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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173714
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】盤の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20221115BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221115BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20221115BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B01D46/10 C
H05K7/20 H
H02B1/28 C
H02B1/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079586
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 祐二
【テーマコード(参考)】
4D058
5E322
5G016
【Fターム(参考)】
4D058JA19
4D058MA31
4D058MA48
4D058MA60
4D058QA03
4D058QA21
4D058RA01
5E322AA01
5E322AA03
5E322BA01
5E322BB03
5E322BC02
5E322BC05
5G016CG07
5G016CG09
(57)【要約】
【課題】盤の冷却構造の簡略化や小型化等に貢献可能な技術を提供する。
【解決手段】盤の周壁の通気口(吸気口等)に取り付けるフィルタ装置2Aにおいて、通気口の径方向に延在しているエアフィルタ3と、エアフィルタ3を通気口の貫通方向に貫通して軸支されている回転軸4と、回転軸4の周壁内周側に設けられて回転自在な風車部5と、回転軸4の周壁外周側に設けられて回転自在な回転ブラシ部6Aと、エアフィルタ3に設けられている浮遊物収集部7Aと、を備えたものとする。回転ブラシ部6Aは、回転軸4から当該回転軸4の外周側方向に延出しているブラシ基体部61と、ブラシ基体部61からエアフィルタ3側に延出して当該エアフィルタ3に摺接しているブラシ部と、を備えたものとする。浮遊物収集部7Aは、エアフィルタ3に付着した浮遊物であって回転ブラシ部6Aの回転により掃き取られた浮遊物を、収集することが可能なものとする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象を収納可能な筐体状の周壁と、
前記周壁において内外方向に貫通して設けられている通気口と、
前記通気口に設けられているフィルタ装置と、
前記周壁内周側の気体を前記周壁外周側に排気可能な通風機と、
を備え、
前記フィルタ装置は、
前記通気口の径方向に延在しているエアフィルタと、
前記エアフィルタを前記通気口の貫通方向に貫通して軸支されている回転軸と、
前記回転軸における前記周壁内周側に設けられ、当該回転軸によって回転自在な風車部と、
前記回転軸における前記周壁外周側に設けられ、当該回転軸によって回転自在な回転ブラシ部と、
前記エアフィルタに設けられている浮遊物収集部と、
を備え、
前記回転ブラシ部は、
前記回転軸から当該回転軸の外周側方向に延出し、当該回転軸によって回転自在なブラシ基体部と、
前記ブラシ基体部から前記エアフィルタ側に延出して当該エアフィルタに摺接しているブラシ部と、
を備え、
前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタに付着した浮遊物であって前記回転ブラシ部の回転により掃き取られた浮遊物を、当該回転ブラシ部の回転に応じて収集することが可能なことを特徴とする盤の冷却構造。
【請求項2】
前記浮遊物収集部は、
前記エアフィルタにおける前記回転軸の周方向の一部である領域に設けられ、前記貫通方向の通気を遮断する通気遮断部と、
前記一部の領域において前記周壁外周側方向に突出して設けられ、前記通気口の径方向に延在している突起部と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の盤の冷却構造。
【請求項3】
前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタにおける前記回転軸の周方向の一部であって、当該一部以外の他部よりも前記周壁内周側方向に窪んだ形状の窪み部であることを特徴とする請求項1記載の盤の冷却構造。
