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特開2022-173645十割そばの作製方法および十割そば手作りキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173645
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】十割そばの作製方法および十割そば手作りキット
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20221115BHJP
【FI】
A23L7/109 F
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079469
(22)【出願日】2021-05-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】510165194
【氏名又は名称】有限会社はばたき
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和美
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA04
4B046LB04
4B046LC20
4B046LP14
4B046LP41
4B046LP51
(57)【要約】
【課題】 十割そばを家庭でも簡単に作ることを可能とする方法、材料を提供する。
【解決手段】 つなぎとしてそば粒を加熱後挽いてそば粉とし、これを非加熱のそば粉と混ぜ合わせる。これを十割そば粉とし、これに対して所定量の水を加えて練り合わせることでそば材料を作る。絞り袋に入れたそば材料をその細い口より紐状に絞り出して熱湯中にてそば麺とする。そば麺はひと煮立ちさせた後、冷水で締めることにより、茹でそばとされる。これを常法により食することが可能とされる。そば打ち道具などを使用することなく、簡単に十割そばを作ることができる。絞り袋についても市販品を使用することがで、きわめて安価に茹でそば作りを楽しむことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
そば粉と水とを適量だけ絞り袋に入れて混ぜることによりそば生地を作る過程と、
この絞り袋の細口から、このそば生地を細長い紐状にして熱湯中にしぼり出し、そば麺を作る過程と、
このそば麺を冷水に浸すことにより茹でそばを作る過程とを含む茹でそばの作製方法。
【請求項2】
その製造過程にて非加熱のそば粉と、製造過程において加熱されたそば粉とを所定割合で混合した十割そば用そば粉を準備する過程と、
この十割そば粉と適量の水とを絞り袋に投入して混ぜ合わせることにより、そば生地を作る過程と、
この絞り袋の細口よりこのそば生地を細長い紐状にして熱湯中に押し出し、そば麺を作る過程と、
このそば麺を冷水に浸すことにより茹でそばを作る過程とを含む茹でそばの作製方法。
【請求項3】
その製造過程において非加熱そば粉と加熱そば粉とが所定割合で混合された十割そば粉と、
十割そば粉に水を加えてしぼり出し口よりそば麺をしぼり出すための絞り袋と、を備えた十割そば手作りキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は茹でそばの製法およびそば手作りキット、例えば十割そばの製造方法および十割そば手作りキットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、日本では人力による手打ち、製麺機による製造にかかわらず、次の工程により蕎麦(そば)が作られる。すなわち、「水回し」では、蕎麦粉とつなぎを混ぜ、加水しながら撹拌し丸い蕎麦玉にする。手打ちの場合は「こね鉢」を用いる。「木鉢」では、蕎麦玉を繰り返し押しつぶすことで練り、粘着性を高める。「延し」では、生地が張りつかないよう打ち粉をした上で、薄く圧延し、平たい長方形型にする。手打ちの場合は木製の麺台に載せ、「麺棒」を用いて圧延する。「切り」の工程では、圧延した生地を幅1~2mm程度の線状に切断して麺の形とする。手打ちの場合はまな板に載せ、何層かに折り畳んだ後、「小間板」を当てながらそば切り包丁で切断する。この切り出された状態の麺を生蕎麦と称する。これを茹でて食する。
【0003】
さて、実用新案登録第3071461号公報においては、このような蕎麦打ちに使用する用具一式、そば打ちセットが開示されている。このセットは、のし板とのし棒とからなり、のし板の4辺にのしたそばの厚さを揃える突出縁を設けてある。
