(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173735
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】LPGエンジンシステムの制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 19/02 20060101AFI20221115BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20221115BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20221115BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F02D19/02 F
F02D41/34
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02M21/02 311B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079622
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝川 嘉大
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G092AB07
3G092BB01
3G092DE04S
3G092EA01
3G092EA02
3G092EC01
3G301HA22
3G301JA28
3G301JA29
3G301LC01
3G301LC04
3G301NE13
3G301NE15
3G301PD02Z
(57)【要約】
【課題】ステップモータを有する燃料ミキサとインジェクタにて燃料量を調整するLPGエンジンシステムにおいて、ステップモータのステップ数に応じた燃料量に落ち込み部が有る場合であっても、より短時間に、狙った空燃比とすることができる、LPGエンジンシステムの制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、ベースステップ数とベース噴射量とを算出するベース燃料量算出部と、空燃比補正量算出部と、補正ステップ数を更新するステップ数補正部と、ステップモータとインジェクタを制御するアクチュエータ制御部とを有し、ステップ数補正部にて、リーン継続状態の場合は空燃比補正量(空燃比補正係数)による増量を禁止してリッチ状態に切り替わるまで第1所定タイミング毎に補正ステップ数を更新し、リッチ継続状態の場合は空燃比補正量による減量を禁止してリーン状態に切り替わるまで第2所定タイミング毎に補正ステップ数を更新する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LPGエンジンへの燃料量を調整する、LPGエンジンシステムの制御装置であって、
前記LPGエンジンシステムは、
前記LPGエンジンと、
吸気経路に設けられて、前記吸気経路内を流れる吸気に燃料を混合させるとともに、混合させる燃料量をステップモータにて調整可能な燃料ミキサと、
前記吸気経路に設けられて、前記吸気経路内に燃料を噴射するとともに、噴射する燃料量を調整可能なインジェクタと、
前記LPGエンジンの排気経路に設けられて、理論空燃比に対して酸素が過剰なリーン状態と理論空燃比に対して燃料が過剰なリッチ状態に関連する空燃比関連情報を出力する空燃比関連量検出装置と、
前記リーン状態と前記リッチ状態を含む前記LPGエンジンの運転状態を検出し、検出した前記運転状態に基づいて、前記ステップモータと前記インジェクタを制御する前記制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記運転状態に基づいて、前記ステップモータのベースステップ数と、前記インジェクタからのベース噴射量とを算出する、ベース燃料量算出部と、
前記リーン状態が検出されている場合は前記ベース噴射量を増量する側に補正し、前記リッチ状態が検出されている場合は前記ベース噴射量を減量する側に補正する空燃比補正量を算出する、空燃比補正量算出部と、
前記リーン状態が所定の継続状態であるリーン継続状態の場合、あるいは前記リッチ状態が所定の継続状態であるリッチ継続状態の場合に、前記ベースステップ数を補正する補正ステップ数を更新する、ステップ数補正部と、
前記ベースステップ数と前記補正ステップ数に基づいた最終ステップ数にて前記ステップモータを制御し、前記ベース噴射量と前記空燃比補正量に基づいた最終噴射量にて前記インジェクタを制御する、アクチュエータ制御部と、
を有し、
前記制御装置は、前記ステップ数補正部にて、
前記リーン継続状態の場合は、前記空燃比補正量による前記ベース噴射量の増量を禁止するとともに、前記リッチ状態に切り替わるまで、第1所定タイミング毎に、混合される燃料量が増加する側に前記補正ステップ数を更新し、
前記リッチ継続状態の場合は、前記空燃比補正量による前記ベース噴射量の減量を禁止するとともに、前記リーン状態に切り替わるまで、第2所定タイミング毎に、混合される燃料量が減少する側に前記補正ステップ数を更新する、
LPGエンジンシステムの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLPGエンジンシステムの制御装置であって、
前記リーン継続状態は、前記リーン状態が継続されて前記空燃比補正量が補正の上限である上限補正量に張り付いた状態であり、
前記第1所定タイミング毎とは、第1所定待機時間が経過する毎である、
LPGエンジンシステムの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のLPGエンジンシステムの制御装置であって、
前記リッチ継続状態は、前記リッチ状態が継続されて前記空燃比補正量が補正の下限である下限補正量に張り付いた状態であり、
前記第2所定タイミング毎とは、第2所定待機時間が経過する毎である、
LPGエンジンシステムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPGエンジンへの燃料量を調整する、LPGエンジンシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LPGエンジンを搭載したフォークリフト等では、排ガス対策として、理論空燃比の近傍となるように燃料量が調整され、排気経路に設けられた三元触媒を用いて、排気ガスが浄化されている。燃料量を理論空燃比の近傍となるように調整するために、排気経路にはO2センサまたはA/Fセンサが設けられている。そして、狙った空燃比となるように、吸気経路にはインジェクタが配置され、O2センサまたはA/Fセンサからの検出信号(空燃比関連情報)に基づいて、インジェクタからの燃料量がフィードバック制御にて調整されている。
【0003】
なお、LPGエンジンの場合、インジェクタから供給される燃料量だけでは燃料量が不足するので、インジェクタとは別に、吸気に燃料を混合する燃料ミキサが吸気経路に配置されている。燃料ミキサは、LPGレギュレータから吸気経路に接続された燃料配管の開度を調整可能なニードルと、当該ニードルを駆動するステップモータと、を有している。
【0004】