【請求項4】
前記浮遊物収集部は、
前記エアフィルタにおける前記回転軸側であって当該回転軸の周方向に沿って延在した領域に設けられ、当該延在した領域における前記貫通方向の通気を遮断する通気遮断部を、備え、
前記ブラシ基体部は、前記回転軸側から当該ブラシ基体部の延出方向先端側に近づくに連れて前記回転ブラシ部の回転方向の前進側に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の盤の冷却構造。
【請求項5】
前記フィルタ装置は、前記周壁において盤の水平方向側に設けられ、
前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタにおいて盤の設置面方向側に設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の盤の冷却構造。
【請求項6】
前記フィルタ装置は、前記周壁における盤の水平方向側のうち、盤の設置面方向側に設けられていることを特徴とする請求項4記載の盤の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種々の電力設備,電気設備等に適用されている盤の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電力設備,電気設備等で適用されている盤(例えば電力変換装置等を収納する盤)においては、パワー半導体等(IGBT等)のような発熱性の電子部品や制御回路等を具備している電気機器(冷却対象;例えばインバータユニット等の電子部品ユニット)を筐体状の周壁(以下、単に周壁と適宜称する)に収納し、その周壁の内周側(以下、単に周壁内周側と適宜称する)を適宜冷却して温度上昇を抑制できるようにした構成が知られている。
【0003】
例えば、周壁に通気口(吸気口や排気口等)や通風機(排気ブロワ等)を設け、当該周壁の外周側(以下、単に周壁外周側と適宜称する)の外気を周壁内周側に取り込んで通気する構成が挙げられる。また、エアフィルタ等を有したフィルタ装置を通気口に設け、外気に含まれている塵埃等の浮遊物が周壁内周側に侵入しないようにした構成も挙げられる。このフィルタ装置は、エアフィルタ等に浮遊物が付着していくと目詰まり等を起こし、通気効率の低下を招くおそれがある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、通風機である換気用ファン(特許文献1では符号40)の回転方向(正回転と逆回転)を切り替え制御して、通気口における通気方向を適宜変更(例えば周壁内周側方向から周壁外周側方向に変更)することにより、エアフィルタに付着した浮遊物を周壁外周側に吹き飛ばす構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、周壁内周側の気体をエアフィルタに転送して吹き付けるパージノズル(特許文献2では符号10)等を備え、当該エアフィルタに付着している浮遊物を周壁外周側に吹き飛ばす構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、エアフィルタの周壁外周側に設置され風車の回転力によって回転するブラシ付シャフト(特許文献3では符号11)により、当該エアフィルタに付着している浮遊物を掃き取って清浄する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-228062号公報
【特許文献2】特開2005-012953号公報
【特許文献3】特開2004-262385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の場合、回転方向を切り替え可能(例えば逆電圧印加可能)な換気用ファンを備えたり、当該切り替え制御するための回路等を備えた構成(以下、単に切替制御構成と適宜称する)が必要となる。
【0009】
特許文献2の場合は、周壁内周側から排気しようとする気体をフィルタ装置に転送するための構成(以下、単に気体転送構成と適宜称する)が必要となる。
【0010】
特許文献3の場合は、ブラシ付きシャフトの回転軸が、通気口の周壁外周側において通気方向に交差するように延在(通気口から離れて延在)している。すなわち、ブラシ付きシャフトにおいては、周壁から突出するように設置された構成(以下、単に突出構成と適宜称する)となってしまう。
【0011】
以上により、特許文献1~3では、例えば盤の冷却構造の複雑化や大型化等を招くおそれがある。
【0012】
