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特開2022-173682移動体、移動制御方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173682
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】移動体、移動制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221115BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079528
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】元山 琢人
(72)【発明者】
【氏名】漆戸 航平
(72)【発明者】
【氏名】半田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】豊吉 政彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真一郎
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL07
(57)【要約】
【課題】障害物検出における誤判定を抑制する。
【解決手段】法線ベクトル推定部は自機の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、制御情報推定部は、法線ベクトルに基づいて、自機の移動を制御するための制御情報を生成する。本開示に係る技術は、例えば、ドローンなどの移動体に適用することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の進行方向をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定する法線ベクトル推定部と、
前記法線ベクトルに基づいて、前記自機の移動を制御するための制御情報を生成する制御情報生成部と
を備える移動体。
【請求項2】
前記法線ベクトルに基づいて、障害物との衝突リスクを算出する算出部をさらに備え、
前記制御情報生成部は、前記衝突リスクに基づいて、前記制御情報を生成する
請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記算出部は、前記自機からの距離に応じた点群データについての前記法線ベクトルに基づいて、前記衝突リスクを算出する
請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記進行方向の空間領域を前記進行方向に連続する衝突判定領域に分割する分割部をさらに備え、
前記算出部は、前記衝突判定領域に含まれる前記点群データについての前記法線ベクトルに基づいて、前記衝突判定領域毎の前記衝突リスクを算出する
請求項3に記載の移動体。
【請求項5】
前記分割部は、前記自機からの測距精度に応じて、前記空間領域を前記衝突判定領域に分割する
請求項4に記載の移動体。
【請求項6】
前記算出部は、前記衝突判定領域に含まれる前記点群データについて求められる、前記法線ベクトルと前記自機の速度ベクトルとの内積を用いて、前記衝突判定領域毎の前記衝突リスクを算出する
請求項4に記載の移動体。
【請求項7】
前記算出部は、前記衝突判定領域に含まれる前記点群データそれぞれの、前記内積と前記点群データに対応する実空間の面積に比例する値との積の総和に応じた値を、前記衝突判定領域の前記衝突リスクとして算出する
請求項6に記載の移動体。
【請求項8】
前記衝突リスクが所定の閾値より高く、かつ、前記自機から最も近い前記衝突判定領域を、前記障害物の存在可能性のある障害物領域に設定する設定部を備え、
前記制御情報生成部は、前記自機から前記障害物領域までの距離に基づいて、前記制御情報を生成する
請求項4に記載の移動体。
【請求項9】
前記制御情報生成部は、前記自機から前記障害物領域までの距離が、前記自機の停止可能距離より短い場合、前記自機を減速させる前記制御情報を生成する
請求項8に記載の移動体。
【請求項10】
前記障害物領域に含まれる前記点群データについての前記法線ベクトルに基づいて、前記障害物領域における代表法線ベクトルを算出する代表法線ベクトル算出部をさらに備え、
前記制御情報生成部は、前記自機が前記障害物領域に到達したときの予測速度ベクトルと、前記代表法線ベクトルが直交するように、前記自機の軌道を補正する前記制御情報を生成する
請求項8に記載の移動体。
【請求項11】
前記制御情報生成部は、前記制御情報として、前記予測速度ベクトルと前記代表法線ベクトルが直交するような角加速度を算出する
請求項10に記載の移動体。
【請求項12】
前記制御情報生成部は、前記角加速度が所定値を超えず、かつ、補正後の前記軌道上に衝突可能性のある物体に対応する前記点群データが存在しない場合に、前記軌道を補正する前記制御情報を生成する
請求項11に記載の移動体。
【請求項13】
前記制御情報生成部は、前記角加速度が前記所定値を超えるか、または、補正後の前記軌道上に前記物体に対応する前記点群データが存在する場合、前記自機を減速させる前記制御情報を生成する
請求項12に記載の移動体。
【請求項14】
前記法線ベクトルに基づいて、法線ベクトル画像を生成する法線ベクトル画像生成部と、
FPV(First Person View)カメラにより撮像されたRGB画像に、前記法線ベクトル画像を重畳した重畳画像を生成する重畳部をさらに備える
請求項1に記載の移動体。
【請求項15】
法線ベクトル画像生成部は、前記法線ベクトルの向きに応じて色付けされた前記法線ベクトル画像を生成する
請求項14に記載の移動体。
【請求項16】
法線ベクトル画像生成部は、前記FPVカメラの座標系に変換された前記法線ベクトル画像を生成する
請求項14に記載の移動体。
【請求項17】
前記自機の制御信号を入力するためのコントローラに、前記重畳画像を送信する送信部をさらに備える
請求項14に記載の移動体。
【請求項18】
前記センサデータは、偏光イメージセンサにより撮像された偏光画像である
請求項1に記載の移動体。
【請求項19】
移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、
前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報を生成する
移動制御方法。
【請求項20】
コンピュータに、
移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、
前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報を生成する
