(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173694
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】搬送台車
(51)【国際特許分類】
B60B 33/02 20060101AFI20221115BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20221115BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B60B33/02
B62B3/00
B60B33/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079558
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】柳崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】竹島 弓
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
(57)【要約】
【課題】旋回走行に加えて直進走行が可能な搬送台車を提供すること。
【解決手段】ヨークの内側に車輪を軸支し、前記車輪の車軸に直交する回転軸を中心に前記ヨークが取付け座に対して旋回する自在キャスタに、前記ヨークの両側面に外側から固定したブラケットに受けパイプを固定した旋回制御治具が組み付けられた治具付きキャスタと、複数の前記治具付きキャスタが縦横に並べて取り付けられた台車本体とを有し、縦または横に並んだ複数の前記治具付きキャスタの各々の前記受けパイプに連結棒を挿入して前記治具付きキャスタの旋回を規制する搬送台車であり、例えば、前記治具付きキャスタは、コの字形のブラケットの中間部分に前記受けパイプが固定された前記旋回制御治具が、前記ブラケットの両端部に形成された貫通孔を通したボルトによって前記ヨークにねじ止めされ前記自在キャスタと一体になっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークの内側に車輪を軸支し、前記車輪の車軸に直交する回転軸を中心に前記ヨークが取付け座に対して旋回する自在キャスタに、前記ヨークの両側面に外側から固定したブラケットに受けパイプを固定した旋回制御治具が組み付けられた治具付きキャスタと、
複数の前記治具付きキャスタが縦横に並べて取り付けられた台車本体と、
を有し、
縦または横に並んだ複数の前記治具付きキャスタの各々の前記受けパイプに連結棒を挿入して前記治具付きキャスタの旋回を規制する搬送台車。
【請求項2】
前記治具付きキャスタは、コの字形のブラケットの中間部分に前記受けパイプが固定された前記旋回制御治具が、前記ブラケットの両端部に形成された貫通孔を通したボルトによって前記ヨークにねじ止めされ前記自在キャスタと一体になった請求項1に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記貫通孔が形成された前記ブラケットの端部と、前記タップ穴が形成された前記ヨークとの間には、前記ボルトを通す貫通孔の形成されたスペーサが挟み込まれた請求項2に記載の搬送台車。
【請求項4】
縦または横に並んだ複数の前記治具付きキャスタを任意に選択し、各々の前記受けパイプに対して前記連結棒の挿入が可能な請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦横に並べられた複数のキャスタが取り付けられ、旋回走行に加えて直進走行が可能な搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内などで装置や数多くのワークなど重量物を作業者が運ぶことがあり、そうした場合には搬送台車が使用される。搬送台車は、前後左右に複数のキャスタが取り付けられ、作業者が押したり引いたりすることによって移動させることができる。搬送台車の車輪には直進性に優れた固定キャスタや、旋回可能な自在キャスタが用いられる。工場のような狭い場所で荷物を搬送する場合には、自在キャスタを使用した搬送台車の方が、小回りが効いて使いやすい。しかし、装置などの荷物を搬送場所にある程度正確に止めたい場合があり、車輪の位置が定まり難い自在キャスタよりも固定キャスタの方が好ましいこともある。ただし、固定キャスタを使用した搬送台車は、小回りを効かせた狭い場所の移動に適していない。
【0003】
下記特許文献1および特許文献2には自在キャスタを使用した台車などに関し、直進走行を可能にする構成が開示されている。特許文献1の第1従来例は、車輪を回転自在に保持したヨークに、取付け座に軸支されたレバーが係合するよう構成されたキャスタを備え、そのレバーがヨークの旋回の自由な状態と規制された状態とに切り替えられる台車である。特許文献2の第2従来例は、第1従来例のキャスタが衝撃や振動に対する信頼性が低いため、そうした課題を解決する構成の移動式足場が開示されている。その移動式足場は、縦横に複数のキャスタが設けられ、各々の車軸には単クランプが取り付けられている。そして、走行方向に並んだ複数のキャスタの単クランプに1本の鉄パイプが固定され、連結された全てのキャスタの旋回が規制されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-072306号公報