さらに、特開平10-23870号公報にあっては、十割そばの製法が開示されています。すなわち、α化度50~100のα化そば粉と、生そば粉を5:95~100:0の割合に配合し、定法によりミキシングして麺生地とし、これを減圧条件下で麺帯とし、ついで麺線とすることを特徴とするものです。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3071461号公報
【特許文献2】特開平10-23870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来からの家庭でのそばの作り方にあっては、そば打ちセットを揃えて、そば粉とつなぎを準備し、上述の「水回し」、「木鉢」、「延し」、「切り」の各作業を行うものであった。その結果、一定の用具が必要であり、かつ、これら用具の使用における習熟が各工程において必要となっていた。すなわち、そば打ちには習熟と所定の時間とが絶対的に必要で、面倒であり、結果に満足できないことも多々生じていた。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、家庭でのそば作りを簡単な手順でかつ短時間で行える手法を開発することで、上述した課題は解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
この発明は、上述する従来技術の問題点に鑑みなされたもので、絞り袋(絞り容器)を用いることで簡単にそば作りを可能とした技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、そば粉と水とを適量だけ絞り袋に入れて混ぜることによりそば材料(そば生地)を作る過程と、この絞り袋を絞ることにより、その細口から、このそば材料(そば生地)を細長い紐状にして熱湯中にしぼり出し、そば麺を作る過程と、このそば麺を冷水に浸すことにより茹でそばを作る過程とを含む茹でそばの作製方法である。
この場合のそば粉には、いわゆる全層粉、製造過程においてアルファ化させたそば粉とこれを市販の生そば粉とを混合したそば粉を含む。また、そば粉に一定のつなぎを含む場合も妨げない。熱湯とは沸騰した湯、例えば80℃以上、さらには50℃以上の湯を含むものとする。そば粉と加える水の量との比は例えば1:1~1.5とするが、そば粉のつなぎ(またはアルファ化そば粉)の割合にもよっても変更可能である。
なお、絞り袋(絞り容器)はポリエチレン製とし、例えばその4角形でのサイズは横230mm、縦340mmであって、その厚みは例えば0.08mmとする。これはそば粉300ccに水350ccを加えることができる。また、絞り袋の隅(コーナー部)には細い絞り口を形成する。この細口には口金を配置することもできる。口金により、しぼり出す細長い紐状のそば麺の太さをコントロールすることができる。ここでの絞り袋は、いわゆるピストン式の絞り器(樹脂製容器でピストンによりその内容積が可変とされるもの)も含む概念とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、その製造過程にて非加熱のそば粉と、製造過程において加熱されたそば粉とを所定割合で混合した十割そば用そば粉を準備する過程と、この十割そば粉と適量の水とを絞り袋に投入して混ぜ合わせることにより、そば材料(そば生地)を作る過程と、この絞り袋の細口よりこのそば材料(そば生地)を細長い紐状にして熱湯中に押し出し、そば麺を作る過程と、このそば麺を冷水に浸すことにより茹でそばを作る過程とを含む茹でそばの作製方法である。
そば粉の製造段階で非加熱のそば粉とは、いわゆる従来の全層粉、市販そば粉を示し、そばの実を脱殻したそば粒を石臼などで挽いた粉である。製造段階で加熱したそば粉はいわゆるアルファ化したそば粉であって、このそば粉がつなぎとしての作用を発揮することとなる。アルファ化の方法、その率などは任意とする。食する場合はそばつゆは別途準備し、そばちょこ等を用いてざるそばとして、またはぶっかけそばとしても、汁そばとしても食することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、その製造過程において非加熱そば粉と加熱そば粉とが所定割合で混合された十割そば粉と、十割そば粉に水を加えてしぼり出し口よりそば麺をしぼり出すための絞り袋と、を備えた十割そば手作りキットである。
