(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173748
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】積層体、回路基板及び回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/44 20060101AFI20221115BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20221115BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221115BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H05K3/44 Z
B32B15/04 Z
B32B15/08 U
B32B15/08 J
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079642
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】権田 悠平
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良太
【テーマコード(参考)】
4F100
5E315
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA12B
4F100AA19B
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4F100AB01A
4F100AB01C
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5E315AA03
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5E315DD05
5E315GG14
(57)【要約】
【課題】高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性を有する金属ベース回路基板を形成可能な積層体を提供すること。
【解決手段】第一の金属層と、前記第一の金属層上に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に配置された第二の金属層と、を備え、前記第一の金属層の前記絶縁層との接合面、及び、前記第二の金属層の前記絶縁層との接合面のうち少なくとも一方が、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線を示す、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属層と、
前記第一の金属層上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層上に配置された第二の金属層と、
を備え、
前記第一の金属層の前記絶縁層との接合面、及び、前記第二の金属層の前記絶縁層との接合面のうち少なくとも一方が、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線を示す、積層体。
【請求項2】
前記第一の金属層の前記絶縁層との接合面、及び、前記第二の金属層の前記絶縁層との接合面の両方が前記表面粗さ曲線を示す、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記絶縁層の厚みが30μm以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第一の金属層及び前記第二の金属層が、アルミニウム、銅、鉄、銀、金、亜鉛、ニッケル及び錫からなる群より選択される少なくとも一種の金属原子を60質量%以上含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記絶縁層が、絶縁性樹脂硬化体と無機充填材とを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
金属層と、前記金属層上に配置された絶縁層と、前記絶縁層上に配置された金属回路部と、を備え、
前記金属層の前記絶縁層との接合面、及び、前記金属回路部の前記絶縁層との接合面のうち少なくとも一方が、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線を示す、回路基板。
【請求項7】
前記金属層の前記絶縁層との接合面、及び、前記金属回路部の前記絶縁層との接合面の両方が前記表面粗さ曲線を示す、請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を準備する工程と、
前記積層体の前記第一の金属層の一部、又は、前記第二の金属層の一部を除去して、金属回路部を形成する工程と、
を含む、回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板(金属ベース回路基板)の製造に好適に用いられる積層体、回路基板及び回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をはじめとする電子・電気部品を搭載して混成集積回路を形成するための回路基板として、これまで様々な回路基板が実用化されている。回路基板は、基板材質に基づいて、樹脂回路基板、セラミックス回路基板、金属ベース回路基板等に分類されている。