【特許文献2】実用新案登録第3169164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記第2従来例は、移動式足場のような大きなものを対象としており、キャスタの数が多いため走行方向に沿った各列全のキャスタを鉄パイプで連結しなければならない。一方、工場で使用する搬送台車は、少ないものであればキャスタの数が前後左右の4個であるため、第2従来例を適用した場合には左右一方の2個のキャスタ同士を鉄パイプ連結するものであってもよい。しかし、直進走行するのに左右一方のキャスタだけを拘束し、他方のキャスタが自由であると左右のバランスが悪く、単クランプ部分の固定部に負荷がかかってしまう。そうした第2従来例は、第1従来例の課題を解決するため鉄パイプの強度によって衝撃や振動に対する信頼性を高めてはいるが、単クランプ部分の固定部の剛性は低いと言わざるを得ない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、旋回走行に加えて直進走行が可能な搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送台車は、ヨークの内側に車輪を軸支し、前記車輪の車軸に直交する回転軸を中心に前記ヨークが取付け座に対して旋回する自在キャスタに、前記ヨークの両側面に外側から固定したブラケットに受けパイプを固定した旋回制御治具が組み付けられた治具付きキャスタと、複数の前記治具付きキャスタが縦横に並べて取り付けられた台車本体とを有し、縦または横に並んだ複数の前記治具付きキャスタの各々の前記受けパイプに連結棒を挿入して前記治具付きキャスタの旋回を規制する。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、連結棒を使用しない場合は、台車本体に固定した取付け座に対してヨークが旋回する自在キャスタそのままの機能を治具付きキャスタが発揮するため、搬送台車を旋回移動させることが可能である。一方で、縦または横に並んだ複数の治具付きキャスタに対して各々の受けパイプに連結棒が挿入されると、当該治具付きキャスタはヨークの旋回が規制されることによって固定キャスタとして機能し、搬送台車を直進移動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】搬送台車の一実施形態を示した斜視図である。
【
図2】搬送台車の一実施形態を示した斜視図である。
【
図3】搬送台車の一実施形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る搬送台車の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1、
図2及び
図3は、本実施形態の搬送台車を示した斜視図であり、
図1および
図2は、一方向(A方向)の直進走行を示した角度の異なる斜視図であり、
図3は、直交する他方向(B方向)に切り替えた直進走行を示した斜視図である。搬送台車1は、フレーム状の台車本体3に4個の治具付きキャスタ5が縦横つまり前後左右に固定されている。台車本体3は、複数の角パイプが溶接された長方形のフレームであり、角に位置する角部材11に長梁部材12や短梁部材13がそれぞれ平行に溶接で固定されている。
【0011】
台車本体3には長梁部材12の下に4個の固定板15が溶接で固定され、それぞれに治具付きキャスタ5がネジ止め固定されている。
図4は、そうした治具付きキャスタ5を示した分解斜視図であり、
図5は、治具付きキャスタ5を下側から示した分解図である。本実施形態の治具付きキャスタ5は、市販の自在キャスタ20が使用され、特に部品を交換するような改良もされていない。具体的には、その自在キャスタ20に旋回制御治具30が一体に組み付けられたものである。なお、治具付きキャスタ5は、安価なものとするため自在キャスタ20にはいわゆる汎用品が使用されているが特注品としてもよい。
【0012】
先ず、自在キャスタ20は、固定板15にネジ止めするための取付け座21を有し、そこにベアリング22を介してヨーク23が旋回可能に組み付けられている。又形状のヨーク23には車輪25が入り込み、車軸24によって回転可能に支持されている。次に、旋回制御治具30は、一定幅の短冊状の板材がコの字形に折り曲げられたブラケット31を有し、そのブラケット31の中間部分313に対して長手方向に中心線Opが沿うように円筒形状の受けパイプ32が溶接で固定されている。その旋回制御治具30は、ブラケット31がヨーク23にネジ止めによって固定され、自在キャスタ20と一体になってキャスタ5を構成している。
【0013】
ヨーク23は、車輪25を挟んだ左右両側にタップ穴27が上下2か所に形成され、ブラケット31は、タップ穴27に対応するように両端部に2か所ずつ貫通孔33が形成されている。そして、貫通孔33を通したボルト34がタップ穴27に螺合することにより、受けパイプ32の中心線Opが車軸24と平行であって、自在キャスタ20の回転軸Ozとは直交するようにして固定される。ところで、本実施形態の治具付きキャスタ5に使用する自在キャスタ20は、ヨーク23の形状が