十割そば粉を例えばポリエチレンの袋入りとし、また絞り袋を加え、その作り方の情報とともに、キットとして販売することができる。これらのキットを使用することで、十割そばを家庭で容易に作ることができる。絞り袋から熱湯中にそば材料(そば生地)を紐状としてしぼり出す(絞り袋を外方から押圧することでその開口から絞り出す)ことでそば麺を作り、冷水で締めることでゆでそばを作ることができる。なお、そばつゆ等は別途準備する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、茹でそばを手軽につくることができる。そば打ち用の道具は不必要である。そば粉に水を加えてそば生地を作り、これを絞り袋(またはピストン式絞り器でも可)にて熱湯中にしぼり出すだけでそば麺を作り、これを冷水で締めることで完成である。また、十割そばを家庭でも簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法におけるそば粉に水を加える過程を示す模式図である。
図2】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法におけるそば粉に水を加えたそば材料(そば生地)を絞り袋に投入する過程を示す模式図である。
図3】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法における絞り袋の1隅に細口を形成する過程を示す模式図である。
図4図3における細口形成の具体例を示す模式図である。
図5】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法における熱湯にそば材料(そば生地)を紐状にしぼり出す過程を示す模式図である。
図6】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法におけるそば麺をしぼり出した後に一煮立ちさせる過程を示す模式図である。
図7】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法におけるそば麺をすくい取る過程を示す模式図である。
図8】この発明の実施例1に係る茹でそばの作製方法におけるそば麺を冷水で締める過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に係る茹でそばの作製方法および十割そばの手作りキットの実施例を具体的に説明する。
【実施例0014】
図1図8に示すように、実施例1に係る茹でそばの作成方法は、大きく分けて、そば材料(そば生地)の準備過程、そば材料(そば生地)を絞り袋に投入する過程、絞り袋に細口を切り込む(絞り口形成)過程、熱湯中にそば麺をしぼり出す過程、この後、熱湯から取り出したそば麺を冷水処理する過程とから構成されている。
【0015】
まず、そば材料(そば生地)の準備過程について説明する。この場合、全量がそば粉である十割そば(つなぎとしての小麦粉は不使用)を家庭で簡単に作ることを可能とする十割蕎麦の手作りキットを使用するものとする。
この十割蕎麦の手作りキットは、「アルファ化そば粉と非加熱そば粉との混合そば粉(袋入り)」と、「絞り袋(口金なし)」とからなる。この十割そば粉における加熱済みのそば粉(アルファ化そば粉)と非加熱そば粉との割合は、前者を例えば15重量%~25重量%、後者を残りの85重量%~75重量%とする。
次に、この十割そば粉を所定量の水と混ぜ合わせて絞り袋に投入し、この絞り袋に形成した絞り口(細い開口)より混ぜ合わせて所定の粘度となったそば材料(そば生地)を細長い紐状(線状)にして絞り出す。絞り袋を押し潰す要領である。このとき、適量の熱湯を鍋に容易しておき、この熱湯中に紐状に絞り出すことにより、そば麺を作ることとなる。
この熱湯中のそば麺は、いったんザル(笊、ざる)に受け、冷水にて締めることとして、茹でそばを作ることとなる。
なお、食する場合、そばつゆ、薬味などを準備する。
【0016】
以下、図1図8を参照して十割そば手作りキットを使用した十割そばの作り方を説明する。なお、作り方についてはキットに同封するガイド(指示書き)に従うことが推奨される。
まず、図1に示すように、十割そばの材料である袋封入の十割そば粉11(通常のそば粉80重量%と加熱後石臼挽きしたそば粉20重量%との混合そば粉)300cc(3人前見当)をボウル13に投入し、これに水12を380cc程度加えて例えば泡立て器14で混ぜ合わせる。この混ぜ合わせでは、そば生地が泡立て器ですくって少し垂れる程度の粘度(ねばり)とする。
