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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173697
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】生成器および管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
G01N22/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079561
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 博之
(57)【要約】
【課題】膨大な計算を行うことなく試料を管理する。
【解決手段】試料Sを管理するための管理用データMDを生成する生成器2であって、試料Sを変化させるエネルギーを発射するエネルギー発射部21と、前記エネルギーを付えられた試料Sが前記変化時に発する信号を受信する信号受信部22と、前記信号に前記変化に関する識別情報を付加して管理用データMDを生成する識別情報付加部23と、を備えることを特徴とする生成器2。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を管理するための管理用データを生成する生成器であって、
前記試料を変化させるエネルギーを発射するエネルギー発射部と、
前記エネルギーを付えられた前記試料が前記変化時に発する信号を受信する信号受信部と、
前記信号に前記変化に関する識別情報を付加して前記管理用データを生成する識別情報付加部と、
を備えることを特徴とする生成器。
【請求項2】
前記識別情報は、前記変化時の時間を示す情報であることを特徴とする請求項1に記載の生成器。
【請求項3】
前記変化は不可逆変化であることを特徴とする請求項1または2に記載の生成器。
【請求項4】
前記信号は、光学的、電気的、および、電磁的のいずれか1以上の信号であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の生成器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の生成器と、
前記管理用データを記録する記録器と、
を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項6】
前記記録器は、
複数の前記管理用データを結合した結合データを格納する記憶装置と、
前記結合データに基づいて、前記試料の真正性を判別する判別部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
前記記録器を複数備え、
各記録器は、
前記記憶装置から前記結合データを検出する検出部と、
前記検出された前記結合データを、他の記録器の保管部に記録されている前記結合データと照合する照合部と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の製造および流通などを管理するための管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックチェーンと呼ばれる、暗号化技術を使ってリンクされた、2つの当事者間の取引を効率的かつ検証可能で恒久的な方法で記録することができるオープンな分散型台帳が登場した(例えば、特許文献1~3)。取引を改竄不能とする点においては、ブロックチェーン技術によって取引の完全性と真正性を担保することができる。しかし、取引が行われていくに従い、一つ一つのブロックについて計算機によって膨大な暗号計算を持続的に行わなければならない。そのため、消費される電力が多大となり、持続可能な手法としては課題を孕む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/014611号
【特許文献2】特開2021-018514号公報
【特許文献3】特表2020-525869
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、ブロックチェーンを物理的に存在するもの(物質)に適用する場合、マークやバーコードなどの印や記憶素子を物質に添付することとなる。しかし、そのような技術は開示されておらず、そうした印や記憶素子と物質との間の同一性は担保できないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、膨大な計算を行うことなく試料を管理することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、物質が変化するときに発する信号が固有のものであることに着目し、これをタイムスタンプなどの識別情報と結び付けることによりブロックチェーン技術のような真正性を担保できる試料の管理が可能となることを見出した。
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
項1.
試料を管理するための管理用データを生成する生成器であって、
前記試料を変化させるエネルギーを発射するエネルギー発射部と、
前記エネルギーを付えられた前記試料が前記変化時に発する信号を受信する信号受信部と、
前記信号に前記変化に関する識別情報を付加して前記管理用データを生成する識別情報付加部と、
を備えることを特徴とする生成器。
項2.
前記識別情報は、前記変化時の時間を示す情報であることを特徴とする項1に記載の生成器。
項3.
前記変化は不可逆変化であることを特徴とする項1または2に記載の生成器。
項4.
前記信号は、光学的、電気的、および、電磁的のいずれか1以上の信号であることを特徴とする項1~3のいずれかに記載の生成器。
項5.
項1~4のいずれかに記載の生成器と、
前記管理用データを記録する記録器と、
を備えることを特徴とする管理システム。
項6.
前記記録器は、
複数の前記管理用データを結合した結合データを格納する記憶装置と、
前記結合データに基づいて、前記試料の真正性を判別する判別部と、
を備えることを特徴とする項5に記載の管理システム。
項7.