【0003】
樹脂回路基板は、安価ではあるが基板の熱伝導性が低いので比較的小さな電力で利用される用途に制限される。セラミックス回路基板は、電気絶縁性及び耐熱性が高いというセラミックスの特徴から、比較的大きな電力で利用される用途に適するが、高価であるという欠点を有している。一方、金属ベース回路基板は、両者の中間的な性質を有し、比較的大きな電力で利用される汎用的な用途、例えば、冷蔵庫用インバーター、業務用空調用インバーター、産業用ロボット用電源、自動車用電源等の用途に好適である。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定のエポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を必須成分とする回路基板用組成物を用いて、応力緩和性、耐熱性、耐湿性及び放熱性に優れる回路基板を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セラミックス回路基板を金属ベース回路基板に代替することができれば、生産性の向上が期待できる。セラミックス回路基板が用いられている産業用モジュール分野等においては、過酷な条件下で高電圧を印加される場合があり、このような条件下での高い信頼性が必要となる。
【0007】
そこで本発明は、高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性を有する金属ベース回路基板を形成可能な積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性を有する金属ベース回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、第一の金属層と、上記第一の金属層上に配置された絶縁層と、上記絶縁層上に配置された第二の金属層と、を備え、上記第一の金属層の上記絶縁層との接合面、及び、上記第二の金属層の上記絶縁層との接合面のうち少なくとも一方が、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線を示す、積層体に関する。
【0009】
一態様において、上記第一の金属層の上記絶縁層との接合面、及び、上記第二の金属層の上記絶縁層との接合面の両方が上記表面粗さ曲線を示していてよい。
【0010】
一態様において、上記絶縁層の厚みは30μm以上であってよい。
【0011】
一態様において、上記第一の金属層及び上記第二の金属層は、アルミニウム、銅、鉄、銀、金、亜鉛、ニッケル及び錫からなる群より選択される少なくとも一種の金属原子を60質量%以上含有していてよい。
【0012】
一態様において、上記絶縁層は、絶縁性樹脂硬化体と無機充填材とを含有していてよい。
【0013】
本発明の他の一側面は、金属層と、上記金属層上に配置された絶縁層と、上記絶縁層上に配置された金属回路部と、を備え、上記金属層の上記絶縁層との接合面、及び、上記金属回路部の上記絶縁層との接合面のうち少なくとも一方が、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線を示す、回路基板に関する。
【0014】
一態様において、上記金属層の上記絶縁層との接合面、及び、上記金属回路部の前記絶縁層との接合面の両方が上記表面粗さ曲線を示していてよい。
【0015】
本発明の更に他の一側面は、上述の積層体を準備する工程と、上記積層体の上記第一の金属層の一部、又は、上記第二の金属層の一部を除去して、金属回路部を形成する工程と、を含む、回路基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性を有する金属ベース回路基板を形成可能な積層体が提供される。また、本発明によれば、高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性を有する金属ベース回路基板及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[積層体]
本実施形態の積層体は、第一の金属層と、第一の金属層上に配置された絶縁層と、絶縁層上に配置された第二の金属層と、を備える。本実施形態の積層体は、回路基板形成用積層体ということもできる。
【0020】
本実施形態の積層体において、第一の金属層の絶縁層との接合面(S1)、及び、第二の金属層の絶縁層との接合面(S2)のうち少なくとも一方は、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線を示す。
【0021】
本実施形態の積層体によれば、高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性(特に、電気絶縁性の経時劣化の抑制効果)を有する金属ベース回路基板を形成することができる。本実施形態の積層体によりこのような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、金属層の少なくとも一方を上述の表面粗さ曲線を示す粗化状態とすることで、高電圧印加時の電界集中が抑制され、電界集中に起因する絶縁信頼性の低下が抑制されるため、と考えられる。