本発明は、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、盤の冷却構造の簡略化や小型化等に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る盤の冷却構造は、前記の課題を解決できる創作であり、その一態様は、冷却対象を収納可能な筐体状の周壁と、前記周壁において内外方向に貫通して設けられている通気口と、前記通気口に設けられているフィルタ装置と、前記周壁内周側の気体を前記周壁外周側に排気可能な通風機と、を備えたものとする。
【0014】
前記フィルタ装置は、前記通気口の径方向に延在しているエアフィルタと、前記エアフィルタを前記通気口の貫通方向に貫通して軸支されている回転軸と、前記回転軸における前記周壁内周側に設けられ、当該回転軸によって回転自在な風車部と、前記回転軸における前記周壁外周側に設けられ、当該回転軸によって回転自在な回転ブラシ部と、前記エアフィルタに設けられている浮遊物収集部と、を備えたものとする。
【0015】
前記回転ブラシ部は、前記回転軸から当該回転軸の外周側方向に延出し、当該回転軸によって回転自在なブラシ基体部と、前記ブラシ基体部から前記エアフィルタ側に延出して当該エアフィルタに摺接しているブラシ部と、を備えたものとする。
【0016】
そして、前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタに付着した浮遊物であって前記回転ブラシ部の回転により掃き取られた浮遊物を、当該回転ブラシ部の回転に応じて収集することが可能なことを特徴とする。
【0017】
また、前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタにおける前記回転軸の周方向の一部である領域に設けられ、前記貫通方向の通気を遮断する通気遮断部と、前記一部の領域において前記周壁外周側方向に突出して設けられ、前記通気口の径方向に延在している突起部と、を備えていることを特徴としても良い。
【0018】
また、前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタにおける前記回転軸の周方向の一部であって、当該一部以外の他部よりも前記周壁内周側方向に窪んだ形状の窪み部であることを特徴としても良い。
【0019】
また、前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタにおける前記回転軸側であって当該回転軸の周方向に沿って延在した領域に設けられ、当該延在した領域における前記貫通方向の通気を遮断する通気遮断部を、備え、前記ブラシ基体部は、前記回転軸側から当該ブラシ基体部の延出方向先端側に近づくに連れて前記回転ブラシ部の回転方向の前進側に湾曲していることを特徴としても良い。
【0020】
また、前記フィルタ装置は、前記周壁において盤の水平方向側に設けられ、前記浮遊物収集部は、前記エアフィルタにおいて盤の設置面方向側に設けられていることを特徴としても良い。
【0021】
また、前記フィルタ装置は、前記周壁における盤の水平方向側のうち、盤の設置面方向側に設けられていることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0022】
以上示したように本発明によれば、盤の冷却構造の簡略化や小型化等に貢献できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】盤1を説明するための概略構成図(図1(A)は盤1を盤正面部11側から臨んだ図、図1(B)は図1(A)のX-X線断面図)。
図2】フィルタ装置2Aを説明するための概略構成図(図2(A)は周壁10内周側から臨んだ図、図2(B)は周壁10外周側から臨んだ図、図2(C)は図2(A)のY1-Y1線断面図、図2(D)は図2(A)の風車ブレード51を矢印Z方向に臨んだ図)。
図3】フィルタ装置2Bを説明するための概略構成図(図3(A)は周壁10内周側から臨んだ図、図3(B)は周壁10外周側から臨んだ図、図3(C)は図3(A)のY2-Y2線断面図、図3(D)は図3(A)の風車ブレード51を矢印Z方向に臨んだ図)。
図4】フィルタ装置2Cを説明するための概略構成図(図4(A)は周壁10内周側から臨んだ図、図4(B)は周壁10外周側から臨んだ図、図4(C)は図4(A)のY3-Y3線断面図、図4(D)は図4(A)の風車ブレード51を矢印Z方向に臨んだ図)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態の盤の冷却構造は、特許文献1~3に示すような冷却構造(以下、単に従来構造と適宜称する)とは、全く異なるものである。