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、移動制御方法、およびプログラムに関し、特に、障害物検出における誤判定を抑制することができるようにする移動体、移動制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンなどの移動体の中には、進行方向の軌道上に衝突可能性のある障害物を検出した場合、減速したり停止したりする機能を備えているものがある。
【0003】
しかしながら、ドローンが地面の近くを低空飛行した場合、地面が衝突可能性のある障害物として検出され、ドローンが意図せず停止してしまう。
【0004】
ところで、特許文献1には、偏光方向の異なる複数の偏光フィルタを透過した偏光画像から画素単位で法線ベクトルを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-114307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
進行方向の軌道上で法線ベクトルを検出することができれば、障害物検出における判定の精度を高められると考えられる。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、障害物検出における誤判定を抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の移動体は、自機の進行方向をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定する法線ベクトル推定部と、前記法線ベクトルに基づいて、前記自機の移動を制御するための制御情報を生成する制御情報生成部とを備える移動体である。
【0009】
本開示の移動制御方法は、移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報を生成する移動制御方法である。
【0010】
本開示のプログラムは、コンピュータに、移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報を生成する処理を実行させるためのプログラムである。
【0011】
本開示においては、移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルが推定され、前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】移動体の障害物の検出について説明する図である。
図2】障害物の誤検出の例について説明する図である。
図3】本開示に係る技術の概要について説明する図である。
図4】移動体のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態の移動体の機能構成例を示すブロック図である。
図6】障害物検出処理の流れについて説明するフローチャートである。
図7】障害物検出処理の流れについて説明するフローチャートである。
図8】衝突判定領域の分割について説明する図である。
図9】衝突判定領域毎の衝突リスクの算出について説明する図である。
図10】点群データの実空間の面積について説明する図である。
図11】障害物領域の設定について説明する図である。
図12】軌道の補正について説明する図である。
図13】第2の実施形態の移動体の機能構成例を示すブロック図である。
図14】障害物検出処理の流れについて説明するフローチャートである。
図15】軌道補正処理の流れについて説明するフローチャートである。
図16】代表法線ベクトルの推定について説明する図である。
図17】角加速度の算出について説明する図である。
図18】第3の実施形態の移動体の機能構成例を示すブロック図である。
図19】重畳画像送信処理の流れについて説明するフローチャートである。
図20】法線ベクトル画像のRGB画像への重畳の例を示す図である。
図21】センサの例を示す図である。
図22】移動体制御システムの機能構成例を示すブロック図である。
図23】コンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態(以下、実施形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
【0014】
1.従来技術の課題と本開示に係る技術の概要
2.移動体のハードウェア構成
3.第1の実施形態(法線ベクトルに基づいた移動制御)
4.第2の実施形態(法線ベクトルに基づいた軌道補正)
5.第3の実施形態(法線ベクトル画像のRGB画像への重畳)
6.変形例
7.コンピュータの構成例
【0015】
<1.従来技術の課題と本開示に係る技術の概要>
ドローンなどの移動体の中には、進行方向の軌道上に衝突可能性のある障害物を検出した場合、減速したり停止したりする機能を備えているものがある。
【0016】
例えば、図1に示されるように、ドローンとして構成される移動体10が、ユーザの操縦により、速度ベクトルvで空中を飛行しているとする。移動体10は、ステレオカメラなどで構成される測距センサ11を備えている。移動体10は、測距センサ11により点群データPcを取得することができる。
【0017】
図中、一点鎖線の枠で囲まれているように、将来の予測軌道に沿って移動体10が通過する空間領域Sa上に点群データPcが存在する場合、移動体10は、衝突可能性のある障害物が検出されたと判定し、減速したり停止したりする。
【0018】
しかしながら、図2に示されるように、移動体10が地面Gの近くを低空飛行した場合、測距誤差や精度による揺らぎによって、地面G近くの点群データPcが、障害物の検出を判定する衝突判定領域に含まれるおそれがある。また、移動体10が地面Gの近くを低空飛行した場合、速度ベクトルvの誤差などにより、衝突判定領域が地面Gと重なるおそれがある。その結果、地面Gが衝突可能性のある障害物として検出され、移動体10が意図せず停止してしまう。これは、低空飛行時に限らず、高速飛行時にも起こり得る。
【0019】
そこで、図3に示されるように、本開示に係る技術を適用した移動体10は、自機の進行方向をセンシングしたセンサデータに基づいて、点群データPcについての法線ベクトルnを推定する。センサデータは、例えば偏光イメージセンサにより撮像される偏光画像とされる。そして、移動体10は、推定された法線ベクトルnに基づいて、各点群データPcについての衝突リスクを算出することで、減速したり停止したりするか否かを判定する。点群データPcについての衝突リスクは、点群データPcについての法線ベクトルnと、移動体10の速度ベクトルvが、どの程度同じ方向を向いているかに応じて算出される。
【0020】