例えば特許文献1には、LPGレギュレータからの燃料を吸気に混合するフローコントロールバルブ(ステップモータとニードルを有し、燃料ミキサに相当)と、インジェクタと、負圧センサが吸気経路に設けられ、O2センサと、三元触媒とが排気経路に設けられたLPGエンジンの空燃比制御装置が開示されている。LPGエンジンの空燃比制御装置は、負圧センサ、O2センサからの検出信号(空燃比関連情報)に基づいて、フローコントロールバルブのステップモータとインジェクタとを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで
図12は、ステップモータを有する燃料ミキサにおける、ステップ数に応じた空気流量の例を示しており、空気流量の落ち込み部Rを有する例を示している。例えばフォークリフトの吸気経路に設けられた燃料ミキサは、ニードル形状とLPGエンジン燃料系(例えば吸気経路の径や長さ等)の組み合わせによっては、
図12の例に示すように、ステップモータのステップ数に応じた空気流量が、落ち込み部Rを有している場合がある。
【0007】
そして
図13の例は、特許文献1や従来の制御装置において、O
2センサ(またはA/Fセンサ)からの空燃比関連情報が、時刻Z04からリーン状態(理論空燃比に対して空気が過剰な状態)が継続した場合の例を示している。制御装置は、時刻Z04からリーン状態が継続した場合、理論空燃比に近付けるように、インジェクタから噴射する燃料量を徐々に増加させていく。しかし、噴射量(または噴射関連量)が上限値に張り付いた場合、インジェクタからの噴射量をそれ以上増量できないので、吸気に混合させる燃料量を増量させるために、ステップモータのステップ数を更新(増加)している(
図13中の時刻Z11、時刻Z21、時刻Z31)。なお制御装置は、ステップ数を更新した直後の所定時間(Ta)の間は、インジェクタからの噴射量をベース噴射量としている。そして当該所定時間が経過した後、制御装置は、O
2センサ(またはA/Fセンサ)からの空燃比関連情報に基づいて、リーン状態の場合は噴射量を増量し、リッチ状態の場合は噴射量を減量している。
【0008】
しかし、ステップモータの特性が
図12の例に示す特性であって、
図13の例にて時刻Z01でのステップモータのステップ数がSaの場合では、
図13の時刻Z11にてステップ数を増加させてステップ数をSaからSa+1に更新しても、混合される燃料量はほとんど増加しない(
図12参照)。このため、
図13の例に示すように、
図13の時刻Z31にて混合される燃料量が実際に増加されるステップ数Sa+3(
図12参照)となるまで、噴射量(または噴射関連量)を徐々に増加させて上限値に張り付いた場合にステップ数を更新する処理(
図13に示す時刻Z04~時刻Z12の処理)が繰り返されている。このため、狙った空燃比となるまでに、
図13の例では時間TSzもの長い時間がかかり、その間の排気の浄化率が低下するので、好ましくない。
図12の例に示す落ち込み部Rの位置が予めわかっていれば、落ち込み部Rをスキップさせることで回避できるが、燃料ミキサやLPGエンジン燃料系の個体差等により、決まった位置に落ち込み部Rがあるとは限らない。
【0009】
また
図14の例は、特許文献1や従来の制御装置において、O
2センサ(またはA/Fセンサ)からの空燃比関連情報が、時刻Z53からリッチ状態(理論空燃比に対して燃料が過剰な状態)が継続した場合の例を示している。上記と同様、ステップモータの特性が
図12の例に示す特性であって、
図14の例にて時刻Z51でのステップモータのステップ数がSa+2の場合では、ステップ数を減少させてステップ数をSa+2からSa+1に更新しても、混合される燃料量はほとんど減少しない(
図12参照)。このため、
図14の例に示すように、混合される燃料量が実際に減少されるステップ数Sa-1(
図12参照)となるまで、噴射量(または噴射関連量)を徐々に減少させて下限値に張り付いた場合にステップ数を更新する処理(
図14に示す時刻Z53~時刻Z62の処理)が繰り返されている。このため、狙った空燃比となるまでに、
図14の例では時間TSzもの長い時間がかかり、その間の排気の浄化率が低下するので、好ましくない。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ステップモータを有する燃料ミキサとインジェクタにて燃料量を調整するLPGエンジンシステムにおいて、ステップモータのステップ数に応じた燃料量に落ち込み部が有る場合であっても、より短時間に、狙った空燃比とすることができる、LPGエンジンシステムの制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、LPGエンジンへの燃料量を調整する、LPGエンジンシステムの制御装置であって、前記LPGエンジンシステムは、前記LPGエンジンと、吸気経路に設けられて、前記吸気経路内を流れる吸気に燃料を混合させるとともに、混合させる燃料量をステップモータにて調整可能な燃料ミキサと、前記吸気経路に設けられて、前記吸気経路内に燃料を噴射するとともに、噴射する燃料量を調整可能なインジェクタと、前記LPGエンジンの排気経路に設けられて、理論空燃比に対して酸素が過剰なリーン状態と理論空燃比に対して燃料が過剰なリッチ状態に関連する空燃比関連情報を出力する空燃比関連量検出装置と、前記リーン状態と前記リッチ状態を含む前記LPGエンジンの運転状態を検出し、検出した前記運転状態に基づいて、前記ステップモータと前記インジェクタを制御する前記制御装置と、を有する。そして前記制御装置は、前記運転状態に基づいて、前記ステップモータのベースステップ数と、前記インジェクタからのベース噴射量とを算出する、ベース燃料量算出部と、前記リーン状態が検出されている場合は前記ベース噴射量を増量する側に補正し、前記リッチ状態が検出されている場合は前記ベース噴射量を減量する側に補正する空燃比補正量を算出する、空燃比補正量算出部と、前記リーン状態が所定の継続状態であるリーン継続状態の場合、あるいは前記リッチ状態が所定の継続状態であるリッチ継続状態の場合に、前記ベースステップ数を補正する補正ステップ数を更新する、ステップ数補正部と、前記ベースステップ数と前記補正ステップ数に基づいた最終ステップ数にて前記ステップモータを制御し、前記ベース噴射量と前記空燃比補正量に基づいた最終噴射量にて前記インジェクタを制御する、アクチュエータ制御部と、を有する。また前記制御装置は、前記ステップ数補正部にて、前記リーン継続状態の場合は、前記空燃比補正量による前記ベース噴射量の増量を禁止するとともに、前記リッチ状態に切り替わるまで、第1所定タイミング毎に、混合される燃料量が増加する側に前記補正ステップ数を更新し、前記リッチ継続状態の場合は、前記空燃比補正量による前記ベース噴射量の減量を禁止するとともに、前記リーン状態に切り替わるまで、第2所定タイミング毎に、混合される燃料量が減少する側に前記補正ステップ数を更新する、LPGエンジンシステムの制御装置である。
【0012】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るLPGエンジンシステムの制御装置であって、前記リーン継続状態は、前記リーン状態が継続されて前記空燃比補正量が補正の上限である上限補正量に張り付いた状態であり、前記第1所定タイミング毎とは、第1所定待機時間が経過する毎である、LPGエンジンシステムの制御装置である。
