IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パロマの特許一覧

<>
  • 特開-ガスコンロ 図1
  • 特開-ガスコンロ 図2
  • 特開-ガスコンロ 図3
  • 特開-ガスコンロ 図4
  • 特開-ガスコンロ 図5
  • 特開-ガスコンロ 図6
  • 特開-ガスコンロ 図7
  • 特開-ガスコンロ 図8
  • 特開-ガスコンロ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173710
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/10 20060101AFI20221115BHJP
   F24C 3/02 20060101ALI20221115BHJP
   F23D 14/06 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F24C3/10 F
F24C3/02 H
F23D14/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079582
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光藤 公一
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA02
3K017AB03
(57)【要約】
【課題】着火時の火力が大きくても、点火をより確実に行いやすいガスコンロを実現する。
【解決手段】ガスコンロ1において、点火部100は、ガイド溝140と、点火ターゲット150と、笠部130とを備える。ガイド溝140は、複数の火移り炎孔溝33Bのうち一部の炎孔溝を流れたガスを、フランジ部32の径方向外側に導く。点火ターゲット150は、ガイド溝140よりも径方向外側に少なくとも一部が設けられ、放電プラグ10との間で放電ギャップZを形成する。笠部130は、ガイド溝140よりも径方向外側に延び、点火ターゲット150の周囲の空間を上側から覆う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給するバーナ本体と、
筒状部と、前記筒状部から張り出すフランジ部とを備え、前記バーナ本体に装着されるバーナキャップと、
放電プラグと、
を有し、
前記バーナキャップが、前記フランジ部の外周部に設けられる複数の炎孔溝と、前記放電プラグとの間で放電ギャップを形成する点火部と、を備えるガスコンロであって、
複数の前記炎孔溝は、
前記バーナ本体から供給されるガスを前記フランジ部の中心側から外側に向かって誘導する経路をなす溝であり、前記バーナ本体の対向面との間で主炎孔を構成する複数の主炎孔溝と、
二つの前記主炎孔溝の間に設けられ、前記対向面との間で火移り炎孔を構成する複数の火移り炎孔溝と、
を含み、
複数の前記主炎孔溝の一部である2つの第1炎孔溝は、前記フランジ部の周方向において前記点火部の両側に隣接し、
複数の前記火移り炎孔溝の一部である第2炎孔溝は、前記周方向において2つの前記第1炎孔溝の間に配置され、
前記点火部は、
前記第2炎孔溝を流れたガスを前記フランジ部の径方向外側に導くガイド溝と、
前記ガイド溝よりも前記径方向外側に少なくとも一部が設けられ、前記放電プラグとの間で前記放電ギャップを形成する点火ターゲットと、
前記ガイド溝よりも前記径方向外側に延び、前記点火ターゲットの周囲の空間を上側から覆う笠部と、
を備え、
前記ガイド溝と前記点火ターゲットと前記笠部とが一体的に構成されるとともに、前記径方向外側に延びる構成をなす
ガスコンロ。
【請求項2】
前記笠部の下面は、湾曲面を有し、
前記湾曲面の高さは、前記点火ターゲットから離れるにつれて低位置となっている
請求項1に記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記ガイド溝及び前記点火ターゲットの領域の前記径方向の長さと、前記点火ターゲットから前記笠部の前記径方向先端までの前記径方向の長さとが、略同一である
請求項1又は請求項2に記載のガスコンロ。
【請求項4】
前記第2炎孔溝は、前記ガイド溝の下側に出口部が設けられる保炎孔溝を有し、
前記出口部は、前記径方向に沿った流出経路を構成し、
前記保炎孔溝の入口部は、前記径方向に対して傾斜した流入経路を構成する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガスコンロ。
【請求項5】
前記フランジ部は、複数の前記主炎孔溝の端部が設けられる外周面を有し、
前記点火部は、前記外周面において2つの前記第1炎孔溝の間に連結されるとともに前記外周面から前記径方向の外側に延びる厚肉部と、前記厚肉部よりも薄く構成されるとともに前記厚肉部から前記径方向の外側に延びる薄肉部と、を有し、
前記厚肉部において、前記点火ターゲットと前記ガイド溝とが設けられ、
前記薄肉部において、前記笠部が設けられ、