これにより、移動体10が低空飛行している場合や高速飛行している場合であっても、障害物検出における誤判定を抑制することを実現する。
【0021】
<2.移動体のハードウェア構成>
図4は、移動体10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0022】
移動体10には、ドローンや車両、船舶などの移動物体が含まれる。以下においては、本開示に係る技術を、空中を飛行するドローンに適用した例について説明する。本開示に係る技術は、ユーザの操縦(操作)により移動する移動体の他、自律飛行するドローン、陸上を移動する自律走行車両、水上または水中を移動する自律航行船舶、屋内を移動する自律移動掃除機などの自律移動ロボットに適用することが可能である。
【0023】
移動体10は、センサ20、通信部21、制御部22、移動制御部23、移動機構24、および記憶部25を備えている。
【0024】
センサ20は、上述した測距センサ11をはじめとする各種のセンサを含み、移動体10の進行方向を含む移動体10の周囲の各方向をセンシングする。センシングにより得られたセンサデータは、制御部22に供給される。
【0025】
通信部21は、ネットワークインタフェースなどで構成され、移動体10を操縦するためのコントローラや、その他の任意の装置との間で、無線または有線による通信を行う。例えば、通信部21は、通信相手となる装置と、直接通信を行ってもよいし、Wi-Fi(登録商標)や4G,5Gなどの基地局や中継器を介したネットワーク通信を行ってもよい。
【0026】
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどで構成され、所定のプログラムを実行することにより、通信部21、移動制御部23、および記憶部25を制御する。例えば、制御部22は、センサ20からのセンサデータに基づいて、移動制御部23を制御する。
【0027】
移動制御部23は、専用ICやFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの回路により構成され、制御部22の制御に従い、移動機構24の駆動を制御する。
【0028】
移動機構24は、移動体10を移動させるための機構であり、飛行機構、走行機構、推進機構などが含まれる。この例では、移動体10はドローンとして構成され、移動機構24は飛行機構としてのモータやプロペラなどから構成される。また、移動体10が自律走行車両として構成される場合、移動機構24は走行機構としての車輪などから構成され、移動体10が自律航行船舶として構成される場合、移動機構24は推進機構としてのスクリュープロペラなどから構成される。移動機構24は、移動制御部23の制御に従って駆動し、移動体10を移動させる。
【0029】
移動体10においては、制御部22が、例えば、通信部21で受信されたコントローラからの制御信号に従い、移動制御部23を制御することにより、移動機構24を駆動させる。これにより、移動体10は、ユーザによるコントローラの操作に従って移動する。
【0030】
記憶部25は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどにより構成され、制御部22の制御に従い、各種の情報を記憶する。
【0031】
以下、障害物検出における誤判定の抑制を実現する移動体10の実施形態について説明する。
【0032】
<3.第1の実施形態>
(移動体の機能構成例)
図5は、本開示に係る技術を適用した第1の実施形態の移動体10の機能構成例を示すブロック図である。
【0033】
図5に示される移動体10は、2台の偏光カメラ30-1,30-2を備える。偏光カメラ30-1,30-2は、それぞれ偏光イメージセンサ51-1,51-2を有しており、ステレオカメラとしても機能する。
【0034】
偏光イメージセンサ51-1,51-2は、複数方向の偏光子がそれぞれ画素のフォトダイオード上に形成されて構成される。例えば、偏光イメージセンサ51-1,51-2には4方向の偏光子が搭載されており、4方向の偏光画像を取得することができる。偏光イメージセンサ51-1,51-2は、図4のセンサ20を構成する各種のセンサの1つとされる。以下において、偏光イメージセンサ51-1,51-2をそれぞれ区別しない場合、単に、偏光イメージセンサ51という。
【0035】
移動体10は、法線ベクトル推定部52、輝度画像構成部53-1,53-2、平行化処理部54-1,54-2、キャリブレーションデータ55、および法線ベクトル補正部56をさらに備える。
【0036】
法線ベクトル推定部52は、偏光イメージセンサ51-1により取得された偏光画像に基づいて、偏光画像の画素位置毎に法線ベクトルを推定する。法線ベクトルの推定に用いられる偏光画像は、偏光イメージセンサ51-2により取得された偏光画像であってもよい。
【0037】
具体的には、法線ベクトル推定部52は、偏光方向が3方向以上の偏光画像に基づいて、偏光方向と偏光画像の輝度から輝度と偏光角の関係を求め、最大輝度となる方位角φを判別する。また、法線ベクトル推定部52は、輝度と偏光角の関係から得られた最大輝度と最小輝度を用いて偏光度ρを算出し、偏光度と天頂角の関係を示す特性曲線に基づいて、偏光度ρに対応する天頂角θを判別する。このようにして、法線ベクトル推定部52は、偏光方向が3方向以上の偏光画像に基づいて、被写体の法線ベクトルとして、方位角φと天頂角θを画素位置毎に推定する。
【0038】
輝度画像構成部53-1,53-2は、それぞれ、偏光イメージセンサ51-1,51-2により取得された2視点の偏光画像の画素毎の輝度値に基づいて、2視点の輝度画像を構成する。
【0039】
平行化処理部54-1,54-2は、それぞれ、輝度画像構成部53-1,53-2により構成された2視点の輝度画像に対して、ステレオレクティフィケーションによる平行化処理を行う。平行化処理は、キャリブレーションデータ55として保持されている、偏光カメラ30-1,30-2の内部パラメータ、外部パラメータ、および歪係数を用いて行われる。平行化処理により、2視点の輝度画像は、平行化された輝度画像に補正される。
【0040】
法線ベクトル補正部56は、平行化処理部54-1,54-2による平行化処理による輝度画像の補正に応じて、偏光画像の画素位置毎に推定された法線ベクトルを補正する。法線ベクトルの補正にも、偏光カメラ30-1,30-2の内部パラメータ、外部パラメータ、および歪係数が用いられる。
【0041】
移動体10は、視差推定部57、ビジュアルオドメトリ部58、GPSセンサ59,IMU60、気圧計61、地磁気センサ62、および自己位置推定部63をさらに備える。
【0042】