【0022】
なお、本明細書中、表面粗さ曲線は、レーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK-X1000)により測定される。
【0023】
要素の平均長さ(RSm)は、基準長さにおける粗さ曲線要素の長さの平均を示し、JIS B 0601に準拠して表面粗さ曲線から算出される値である。最大高さ(Rz)は、基準長さにおける粗さ曲線の中で最も高い山の高さ(Rp)と最も深い谷の深さ(Rv)との和を示し、JIS B 0601に準拠して表面粗さ曲線から算出される値である。
【0024】
本実施形態において「特定の表面粗さ曲線を示す」とは、対象面の少なくとも一部で特定の表面粗さ曲線が測定されることを意味する。
【0025】
(金属層)
第一の金属層を構成する金属材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、金、亜鉛、ニッケル、錫、及び、これらの金属を含む合金等であってよい。第一の金属層は一種の金属材料から構成されていてよく、二種以上の金属材料から構成されていてもよい。
【0026】
第一の金属層は、アルミニウム、銅、鉄、銀、金、亜鉛、ニッケル及び錫からなる群より選択される少なくとも一種の金属原子(M1)を含有することが好ましい。金属原子(M1)は、好ましくはアルミニウム、銅及び鉄からなる群より選択される少なくとも一種であり、より好ましくはアルミニウム及び銅からなる群より選択される少なくとも一種である。
【0027】
金属原子(M1)の含有量は、第一の金属層の全量基準で、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0028】
第一の金属層は、例えば、金属板であってよい。第一の金属層の厚みは特に制限されず、例えば0.01mm以上であってよく、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。また、第一の金属層の厚みは、例えば10mm以下であってよく、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下である。
【0029】
第一の金属層の接合面(S1)は、粗化処理された面であってよい。粗化処理の方法は特に限定されず、公知の粗化処理を特に制限なく利用できる。粗化処理としては、例えば、化学エッチング処理、ブラスト処理、バフ処理等が挙げられる。
【0030】
粗化処理の条件は特に限定されず、例えば、接合面(S1)が後述の表面粗さ曲線(C)を示す条件を適宜選択すればよい。
【0031】
第二の金属層を構成する金属材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、金、亜鉛、ニッケル、錫、及び、これらの金属を含む合金等であってよい。第二の金属層は一種の金属材料から構成されていてよく、二種以上の金属材料から構成されていてもよい。
【0032】
第二の金属層は、アルミニウム、銅、鉄、銀、金、亜鉛、ニッケル及び錫からなる群より選択される少なくとも一種の金属原子(M2)を含有することが好ましい。金属原子(M2)は、好ましくはアルミニウム、銅及び鉄からなる群より選択される少なくとも一種であり、より好ましくはアルミニウム及び銅からなる群より選択される少なくとも一種である。
【0033】
金属原子(M2)の含有量は、第二の金属層の全量基準で、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0034】
第二の金属層は、例えば、金属箔であってよい。第二の金属層の厚みは特に制限されず、例えば0.01mm以上であってよく、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.03mm以上である。また、第二の金属層の厚みは、例えば5.0mm以下であってよく、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
【0035】
第二の金属層の接合面(S2)は、粗化処理された面であってよい。粗化処理の方法は特に限定されず、公知の粗化処理を特に制限なく利用できる。粗化処理としては、例えば、化学エッチング処理、ブラスト処理、バフ処理等が挙げられる。
【0036】
粗化処理の条件は特に限定されず、例えば、接合面(S2)が後述の表面粗さ曲線(C)を示す条件を適宜選択すればよい。
【0037】
第一の金属層及び第二の金属層は、絶縁層との接合面(S1又はS2)が、基準長さが250μm、要素の平均長さ(RSm)が10μm以上、且つ、最大高さ(Rz)が20μm以下の表面粗さ曲線(C)を示すことが好ましい。
【0038】
表面粗さ曲線(C)において、要素の平均長さ(RSm)は、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。要素の平均長さ(RSm)の上限は特に限定されないが、接合面における絶縁層との接着性がより向上して、接着信頼性により優れる回路基板が得られる観点からは、要素の平均長さ(RSm)は、例えば200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0039】
