公転軸A1に近づく方向へ弾性復元力を加える接続弾性材17eと、第1移動材17aと回転阻止部22とを接続する阻止接続材17fとを備えていてもよい。
【0048】
これにより、かご4(
図1参照)が移動し、ガバナローラ15が回転することによって、錘16は、公転軸A1を軸にして公転すると共に、遠心力によって公転軸A1から離れる。それに伴って、第1及び第2移動材17a,17bが、公転軸A1方向へ移動し、回転阻止部22は、回転移動する。
【0049】
したがって、かご4の移動速度が速いほど、回転阻止部22の回転移動量は、大きくなる。なお、
図7は、錘16が初期位置(例えば、ガバナローラ15の回転が停止し、錘16が公転軸A1に最も近づいた位置)に位置する状態を示しており、
図8は、かご4が設定速度で移動したことによって、錘16が設定位置に位置した状態を示している。
【0050】
ここで、かご4が設定速度(例えば、定格速度よりも大きい過速度)で移動した場合について、
図5~
図9を参照しながら説明する。
【0051】
まず、
図5~
図7に示すように、かご4が停止している又は設定速度未満で移動している場合には、回転部21は、動作部8を当て止めし、回転阻止部22は、回転部21を当て止めしている。具体的には、回転部21の回転当止部21aは、動作部8の動作被止部8aを上方から当て止めし、回転阻止部22は、回転部21の回転被止部21bを上方から当て止めしている。
【0052】
これにより、動作部8が、待機位置から停止位置に移動する上方向の力を受けていることに対して、動作部8の上方向への移動は、回転部21によって阻止され、回転部21の回転は、回転阻止部22によって阻止されている。したがって、回転部21及び回転阻止部22で構成される起動部10が、動作部8を待機位置で当て止めしているため、可動部18及び保持部19を有する動作部8は、上方向へ移動することを阻止されている。
【0053】
それに対して、かご4が設定速度で移動し、
図8に示すように、錘16が設定位置まで移動したときに、回転阻止部22は、回転部21の当て止めを解錠する位置まで回転移動する。これにより、
図9に示すように、回転部21が回転し、回転部21の回転当止部21aは、動作部8の動作被止部8aの当て止めを解除する。
【0054】
これにより、動作部8の動作被止部8aが、回転部21の凹部21eを開口21fから抜け出し、動作部8は、待機位置から停止位置に上方向へ移動する、即ち、可動部18及び保持部19は、一体となって、かご4に対して上方向へ移動する。そして、動作部8が停止位置へ移動することによって、かご4をかごレール3に停止させることができる(
図2参照)。このように、かご4が設定速度で移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0055】
次に、かご4が設定加速度(例えば、定格加速度よりも大きい過加速度)で下方向へ移動した場合について、
図6及び
図10を参照しながら説明する。
【0056】
図6に示すように、かご4が停止している又は設定加速度未満で移動している場合には、可動部18が上方向の力を受けていることに対して、保持部19は、可動部18を保持している。これにより、保持部19は、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することを規制している。
【0057】
それに対して、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合には、可動部18に対して上方向への慣性力(具体的には、可動部18の質量とかご4の移動加速度との積)が働く。これにより、可動部18に働く力が、保持部19が可動部18を保持する力、即ち、保持弾性部19bの弾性復元力よりも大きくなるため、
図10に示すように、保持部19は、可動部18の保持を解除する。
【0058】
これにより、可動部18が保持部19に対して上方向へ移動し、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することによって、かご4をかごレール3に停止させることができる(
図2参照)。したがって、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0059】
このように、本実施形態に係るかご装置2は、かご4が設定速度で移動した場合だけでなく、かご4が設定加速度で移動した場合にも、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。なお、保持接続部20が可動部18と保持部19とを接続しているため、可動部18が保持部19に対して移動した場合に、可動部18が保持部19から分離することを防止することができる。これにより、例えば、復旧作業を行う場合に、保持部19を容易に発見することができる。
【0060】
以上より、本実施形態に係るエレベータ1は、前記のエレベータかご装置2を備える。そして、本実施形態のように、エレベータかご装置2は、かご4と、電気信号を用いることなく、前記かご4をかごレール3に停止させる非常停止装置5と、を備え、前記非常停止装置5は、前記かご4を前記かごレール3に停止させるために、前記かご4に対して上方向へ移動する可動部18と、前記可動部18に上方向への弾性復元力を加える停止弾性部13と、前記可動部18を保持し、前記かご4が設定加速度で下方向へ移動したときに前記可動部18の保持を解除する保持部19と、を備える、という構成が好ましい。