前記笠部の下面は、前記点火ターゲットの下端部よりも上方に設けられる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるガスバーナにおいて、バーナヘッドには、径方向外側に突出する点火用突起部が設けられている。点火用突起部は、イグナイタに対向して配置される。このガスバーナでは、イグナイタを、点火用突起部との間で放電させることによって、火移り部に対応する三つの五徳爪用保炎口から噴出するガスに引火される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-20706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガスバーナは、点火用突起部とイグナイタとの間で放電がなされた場合、点火用突起部付近の火移り部に設けられた三つの五徳爪用保炎口から噴出するガスに引火され、この火移り部を起点として、底面視時計回りと反時計回りに火炎が移るように動作する。しかし、このようなガスコンロでは、着火時の火力が大きい火力(例えば、大火力)であると、点火用突起部(点火ターゲット)付近のガスの流れが速くなりすぎてしまい、点火性能が十分に担保されない懸念がある。
【0005】
本開示は、着火時の火力が大きくても、点火をより確実に行いやすいガスコンロを実現することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つであるガスコンロは、
ガスを供給するバーナ本体と、
筒状部と、前記筒状部から張り出すフランジ部とを備え、前記バーナ本体に装着されるバーナキャップと、
放電プラグと、
を有し、
前記バーナキャップが、前記フランジ部の外周部に設けられる複数の炎孔溝と、前記放電プラグとの間で放電ギャップを形成する点火部と、を備えるガスコンロであって、
複数の前記炎孔溝は、
前記バーナ本体から供給されるガスを前記フランジ部の中心側から外側に向かって誘導する経路をなす溝であり、前記バーナ本体の対向面との間で主炎孔を構成する複数の主炎孔溝と、
二つの前記主炎孔溝の間に設けられ、前記対向面との間で火移り炎孔を構成する複数の火移り炎孔溝と、
を含み、
複数の前記主炎孔溝の一部である2つの第1炎孔溝は、前記フランジ部の周方向において前記点火部の両側に隣接し、
複数の前記火移り炎孔溝の一部である第2炎孔溝は、前記周方向において2つの前記第1炎孔溝の間に配置され、
前記点火部は、
前記第2炎孔溝を流れたガスを前記フランジ部の径方向外側に導くガイド溝と、
前記ガイド溝よりも前記径方向外側に少なくとも一部が設けられ、前記放電プラグとの間で前記放電ギャップを形成する点火ターゲットと、
前記ガイド溝よりも前記径方向外側に延び、前記点火ターゲットの周囲の空間を上側から覆う笠部と、
を備え、
前記ガイド溝と前記点火ターゲットと前記笠部とが一体的に構成されるとともに、前記径方向外側に延びる構成をなす。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術によれば、着火時の火力が大きくても、点火をより確実に行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のガスコンロを概略的に例示する斜視図である。
図2図2は、第1実施形態のガスコンロに用いられるガスバーナを例示する斜視図である。
図3図3は、図2のガスバーナの断面概略図である。
図4図4は、図2のガスバーナの一部を分解して示す分解斜視図である。
図5図5は、図2のガスバーナのバーナキャップ本体を下方側から見た斜視図である。
図6図6は、図5のバーナキャップ本体の底面図である。
図7図7は、第1実施形態のガスコンロ用のガスバーナを中心軸線及び点火ターゲットの位置(図6におけるA-Aの位置)で切断した切断面の一部を概略的に示す断面概略図である。
図8図8は、図5のバーナキャップ本体における点火部付近を拡大して示す斜視図であり、バーナキャップ本体を裏返した状態を示す斜視図である。
図9図9は、図6の底面図における点火部付近を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔5〕の特徴は、矛盾しない組み合わせでどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕 ガスを供給するバーナ本体と、
筒状部と、前記筒状部から張り出すフランジ部とを備え、前記バーナ本体に装着されるバーナキャップと、
放電プラグと、
を有し、
前記バーナキャップが、前記フランジ部の外周部に設けられる複数の炎孔溝と、前記放電プラグとの間で放電ギャップを形成する点火部と、を備えるガスコンロであって、
複数の前記炎孔溝は、
前記バーナ本体から供給されるガスを前記フランジ部の中心側から外側に向かって誘導する経路をなす溝であり、前記バーナ本体の対向面との間で主炎孔を構成する複数の主炎孔溝と、
二つの前記主炎孔溝の間に設けられ、前記対向面との間で火移り炎孔を構成する複数の火移り炎孔溝と、
を含み、
複数の前記主炎孔溝の一部である2つの第1炎孔溝は、前記フランジ部の周方向において前記点火部の両側に隣接し、
複数の前記火移り炎孔溝の一部である第2炎孔溝は、前記周方向において2つの前記第1炎孔溝の間に配置され、
前記点火部は、
前記第2炎孔溝を流れたガスを前記フランジ部の径方向外側に導くガイド溝と、
前記ガイド溝よりも前記径方向外側に少なくとも一部が設けられ、前記放電プラグとの間で前記放電ギャップを形成する点火ターゲットと、
前記ガイド溝よりも前記径方向外側に延び、前記点火ターゲットの周囲の空間を上側から覆う笠部と、
を備え、
前記ガイド溝と前記点火ターゲットと前記笠部とが一体的に構成されるとともに、前記径方向外側に延びる構成をなすガスコンロ。
