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▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

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  • 特開-建物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173711
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20221115BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20221115BHJP
   E04H 3/14 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04B1/30 G
E04H3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079583
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】土井 公人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直幹
(72)【発明者】
【氏名】寺村 雄機
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 要
(72)【発明者】
【氏名】爰野 将児
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC26
2E139AC33
2E139AC40
(57)【要約】
【課題】主建物部と、その側方に接合されて当該主建物部よりも低剛性の副建物部とを備える建物において、副建物部を含む建物全体の地震力を主に主建物部で負担する構成を採用しながら、副建物部への自然採光を可能としつつ、狭小地でも簡単且つ合理的に適用可能とする。
【解決手段】平面視において、副建物部2が矩形状に構成されていると共に、主建物部1が副建物部2の少なくとも隣り合う2つの外周辺2a,2bに沿うと共に少なくとも1つの外周辺2c,2dを開放する形状に構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主建物部と、その側方に接合されて当該主建物部よりも低剛性の副建物部とを備える建物であって、
平面視において、前記副建物部が矩形状に構成されていると共に、前記主建物部が前記副建物部の少なくとも隣り合う2つの外周辺に沿うと共に少なくとも1つの外周辺を開放する形状に構成されている建物。
【請求項2】
前記主建物部が鉄筋コンクリート造であり、前記副建物部が鉄骨造である請求項1に記載の建物。
【請求項3】
平面視において、前記主建物部が、前記副建物部の隣り合う2つの外周辺に沿うL型形状に構成されている請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記主建物部が校舎として構成されており、前記副建物部が体育館として構成されている請求項1~3の何れか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記主建物部と前記副建物部との界壁部において、前記主建物部及び前記副建物部夫々の柱及びそれを支持する基礎が兼用されている請求項1~4の何れか1項に記載の建物。
【請求項6】
前記主建物部に耐震壁が設けられており、前記副建物部における前記主建物部との界壁部以外の領域において耐震壁が省略されている請求項1~5の何れか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主建物部と、その側方に接合されて当該主建物部よりも低剛性の副建物部とを備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄筋コンクリート造の主建物部(鉄筋コンクリート架構32)と、その主建物部よりも低剛性の鉄骨造の副建物部(鉄骨架構52)とを備える建物が記載されている。
この特許文献1記載の建物では、平面視において、副建物部(52)が矩形状に構成されており、主建物部(32)が副建物部(52)の外周部全体を囲う形状に構成されている。そして、この特許文献1記載の建物では、副建物部を含む建物全体に生じる地震力を主に主建物部(32)で負担して、副建物部(52)への振動の伝達を抑制でき、更には、外周部全体に亘って主建物部(32)を設けることで、建物全体のねじり剛性を高くして、地震力に対して効果的に抵抗できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-66222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のように、高剛性の主建物部を低剛性の副建物部の外周部全体を囲う構成を採用すると、平面視において建物全体の大きさが大きくなって狭小地に適用することは困難となる上に、副建物部とその外周部全体を囲う主建物部との界壁部が非常に広くなるので構造が煩雑化するという問題がある。更に、副建物部において周囲からの自然採光ができなくなるという問題もある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、主建物部と、その側方に接合されて当該主建物部よりも低剛性の副建物部とを備える建物において、副建物部を含む建物全体の地震力を主に主建物部で負担する構成を採用しながら、副建物部への自然採光を可能としつつ、狭小地でも簡単且つ合理的に適用可能とする技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、主建物部と、その側方に接合されて当該主建物部よりも低剛性の副建物部とを備える建物であって、