表面粗さ曲線(C)において、最大高さ(Rz)は、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。最大高さ(Rz)の下限は特に限定されないが、接合面における絶縁層との接着性がより向上して、接着信頼性により優れる回路基板が得られる観点からは、最大高さ(Rz)は、例えば0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。
【0040】
(絶縁層)
絶縁層は、例えば、絶縁性樹脂硬化体と無機充填材とを含有する層であってよい。
【0041】
絶縁性樹脂硬化体は、例えば、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂成分の硬化体であってよい。
【0042】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらのうち接着性及び電気絶縁性の観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
エポキシ樹脂は、硬化剤によって硬化し得るものであればよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリアジン環を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
硬化剤は、熱硬化性樹脂を硬化可能な硬化剤であればよく、熱硬化性樹脂の種類に応じて、公知の硬化剤から適宜選択してよい。
【0045】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤(エポキシ樹脂用硬化剤)としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0046】
アミン系硬化剤は、アミノ基を有し、エポキシ樹脂を硬化可能な硬化剤であればよい。アミン系硬化剤としては、例えば、芳香族アミン系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0047】
アミン系硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知のアミン系硬化剤を特に制限無く用いることができる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、脂肪族ポリアミンン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等を好適に用いることができる。
【0048】
フェノール系硬化剤は、フェノール性水酸基を複数有し、エポキシ樹脂を硬化可能な硬化剤であればよい。フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0049】
フェノール系硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知のフェノール系硬化剤を特に制限無く用いることができる。フェノール系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールA型ノボラック等を好適に用いることができる。
【0050】
酸無水物系硬化剤は、2つのカルボキシル基が脱水縮合した構造を有し、エポキシ樹脂を硬化可能な硬化剤であればよい。酸無水物系硬化剤としては、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物等が挙げられる。
【0051】
酸無水物系硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知の酸無水物系硬化剤を特に制限無く用いることができる。酸無水物系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、無水フタル酸誘導体、無水マレイン酸誘導体等を好適に用いることができる。
【0052】
チオール系硬化剤は、メルカプト基を複数有し、エポキシ樹脂を硬化可能な硬化剤であればよい。チオール系硬化剤としては、例えば、脂肪族チオール系硬化剤、芳香族チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0053】
チオール系硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知のチオール系硬化剤を特に制限無く用いることができる。チオール系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、脂肪族ポリチオエーテル、脂肪族ポリチオエステル、芳香族含有ポリチオエーテル等を好適に用いることができる。
【0054】
樹脂成分中の硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば1.0質量部以上であってよく、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、50質量部以上であってもよい。また、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば300質量部以下であってよく、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下であり、0質量部であってもよい。