【0011】
〔1〕に記載のガスコンロは、バーナ本体から第2炎孔溝に供給されたガスは、ガイド溝を通って放電ギャップ付近に供給される。このように放電ギャップ付近にガスが供給された状態で、放電プラグと点火ターゲットとの間で放電がなされると、放電ギャップ付近のガスが着火され、周方向に火炎が移るように点火がなされる。仮に、ガイド溝を通って放電ギャップ付近に流れ込むガスの流速がある程度大きくても、点火ターゲットの周囲の空間を上側から覆う笠部によってガスが受けられ、ガスが減速されやすいため、着火直後の炎が吹き消される事態は生じにくい。よって、このガスコンロは、着火時の火力が大きくても、点火をより確実に行いやすい。
【0012】
〔2〕 前記笠部の下面は、湾曲面を有し、前記湾曲面の高さは、前記点火ターゲットから離れるにつれて低位置となっている〔1〕に記載のガスコンロ。
【0013】
〔2〕に記載のガスコンロは、笠部の下面が湾曲面を有し、湾曲面は、点火ターゲットの付近において点火ターゲットから離れるにつれて低位置となるようなドーム状であるため、点火ターゲット付近に流れ込んだガスがより減速されやすく、より滞留しやすい。よって、このガスコンロは、点火をより一層確実に行いやすい。
【0014】
〔3〕 前記ガイド溝及び前記点火ターゲットの領域の前記径方向の長さと、前記点火ターゲットから前記笠部の前記径方向先端までの前記径方向の長さとが、略同一である
〔1〕又は〔2〕に記載のガスコンロ。
【0015】
点火ターゲットから笠部の径方向先端までの径方向の長さが小さすぎるとガスを減速させる効果が低減し、大きすぎると、主炎孔溝からの火炎によって炙られやすくなる。〔3〕に記載のガスコンロのように、点火ターゲットから笠部の径方向先端までの径方向の長さが、ガイド溝及び点火ターゲットの領域の径方向の長さと略同一であれば、ガスを減速させる効果と、主炎孔溝からの火炎による炙りを抑える効果とのバランスをとることができる。
【0016】
〔4〕 前記第2炎孔溝は、前記ガイド溝の下側に出口部が設けられる保炎孔溝を有し、
前記出口部は、前記径方向に沿った流出経路を構成し、
前記保炎孔溝の入口部は、前記径方向に対して傾斜した流入経路を構成する
〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載のガスコンロ。
【0017】
〔4〕に記載のガスコンロは、保炎孔溝を介してガイド溝にガスを供給する際に、保炎孔溝の入口部において径方向に対して傾斜した方向にガスを流入させ、その後、出口部において、径方向に沿った流出経路でガスを流すことができる。このように保炎孔溝においてガスを流す向きを強制的に変える構成であるため、保炎孔溝でもガスを減速させることができる。よって、保炎孔溝でガスを減速させる効果と、笠部付近でガスを減速させる効果とが、相乗効果を発揮し、点火性能を格段に高めることができる。
【0018】
〔5〕 前記フランジ部は、複数の前記主炎孔溝の端部が設けられる外周面を有し、
前記点火部は、前記外周面において2つの前記第1炎孔溝の間に連結されるとともに前記外周面から前記径方向の外側に延びる厚肉部と、前記厚肉部よりも薄く構成されるとともに前記厚肉部から前記径方向の外側に延びる薄肉部と、を有し、
前記厚肉部において、前記点火ターゲットと前記ガイド溝とが設けられ、
前記薄肉部において、前記笠部が設けられ、
前記笠部の下面は、前記点火ターゲットの下端部よりも上方に設けられる
〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載のガスコンロ。
【0019】
〔5〕に記載のガスコンロは、点火部の根元部分に厚肉部を設けて強固に構成しつつ、相対的に厚く構成された部分においてより確実に点火を行うことができる。更に、厚肉部の径方向外側に薄肉部が配置され、その部分に笠部が設けられるため「点火ターゲットの径方向の外側に笠部が設けられ、笠部の下面が点火ターゲットの下端部よりも上方に設けられる構成」をより簡易且つコンパクトに実現しやすい。しかも、「笠部の下面が点火ターゲットの下端部よりも上方に設けられる構成」であるため、径方向外側に向かうガスを笠部の下面で受けやすく、そのガスが笠部付近で滞留しやすい。
【0020】
<第1実施形態>
以下では、第1実施形態のガスコンロ用のガスバーナ4、5、6を備えたガスコンロ1、等が説明される。
【0021】
1.ガスコンロの概要
図1で示されるガスコンロ1は、例えば、キャビネット(図1では図示省略)に組み込まれるビルトインコンロである。ガスコンロ1は、ガスバーナ(コンロバーナ)4,5,6、筐体2、天板3、グリル部8、などを備える。
【0022】
以下の説明では、図1で示されるガスコンロ1において、板状に構成された天板3の板面方向のうち第1方向が前後方向である。上記板面方向は、天板3の上面をなす所定の平坦面と平行な平面方向である。以下で説明される代表例(図1等)では、天板3を平面視したときの短手方向が第1方向であり前後方向である。上記代表例(図1等)では、天板3の上記板面方向のうち、上記第1方向と直交する第2方向が左右方向である。上記代表例(図1等)では、天板3を平面視したときの長手方向が第2方向であり左右方向である。上記前後方向と直交する方向且つ上記左右方向と直交する方向が上下方向である。上記代表例(図1等)では、天板3の板厚方向が第3方向であり上下方向である。