【0013】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係るLPGエンジンシステムの制御装置であって、前記リッチ継続状態は、前記リッチ状態が継続されて前記空燃比補正量が補正の下限である下限補正量に張り付いた状態であり、前記第2所定タイミング毎とは、第2所定待機時間が経過する毎である、LPGエンジンシステムの制御装置である。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、リーン継続状態の場合、空燃比補正量によるベース噴射量の増量を禁止するとともにリッチ状態に切り替わるまで、第1所定タイミング毎に、補正ステップ数を更新する。またリッチ継続状態の場合、空燃比補正量によるベース噴射量の減量を禁止するとともにリーン状態に切り替わるまで、第2所定タイミング毎に、補正ステップ数を更新する。これにより、補正ステップ数の2回目以降の更新では、空燃比補正量が上限または下限に張り付くまで待つ必要が無く、ステップモータのステップ数に応じた燃料量に落ち込み部が有る場合であっても、より短時間に、狙った空燃比とすることができる。
【0015】
第2の発明によれば、リーン継続状態における補正ステップ数の更新を、適切に行うことができる。
【0016】
第3の発明によれば、リッチ継続状態における補正ステップ数の更新を、適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】LPGエンジンシステムの概略構成の例を説明する図である。
【
図2】運転状態に応じた、燃料ミキサのステップモータに対する、ベースステップ数特性の例を説明する図である。
【
図3】運転状態に応じた、インジェクタに対する、ベース噴射量特性の例を説明する図である。
【
図4】燃料ミキサのステップモータのベースステップ数にて吸気に混合される燃料量と、インジェクタのベース噴射量にて噴射される燃料量と、を説明する図である。
【
図5】制御装置における[全体処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図5に示すフローチャートにおける[仮空燃比補正係数の算出処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図7】
図5に示すフローチャートにおける[補正ステップ数の算出処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図8】ステップモータを駆動する[ステップモータの駆動処理]の例を説明するフローチャートである。
【
図9】インジェクタを駆動する[インジェクタの駆動処理]の例を説明するフローチャートである。
【
図10】本実施の形態における、リーン継続状態の場合の動作の例を説明する図である。
【
図11】本実施の形態における、リッチ継続状態の場合の動作の例を説明する図である。
【
図12】ステップモータを有する燃料ミキサの、ステップ数・空気流量特性の例を説明する図であり、流量の落ち込み部を有する例を説明する図である。
【
図13】従来の、リーン継続状態の場合の動作の例を説明する図である。
【
図14】従来の、リッチ継続状態の場合の動作の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
●[LPGエンジンシステム1の概略構成の例(
図1)]
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず
図1を用いて、LPGエンジンシステム1の概略構成の例について説明する。本実施の形態の説明では、フォークリフトに搭載されたLPGエンジンシステム1を例として説明する。
【0019】
以下、LPGエンジンシステム1の概略全体構成について、吸気側から排気側に向かって順に説明する。なお、吸気管11A、11B、吸気マニホルド11Cは吸気経路に相当し、排気マニホルド12A、排気管12Bは排気経路に相当している。
【0020】
吸気管11Aには、エアクリーナ21が設けられている。また吸気管11Aの流出側には、吸気管11Bの流入側が接続されている。
【0021】
吸気管11Bには、燃料ミキサ30の燃料配管33が接続されている。燃料ミキサ30には、LPGレギュレータ50からの主燃料配管51が接続され、LPGレギュレータ50から燃料(燃料ガス)が供給されている。主燃料配管51から供給された燃料は、燃料配管33から吸気管11Bへと流れ、吸気と混合される。また燃料ミキサ30には、ステップモータ31とニードル32が設けられており、制御装置60は、ステップモータ31を制御することでニードル32の位置を制御し、燃料配管33の開度を調整することで、吸気に混合される燃料量を調整することができる。燃料ミキサ30は、吸気経路に設けられて、吸気経路内を流れる吸気に燃料を混合するとともに、混合させる燃料量をステップモータ31にて調整可能である。
【0022】
吸気管11Bにおける燃料配管33との接続個所よりも吸気の下流側には、ユーザのアクセルペダル操作に応じて吸気管11Bの開度を調整するスロットル弁22が設けられている。
【0023】
吸気管11Bにおけるスロットル弁22よりも吸気の下流側には、インジェクタ40が設けられている。インジェクタ40には、LPGレギュレータ50からの補助燃料配管52が接続され、LPGレギュレータ50から燃料(燃料ガス)が供給されている。補助燃料配管52から供給された燃料は、インジェクタ40から吸気管11Bの内部に噴射される。制御装置60は、インジェクタ40を制御することで、インジェクタから噴射される燃料量を調整することができる。インジェクタ40は、吸気経路に設けられて、吸気経路内に燃料を噴射するとともに、噴射する燃料量を調整可能である。
【0024】
吸気管11Bの流出側には、吸気マニホルド11Cの流入側が接続されている。また吸気マニホルド11Cの流出側は、LPGエンジン10の吸気口が接続されている。そして吸気マニホルド11Cには、圧力検出装置23(例えば、圧力センサ)が設けられている。制御装置60は、圧力検出装置23からの検出信号に基づいて、吸気マニホルド11C内の吸気の圧力を検出することができる。
【0025】
LPGエンジン10には、回転検出装置25、クーラント温度検出装置(図示省略)等が設けられている。回転検出装置25は、例えば回転センサであり、LPGエンジン10のクランクシャフトの回転角度(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置60に出力する。クーラント温度検出装置は、例えば温度センサであり、LPGエンジン10内に循環されている冷却用クーラントの温度に応じた検出信号を制御装置60に出力する。
【0026】
またLPGエンジン10には、点火プラグ42が設けられている。制御装置60は、イグナイタ41を介して点火プラグ42に点火信号を出力する。
【0027】
LPGエンジン10の排気口には排気マニホルド12Aの流入側が接続され、排気マニホルド12Aの流出側には排気管12Bの流入側が接続されている。
【0028】
排気管12Bには、空燃比関連量検出装置24が設けられており、空燃比関連量検出装置24は、例えばO2センサまたはA/Fセンサである。O2センサは、排気ガスが、理論空燃比に対して酸素が過剰なリーン状態の場合にはリーン検出信号を出力し、理論空燃比に対して燃料が過剰なリッチ状態の場合にはリッチ検出信号を出力する。またA/Fセンサは、排気ガスの空燃比(リーン状態、リッチ状態を含む)に応じた検出信号を出力する。つまり、空燃比関連量検出装置24は、リーン状態とリッチ状態に関連する空燃比関連情報を、制御装置60に出力する。
