(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173736
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】変性共役ジエン重合体、変性共役ジエン重合体の製造方法、及び、ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08C 19/25 20060101AFI20221115BHJP
C08F 236/08 20060101ALI20221115BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221115BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221115BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221115BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20221115BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08C19/25
C08F236/08
C08K3/36
C08K3/04
C08L21/00
C08L15/00
C08K5/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079623
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】新家 雄
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC00W
4J002AC011
4J002AC11X
4J002DA036
4J002DA049
4J002DE107
4J002DJ016
4J002EF059
4J002EX088
4J002FD016
4J002FD149
4J002FD157
4J002FD208
4J002GM01
4J002GN01
4J002GT00
4J100AS03P
4J100CA01
4J100HA37
4J100HA61
4J100HC45
4J100HC77
4J100HC83
4J100HE05
4J100HG08
4J100JA28
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】補強用充填剤を含有するゴム組成物に配合したときに、補強用充填剤が優れた分散性を示し、また、得られるゴム組成物が優れた低発熱性及び剛性を示す、変性共役ジエン重合体、その製造方法、及び、上記変性共役ジエン重合体を含有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有する共役ジエン重合体である、変性共役ジエン重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有する共役ジエン重合体である、変性共役ジエン重合体。
【請求項2】
前記共役ジエン重合体が、イソプレン重合体である、請求項1に記載の変性共役ジエン重合体。
【請求項3】
変性率が、0.3~3.0モル%である、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン重合体。
ここで、変性率は、変性共役ジエン重合体の全繰り返し単位に対する、前記官能基を有する繰り返し単位の割合を表す。
【請求項4】
共役ジエン重合体と分岐状アルキルリチウムとを混合することで、前記共役ジエン重合体の主鎖に炭素原子アニオンを生成させる、分岐状アルキルリチウム添加工程と、
さらに、窒素原子及びケイ素原子を含む化合物を混合することで、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性共役ジエン重合体を得る、変性工程とを備える、変性共役ジエン重合体の製造方法。
【請求項5】
ゴム成分と、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性共役ジエン重合体と、補強用充填剤とを含有し、
前記補強用充填剤が、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含む、ゴム組成物。
【請求項6】
前記補強用充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、30~100質量部である、請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
さらに、シランカップリング剤を含有し、
前記補強用充填剤が、シリカを含み、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、請求項5又は6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム成分が、天然ゴムを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン重合体、変性共役ジエン重合体の製造方法、及び、ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤ等に使用されるゴム組成物にはカーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤が配合される。一方で、補強用充填剤同士の相互作用により、ゴム組成物中で補強用充填剤が凝集して十分な特性が得られない場合がある。
【0003】
このようななか、例えば、特許文献1には、補強用充填剤を含有するゴム組成物への配合剤として、変性液状ジエン系ゴム(変性共役ジエン重合体)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者が特許文献1に記載の変性共役ジエン重合体について検討したところ、補強用充填剤を含有するゴム組成物に配合した場合に、補強用充填剤の分散性は昨今求められているレベルを必ずしも満たすものではないことが明らかになった。また、得られるゴム組成物の低発熱性及び剛性も不十分となる場合が明らかになった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、補強用充填剤を含有するゴム組成物に配合したときに、補強用充填剤が優れた分散性を示し、また、得られるゴム組成物が優れた低発熱性及び剛性を示す、変性共役ジエン重合体、その製造方法、及び、上記変性共役ジエン重合体を含有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有する共役ジエン重合体である変性共役ジエン重合体を用いることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
(1) 主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有する共役ジエン重合体である、変性共役ジエン重合体。
(2) 上記共役ジエン重合体が、イソプレン重合体である、上記(1)に記載の変性共役ジエン重合体。
(3) 変性率が、0.3~3.0モル%である、上記(1)又は(2)に記載の変性共役ジエン重合体。
ここで、変性率は、変性共役ジエン重合体の全繰り返し単位に対する、上記官能基を有する繰り返し単位の割合を表す。
(4) 共役ジエン重合体と分岐状アルキルリチウムとを混合することで、上記共役ジエン重合体の主鎖に炭素原子アニオンを生成させる、分岐状アルキルリチウム添加工程と、
