(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173670
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】温湿度調節庫
(51)【国際特許分類】
A21C 13/00 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
A21C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079506
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】溝口 岳博
【テーマコード(参考)】
4B031
【Fターム(参考)】
4B031CA09
4B031CK08
(57)【要約】
【課題】水を気化させる通路を短くすることで温湿度調節庫を小型化するようにしたときに、水に含まれるカルキ成分等の不純物が温度を調節する機器に付着して、温度を調節する機器の機能を低下させないようにする。
【解決手段】温湿度調節庫10は、収納庫20の一側部に設けられた温度調節器26,35と、収納庫20の一側部に設けられた加湿ノズル41と、収納庫20内を収納物を収納する収納空間23と、収納庫20の一側部にて温度調節器26,35によって温度が調節されるとともに加湿ノズル41により噴射される水によって加湿される温湿度調節通路24とに通風可能に仕切る仕切板22と、収納庫20内の空気を収納空間23と温湿度調節通路24との間で循環させる循環ファンとを備え、温湿度調節通路24にて温度調節器26,35の下側に加湿ノズル41を配置し、加湿ノズル41の噴射方向θを水平方向よりも下向きに傾けるようにした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納する収納庫と、
前記収納庫の一側部に設けられて上部に前記収納庫内の空気を吸い込む吸込口と下部に前記収納庫内に空気を送り出す送出口とが形成された温湿度調節通路と、
前記温湿度調節通路内に設けられて前記収納庫内の温度を調節する温度調節器と、
前記温湿度調節通路内に設けられて水を噴射させることで前記収納庫内を加湿する加湿ノズルと、
前記吸込口から前記収納庫の空気を前記温湿度調節通路に吸い込み、前記温湿度調節通路内の空気を前記送出口から前記収納庫に送り出し、前記収納庫内の空気を前記温湿度調節通路を通過させて循環させる循環ファンとを備えた温湿度調節庫であって、
前記温湿度調節通路内で前記温度調節器の下側に前記加湿ノズルを配置し、
前記加湿ノズルの噴射方向を水平方向よりも下向きに傾けるようにしたことを特徴とする温湿度調節庫。
【請求項2】
請求項1に記載の温湿度調節庫において、
前記加湿ノズルの噴射方向を前記加湿ノズルの噴射角度の1/2以上の角度で水平方向よりも下向きに傾けるようにしたことを特徴とする温湿度調節庫。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温湿度調節庫において、
前記加湿ノズルから空気を混合させた霧状の水を噴射するようにしたことを特徴とする温湿度調節庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン生地を焼成する前にパン生地を温度と湿度を調節した状態で熟成、発酵等を行うドウコンディショナー等の温湿度調節庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パン生地を焼成する前にパン生地を温度と湿度を調節した状態で熟成、発酵等を行うドウコンディショナー(温湿度調節庫)の発明が開示されている。このドウコンディショナーは、パン生地等の収納物を収納する収納庫を備えており、収納庫の右側部には収納庫内の温度を調節するための蒸発器とヒータとが設けられた温度調節空間が設けられている。また、収納庫の右側部と下部には温度調節空間にて温度調節された空気を収納庫に戻すダクト通路が設けられており、温度調節空間にて温度調節された空気はダクト通路を通って収納庫に戻される。また、ダクト通路には噴霧ノズルが設けられており、温度調節空間にて温度調節された空気はダクト通路を通過するときに霧状に噴霧される水によって加湿された状態で収納庫に戻される。