(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173693
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】介護食用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/125 20160101AFI20221115BHJP
A23L 29/219 20160101ALI20221115BHJP
A23L 29/238 20160101ALN20221115BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20221115BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L29/219
A23L29/238
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079554
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】行光 由莉
【テーマコード(参考)】
4B018
4B025
4B041
【Fターム(参考)】
4B018MD34
4B018ME14
4B025LD03
4B025LG43
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH02
4B041LH07
4B041LH10
4B041LK11
4B041LK27
4B041LK41
4B041LP01
4B041LP13
4B041LP16
(57)【要約】
【課題】 咀嚼又は嚥下困難者用食品(以下、「介護食」ともいう。)は、これを摂食する患者の誤嚥を防止するために、硬さや粘度の調整が非常に重要であるところ、とくに冷凍解凍形態の介護食にあっては、解凍時の食品離水が誤嚥につながることがあり、その改善方法が常に望まれている。本発明の目的は、冷凍解凍によっても内部離水が抑制された介護食を提供すること、及びその介護食を調製するための組成物を提供することにある。
【解決手段】 硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10である、ワキシータピオカを原料とするヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉)を主に利用することにより、介護食、とくに、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだときの荷重値が20000N/m2以下である介護食における上記課題を解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を含んでなる、介護食の離水抑制用組成物。
【請求項2】
介護食が、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだときの荷重値が20000N/m2以下である、請求項1記載の介護食の離水抑制用組成物。
【請求項3】
硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を1~5質量%含み、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだときの荷重値が20000N/m2以下である介護食。
【請求項4】
硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を1~5質量%含み、冷凍解凍後において、圧縮速度1mm/秒で厚み93%まで圧縮して圧縮開始から1分後の離水率が22%未満である、請求項3記載の介護食。
【請求項5】
介護食の離水抑制方法であって、介護食100質量部中に、硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を1~5質量部含まれるよう添加する、介護食の離水抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍解凍後の内部離水が抑制された咀嚼又は嚥下困難者用の食品、及びその食品を調製するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼又は嚥下困難者とは、咀嚼機能又は飲み込み機能が低下した者をいい、このような病症は、主に加齢に伴い生じる。咀嚼・嚥下困難者は摂食時に窒息・誤嚥しやいため、咀嚼・嚥下困難者に食事を提供する際は、固形状食品であれば十分に柔らかくなるまで加熱してマッシャーなどで舌や歯茎で容易につぶすことができる状態にするか、ミキサーなどで飲み込みやすいペースト状態とする、ときにそれが液分離する状態であれば、気管に流入しないようゲル化剤でゲル化又はゾル化させて、咀嚼・嚥下困難者の咀嚼・嚥下に適切な物性とする工夫が要求される。しかし、ペーストをゲル化剤でゲル化又はゾル化させた場合であっても、経時的に又は冷凍解凍を繰り返すなどにより離水を生じてこれを誤嚥し、誤嚥性肺炎の危険が生じるため、そのような離水を極力抑える必要がある。
【0003】