【0025】
すなわち、本実施形態の盤の冷却構造は、通気口に設けるフィルタ装置において、当該通気口の径方向に延在しているエアフィルタと、当該エアフィルタを前記通気口の貫通方向に貫通して軸支されている回転軸と、当該回転軸の周壁内周側に設けられて当該回転軸によって回転自在な風車部と、当該回転軸の周壁外周側に設けられて当該回転軸によって回転自在な回転ブラシ部と、前記エアフィルタに設けられている浮遊物収集部と、を備えたものである。
【0026】
また、回転ブラシ部においては、前記回転軸から当該回転軸の外周側方向に延出して当該回転軸によって回転自在なブラシ基体部と、前記ブラシ基体部から前記エアフィルタ側に延出して当該エアフィルタに摺接(例えば延出方向先端側が摺接)しているブラシ部と、を備えたものとする。
【0027】
そして、前記浮遊物収集部においては、前記エアフィルタに付着した浮遊物であって前記回転ブラシ部の回転により掃き取られた浮遊物(前記ブラシ部によって掃き取られた浮遊物)を、収集することが可能なものとする。
【0028】
このような冷却構造によれば、周壁内周側の気体を当該周壁外周側に排気した場合に、通気口に発生する通気流(以下、単に通気流と適宜称する)により、回転ブラシ部が回転する。この回転ブラシ部の回転により、エアフィルタに付着している浮遊物をブラシ部で掃き取り、その掃き取った浮遊物を浮遊物収集部にて収集することが可能となる。
【0029】
すなわち、本実施形態の盤の冷却構造においては、例えば特許文献1の切替制御構成や特許文献2の気体転送構成が不要である。また、回転ブラシ部の回転軸は、エアフィルタにおいて通気口の貫通方向に貫通して軸支されているため、例えば特許文献3のような突出構成にならないように抑制できる。
【0030】
したがって、本実施形態の盤の冷却構造によれば、従来構造と比較して、当該冷却構造の簡略化や小型化に貢献し易くなると言える。
【0031】
本実施形態の盤の冷却構造は、前述のように回転ブラシ部の回転軸がエアフィルタを通気口の貫通方向に貫通して軸支されており、当該回転ブラシ部が通気流によって回転し、当該回転ブラシ部のブラシ部で掃き取った浮遊物を浮遊物収集部にて収集することが可能な構成であれば良い。例えば、種々の分野(例えば、盤分野,電力変換装置分野,フィルタ装置分野,風車分野,ブラシ分野等)の技術常識を適宜適用して設計変形することも可能であり、その一例として以下に示す実施例1~3が挙げられる。なお、実施例1~3において、同様のものには同一符号を付する等により、詳細な説明を適宜省略する。
【0032】
≪実施例1による盤の冷却構造≫
<盤1の主な構成>
図1図2は、実施例1による冷却構造が適用可能な盤1を説明するための概略構成図である。この盤1においては、パネル状や柱状の複数個の盤枠を略箱状に組み付けてなる周壁10を有しており、その周壁10の周壁内周側の内部空間10aが盤正面部11,盤背面部12,盤側面部13a,13b,盤天井部14,盤底部15によって囲繞された構成となっている。内部空間10aには、冷却対象である電気機器(例えばインバータユニット等の電子部品ユニット;図示省略)が、例えば盤正面部11側から出し入れ自在に収納されることとなる。
【0033】
図中の盤正面部11の場合、冷却対象である電気機器の収納性やメンテナンス性等を考慮して、図外のヒンジ等を介して開閉可能な盤部材11a,11bからなる観音扉構造となっている。
【0034】
盤正面部11(図1中では盤部材11a,11bそれぞれ)における盤底部15側には、当該盤正面部11の肉厚方向に貫通した吸気口20が設けられ、周壁10の周壁外周側の外気を内部空間10aに取り込めるように構成されている。
【0035】
吸気口20においては、後述するフィルタ装置2Aが設けられ、周壁外周側の外気に含まれている塵埃等の浮遊物が内部空間10aに侵入しないように抑制した構成となっている。
【0036】
盤天井部14には、当該盤天井部14の肉厚方向に貫通した排気口14aが設けられている。また、盤天井部14における排気口14a側には、当該排気口14aを覆うように排気ブロワ等の通風機14bが設けられ、内部空間10aの気体(内部空間10aに取り込まれた外気;以下、単に取込外気と適宜称する)を吸気して周壁外周側に排気できるように構成されている。
【0037】
図中の通風機14bの場合、取込外気を吸気するように回転自在なファン14cと、当該吸気した取込外気を排気するための排気口14dと、その排気口14dに設けられ浮遊物の侵入を抑制するエアフィルタ14eと、を有した構成となっている。