【0029】
排気管12Bの流出側には三元触媒70(排気浄化装置)が接続されている。三元触媒70を用いて排気を効率よく浄化するには、理論空燃比の近傍となるように燃料量を調整する必要がある。
【0030】
制御装置60は、CPU61、RAM62、記憶装置63、タイマ64等を有している。制御装置60(CPU61)には、上述した種々の検出装置からの検出信号が入力され制御装置60(CPU61)は、上述した種々のアクチュエータへの制御信号を出力する。なお、制御装置60の入出力は、上記の検出装置やアクチュエータに限定されるものではない。また、各部の温度や圧力等はセンサを搭載せずに推定計算により算出しても良い。制御装置60は、上記の検出装置を含めた各種の検出装置からの検出信号に基づいてLPGエンジン10の運転状態を検出し、上記のアクチュエータを含む各種のアクチュエータを制御する。記憶装置63は、例えばFlash-ROM等の記憶装置であり、LPGエンジン10の制御や自己診断等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。また制御装置60(CPU61)は、ベース燃料量算出部61A、空燃比補正量算出部61B、ステップ数補正部61C、アクチュエータ制御部61D等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0031】
●[ベースステップ数とベース噴射量(
図2~
図4)]
LPGエンジン10に供給される燃料量は、燃料ミキサ30から吸気に混合される燃料量と、インジェクタ40から噴射される燃料量と、の合計となる。
【0032】
例えば記憶装置63には、LPGエンジンの回転数(N1、N2・・)と、吸気マニホルド内の吸気圧(P1、P2・・)と、に応じたベースステップ数(Sxx)が設定されたベースステップ数特性(
図2参照)が記憶されている。制御装置60は、LPGエンジンの運転状態を検出し、運転状態に応じて求めたベースステップ数に基づいて、燃料ミキサ30のステップモータ31を制御し、燃料ミキサ30から吸気に混合される燃料量を調整する。なおベースステップ数特性は、LPGエンジンの回転数と吸気マニホルド内の吸気圧に応じた
図2に示す特性に限定されるものではなく、種々の運転状態に応じて設定されていてもよい。
【0033】
また例えば記憶装置63には、LPGエンジンの回転数(N1、N2・・)と、吸気マニホルド内の吸気圧(P1、P2・・)と、に応じたベース噴射量(Bxx)が設定されたベース噴射量特性(
図3参照)が記憶されている。制御装置60は、LPGエンジンの運転状態を検出し、運転状態に応じて求めたベース噴射量に基づいて、インジェクタ40を制御し、インジェクタ40から吸気管11B内に噴射される燃料量を調整する。なおベース噴射量特性は、LPGエンジンの回転数と吸気マニホルド内の吸気圧に応じた
図3に示す特性に限定されるものではなく、種々の運転状態に応じて設定されていてもよい。
【0034】
図4は、LPGエンジン10に供給される燃料量のイメージを示している。上記のようにLPGエンジンには、燃料ミキサ30から吸気に混合される燃料量Mと、インジェクタから噴射される燃料量B(ベース噴射量)と、を合計した総燃料量Qが供給される。また制御装置60は、インジェクタ40から噴射される燃料量B(ベース噴射量)を、空燃比等に応じて、下限量Bminから上限量Bmaxの間で、燃料ミキサ30からの燃料量Mと比較して、瞬時に、かつ、高精度に調整することができる。
【0035】
なお後述するように、制御装置60は、ステップモータ31を制御する際、「ベースステップ数+補助ステップ数」にて「最終ステップ数」を求め、最終ステップ数にてステップモータ31を制御する。また後述するように、制御装置60は、インジェクタ40を制御する際、「ベース噴射量*空燃比補正係数」にて「最終噴射量」を求め、最終噴射量にてインジェクタ40を制御する。
【0036】
●[制御装置60の処理手順(
図5~
図9)]
次に
図5~
図9に示すフローチャートを用いて、制御装置60による処理手順の例について説明する。制御装置60(CPU61)は、例えば所定時間間隔(例えば数[ms]間隔)にて、
図5に示す処理を起動し、ステップS010に処理を進める。
【0037】
ステップS010にて制御装置60は、LPGエンジンの種々の運転状態を検出し、ステップS015に処理を進める。例えば制御装置60は、
図1に示す各種の検出装置からの検出信号等に基づいて、エンジン回転数、吸気マニホルド内圧力、空燃比関連情報に基づいたリーン状態やリッチ状態等を検出する。
【0038】
ステップS015にて制御装置60は、検出した運転状態に基づいて、ベースステップ数、ベース噴射量を求め、求めたベースステップ数、ベース噴射量を記憶してステップS020へ処理を進める。例えば記憶装置63には、
図2に示すベースステップ数特性が記憶されており、制御装置60は、エンジン回転数と、吸気マニホルド内圧力と、ベースステップ数特性とに基づいて、ステップモータのベースステップ数を求める。また例えば記憶装置63には、
図3に示すベース噴射量特性が記憶されており、制御装置60は、エンジン回転数と、吸気マニホルド内圧力と、ベース噴射量特性とに基づいて、インジェクタのベース噴射量を求める。
【0039】
ステップS015の処理を実行している制御装置60(CPU61)は、運転状態に基づいて、ステップモータのベースステップ数と、インジェクタからのベース噴射量とを算出するベース燃料量算出部61A(
図1参照)に相当している。
【0040】
ステップS020にて制御装置60は、[仮空燃比補正係数の算出処理]を実行してステップS030へ処理を進める。なお[仮空燃比補正係数の算出処理]の詳細については後述する。
【0041】
ステップS030にて制御装置60は、[補正ステップ数の算出処理]を実行してステップS040へ処理を進める。なお[補正ステップ数の算出処理]の詳細については後述する。
【0042】
ステップS040にて制御装置60は、リーン継続フラグ(
図10、
図11参照)がONであるか否かを判定する。制御装置60は、リーン継続フラグがONである場合(Yes)はステップS050へ処理を進め、リーン継続フラグがOFFである場合(No)はステップS045へ処理を進める。
【0043】
ステップS045へ処理を進めた場合、制御装置60は、リッチ継続フラグがONであるか否かを判定する。制御装置60は、リッチ継続フラグがONである場合(Yes)はステップS050へ処理を進め、リッチ継続フラグがOFFである場合(No)はステップS055へ処理を進める。
【0044】
ステップS050へ処理を進めた場合、制御装置60は、仮空燃比補正係数に1.0(増量も減量もしない値)を設定し、ステップS055へ処理を進める。例えば
図10の例では、時刻Z11から時刻Z14における空燃比補正係数は、このステップS040、S045、S050にて設定される。
【0045】
ステップS055にて制御装置60は、仮空燃比補正係数の値を空燃比補正係数に代入してステップS060へ処理を進める。
【0046】