【0061】
斯かる構成によれば、停止弾性部13が可動部18に上方向への弾性復元力を加えていることに対して、保持部19が可動部18を保持しているため、保持部19は、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することを規制する。そして、かご4が設定加速度で下方向へ移動したときに、可動部18に対して上方向の慣性力が働くため、保持部19は、可動部18の保持を解除する。
【0062】
これにより、可動部18がかご4に対して上方向へ移動するため、かご4をかごレール3に停止させることができる。したがって、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0063】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置2においては、前記保持部19は、弾性復元力によって前記可動部18を保持する保持弾性部19bを備える、という構成が好ましい。
【0064】
斯かる構成によれば、保持弾性部19bは、弾性復元力によって、可動部18を保持している。これにより、かご4が設定加速度で下方向へ移動したときに、可動部18に対して当該弾性復元力よりも大きな力が働くことによって、保持部19は、可動部18の保持を解除する。
【0065】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置2においては、前記保持部19は、前記可動部18を上方から当て止めする保持当止部19aを備え、前記保持弾性部19bは、前記保持当止部19aに、横方向D2に沿う方向へ弾性復元力を加える、という構成が好ましい。
【0066】
斯かる構成によれば、保持当止部19aは、可動部18を上方から当て止めし、保持弾性部19bは、保持当止部19aに、横方向D2に沿う方向へ弾性復元力を加えている。これにより、保持当止部19aが横方向D2に沿う方向へ移動することによって、保持部19が可動部18の保持を解除するため、保持部19が可動部18を保持するときに、可動部18が保持部19に対して移動することを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置2においては、前記保持部19は、前記かご4に対して可動であり、前記非常停止装置5は、前記かご4に対して回転可能に接続され、前記かご4が移動することに伴って回転するようにレール(本実施形態においては、かごレール)3に接するガバナローラ15と、前記ガバナローラ15が回転することに伴って、公転軸A1を軸にして公転する錘16と、前記錘16が公転することに伴って前記錘16が遠心力によって前記公転軸A1から離れるように、前記ガバナローラ15と前記錘16とを接続する錘接続部17と、前記保持部19を上方から当て止めし、前記錘16が設定位置まで移動したときに前記保持部19の当て止めを解除する起動部10と、をさらに備える、という構成が好ましい。
【0068】
斯かる構成によれば、ガバナローラ15が回転することに伴って、錘16は、公転軸A1を軸にして回転すると共に、遠心力によって公転軸A1から離れる。また、停止弾性部13が、可動部18に上方向への弾性復元力を加えていることに対して、起動部10が保持部19を上方から当て止めしているため、可動部18及び保持部19は、かご4に対して上方向へ移動することを阻止されている。
【0069】
そして、かご4が設定速度で移動し、錘16が設定位置まで移動したときに、起動部10は、保持部19の当て止めを解除する。これにより、可動部18及び保持部19が上方向へ移動するため、かご4をかごレール3に停止させることができる。したがって、かご4が設定加速度で移動した場合だけでなく、かご4が設定速度で移動した場合にも、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0070】
また、本実施形態のように、エレベータかご装置2においては、前記非常停止装置5は、前記可動部18が前記保持部19に対して可動となるように、前記可動部18と前記保持部19とを接続する保持接続部20をさらに備える、という構成が好ましい。
【0071】
斯かる構成によれば、可動部18が保持部19に対して可動であるため、保持部19が可動部18の保持を解除した場合に、可動部18は、かご4に対して上方向へ移動する。そして、保持接続部20が可動部18と保持部19とを接続しているため、可動部18が保持部19に対して移動した場合に、可動部18が保持部19から分離することを防止することができる。
【0072】
なお、エレベータ1及びエレベータかご装置2は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及びエレベータかご装置2は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0073】
(1)例えば、エレベータかご装置2においては、ガバナローラ15と錘16とを接続する錘接続部17の構成は、特に限定されない。即ち、錘16が公転することに伴って錘16が遠心力によって公転軸A1から離れる構成は、特に限定されない。例えば、錘接続部17は、
図11及び
図12に係る構成としてもよい。
【0074】
錘接続部17は、例えば、