収納庫の空気は温度調節空間とダクト通路を通過するときに温度と湿度が調節されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のドウコンディショナーは、噴霧ダクトから霧状に噴霧される水の気化効率を高くするために、ダクト通路を温度調節空間と別に設け、ダクト通路を収納庫の右側部と下部に配設して長くしているため、ドウコンディショナーを小型化しにくかった。また、温度調節空間を狭くするとともにダクト通路を短くしたときに、噴霧ノズルから噴霧される水が蒸発器やヒータ等の温度を調節する温度調節器に付着し、水に含まれるカルキ成分等の不純物が温度調節器で結晶化して固化し、温度調節器の機能が低下するおそれがあった。本発明は、水を気化させる通路を短くすることで温湿度調節庫を小型化するようにしたときに、水に含まれるカルキ成分等の不純物が温度を調節する温度調節器に付着して、温度調節器の機能を低下させないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、収納物を収納する収納庫と、収納庫の一側部に設けられて上部に収納庫内の空気を吸い込む吸込口と下部に収納庫内に空気を送り出す送出口とが形成された温湿度調節通路と、温湿度調節通路内に設けられて収納庫内の温度を調節する温度調節器と、温湿度調節通路内に設けられて水を噴射させることで収納庫内を加湿する加湿ノズルと、吸込口から収納庫の空気を温湿度調節通路に吸い込み、温湿度調節通路内の空気を送出口から収納庫に送り出し、収納庫内の空気を温湿度調節通路を通過させて循環させる循環ファンとを備えた温湿度調節庫であって、温湿度調節通路内で温度調節器の下側に加湿ノズルを配置し、加湿ノズルの噴射方向を水平方向よりも下向きに傾けるようにしたことを特徴とする温湿度調節庫を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した温湿度調節庫においては、温湿度調節通路内で温度調節器の下側に加湿ノズルを配置し、加湿ノズルの噴射方向を水平方向よりも下向きに傾けるようにしている。これにより、加湿ノズルから噴射される水は上側に配置されている温度調節器に付着しにくくなり、温度調節器が水に含まれるカルキ成分等の不純物が付着することによる機能低下を防ぐことができる。
【0007】
上記のように構成した温湿度調節庫においては、加湿ノズルの噴射方向を加湿ノズルの噴射角度の1/2以上の角度で水平方向よりも下向きに傾けるのが好ましい。このようにしたときには、加湿ノズルから噴射される水が上側に配置される温度調節器に確実に付着しないようになり、温度調節器が水に含まれるカルキ成分等の不純物が付着することによる機能低下を確実に防ぐことができる。
【0008】
上記のように構成した温湿度調節庫においては、加湿ノズルから空気を混合させた霧状の水を噴射するようにするのが好ましい。このようにしたときには、加湿ノズルから噴射される水を素早く気化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】収納庫内の温度調節と湿度調節をする機構の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の温湿度調節庫の一実施形態を添付図面を参照して説明する。本発明の温湿度調節庫10は、ドウコンディショナーと呼ばれるもので、パン生地を焼成する前に、フリーズ(冷凍)、リタード(冷蔵)、予熱及びホイロ(発酵)の各工程を順番に実行するものである。温湿度調節庫10では、上記各工程を実行するときに各工程に応じた温度制御を実行するとともに、予熱及びホイロ工程では温度制御に加えて湿度制御を実行するものである。
【0011】
図1及び
図2に示したように、温湿度調節庫10は、ハウジング11内の上部に機械室12を備え、上部の機械室12を除いた部分にパン生地(収納物)を収納する収納庫20を上下に2段備えている。上下の収納庫20は実質的に同じ構造であるので、以下の説明では上側の収納庫20についてのみ説明する。
図2に示したように、収納庫20の前部にはパン生地を載せたトレイを出し入れする前側開口部20aが形成されており、収納庫20の前部には前側開口部20aを開閉する扉21が開閉自在に設けられている。
【0012】
図2及び
図3に示したように、収納庫20の後部(一側部)には仕切板22が設けられており、仕切板22は、収納庫20の後部を除いた部分をパン生地よりなる収納物を収納する収納空間23と、収納庫20の後部を温度及び湿度を調節した空気を収納空間23に送り出す温湿度調節通路24とに通風可能に仕切っている。仕切板22は収納庫20の天井壁及び底壁と離間して取り付けられており、仕切板22の上部には収納庫20の天井壁との間に吸込口22aが形成され、仕切板22の下部には収納庫20の底壁との間に送出口22bが形成されている。