ステップS060にて制御装置60は、ステップモータの制御に用いる最終ステップ数と、インジェクタの制御に用いる最終噴射量とを算出して記憶し、ステップS065へ処理を進める。例えば制御装置60は、ベースステップ数+補正ステップ数を求め、求めた値を最終ステップ数に代入して記憶する。また制御装置60は、ベース噴射量*空燃比補正係数を求め、求めた値を最終噴射量に代入して記憶する。
【0047】
ステップS065にて制御装置60は、今回の処理にて取得した空燃比関連情報を前回空燃比に代入して記憶し、
図5に示す処理を終了する。
【0048】
●[仮空燃比補正係数の算出処理(
図6)]
次に
図6を用いて、
図5のステップS020の[仮空燃比補正係数の算出処理]の詳細について説明する。制御装置60は、
図5に示すステップS020に処理を進めた場合、
図6に示すステップS110へ処理を進める。
【0049】
ステップS110にて制御装置60は、LPGエンジンの運転状態に基づいて、空燃比補正の実行条件が成立しているか否かを判定する。なお、当該実行条件は既存の実行条件と同様であるので詳細については説明を省略する。制御装置60は、空燃比補正の実行条件が成立している場合(Yes)はステップS115へ処理を進め、実行条件が成立していない場合(No)はステップS130Aへ処理を進める。
【0050】
ステップS130Aへ処理を進めた場合、制御装置60は、仮空燃比補正係数に1.0(増量も減量もしない値)を代入して記憶し、ステップS140へ処理を進める。
【0051】
ステップS115へ処理を進めた場合、制御装置60は、前回空燃比(前回の空燃比関連情報)がリーン状態であり、かつ、今回空燃比(今回の空燃比関連情報)がリッチ状態であるか否かを判定する。制御装置60は、前回空燃比がリーン状態であり、かつ、今回空燃比がリッチ状態である場合(Yes)はステップS130Bへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS120へ処理を進める。
【0052】
ステップS130Bへ処理を進めた場合、制御装置60は、空燃比補正係数-K2を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、ステップS140へ処理を進める。例えば
図10の例では、時刻Z01のタイミングにおける空燃比補正係数は、このステップS130Bにて算出される。
【0053】
ステップS120へ処理を進めた場合、制御装置60は、前回空燃比(前回の空燃比関連情報)がリッチ状態であり、かつ、今回空燃比(今回の空燃比関連情報)がリーン状態であるか否かを判定する。制御装置60は、前回空燃比がリッチ状態であり、かつ、今回空燃比がリーン状態である場合(Yes)はステップS130Cへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS125へ処理を進める。
【0054】
ステップS130Cへ処理を進めた場合、制御装置60は、空燃比補正係数+K1を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、ステップS140へ処理を進める。例えば
図10の例では、時刻Z02のタイミングにおける空燃比補正係数は、このステップS130Cにて算出される。
【0055】
ステップS125に処理を進めた場合、制御装置60は、今回空燃比(今回の空燃比関連情報)がリッチ状態であるか否かを判定する。制御装置60は、今回空燃比がリッチ状態である場合(Yes)はステップS130Dへ処理を進め、今回空燃比がリーン状態である場合(No)はステップS130Eへ処理を進める。
【0056】
ステップS130Dへ処理を進めた場合、制御装置60は、空燃比補正係数-L2を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、ステップS140へ処理を進める。例えば
図10の例では、時刻Z01から時刻Z02の期間において徐々に減少する空燃比補正係数は、このステップS130Dにて算出される。
【0057】
ステップS130Eへ処理を進めた場合、制御装置60は、空燃比補正係数+L1を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、ステップS140へ処理を進める。例えば
図10の例では、時刻Z02から時刻Z03の期間において徐々に増加する空燃比補正係数は、このステップS130Eにて算出される。
【0058】
ステップS140に処理を進めた場合、制御装置60は、仮空燃比補正係数が上限補正量よりも大きいか否かを判定する。制御装置60は、仮空燃比補正係数が上限補正量よりも大きい場合(Yes)はステップS145へ処理を進め、仮空燃比補正量が上限補正量以下である場合(No)はステップS150へ処理を進める。
【0059】
ステップS145に処理を進めた場合、制御装置60は、上限補正量を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、ステップS150へ処理を進める。例えば
図10の例では、時刻Z10から時刻Z11の期間において上限補正量に張り付いている空燃比補正係数は、このステップS140、S145の処理による。
【0060】
ステップS150へ処理を進めた場合、制御装置60は、仮空燃比補正係数が下限補正量よりも小さいか否かを判定する。制御装置60は、仮空燃比補正係数が下限補正量よりも小さい場合(Yes)はステップS155へ処理を進め、仮空燃比補正量が下限補正量以上である場合(No)は、
図6に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS030へと処理を戻す。
【0061】
ステップS155に処理を進めた場合、制御装置60は、下限補正量を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、
図6に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS030へと処理を戻す。例えば
図11の例では、時刻Z60から時刻Z61の期間において下限補正量に張り付いている空燃比補正係数は、このステップS150、S155の処理による。
【0062】
図6に示す[仮空燃比補正係数の算出処理]を実行している制御装置60(CPU61)は、リーン状態が検出されている場合はベース噴射量を増量する側に補正し、リッチ状態が検出されている場合はベース噴射量を減量する側に補正する空燃比補正量(この場合、ベース噴射量に乗算する空燃比補正係数)を算出する、空燃比補正量算出部61B(
図1参照)に相当している。
【0063】
なお、K1、K2、L1、L2の値は、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって、適切な値が設定されている。
【0064】
●[補正ステップ数の算出処理(
図7)]
次に
図7を用いて、
図5のステップS030の[補正ステップ数の算出処理]の詳細について説明する。制御装置60は、
図5に示すステップS030に処理を進めた場合、
図7に示すステップS210へ処理を進める。
【0065】
ステップS210にて制御装置60は、リーン継続フラグがONであるか否かを判定する。制御装置60は、リーン継続フラグがONである場合(Yes)はステップS240へ処理を進め、リーン継続フラグがOFFである場合(No)はステップS215へ処理を進める。