【0038】
<フィルタ装置2Aの構成>
フィルタ装置2Aは、吸気口20の径方向(以下、単に吸気口径方向と適宜称する)に延在するように設けられているエアフィルタ3と、そのエアフィルタ3を吸気口20の貫通方向(以下、単に吸気口貫通方向と適宜称する)に貫通している回転軸4と、その回転軸4の周壁内周側に設けられて当該回転軸4によって回転自在な風車部5と、前記回転軸4の周壁外周側に設けられて当該回転軸4によって回転自在な回転ブラシ部6Aと、前記エアフィルタ3に設けられている浮遊物収集部7Aと、を主として備えている。
【0039】
エアフィルタ3は、吸気口20を閉塞できる形状であって通気性を有した部材からなり、周壁外周側の外気に含まれている浮遊物を濾過するように、当該外気を通過させることができる構成となっている。このようなエアフィルタ3の具体例としては、例えば薄膜状,平板状(図中では円板状)で不織布部材,ワイヤメッシュ部材,多孔質部材等からなるものが挙げられる。
【0040】
図中のエアフィルタ3の場合、当該エアフィルタ3の外周縁に沿って延在するリング状の取付フランジ31に支持されており、この取付フランジ31を介して吸気口20の開口縁面21に取り付けられている。また、フィルタ装置2Aのエアフィルタ3の場合、当該エアフィルタ3における回転軸4の周方向の一部である領域(図中では盤底部15側(すなわち、盤1の設置面方向側)の領域)3Aに、浮遊物収集部7Aが設けられている。
【0041】
回転軸4は、例えば棒状を成しているものであって、エアフィルタ3の中心側に位置する環状の軸受41を介して回転自在に軸支され、吸気口貫通方向に延在している。
【0042】
風車部5は、回転軸4の周壁内周側に設けられたフィン状の風車ブレード(ファンブレード)51を有しており、通気流によって回転自在(回転軸4を介して回転ブラシ部6Aと連動するように回転自在)な構成となっている。
【0043】
図中の風車部5の場合、複数個(図中では3個)の風車ブレード51が、それぞれ回転軸4の周壁内周側において当該回転軸4の周方向(以下、単に回転軸周方向と適宜称する)に所定間隔を隔てた位置に、当該回転軸4の外周側方向に延出した姿勢で設けられている。この風車ブレード51において、その形状や回転軸4に対する設置姿勢(例えば回転軸4に対する角度,吸気口径方向に対する傾き等)等を適宜選定することにより、通気流による風車部5の回転方向や回転速度を、適宜設定することができる。
【0044】
なお、図中の風車部5においては、後述するように通風機14bを稼動して内部空間10aの気体を排気した場合に、図中の矢印R1方向に回転するように設定されているものとする。
【0045】
回転ブラシ部6Aは、回転軸4の周壁外周側に設けられて風車部5と連動するように回転自在なブラシ基体部61と、そのブラシ基体部61からエアフィルタ3側に延出して当該エアフィルタ3に摺接(延出方向先端側がエアフィルタ3の周壁外周側に摺接)している刷毛状のブラシ部62と、を備えている。
【0046】
図中の回転ブラシ部6Aの場合、複数個(図中では3個)の延板状のブラシ基体部61が、それぞれ回転軸4の周壁外周側で回転軸周方向に所定間隔を隔てた位置に、当該回転軸4の外周側方向に延出(エアフィルタ3の周壁外周側に沿って延出)した姿勢で設けられている。
【0047】
なお、図中の回転ブラシ部6Aにおいては、後述するように通風機14bを稼動して内部空間10aの気体を排気した場合に、風車部5に連動して図中の矢印R2方向に回転するように設定されているものとする。
【0048】
浮遊物収集部7Aは、エアフィルタ3に付着した浮遊物であって回転ブラシ部6Aのブラシ部62により掃き取られた浮遊物を、当該回転ブラシ部6Aの回転に応じて収集可能な構成となっている。
【0049】
<浮遊物収集部7Aの構成例>
この浮遊物収集部7Aは、前記のようにブラシ部62によって掃き取られた浮遊物を適宜収集可能な構成であれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0050】
図中の浮遊物収集部7Aの場合、領域3Aに設けられて吸気口貫通方向の通気を遮断する通気遮断部71と、当該通気遮断部71(領域3A)から周壁外周側方向に突出して設けられて吸気口径方向に延在している条状の突起部72と、を有したものとなっている。
【0051】
より具体的には、エアフィルタ3における盤底部15側(すなわち、盤1の設置面方向側)の領域3Aが、扇形状に切り欠き成形された形状となっており、この領域3Aに対して扇形状の通気遮断部71が嵌め込まれた構成となっている。また、突起部72は、吸気口貫通方向においてブラシ部62と重畳している。