図11に示すように、ガバナローラ15が回転することに伴って公転軸A1を軸にして回転する回転材17gと、公転軸A1方向へ移動する第1移動材17aと、第1移動材17aに回転可能に接続され、第1移動材17aと共に公転軸A1方向へ移動する第2移動材17bと、錘16と第2移動材17bとを接続する第1リンク材17cと、錘16と回転材17gとを接続する第2リンク材17dと、錘16に公転軸A1に近づく方向へ弾性復元力を加える接続弾性材17eとを備えていてもよい。なお、
図11に係る公転軸A1は、ガバナローラ15の回転軸A4と交差している。
【0075】
錘接続部17は、例えば、
図12に示すように、錘16が公転軸A1から離れることに伴って移動する移動材17hと、第1端部が第1錘16を固定し、第2端部が移動材17hと回転可能に接続され、中間部がガバナローラ15と回転可能に接続される第1リンク材17iと、第1端部が第1錘16と回転可能に接続される第2リンク材17jと、第1端部が第2錘16を固定し、第2端部が第2リンク材17jと回転可能に接続され、中間部がガバナローラ15と回転可能に接続される第3リンク材17kとを備える、という構成でもよい。
【0076】
(2)また、上記実施形態に係るエレベータかご装置2においては、保持部19は、弾性復元力によって可動部18を保持する保持弾性部19bを備える、という構成である。しかしながら、エレベータかご装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、保持部19は、磁力によって可動部18を保持する、という構成でもよい。
【0077】
(3)また、上記実施形態に係るエレベータかご装置2においては、保持部19は、可動部18を上方から当て止めする保持当止部19aを備え、保持弾性部19bは、保持当止部19aに、横方向D2に沿う方向へ弾性復元力を加える、という構成である。しかしながら、エレベータかご装置2は、斯かる構成に限られない。
【0078】
例えば、
図13及び
図14に示すように、保持弾性部19bは、弾性変形する方向の各端部が保持被止部19eと可動部18とに対してそれぞれ回転可能に接続される、という構成でもよい。また、例えば、
図15及び
図16に示すように、保持部19は、可動部18を上方から当て止めする保持当止部19aを備え、保持弾性部19bは、保持当止部19aに、下方向への弾性復元力を加える、という構成でもよい。
【0079】
以下に、
図13及び
図14に係る非常停止装置5の構成について、説明する。
【0080】
図13に示すように、保持部19は、例えば、弾性変形する保持弾性部19bと、剛性を有する保持本体部19dと、回転部21に当て止めされる保持被止部19eと、保持弾性部19bの第1端を保持し且つ可動部18に回転可能に接続される第1接続材19fと、保持弾性部19bの第2端を保持し且つ保持本体部19dに回転可能に接続される第2接続材19gとを備えている、という構成でもよい。
【0081】
保持弾性部19bは、例えば、軸心方向へ弾性変形する弦巻ばねとしてもよい。また、保持被止部19eは、例えば、保持本体部19dから突出するように、形成されていてもよい。また、動作部8は、例えば、可動部18が前記保持部19に対して可動となるように、可動部18と保持部19とを接続する保持接続部20を備えていてもよい。
【0082】
斯かる構成によれば、可動部18が上方向へ移動する場合には、保持弾性部19bの弾性変形量が大きくなる。これにより、保持弾性部19bが弾性復元力によって可動部18を保持するため、保持部19は、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することを規制する。なお、
図13に係る構成においては、保持部19が可動部18を保持している場合でも、可動部18は、可動部18に働く力と保持弾性部19bの弾性復元力とが釣り合う位置まで、上方向へ移動することになる。
【0083】
そして、かご4が設定加速度で下方向へ移動したときに、可動部18に対して保持弾性部19bの弾性復元力よりも大きな力が働くため、
図14に示すように、保持部19は、可動部18の保持を解除する。これにより、可動部18がかご4に対して上方向へ移動するため、かご4をかごレール3に停止させることができる。したがって、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0084】
(4)また、上記実施形態に係るエレベータかご装置2においては、保持部19は、かご4に対して可動であり、起動部10は、保持部19を上方から当て止めし、錘16が設定位置まで移動したときに保持部19の当て止めを解除する、という構成である。しかしながら、エレベータかご装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、
図15及び
図16に示すように、起動部10は、錘16が設定位置まで移動したときに、保持部19に力を加えることによって保持部19が可動部18を保持することを解除させる、という構成でもよい。
【0085】
以下に、
図15及び
図16に係る非常停止装置5の構成について、説明する。
【0086】
まず、可動部18は、上方向への力を受けていることに対して、保持部19は、例えば、