次に、図2に示すように、よく混ざったそば生地(そば材料)Aをキット同封のポリエチレン製の絞り袋15に詰める(入れる)。絞り袋15は、例えば市販品であって、所定厚み(0.08mm)の縦340mm、横230mm程度のものとする。なお、絞り袋15ではその底部は封止されている。
【0017】
さらに、図3に示すように、正面視して矩形のこの絞り袋の左下隅部(または右下隅部)を斜めに切り落とす。図中C-C線はこのカットラインを示す。この場合、図4に示すように、ポリエチレン袋15(4角形)のマチ部分16を例えばカット用の斜線C-Cに沿って斜めに切り落とすことで、この隅に細い開口が形成される。この場合の開口の口径は例えば3mm~4mm程度とする。小さい場合は、そば麺を絞り出すとき、紐状のそば素材が切れやすくなる。また、絞る際の外力の加減が難しい。切り口が狭いと麺が細くなり過ぎて茹でる際に切れるおそれがある。このC-C線についてはポリ袋にあらかじめ印字しておくことも可能である。
なお、この開口については製菓用絞り袋に使用する口金を使用することもできる。口金を使用することでそば生地を紐状に(線状に)絞りやすくすることができる。
【0018】
次に、図5において示すように、十分な広さの鍋にて所定量の熱湯17を準備する。この熱湯はいったん沸騰させた後、火を弱火~中火とした状態にて絞り袋15の開口(絞り口)よりそば生地を紐状に押し出すことで沸騰した湯中に渦巻き状に回し入れることとする。絞り出されたそば生地は所定太さでの紐状18または線状となって(そば麺となって)熱湯中に入れられる。なお、絞る途中で麺を切って適切な長さにして鍋に入れることもできる。
この後、図6で示すよう、適量のそば麺18が熱湯中に絞り出された後、火を強火としてひと煮立ちさせる。
さらに、熱湯から麺が浮いてきたら、このタイミングで、図7に示すように、火を止め、すくい網19などでそば麺18を熱湯中からすくいとり、すくった麺18は、図8のザル20に移し、このザル20を冷水入りのボウルに漬けてそば麺18を冷やす。冷たい水でそば麺を締めるものである。
そして、このそば麺を例えばザルに盛りつけて十割そばのできあがりとする。このそばはそばつゆ、薬味などを使用して食することとする。
【0019】
以上の構成に係る十割そば手作りキットにあっては、ポリエチレン樹脂製の絞り袋を使用したが、これに限られず、絞り可能な袋状のもの、例えば製菓用しぼり袋などの代替も可能とする。
また、十割そばキットでは、十割そば粉を使用するが、通常の非加熱そば粉を使用する場合は、つなぎとして小麦粉を予めまぜて、または別途使用することも可能である。
【0020】
以上の構成に係る絞り袋を使用した絞りによるそば作り法にあっては、そのつなぎとなるそば粉または小麦粉の割合、水の割合、絞り口の口径などが重要な要素として適切に設定することが必要である。
例えば、その製造過程にて非加熱のそば粉と、製造過程において加熱されたそば粉との混合する割合などである。また、この十割そば粉と適量の水とを絞り袋に投入して(または投入前に)混ぜ合わせる際は、この水の量についても重要である。さらには、この絞り袋の細口よりこのそば生地を細長い紐状にして熱湯中に押し出し、そば麺を作るについては、この細い口に口径についても重要である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明に係るそばの作製方法にあっては、初心者、子どもでも簡単にそば作りを楽しむことができる技術として有用である。
【符号の説明】
【0022】
11 十割そば粉、
12 水、
15 絞り袋、
17 熱湯、
18 そば麺。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造過程において加熱されたそば粉と製造過程にて非加熱のそば粉とを、前者を15重量%~25重量%、後者を残りの85重量%~75重量%の割合で混合した十割そば用そば粉を準備する過程と、
この十割そば用そば粉に対して水を加え、その十割そば用そば粉と水の量との比は1:1~1.5として、これをボウルで混ぜ合わせることにより、そば生地を作る過程と
このそば生地を絞り袋に投入してこの絞り袋の絞り口よりこのそば生地を細長い紐状にして熱湯中に押し出し、そば麺を作る過程と、
このそば麺を冷水に浸すことにより茹でそばを作る過程とを含む十割そばの作製方法
【請求項2】
製造過程において加熱されたそば粉と製造過程にて非加熱のそば粉とを、前者を15重量%~25重量%、後者を残りの85重量%~75重量%の割合で混合した十割そば用そば粉を入れた袋と、