視差推定部57は、平行化処理後の輝度画像を用いたステレオマッチングにより、輝度画像上の視差を推定する。視差推定部57は、推定された視差に基づいて、被写体までの距離(デプス)を表す点群データから構成される視差マップを出力する。
【0043】
ビジュアルオドメトリ部58は、平行化処理後の輝度画像に基づいて、ビジュアルオドメトリにより自機(移動体10)の軌道を推定し、自己位置推定部63に供給する。
【0044】
GPS(Global Positioning System)センサ59は、自機(移動体10)のGPS情報を取得し、自己位置推定部63に供給する。IMU(Inertial Measurement Unit)60は、自機(移動体10)の三次元の角速度と加速度を検出し、自己位置推定部63に供給する。気圧計61は、気圧を計測し、自己位置推定部63に供給する。地磁気センサ62は、地磁気を検出し、自己位置推定部63に供給する。GPSセンサ59,IMU60、気圧計61、地磁気センサ62それぞれもまた、図4のセンサ20を構成する各種のセンサの1つとされる。
【0045】
自己位置推定部63は、ビジュアルオドメトリ部58,GPSセンサ59,IMU60、気圧計61、地磁気センサ62それぞれにより得られたデータに基づいて、拡張カルマンフィルタを用いたセンサフュージョンを行う。これにより、自己位置推定部63は、自機(移動体10)の自己位置と速度ベクトルを算出することができる。
【0046】
移動体10は、障害物衝突判定部64とフライトコントローラ65をさらに備える。
【0047】
障害物衝突判定部64は、法線ベクトル補正部56からの法線ベクトル、視差推定部57からの視差マップ(点群データ)、および自己位置推定部63からの速度ベクトルに基づいて、移動体10の障害物との衝突可能性を判定する。
【0048】
障害物衝突判定部64は、分割部64a、算出部64b、および設定部64cを有している。
【0049】
分割部64aは、移動体10の進行方向の空間領域を、その進行方向に連続する小領域に分割する。以下においては、分割された小領域を、衝突判定領域という。算出部64bは、法線ベクトル、点群データ、および速度ベクトルに基づいて、分割部64aにより分割された衝突判定領域毎に、障害物との衝突リスクを算出する。設定部64cは、算出部64bにより算出された衝突判定領域毎の衝突リスクに基づいて、障害物の存在可能性のある障害物領域を設定する。
【0050】
そして、障害物衝突判定部64は、自機(移動体10)から障害物領域までの距離に基づいて、自機の移動を制御するための制御情報を生成する。すなわち、障害物衝突判定部64は、衝突リスクに基づいて、移動体10の移動を制御するための制御情報を生成する制御情報生成部としての機能を有する。
【0051】
フライトコントローラ65は、図4の移動制御部23に対応し、障害物衝突判定部64(制御情報生成部)により生成された制御情報に基づいて、移動体10の移動を制御する。
【0052】
なお、自機(移動体10)を操縦するためのコントローラから入力される制御信号に基づいて、障害物衝突判定部64が制御情報を生成したり、フライトコントローラ65が移動体10の移動を制御したりすることもできる。コントローラは、移動体10の移動をリアルタイムに制御するための制御信号を入力するだけでなく、例えば、目的地や移動経路などを制御信号として入力することもできる。この場合、フライトコントローラ65は、制御信号として入力された目的地や移動経路に基づいて、移動体10を自律移動させるように、移動体10の移動を制御する。
【0053】
(障害物検出処理)
図6および図7のフローチャートを参照して、図5の移動体10による障害物検出処理の流れについて説明する。
【0054】
ステップS11において、偏光カメラ30-1,30-2(偏光イメージセンサ51-1,51-2)は、偏光画像の撮像を開始する。
【0055】
ステップS12において、法線ベクトル推定部52は、偏光カメラ30-1または偏光カメラ30-2により撮像された偏光画像に基づいて法線ベクトルを推定する。
【0056】
ステップS13において、輝度画像構成部53-1,53-2は、それぞれ、偏光カメラ30-1,30-2により撮像された2視点の偏光画像から輝度画像を構成する。
【0057】
ステップS14において、平行化処理部54-1,54-2は、それぞれ、輝度画像構成部53-1,53-2により構成された2視点の輝度画像に対して平行化処理を行う。
【0058】
ステップS15において、法線ベクトル補正部56は、平行化処理部54-1,54-2による平行化処理に合わせて法線ベクトルを補正する。
【0059】
ステップS16において、視差推定部57は、平行化処理後の輝度画像から視差を推定する。
【0060】
ステップS17において、自己位置推定部63は、ビジュアルオドメトリ部58,GPSセンサ59,IMU60、気圧計61、地磁気センサ62それぞれにより得られたデータに基づいて、自機(移動体10)の自己位置と速度ベクトルを算出する。
【0061】
図7のステップS18に進み、障害物衝突判定部64の分割部64aは、自機(移動体10)からの測距精度に応じて、進行方向(速度ベクトル方向)の空間領域を衝突判定領域に分割する。
【0062】
図8を参照して、衝突判定領域の分割について説明する。
【0063】
例えば、分割部64aは、測距センサ(ステレオカメラとしての偏光カメラ30-1,30-2)の光軸方向Axについての距離分解能に応じた距離Drに基づいて、移動体10が通過する空間領域Saを、衝突判定領域Cdに分割する。測距センサの距離分解能は、自機から遠くなるほど精度が低くなることから、距離Drは、自機から遠くなるほど大きくなる。衝突判定領域Cdの速度ベクトルv方向(奥行き方向)の長さは、距離Drに応じて設定される。すなわち、衝突判定領域Cdの速度ベクトルv方向の長さは、自機から遠くなるほど大きくなる。
【0064】
図7のフローチャートに戻り、ステップS19において、算出部64bは、視差マップ(点群データ)から、進行方向(速度ベクトル方向)の空間領域に含まれる点群データを抽出する。
【0065】
ステップS20において、算出部64bは、抽出した点群データについての法線ベクトルに基づいて、衝突判定領域毎の衝突リスクを算出する。
【0066】
図9を参照して、衝突判定領域毎の衝突リスクの算出について説明する。
【0067】
図9においては、速度ベクトルv方向の空間領域Saが、1,2,3,・・・,k,k+1番目の衝突判定領域Cdに分割されており、衝突判定領域Cdそれぞれに含まれる点群データPcについての法線ベクトルnが示されている。
【0068】
ここで、k番目の衝突判定領域Cdに含まれる点群データの数iをN個とすると、k番目の衝突判定領域Cdの衝突リスクRは、以下の式(1)で表される。
【0069】
【数1】
【0070】
