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特開2022-173726フォトマスクブランクおよびフォトマスク
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  • 特開-フォトマスクブランクおよびフォトマスク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173726
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】フォトマスクブランクおよびフォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/20 20120101AFI20221115BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20221115BHJP
【FI】
G03F1/20
G03F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079605
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 太一
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BB10
2H195BB14
2H195BC05
2H195BC11
(57)【要約】
【課題】高エッチレート層を含む遮光層を用いても、遮光層のサイドエッチ量が増加し、形成されたパターンの側壁がくびれ形状になってしまうことで微細パターンの精度の低下や、ひいては倒壊が引き起こされることがない、フォトマスクおよびフォトマスクブランクを提供する。
【解決手段】石英からなる支持基板上に、遮光層が形成されているフォトマスクブランクにおいて、当該遮光層はエッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数層積層されていることを特徴とし、かつ、複数積層されている当該遮光層各層が、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英からなる支持基板上に、遮光層が形成されているフォトマスクブランクにおいて、当該遮光層はエッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数層積層されていることを特徴とし、かつ、複数積層されている当該遮光層各層が、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
石英からなる支持基板上に、任意の光透過性能を有する透過層と遮光層が支持基板、透過層、遮光層の順に積層され、かつ、前記透過層と遮光層がお互いに同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングされないフォトマスクブランクにおいて、当該遮光層はエッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数積層されていることを特徴とし、かつ、複数積層されている当該遮光層各層が、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の、フォトマスクブランクにおいて、エッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数層積層されている遮光層各層における高エッチレート層と比べて、低エッチレート層が薄膜であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の、フォトマスクブランクにおいて、複数積層されている遮光層各層における高エッチレート層各々の膜厚が前記遮光層全体の膜厚の1/2以内であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の、遮光層がクロム、酸化クロム、モリブデン、シリコン、モリブデンシリコン、シリコンナイトライド、ジルコニウムナイトライドおよびタンタルのうち、2つまたは複数からなることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の、フォトマスクブランクを使用したフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造に使用するフォトマスク及び該フォトマスクの製造に使用するフォトマスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子作製はシリコンウエハにレジストを塗布し、フォトマスクを介して露光して製造するが、フォトマスク上に遮光層として形成されるパターンの寸法精度が半導体素子の品質、歩留まりに大きく影響を及ぼしている。
【0003】
フォトマスクは、石英からなる支持基板上または前記支持基板上に形成された透光層上に積層される遮光層を形成したフォトマスクブランクを作成し、当該フォトマスクブランク上に電子線に感度のあるレジスト層を形成し、電子線描画装置を使用し、所望のパターンを描画後、現像処理を行うことでレジストパターンを作成し、当該レジストパターン以外の前記遮光層をエッチング、レジストパターンを剥離、洗浄することにより得られる。
【0004】
半導体素子回路の微細化・高密度化に伴い、形成されるパターンの寸法精度向上、およびバラつきの低減が要求されており、フォトマスクブランクにおいてはその遮光層の高エッチレート化(エッチング速度を速くすること)が望まれている。
【0005】
すなわち、半導体素子回路に形成されるパターンの高解像性及び高パターニング精度を得るためには、当然フォトマスク上のパターンの高解像性及び高パターニング精度も担保されなければならない。そのため、フォトマスク作成時のレジスト層をいかに薄膜化するかが重要視される。反面、遮光層のエッチング工程におけるレジスト層のエッチングへの耐性を確保するためには、レジスト層の薄膜化が制限されることとなる。つまり、高解像性及び高パターニング精度とエッチング耐性との間が二律背反の関係にある。レジスト層への負荷を低減させつつ、薄膜化を行い、より高精度のフォトマスクパターンを形成するために、パターニング対象である遮光層を、薄膜化されたレジスト層であっても、高解像性及び高パターニング精度でエッチングできるものとすることが必要となる。
【0006】
言い換えれば、フォトマスクブランク及びフォトマスクに使用される遮光膜などに用いるCr含有膜で、より微細なパターンを正確に形成するためには、露光光に対して、遮光膜として必要な光学濃度を確保した厚さのまま、Cr含有膜のエッチング速度(エッチレート)を速くする必要がある。