【0052】
このような浮遊物収集部7Aによれば、吸気口20に通気流が発生している場合であっても、領域3Aにおいては通気遮断部71によって通気が遮断される。
【0053】
そして、回転ブラシ部6Aによって掃き取られた浮遊物は、当該回転ブラシ部6Aが回転して領域3Aに到達すると重力が作用し易く、当該回転ブラシ部6Aから離脱し易い。特に、ブラシ部62が突起部72を回転通過する場合に、当該ブラシ部62と突起部72の両者が衝突(例えばブラシ部62の延出方向先端側が弾性変形しながら衝突)するため、前記浮遊物の離脱がより容易となる。
【0054】
したがって、以上示したようなフィルタ装置2Aによれば、エアフィルタ3に付着した浮遊物が、回転ブラシ部6Aによって掃き取られ、浮遊物収集部7Aに収集され易くなる。この収集された浮遊物は、例えば重力によって盤底部15側に落下する。
【0055】
<その他>
フィルタ装置2Aの具体的な形状や材質等は、例えば目的とする盤1に応じて適宜設定することができ、種々の態様を適用することが可能である。その一例として、エアフィルタ3においては、盤1の設置環境(浮遊物の発生量等)に応じた濾過性能を持たせることが挙げられる。
【0056】
ブラシ部62においては、エアフィルタ3との相性を考慮し、浮遊物を掃き取り易いものを適用することが挙げられる。その具体例としては、例えば植物性,動物性,金属性,合成繊維性等の刷毛からなるものが挙げられ、好ましくは除電ブラシ等のように静電気の発生を抑制したものが挙げられる。
【0057】
突起部72は、ブラシ部62における浮遊物の離脱を容易とするものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。例えば、突起部72の設置箇所は、図中のように通気遮断部71における矢印R2方向前進側の縁部に限定されるものではなく、当該通気遮断部71の所望の位置に適宜設けても良く、複数個設けても良い。
【0058】
吸気口20は、周壁外周側の外気を内部空間10aに取り込んで通気できるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。例えば図1に示す吸気口20の場合、周壁の10の盤正面部11に設けられているが、これに限定されるものではなく、当該周壁10の所望の位置(例えば周壁10の盤水平方向側)に適宜設けても良い。
【0059】
また、図1に示すように吸気口20が周壁10の盤水平方向側に設けられている場合、浮遊物収集部7Aをエアフィルタ3における盤底部15側(盤1の設置面方向側)に設けることにより、当該浮遊物収集部7Aに収集された浮遊物が、例えば重力によって当該盤底部15側に落下し易くなる。
【0060】
このように浮遊物収集部7Aに収集された浮遊物が重力によって盤底部15側に落下する場合、フィルタ装置2Aが取り付けられる吸気口20においては、例えば図1に示すように盤底部15(すなわち、周壁10における盤1の水平方向側のうち、当該盤1の設置面方向側)に近接した位置に設け、当該浮遊物の飛散を抑制することが好ましい。
【0061】
<実施例1による盤1の通気構成例およびフィルタ装置2Aの動作例>
実施例1による盤1の場合、通風機14bを稼動して内部空間10aの気体を排気すると、当該内部空間10aが、周壁外周側よりも負圧となる。これにより、吸気口20の周壁外周側の外気が、当該吸気口20を介して内部空間10aに取り込まれることとなる。
【0062】
このように取り込まれた取込外気は、例えば図中の直線状矢印で示すように内部空間10aを移動し、排気口14aおよび通風機14bを介して周壁外周側に排気される。これにより、内部空間10aは冷却され、温度上昇が抑制されることとなる。
【0063】
また、吸気口20においては通気流が発生し、風車部5が回転軸4を介して矢印R1方向に回転すると共に、その風車部5に連動するように回転ブラシ部6Aが回転軸4を介して矢印R2方向に回転する。
【0064】
そして、回転ブラシ部6Aの回転により、ブラシ部62がエアフィルタ3における周壁外周側を摺動しながら矢印R2方向に回転する。ここで、エアフィルタ3に浮遊物が付着している場合には、当該浮遊物がブラシ部62によって掃き取られ、その掃き取れられた浮遊物は、回転ブラシ部6Aが回転して領域3Aに到達する毎に、ブラシ部62から離脱(浮遊物収集部7Aにより収集)して盤底部15側に落下する。
【0065】