この十割そば用そば粉に水を混ぜ合わせることにより作られたそば生地が投入される絞り袋とを備え、
この絞り袋では、ポリエチレン製の正面視矩形でその封止された底部の隅部分に口径が3mm~4mmとなる絞り口を形成するために斜めのカットラインが印字されている十割そば手作りキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は十割そばの作製方法および十割そば手作りキットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、日本では人力による手打ち、製麺機による製造にかかわらず、次の工程により蕎麦(そば)が作られる。すなわち、「水回し」では、蕎麦粉とつなぎを混ぜ、加水しながら撹拌し丸い蕎麦玉にする。手打ちの場合は「こね鉢」を用いる。「木鉢」では、蕎麦玉を繰り返し押しつぶすことで練り、粘着性を高める。「延し」では、生地が張りつかないよう打ち粉をした上で、薄く圧延し、平たい長方形型にする。手打ちの場合は木製の麺台に載せ、「麺棒」を用いて圧延する。「切り」の工程では、圧延した生地を幅1~2mm程度の線状に切断して麺の形とする。手打ちの場合はまな板に載せ、何層かに折り畳んだ後、「小間板」を当てながらそば切り包丁で切断する。この切り出された状態の麺を生蕎麦と称する。これを茹でて食する。
【0003】
さて、実用新案登録第3071461号公報においては、このような蕎麦打ちに使用する用具一式、そば打ちセットが開示されている。このセットは、のし板とのし棒とからなり、のし板の4辺にのしたそばの厚さを揃える突出縁を設けてある。
さらに、特開平10-23870号公報にあっては、十割そばの製法が開示されています。すなわち、α化度50~100のα化そば粉と、生そば粉を5:95~100:0の割合に配合し、定法によりミキシングして麺生地とし、これを減圧条件下で麺帯とし、ついで麺線とすることを特徴とするものです。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3071461号公報
【特許文献2】特開平10-23870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来からの家庭でのそばの作り方にあっては、そば打ちセットを揃えて、そば粉とつなぎを準備し、上述の「水回し」、「木鉢」、「延し」、「切り」の各作業を行うものであった。その結果、一定の用具が必要であり、かつ、これら用具の使用における習熟が各工程において必要となっていた。すなわち、そば打ちには習熟と所定の時間とが絶対的に必要で、面倒であり、結果に満足できないことも多々生じていた。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、家庭でのそば作りを簡単な手順でかつ短時間で行える手法を開発することで、上述した課題は解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
この発明は、上述する従来技術の問題点に鑑みなされたもので、絞り袋(絞り容器)を用いることで簡単に十割そば作りを可能とした技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、製造過程において加熱されたそば粉と製造過程にて非加熱のそば粉とを、前者を15重量%~25重量%、後者を残りの85重量%~75重量%の割合で混合した十割そば用そば粉を準備する過程と、この十割そば用そば粉に対して水を加え、その十割そば用そば粉と水の量との比は1:1~1.5として、これをボウルで混ぜ合わせることにより、そば生地を作る過程と、このそば生地を絞り袋に投入してこの絞り袋の絞り口よりこのそば生地を細長い紐状にして熱湯中に押し出し、そば麺を作る過程と、このそば麺を冷水に浸すことにより茹でそばを作る過程とを含む十割そばの作製方法である
この場合の十割そば用そば粉は、製造過程においてアルファ化させたそば粉と、市販の生そば粉(いわゆる全層粉)とを混合したそば粉とする。熱湯とは沸騰した湯、例えば80℃以上、さらには50℃以上の湯を含むものとする。そば粉と加える水の量との比は1:1~1.5とする。
なお、絞り袋(絞り容器)はポリエチレン製とし、例えばその4角形でのサイズは横230mm、縦340mmであって、その厚みは例えば0.08mmとする。これはそば粉300ccに水350ccを加えることができる。また、絞り袋の隅(コーナー部)には細い絞り口を形成する。この細口には口金を配置することもできる。口金により、しぼり出す細長い紐状のそば麺の太さをコントロールすることができる。