式(1)におけるRareaは、各点群データ1画素に対応する実空間の面積に比例する値である。図10に示されるように、点群データまでの距離をdとし、偏光カメラ30-1または偏光カメラ30-2の水平方向・垂直方向の焦点距離をそれぞれf,fとすると、Rareaは、以下の式(2)で表される。
【0071】
【数2】
【0072】
式(2)において、d/fとd/fの積が、点群データ1画素に対応する実空間の面積に比例し、ωareaは、固定の重みパラメータである。
【0073】
式(1)におけるRcountは、各点群データに対して一律に設定された値(重み)であり、以下の式(3)で表される。
【0074】
【数3】
【0075】
式(3)において、ωcountは、衝突判定領域Cdに含まれる点群データの総数であり、至近距離に障害物があった場合に、上述した実空間の面積に比例するRareaが小さくなりすぎることを防ぐための値である。
【0076】
式(1)におけるRnormalは、各点群データについての法線ベクトルnに基づいて算出される値(ゲイン)であり、速度ベクトルvと各点群データの法線ベクトルnの内積を用いて、以下の式(4)で表される。
【0077】
【数4】
【0078】
式(4)において、ωnormalは、固定の重みパラメータである。また、速度ベクトルvと各点群データの法線ベクトルnの内積の絶対値は、移動体10の進行方向と被写体の表面が向かい合うほど大きくなる。一方で、移動体10が地面の近くを低空飛行している場合であっても、移動体10の進行方向と地面表面の法線方向とは直交することから、速度ベクトルvと各点群データの法線ベクトルnの内積の絶対値は小さくなる。
【0079】
なお、速度ベクトルvと各点群データの法線ベクトルnは、いずれも移動体10を基準とした固定座標系におけるベクトルとされる。
【0080】
以上のようにして、衝突判定領域毎の衝突リスクが算出されると、ステップS20において、設定部64cは、算出された衝突判定領域毎の衝突リスクに基づいて、障害物の存在可能性のある障害物領域を設定する。
【0081】
図11を参照して、障害物領域の設定について説明する。
【0082】
図11においては、1番目からk+1番目の衝突判定領域Cdに対して、移動体10からの衝突判定領域Cdそれぞれまでの距離Dと、衝突判定領域Cdそれぞれの衝突リスクRが示されている。
【0083】
設定部64cは、衝突リスクRが所定の閾値Rthより高く、かつ、自機(移動体10)から最も近い衝突判定領域Cdを、障害物領域Obに設定する。図11の例では、衝突リスクRが所定の閾値Rthより高く、かつ、自機(移動体10)から最も近いk番目の衝突判定領域Cdが、障害物領域Obに設定される。
【0084】
図7のフローチャートに戻り、ステップS21において、障害物衝突判定部64は、速度ベクトルvに基づいて、現在の速度から、自機(移動体10)の停止に必要な停止可能距離(制動距離)を算出する。停止可能距離には、例えば5mなどのマージンが含まれてもよい。
【0085】
ステップS23において、障害物衝突判定部64は、障害物領域までの距離が、算出した停止可能距離より短いか否かを判定する。障害物領域までの距離が停止可能距離より短いと判定された場合、ステップS24に進む。
【0086】
例えば、図11の例において、障害物領域Obまでの距離Dobが停止可能距離より短い場合、現状のままでは障害物領域Obに存在し得る障害物に衝突するおそれがある。そこで、障害物領域までの距離が停止可能距離より短いと判定された場合、障害物衝突判定部64は、障害物より手前で停止可能な速度まで減速させるための制御情報を生成し、フライトコントローラ65に出力する。
【0087】
ステップS24において、フライトコントローラ65は、障害物衝突判定部64により生成された制御情報に基づいて、移動体10を減速させる。ここでは、障害物より手前で停止可能な速度まで減速させるための制御情報が生成されることで、移動体10を減速させるようにしたが、障害物より手前で停止させるための制御情報が生成され、移動体10を停止させるようにしてもよい。
【0088】
一方、図11の例において、障害物領域Obまでの距離Dobが停止可能距離より長い場合、障害物領域Obに存在し得る障害物より手前で停止可能であるので、ステップS24はスキップされる。
【0089】
その後、ステップS12に戻り、ステップS12乃至S24の処理が繰り返される。
【0090】
以上の処理によれば、自機の進行方向を撮像した偏光画像に基づいて推定された法線ベクトルを用いて、自機の移動が制御されるので、移動体10が低空飛行している場合であっても、障害物検出における誤判定を抑制することが可能となる。その結果、ユーザはより自然なマニュアル操縦を行うことができるようになる。
【0091】
<4.第2の実施形態>
第2の実施形態においては、図12に示されるように、高速飛行する移動体10が通過する空間領域Saにおいて、地面Gが障害物領域Obに含まれるような場合、単に減速させるだけでなく、補正軌道Ctにより障害物との衝突を回避することを実現する。
【0092】
(移動体の機能構成例)
図12は、本開示に係る技術を適用した第2の実施形態の移動体10の機能構成例を示すブロック図である。
【0093】
図12に示される移動体10Aは、基本的には図5の移動体10と同様の構成を備える。但し、図12の移動体10Aにおいて、障害物衝突判定部64は、分割部64a、算出部64b、および設定部64cに加え、代表法線ベクトル算出部64dと角加速度算出部64eを有している。
【0094】
代表法線ベクトル算出部64dは、設定部64cにより設定された障害物領域に含まれる点群データについての法線ベクトルに基づいて、その障害物領域における代表的な法線ベクトル(以下、代表法線ベクトルという)を算出する。
【0095】
角加速度算出部64eは、自機(移動体10A)が障害物領域に到達したときの速度ベクトルを予測し、その速度ベクトル(予測速度ベクトル)と、代表法線ベクトル算出部64dにより算出された代表法線ベクトルが直交するような角加速度を算出する。
【0096】
これにより、障害物衝突判定部64は、予測速度ベクトルと代表法線ベクトルが直交するように、自機の軌道を補正する制御情報を生成することができる。
【0097】
(障害物検出処理)
図14のフローチャートを参照して、図12の移動体10Aによる障害物検出処理の流れについて説明する。
【0098】
なお、図14のフローチャートにおけるステップS23までの処理は、図6および図7のフローチャートを参照して説明した、図5の移動体10による障害物検出処理の流れと同様にして実行される。
【0099】
すなわち、ステップS23において、障害物領域までの距離が停止可能距離より短いと判定された場合、ステップS50に進む。ステップS50において、障害物衝突判定部64は、軌道補正処理を実行する。
【0100】