咀嚼・嚥下困難者用の食品を簡便に調製するための補助剤等がこれまでに提案されている。例えば、加熱不可逆性のゲルを形成可能なカードランとセルロースを併用したゼリー状食品用ゲル化剤(特許文献1)や、カードランと加工デンプンを併用した咀嚼困難者用食品の離水抑制剤(特許文献2)が開示されている。また、温かい状態でも冷たい状態でも良好な物性を得るために、熱可逆性のある加熱凝固ゲル化剤(メチルセルロース又はヒドロキシピロピルメチルセルロース)と熱可逆性のある冷却凝固ゲル化剤(寒天、カラギナン、ファーセレラン、ジェランガム、ゼラチン、ローカストビーンガム及びキサンタンガム、グルコマンナン及びキサンタンガム、タラガム及びキサンタンガム、並びにカシアガム及びキサンタンガムより選ばれる1以上)を併用した摂食・嚥下補助剤が開示されている(特許文献3)。
【0004】
しかし、カードランを利用するゼリー状食品は、保形性が高く硬さがあるため、冷凍解凍による外部離水(食品外表からの自然離水)は抑制されるものの、内部離水(押圧したときに生じる食品内部からの離水)を抑える効果は弱く、実際に喫食した時に生じるこの内部離水を誤嚥する危険性があった。また、保形性が高く、硬さがあるため、食感が劣る。これは、熱可逆性のある加熱凝固ゲル化剤(置換型セルロース)により硬さが付与されたゼリー状食品についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-319048号公報
【特許文献2】国際公開WO2017/017953号
【特許文献3】特開2014-236700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷凍解凍によっても内部離水が抑制された咀嚼又は嚥下困難者用食品(以下、「介護食」ともいう。)を提供すること、及びその食品を調製するための組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、介護食の冷凍解凍後の内部離水を抑制する手段として、硬さを付与して離水を抑えることができるカードランや置換型セルロースを利用するのでなく、特定の加工澱粉、詳細にはワキシータピオカを原料とするヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉)を主に利用することにより、上記介護食における課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]から構成されるものであって、第一の発明は、以下の[1]及び[2]の食品調理補助組成物である。
[1]硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を含んでなる、介護食の離水抑制用組成物。
[2]介護食が、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだときの荷重値が20000N/m2以下である、上記[1]記載の介護食の離水抑制用組成物。
【0009】
第二の発明は、上記の離水抑制用組成物を利用した、以下の[3]及び[4]の介護食である。
[3]硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を1~5質量%含み、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだときの荷重値が20000N/m2以下である介護食。
[4]硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を1~5質量%含み、冷凍解凍後において、圧縮速度1mm/秒で厚み93%まで圧縮して圧縮開始から1分後の離水率が22%未満である、上記[3]記載の介護食。
【0010】
第三の発明は、以下[5]の介護食の離水方法である。
[5]介護食の離水抑制方法であって、介護食100質量部中に、硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10のヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシータピオカ澱粉を1~5質量部含まれるよう添加する、介護食の離水抑制方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物を利用することにより、咀嚼又は嚥下困難者が摂食するのに適した物性の食品(介護食)を簡便に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「介護食」とは、一般に、(1)健康増進法第43条第1項に基づく消費者庁長官の許可を受けて表示販売が可能となる「特別用途食品」の範疇にある「えん下困難者用食品」、(2)日本介護食品協議会が策定する自主規格「ユニバーサルデザインフード」(区分1~4)に該当する「高齢者食品」又は「そしゃく困難者食品」のいずれかをいうところ、本明細書における「介護食」の形態は、野菜、果物、豆、穀類、肉、魚介、卵、乳製品、若しくはこれらの加工食品などの食材をそのまま又は加熱し、マッシャーやミキサーなどの器具を用いて破砕、磨砕、裏ごしなどして得た破砕物、磨砕物若しくはペースト(以下、これらを単に「ペースト状食品」ともいう。)を、ゼリー状に保形し、冷凍後に加熱等することなく自然解凍して喫食する形態のものであるから、本明細書にいう「介護食」とは、具体的には、上記(2)の「ユニバーサルデザインフード」における「区分3」の物性規格「かたさ上限値20000N/m2」(ゲル)を満たす食品群に該当する。なお、当該かたさ値は、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだ際の荷重値である。