図15に示すように、可動部18の被保持部18bを上方から当て止めする保持当止部19aと、弾性復元力によって可動部18の被保持部18bを保持するために、保持当止部19aに下方向への弾性復元力を加える保持弾性部19bとを備えていてもよい。なお、保持部19は、例えば、装置本体6に回転可能に接続されていてもよい。
【0087】
そして、かご4が停止している又は設定加速度未満で移動している場合には、可動部18が上方向の力を受けていることに対して、保持部19は、可動部18を保持している。これにより、保持部19は、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することを規制する。なお、
図15に係る構成においては、保持部19が可動部18を保持している場合でも、可動部18は、可動部18に働く力と保持弾性部19bの弾性復元力とが釣り合う位置まで、上方向へ移動することになる。
【0088】
それに対して、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合には、可動部18に対して上方向への慣性力が働く。これにより、可動部18に働く力が、保持部19が可動部18を保持する力、即ち、保持弾性部19bの弾性復元力よりも大きくなるため、保持部19が保持当止部19aを上方へ移動するように(
図15において、反時計回り方向へ)回転し、保持部19が所定の角度だけ回転することによって、保持部19は、可動部18の保持を解除する。
【0089】
これにより、可動部18が保持部19に対して上方向へ移動し、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することによって、かご4をかごレール3に停止させることができる。したがって、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0090】
また、かご4が設定速度で移動し、
図16に示すように、錘16が設定位置まで移動したときに、錘16は、保持部19に当たる。これにより、錘16が保持部19に加える力が、加力部9が可動部18に加える力より大きくなるため、保持部19は、保持当止部19aを下方へ移動するように(
図16において、時計回り方向へ)、回転する。
【0091】
即ち、
図15及び
図16に係る非常停止装置5において、保持部19が可動部18を保持することを解除させる起動部10は、保持部19に当たることによって保持部19に力を加える錘16で構成されている。そして、保持部19が所定の角度だけ回転することによって、保持部19は、可動部18の保持を解除する。
【0092】
これにより、可動部18が保持部19に対して上方向へ移動し、可動部18がかご4に対して上方向へ移動することによって、かご4をかごレール3に停止させることができる。したがって、かご4が設定速度で移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0093】
このように、エレベータかご装置2においては、
図15及び
図16に示すように、前記非常停止装置5は、前記かご4に対して回転可能に接続され、前記かご4が移動することに伴って回転するようにレール(本実施形態においては、かごレール)3に接するガバナローラ15と、前記ガバナローラ15が回転することに伴って、公転軸A1を軸にして公転する錘16と、前記錘16が公転することに伴って前記錘16が遠心力によって前記公転軸A1から離れるように、前記ガバナローラ15と前記錘16とを接続する錘接続部17と、前記錘16が設定位置まで移動したときに、前記保持部19に力を加えることによって前記保持部19が前記可動部18を保持することを解除させる起動部10と、をさらに備える、という構成が好ましい。
【0094】
斯かる構成によれば、かご4が設定速度で移動し、錘16が設定位置まで移動したときに、起動部10は、保持部19に力を加えることによって、保持部19が可動部18を保持することを解除させる。これにより、可動部18が上方向へ移動するため、かご4をかごレール3に停止させることができる。したがって、かご4が設定加速度で移動した場合だけでなく、かご4が設定速度で移動した場合にも、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0095】
(5)また、上記実施形態に係るエレベータかご装置2においては、回転阻止部22は、錘接続部17に接続されると共に、錘16が設定位置まで移動したときに回転部21の当て止めを解除する位置まで移動する、という構成である。しかしながら、エレベータかご装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、
図17及び
図18に示すように、錘16は、設定位置まで移動したときに回転部21に当たることによって、回転部21を回転させる、という構成でもよい。
【0096】
以下に、
図17及び
図18に係る非常停止装置5の構成について、説明する。
【0097】
図17に示すように、回転部21は、例えば、動作部8の動作被止部8aを当て止めする回転当止部21aと、回転阻止部22に当て止めされる回転被止部21bと備えていてもよい。なお、回転部21の回転軸A2は、例えば、回転当止部21aと回転被止部21bとの間に配置されていてもよい。また、回転部21の回転軸A2は、錘16の公転軸A1(図示していない)と平行であってもよい。
【0098】