【0009】
そば粉の製造段階で非加熱のそば粉とは、いわゆる従来の全層粉、市販そば粉を示し、そばの実を脱殻したそば粒を石臼などで挽いた粉である。製造段階で加熱したそば粉はいわゆるアルファ化したそば粉であって、このそば粉がつなぎとしての作用を発揮することとなる。アルファ化の方法、その率などは任意とする。食する場合はそばつゆは別途準備し、そばちょこ等を用いてざるそばとして、またはぶっかけそばとしても、汁そばとしても食することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、製造過程において加熱されたそば粉と製造過程にて非加熱のそば粉とを、前者を15重量%~25重量%、後者を残りの85重量%~75重量%の割合で混合した十割そば用そば粉を入れた袋と、この十割そば用そば粉に水を混ぜ合わせることにより作られたそば生地が投入される絞り袋とを備え、この絞り袋では、ポリエチレン製の正面視矩形でその封止された底部の隅部分に口径が3mm~4mmとなる絞り口を形成するために斜めのカットラインが印字されている十割そば手作りキットである。
十割そば粉を例えばポリエチレンの袋入りとし、また絞り袋を加え、その作り方の情報とともに、キットとして販売することができる。これらのキットを使用することで、十割そばを家庭で容易に作ることができる。絞り袋から熱湯中にそば材料(そば生地)を紐状としてしぼり出す(絞り袋を外方から押圧することでその開口から絞り出す)ことでそば麺を作り、冷水で締めることでゆでそばを作ることができる。なお、そばつゆ等は別途準備する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、茹でそば(十割そば)を手軽につくることができる。そば打ち用の道具は不必要である。そば粉に水を加えてそば生地を作り、これを絞り袋にて熱湯中にしぼり出すだけでそば麺を作り、これを冷水で締めることで完成である。また、十割そばを家庭でも簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法におけるそば粉に水を加える過程を示す模式図である。
図2】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法におけるそば粉に水を加えたそば材料(そば生地)を絞り袋に投入する過程を示す模式図である。
図3】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法における絞り袋の1隅に細口を形成する過程を示す模式図である。
図4図3における細口形成の具体例を示す模式図である。
図5】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法における熱湯にそば材料(そば生地)を紐状にしぼり出す過程を示す模式図である。
図6】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法におけるそば麺をしぼり出した後に一煮立ちさせる過程を示す模式図である。
図7】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法におけるそば麺をすくい取る過程を示す模式図である。
図8】この発明の実施例1に係る十割そばの作製方法におけるそば麺を冷水で締める過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に係る十割そばの作製方法および十割そばの手作りキットの実施例を具体的に説明する。
【実施例0014】
図1図8に示すように、実施例1に係る十割そばの作製方法は、大きく分けて、そば材料(そば生地)の準備過程、そば材料(そば生地)を絞り袋に投入する過程、絞り袋に細口を切り込む(絞り口形成)過程、熱湯中にそば麺をしぼり出す過程、この後、熱湯から取り出したそば麺を冷水処理する過程とから構成されている。
【0015】
まず、そば材料(そば生地)の準備過程について説明する。この場合、全量がそば粉である十割そば(つなぎとしての小麦粉は不使用)を家庭で簡単に作ることを可能とする十割蕎麦の手作りキットを使用するものとする。
この十割蕎麦の手作りキットは、「アルファ化そば粉と非加熱そば粉との混合そば粉(袋入り)」と、「絞り袋(口金なし)」とからなる。この十割そば粉における加熱済みのそば粉(アルファ化そば粉)と非加熱そば粉との割合は、前者を15重量%~25重量%、後者を残りの85重量%~75重量%とする。