【0013】
本明細書でいう「離水抑制」とは、冷凍解凍後の食品を押圧したときに生じる食品内部からの離水(内部離水)の抑制をいい、食品外表からの自然離水(外部離水)の抑制とは区別される。そして、この内部離水は、対象食品試料を冷凍・解凍後、常温(20±2℃)において、押圧装置で圧縮して離水する水分量を測定して確認することができ、例えば、クリープメーター(CREEPMETER RE-33005B、(株)山電)において、直径55mmプランジャーを用いて圧縮速度1mm/秒でサンプルの厚みが当初の厚みの7%になるまで圧縮維持し、圧縮開始から1分間後の離水量(ろ紙などに吸水させて計量する)から算出される離水率(計算式は以下の[数1]に示す。)で判断することができ、複数回測定したときの平均の内部離水率が22%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは19%未満の範囲にあるときに、内部離水が抑制されたと評価できる。
【0014】
【0015】
本発明の「離水抑制剤」は、ワキシータピオカから抽出した澱粉に、酸化プロピレンを定法により作用させて得られる水酸基置換型加工澱粉、すなわち、ワキシータピオカ澱粉を原料とするヒドロキシプロピル化された澱粉を必須成分とし、好ましくは、当該ヒドロキシプロピル化の反応と同時又は異時に架橋化剤のトリメタリン酸ナトリウムやオキシ塩化リンなどを作用させて得られるヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を必須成分とする。そのヒドロキシプロピルによる置換度(澱粉を構成するグルコース残基の3つのフリーの水酸基すべてが置換されたときの置換度を3とする)やリン酸による架橋度(後述する方法で測定される沈降積)はとくに限定されるものではないが、本発明の効果をより効率的に得る観点から、置換度にあっては、0.03~0.2の範囲にあるものが好ましく、0.07~0.18、さらには0.09~0.16の範囲にあるものがより好ましい。また、ヒドロキシプロピル化の置換に加えて架橋処理された澱粉を用いる場合、その架橋度は低度であることが好ましく、具体的には10ml程度のものが好ましい。
【0016】
ここで、澱粉の架橋度の一般的な測定方法(以降、「定法」という。)は、以下である。まず、塩化アンモニウム26質量部、塩化亜鉛10質量部及び水64質量部からなる溶液15mlを、澱粉試料0.15gが秤量された試験管に注いで懸濁液とする。次に、これを沸騰浴中で10分間加熱後、流水で冷却し、10ml容メスシリンダーの10mlの目盛りまで流し込む。そして、25℃で20時間静置後、沈降物の目盛りを沈降積とする。しかし、この定法によって得られる沈降積値は、架橋度が低度のとき、具体的には9.5~10の範囲にあるときに、その架橋度の違いを詳細に区別することができず、本発明の必須成分となりうるヒドロキシプロピル化架橋澱粉を明確に選び出すことができない。すなわち、定法による沈降積の数値が同じ「10」であっても、本発明の必須成分とはなりえないヒドロキシプロピル化架橋澱粉も存在しうるという問題がある。
【0017】
そこで、本発明の必須成分となりうるヒドロキシプロピル化架橋澱粉を区別するための分析方法を検討したところ、以下の方法により区別できることがわかった。まず、硫酸ナトリウム0.23質量部及び水99.77質量部により調製した溶液15mlを、澱粉試料0.15gが秤量された試験管に注いで懸濁液とする。次に、これを沸騰浴中で10分間加熱後、流水で冷却し、10ml容メスシリンダーの10mlの目盛りまで流し込む。そして、25℃で20時間静置後、沈降物の目盛りを沈降積とする。本分析方法(以降、「硫酸ナトリウム法」という。)によれば、本発明の必須成分となりうるヒドロキシプロピル化架橋澱粉を選び出すことができ、当該分析値の場合、5~10mlであることが好ましく、6~10ml、7~10mlのものがより好ましい。
【0018】
本発明の組成物におけるワキシータピオカのヒドロキシプロピル化架橋澱粉の使用割合は、調製される咀嚼又は嚥下困難者用食品の内部離水防止の観点から、当該食品原料中において、1~5質量部であることが好ましく、内部離水防止に加えて咀嚼・嚥下時の好ましい食感を重視する場合は、1~3質量部、さらには1~2質量部とするのがよい。
【0019】
本発明の組成物の用途はいわゆるゼリー状の介護食であることから、食品を保形するためには少量のゲル化剤を使用する必要がある。もっとも、そのゲル化剤としては、上述のカードランや置換型セルロースでなく、カラギーナン及びローカストビーンガムのゲル化剤を使用することが好ましく、カラギーナン及びローカストビーンガムを適宜配合したもののほか、カラギーナンとローカストビーンガムを同時抽出した製品(例えば、三菱化学フーズ(株)社製品「ソアエースAW-200」など)を使用することもできる。このゲル化剤に対する、本発明の必須成分であるワキシータピオカのヒドロキシプロピル化架橋澱粉の適切な配合比は、ゲル化剤100質量部に対して50~600部が好ましく、100~400、150~300質量部がより好ましい。また、そのゲル化剤におけるローカストビーンガムとカラギーナンの配合比は、40~95:60~5であることが好ましく、60~90:40~10、75~85:25~15質量部がより好ましい。