さらに、窒素原子及びケイ素原子を含む化合物を混合することで、上記(1)~(3)のいずれかに記載の変性共役ジエン重合体を得る、変性工程とを備える、変性共役ジエン重合体の製造方法。
(5) ゴム成分と、上記(1)~(3)のいずれかに記載の変性共役ジエン重合体と、補強用充填剤とを含有し、
上記補強用充填剤が、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含む、ゴム組成物。
(6) 上記補強用充填剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、30~100質量部である、上記(5)に記載のゴム組成物。
(7) さらに、シランカップリング剤を含有し、
上記補強用充填剤が、シリカを含み、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、上記(5)又は(6)に記載のゴム組成物。
(8) 上記ゴム成分が、天然ゴムを含む、上記(5)~(7)のいずれかに記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、補強用充填剤を含有するゴム組成物に配合したときに、補強用充填剤が優れた分散性を示し、また、得られるゴム組成物が優れた低発熱性及び剛性を示す、変性共役ジエン重合体、その製造方法、及び、上記変性共役ジエン重合体を含有するゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の変性共役ジエン重合体、その製造方法、及び、本発明のゴム組成物について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、「補強用充填剤の分散性」を単に「分散性」とも言う。
また、本発明の変性共役ジエン重合体について、「補強用充填剤を含有するゴム組成物に配合したときに、補強用充填剤が優れた分散性を示し、また、得られるゴム組成物が優れた低発熱性、剛性及び耐摩耗性を示す」ことを「本発明の効果等が優れる」とも言う。
また、本発明の変性共役ジエン重合体を含有するゴム組成物について、「補強用充填剤が優れた分散性を示し、また、低発熱性、剛性及び耐摩耗性を示す」ことを「本発明の効果等が優れる」とも言う。
また、本明細書において、「固体」とは、25℃、1atmで固体であることを意味し、「液状」とは、25℃、1atmで液状であることを意味する。
【0011】
[1]変性共役ジエン重合体
本発明の変性共役ジエン重合体(以下、単に「本発明の重合体」とも言う)は、
主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を有する共役ジエン重合体である、変性共役ジエン重合体である。
【0012】
本発明の重合体はこのような構成をとるため、上述した本発明の課題を解決することができるものと考えられる。その理由は、補強用充填剤を含有するゴム組成物に本発明の重合体を配合した場合、本発明の重合体の骨格部分はゴム成分と相互作用し、また、本発明の重合体が有する窒素原子及びケイ素原子を含む官能基は補強用充填剤と極めて強く相互作用し、結果として、ゴム組成物中の補強用充填剤の分散性が極めて良好になるためと考えられる。
【0013】
以下、本発明の重合体について詳述する。
【0014】
[骨格]
本発明の重合体は、骨格が共役ジエンの重合体(共役ジエン重合体)である。
上記共役ジエン重合体の共役ジエンは特に制限されないが、その具体例としては、イソプレン、ブタジエン、ファルネセン、クロロプレン等が挙げられる。
上記共役ジエンは、本発明の効果等がより優れる理由から、イソプレンであることが好ましい。すなわち、本発明の重合体の骨格は、本発明の効果等がより優れる理由から、イソプレン重合体であることが好ましい。
【0015】
[特定官能基]
上述のとおり、本発明の重合体は、主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(以下、「特定官能基」とも言う)を有する。
【0016】
〔好適な態様〕
特定官能基は窒素原子及びケイ素原子を含む官能基であれば特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR2:Rは水素原子又は置換基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0017】
特定官能基は、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(M)で表される基であることが好ましい。
【0018】
【0019】
上記式(M)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
上記式(M)中、Lは、単結合又は2価の有機基を表す。
【0020】
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基(特にアルキルシリル基)、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0021】
上記式(M)中、R1は、本発明の効果等がより優れる理由から、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(特にトリアルキルシリル基)(好ましくは、炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、水素原子、アルキルシリル基(特にトリアルキルシリル基)(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
複数あるR1は同一であっても異なっていてもよい。
複数あるR1が異なる場合、複数あるR1の組合せは、本発明の効果等がより優れる理由から、水素原子と、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(特にトリアルキルシリル基)(好ましくは、炭素数1~10)又は芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)との組合せが好ましく、水素原子とアルキルシリル基(特にトリアルキルシリル基)(好ましくは、炭素数1~10)との組合せがより好ましく、水素原子とトリアルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)との組合せがさらに好ましい。
【0022】
R2は、本発明の効果等がより優れる理由から、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
【0023】
上述のとおり、上記式(M)中、Lは、単結合又は2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6~18)、-O-、-S-、-SO2-、-N(R)-(R:アルキル基)、-CO-、-NH-、-COO-、-CONH-、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(-CmH2mO-:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1~10)であることが好ましい。
【0024】
上記式(M)中、nは、0~2の整数を表す。
nは、本発明の効果等がより優れる理由から、2であることが好ましい。
【0025】
上記式(M)中、mは、1~3の整数を表す。
mは、本発明の効果等がより優れる理由から、1であることが好ましい。
【0026】