また、回転部21は、例えば、錘16が設定位置に位置したときに、錘16に当てられる回転被当部21gをさらに備えていてもよい。これにより、
図18に示すように、かご4が設定速度で移動し、錘16が設定位置まで移動したときに、錘16は、回転部21の回転被当部21gに当たる。
【0099】
それに伴って、回転部21が回転し、回転部21の回転当止部21aが、動作部8の動作被止部8aの当て止めを解除するため、動作部8が停止位置へ移動し、かご4をかごレール3に停止させることができる。このように、かご4が設定速度で移動した場合に、電気信号を用いることなく、非常停止装置5によってかご4をかごレール3に停止させることができる。
【0100】
なお、回転部21の回転軸A2と回転被当部21gとの距離は、回転部21の回転軸A2と回転当止部21aとの距離よりも、大きいことが好ましい。これにより、回転被当止部21gに働く力を小さくすることができるため、例えば、回転部21の回転動作を円滑にすることができる。
【0101】
このように、エレベータかご装置2においては、
図17及び
図18に示すように、前記起動部10は、前記かご4に対して回転可能に接続され且つ前記動作部8を当て止めする回転部21と、前記回転部21の回転を阻止するために前記回転部21を当て止めする回転阻止部22と、を備え、前記錘16は、前記設定位置まで移動したときに前記回転部21に当たることによって、前記回転部21を回転させる、という構成が好ましい。
【0102】
斯かる構成によれば、回転部21が動作部8を当て止めしているため、回転部21が動作部8から停止弾性部13の弾性復元力を受けている。それに対して、回転阻止部22が回転部21を当て止めすることによって、回転部21の回転が阻止されている。そして、錘16が設定位置まで移動したときに、錘16が回転部21に当たるため、回転部21は、回転することによって、動作部8の当て止めを解除する。したがって、動作部8が待機位置から停止位置へ移動するため、かご4をかごレール3に停止させることができる。
【0103】
また、エレベータかご装置2においては、
図17及び
図18に示すように、前記回転部21は、前記動作部8を当て止めする回転当止部21aと、前記錘16に当てられる回転被当部21gと、を備え、前記回転部21の回転軸A2と前記回転被当部21gとの距離は、前記回転部21の回転軸A2と前記回転当止部21aとの距離よりも、大きい、という構成でもよい。
【0104】
斯かる構成によれば、回転当止部21aが動作部8を当て止めすることによって、回転当止部21aが動作部8から停止弾性部13の弾性復元力を受けていることに対して、回転部21の回転軸A2と回転被当部21gとの距離は、回転部21の回転軸A2と回転当止部21aとの距離よりも、大きくなっている。これにより、錘16が回転被当部21gに当たることによって回転部21を回転させるための力は、回転当止部21aに働く力よりも小さくなる。
【0105】
(6)また、上記実施形態に係るエレベータかご装置2においては、非常停止装置5は、、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合だけでなく、かご4が設定速度で移動した場合にも、かご4をかごレール3に停止させる、という構成である。しかしながら、エレベータかご装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、非常停止装置5は、かご4が設定加速度で下方向へ移動した場合に、かご4をかごレール3に停止させ、かご4が設定速度で移動した場合には、かご4をかごレール3に停止させない、という構成でもよい。
【0106】
(7)また、上記実施形態に係るエレベータかご装置2においては、保持部19は、かご4に対して移動可能である、という構成である。しかしながら、エレベータかご装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、保持部19は、装置本体6に固定されることによって、かご4に対して移動不能に固定されている、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0107】
1…エレベータ、2…エレベータかご装置、3…かごレール、4…かご、4a…かご室、4b…かご枠、5…非常停止装置、6…装置本体、6a…第1支持部、6b…第2支持部、6c…第3支持部、7…調速部、8…動作部、8a…動作被止部、9…加力部、10…起動部、11…固定停止部、12…可動停止部、13…停止弾性部、14…伝達部、14a…第1回転材、14b…第2回転材、14c…長尺材、14d…第1保持材、14e…第2保持材、15…ガバナローラ、16…錘、17…錘接続部、17a…第1移動材、17b…第2移動材、17c…第1リンク材、17d…第2リンク材、17e…接続弾性材、17f…阻止接続材、17g…回転材、17h…移動材、17i…第1リンク材、17j…第2リンク材、17k…第3リンク材、18…可動部、18a…可動本体部、18b…被保持部、18c…可動接続部、19…保持部、19a…保持当止部、19b…保持弾性部、19c…弾性片、19d…保持本体部、19e…保持被止部、19f…第1接続材、19g…第2接続材、20…保持接続部、20a…固定部、20b…挿通孔、21…回転部、21a…回転当止部、21b…回転被止部、21c…回転本体部、21d…転動部、21e…凹部、21f…開口、21g…回転被当部、22…回転阻止部、22a…阻止当止部、A1…公転軸、A2…回転軸、A3…回転軸、A4…回転軸、D2…横方向、D3…上下方向、θ1…交差角度