【0013】
図2、
図4及び
図5に示したように、収納庫20の温湿度調節通路24は、収納庫20内の温度と湿度を調節するための通路(空間)である。温湿度調節通路24の上部には循環ファン25が設けられており、循環ファン25は収納庫20内の空気を温湿度調節通路24を通過するように循環させている。循環ファン25を作動させると、収納庫20の収納空間23の空気は吸込口22aを通って温湿度調節通路24に吸い込まれ、吸込口22aから吸い込まれた温湿度調節通路24の空気は下方に流れて送出口22bを通って収納庫20の収納空間23に送り出され、収納庫20内の空気は温湿度調節通路24を通過するように循環する。
【0014】
図2、
図4及び
図5に示したように、温湿度調節通路24の上部には循環ファン25の下側に収納庫20内を冷却するための冷却装置30の蒸発器(温度調節器)35が配設されている。
図5に示したように、冷却装置30は温湿度調節通路24を通過する収納庫20内の空気を冷却して、収納庫20内を冷却するものである。冷却装置30は周知の冷媒回路を用いたものであり、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮した冷媒ガスを冷却する凝縮器32と、液化冷媒に含まれる水分を除去するドライヤ33と、液化冷媒を膨張させるキャピラリチューブ(膨張手段)34と、膨張させた液化冷媒を気化させて収納庫20内を冷却する蒸発器35とを備えている。蒸発器35は温湿度調節通路24の上部に配置され、他の部品は機械室12に配置されている。
【0015】
この冷却装置30においては、圧縮機31にて圧縮された冷媒ガスは凝縮器32で冷却されて液化冷媒となり、液化冷媒はドライヤ33を通ってキャピラリチューブ34で膨張して蒸発器35に送られ、蒸発器35で気化するときに温湿度調節通路24の空気を冷却する。なお、膨張手段としてキャピラリチューブを採用したが、これに限られるものでなく、電子膨張弁等の膨張弁を採用したものであってもよい。
【0016】
図2、
図4及び
図5に示したように、収納庫20の温湿度調節通路24には蒸発器(温度調節器)35の下側に収納庫20内を加熱するヒータ(温度調節器)26が配設されている。ヒータ26は温湿度調節通路24を通過する収納庫20内の空気を加熱して、収納庫20内を加熱するものである。ヒータ26はガラス管ヒータを用いたものであり、輻射熱によって温湿度調節通路24内の空気を効率的に加熱できるだけでなく、上側に配置された蒸発器35の除霜用ヒータ(デフロストヒータ)としての機能も有している。
【0017】
図2、
図4及び
図5に示したように、収納庫20の温湿度調節通路24にはヒータ26の下側に加湿器40の加湿ノズル41が配設されている。加湿器40は水を噴射して収納庫20内を加湿するものであり、この実施形態の加湿器40は空気を混合させた霧状の水を噴射するものである。加湿器40は、水を霧状に噴霧する加湿ノズル41と、水道等の給水源から加湿ノズル41に水を供給する給水管42と、加湿ノズル41に空気を供給する給気管43と、給気管43を介して噴霧ノズルに空気を加圧状態で送り出すエアコンプレッサ44とを備えている。給水管42は水道などの給水源に接続されており、給水管42には減圧弁42aと給水弁42bが介装されている。また、給水管42には給水弁42bより下流に排水管45が接続されており、排水管45には排水弁45aが介装されている。
【0018】
図6に示したように、加湿ノズル41は給水管42から供給された水を噴出させるとともに、給気管43から供給された空気を噴出させるようにして、空気とともに霧状に噴出させた水を細かい微粒子で噴霧するようにしたものである。
図4~
図6に示したように、加湿ノズル41は温湿度調節通路24の左側部にて温度調節器である蒸発器35とヒータ26の下側に配置されており、加湿ノズル41の噴射方向は右向きにて水平方向よりも下向きに傾けられている。
図6に示したように、加湿ノズル41の噴射角度αは20°となっており、加湿ノズル41から噴射される霧状の水が上側に配置される蒸発器35とヒータ26に付着するのを防ぐために、加湿ノズル41の噴射方向θ(加湿ノズル41の噴射方向の中心軸)は水平方向から下向きに25°傾けられている。