上記式(M)中、n及びmは、n+m=3の関係式を満たす。
【0027】
上記式(M)中、*は、結合位置を表す。
【0028】
〔変性率〕
本発明の重合体の変性率は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~10.0モル%であることが好ましく、0.2~5.0モル%であることがより好ましく、0.3~3.0モル%であることがさらに好ましく、0.5~2.0モル%であることが特に好ましい。
ここで変性率とは、本発明の重合体の全繰り返し単位に対する、主鎖に特定官能基を有する繰り返し単位の割合を表す。
【0029】
[末端]
本発明の重合体の末端の構造は特に制限されず、変性されていても変性されていなくてもよい。本発明の重合体は末端に上述した特定官能基を有していてもよい。
【0030】
[分子量]
【0031】
〔重量平均分子量〕
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~1,000,000であることが好ましく、2,000~500,000であることがより好ましく、10,000以上100,000未満であることがさらに好ましい。
【0032】
〔数平均分子量〕
本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~1,000,000であることが好ましく、2,000~500,000であることがより好ましく、10,000以上100,000未満であることがさらに好ましい。
【0033】
〔分子量分布〕
本発明の重合体の分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
【0034】
〔測定方法〕
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0035】
[性状]
本発明の重合体は、本発明の効果等がより優れる理由から、液状であることが好ましい。
【0036】
[製造方法]
本発明の重合体の製造方法は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、下記(1)~(2)の工程を備える方法(以下、「本発明の製造方法」とも言う)であることが好ましい。
【0037】
(1)分岐状アルキルリチウム添加工程
共役ジエン重合体と分岐状アルキルリチウムとを混合することで、上記共役ジエン重合体の主鎖に炭素原子アニオンを生成させる工程
(2)変性工程
さらに、窒素原子及びケイ素原子を含む化合物を混合することで、本発明の重合体を得る工程
【0038】
以下、各工程について説明する。
【0039】
〔分岐状アルキルリチウム添加工程〕
分岐状アルキルリチウム添加工程は、共役ジエン重合体と分岐状アルキルリチウムとを混合することで、上記共役ジエン重合体の主鎖に炭素原子アニオンを生成させる工程である。
【0040】
<共役ジエン重合体>
分岐状アルキルリチウム添加工程で使用される共役ジエン重合体は特に制限されず、その骨格、末端、分子量、性状の具体例及び好適な態様は、本発明の重合体と同じである。
【0041】
<分岐状アルキルリチウム>
分岐状アルキルリチウム添加工程で使用される分岐状アルキルリチウムは、分岐状アルキル基とリチウム原子とが結合した化合物である。
分岐状アルキル基の炭素数は、本発明の効果等がより優れる理由から、3~10であることが好ましい。
分岐状アルキルリチウムの具体例としては、iso-プロピルリチウム、sec-ブチルリチウム(BuLi)、tert-ブチルリチウム(BuLi)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、sec-ブチルリチウム(BuLi)が好ましい。
【0042】
〔変性工程〕
変性工程は、さらに、窒素原子及びケイ素原子を含む化合物を混合することで、本発明の重合体を得る工程である。
変性工程では、上述した分岐状アルキルリチウム添加工程で生成した共役ジエン重合体の主鎖の炭素原子アニオンと、窒素原子及びケイ素原子を含む化合物とが反応して、主鎖に窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(特定官能基)を有する共役ジエン重合体(本発明の重合体)が得られる。
【0043】
<特定化合物>
変性工程で使用される、窒素原子及びケイ素原子を含む化合物(以下、「特定化合物」とも言う)は特に限定されないが、求電子性を有するものであることが好ましい。
特定化合物は、本発明の効果等がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR2:Rは水素原子又は置換基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。なお、ヒドロカルビルオキシシリル基は求電子性を有すると考えられる
【0044】
特定化合物は、本発明の効果等がより優れる理由から、シラザンであることが好ましく、環状シラザンであることがより好ましい。ここで、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si-N結合を有する化合物)を意図する。
【0045】
上記環状シラザンは、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(S)で表される化合物であることが好ましい。
【0046】
【0047】
上記式(S)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例及び好適な態様は上述した式(M)中のR1及びR2と同じである。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。2価の有機基の具体例及び好適な態様は、上述した式(M)中のLと同じである。
【0048】
上記式(S)中、R1は、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(特にトリアルキルシリル基)(好ましくは、炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、アルキルシリル基(特にトリアルキルシリル基)であることがより好ましい。
【0049】
上記式(S)中、R2及びR3は、本発明の効果等がより優れる理由から、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
【0050】
上記式(S)中、Lは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは3~5)であることが好ましい。
【0051】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N-n-ブチル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-フェニル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-トリメチルシリル-1,1-ジエトキシ-2-アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を有すると考えられる。
【0052】
[2]ゴム組成物
本発明のゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ゴム成分と、上述した本発明の重合体と、補強用充填剤とを含有し、
上記補強用充填剤が、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含む、ゴム組成物である。