【0007】
そのため、従来、所望の遮光性能を満足する厚膜の高エッチレート層を成膜後、低反射層や導電層を積層した遮光層を有するフォトマスクブランクが用いられている。
【0008】
例えば、特許文献1には、遮光層であるCr含有膜にCrと、O及び/又はNと、Cとを含有し、Cr及びO,N,Cの含有量を規定したもの、が提案されている。
【0009】
しかし、厚膜の高エッチレート層を用いることで、高エッチレート層のサイドエッチ量が低反射層や導電層に対して極端に増加し、形成されたパターンの側壁がくびれ形状になってしまうことで、微細パターンの精度低下や倒壊が引き起こされるおそれがある。特にパターン線幅が微細になり、その寸法が遮光層の膜厚に近く/あるいはそれ以下になってくるとその傾向が顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許6540758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、高エッチレート層を含む遮光層を用いても、遮光層のサイドエッチ量が低反射層や導電層に対して極端に増加し形成されたパターンの側壁がくびれ形状になってしまうことで微細パターンの精度の低下やひいては倒壊が引き起こされることがない、フォトマスクブランク及びフォトマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明では下記のフォトマスクブランク及びフォトマスクを提供する。
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
石英からなる支持基板上に、遮光層が形成されているフォトマスクブランクにおいて、当該遮光層はエッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数層積層されていることを特徴とし、かつ、複数積層されている当該遮光層各層が、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能であることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項2に記載の発明は、
石英からなる支持基板上に、任意の光透過性能を有する透過層と遮光層が支持基板、透過層、遮光層の順に積層され、かつ、前記透過層と遮光層がお互いに同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングされないフォトマスクブランクにおいて、当該遮光層はエッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数積層されていることを特徴とし、かつ、複数積層されている当該遮光層各層が、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
請求項3に記載の発明は、
請求項1または2に記載の、フォトマスクブランクにおいて、エッチレートの異なる2種類以上の膜組成で交互に複数層積層されている遮光層各層における高エッチレート層と比べて、低エッチレート層が薄膜であることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項4に記載の発明は
請求項1~3のいずれかに記載の、フォトマスクブランクにおいて、複数積層されている遮光層各層における高エッチレート層各々の膜厚が前記遮光層全体の膜厚の1/2以内であることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項5に記載の発明は、
請求項1~4のいずれかに記載の、遮光層がクロム、酸化クロム、モリブデン、シリコン、モリブデンシリコン、シリコンナイトライド、ジルコニウムナイトライドおよびタンタルのうち、2つまたは複数からなることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項6に記載の発明は、
請求項1~5のいずれかに記載の、フォトマスクブランクを使用したフォトマスクである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るフォトマスクブランクおよびフォトマスクは、遮光層をエッチレートの異なる2種類以上の膜組成による積層構造とし、かつ、それぞれの膜厚を任意に設定することで、サイドエッチ量の調整が可能となり、特に高エッチレート層のサイドエッチ量の調整が可能となり、側壁形状の改善及び微細パターンの倒壊を防止することが可能となる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の記載のフォトマスクブランク断面図の一例である。
図2】本発明の別の実施形態の記載のフォトマスクブランク断面図の一例である。
図3】本発明の実施形態のフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの一例である 。
図4】従来例として、高エッチレート層が遮光膜全体の1/2以上であるフォトマス クブランクを用いたフォトマスクの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明に係るフォトマスクブランクおよびフォトマスクの実施形態の一例について説明する。
【0016】
本実施形態では、石英からなる支持基板上11に形成された透過層16上に遮光層12が積層されているフォトマスクブランクにおいて、かつ、石英からなる支持基板上11に遮光層12が積層されているフォトマスクブランクにおいて、この遮光層12における微細パターンの精度の低下や倒壊を防止することを目的としている。
【0017】
ここで透過層16の有無は、ハーフトーンマスク、バイナリーマスクの違いであり、ハーフトーンマスク、バイナリーマスク双方いずれを製造する場合においても、遮光層12が具備されており、本実施形態においては前記双方いずれの場合においても、この遮光層12における微細パターンの精度の低下や倒壊を防止することを目的としている。
【0018】
遮光層12は、エッチレートの異なる2種類以上の膜組成を任意の膜厚で交互に複数層積層させることで形成し、かつ当該エッチレートの異なる2種類以上の膜は、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能となることを手段とすることで、課題である高エッチレート層13におけるサイドエッチ量を減少させることが可能となる。その結果、側壁形状の改善及び微細パターンの倒壊を防止することが可能となる。
【0019】