【0066】
ステップS215へ処理を進めた場合、制御装置60は、仮空燃比補正係数が上限補正量以上であるか否かを判定する。制御装置60は、仮空燃比補正係数が上限補正量以上(仮空燃比補正係数が上限補正量に張り付いている)である場合(Yes)はステップS220へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS310へ処理を進める。
【0067】
●[仮空燃比補正係数が上限補正量に張り付いている場合の処理]
ステップS220へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマが起動中であるか否かを判定する。制御装置60は、上下限タイマを起動中である場合(Yes)はステップS230へ処理を進め、上下限タイマを起動中でない場合(No)はステップS225へ処理を進める。
【0068】
ステップS225へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマを起動して、仮空燃比補正係数が上限補正量以上となっている期間の計測を開始し、ステップS230へ処理を進める。
【0069】
ステップS230へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマが上限継続時間Th1(
図10の例では、時刻Z10から時刻Z11参照)以上であるか否かを判定する。制御装置60は、上下限タイマの計測時間が上限継続時間Th1以上である場合(Yes)はステップS235へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
【0070】
ステップS235へ処理を進めた場合、制御装置60は、リーン継続フラグをONに設定し、補正ステップ数+1を補正ステップ数に代入して記憶し、上下限タイマを初期化(リセット)し、ステップS240へ処理を進める。
図10に示す例の場合、時刻Z10から時刻Z11にて空燃比補正係数≧上限補正量が継続し、時刻Z11にて上下限タイマ≧上限継続時間Th1となり、リーン継続フラグがONに設定され、補正ステップ数が0から+1へと更新されている。
【0071】
ステップS240に処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマを起動中であるか否かを判定する。制御装置60は、待機タイマを起動中である場合(Yes)はステップS250へ処理を進め、待機タイマを起動中でない場合(No)はステップS245へ処理を進める。
【0072】
ステップS245へ処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマを起動してステップS250へ処理を進める。
【0073】
ステップS250へ処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマが第1所定待機時間Tw1(
図10の例では、時刻Z11から時刻Z14参照)以上であるか否かを判定する。制御装置60は、待機タイマが第1所定待機時間Tw1以上である場合(Yes)はステップS255へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
【0074】
ステップS255へ処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマを初期化(
図10の例では、時刻Z12、Z13、Z14で待機タイマをリセット)して、ステップS260へ処理を進める。
【0075】
ステップS260にて制御装置60は、今回リッチ状態(今回の空燃比関連情報がリッチ状態)であるか否かを判定する。制御装置60は、今回リッチ状態である場合(Yes)はステップS265へ処理を進め、今回リッチ状態でない場合(No)はステップS270へ処理を進める。
【0076】
ステップS265へ処理を進めた場合、制御装置60は、リーン継続フラグをOFFに設定し、空燃比補正係数-K2を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
図10に示す例では、ステップS265の処理は、時刻Z14のタイミングで実行されている。
【0077】
ステップS270へ処理を進めた場合、制御装置60は、補正ステップ数+1を補正ステップ数に代入して記憶し、
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
図10に示す例では、ステップS270の処理は、時刻Z12、Z13のタイミングで実行されている。
【0078】
ステップS310に処理を進めた場合、制御装置60は、リッチ継続フラグがONであるか否かを判定する。制御装置60は、リッチ継続フラグがONである場合(Yes)はステップS340へ処理を進め、リッチ継続フラグがOFFである場合(No)はステップS315へ処理を進める。
【0079】
ステップS315へ処理を進めた場合、制御装置60は、仮空燃比補正係数が下限補正量以下であるか否かを判定する。制御装置60は、仮空燃比補正係数が下限補正量以下(仮空燃比補正係数が下限補正量に張り付いている)である場合(Yes)はステップS320へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS390へ処理を進める。
【0080】
ステップS390へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマと待機タイマを初期化(リセット)して、
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
【0081】
●[仮空燃比補正係数が下限補正量に張り付いている場合の処理]
ステップS320へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマが起動中であるか否かを判定する。制御装置60は、上下限タイマを起動中である場合(Yes)はステップS330へ処理を進め、上下限タイマを起動中でない場合(No)はステップS325へ処理を進める。
【0082】
ステップS325へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマを起動して、仮空燃比補正係数が下限補正量以下となっている期間の計測を開始し、ステップS330へ処理を進める。
【0083】
ステップS330へ処理を進めた場合、制御装置60は、上下限タイマが下限継続時間Th2(
図11の例では、時刻Z60から時刻Z61参照)以上であるか否かを判定する。制御装置60は、上下限タイマの計測時間が下限継続時間Th2以上である場合(Yes)はステップS335へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
【0084】
ステップS335へ処理を進めた場合、制御装置60は、リッチ継続フラグをONに設定し、補正ステップ数-1を補正ステップ数に代入して記憶し、上下限タイマを初期化(リセット)し、ステップS340へ処理を進める。
図11に示す例の場合、時刻Z60から時刻Z61にて空燃比補正係数≦下限補正量が継続し、時刻Z61にて上下限タイマ≧下限継続時間Th2となり、リッチ継続フラグがONに設定され、補正ステップ数が0から-1へと更新されている。