平面視において、前記副建物部が矩形状に構成されていると共に、前記主建物部が前記副建物部の少なくとも隣り合う2つの外周辺に沿うと共に少なくとも1つの外周辺を開放する形状に構成されている点にある。
【0006】
本構成によれば、平面視において、主建物部が、矩形状に構成された副建物部の少なくとも隣り合う2つの外周辺に沿う形状に構成されているので、それら2つの外周辺夫々の面外方向に沿って、低剛性の副建物部を高剛性の主建物部により強固に支持することができる。このことにより、副建物部に対して多方向から作用する地震力をそれよりも高剛性の主建物部により好適に負担することができるので、副建物部において広い内部空間を確保することができる。
また、平面視において、主建物部が副建物部の少なくとも1つの外周辺を開放する形状に構成されており、その副建物部の少なくとも1つの外周辺の外方には主建物部を存在させる必要がないので、その開放された外周辺を介して副建物部への自然採光を確保することができる上に、建物の設置面積をできるだけ小さくすることができる。更に、主建物部と副建物部との界壁部が、開放された副建物部の外周辺を除く少なくとも2つの外周辺に制限されているので、構造を簡素化することができる。
従って、本発明により、主建物部と、その側方に接合されて当該主建物部よりも低剛性の副建物部とを備える建物において、副建物部を含む建物全体の地震力を主に主建物部で負担する構成を採用しながら、副建物部への自然採光を可能としつつ、狭小地でも簡単且つ合理的に適用可能とする技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記主建物部が鉄筋コンクリート造であり、前記副建物部が鉄骨造である点にある。
【0008】
本構成によれば、主建物部を鉄筋コンクリート造として高剛性とし、副建物部を鉄骨造として主建物部よりも低剛性とすることができる。更に、副建物部を鉄骨造としながら、その副建物部に作用する地震力が主に主建物部により負担されるので、副建物部において一層広い内部空間を確保することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、平面視において、前記主建物部が、前記副建物部の隣り合う2つの外周辺に沿うL型形状に構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、平面視において、副建物部の隣り合う2つの外周辺をL型形状に構成された主建物部の内隅部に沿わせる形態で、主建物部及び副建物部を配置することができる。このことにより、副建物部の主建物部に沿わせた外周辺以外の2つの外周辺が開放されることになるので、副建物部への自然採光を十分に確保することができる上に、狭小地でも一層簡単且つ合理的に適用可能な構成とすることができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記主建物部が校舎として構成されており、前記副建物部が体育館として構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、平面視において、校舎として構成された主建物部が体育館として構成された副建物部の少なくとも隣り合う2つの外周辺に沿う形状に構成されているので、体育館の少なくとも2つの外周辺において、校舎との間のアクセスや眺望を確保することができる。また、副建物部である体育館に作用する地震力がそれよりも高剛性の校舎により好適に負担されるので、体育館において広い内部空間を確保することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記主建物部と前記副建物部との界壁部において、前記主建物部及び前記副建物部夫々の柱及びそれを支持する基礎が兼用されている点にある。
【0014】
本構成によれば、主建物部と副建物部との界壁部では、主建物部及び副建物部夫々の柱及びそれを支持する基礎を兼用することで、一層簡単且つ合理的な構成を実現することができる。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記主建物部に耐震壁が設けられており、前記副建物部における前記主建物部との界壁部以外の領域において耐震壁が省略されている点にある。
【0016】
本構成によれば、副建物部に作用する地震力が主に主建物部により負担されるので、副建物部において、例えば開放された外周辺に沿わせた領域などのように主建物部との界壁部以外の領域において耐震壁を省略することができる。よって、副建物部において、より一層広い内部空間を確保することができ、更には、開放された外周辺に沿わせた耐震壁を省略すれば、周囲からより一層良好に自然採光を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る建物の概略構成を示す斜視図
図2】本実施形態に係る建物の概略構成を示す平面図
図3】本実施形態に係る建物の概略構成を示す立面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る建物(以下、「本建物」と呼ぶ。)50は、主建物部1とその側方に接合された副建物部2とを備えており、副建物部2を含む建物50全体の地震力を主に主建物部1で負担する構成を採用しながら、副建物部2への自然採光を可能としつつ、狭小地でも簡単且つ合理的に適用可能とするための特徴構成を有しており、その構成の詳細について説明する。
尚、本願において、建物部とは、平面視において短辺方向及び長辺方向の柱間隔が1スパン以上ある架構部を示す。
【0019】