【0019】
図4及び
図5に示したように、温湿度調節通路24には温度センサ27と湿度センサ28が配設されている。温度センサ27は温湿度調節通路24の温度を検出することで収納庫20内の温度を検出するものであり、湿度センサ28は温湿度調節通路24の湿度を検出することで収納庫20内の湿度を検出するものである。
【0020】
図7に示したように、温湿度調節庫10は制御装置50を備えており、制御装置50は、循環ファン25、ヒータ26、温度センサ27、湿度センサ28、冷却装置30(圧縮機31、凝縮器32)、加湿器40(給水弁42b、エアコンプレッサ44、及び排水弁45a)に接続されている。制御装置50はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。制御装置50は、ROMに収納庫20内のパン生地をフリーズ(冷凍)、リタード(冷蔵)、予熱及びホイロ(発酵)の各工程を順に実行する発酵プログラムを備えている。なお、温湿度調節庫10は、フリーズ(冷凍)、リタード(冷蔵)、予熱及びホイロ(発酵)の各工程の少なくとも1つを選択的に実行することも可能となっている。
【0021】
発酵プログラムは、フリーズ(冷凍)工程で収納庫20内を-5℃で3時間維持し、リタード(冷蔵)工程で収納庫20内を0℃~2℃で維持し、予熱工程で収納庫20内を15℃~18℃で75~80%の湿度を2時間維持し、ホイロ(発酵)工程で28℃~35℃で75~85%の湿度を1時間維持するように制御している。この発酵プログラムでは、フリーズ(冷凍)工程の開始時刻からホイロ(発酵)工程で予め設定した終了時刻までに要する時間からフリーズ(冷凍)工程、予熱工程及びホイロ(発酵)工程に要する時間を減じて残る時間をリタード(冷蔵)工程を実行するように制御している。なお、温度、湿度及び時間はあくまで一例であり、発酵に供するパン生地の種類等によって変更可能としている。
【0022】
発酵プログラムを実行したときの制御を以下に説明する。フリーズ(冷凍)工程では、制御装置50は、循環ファン25を作動させるとともに、温度センサ27の検出温度に基づいて冷却装置30の作動を制御することで、収納庫20内を-5℃となるように温度制御している。温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である-5℃より高い設定上限温度(設定上限温度は例えば設定温度より1℃高く設定されており、以下同じである)を検出したときには冷却装置30を作動させ、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である-5℃より低い設定下限温度(設定下限温度は例えば設定温度より1℃低く設定されており、以下同じである)を検出したときには、冷却装置30の作動を停止させている。
【0023】
収納空間23の空気は循環ファン25によって吸込口22aを通って温湿度調節通路24に吸い込まれ、温湿度調節通路24に吸い込まれた空気は下方に流れて送出口22bを通って収納空間23に送り出され、収納庫20内の空気は温湿度調節通路24を通過しながら循環する。冷却装置30を作動させているときには、温湿度調節通路24内に吸い込まれた空気は蒸発器35を通過するときに熱交換によって冷却され、冷却された空気が送出口22bから収納空間23に送り出され、収納庫20内は温湿度調節通路24を通過するときに冷却された空気が循環することで冷却される。
【0024】
フリーズ(冷凍)工程を開始させてから3時間経過すると、制御装置50はリタード(冷蔵)工程を実行する。リタード(冷蔵)工程では、制御装置50は、循環ファン25を作動させるとともに、温度センサ27の検出温度に基づいて冷却装置30の作動を制御することで、収納庫20内を2℃となるように温度制御している。温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である2℃より高い設定上限温度を検出したときには冷却装置30を作動させ、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である2℃より低い設定下限温度を検出したときには、冷却装置30の作動を停止させている。
【0025】