図5に示すように円弧部分231があり、ブラケット31は、その円弧部分231よりも広く開いた寸法で形成されている。従って、組付け時にはブラケット31の貫通孔33とヨーク23のタップ穴27との距離が離れてしまうめ、その間を埋めるべくスペーサ35が両側に設けられている。
【0014】
スペーサ35は、所定の厚さ寸法の小片であり、タップ穴27に合わせて2か所の貫通孔と中央に大きな穴があけられている。市販されている自在キャスタは様々なものがあり、同程度のサイズであってもヨーク23の形状などが異なると、旋回制御治具30が同じようには取り付けられない場合がある。そこで、ブラケット31が様々なヨーク23にねじ止め固定できるように、厚さを調節したスペーサ35が用いられる。
【0015】
搬送台車1は、こうした治具付きキャスタ5が台車本体3の前後左右に位置するように縦横の4か所に取り付けられている。そして、
図1に一点鎖線で示すように、例えば重量のある装置が荷物50として台車本体3に載せられ、車輪25の回転によって自由に移動させることができる。通常時の治具付きキャスタ5は自在キャスタ20そのものの機能を果たすことができ、回転軸Ozを中心にして車輪25が旋回するため自由な方向に移動させることができる。しかし、搬送台車1を直進させたい場合には、自由に旋回してしまう自在キャスタ20の動きが安定した直進走行を妨げることになる。
【0016】
そこで、搬送台車1を直進させる場合には、進行方向に対して直交する左右の治具付きキャスタ5を対象とし、その受けパイプ32に径を合わせた円筒形状の1本の連結パイプ6が挿入される。これにより回転軸Ozを中心にして旋回可能だった左右の治具付きキャスタ5は、それぞれが連結パイプ6によって拘束され、共に車輪25の姿勢が一定になって固定キャスタとして機能することになる。
図1および
図2は、連結パイプ6に拘束された左右の治具付きキャスタ5が搬送台車1の前輪となって矢印Aで示す方向に直進するようにしたものである。後輪側より前輪側を固定キャスタとして機能させることが、搬送台車1の直進走行を安定させるためである。
【0017】
図1および
図2に示す搬送台車1は、連結パイプ6が長梁部材12と平行になるように取り付けた状態での直進走行である。例えば、そうしたA方向に直進走行させた後、荷物50の向きをそのままにして、矢印Bで示す90度変えた方向に直進走行させたい場合がある。このような場合、搬送台車1は、
図1および
図2に示す状態から
図3に示す状態への切り換えが行われる。すなわち、治具付きキャスタ5から連結パイプ6が取り外され、短梁部材13と平行な方向に並んだ2個の治具付きキャスタ5を対象とし、車輪25の向きを変えて各々の受けパイプ32に連結パイプ6が挿入される。
【0018】
よって、本実施形態の搬送台車1は、治具付きキャスタ5が通常は自在キャスタ20そのものの機能によって旋回走行が自由であるのに対し、2個の治具付きキャスタ5の受けパイプ32に連結パイプ6が挿入されることによって固定キャスタとして機能し、旋回を規制して安定した直進走行が可能になる。搬送台車1は、前後左右を特定することなく縦横に4個のキャスタ5を並べて構成されているため、連結パイプ6の差し替えによって直進走行の方向を切り替えることができる。
【0019】
治具付きキャスタ5は、市販の自在キャスタ20にタップ穴27を形成しただけで旋回制御治具30の組み付けが可能であるため、非常に安価に提供することができる。また、治具付きキャスタ5は、旋回制御治具30がスペーサ35を介して組み付ける構成であるため、特定の自在キャスタ20に限定されることはない。
【0020】
旋回制御治具30は、旋回制御治具30がヨーク23を抱えるように固定されたものであり、自在キャスタ20に対する一体感に優れたコンパクトな構成になっている。また、デザイン的にも優れている。更に、治具付きキャスタ5は、旋回制御治具30の組み付け状態が剛性の高い構成になっている。旋回制御治具30が、コの字形のブラケット31に受けパイプ32が固定された単純な構造であり、それがヨーク23を抱えるようにした状態で両側から合計4本のボルト34によって固定されているからである。
【0021】
本実施形態の治具付きキャスタ5と第2従来例のキャスタは、ともに自在キャスタを基に構成されているため、車輪25が床面などの凹凸によって外力が作用すると、旋回を規制している部分に応力がかかる。第2従来例の場合は、車輪の片側で車軸に取り付けられ鉄パイプに拘束された単クランプの連結部であって剛性が低く破損しやすい。これに対して、本実施形態の治具付きキャスタ5は、前述したように剛性が高い構造であるため破損し難い。また、治具付きキャスタ5は左右対称であって、搬送台車1に関しても左右対称であるため直進走行性に優れている。
【0022】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、縦横に4個の治具付きキャスタ5を取り付けた搬送台車1を例に挙げて説明したが、キャスタの数が縦横それぞれに更に数を増やした搬送台車であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1…搬送台車 3…台車本体 5…治具付きキャスタ 6…連結パイプ 11…角部材 12…長梁部材 13…短梁部材 20…自在キャスタ 21…取付け座 23…ヨーク 25…車輪 27…タップ穴 30…旋回制御治具 31…ブラケット 32…受けパイプ 34…ボルト 35…スペーサ