前記記録器を複数備え、
各記録器は、
前記記憶装置から前記結合データを検出する検出部と、
前記検出された前記結合データを、他の記録器の保管部に記録されている前記結合データと照合する照合部と、
を備えることを特徴とする項6に記載の管理システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膨大な計算を行うことなく試料を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る管理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】(a)、(b)および(d)は、信号受信部が受信した光学的信号の一例であり、(c)および(e)はそれぞれ、(b)および(d)に示す光学的信号を複数の信号成分に分解したものである。
図3】管理用データの一例である。
図4】結合データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る管理システム1の概略構成を示すブロック図である。管理システム1は、試料Sの製造および流通を管理するシステムであり、生成器2と、記録器3とを備えている。生成器2は、1または複数設けられており、各記録器3とインターネットなどのネットワークNを介して通信可能である。記録器3は、複数設けられており、各記録器3は、他の記録器3とネットワークNを介して通信可能である。
【0012】
生成器2は、試料Sを管理するための管理用データMDを生成する装置である。生成器2が複数設けられている場合、生成器2の構成は互いに同一であることができる。なお、各生成器2に記録器3の機能を持たせてもよい。
【0013】
試料Sは、有体物であれば特に限定されず、固体であっても液体であってもよい。本実施形態では、試料Sは、特に、製品としての真正性を担保する必要がある物体であり、以下では、試料Sが自動車に用いられる部品であるものとして説明する。試料Sは、生成器2に対して所定の位置に固定される。
【0014】
生成器2は、エネルギー発射部21と、信号受信部22と、識別情報付加部23と、通信部24とを備えている。
【0015】
エネルギー発射部21は、試料Sを変化させるエネルギーを発射する。本実施形態では、エネルギー発射部21は、一定の閾値以上のエネルギーを有するマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置である。試料Sにおける照射部位はあらかじめ定められおり、照射部位には、上記閾値以上のエネルギーを有するマイクロ波によって不可逆変化する分解型メタマテリアルが含まれている。
【0016】
なお、照射部位に目印となるマーキング等が施されてもよい。また、照射部位は試料Sの一部であっても全部であってもよいが、照射部位の大きさは、マイクロ波照射による変化によって試料Sの製品として品質に影響を与えない程度であることが好ましい。さらに、照射部位は、試料Sに付されたラベル等であってもよい。
【0017】
信号受信部22は、エネルギー発射部21によってエネルギーを与えられた試料Sが変化時に発する信号を受信する。エネルギー発射部21から試料Sにマイクロ波が照射されると、照射部位に含まれる分解型メタマテリアルの少なくとも一部が不可逆的に変化するとともに、変化した部位から光学的信号を発する。本実施形態では、信号受信部22は、試料Sから発せられる光学的信号を受信するフォトダイオードである。
【0018】
図2(a)、(b)および(d)は、信号受信部22が受信した光学的信号の一例である。光学的信号は、光の波長成分ごとの強度分布(スペクトル)として表される。
【0019】
識別情報付加部23は、信号受信部22が受信した信号に試料Sの変化に関する識別情報を付加して管理用データMDを生成する。本実施形態では、前記識別情報は、前記変化時(信号受信時)の時間を示す情報(タイムスタンプ)であり、例えば、時間が2021年3月30日13時35分25秒の場合、「20210330133525」という数字列が識別情報となる。
【0020】
図3は、管理用データMDの一例である。管理用データMDでは、信号受信部22が受信した信号に識別情報が紐付けられている。
【0021】