リタード(冷蔵)工程でもフリーズ(冷凍)工程と同様に、収納空間23の空気は循環ファン25によって吸込口22aを通って温湿度調節通路24に吸い込まれ、温湿度調節通路24に吸い込まれた空気は下方に流れて送出口22bを通って収納空間23に送り出され、収納庫20内の空気は温湿度調節通路24を通過しながら循環する。冷却装置30を作動させているときには、温湿度調節通路24内に吸い込まれた空気は蒸発器35を通過するときに熱交換によって冷却され、冷却された空気が送出口22bから収納空間23に送り出され、収納庫20内は温湿度調節通路24を通過するときに冷却された空気が循環することで冷却される。
【0026】
リタード(冷蔵)工程を開始させてから所定の時間が経過すると、制御装置50は予熱工程を実行する。予熱工程では、制御装置50は、循環ファン25を作動させるとともに、温度センサ27の検出温度に基づいて冷却装置30またはヒータ26の作動を制御することで、収納庫20内の温度を18℃となるように温度制御し、湿度センサ28の検出湿度に基づいて加湿器40の作動を制御することで、収納庫20内の湿度を85%となるように湿度制御している。室温が設定温度である18℃より高いような環境下では、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である18℃より高い設定上限温度を検出したときには冷却装置30を作動させるように制御し、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である18℃より低い設定下限温度を検出したときには冷却装置30の作動を停止させるように制御している。
【0027】
これに対し、室温が設定温度である18℃より低いような環境下では、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である18℃より低い設定下限温度を検出したときにはヒータ26を作動させるように制御し、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である18℃より高い設定上限温度を検出したときにはヒータ26の作動を停止させるように制御している。
【0028】
予熱工程でもリタード(冷蔵)工程とフリーズ(冷凍)工程と同様に、収納空間23の空気は循環ファン25によって吸込口22aを通って温湿度調節通路24に吸い込まれ、温湿度調節通路24に吸い込まれた空気は下方に流れて送出口22bを通って収納空間23に送り出され、収納庫20内の空気は温湿度調節通路24を通過しながら循環する。冷却装置30またはヒータ26を作動させているときには、温湿度調節通路24内に吸い込まれた空気は蒸発器35またはヒータ26を通過するときに熱交換によって冷却または加温され、冷却または加温された空気が送出口22bから収納空間23に送り出され、収納庫20内は温湿度調節通路24を通過するときに冷却または加温された空気が循環することで冷却または加温される。
【0029】
予熱工程で上記のように温度制御をしながら、制御装置50は、収納庫20内の湿度を85%となるように湿度制御している。制御装置50は、湿度センサ28による検出湿度が75%より低い設定下限湿度(設定下限湿度は設定湿度より例えば5%低く設定されており、以下同じである)を検出すると加湿器40により加湿するように制御している。制御装置50は、湿度センサ28による検出湿度が75%より低い下限設定湿度を検出したときには、給水弁42bを噴霧時間である2秒間開放して加湿ノズル41から噴霧時間である2秒間水を霧状に噴霧するのと、給水弁42bを収納庫20の温度及び/または湿度に応じた待機時間で閉止して水を噴霧するのを待機するのを繰り返し実行するように制御する。
【0030】
また、制御装置50は、湿度センサ28による検出湿度が75%より高い設定上限湿度(設定上限湿度は設定湿度より例えば5%高く設定されており、以下同じである)を検出すると加湿器40による加湿を停止させるように制御している。加湿ノズル41から水を霧状に噴霧させたときには、循環ファン25の作動によって温湿度調節通路24内にて下方に流れる空気は加湿ノズル41から霧状に噴霧された水が気化されて加湿され、温湿度調節通路24内にて加湿された空気は送出口22bから収納空間23に送り出され、収納庫20内は温湿度調節通路24を通過するときに加湿された空気が循環するようになって加湿される。
【0031】