図15は、軌道補正処理の流れについて説明するフローチャートである。
【0101】
ステップS51において、障害物衝突判定部64の代表法線ベクトル算出部64dは、障害物領域の代表法線ベクトルを算出する。
【0102】
図16を参照して、代表法線ベクトルを算出について説明する。
【0103】
図16のA図には、障害物領域Obに含まれる点群データPcについての法線ベクトルnが示されている。
【0104】
同B図には、障害物領域Obにおける法線ベクトルnの分布が示されている。代表法線ベクトル算出部64dは、法線ベクトルnの分布を解析し、障害物領域Obにおいて最も支配的な方向のベクトルを、同C図に示される代表法線ベクトルRnに決定する。
【0105】
以上のようにして、障害物領域の代表法線ベクトルが算出されると、ステップS52において、角加速度算出部64eは、自機(移動体10A)が障害物領域に到達したときの予測速度ベクトルと、代表法線ベクトルが直交する角加速度を算出する。
【0106】
具体的には、図17に示されるように、障害物領域Obの中心から代表法線ベクトルRnの方向に一定距離pだけ離れた位置において、予測速度ベクトルPvと代表法線ベクトルRnが直交するような補正軌道Ctの飛行を実現する角加速度が算出される。
【0107】
ステップS53において、障害物衝突判定部64は、角加速度算出部64eにより算出された角加速度が、所定値を超えるか否かを判定する。算出された角加速度が所定値を超えないと判定された場合、ステップS54に進む。
【0108】
ステップS54において、障害物衝突判定部64は、補正後の軌道(補正軌道)上に、衝突可能性のある物体に対応する点群データが存在するか否かを判定する。補正軌道上に衝突可能性のある物体に対応する点群データが存在しないと判定された場合、ステップS55に進む。このとき、障害物衝突判定部64は、角加速度算出部64eにより算出された角加速度を、自機の軌道を補正する制御情報として、フライトコントローラ65に出力する。
【0109】
ステップS55において、フライトコントローラ65は、障害物衝突判定部64により制御情報として出力された角加速度に基づいて、移動体10Aの姿勢を制御することで、自機の軌道を補正する。その後、ステップS12(図6)に戻り、ステップS12乃至S23,S50の処理が繰り返される。
【0110】
一方、ステップS53において、算出された角加速度が所定値を超えると判定されるか、ステップS54において、補正軌道上に衝突可能性のある物体に対応する点群データが存在すると判定された場合、ステップS56に進む。このとき、障害物衝突判定部64は、障害物より手前で停止可能な速度まで減速させるための制御情報を生成し、フライトコントローラ65に出力する。
【0111】
ステップS56において、フライトコントローラ65は、障害物衝突判定部64により生成された制御情報に基づいて、移動体10Aを減速させる。その後、ステップS12(図6)に戻り、ステップS12乃至S23,S50の処理が繰り返される。ここでも、障害物より手前で停止させるための制御情報が生成され、移動体10Aを停止させるようにしてもよい。
【0112】
以上の処理によれば、自機の進行方向を撮像した偏光画像に基づいて推定された法線ベクトルを用いて、自機の軌道が補正されるので、移動体10Aが高速飛行している場合であっても、障害物との衝突を回避することが可能となる。
【0113】
<5.第3の実施形態>
ジンバル機構を有するFPV(First Person View)カメラをドローンに搭載し、FPVカメラにより撮像された画像を、ユーザが操作するコントローラに送信することで、ユーザがその画像を見ながらドローンを遠隔操作することができる。しかしながら、FPVカメラにより撮像された画像では、ドローンが飛行する周辺環境の凹凸を視認しづらい場合がある。
【0114】
第3の実施形態においては、推定された法線ベクトルに基づいて生成された法線ベクトル画像を、FPVカメラにより撮像された画像に重畳することで、移動体10の遠隔操作時のユーザの補助を実現する。
【0115】
(移動体の機能構成例)
図18は、本開示に係る技術を適用した第3の実施形態の移動体10の機能構成例を示すブロック図である。
【0116】
図18に示される移動体10Bは、図5の移動体10と同様の構成に加え、RGBイメージセンサ111を有するFPVカメラ100、姿勢推定部112、座標変換部113、法線ベクトル画像生成部114、重畳部115、および送信部116を備える。なお、図18の移動体10Bにおいて、障害物衝突判定部64が、分割部64a、算出部64b、および設定部64cに加え、代表法線ベクトル算出部64dと角加速度算出部64eを有していてもよい。
【0117】
FPVカメラ100は、ジンバル機構を有し、様々なアングルで撮像することができる。FPVカメラ100が有するRGBイメージセンサ111は、画素上にR,G,Bのカラーフィルタが例えばベイヤ配列で配置されて構成され、RGB画像を撮像する。
【0118】
姿勢推定部112は、RGBイメージセンサ111により撮像されたRGB画像に基づいて、FPVカメラ100のカメラ座標系の原点位置を基準として、FPVカメラ100の現在の姿勢を推定する。
【0119】
座標変換部113は、偏光画像の画素位置毎の法線ベクトルから構成される法線ベクトルマップの座標系を、FPVカメラ100のカメラ座標系に変換する。法線ベクトルマップの座標変換には、視差推定部57からの視差マップ、自己位置推定部63からの自己位置、偏光カメラ30-1,30-2の姿勢情報、FPVカメラ100の偏光カメラ30-1,30-2との相対位置と現在の姿勢情報が用いられる。
【0120】
法線ベクトル画像生成部114は、座標変換された法線ベクトルマップに基づいて、法線ベクトルの向きに応じて色付けされた法線ベクトル画像を生成する。すなわち、FPVカメラ100のカメラ座標系に変換された法線ベクトル画像が生成される。
【0121】
重畳部115は、RGBイメージセンサ111により撮像されたRGB画像に、法線ベクトル画像生成部114により生成された法線ベクトル画像を重畳した重畳画像を生成する。
【0122】
送信部116は、図4の通信部21に対応し、重畳部115により生成された重畳画像を、自機(移動体10B)の制御信号を入力するためのコントローラに送信する。
【0123】
(重畳画像送信処理)
図19は、重畳画像処理の流れについて説明するフローチャートである。図19の処理は、図6および図7図14を参照して説明した障害物検出処理と並行して実行される。
【0124】
ステップS111において、FPVカメラ100(RGBイメージセンサ111)は、RGB画像を撮像する。
【0125】
ステップS112において、姿勢推定部112は、撮像されたRGB画像に基づいて、FPVカメラ100のカメラ座標系の原点位置を基準として、FPVカメラ100の現在の姿勢を推定する。