通信部24は、管理用データMDをネットワークNを介して記録器3に送信する。通信部24は、ハブ等を介して全ての記録器3に管理用データMDを送信してもよいし、1つの記録器3のみに管理用データMDを送信し、当該1つの記録器3から他の全ての記録器3に管理用データMDを転送してもよい。また、通信部24は、図示しない暗号化部によって暗号化された管理用データMDを記録器3に送信してもよい。
【0022】
本実施形態において、生成器2は合計3つ設けられる。1つ目の生成器2は、試料Sに他の部品が組み合わされる製造ラインに設けられ、2つ目の生成器2は、試料Sを自動車に組み込む組立ラインに設けられ、3つ目の生成器2は、自動車の流通経路に設けられる。これにより、1つの試料Sに対して3回マイクロ波の照射が行われ、3つの管理用データMDが生成されることとなる。
【0023】
1回目の照射によって得られた光学的信号が図2(a)に示す光学的信号S1であるとする。光学的信号S1は、1回目の照射によって変化した部分から発せられたものである。2回目の照射によって得られた光学的信号が図2(b)に示す光学的信号S2であるとする。光学的信号S2は、図2(c)に示す信号成分S21,S22を重畳させたものであり、信号成分S21は、1回目の照射によって変化し、かつ2回目の照射では変化していない部分から発せられた成分であり、信号成分S21は、1回目の照射によって変化し、かつ2回目の照射でさらに変化した部分から発せられた成分である。さらに、3回目の照射によって得られた光学的信号が図2(d)に示す光学的信号S3であるとする。光学的信号S3は、図2(e)に示す信号成分S31,S32,S33を重畳させたものであり、信号成分S31は、1回目の照射によって変化し、かつ2回目の照射および3回目の照射では変化していない部分から発せられた成分であり、信号成分S32は、1回目および2回目の照射で変化し、かつ3回目の照射では変化していない部分から発せられた成分であり、信号成分S33は、1~3回目のすべての照射で変化した部分から発せられた成分である。
【0024】
光学的信号S1,S2,S3は、それぞれタイムスタンプと紐付けられ、1つの試料Sに対して3つの管理用データMDが生成され、記録器3に送信される。さらに、通常の生産ラインでは、同じ部品が量産されるため、所定数の試料Sの各々に対して、上記と同様に3つの管理用データMDが生成される。
【0025】
ここで、複数の試料Sが互いに同じ材質であっても、マイクロ波の照射による変化は固有の一回性のものであり、変化態様は厳密には全て異なるため、変化時に発せられる光学的信号は、互いに類似するものの、完全に同一の波形になることはない。そのため、管理用データMDに含まれる信号の波形は、材質および照射回数が同じ試料Sであっても、互いに異なることとなる。また、光学的信号S2の波形から光学的信号S1の波形を推測すること、および光学的信号S3の波形から光学的信号S2の波形を推測することは不可能である。
【0026】
図1に示す記録器3は、後述する結合データBDを他の記録器3とともに分散管理する装置であり、例えば汎用のコンピュータで構成することができる。記録器3は、ハードウェア構成として、CPUやGPUなどのプロセッサ(図示省略)、SRAMやDRAMなどの主記憶装置(メモリ、図示省略)、およびHDDやSSDなどの補助記憶装置31を主に備えている。
【0027】
記録器3の通信部32は、生成器2および他の記録器3とネットワークNを介して通信するインターフェースである。通信部32は、生成器2からの管理用データMDを受信したり、他の記録器3と後述する結合データBDを送受信したりする。
【0028】
また、記録器3は、機能ブロックとして、保管部33と、判別部34と、検出部35と、照合部36と、暗号化部37と、復号化部38とを備えている。これらの機能ブロックは、記録器3のプロセッサが所定のプログラムをメモリに読み出して実行することによりソフトウェア的に実現することができる。
【0029】
保管部33は、生成器2から受信した管理用データMDを補助記憶装置31に格納する機能を有している。補助記憶装置31には、過去に各生成器2から受信した複数の管理用データMDを結合した結合データBDが格納されている。換言すると、結合データBDは、複数の管理用データMDがリスト化された台帳である。保管部33は、通信部32が新たに管理用データMDを受信した場合、当該管理用データMDを結合データBDの末尾に結合させる。