【0055】
樹脂成分は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。樹脂成分は、例えば、必要に応じて、硬化促進剤、変色防止剤、界面活性剤、カップリング剤、着色剤、粘度調整剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤等を更に含有していてよい。
【0056】
樹脂成分中の他の成分の含有量は、例えば10質量%以下であってよく、好ましくは5質量%以下であり、0質量%であってもよい。すなわち、樹脂成分中の熱硬化性樹脂及び硬化剤の合計量は、例えば90質量%以上であってよく、好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0057】
絶縁性樹脂硬化体は、樹脂成分の硬化体である。
【0058】
絶縁性樹脂硬化体のガラス転移点は、125℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。これにより、硬化体の高温での絶縁抵抗が向上し、高温時の絶縁頼性により優れた絶縁層を形成できる。また、絶縁性樹脂硬化体のガラス転移点の上限は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましい。これにより、硬化体の柔軟性がより向上し、応力緩和性に一層優れる絶縁層を形成できる。
【0059】
本明細書中、絶縁性樹脂硬化体のガラス転移点は、下記の方法で測定される値を示す。
<ガラス転移点の測定方法>
(1)測定試料の作製
絶縁性樹脂硬化体を0.1mm×5mm×40mmの板状のサイズに切り出して、測定試料を作成する。
(2)ガラス転移点の測定
動的粘弾性測定器(T&Aインスツルメント社製、「RSA 3」)を用い、周波数10Hz、昇温速度10℃/minの条件下、30℃~+300℃の温度範囲で損失正接(tanδ)を測定し、損失正接の値が極大となる温度をガラス転移点とする。
【0060】
絶縁層中の絶縁性樹脂硬化体の含有量は、絶縁層の全体積基準で、例えば1.0体積%以上であってよく、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上である。また、絶縁層中の絶縁性樹脂硬化体の含有量は、絶縁層の全体積基準で、例えば99体積%以下であってよく、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。
【0061】
無機充填材としては、例えば、酸化アルミニウム、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等から構成される無機充填材が挙げられる。
【0062】
無機充填材は、無機材料の加水分解に起因する高温高湿環境下での電気絶縁性の低下が抑制される観点から、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群より選択される無機材料を主成分とすることが好ましい。無機充填材中の当該無機材料の含有量は、無機充填材の合計量を基準として、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
【0063】
なお、例えば、無機充填材が窒化アルミニウムを多量に含む場合、高温高湿環境下で窒化アルミニウムの加水分解が生じ、電気絶縁性が低下する場合がある。このため、無機充填材中の窒化アルミニウムの含有量は、無機充填材の合計量を基準として、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。上述のように、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群より選択される無機材料を主成分とすることで、このような加水分解に起因する電気絶縁性の低下は顕著に抑制される。
【0064】
無機充填材の形状は特に限定されず、粒子状、鱗片状、多角形状等であってよく、粒子状であることが好ましい。
【0065】
無機充填材の最大粒子径は、例えば250μm以下であってよく、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。これにより、絶縁層の電気絶縁性がより向上する傾向がある。また、無機充填材の最小粒子径は特に限定されないが、絶縁層の熱伝導率がより向上する観点からは、例えば0.05μm以上であってよく、好ましくは0.1μm以上である。なお、本明細書中、無機充填材の最大粒子径及び最小粒子径は、体積基準の粒度分布におけるd90径及びd10径を示し、これらはレーザー回折式粒度分布測定装置で測定される。
【0066】
絶縁層中の無機充填材の含有量は、絶縁層の全体積基準で、例えば1.0体積%以上であってよく、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上である。また、絶縁層中の無機充填材の含有量は、絶縁層の全体積基準で、例えば99体積%以下であってよく、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。