【0085】
ステップS340に処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマを起動中であるか否かを判定する。制御装置60は、待機タイマを起動中である場合(Yes)はステップS350へ処理を進め、待機タイマを起動中でない場合(No)はステップS345へ処理を進める。
【0086】
ステップS345へ処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマを起動してステップS350へ処理を進める。
【0087】
ステップS350へ処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマが第2所定待機時間Tw2(
図11の例では、時刻Z61から時刻Z64参照)以上であるか否かを判定する。制御装置60は、待機タイマが第2所定待機時間Tw2以上である場合(Yes)はステップS355へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
【0088】
ステップS355へ処理を進めた場合、制御装置60は、待機タイマを初期化(
図11の例では、時刻Z62、Z63、Z64で待機タイマをリセット)して、ステップS360へ処理を進める。
【0089】
ステップS360にて制御装置60は、今回リーン状態(今回の空燃比関連情報がリーン状態)であるか否かを判定する。制御装置60は、今回リーン状態である場合(Yes)はステップS365へ処理を進め、今回リーン状態でない場合(No)はステップS370へ処理を進める。
【0090】
ステップS365へ処理を進めた場合、制御装置60は、リッチ継続フラグをOFFに設定し、空燃比補正係数+K1を仮空燃比補正係数に代入して記憶し、
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
図11に示す例では、ステップS365の処理は、時刻Z64のタイミングで実行されている。
【0091】
ステップS370へ処理を進めた場合、制御装置60は、補正ステップ数-1を補正ステップ数に代入して記憶し、
図7に示す処理を終了してリターンし、
図5に示すステップS040へ処理を戻す。
図11に示す例では、ステップS370の処理は、時刻Z62、Z63のタイミングで実行されている。
【0092】
図7に示す[補正ステップ数の算出処理]を実行している制御装置60(CPU61)は、リーン状態が所定の継続状態であるリーン継続状態の場合、あるいはリッチ状態が所定の継続状態であるリッチ継続状態の場合に、ベースステップ数を補正する補正ステップ数を更新する、ステップ数補正部61C(
図1参照)に相当している。なおリーン継続状態とは、リーン状態が継続されて空燃比補正係数(空燃比補正量)が補正の上限である上限補正量に張り付いた状態であり、リーン継続フラグ(
図10参照)がONに設定された状態である。またリッチ継続状態とは、リッチ状態が継続されて空燃比補正係数(空燃比補正量)が補正の下限である下限補正量に張り付いた状態であり、リッチ継続フラグ(
図11参照)がONに設定された状態である。
【0093】
以上、[補正ステップ数の算出処理]では、制御装置60は、リーン継続状態の場合(リーン継続フラグ=ONの場合)、空燃比補正係数(空燃比補正量)によるベース噴射量の増量を禁止するとともに(
図5のステップS040、S050参照)、リッチ状態に切り替わるまで、第1所定タイミング毎(第1所定待機時間Tw1が経過する毎)に、混合される燃料量が増加する側に補正ステップ数を更新し、リッチ状態に切り替わった場合は、リーン継続フラグをOFFに設定して処理を終了する。同様に、制御装置60は、リッチ継続状態の場合(リッチ継続フラグ=ONの場合)、空燃比補正係数(空燃比補正量)によるベース噴射量の減量を禁止するとともに(
図5のステップS045、S050参照)、リーン状態に切り替わるまで、第2所定タイミング毎(第2所定待機時間Tw2が経過する毎)に、混合される燃料量が減少する側に補正ステップ数を更新し、リーン状態に切り替わった場合は、リッチ継続フラグをOFFに設定して処理を終了する。
【0094】
なお、上限継続時間Th1、下限継続時間Th2、第1所定待機時間Tw1、第2所定待機時間Tw2の値は、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって、適切な値が設定されている。
【0095】
●[ステップモータの駆動処理(
図8)と、インジェクタの駆動処理(
図9)]
次に
図8を用いて、ステップモータの駆動処理について説明する。制御装置60は、ステップモータの駆動タイミング毎(例えば数[ms]程度の所定時間間隔)にて、ステップモータの駆動処理を起動し、
図8に示すステップS510へ処理を進める。
【0096】
ステップS510の処理は、最終ステップ数(
図5のステップS060にて算出して記憶)を用いてステップモータ31を制御する既存の処理であり、詳細については説明を省略する。
【0097】
次に
図9を用いて、インジェクタの駆動処理について説明する。制御装置60は、インジェクタの駆動タイミング毎(例えば所定クランク角度毎)にて、インジェクタの駆動処理を起動し、
図9に示すステップS610へ処理を進める。
【0098】
ステップS610の処理は、最終噴射量(
図5のステップS060にて算出して記憶)を用いてインジェクタ40を制御する既存の処理であり、詳細については説明を省略する。
【0099】
ステップS510、S610の処理を実行している制御装置60(CPU61)は、ベースステップ数と補正ステップ数に基づいた最終ステップ数にてステップモータ31を制御し、ベース噴射量と空燃比補正量(この場合、空燃比補正係数)に基づいた最終噴射量にてインジェクタ40を制御する、アクチュエータ制御部61D(
図1参照)に相当している。
【0100】
●[本実施の形態におけるリーン継続状態の場合の動作(
図10)]
図10は、リーン継続状態(リーン継続フラグがONとされた状態)の場合における、上記の処理による動作の例を示している。なお
図10に示す例は、時刻Z01において、ベースステップ数=Sa、補正ステップ数=0、の場合の例を示しており、燃料ミキサのステップモータ31の特性が
図12に示す特性である例を示している。
【0101】
時刻Z01~時刻Z10の期間において、リーン状態からリッチ状態へと切り替わったタイミング(時刻Z01、時刻Z03)では、空燃比補正係数は-K2だけ減量されている。またリッチ状態からリーン状態へと切り替わったタイミング(時刻Z02、時刻Z04)では、空燃比補正係数は+K1だけ増量されている。またリーン状態が維持されている時刻Z02から時刻Z03の期間、及び時刻Z04から時刻Z10の期間では、空燃比補正係数は+L1ずつ徐々に増加されている。またリッチ状態が維持されている時刻Z01から時刻Z02の期間、及び時刻Z03から時刻Z04の期間では、空燃比補正係数は-L2ずつ徐々に減少されている。
【0102】
時刻Z10では、リーン状態の継続によって空燃比補正係数が上限補正量に張り付いている。また時刻Z11では、上下限タイマ≧上限継続時間Th1により、補正ステップ数が0から+1に更新され、最終ステップ数=Sa+1とされているとともに、リーン継続フラグがONに設定されて空燃比補正係数が1.0に設定されている。なお