フォトマスクブランク及びフォトマスクにおいては、図1のように石英からなる支持基板11上に遮光層12のみが積層されたバイナリーマスクブランクのほかに、図2のように、露光光の位相シフト効果を利用し、より微細なパターンをシリコンウエハ上に転写するための、ハーフトーンマスクブランクがある。図2は前記ハーフトーンマスクブランクの一実施形態であり、石英からなる支持基板上11に形成された透過層16上に遮光層12が積層されている。ここで透過層16の透過率はハーフトーンマスクブランク及びハーフトーンマスクの光学設計による任意の透過性能を有するものとする。
【0020】
従来例である図4に示すように、高エッチレート層13の膜厚が遮光層12の大半を占める場合には、高エッチレート層13のサイドエッチ量が大きく増加し、遮光層12の側壁が大きくくびれるおそれがあり、微細パターンの精度の低下やひいては倒壊が引き起こされるという問題があった。
【0021】
従来発生していた上記の問題を解決するために、本実施形態によると、遮光層12において、エッチレートの異なる2種類以上の膜組成を任意の膜厚で交互に積層させ、前記エッチレートの異なる膜が、同一エッチングガスまたは溶液にてエッチングが可能であることで、複雑なエッチング工程を用いることなく高エッチレート層のサイドエッチ量の調整が可能となる。
【0022】
低エッチレート層14を遮光層12内に設ける目的としては、高エッチレート層13の厚膜化を回避するためであり、遮光層12全体の高エッチレート化を実現するためには、低エッチレート層14は可能な限り薄膜であることが好ましい(図1図2)。
前記高エッチレート層13のサイドエッチ量を効率的に調整するためには、それぞれの膜厚が遮光膜全体の膜厚の1/2以内であることが好ましい。
【0023】
実際に我々は鋭意検討を重ねた結果、光学濃度が同じであれば、単層で遮光層を形成するよりもエッチレートの異なる2種類以上の膜組成が交互に複数層積層した遮光層を形成したほうが、サイドエッチ量は小さくなることを見出し本発明に至った。
【0024】
高エッチレートとなる膜についてはCrONC膜が知られており、CrN膜と同じエッチングガス又は溶液でエッチングが可能である。しかしながら本発明において、同じエッチングガス又は溶液でエッチングが可能であれば、一般的にフォトマスクブランクおよびフォトマスクで使用される材料として所定の露光波長で遮光性能を有する、クロム、酸化クロム、モリブデン、シリコン、モリブデンシリコン、シリコンナイトライド、ジルコニウムナイトライドおよびタンタルのうち、2つまたは複数からなるほかの組成の組み合わせでも構わない。
【0025】
従来のものは、遮光層12は、高エッチレート層13のみで構成されているのに対し、同じ光学濃度で構成された本実施形態の遮光層12は、たとえば高エッチレート層13、低エッチレート層14、高エッチレート層13、低エッチレート層14、すなわちエッチレートの異なる2種類以上の膜組成が交互に複数層積層されていることを特徴としており、2種類以上の膜組成が交互に複数層積層されていれば上記以外でももちろん構わない。
【0026】
加えて、石英からなる支持基板11の何も積層されていない方の面を裏面とした場合、その反対側に位置する遮光層12の積層最表面は、ウエハ露光時のフォトマスク遮光層面の反射を抑えるために、露光波長に対し低反射率となる低反射層15を図1図4いずれかに記載したように設けることが好ましい。
【0027】
また、フォトマスク製造中・製造後のハンドリング時の帯電によるパターンの静電破壊や、製造中電子線描画時のチャージアップによるパターン描画不良を防止するために導電層(図示せず)を設けてもよい。
【実施例0028】
図2に示すように、支持基板11に石英を使用し、透過層16、遮光層12が順次積層された、縦6インチ(152.4mm)×横6インチ(152.4mm)×厚さ0.09インチ(2.3mm)のハーフトーンマスクが作成可能なフォトマスクブランクとし、先ず透過層16としてMOSi膜を膜厚72nm形成し、その後高エッチレート層13としてCrONC膜を、膜厚15nm、低エッチレート層14としてCrN膜を膜厚3nm、高エッチレート層13としてCrONC膜を、膜厚15nm、低エッチレート層14としてCrN膜を膜厚3nm、高エッチレート層13としてCrONC膜を、膜厚14nm、その上に低反射層15としてCrON膜を膜厚5nm、順次形成し、計55nmの遮光層12を形成することで本発明のフォトマスクブランクの一例を得た。
【0029】
その後、所定の洗浄処理後、化学増幅型ネガレジストを東京エレクトロン社製ACT Mにてレジスト層を膜厚125nm形成する。(図示せず)
電子線描画装置にて所望のパターンを描画後、所定の条件でポストエクスポージャベーク(PEB)、現像を行い、形成したレジストパターンをマスクにして遮光層12を、エッチングを行い、レジストを所定の条件で剥離後、透過層16のエッチングを行うことで、図3のフォトマスクの一例を得た。
【0030】
なお、レジスト剥離は、レジストパターンをマスクに透過層16をエッチングした後に行ってもよい。
【0031】
作製した図3に示す構造のフォトマスクにおいて、パターンの解像性を一般的な走査型
電子顕微鏡で断面を確認した結果、従来例と比較すると、本実施例において、サイドエッチ量の改善が確認された。
【0032】
詳細には、レジスト層形成および描画~PEB~現像~エッチングを上記の同じ条件で行った場合、従来例の図4、すなわち膜構成として、石英を材料とした支持基板上にMoSiを72nm次いでCrONCを50nm次いでCrONを5nm積層した、高エッチレート層が遮光膜全体の膜厚の1/2以上あるフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの場合は、サイドエッチ量17が13nmであったのに対し、本実施例記載の図2のフォトマスクブランクを使用した場合、図3に示す本実施例においてはサイドエッチ量17は8nmと改善が確認された。
上記結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
以上述べてきたように、本発明によると、フォトマスクおよびフォトマスクブランクにおいて、高エッチレート層13を含む遮光層12を用いても、従来発生していた、遮光層12のサイドエッチ量が極端に増加し、形成されたパターンの側壁がくびれ形状になってしまうことで微細パターンの精度の低下や、ひいては倒壊が引き起こされることがない、フォトマスクおよびフォトマスクブランクを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0035】
11・・・石英からなる支持基板
12・・・遮光層
13・・・高エッチレート層
14・・・低エッチレート層
15・・・低反射層
16・・・任意の透過性能を有する透過層
17・・・高エッチレート層におけるサイドエッチ量
図1
図2
図3
図4