主建物部1は、高剛性の鉄筋コンクリート造の建物部であって、主に校舎として構成されている。一方、副建物部2は、上記主建物部1よりも低剛性の鉄骨造であり、主に体育館として構成されている。
そして、図2に示す平面視において、副建物部2が矩形状に構成されていると共に、主建物部1が、副建物部2の隣り合う2つの外周辺である主建物部側外周辺2a,2bに沿うL型形状に構成されている。
即ち、主建物部1におけるL型形状の内側の隣り合う2つの外周辺である内側外周辺1a,1bが、矩形状の副建物部2における隣り合う2つの外周辺である主建物部側外周辺2a,2bに重なる状態となる。更に、矩形状の副建物部2における上記主建物部側外周辺2a,2b以外の外周辺である開放側外周辺2c,2dは、外方には主建物部1が存在しない開放された状態となる。
【0020】
このような構成を採用することにより、副建物部2における2つの主建物部側外周辺2a,2b夫々の面外方向に沿って、低剛性の副建物部2は高剛性の主建物部1により強固に支持される。そして、副建物部2に対して多方向から作用する地震力は、それよりも高剛性の主建物部1により好適に負担される。よって、副建物部2については、広い内部空間を確保した鉄骨造の体育館として好適に利用することができる。
また、図2に示す平面視において、主建物部1が、副建物部2の開放側外周辺2c,2dが開放される形状に構成されており、その副建物部2の開放側外周辺2c,2dの外方には主建物部1が存在しない。よって、その開放された開放側外周辺2c,2dを介して副建物部2への自然採光が確保される上に、建物50の設置面積が小さくて済む。
更に、主建物部1と副建物部2との界壁部6が、開放された副建物部2の開放側外周辺2c,2dを除く主建物部側外周辺2a,2bに制限されて構造が簡素化されている。また、副建物部2の2つの主建物部側外周辺2a,2bに相当する主建物部1と副建物部2との界壁部6においては、体育館として構成された副建物部2と校舎として構成された主建物部1との間のアクセスや眺望が確保されている。
【0021】
図3に示すように、主建物部1と副建物部2との界壁部6においては、主建物部1の柱11及びそれを支持する基礎21と、副建物部2の柱12及びそれを支持する基礎22とが、兼用されており、一層簡単且つ合理的な構成が実現されている。尚、本実施形態では、主建物部1と副建物部2との界壁部6の全領域において、柱11,12及びそれを支持する基礎21,22を兼用する構成を採用したが、界壁部6における一部又は全部の範囲において主建物部1と副建物部2との間で柱11,12及び基礎21,22を兼用しないようにしても構わない。
【0022】
図2に示すように、主建物部1においては、教室等を区画するための間仕切り4が適宜配置されており、それに加えて、耐震壁5が適宜配置されている。特に、副建物部2から主建物部側外周辺2a,2bに直交して地震力が伝達される主建物部1の領域には、少なくとも1つの耐震壁5が配置されている。一方、副建物部2においては、柱間隔が広く設定されて内部に無柱の大空間が形成されているが、当該副建物部2に作用する地震力は主に主建物部1により負担されることから、主建物部1との界壁部6以外の領域、即ち開放側外周辺2c,2dに沿わせた外壁部の領域において上記のような耐震壁が省略されている。このことで、体育館として構成された副建物部2において、より一層広い内部空間が確保されており、更には、開放側外周辺2c,2dに沿わせた耐震壁が省略されていることで、当該開放側外周辺2c,2dにおいて周囲からの一層良好な自然採光の確保が可能となる。尚、図2には、建物50における耐震壁5の配置の一例を示しているが、この耐震壁5の配置については適宜変更可能である。例えば、副建物部2と主建物部1との間のアクセス性や眺望性を一層良好なものとするために、主建物部1と副建物部2との界壁部6に沿って配置される耐震壁5はできるだけ少なくする又は無くすようにすることもできる。
【0023】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0024】
(1)上記実施形態では、主建物部1を鉄筋コンクリート造とし副建物部2を鉄骨造としたが、副建物部が主建物部よりも低剛性となる範囲において主建物部及び副建物部の夫々の建築構成要素を適宜変更しても構わない。例えば、主建物部及び副建物部を共に同じ鉄骨造等とし、主建物部に副建物部よりも多くの耐震壁を配置することで副建物部が主建物部よりも低剛性となるようにしても構わない。
【0025】
(2)上記実施形態では、図2に示す平面視において、主建物部1を、副建物部2の隣り合う2つの主建物部側外周辺2a,2bに沿うL型形状としたが、平面視における主建物部の形状については、副建物部の少なくとも隣り合う2つの主建物部側外周辺に沿うと共に少なくとも1つの開放側外周辺を開放するものであればよく、例えば、副建物部2の3つの外周辺に沿うと共に他の1つの外周辺を開放させたコの字形状としても構わない。
【0026】
(3)上記実施形態では、主建物部1を校舎とし副建物部2を体育館として、本発明に係る建物50を学校に適用した例を説明したが、当然、本発明に係る建物は学校建物以外の建物にも適用可能である。
【0027】
(4)上記実施形態では、説明を簡単にするため、副建物部2の平面視の形状を完全な矩形状としたが、本発明において、副建物部の平面視の形状については、略矩形状であればよく、例えば副建物部2における開放側外周辺2c,2dについては多少の凹凸等を有するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0028】
1 主建物部
2 副建物部
2a,2b 主建物部側外周辺
2c,2d 開放側外周辺
5 耐震壁
6 界壁部
11,12 柱
21,22 基礎
50 建物
図1
図2
図3