【0126】
ステップS113において、座標変換部113は、法線ベクトルマップの座標系を、FPVカメラ100のカメラ座標系に変換する。
【0127】
ステップS114において、法線ベクトル画像生成部114は、座標変換された法線ベクトルマップに基づいて、法線ベクトルの向きに応じて色付けされた法線ベクトル画像を生成する。
【0128】
ステップS115において、重畳部115は、RGBイメージセンサ111により撮像されたRGB画像に、法線ベクトル画像生成部114により生成された法線ベクトル画像を重畳する。
【0129】
図20を参照して、重畳画像の生成について説明する。
【0130】
図20に示されるRGB画像130が、暗い環境で撮像された画像や、コントラストの低い画像である場合、RGB画像130を見ながら移動体10Bを遠隔操作するユーザにとって、RGB画像130に映る被写体の凹凸を視認しづらい。
【0131】
そこで、法線ベクトル画像生成部114が、法線ベクトルマップに基づいて、法線ベクトルの向きに応じて色付けされた法線ベクトル画像140を生成し、重畳部115が、RGB画像130に法線ベクトル画像140を重畳した重畳画像150を生成する。
【0132】
これにより、被写体の凹凸を視認しやすい画像が得られる。
【0133】
図19のフローチャートに戻り、ステップS116において、送信部116は、重畳部115により生成された重畳画像を、自機(移動体10B)の制御信号を入力するためのコントローラに送信する。処理はステップS111に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0134】
以上の処理によれば、被写体の凹凸を視認しやすい画像を得ることができ、移動体10Bの遠隔操作時のユーザの補助を実現することが可能となる。
【0135】
なお、本実施形態において、FPVカメラ100を設けず、法線ベクトル画像のみがコントローラに送信されるようにしてもよい。
【0136】
<6.変形例>
以下においては、上述した実施形態の変形例について説明する。
【0137】
上述した実施形態においては、法線ベクトルの推定と測距を実現するセンサ20が、2視点のステレオカメラを構成する偏光イメージセンサ51-1,51-2により構成されるものとした。
【0138】
これに限らず、図21のA図に示されるように、センサ20が、偏光イメージセンサ51と、2視点のステレオカメラを構成するRGBイメージセンサ211-1,211-2により構成されてもよい。
【0139】
同様に、図21のB図に示されるように、センサ20が、偏光イメージセンサ51と、LiDAR(Light Detection and Ranging)やToF(Time of Flight)センサなどの測距センサ231により構成されてもよい。
【0140】
いずれの構成であっても、センサ20は、法線ベクトルの推定と測距を実現することができる。
【0141】
また、上述した実施形態においては、偏光イメージセンサにより取得された偏光画像に基づいて、法線ベクトルが推定されるものとした。
【0142】
これ以外にも、所定のセンサにより自機(移動体10)の進行方向がセンシングされたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定することもできる。例えば、一般的なステレオカメラやLiDARなどの測距用のデバイスにより取得されたデプス情報に対して所定の処理を施したデータに基づいて、法線ベクトルを推定することが可能である。
【0143】
上述した実施形態において、法線ベクトルを推定する構成(法線ベクトル推定部52)から、障害物との衝突を判定する構成(障害物衝突判定部64)までは、図4の制御部22により実現される。
【0144】
これらの構成は、図22に示される移動体制御システムにおいて、移動体310の移動が、例えばクラウド上に構成される情報処理装置320により制御される場合、情報処理装置320が備える制御部331により実現されてもよい。この場合、制御部331が、移動体310から送信されたセンサデータに基づいて法線ベクトルを推定し、その法線ベクトルに基づいて移動体310の移動を制御するための制御情報を生成する。生成された制御情報は、移動体310に送信される。
【0145】
以上の構成においても、移動体310が低空飛行している場合の、障害物検出における誤判定を抑制することが可能となる。
【0146】
本開示に係る技術を適用した移動体10は、地面の近くを低空飛行している場合において、その効果を奏するものとして説明したが、本開示に係る技術を適用した移動体10は、例えば壁面に沿って移動している場合においても、その効果を奏することができる。
【0147】
<7.コンピュータの構成例>
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0148】
図23は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0149】
コンピュータにおいて、CPU501,ROM(Read Only Memory)502,RAM(Random Access Memory)503は、バス504により相互に接続されている。
【0150】
バス504には、さらに、入出力インタフェース505が接続されている。入出力インタフェース505には、入力部506、出力部507、記憶部508、通信部509、およびドライブ510が接続されている。
【0151】
入力部506は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部507は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部508は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部509は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ510は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリなどのリムーバブルメディア511を駆動する。
【0152】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU501が、例えば、記憶部508に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース505およびバス504を介して、RAM503にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0153】