【0067】
絶縁層は、例えば、上記樹脂成分と無機充填材とを含有する組成物の塗膜を硬化させることで形成することができる。
【0068】
塗膜の硬化は、例えば熱処理により行うことができる。熱処理は、1段階で行ってよく、2段階で行ってもよい。熱処理を2段階で行うことで、塗膜の半硬化体を経由して、絶縁層を形成できる。熱処理の温度及び時間は、熱硬化性樹脂及び硬化剤の種類等に応じて適宜変更してよい。
【0069】
熱処理を1段階で行う場合、熱処理の温度は、例えば40~250℃であってよく、好ましくは70~180℃であり、熱処理の時間は、例えば0.5~48時間であってよく、好ましくは1~6時間である。
【0070】
熱処理を2段階で行う場合、1段階目の熱処理(第一の熱処理)の温度は、例えば40~150℃であってよく、好ましくは50~100℃であり、第一の熱処理の時間は、例えば0.2~8時間であってよく、好ましくは0.5~5時間である。また、2段階目の熱処理(第二の熱処理)の温度は、例えば70~250℃であってよく、好ましくは120~180℃であり、熱処理の時間は、例えば0.5~9時間であってよく、好ましくは1~6時間である。
【0071】
絶縁層は、例えば、上記組成物の塗膜又は当該塗膜の半硬化体を、第一の金属層及び第二の金属層の間に配置し、加熱加圧することで形成してよい。加圧条件は特に限定されない。加圧は、例えば1MPa以上、好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上の面圧で行ってよい。また、加圧は、例えば30MPa以下、好ましくは25MPa以下、より好ましくは20MPa以下の面圧で行ってよい。
【0072】
絶縁層の厚みは特に限定されないが、電気絶縁性の観点からは、例えば30μm以上であってよく、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上である。また、絶縁層の厚みは、熱抵抗の観点からは、例えば500μm以下であってよく、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0073】
図1は、積層体の好適な一実施形態を示す断面図である。
図1に示す積層体10は、第一の金属層1と、第一の金属層1上に配置された絶縁層2と、絶縁層2上に配置された第二の金属層3とを備えている。第一の金属層1は、絶縁層2との接合面S1を有している。第二の金属層3は、絶縁層2との接合面S2を有している。
【0074】
接合面S1及び接合面S2のうち少なくとも一方は、上述の表面粗さ曲線(C)を示す。
【0075】
積層体10の第二の金属層3を所定の形状に加工して金属回路部を形成することで、回路基板を容易に製造することができる。
【0076】
第一の金属層1の接合面S1は、金属回路部と対向する部分が、上述の表面粗さ曲線を示すことが好ましい。また、第二の金属層3の接合面S2は、金属回路部として残存する部分が、上述の表面粗さ曲線(C)を示すことが好ましい。言い換えると、金属回路部は、接合面S1の上述の表面粗さ曲線(C)を示す部分と対向する位置に形成されることが好ましい。また、金属回路部は、接合面S2の上述の表面粗さ曲線(C)を示す部分が残存するように形成されることが好ましい。
【0077】
金属回路部の形成方法は特に限定されず、公知の加工方法を適用すればよい。
【0078】
[回路基板]
本実施形態の回路基板は、金属層と、金属層上に配置された絶縁層と、絶縁層上に配置された金属回路部と、を備える。
【0079】
本実施形態の回路基板において、金属層の絶縁層との接合面(S1)、及び、金属回路部の絶縁層との接合面(S3)のうち少なくとも一方は、基準長さが250μm、要素の平均長さRSmが10μm以上、且つ、最大高さRzが20μm以下の表面粗さ曲線(C)を示す。
【0080】
本実施形態の回路基板は、高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性(特に、電気絶縁性の経時劣化の抑制効果)を有する。本実施形態の回路基板によりこのような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、金属層及び金属回路部の少なくとも一方を上述の表面粗さ曲線(C)を示す粗化状態とすることで、高電圧印加時の電界集中が抑制され、電界集中に起因する絶縁信頼性の低下が抑制されるため、と考えられる。
【0081】
本実施形態の回路基板は、上述の積層体の第二の金属層の一部を除去して製造されたものであってよい。
【0082】
本実施形態の回路基板において、表面粗さ曲線(C)は、上述の積層体における表面粗さ曲線(C)と同様であってよい。
【0083】
本実施形態の回路基板における金属層としては、上述の積層体における第一の金属層と同じものが例示できる。
【0084】
本実施形態の回路基板における絶縁層としては、上述の積層体における絶縁層と同じものが例示できる。
【0085】
本実施形態の回路基板における金属回路部は、上述の積層体における第二の金属層の一部を除去した残部であってよい。すなわち、金属回路部を構成する材料及び金属回路部の厚さは、第二の金属層を構成する材料及び第二の金属層の厚さと同じであってよい。