【0053】
[ゴム成分]
上述のとおり、本発明の組成物はゴム成分を含有する。
上記ゴム成分は特に制限されない。ただし、上記ゴム成分には上述した本発明の重合体は含まれない。
【0054】
上記ゴム成分は、本発明の効果等がより優れる理由から、ジエン系ゴムであることが好ましい。
上記ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、天然ゴムが好ましい。
上記ゴム成分が天然ゴムを含む場合、上記ゴム成分中の天然ゴムの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上記ゴム成分中の天然ゴムの含有量の上限は特に制限されず、100質量%である。
【0055】
〔分子量〕
【0056】
<重量平均分子量>
上記ゴム成分の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000以上であることが好ましく、200,000~10,000,000であることがより好ましく、250,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0057】
<数平均分子量>
上記ゴム成分の重量平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、120,000~1,000,000であることがより好ましい。
【0058】
[補強用充填剤]
上述のとおり、本発明の組成物は、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含む補強用充填剤を含有する。
上記補強用充填剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラック及びシリカの両方を含むのが好ましい。
【0059】
〔カーボンブラック〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、補強用充填剤としてカーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0060】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0061】
〔シリカ〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、補強用充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0062】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積(以下、「CTAB吸着比表面積」を単に「CTAB」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、185m2/g以上であることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0063】
上記シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、194m2/g以上であることがより好ましい。
ここで、N2SAは、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0064】
シリカのCTAB吸着比表面積に対するシリカ窒素吸着比表面積の比(N2SA/CTAB)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.9~1.4であることが好ましい。
【0065】
本発明の組成物において、シリカの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
【0066】
〔含有量〕
本発明の組成物において、補強用充填剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、5~150質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物が2種以上の補強用充填剤を含有する場合、補強用充填剤の含有量は合計の含有量を意味する。
【0067】
[変性共役ジエン重合体]
上述のとおり、本発明の組成物は、上述した本発明の変性共役ジエン重合体(本発明の重合体)を含有する。本発明の重合体については上述のとおりである。
【0068】
〔含有量〕
本発明の組成物において、本発明の重合体の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましく、3~20質量部であることがさらに好ましい。
【0069】
また、本発明の組成物において、本発明の重合体の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した補強用充填剤(特にシリカ)の含有量に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、15~25質量%であることがさらに好ましい。
【0070】
[任意成分]
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤(促進剤)、加硫活性剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0071】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。特に、上述した補強用充填剤が少なくともシリカを含む場合、本発明の効果等がより優れる理由から、本発明の組成物はシランカップリング剤を含有するのが好ましい。
【0072】
シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0073】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0075】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
<含有量>
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0077】
また、本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0078】
[用途]
本発明の組成物は、例えば、タイヤ、コンベアベルト、ホース、防振材、ゴムロール、鉄道車両の外幌等に好適に用いられる。特に、タイヤ(特にトレッド)に好適に用いられる。
【実施例0079】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔合成例〕
以下のとおり、変性共役ジエン重合体を合成した。
ここで、変性共役ジエン重合体1~2は、後述する式(m1)で表される官能基(窒素原子及びケイ素原子を含む官能基)を主鎖に有する共役ジエン重合体であるため、上述した本発明の重合体に該当する。
一方、比較変性共役ジエン重合体は、トリエトキシシリル基含有基(ケイ素原子を含むが窒素原子を含まない官能基)を主鎖に有する共役ジエン重合体であるため、上述した本発明の重合体に該当しない。
【0080】
<合成例1>
sec-BuLi(関東化学製:1.2mol/L(シクロヘキサン/ヘキサン溶液)、25mL、30mmol)およびN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(関東化学製:10mL、67.1mmol)を、クラレ社製LIR-50(液状イソプレン重合体、Mn:54,000)(100g、1.47mol)のシクロヘキサン(500mL)混合溶液に加えて、室温で1時間攪拌した(分岐状アルキルリチウム添加工程)。