予熱工程を開始させてから2時間経過すると、制御装置50は発酵(ホイロ)工程を実行する。ホイロ(発酵)工程では、制御装置50は、循環ファン25を作動させるとともに、温度センサ27の検出温度に基づいてヒータ26の作動を制御することで、収納庫20内の温度を35℃となるように温度制御し、湿度センサ28の検出湿度に基づいて加湿器40の作動を制御することで、収納庫20内の湿度を85%となるように湿度制御している。
【0032】
温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である35℃より低い設定下限温度を検出したときにはヒータ26を作動させるように制御し、温度センサ27の検出温度が収納庫20の設定温度である35℃より高い設定上限温度を検出したときにはヒータ26の作動を停止させるように制御している。ヒータ26を作動させているときには、循環ファン25によって収納庫20内から温湿度調節通路24に送られた空気はヒータ26によって加熱される。
【0033】
発酵(ホイロ)工程でも上述した各工程と同様に、収納空間23の空気は循環ファン25によって吸込口22aを通って温湿度調節通路24に吸い込まれ、温湿度調節通路24に吸い込まれた空気は下方に流れて送出口22bを通って収納空間23に送り出され、収納庫20内の空気は温湿度調節通路24を通過しながら循環する。ヒータ26を作動させているときには、温湿度調節通路24内に吸い込まれた空気はヒータ26を通過するときに熱交換によって加温され、加温された空気が送出口22bから収納空間23に送り出され、収納庫20内は温湿度調節通路24を通過するときに加温された空気が循環することで加温される。
【0034】
発酵(ホイロ)工程で上記のように温度制御をしながら、制御装置50は、収納庫20内の湿度を85%となるように湿度制御している。制御装置50は、湿度センサ28による検出湿度が85%より低い設定下限湿度を検出すると加湿器40により加湿するように制御し、湿度センサ28による検出湿度が85%より高い設定上限湿度を検出すると加湿器40による加湿を停止させるように制御している。加湿ノズル41から水を霧状に噴霧させたときには、循環ファン25の作動によって温湿度調節通路24内にて下方に流れる空気は加湿ノズル41から霧状に噴霧された水が気化されて加湿され、温湿度調節通路24内にて加湿された空気は送出口22bから収納空間23に送り出され、収納庫20内は温湿度調節通路24を通過するときに加湿された空気が循環するようになって加湿される。ホイロ(発酵)工程を開始させてから1時間経過すると、制御装置50は発酵プログラムを終了する。
【0035】
上記のように構成した温湿度調節庫10は、収納庫20の一側部として後部に設けられて上部に収納庫20内の空気を吸い込む吸込口22aと下部に収納庫20内に空気を送り出す送出口22bとが形成された温湿度調節通路24と、温湿度調節通路24内に設けられて収納庫20内の温度を調節する温度調節器として蒸発器35とヒータ26と、温湿度調節通路24内に設けられて水を噴射させることで収納庫20内を加湿する加湿ノズル41と、吸込口22aから収納庫20の空気を温湿度調節通路24に吸い込み、温湿度調節通路24に内の空気を送出口22bから収納庫20に送り出し、収納庫20内の空気を温湿度調節通路24を通過させて循環させる循環ファン25とを備えている。
【0036】
温湿度調節通路24は、収納庫20の後部に形成された温度と湿度を調節するための上下に延びる通路(空間)であり、上部に収納庫20内の空気を吸い込む吸込口22aと下部に収納庫20内に空気を送り出す送出口22bとが形成され、上側から下側に空気が流れるようになっている。温湿度調節通路24の上部には温度を調節する温度調節器として蒸発器35とヒータ26とが配設され、温湿度調節通路24の蒸発器35とヒータ26の下側には加湿器40の加湿ノズル41が配設されている。収納空間23から温湿度調節通路24に吸い込まれた空気は温湿度調節通路24内にて蒸発器35とヒータ26を通過するときに冷却または加温され、冷却または加温された空気は加湿ノズル41から噴射される霧状の水が気化することで加湿され、収納庫20内は温湿度調節通路24内を通過するときに冷却または加温されて温度調節されるとともに加湿された空気が循環するようになる。
【0037】
この温湿度調節庫10は、小型化することを目的として、温度調節器である蒸発器35とヒータ26と加湿ノズル41がともに温湿度調節通路24に配設されている。また、加湿ノズル41から噴射される水ができるだけ広い空間で気化されるように、加湿ノズル41は蒸発器35とヒータ26にできるだけ近づけて配設されている。このため、加湿ノズル41から噴射される水が温度調節器である蒸発器35とヒータ26に付着するおそれがあり、蒸発器35とヒータ26に水が付着すると、水に含まれるカルキ成分等の不純物が蒸発器35とヒータ26に結晶化(固化)して残り、蒸発器35とヒータ26の機能が低下するおそれがある。