【0030】
図4は、結合データBDの一例である。結合データBDでは、複数の管理用データMDが結合されており、図2(a)に示す光学的信号S1を含む管理用データMD、図2(b)に示す光学的信号S2を含む管理用データMD、および図2(d)に示す光学的信号S3を含む管理用データMDが含まれている。
【0031】
判別部34は、結合データBDに基づいて、試料Sの真正性を判別する機能を有している。本実施形態において、真正性とは、試料Sが正規の工程を経ていること、試料Sに不正品等が含まれていないこと等を意味する。
【0032】
例えば、結合データBDにおける各回数の照射に対応する結合データBDの数は、試料Sの個数と一致しなければならない。仮に、結合データBDの数が試料Sの個数よりも少ない場合は、一部の試料Sについて管理用データMDが生成されなかったこととなるため、当該一部の試料Sが正規の工程を経ていない(工程飛ばし等)と判断できる。つまり、全ての試料Sが正規の工程を経ているか否かの判別が可能となる。
【0033】
また、試料Sの材質が同じであれば、各回数の照射に対応する結合データBDに含まれる信号の波形は互いに類似する。そのため、結合データBDにおける各回数の照射に対応する結合データBDの数が試料Sの個数と一致している場合であっても、各回数の照射に対応する結合データBDに、信号の波形が他と大きく異なる結合データが存在している場合は、異なる材質の試料Sが含まれていると判断できる。つまり、試料Sに不正品等が含まれているか否かの判別が可能となる。
【0034】
また、試料Sの材質が同じであっても、マイクロ波照射による変化時に発せられる光学的信号が完全に同一の波形になることはない。また、マイクロ波照射による変化は不可逆で一回性のものであるため、1つの試料Sに対して、複数の同じ波形の信号を得ることはできない。そのため、結合データBDにおける結合データBDに信号の波形が完全に同一の結合データBDが2つ以上存在している場合は、管理用データMDの数を整合させるために信号の改竄(コピー)が行われたと判断できる。そして、各管理用データMDでは、信号に識別情報(タイムスタンプ)が付加されているため、複数の試料Sの中から不正な試料Sを判別できる。
【0035】
なお、本実施形態では、試料Sに対して、製造ライン、組立ライン、および流通経路において、管理用データMDの生成が行われるが、消費者に製品が引き渡された後に管理用データMDの生成を行ってもよい。この場合、試料Sに対しマイクロ波の照射が合計4回行われることとなるが、試料Sに工程飛ばしや不正品利用が存在したり、試料Sを用いた製品が不正売買されていた場合は、信号の波形が1~3回目のマイクロ波照射時の波形と類似したり、全く類似しない波形となる。つまり、消費者側でも、試料S(または試料Sを用いた製品)が不正なものであるか否かを判別できる。
【0036】
また、記録器3に記録された結合データBDが改竄されると、判別部34が試料Sの真正性を正確に判別することができなくなる。そこで、本実施形態では、結合データBDを複数の記録器3によって分散管理することにより、結合データBDの改竄を防止している。
【0037】
各生成器2から送信された管理用データMDは、全ての記録器3に送信されるため、各記録器3の補助記憶装置31には、同じ内容の結合データBDが格納されることとなる。図1に示す検出部35、照合部36、暗号化部37、および復号化部38は、結合データBDを複数の記録器3で分散管理して、結合データBDの堅牢性を確保するための機能ブロックである。
【0038】
検出部35は、補助記憶装置31に格納されている結合データBDを検出する(読み出す)機能を有している。検出部35によって検出された結合データBDは、照合部36に入力される。同時に、暗号化部37が公開鍵を用いて結合データBDを暗号化し、暗号化された結合データBDは通信部32によって他の記録器3に送信される。他の記録器3においても、上記と同様の処理が行われ、暗号化された結合データBDが送信される。
【0039】
復号化部38は、他の記録器3から送信され、通信部32によって受信された結合データBDを秘密鍵を用いて復号化し、照合部36に入力する。照合部36は、検出部35によって検出された結合データBDを、復号化部38から入力された結合データBD(すなわち、他の記録器3に記録されている結合データ)と照合する。その結果、両者が異なる場合、いずれかの結合データBDが改竄されている可能性があるため、照合部36は、エラーメッセージの表示等により、結合データBDに不正がある旨がユーザに通知する。