【0023】
図1に示される筐体2は、例えば公知の金属材料を主体として構成される。筐体2は、ガスコンロ1の外郭部を構成する。筐体2は、ガスバーナ4,5,6やその他の部品の一部又は全部を収容する。筐体2は、左右方向両側に一対の側壁部を備え、これら一対の側壁部の後端部に連結される形で後壁部(図1では図示省略)が設けられる。筐体2の前面部(図1では図示省略)は、フレーム状又は壁状に構成されており、例えば、上述の一対の側壁部に架け渡される形で配置されるフレーム部などを有する。さらに、これら前面部、一対の側壁部、後壁部の下部には底壁部(図1では図示省略)が連結されている。筐体2は、これら前面部、一対の側壁部、後壁部、底壁部によって自身の内部空間が囲まれる構成をなし、上端部が開口した箱状形態をなしている。
【0024】
図1に示される天板3は、筐体2の上端部に固定される。天板3は、筐体2の上端部の開口を部分的又は全体的に閉塞する構成で筐体2上に配置される。天板3は、平面視矩形状の板状形態をなしている。天板3には、ガスバーナ4,5,6を露出させるための複数個の開口部(貫通孔)3A,3B,3Cが設けられている。
【0025】
図1に示されるガスバーナ4,5,6は、天板3に形成された各開口部3A,3B,3Cにそれぞれ対応するように設けられている。天板3における右端寄りかつ前端寄りの位置に設けられた開口部3Aに挿入される形態でガスバーナ4が配置されている。天板3における左端寄りかつ前端寄りの位置に設けられた開口部3Bに挿入される形態でガスバーナ5が配置されている。天板3における左右方向中央部且つ後端寄りの位置に設けられた開口部3Cに挿入される形態でガスバーナ6が配置されている。筐体2の左右方向中央部付近には、グリル部8が設けられている。グリル部8は、箱状に構成されたグリル庫(図1では、詳細な図示は省略)、グリル庫を開閉するグリル扉8A、ガスバーナとして構成されるとともにグリル庫内に配置されるグリルバーナ(図1では、詳細な図示は省略)、などを備える。
【0026】
図1のように、ガスコンロ1の前面部においてガスコンロ1の右端寄りの位置には、2つの点火ボタン11,14が設けられている。ガスコンロ1の前面部においてガスコンロ1の左端寄りの位置には、2つの点火ボタン12,13が設けられている。点火ボタン11は、ガスバーナ4の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン12は、ガスバーナ5の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン13は、ガスバーナ6の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン14は、グリル部8のガスバーナの点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。各点火ボタン11,12,13,14は、前方側から視認可能な構成かつ前方側からの操作が可能な構成で配置されている。各点火ボタン11,12,13,14のいずれも、前方側に突出した突出位置と突出位置よりも後方側に退避した後退位置とに変位可能に構成されている。各点火ボタン11,12,13,14のいずれも、回転可能に構成され、各点火ボタン11,12,13,14の回転位置によって各々のボタンに対応するガスバーナの火力が調整される。
【0027】
天板3に設けられた複数の開口部3A,3B,3Cは貫通孔である。開口部3A内には、ガスバーナ4の頭部を構成するバーナキャップ21が配置される。開口部3B内には、ガスバーナ5の頭部を構成するバーナキャップ22が配置される。開口部3C内には、ガスバーナ6の頭部を構成するバーナキャップ20が配置される。2つのバーナキャップ21,22は互いに同一の構成をなす。バーナキャップ21,22とバーナキャップ20は、サイズが異なる点以外は同様の構成をなす。天板3上には、各バーナキャップ20,21,22をそれぞれ囲むように金属製の五徳7がそれぞれ設けられている。
【0028】
2.ガスバーナの概要
以下では、主に、ガスバーナ6の構成及び動作について詳述される。
図2図3のように、ガスバーナ6は、バーナ本体6Aと、バーナ本体6Aに装着されるバーナキャップ20と、を備える。ガスバーナ6は、筐体2内で支持されつつ、筐体2に対して直接的に又は他部材を介して間接的に固定される。ガスバーナ6は、開口部3Cを介して天板3の上側及び下側に跨っている。
【0029】
図2図3に示されるバーナ本体6Aは、燃焼ガスを供給するための部品である。バーナ本体6Aは、主に、円筒状の下方配置部6Bと、下方配置部6Bに連結されるスロート部6Cとを備える。下方配置部6Bは、バーナキャップ20に対して下方側から対向する部分である。下方配置部6Bは、自身の内部に混合気室6Zを形成する部分であり、混合気室6Z内の空間の外側を囲む構成をなす。下方配置部6Bは、例えば、バーナキャップ本体30のフランジ部32を受けて支持する。スロート部6Cは、下方配置部6Bから延びる筒状の部分であり、気体を流動させる管路を構成する部分である。スロート部6Cは、燃料ガスと燃焼用空気とを混合させる混合管として機能する。図3に示される混合気室6Zは、スロート部6C(図2)の内部と連通する。混合気室6Zは、スロート部6Cを介して供給される燃料ガスと燃焼用空気とを混合する空間を構成する。
【0030】