図12に示すように、最終ステップ数をSaからSa+1に更新しても、落ち込み部Rにより、空気流量はほとんど増量されないので、混合される燃料量もほとんど増量されず、空燃比関連情報はリーン状態のままである。
【0103】
時刻Z11にてリーン継続フラグがONに設定されると、その後は、リッチ状態が検出されるまで、待機タイマ≧第1所定待機時間Tw1となる毎(第1所定待機時間Tw1が経過する毎)に、補正ステップ数が更新される。
図10の例では、時刻Z12のタイミングにてリッチ状態が検出されていないので、補正ステップ数が+1から+2に更新されて最終ステップ数がSa+2に更新されている。さらに時刻Z13のタイミングでもリッチ状態が検出されていないので、補正ステップ数が+2から+3に更新されて最終ステップ数がSa+3に更新されている。
【0104】
図12に示すように、ステップ数がSa+3になると、空気流量が増量されて混合される燃料量も増量されるので、時刻Z14のタイミングでは、空燃比関連情報がリッチ状態に切り替わっている。時刻Z14のタイミングでは、リーン継続フラグがOFFに設定され、補正ステップ数の値は維持され、空燃比補正係数が減量側に制御される。
【0105】
図10に示す本実施の形態におけるリーン継続状態の場合の動作では、
図13に示す従来のリーン継続状態の場合の動作と比較して、空燃比補正係数(
図13の例ではインジェクタの噴射量)が上限に張り付いてからステップモータのステップ数を更新して実際にリッチ状態が検出されるまでの時間(
図10の例では時間TSh、
図13の例では時間TSz)を、非常に短くすることができる。これにより、狙った空燃比となるまでの時間をより短くすることが可能であり、その間の排気の浄化率の低下を抑制することができる。
【0106】
●[本実施の形態におけるリッチ継続状態の場合の動作(
図11)]
図11は、リッチ継続状態(リッチ継続フラグがONとされた状態)の場合における、上記の処理による動作の例を示している。なお
図11に示す例は、時刻Z51において、ベースステップ数=Sa+2、補正ステップ数=0、の場合の例を示しており、燃料ミキサのステップモータ31の特性が
図12に示す特性である例を示している。
【0107】
時刻Z51~時刻Z60の期間において、リーン状態からリッチ状態へと切り替わったタイミング(時刻Z51、時刻Z53)では、空燃比補正係数は-K2だけ減量されている。またリッチ状態からリーン状態へと切り替わったタイミング(時刻Z52)では、空燃比補正係数は+K1だけ増量されている。またリーン状態が維持されている時刻Z52から時刻Z53の期間では、空燃比補正係数は+L1ずつ徐々に増加されている。またリッチ状態が維持されている時刻Z51から時刻Z52の期間、及び時刻Z53から時刻Z60の期間では、空燃比補正係数は-L2ずつ徐々に減少されている。
【0108】
時刻Z60では、リッチ状態の継続によって空燃比補正係数が下限補正量に張り付いている。また時刻Z61では、上下限タイマ≧下限継続時間Th2により、補正ステップ数が0から-1に更新され、最終ステップ数=Sa+1とされているとともに、リッチ継続フラグがONに設定されて空燃比補正係数が1.0に設定されている。なお
図12に示すように、最終ステップ数をSa+2からSa+1に更新しても、落ち込み部Rにより、空気流量はほとんど減量されないので、混合される燃料量もほとんど減量されず、空燃比関連情報はリッチ状態のままである。
【0109】
時刻Z61にてリッチ継続フラグがONに設定されると、その後は、リーン状態が検出されるまで、待機タイマ≧第2所定待機時間Tw2となる毎(第2所定待機時間Tw2が経過する毎)に、補正ステップ数が更新される。
図11の例では、時刻Z62のタイミングにてリーン状態が検出されていないので、補正ステップ数が-1から-2に更新されて最終ステップ数がSaに更新されている。さらに時刻Z63のタイミングでもリーン状態が検出されていないので、補正ステップ数が-2から-3に更新されて最終ステップ数がSa-1に更新されている。
【0110】
図12に示すように、ステップ数がSa-1になると、空気流量が減量されて混合される燃料量も減量されるので、時刻Z64のタイミングでは、空燃比関連情報がリーン状態に切り替わっている。時刻Z64のタイミングでは、リッチ継続フラグがOFFに設定され、補正ステップ数の値は維持され、空燃比補正係数が増量側に制御される。
【0111】
図11に示す本実施の形態におけるリッチ継続状態の場合の動作では、
図14に示す従来のリッチ継続状態の場合の動作と比較して、空燃比補正係数(
図14の例ではインジェクタの噴射量)が下限に張り付いてからステップモータのステップ数を更新して実際にリーン状態が検出されるまでの時間(
図11の例では時間TSh、
図13の例では時間TSz)を、非常に短くすることができる。これにより、狙った空燃比となるまでの時間をより短くすることが可能であり、その間の排気の浄化率の低下を抑制することができる。
【0112】
本発明のLPGエンジンシステムの制御装置は、本実施の形態で説明した構成、構造、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば処理手順は、本実施の形態で説明したフローチャートに限定されるものではなく、動作波形も
図10や
図11に示した波形に限定されるものではない。
【0113】
本実施の形態の説明では、最終噴射量=ベース噴射量*空燃比補正係数、としたが、最終噴射量=ベース噴射量*空燃比補正係数*その他の係数、としてもよいし、最終噴射量=(ベース噴射量+空燃比補正量)*その他の係数、等としてもよい。なお、その他の係数とは、例えば暖機用の係数や、加速時や減速時の過渡補正係数などであり、空燃比補正量は、空燃比に応じて増減させた量である。
【0114】
本実施の形態の説明では、空燃比関連情報を出力する空燃比関連量検出装置の例として、O2センサを用いたが、O2センサの代わりにA/Fセンサを用いてもよい。
【0115】
また、本発明のLPGエンジンシステムの制御装置は、LPGエンジンに限定されず、ステップモータを有する燃料ミキサと、インジェクタと、にて燃料量を理論空燃比の近傍に調整する種々のエンジンに適用することが可能である。
【0116】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(より小さい)(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 LPGエンジンシステム
10 LPGエンジン
11A、11B 吸気管
11C 吸気マニホルド
12A 排気マニホルド
12B 排気管
21 エアクリーナ
22 スロットル弁
23 圧力検出装置
24 空燃比関連量検出装置
25 回転検出装置
30 燃料ミキサ
31 ステップモータ
32 ニードル
33 燃料配管
40 インジェクタ
41 イグナイタ
42 点火プラグ
50 LPGレギュレータ
51 主燃料配管
52 補助燃料配管
60 制御装置
61 CPU
61A ベース燃料量算出部
61B 空燃比補正量算出部
61C ステップ数補正部
61D アクチュエータ制御部
63 記憶装置
70 三元触媒
Th1 上限継続時間
Th2 下限継続時間
Tw1 第1所定待機時間
Tw2 第2所定待機時間