コンピュータ(CPU501)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア511に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0154】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア511をドライブ510に装着することにより、入出力インタフェース505を介して、記憶部508にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部509で受信し、記憶部508にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM502や記憶部508に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0155】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0156】
本開示の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0157】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0158】
さらに、本開示に係る技術は以下のような構成をとることができる。
(1)
自機の進行方向をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定する法線ベクトル推定部と、
前記法線ベクトルに基づいて、前記自機の移動を制御するための制御情報を生成する制御情報生成部と
を備える移動体。
(2)
前記法線ベクトルに基づいて、障害物との衝突リスクを算出する算出部をさらに備え、
前記制御情報生成部は、前記衝突リスクに基づいて、前記制御情報を生成する
(1)に記載の移動体。
(3)
前記算出部は、前記自機からの距離に応じた点群データについての前記法線ベクトルに基づいて、前記衝突リスクを算出する
(2)に記載の移動体。
(4)
前記進行方向の空間領域を前記進行方向に連続する衝突判定領域に分割する分割部をさらに備え、
前記算出部は、前記衝突判定領域に含まれる前記点群データについての前記法線ベクトルに基づいて、前記衝突判定領域毎の前記衝突リスクを算出する
(3)に記載の移動体。
(5)
前記分割部は、前記自機からの測距精度に応じて、前記空間領域を前記衝突判定領域に分割する
(4)に記載の移動体。
(6)
前記算出部は、前記衝突判定領域に含まれる前記点群データについて求められる、前記法線ベクトルと前記自機の速度ベクトルとの内積を用いて、前記衝突判定領域毎の前記衝突リスクを算出する
(4)または(5)に記載の移動体。
(7)
前記算出部は、前記衝突判定領域に含まれる前記点群データそれぞれの、前記内積と前記点群データに対応する実空間の面積に比例する値との積の総和に応じた値を、前記衝突判定領域の前記衝突リスクとして算出する
(6)に記載の移動体。
(8)
前記衝突リスクが所定の閾値より高く、かつ、前記自機から最も近い前記衝突判定領域を、前記障害物の存在可能性のある障害物領域に設定する設定部を備え、
前記制御情報生成部は、前記自機から前記障害物領域までの距離に基づいて、前記制御情報を生成する
(4)乃至(7)のいずれかに記載の移動体。
(9)
前記制御情報生成部は、前記自機から前記障害物領域までの距離が、前記自機の停止可能距離より短い場合、前記自機を減速させる前記制御情報を生成する
(8)に記載の移動体。
(10)
前記障害物領域に含まれる前記点群データについての前記法線ベクトルに基づいて、前記障害物領域における代表法線ベクトルを算出する代表法線ベクトル算出部をさらに備え、
前記制御情報生成部は、前記自機が前記障害物領域に到達したときの予測速度ベクトルと、前記代表法線ベクトルが直交するように、前記自機の軌道を補正する前記制御情報を生成する
(8)または(9)に記載の移動体。
(11)
前記制御情報生成部は、前記制御情報として、前記予測速度ベクトルと前記代表法線ベクトルが直交するような角加速度を算出する
(10)に記載の移動体。
(12)
前記制御情報生成部は、前記角加速度が所定値を超えず、かつ、補正後の前記軌道上に衝突可能性のある物体に対応する前記点群データが存在しない場合に、前記軌道を補正する前記制御情報を生成する
(11)に記載の移動体。
(13)
前記制御情報生成部は、前記角加速度が前記所定値を超えるか、または、補正後の前記軌道上に前記物体に対応する前記点群データが存在する場合、前記自機を減速させる前記制御情報を生成する
(12)に記載の移動体。
(14)
前記法線ベクトルに基づいて、法線ベクトル画像を生成する法線ベクトル画像生成部と、
FPV(First Person View)カメラにより撮像されたRGB画像に、前記法線ベクトル画像を重畳した重畳画像を生成する重畳部をさらに備える
(1)乃至(13)のいずれかに記載の移動体。
(15)
法線ベクトル画像生成部は、前記法線ベクトルの向きに応じて色付けされた前記法線ベクトル画像を生成する
(14)に記載の移動体。
(16)
法線ベクトル画像生成部は、前記FPVカメラの座標系に変換された前記法線ベクトル画像を生成する
(14)または(15)に記載の移動体。
(17)
前記自機の制御信号を入力するためのコントローラに、前記重畳画像を送信する送信部をさらに備える
(14)乃至(16)のいずれかに記載の移動体。
(18)
前記センサデータは、偏光イメージセンサにより撮像された偏光画像である
(1)乃至(17)のいずれかに記載の移動体。
(19)
移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、
前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報を生成する
移動制御方法。
(20)
コンピュータに、
移動体の進行方向の物体をセンシングしたセンサデータに基づいて、法線ベクトルを推定し、
前記法線ベクトルに基づいて、前記移動体の移動を制御するための制御情報を生成する
処理を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0159】
10 移動体, 20 センサ, 22 制御部, 30-1,30-2 偏光カメラ, 51,51-1,51-2 偏光イメージセンサ, 52 法線ベクトル推定部, 64 障害物衝突判定部, 64a 分割部, 64b 算出部, 64c 設定部, 64d 代表法線ベクトル算出部, 64e 角加速度算出部, 65 フライトコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23