図2図3に示されるバーナキャップ20は、バーナヘッドとして機能する。バーナキャップ20は、バーナ本体6Aに装着される部品であり、下方配置部6Bの上方に配置される部品である。バーナキャップ20は、全体として環状に構成されている。バーナキャップ20は、環状のバーナキャップ本体30と、バーナキャップ本体30に固定されるカバー体40と、を備える。バーナキャップ20は、バーナキャップ本体30とカバー体40とが互いに組み付けられる。バーナキャップ本体30は、自身の外周部に炎孔溝33が形成された部品である。カバー体40は、バーナキャップ本体30を覆う部品である。図1に示されるように、いずれかの炎孔溝33の近傍には、点火用の放電プラグ10と火炎検出用の熱電対(図示略)と、が設けられている。図2図4等では、一部の炎孔溝33の符号のみが図示されているが、炎孔溝33は、バーナキャップ本体30の周方向全体にわたって多数形成されている。
【0031】
図2図3のように、下方配置部6B及びバーナキャップ20の中央を貫通するように温度センサ9が配置されている。温度センサ9は、五徳7上に載置される調理器具(調理鍋等)の底に接触してこの調理器具底部の温度を検知するように機能する。図3では、温度センサ9以外の部品が断面で示されており、温度センサ9は、側面視した構成が概略的に示される。図3は、主炎孔溝33Aを通り中心軸線Gを通る切断面で切断した断面を概略的に示す図である。
【0032】
図1に示されるガスコンロ1では、例えば、点火ボタン13に対して点火操作(押圧操作)がなされると、図2図3に示されるバーナ本体6Aに対し、一次空気と共に燃料ガスが供給され、混合気となってバーナ本体6Aに装着されたバーナキャップ20の多数の炎孔溝33から流出する。点火ボタン13に対して点火操作(押圧操作)がなされると、ガスコンロ1の内部に設けられた図示しないコントローラが、図2図3に示されるバーナキャップ20に近接する放電プラグ10をスパークさせて混合気に点火し、このバーナキャップ20の周囲に火炎を生じさせる。これにより、バーナキャップ20の周囲の五徳7上に載置される調理器具の底部を加熱することができ、加熱調理が可能となる。
【0033】
3.バーナ本体
バーナ本体6Aは、下方配置部6Bとスロート部6Cとが一体的に連結された構成をなす。下方配置部6Bは、円筒状の台であり、バーナキャップ20が装着される台である。下方配置部6Bは、円筒状部60と下方連結部70とを備える。
【0034】
図4のように、円筒状部60は、円筒状とされており、バーナ本体6Aの上端部側を構成する。円筒状部60は、混合気室6Zの外側の内壁部を構成する部分である。円筒状部60は、内周壁部62と、外周壁部64と、上面部66とを備える。内周壁部62は、円筒状に構成され、混合気室6Zの外側の内壁部を構成する。内周壁部62の内周面は、図3に示される所定の中心軸線Gを中心とする円筒面である。外周壁部64は、内周壁部62を囲む構成で円筒状に構成されている。上面部66は、内周壁部62の上端部と外周壁部64の上端部とを連結する。上面部66は、バーナ本体6Aの上端部を構成する。上面部66は、円環状に配置されている。上面部66には、対向面66Aが設けられている。対向面66Aは、バーナキャップ20のフランジ部32(環状部)と対向する環状の面である。対向面66Aは、各炎孔溝33に対向して配置される。対向面66Aは、中心軸線Gを中心とする円環状に配置されている。対向面66Aは、内側(内周壁部62側)となるにつれて下位置となるような傾斜面であり、全体としてすり鉢状に構成されている。対向面66Aは、下位置となるほど中心軸線Gを中心とする径(直径)が小さい。対向面66Aは、バーナキャップ本体30のフランジ部32を下方側から支持する支持面として機能することが望ましい。
【0035】
円筒状部60の下方には、円筒状部60に連結される下方連結部70が設けられている。下方連結部70は、内周壁部62に連結される環状の外側壁部72と、外側壁部72の下端部に連結される底壁部78と、底壁部78から上方に立ち上がる円筒状の支持筒76とを備える。外側壁部72の上端部は、内周壁部62の下端部に連結され、外側壁部72と内周壁部62とによって混合気室6Zの外側の内壁部(環状壁部)が構成される。底壁部78は、混合気室6Zの底壁として機能する。支持筒76は、上下方向において内周壁部62の内側の領域と外側壁部72の内側の領域とに跨って配置されている。支持筒76は、中心軸線Gを中心とする円筒状をなし、上端部が開口した形態をなす。支持筒76に対し、バーナキャップ本体30の筒状部31が上方側から挿入された構成をなす。筒状部31と支持筒76とによって混合気室6Zの内側の内壁部(環状壁部)が構成される。外側壁部72は、スロート部6Cと一体的に構成されている。外側壁部72の内部空間(混合気室6Z内の空間)は、スロート部6Cの内部空間から気体が流入可能とされている。
【0036】
4.バーナキャップ
次の説明は、バーナキャップ20の詳細構成に関する。
図2図3図4のように、バーナキャップ本体30は、バーナ本体6Aに対して上方側から装着される。バーナキャップ本体30は、バーナ本体6Aに装着される。カバー体40は、バーナキャップ本体30に固定され、カバー体40の下方にバーナキャップ本体30が位置する。バーナキャップ本体30は、筒状をなす。バーナキャップ本体30は、例えばアルミダイカスト等の金属材料によって構成されている。バーナキャップ本体30は、円筒状に構成された筒状部31と、筒状部31の上端側の部位から張り出すフランジ部32と、を備える。