次に、この十割そば粉を所定量の水とボウルにて混ぜ合わせてそば生地とし、このそば生地を絞り袋に投入し、この絞り袋に形成した絞り口(細い開口)より混ぜ合わせて所定の粘度となったそば材料(そば生地)を細長い紐状(線状)にして絞り出す。絞り袋を押し潰す要領である。このとき、適量の熱湯を鍋に容易しておき、この熱湯中に紐状に絞り出すことにより、そば麺を作ることとなる。
この熱湯中のそば麺は、いったんザル(笊、ざる)に受け、冷水にて締めることとして、茹でそばを作ることとなる。
なお、食する場合、そばつゆ、薬味などを準備する。
【0016】
以下、図1図8を参照して十割そば手作りキットを使用した十割そばの作り方を説明する。なお、作り方についてはキットに同封するガイド(指示書き)に従うことが推奨される。
まず、図1に示すように、十割そばの材料である袋封入の十割そば粉11(通常のそば粉80重量%と加熱後石臼挽きしたそば粉20重量%との混合そば粉)300cc(3人前見当)をボウル13に投入し、これに水12を380cc程度加えて例えば泡立て器14で混ぜ合わせる。この混ぜ合わせでは、そば生地が泡立て器ですくって少し垂れる程度の粘度(ねばり)とする。
次に、図2に示すように、よく混ざったそば生地(そば材料)Aをキット同封のポリエチレン製の絞り袋15に詰める(入れる)。絞り袋15は、例えば市販品であって、所定厚み(0.08mm)の縦340mm、横230mm程度のものとする。なお、絞り袋15ではその底部は封止されている。
【0017】
さらに、図3に示すように、正面視して矩形のこの絞り袋の左下隅部(または右下隅部)を斜めに切り落とす。図中C-C線はこのカットラインを示す。この場合、図4に示すように、ポリエチレン袋15(4角形)のマチ部分16を例えばカット用の斜線C-Cに沿って斜めに切り落とすことで、この隅に細い開口が形成される。この場合の開口の口径は3mm~4mmとする。小さい場合は、そば麺を絞り出すとき、紐状のそば素材が切れやすくなる。また、絞る際の外力の加減が難しい。切り口が狭いと麺が細くなり過ぎて茹でる際に切れるおそれがある。このC-C線についてはポリ袋にあらかじめ印字しておくことも可能である。
【0018】
次に、図5において示すように、十分な広さの鍋にて所定量の熱湯17を準備する。この熱湯はいったん沸騰させた後、火を弱火~中火とした状態にて絞り袋15の開口(絞り口)よりそば生地を紐状に押し出すことで沸騰した湯中に渦巻き状に回し入れることとする。絞り出されたそば生地は所定太さでの紐状18または線状となって(そば麺となって)熱湯中に入れられる。なお、絞る途中で麺を切って適切な長さにして鍋に入れることもできる。
この後、図6で示すよう、適量のそば麺18が熱湯中に絞り出された後、火を強火としてひと煮立ちさせる。
さらに、熱湯から麺が浮いてきたら、このタイミングで、図7に示すように、火を止め、すくい網19などでそば麺18を熱湯中からすくいとり、すくった麺18は、図8のザル20に移し、このザル20を冷水入りのボウルに漬けてそば麺18を冷やす。冷たい水でそば麺を締めるものである。
そして、このそば麺を例えばザルに盛りつけて十割そばのできあがりとする。このそばはそばつゆ、薬味などを使用して食することとする。
【0019】
以上の構成に係る十割そば手作りキットにあっては、ポリエチレン樹脂製の絞り袋を使用した。
また、十割そばキットでは、十割そば粉を使用する。
【0020】
以上の構成に係る絞り袋を使用した絞りによるそば作り法にあっては、そのつなぎとなるそば粉の割合、水の割合、絞り口の口径などが重要な要素として適切に設定することが必要である。
例えば、その製造過程にて非加熱のそば粉と、製造過程において加熱されたそば粉との混合する割合などである。また、この十割そば粉と適量の水とを絞り袋への投入前に混ぜ合わせる際は、この水の量についても重要である。さらには、この絞り袋の細口よりこのそば生地を細長い紐状にして熱湯中に押し出し、そば麺を作るについては、この細い口に口径についても重要である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明に係る十割そばの作製方法にあっては、初心者、子どもでも簡単にそば作りを楽しむことができる技術として有用である。
【符号の説明】
【0022】
11 十割そば粉、
12 水、
15 絞り袋、
17 熱湯、
18 そば麺。