【0020】
以下、本発明について具体的に詳述するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【実施例0021】
<ヒドロキシルプロピル化リン酸架橋澱粉の調製>
40℃に加温した水120質量部に硫酸ナトリウムを20質量部溶解した溶液に100質量部のワキシータピオカ澱粉を懸濁してスラリーを作製し、3%水酸化ナトリウムでpH11.4~11.5に調整した。そこにトリメタリン酸ナトリウム(TMP)を0.06、0.08、0.1、0.15、0.25又は1.05質量部添加し、さらにプロピレンオキサイドを各7.0質量部添加した。20時間後、10%硫酸で中和し、水洗・脱水・乾燥をして、ワキシータピオカ澱粉をヒドロキシルプロピル化リン酸架橋した試作品(試作品No.1~6、DSはすべて0.13)を得た。
【0022】
<人参ゼリー状食品の調製方法>
各澱粉を用いて人参ゼリー状食品を作製し、冷凍解凍時の内部離水について評価した。まず、人参ペースト120g、食塩0.5g、醤油1.2g、グラニュー糖2g、ゲル化剤((三菱化学フーズ株式会社製品「ソアエースAW-200」: ローカストビーンガム(66%)とカラギーナン(17%)をあらかじめ溶解させた後、溶解液から再度同時に抽出した製品)2g、澱粉(試作品No.1~6)4g及び水274.3gをミキサー(FMI社製の「ロボークブリクサー(BLIXER-3D型))に入れ、5分間攪拌して完全に均一化した。この均一化したペーストをレトルト袋に充填し、スチームコンベクション(ホシザキ社製「スチームコンベクションオーブン(MIC-5TB3)」、スチームモード90℃)で15分間加熱してから、熱いうちに直径5.5cm、高さ2.5cmのプラスティック製ゼリーカップに50gずつ充填し、-20℃で3日間冷凍保存した。
【0023】
<人参ゼリー状食品の内部離水率の測定及び評価>
冷凍保存した人参ゼリー状食品を冷蔵庫(4℃)に1日置いて解凍し、以下の[表1]の方法で内部離水を測定した。なお、以下の人参ゼリー状食品は、冷凍前、解凍後のいずれの場合もすべて、クリープメーター(山電(株)「RE2-3305B」)を用いて直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプルの厚みの70%まで(サンプルの厚みが当初の厚みの70%になるまで)押し込んだときのかたさが、20000N/m2以下である。
【0024】
【0025】
<各澱粉を使用した人参ゼリー状食品の内部離水率>
以下の[表2]に、各加工澱粉を添加した人参ゼリー状食品の内部離水を評価した結果を示す。「レアタップST」と「松谷ゆり8」は、いずれもヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であって、沈降積が同じであるのに、内部離水率が大きく異なっていた。原料違いに起因する効果とも考えられたが、加工度による違いとも考えられたため、以降、この加工度について詳細に検討することとした(表3)。
【0026】
【0027】
【0028】
試作品1と試作品3は、いずれも原料がワキシータピオカ澱粉であって、定法による沈降積が同じ10.0であるのに、試作品1の内部離水率は低く非常に良好である一方、試作品2、3の内部離水率は試作品1より高く、やや劣っていた。また、「松谷ゆり8」(タピオカ原料)は、定法による沈降積が10.0であって、内部離水率は非常に劣っていた。これらの結果から、タピオカ原料よりもワキシータピオカ原料の澱粉のほうが内部離水率を低く保つことができ、沈降積は少なくとも10.0程度であることが好ましいものの、それだけでは十分でないことがわかった。そこで、沈降積数値について詳細に検討したところ、硫酸ナトリウム0.23質量部及び水99.77質量部により調製した溶液15mlを、澱粉試料0.15gが秤量された試験管に注いで懸濁液とし、次に、これを沸騰浴中で5分間加熱後に流水で冷却し、10ml容メスシリンダーの10mlの目盛りまで流し込み、25℃で20時間静置後の沈降物の目盛りを沈降積としたとき(以下、「硫酸ナトリウム法」という。)の数値が4.5以下のときに、内部離水抑制効果が低いことがわかった。また、当該硫酸ナトリウム法による沈降積数値が4.5を超えるときであっても、原料がワキシータピオカでないときは、内部離水抑制効果が低いことがわかった(例えば、試験区2)。
【0029】
<澱粉の添加量の検討>
人参ゼリー状食品における当該澱粉の適切な添加量を検討した。人参ゼリー状食品の調製方法は、上述のとおりであり、内部離水率の結果は以下の(表4)に示す。
【0030】
【0031】
以上より、硫酸ナトリウム法による沈降積が5~10であるワキシータピオカ澱粉原料のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉をペースト状食品中に少なくとも1.0質量%添加することにより、介護食で問題となる冷凍解凍後の内部離水を抑制しつつ、食感のよい食品を提供することができる。