【0037】
図3のように、筒状部31は、所定の中心軸線Gを円筒の中心とするように円筒状に構成され、中心軸線Gに沿って延びている。中心軸線Gの方向は、例えば上下方向である。筒状部31の内周面は、中心軸線Gを中心とする円筒面又は中心軸線Gを中心とする円筒面に沿った環状の面として構成されている。筒状部31の外周面も、中心軸線Gを中心とする円筒面又は中心軸線Gを中心とする円筒面に沿った環状の面として構成されている。筒状部31の上端部は、バーナキャップ20の上端部の開口部を構成する。筒状部31の下端部は、バーナキャップ20の下端部の開口部を構成する。バーナキャップ本体30の中央部には、上下に延びる貫通孔36が形成されている。貫通孔36内は、上下方向に気体を通過させ得る構成をなす。筒状部31の内周部は、貫通孔36を構成し、バーナキャップ20の上端部から下端部に続く孔部として機能する。
【0038】
図3のように、フランジ部32は、筒状部31における上端寄りの部分から中心軸線Gを中心とする半径方向外側に張り出す部分として構成されている。フランジ部32は、環状部の一例に相当する。フランジ部32は、筒状部31の上端側の部分に連結され、当該上端側の部分から中心軸線Gを中心とする半径方向外側に張り出す部分として構成されている。フランジ部32と筒状部31は、例えば同一の金属材料によって一体的に構成されている。フランジ部32には上面部34が設けられている。上面部34は、フランジ部32における上側の板面を構成する部分である。上面部34には、カバー体40の第2突出部43が接触する。上面部34の表面(上面)は、中心軸線Gと直交する平面に沿った環状の面である。フランジ部32の下面部35には、複数の炎孔溝33が設けられている。図3のようにバーナキャップ20がバーナ本体6Aに装着された状態では、フランジ部32の下面部35は、バーナ本体6Aの対向面66Aと対向して配置される。図3の装着状態では、フランジ部32の下面部35が対向面66Aと接触するように載置されていることが望ましい。
【0039】
図3図4のように、カバー体40は、円形の環状板として構成される。カバー体40は、金属製(例えばステンレス製)である。図2図4のように、カバー体40は、本体部41と、第1突出部42と、第2突出部43と、を有する。カバー体40は、本体部41と第1突出部42と第2突出部43とが同一材料によって一体的に形成されている。
【0040】
図3図4のように、本体部41は、バーナキャップ本体30のフランジ部32を上方から覆う円形の環状板として構成されている。図3のように、第1突出部42は、例えば、金属加工(折り曲げ加工等)によって本体部41から折り曲げられた構成をなす。第2突出部43は、例えば、金属加工(折り曲げ加工等)によって本体部41から折り曲げられた構成をなす。カバー体40は、表面処理(例えば、バレル研磨など)が施され、滑らか且つ光沢のある構成となっている。カバー体40の中心部には、バーナキャップ本体30の貫通孔36とほぼ同程度の径の貫通孔44が、本体部41の厚さ方向に貫通する構成で設けられている。貫通孔44は、上述の貫通孔36の内部空間の上方に続くように、貫通孔36と連通して配置される。
【0041】
図3図4のように、第1突出部42は、本体部41における円形状の内縁部から下方に突出している。第1突出部42の突出長さは、第2突出部43の突出長さより大きい。第1突出部42は、円筒状である。第1突出部42は、筒状部31内に挿入されている。第1突出部42は、筒状部31の内周部39に接触しつつ筒状部31に固定される。具体的には、筒状部31の内周部39に凹部50が設けられており、第1突出部42の一部をなす引っ掛かり部47が凹部50内に入り込みつつ凹部50に引っ掛かる構成で、第1突出部42が筒状部31から抜けないようになっている。このような構成で、カバー体40がバーナキャップ本体30に固定さる。
【0042】
5.点火部付近の構成
図4図5のように、バーナキャップ20は、フランジ部32の外周部に設けられる複数の炎孔溝33と、放電プラグ10(図1図7)との間で放電ギャップZを形成する点火部100と、を備える。
【0043】
図6図7のように、点火部100は、板状に且つ円板状に構成されたフランジ部32における円筒面状の外周面32Aから径方向外側に延びる構成で設けられている。フランジ部32における円筒面状の外周面32Aは、複数の主炎孔溝33Aの端部や複数の火移り炎孔溝33Bの端部などの各炎孔溝33の端部が設けられた湾曲面である。具体的には、外周面32Aは、中心軸線Gを中心とする円筒面(中心軸線Gとの距離が所定値である面)に沿った面である。点火部100は、外周面32Aから上記径方向に沿って突出した突起として構成されている。本明細書において、径方向とは、「中心軸線Gを通り且つ中心軸線Gと直交する方向」と平行な方向であり、中心軸線Gを中心とする円筒の半径方向である。図9では、径方向のうちの点火ターゲット150の先端部を通る方向が直線L1で示されている。
【0044】
炎孔溝33のうち、主炎孔溝33Aは、バーナ本体6Aから供給されるガスをフランジ部32の中心側から外側に向かって誘導する経路をなす溝であり、図2のように、バーナ本体6Aの対向面66Aとの間で主炎孔110を構成する溝である。図8図9の例では、点火部100の周方向一方側に設けられた複数の主炎孔溝33Aのうち、点火部100に最も近い溝が一方の主炎孔溝33Xである。そして、点火部100の周方向他方側に設けられた複数の主炎孔溝33Aのうち、点火部100に最も近い溝が他方の主炎孔溝33Yである。