反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(下記構造)(20mL、82mmol)を投入し、反応させた(変性工程)。
得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(1L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。
その結果、下記式(m1)で表される官能基(ここで、*は結合位置を表す)を主鎖に有するイソプレン重合体である変性イソプレン重合体(液状)(変性率:0.8モル%)を99%の収率で得た。得られた変性イソプレン重合体を「変性共役ジエン重合体1」とも言う。
【0081】
【0082】
【0083】
<合成例2>
N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタンの量を「20mL、82mmol」から「40mL、164mmol」に変更した点以外は合成例1と同様の手順に従って変性イソプレン重合体を99%の収率で得た。
得られた変性イソプレン重合体は、上記式(m1)で表される官能基を主鎖に有するイソプレン重合体である変性イソプレン重合体(液状)(変性率:1.5モル%)であった。得られた変性イソプレン重合体を「変性共役ジエン重合体2」とも言う。
【0084】
<合成例3>
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、ブタジエン重合体を得た。得られたブタジエン重合体は、Mwが38,000である、ブタジエン重合体(液状)(Tg:-90℃)であった。
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られたブタジエン重合体700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン1.0gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン50gを添加し、105℃で8時間反応させて、変性ブタジエン重合体を得た。得られた変性ブタジエン重合体は、Mwが38,000であり、主鎖に平均4個のトリエトキシシリル基含有基を有するブタジエン重合体である、変性ブタジエン重合体(液状)(変性率:約0.8モル%)(Tg:-90℃)であった。得られた変性ブタジエン重合体を比較変性共役ジエン重合体とも言う。
【0085】
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表1に示される成分のうち硫黄及び促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄及び促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
【0086】
〔評価〕
得られた各ゴム組成物について下記のとおり評価を行った。
【0087】
<分散性>
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
得られた加硫ゴムシートについて、歪せん断応力測定機(RPA2000、α-テクノロジー社製)により、歪0.28%の歪せん断弾性率G′と歪30.0%の歪せん断弾性率G′とを測定し、その差G′0.28(MPa)-G′30.0(MPa)をペイン効果として算出した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど補強用充填剤の分散性に優れることを意味する。指数が80以下であることが好ましい。
【0088】
<低発熱性>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど低発熱性に優れることを意味する。指数が95以下であることが好ましい。
【0089】
<300%モジュラス>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で300%モジュラス(300%変形時の応力)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が大きいほど剛性に優れることを意味する。指数が101以上であることが好ましい。
【0090】
<耐摩耗性>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6264-1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗量を測定した。そして下記式から耐摩耗性指数を算出した。
結果を表1に示す。指数が大きいほど摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れることを意味する。
耐摩耗性指数=(比較例1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
【0091】
【0092】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、NRは、固体であり、Mnは100,000以上であり、変性共役ジエン重合体1~2及び比較変性共役ジエン重合体は、液状であり、Mnは100,000未満である。
・NR:VON BUNDIT社製TSR20(重量平均分子量:1,890,000)
・シリカ:Zeosil Premium 200MP(シリカ、N2SA=200m2/g、CTAB=200m2/g、N2SA/CTAB=1.0、ローディア社製)
・CB:キャボットジャパン社製ショウブラックN220(カーボンブラック)
・ステアリン酸:NOF CORPORATION社製ステアリン酸
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69
・共役ジエン重合体:クラレ社製LIR-50(液状イソプレン重合体、Mn:54,000)
・変性共役ジエン重合体1~2:上述のとおり合成した変性共役ジエン重合体1~2
・比較変性共役ジエン重合体:上述のとおり合成した比較変性共役ジエン重合体
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・促進剤:大内新興化学社製ノクセラーNS-P
【0093】
表1から分かるように、本発明の重合体を含有する実施例1~4は、優れた、分散性、低発熱性及び剛性を示した。
また、実施例1と実施例3との対比(本発明の重合体の含有量のみが異なる態様同士の対比)から、本発明の重合体の含有量が、ゴム成分100質量部に対して7質量部以上である実施例3は、より優れた、分散性及び低発熱性を示した。同様に、実施例2と実施例4との対比(本発明の重合体の含有量のみが異なる態様同士の対比)から、本発明の重合体の含有量が、ゴム成分100質量部に対して7質量部以上である実施例4は、より優れた、分散性及び低発熱性を示した。
また、実施例1と実施例2との対比(本発明の重合体の変性率のみが異なる態様同士の対比)から、本発明の重合体の変性率が1.0モル%以上である実施例2は、より優れた、分散性及び低発熱性を示した。同様に、実施例3と実施例4との対比(本発明の重合体の変性率のみが異なる態様同士の対比)から、本発明の重合体の変性率が1.0モル%以上である実施例4は、より優れた、分散性及び低発熱性を示した。
【0094】
一方、本発明の重合体を含有しない比較例1~4は、分散性、低発熱性及び剛性の少なくとも1つが不十分であった。