【0040】
このような記録器3間での結合データBDの照合を行い、結合データBDを複数の記録器3で分散管理することにより、結合データBDに対する不正を防止できる。これにより、例えば、結合データBDに同じ波形の信号を含む管理用データMDが2つ存在する場合に、1つの記録器3において管理用データMDの信号の波形を改竄したとしても、記録器3間での結合データBDの照合により改竄が発覚することとなるため、結合データBDの堅牢性が確保される。
【0041】
なお、結合データBDの暗号化および復号化は省略してもよい。
【0042】
(付記事項)
本実施形態では、ブロックチェーン技術におけるハッシュ関数を用いた計算を行う代わりに、試料の不可逆変化時に発せられる信号にタイムスタンプ等の識別情報を付加することにより、試料を管理するための管理用データを生成している。試料の材質が同じであっても、不可逆変化の態様は固有のものであるため、信号と識別情報とが一体化した管理用データより、試料の不可逆プロセスの固有性が担保される。よって、膨大な計算を行うことなく、試料の製造および流通などを管理することができる。さらに、管理用データを結合した結合データを複数の記録器によって分散管理することで、結合データに対する改竄防止性能を高めることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0044】
上記実施形態では、エネルギー発射部が試料に不可逆変化を生じさせていたが、可逆変化であってもよい。試料が可逆変化を多数回繰り返すと、試料から同じ波形の信号が得られる可能性があるが、当該可能性が実用上無視できるほど低い場合は、不可逆変化に限定する必要はない。
【0045】
また、上記実施形態では、信号に付加される識別情報が、変化時の時間を示すタイムスタンプであったが、識別情報はこれに限定されない。例えば、タイムスタンプの代わりに、変化時の時間を逆算できる情報を識別情報として用いてもよい。具体的には、試料におけるマイクロ波の照射部位に、放射性同位体を含有させておき、照射部位の変化時における放射性同位体の存在比率と、放射性同位体が放射性崩壊を開始した時間とを識別情報としてもよい。そのような放射性同位体としては、通常の製品寿命の観点から半減期が50年未満であり、安全性の観点からα崩壊、β崩壊又はEC崩壊するものが好ましく、例えば、Be、22Na、44Ti、49V、195Au、208Po、210Pbが挙げられる。さらに、試料の製造番号に照射回数を組み合わせたものを識別情報として用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、試料に変化を生じさせるためにマイクロ波を用いていたが、本発明ではこれに限定されない。照射部位に含まれる分子と、変化を生じさせるエネルギーを与える方法との組み合わせの一例を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
また、上記実施形態では、信号受信部が受信する信号は光学的信号であったが、信号の種類はこれに限定されず、電気的信号や電磁的信号などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、様々な分野の製品の管理に適用できる。例えば、工業製品であれば、上記実施形態において説明した自動車用部品の他、電子部品や建築用部材などが挙げられる。また、偽造防止の要請が特に高い貨幣や紙幣の製造管理に特に好適である。その他、食品、薬品、武器などの管理にも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 管理システム
2 生成器
21 エネルギー発射部
22 信号受信部
23 識別情報付加部
24 通信部
3 記録器
31 補助記憶装置
32 通信部
33 保管部
34 判別部
35 検出部
36 照合部
37 暗号化部
38 復号化部
BD 結合データ
MD 管理用データ
N ネットワーク
S 試料
S1 光学的信号
S2 光学的信号
S3 光学的信号
図1
図2
図3
図4