以上示した実施例1の冷却構造によれば、内部空間10aに収納している冷却対象の電気機器を適宜冷却でき、フィルタ装置2Aのエアフィルタ3においては、浮遊物による目詰まり等を抑制し、十分な通気効率を保持することが可能となる。また、例えば特許文献1の切替制御構成や特許文献2の気体転送構成は不要であり、回転ブラシ部6Aの回転軸4が吸気口貫通方向に延在しているため、従来構造と比較して、盤1の冷却構造の簡略化や小型化に貢献し易い。
【0066】
≪実施例2による盤の冷却構造≫
実施例2による冷却構造は、盤1の吸気口20において、フィルタ装置2Aを設ける替わりに、図3に示すように浮遊物収集部7Bを有したフィルタ装置2Bを設けたものである。
【0067】
<フィルタ装置2Bの構成>
フィルタ装置2Bは、エアフィルタ3における領域3Aが、窪み部73を有した浮遊物収集部7Bによって構成されている。この窪み部73は、エアフィルタ3における領域3A以外の部分よりも、周壁内周側方向に窪んだ形状となっている。
【0068】
<浮遊物収集部7Bの構成例>
浮遊物収集部7Bは、浮遊物収集部7Aと同様に、エアフィルタ3に付着した浮遊物であって回転ブラシ部6Aのブラシ部62により掃き取られた浮遊物を、当該回転ブラシ部6Aの回転に応じて適宜収集可能な構成であれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0069】
図中に示す浮遊物収集部7Bの場合、エアフィルタ3が、扇形状の領域3Aにおいて周壁内周側方向に窪んだ形状となるように成形され、当該領域Aに窪み部73を有した構成となっている。この窪み部73は、エアフィルタ3の一部であるため通気性を有し、周壁外周側の外気に含まれている浮遊物を濾過するように、当該外気を通過させることができる。
【0070】
このような浮遊物収集部7Bによれば、吸気口20に通気流が発生している場合、領域3Aにも通気流が発生することとなる。また、回転ブラシ部6Aのブラシ部62が、領域3A以外に位置する場合にエアフィルタ3に摺接し、当該領域3Aに位置する場合にはエアフィルタ3から離れることとなる。
【0071】
そして、領域3Aにおいては、通気流により、回転ブラシ部6Aによって掃き取られた浮遊物が回転ブラシ部6Aから離脱し易く、その離脱した浮遊物が窪み部73内に留まって凝集され易い。
【0072】
したがって、以上示したようなフィルタ装置2Bによれば、エアフィルタ3に付着した浮遊物が、回転ブラシ部6Aによって掃き取られ、浮遊物収集部7Bに収集され易くなる。この収集された浮遊物においては、例えば、窪み部73内で一定量が凝集された後に、盤1の作業者によって適宜除去することが挙げられる。
【0073】
<実施例2による盤1の通気構成例およびフィルタ装置2Bの動作例>
実施例2による盤1の場合も、実施例1と同様に、通風機14bを稼動して内部空間10aの気体を排気すると、当該内部空間10aが周壁外周側よりも負圧となり、吸気口20から取り込まれた取込外気によって、内部空間10aは冷却されて温度上昇が抑制されることとなる。
【0074】
また、吸気口20においては通気流が発生し、風車部5に連動して回転ブラシ部6Aが回転すると、ブラシ部62がエアフィルタ3における周壁外周側を摺動しながら矢印R2方向に回転する。ここで、エアフィルタ3に浮遊物が付着している場合には、当該浮遊物がブラシ部62によって掃き取られ、その掃き取れられた浮遊物は、回転ブラシ部6Aが回転して領域3Aに到達する毎に、ブラシ部62から離脱(浮遊物収集部7Bにより収集)される。
【0075】
以上示した実施例2の冷却構造によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、フィルタ装置2Bの浮遊物収集部7Bは、例えばエアフィルタ3を適宜成形して構成することができるため、実施例1と比較すると、盤1の冷却構造の簡略化や小型化により貢献し易くなる可能性がある。
【0076】
また、収集した浮遊物を窪み部73内に留めておくことができるため、当該浮遊物が飛散しないように抑制できる可能性がある。
【0077】
≪実施例3による盤の冷却構造≫
実施例3による冷却構造は、盤1の吸気口20において、フィルタ装置2Aを設ける替わりに、図4に示すように浮遊物収集部7Cを有したフィルタ装置2Cを設けたものである。また、回転ブラシ部6Aの替わりに、湾曲した形状のブラシ基体部63を有した回転ブラシ部6Cを適用した。
【0078】
<フィルタ装置2Cの構成>
フィルタ装置2Cは、エアフィルタ3における回転軸4側であって回転軸周方向に沿って延在した環状の領域3Cに、浮遊物収集部7Cが設けられた構成となっている。
【0079】