【0086】
図2は、回路基板の好適な一実施形態を示す断面図である。
図2に示す回路基板20は、
図1に示す積層体から製造された回路基板であり、第一の金属層1と、第一の金属層1上に配置された絶縁層2と、絶縁層2上に配置された金属回路部4と、を備えている。第一の金属層1は、絶縁層2との接合面S1を有している。金属回路部4は、絶縁層2との接合面S3を有している。
【0087】
接合面S1及び接合面S3のうち少なくとも一方は、上述の表面粗さ曲線(C)を示す。
【0088】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0089】
本発明は、例えば、基準長さが250μmの表面粗さ曲線における要素の平均長さRSmが10μm以上、最大高さRzが20μm以下の粗化面を有する第一の金属層を準備する第一の準備工程と、基準長さが250μmの表面粗さ曲線における要素の平均長さRSmが10μm以上、最大高さRzが20μm以下の粗化面を有する第二の金属層を準備する第二の準備工程と、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂成分と無機充填材とを含む組成物を準備する第三の準備工程と、粗化面同士が対向するように配置された第一の金属層及び第二の金属層の間に、組成物の塗膜又はその半硬化体を配置する配置工程と、加熱加圧により絶縁層を形成し、第一の金属層、絶縁層及び第二の金属層を備える積層体を得る加熱加圧工程と、を備える、積層体の製造方法に関するものであってよい。
【0090】
第一の準備工程は、金属層の一方面に粗化処理を行い、第一の金属層を形成する工程であってよい。また、第一の準備工程は、粗化面を有する金属層について、当該粗化面の基準長さが250μmの表面粗さ曲線を測定し、当該表面粗さ曲線における要素の平均長さRSm及び最大高さRzに基づいて、第一の金属層を選別する工程であってもよい。
【0091】
第二の準備工程は、金属層の一方面に粗化処理を行い、第二の金属層を形成する工程であってよい。また、第二の準備工程は、粗化面を有する金属層について、当該粗化面の基準長さが250μmの表面粗さ曲線を測定し、当該表面粗さ曲線における要素の平均長さRSm及び最大高さRzに基づいて、第二の金属層を選別する工程であってもよい。
【0092】
本発明はまた、第一の金属層と、第一の金属層上に配置された絶縁層と、絶縁層上に配置された第二の金属層とを備える積層体を選別する選別方法に関するものであってよい。
【0093】
上記選別方法は、第一の金属層の絶縁層との接合面(S1)について、基準長さが250μmの表面粗さ曲線を測定し、当該表面粗さ曲線における要素の平均長さRSmが10μm以上、最大高さRzが20μm以下の積層体を選別する第一の選別工程を含んでいてよい。
【0094】
また、上記選別方法は、第二の金属層の絶縁層との接合面(S2)について、基準長さが250μmの表面粗さ曲線を測定し、当該表面粗さ曲線における要素の平均長さRSmが10μm以上、最大高さRzが20μm以下の積層体を選別する第二の選別工程を含んでいてよい。
【0095】
上記選別方法は、第一の選別工程及び第二の選別工程の一方を含んでいてよく、両方を含んでいてもよい。
【0096】
本発明は更に、金属層と、金属層上に配置された絶縁層と、絶縁層上に配置された金属回路部と、を備える回路基板を選別する選別方法に関するものであってよい。
【0097】
上記選別方法は、金属層の絶縁層との接合面(S1)について、基準長さが250μmの表面粗さ曲線を測定し、当該表面粗さ曲線における要素の平均長さRSmが10μm以上、最大高さRzが20μm以下の回路基板を選別する第一の選別工程を含んでいてよい。
【0098】
また、上記選別方法は、金属回路部の絶縁層との接合面(S3)について、基準長さが250μmの表面粗さ曲線を測定し、当該表面粗さ曲線における要素の平均長さRSmが10μm以上、最大高さRzが20μm以下の回路基板を選別する第二の選別工程を含んでいてよい。
【0099】
上記選別方法は、第一の選別工程及び第二の選別工程の一方を含んでいてよく、両方を含んでいてもよい。
【実施例0100】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
<組成物の作製>
熱硬化性樹脂としてナフタレン型エポキシ樹脂HP-4032D(DIC社製、比重1.2g/cm3)100質量部と、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂VH-4150(DIC社製、比重1.1g/cm3)12.4質量部と、を170℃で攪拌して混合物を得た。次いで、当該混合物と、窒化ホウ素(デンカ社製、比重2.27g/cm3)214.8質量部と、湿潤分散剤DISPER BYK111(ビック・ケミー社製、比重1.1g/cm3)0.7質量部と、硬化促進剤としてTPP(北興化学社製、比重1.1g/cm3)0.6質量部と、イミダゾール化合物2PHZ-PW(四国化成工業社製、比重1.1g/cm3)1.0質量部とを、プラネタリーミキサーで15分間攪拌混合し、組成物を作製した。なお、組成物中の各成分の体積基準の含有量は、ナフタレン型エポキシ樹脂が43.6体積%、フェノールノボラック樹脂が5.9体積%、窒化ホウ素が49.4体積%、湿潤分散剤が0.3体積%、硬化促進剤が0.3体積%、イミダゾール化合物が0.5体積%である。