【0045】
炎孔溝33のうち、火移り炎孔溝33Bは、二つの主炎孔溝33Aの間に設けられ、対向面66Aとの間で火移り炎孔124を構成する溝である。図8の例では、複数の火移り炎孔溝33Bのうち、内側炎孔溝160,171,172は、一方の主炎孔溝33Xと他方の主炎孔溝33Yの間に設けられている。内側炎孔溝160,171,172は、複数の火移り炎孔溝33Bのうちの点火部100の径方向内側に設けられた炎孔溝である。一方の主炎孔溝33X及び他方の主炎孔溝33Yは2つの第1炎孔溝の一例に相当する。複数の火移り炎孔溝33Bの一部である内側炎孔溝160は、「第2炎孔溝」の一例に相当し、周方向において2つの主炎孔溝33X,33Y(2つの第1炎孔溝)の間に配置される。内側炎孔溝160,171,172の径方向外側の端部である各出口は、2つの主炎孔溝33X,33Y(2つの第1炎孔溝)の間に配置される。
【0046】
図8のように、点火部100は、厚肉部101と、薄肉部102とを備える。薄肉部102は、厚肉部101より薄く構成されている。厚肉部101は、外周面32Aにおいて2つの主炎孔溝33X,33Y(2つの第1炎孔溝)の間に連結されるとともに外周面32Aから径方向の外側に延びる構成をなす。薄肉部102は、厚肉部101よりも薄く構成されるとともに厚肉部101から径方向の外側に延びる構成をなす。点火部100は、ガイド溝140と、点火ターゲット150と、笠部130とを有する。ガイド溝140及び点火ターゲット150は、厚肉部101に設けられる。笠部130は、薄肉部102に設けられる。バーナキャップ本体30では、ガイド溝140と点火ターゲット150と笠部130とが同一材料によって一体的に構成(より具体的には、一体的に成形)されている。
【0047】
図8のように、ガイド溝140は、複数の火移り炎孔溝33Bのうちの内側炎孔溝160を流れたガスを、径方向外側に導く溝である。ガイド溝140は、内側炎孔溝160の出口部161の径方向外側に設けられている。ガイド溝140は、出口部161よりも上位置に設けられている。ガイド溝140の径方向内側の端部は、フランジ部32の外周面32Aに連結される。ガイド溝140の径方向外側の端部は、点火ターゲット150側に開放している。
【0048】
内側炎孔溝160は、保炎孔溝である。内側炎孔溝160(保炎孔溝)の入口部163,164は、径方向に対して傾斜した流入経路を構成する。具体的には、入口部163から一定範囲の流路166は、径方向に対して傾斜した直線状の流路である。入口部164から一定範囲の流路167は、径方向に対して傾斜した直線状の流路である。流路166における入口部163とは反対側の端部と、流路167における入口部164とは反対側の端部とは、互いに連通している。流路166を介して流れ込むガスも、流路167を介して流れ込むガスも、共通の流路168に流れ込むようになっており、共通の流路168の径方向外側の端部が出口部161として構成されている。出口部161は、ガイド溝140の下側且つ径方向内側に設けられる。出口部161は、径方向に沿った流出経路を構成し、バーナ本体6Aを介して供給されたガスを径方向外側に流すように機能する。
【0049】
図8のように、点火ターゲット150は、ガイド溝140よりも径方向外側に少なくとも一部が設けられ、放電プラグ10との間で放電ギャップZ(図7)を形成する。図8の例では、ガイド溝140よりも径方向外側に点火ターゲット150の全体が配置される。点火ターゲット150は、ガイド溝140における径方向外側の端部から径方向外側に突出し、且つ笠部130の下面から下方(図8の図面において上側)に突出した突出部として構成されている。点火ターゲット150の径方向外側の端部は、放電プラグ10(図1図7)と上下に向かい合って配置されており、これらの間で火花放電がなされるようになっている。点火ターゲット150の下端部150Aは、上記突出部として構成された点火ターゲット150において最も下位置の部分である。
【0050】
図8図9のように、笠部130は、ガイド溝140よりも径方向外側に延び、点火ターゲット150の周囲の空間を上側から覆う部分である。笠部130の下面は、少なくとも一部(望ましくは過半領域)が下端部150Aよりも上方に設けられる。図8図9の例では、笠部130の下面の全体が、下端部150Aよりも上方に設けられる。笠部130の下面は、湾曲面130Aを有し、湾曲面130Aの高さ(上下方向の位置)は、点火ターゲット150から離れるにつれて低位置となっている。点火ターゲット150は、湾曲面130Aにおける上端側の面から下方に突出しており、点火ターゲット150の一部が笠部130内に入っている。点火ターゲット150よりも径方向外側に、湾曲面130Aの最上部が設けられている。この最上部は、湾曲面130Aにおいて、径方向内側の端部寄りの位置に配置され、湾曲面130Aにおいて、径方向における点火ターゲット150寄りに配置されている。湾曲面130Aは、上記最上部よりも径方向外側となるにつれて低位置となっている。また、湾曲面130Aは、上記最上部から横方向(L1の方向と直交する方向であって、上下方向と直交する方向)に離れるにつれて低位置となっている。更に、図9のように、ガイド溝140及び点火ターゲット150の領域の径方向の長さX1と、点火ターゲット150から笠部130の径方向先端132までの径方向の長さX2とが、略同一である。