また、回転ブラシ部6Cは、回転軸4の周壁外周側に設けられて風車部5と連動するように回転自在な湾曲形状のブラシ基体部63と、そのブラシ基体部63からエアフィルタ3側に延出して当該エアフィルタ3に摺接(延出方向先端側がエアフィルタ3の周壁外周側に摺接)している刷毛状のブラシ部62と、を有している。
【0080】
<浮遊物収集部7Cおよび回転ブラシ部6Cの構成例>
浮遊物収集部7Cおよび回転ブラシ部6Cは、エアフィルタ3に付着した浮遊物であって当該回転ブラシ部6Cのブラシ部62により掃き取られた浮遊物を、当該回転ブラシ部6Cの回転に応じて適宜収集可能な構成であれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0081】
図中に示す浮遊物収集部7Cの場合、領域3Cに設けられて吸気口貫通方向の通気を遮断する通気遮断部74を、有したものとなっている。
【0082】
より具体的には、エアフィルタ3における回転軸4側の領域3Cが、回転軸周方向に延在した環状に切り欠き成形された形状となっており、この領域3Cに対して環状の通気遮断部74が嵌め込まれた構成となっている。
【0083】
このような浮遊物収集部7Cによれば、吸気口20に通気流が発生している場合であっても、領域3Cにおいては通気遮断部74によって通気が遮断される。
【0084】
図中の回転ブラシ部6Cの場合、ブラシ基体部63が、回転軸4から当該ブラシ基体部63の延出方向先端側に近づくに連れて当該回転ブラシ部6Cの回転方向の前進側(矢印R2方向側)に湾曲(円弧状に湾曲)した構成となっている。
【0085】
このように湾曲したブラシ基体部63においては、回転ブラシ部6Cが回転する場合に、当該ブラシ基体部63の延出方向先端側が先行して回転するように移動し、当該ブラシ基体部63の回転軸4側(根元側)が遅れて回転するように移動することとなる。これにより、回転ブラシ部6Cの回転によって掃き取られた浮遊物は、当該回転ブラシ部6Cの回転方向の前進側(矢印R2方向側)に移動しながら、当該ブラシ基体部63に沿って領域3C側に移動して凝集し易くなる。
【0086】
したがって、以上示したようなフィルタ装置2Cによれば、エアフィルタ3に付着した浮遊物が、回転ブラシ部6Cによって掃き取られ、浮遊物収集部7Cに収集され易くなる。この収集された浮遊物においては、凝集量が多くなるに連れて重力が作用し易く、例えば盤底部15側に落下することも考えられるが、当該落下しない場合には、例えば盤1の作業者によって適宜除去することが挙げられる。
【0087】
<実施例3による盤1の通気構成例およびフィルタ装置2Cの動作例>
実施例3による盤1の場合も、実施例1と同様に、通風機14bを稼動して内部空間10aの気体を排気すると、当該内部空間10aが周壁外周側よりも負圧となり、吸気口20から取り込まれた取込外気によって、内部空間10aは冷却されて温度上昇が抑制されることとなる。
【0088】
また、吸気口20においては通気流が発生し、風車部5に連動して回転ブラシ部6Cが回転すると、ブラシ部62がエアフィルタ3における周壁外周側を摺動しながら矢印R2方向に回転する。ここで、エアフィルタ3に浮遊物が付着している場合には、当該浮遊物がブラシ部62によって掃き取られ、その掃き取れられた浮遊物は、回転ブラシ部6Cの回転方向に移動しながら、当該ブラシ基体部63に沿って領域3C側に移動して凝集(浮遊物収集部7Cに収集)される。
【0089】
以上示した実施例3の冷却構造によれば、実施例1,2と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、エアフィルタ3に付着した浮遊物を、回転ブラシ部6Cによって凝集しながら浮遊物収集部7Cに収集することができるため、当該浮遊物がより飛散しないように抑制できる可能性がある。
【0090】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0091】
例えば、実施例1~3のフィルタ装置2A~2Cにおいては、吸気口20に取り付けた態様を具体的に説明したが、当該吸気口20以外で周壁10に設けられた通気口(例えば排気口14a)であれば、適宜取り付けることが可能であり、当該実施例1~3と同様の作用効果を奏することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…盤
10…周壁
10a…内部空間
14a,14d…排気口
14b…通風機
20…吸気口
2A~2C…フィルタ装置
3…エアフィルタ
3A,3C…領域
4…回転軸
5…風車部
6A,6C…回転ブラシ部
61,63…ブラシ基体部
62…ブラシ部
7A~7C…浮遊物収集部
71,74…通気遮断部
72…突起部
73…窪み部
図1
図2
図3
図4