【0102】
<積層体の作製>
得られた組成物を、厚さ0.038mmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム上に、半硬化後の厚さが0.20mmになるように塗布し、100℃70分加熱乾燥させ、半硬化体(Bステージシート)を作製した。得られた半硬化体をPETフィルムからはがし、金属板(厚さ2.0mmの銅板)の粗化面上に配置した。次いで、半硬化体上に金属箔(厚さ0.5mmの銅箔)の粗化面を配置した後、プレス機によって面圧10MPaをかけながら、180℃で410分間加熱硬化し、積層体を得た。積層体中の絶縁層の厚さは125μmであった。
【0103】
なお、金属板及び金属箔の粗化面について、後述の方法で表面粗さ曲線を測定し、要素の平均長さRSm及び最大高さRzを求めた。結果を表1に示す。また、絶縁層を構成する樹脂硬化体のガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
<回路基板の作製>
積層体の金属箔上の所定の位置をエッチングレジストでマスクした後、硫酸-過酸化水素混合溶液をエッチング液として銅箔をエッチングした。エッチングレジストを除去し、洗浄乾燥することで、直径20mmの円電極(銅箔)を有する金属ベース回路基板を得た。得られた金属ベース回路基板について、以下の方法で絶縁信頼性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
<表面粗さ曲線の測定>
金属板及び金属箔の粗化面を、レーザー顕微鏡VK-X1000(キーエンス社製)を用いて観察し、データ解析ソフトの線粗さ測定により基準長さ250μmの表面粗さ曲線を得て、JIS B 0601に定められた方法によりRSm、Rzを算出した。測定条件として、対物レンズはx50、接眼レンズはx約20の設定とし、1箇所のデータを取得した。
【0106】
<絶縁信頼性の評価>
得られた金属ベース回路基板について、125℃環境下で、円電極-金属板間に直流10kVの電圧を印加する試験条件で、高温高圧バイアス試験(V-t)を行った。電圧印加開始時から、耐電圧試験機で測定した漏れ電流値が10mA以上となった時点までの時間を、耐久時間とした。耐久時間が50分以上であれば、高温環境下での絶縁信頼性が優れた金属ベース回路基板であるといえる。
【0107】
(実施例2~11、及び、比較例1~2)
金属板及び金属箔として、粗化面における要素の平均長さRSm及び最大高さRzが表1、表2又は表3に示す値の金属板及び金属箔を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体の作製及び回路基板の作製を行った。得られた回路基板について、実施例1と同様にして絶縁信頼性を評価した。結果を表1、表2又は表3に示す。
【0108】
(実施例12)
<組成物の作製>
熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂EXA-850CRP(DIC社製、比重1.2g/cm3)100質量部と、硬化剤としてジアミノフェニルメタンH-84B(Dアクメックス社製、比重1.1g/cm3)34質量部と、アルミナAS30-1(昭和電工社製、比重3.95g/cm3)900質量部とを、プラネタリーミキサーで15分間攪拌混合し、組成物を作製した。なお、組成物中の各成分の体積基準の含有量は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が24.4体積%と、硬化剤が9.0体積%、アルミナAS30-1が66.6体積%である。
【0109】
<積層体の作製>
得られた組成物を、厚さ0.038mmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム上に、半硬化後の厚さが0.20mmになるように塗布し、100℃20分加熱乾燥させ、これにより半硬化体(Bステージシート)を作製した。得られた半硬化体をPETフィルムからはがし、金属板(厚さ1.5mmのアルミ板)の粗化面上に配置した。次いで、半硬化体上に金属箔(厚さ0.5mmの銅箔)の粗化面を配置した後、プレス機によって面圧10MPaをかけながら、180℃で410分間加熱硬化し、積層体を得た。積層体中の絶縁層の厚さは130μmであった。
【0110】
なお、金属板及び金属箔の粗化面について、実施例1と同じ方法で表面粗さ曲線を測定し、要素の平均長さRSm及び最大高さRzを求めた。結果を表2に示す。また、絶縁層を構成する樹脂硬化体のガラス転移温度を測定した。結果を表2に示す。
【0111】
<回路基板の作製>
積層体の金属箔上の所定の位置をエッチングレジストでマスクした後、硫酸-過酸化水素混合溶液をエッチング液として銅箔をエッチングした。エッチングレジストを除去し、洗浄乾燥することで、直径20mmの円電極(銅箔)を有する金属ベース回路基板を得た。得られた金属ベース回路基板について、実施例1と同様にして絶縁信頼性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
【0113】
【0114】