【手続補正書】
【提出日】2021-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごと、
電気信号を用いることなく、前記かごをかごレールに停止させる非常停止装置と、を備え、
前記非常停止装置は、
前記かごを前記かごレールに停止させるために、前記かごに対して上方向へ移動する可動部と、
前記可動部に上方向への弾性復元力を加える停止弾性部と、
前記可動部を保持し、前記かごが設定加速度で下方向へ移動したときに前記可動部の保持を解除する保持部と、を備える、エレベータかご装置。
【請求項2】
前記保持部は、弾性復元力によって前記可動部を保持する保持弾性部を備える、請求項1に記載のエレベータかご装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記可動部を上方から当て止めする保持当止部を備え、
前記保持弾性部は、前記保持当止部に、横方向に沿う方向へ弾性復元力を加える、請求項2に記載のエレベータかご装置。
【請求項4】
前記非常停止装置は、
前記かごに対して回転可能に接続され、前記かごが移動することに伴って回転するようにレールに接するガバナローラと、
前記ガバナローラが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナローラと前記錘とを接続する錘接続部と、
前記錘が設定位置まで移動したときに、前記停止弾性部の弾性復元力によって前記可動部を前記かごに対して上方向へ移動させる起動部と、をさらに備える、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかご装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記かごに対して可動であり、
前記起動部は、前記保持部を上方から当て止めし、前記錘が設定位置まで移動したときに前記保持部の当て止めを解除する、請求項4に記載のエレベータかご装置。
【請求項6】
前記非常停止装置は、前記可動部が前記保持部に対して可動となるように、前記可動部と前記保持部とを接続する保持接続部をさらに備える、請求項5に記載のエレベータかご装置。
【請求項7】
前記起動部は、前記錘が設定位置まで移動したときに、前記保持部に力を加えることによって前記保持部が前記可動部を保持することを解除させる、請求項4に記載のエレベータかご装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のエレベータかご装置を備える、エレベータ。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごレールに案内されることによって上下方向に移動するエレベータかご装置であって、
かごと、
前記かごに取り付けられて前記かごと共に移動し、電気信号を用いることなく、前記かごを前記かごレールに停止させる非常停止装置と、を備え、
前記非常停止装置は、
前記かごを前記かごレールに停止させるために、前記かごに対して上方向へ移動する可動部と、
前記可動部に上方向への弾性復元力を加える停止弾性部と、
前記可動部を保持し、前記かごが設定加速度で下方向へ移動したときに前記可動部の保持を解除する保持部と、を備える、エレベータかご装置。
【請求項2】
前記保持部は、弾性復元力によって前記可動部を保持する保持弾性部を備える、請求項1に記載のエレベータかご装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記可動部を上方から当て止めする保持当止部を備え、
前記保持弾性部は、前記保持当止部に、横方向に沿う方向へ弾性復元力を加える、請求項2に記載のエレベータかご装置。
【請求項4】
前記非常停止装置は、
前記かごに対して回転可能に接続され、前記かごが移動することに伴って回転するようにレールに接するガバナローラと、
前記ガバナローラが回転することに伴って、公転軸を軸にして公転する錘と、
前記錘が公転することに伴って前記錘が遠心力によって前記公転軸から離れるように、前記ガバナローラと前記錘とを接続する錘接続部と、
前記錘が設定位置まで移動したときに、前記停止弾性部の弾性復元力によって前記可動部を前記かごに対して上方向へ移動させる起動部と、をさらに備える、請求項1~3の何れか1項に記載のエレベータかご装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記かごに対して可動であり、
前記起動部は、前記保持部を上方から当て止めし、前記錘が設定位置まで移動したときに前記保持部の当て止めを解除する、請求項4に記載のエレベータかご装置。
【請求項6】
前記非常停止装置は、前記可動部が前記保持部に対して可動となるように、前記可動部と前記保持部とを接続する保持接続部をさらに備える、請求項5に記載のエレベータかご装置。
【請求項7】
前記起動部は、前記錘が設定位置まで移動したときに、前記保持部に力を加えることによって前記保持部が前記可動部を保持することを解除させる、請求項4に記載のエレベータかご装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のエレベータかご装置を備える、エレベータ。