【0038】
この温湿度調節庫10においては、加湿ノズル41は温度調節器である蒸発器35とヒータ26の下側に配置され、加湿ノズル41の噴射方向を水平方向よりも下向きに傾けるようにしている。これにより、加湿ノズル41から噴射される水は上側に配置されている温度調節器である蒸発器35とヒータ26に付着しにくくなり、温度調節器である蒸発器35とヒータ26が水に含まれるカルキ成分等の不純物が付着することによる機能低下を防ぐことができる。特に、この温湿度調節庫10においては、加湿ノズル41の噴射方向θを加湿ノズル41の噴射角度αの1/2以上の角度で水平方向よりも下向きに傾けるようにしている。この実施形態の温湿度調節庫10においては、加湿ノズル41の噴射角度αは20°となっており、加湿ノズル41の噴射方向θを水平方向から噴射角度αの1/2以上の角度として水平方向から25°で傾けている。これにより、加湿ノズル41から噴射される水は上側に配置されている温度調節器である蒸発器35とヒータ26に確実に付着しないようになり、温度調節器である蒸発器35とヒータ26が水に含まれるカルキ成分等の不純物が付着することによる機能低下を確実に防ぐことができる。
【0039】
この実施形態の温湿度調節庫10においては、加湿ノズル41の噴射角度αを20°としており、加湿ノズル41の噴射方向θを噴射角度αである20°の1/2である10°以上の一例として25°に傾けている。加湿ノズル41の噴射方向θを45°以上で傾けると、加湿ノズル41から噴射される水を十分に気化させることができず、噴射された水が温湿度調節通路24の底部に残るおそれがあるため、加湿ノズル41の噴射方向θを噴射角度αである20°の1/2である10°以上で45°以下の範囲で傾けるようにしたときには、加湿ノズル41から噴射される水を十分に気化させるようにすることできるとともに、加湿ノズル41から噴射される水を上側に配置されている温度調節器である蒸発器35とヒータ26に付着しにくくすることができる。また、この実施形態の加湿ノズル41は噴射角度αを20°としているが、これに限られるものでなく加湿ノズル41の噴射角度αを10°~45°の範囲としてもよい。一例として、噴射角度αを10°としたときには、噴射方向θを5°~45°で傾けるようにするのが好ましく、噴射角度αを45°としたときには、噴射方向θを22.5°~45°で傾けるようにするのが好ましい。
【0040】
上記の実施形態の温湿度調節庫10においては、加湿ノズル41から空気を混合させた霧状の水を噴射するようにしているが、これに限られるものでなく、空気を混合させることなく霧状の水を噴射するもであってもよい。
【0041】
上記の実施形態の温湿度調節庫10においては、温湿度調節通路24を収納庫20の一側部として後部に設けたが、これに限られるものでなく、温湿度調節通路24を収納庫20の一側部として左側部または右側部に設けるようにしてもよい。また、収納庫20の一側部として後部に仕切板22を設けることで、収納庫20の後部に一体的に温湿度調節通路24を形成しているが、これに限られるものでなく、収納庫20の後部、左側部または右側部に筒形等の通路部材を取り付けることで、収納庫20の後部、左側部または右側部に通路部材よりなる温湿度調節通路24を設けるようにしたものであってもよい。
【0042】
上記の実施形態の温湿度調節庫10においては、仕切板22の上部として仕切板22の上端と収納庫20の天井壁との間に吸込口22aを設け、仕切板22の下部として仕切板22の下端と収納庫20の底壁との間に送出口22bを設けるようにしたが、これに限られるものでなく、仕切板22の上端と下端を収納庫20の天井壁と底壁に当接または接近させたものにあっては、仕切板22の上部に開口部よりなる吸込口22aを形成し、仕切板22の下部に開口部よりなる送出口22bを形成するようしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…温湿度調節庫、20…収納庫、22a…吸込口、22b…送出口、24…温湿度調節通路、25…循環ファン、26…ヒータ(温度調節器)、35…蒸発器(温度調節器)、41…加湿ノズル。