【0051】
6.効果の例
ガスコンロ1は、バーナ本体6Aから内側炎孔溝160(第2炎孔溝)に供給されたガスは、ガイド溝140を通って放電ギャップZ(図7)付近に供給される。このように放電ギャップZ(図7)付近にガスが供給された状態で、放電プラグ10と点火ターゲット150との間で放電がなされると、放電ギャップZ(図7)付近のガスが着火され、周方向に火炎が移るように点火がなされる。仮に、ガイド溝140を通って放電ギャップZ(図7)付近に流れ込むガスの流速がある程度大きくても、点火ターゲット150の周囲の空間を上側から覆う笠部130によってガスが受けられ、ガスが減速されやすいため、着火直後の炎が吹き消される事態は生じにくい。よって、このガスコンロ1は、着火時の火力が大きくても、点火をより確実に行いやすい。
【0052】
笠部130の湾曲面130Aは、点火ターゲット150の付近において点火ターゲット150から離れるにつれて低位置となるようなドーム状であるため、点火ターゲット150付近に流れ込んだガスがより減速されやすく、より滞留しやすい。よって、このガスコンロ1は、点火をより一層確実に行いやすい。
【0053】
点火ターゲット150から笠部130の径方向先端132までの径方向の長さX2が小さすぎるとガスを減速させる効果が低減し、大きすぎると、主炎孔溝33Aからの火炎によって炙られやすくなる。ガスコンロ1のように、点火ターゲット150から笠部130の径方向先端132までの径方向の長さX2が、ガイド溝140及び点火ターゲット150の領域の径方向の長さX1と略同一であれば、「ガスを減速させる効果」と「主炎孔溝33Aからの火炎による炙りを抑える効果」とのバランスをとることができる。
【0054】
ガスコンロ1は、内側炎孔溝160(保炎孔溝)を介してガイド溝140にガスを供給する際に、内側炎孔溝160(保炎孔溝)の入口部163,164において径方向に対して傾斜した方向にガスを流入させ、その後、出口部161において、径方向に沿った流出経路でガスを流すことができる。このように内側炎孔溝160(保炎孔溝)においてガスを流す向きを強制的に変える構成であるため、内側炎孔溝160(保炎孔溝)でもガスを減速させることができる。よって、内側炎孔溝160(保炎孔溝)でガスを減速させる効果と、笠部130付近でガスを減速させる効果とが、相乗効果を発揮し、点火性能を格段に高めることができる。
【0055】
ガスコンロ1は、点火部100の根元部分に厚肉部101を設けて強固に構成しつつ、相対的に厚く構成された部分においてより確実に点火を行うことができる。更に、厚肉部101の径方向外側に薄肉部102が配置され、その部分に笠部130が設けられるため「点火ターゲットの径方向の外側に笠部が設けられ、笠部の下面が点火ターゲットの下端部よりも上方に設けられる構成」をより簡易且つコンパクトに実現しやすい。しかも、「笠部130の下面が点火ターゲット150の下端部150Aよりも上方に設けられる構成」であるため、径方向外側に向かうガスを笠部130の下面で受けやすく、そのガスが笠部130付近で滞留しやすい。
【0056】
図7図8の例では、笠部130は、主炎孔溝33X,33Y(2つの第1炎孔溝)よりも少し上側に延びるようにオフセットしている。湾曲面130Aは、主炎孔溝33X,33Yの径方向外側において、主炎孔溝33X,33Yの上端部(主炎孔溝33X,33Yの各々の上壁部)よりも上位置に配置されている。具体的には、湾曲面130Aの全体が、主炎孔溝33X,33Yの径方向外側において、主炎孔溝33X,33Yの上端部よりも上位置に配置されている。より詳しくは、笠部130の全体が、主炎孔溝33X,33Yの径方向外側において主炎孔溝33X,33Yの各々の上端部よりも上位置に配置されている。このように構成されているため、2つの主炎孔溝33X,33Yから上側に放出されたガスを笠部130が受けやすく、そのガスが笠部130付近で滞留しやすい。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0058】
上述の実施形態の説明では、コンロの一例としてビルトインコンロとして構成されるガスコンロ1が例示されたが、コンロは、テーブルコンロなどの他種のコンロであってもよい。
【0059】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 :ガスコンロ
4 :ガスバーナ
5 :ガスバーナ
6 :ガスバーナ
6A :バーナ本体
10 :放電プラグ
20 :バーナキャップ
21 :バーナキャップ
22 :バーナキャップ
30 :バーナキャップ本体
31 :筒状部
32 :フランジ部
32A :外周面
33 :炎孔溝
33A :主炎孔溝
33B :火移り炎孔溝
33X :主炎孔溝(第1炎孔溝)
33Y :主炎孔溝(第1炎孔溝)
100 :点火部
110 :主炎孔
124 :火移り炎孔
130 :笠部
130A :湾曲面
132 :径方向先端
140 :ガイド溝
150 :点火ターゲット
160 :内側炎孔溝(第2炎孔溝)
161 :出口部
163 :入口部
164 :入口部
Z :放電ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9