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  • 特開-スノーボード用ビンディング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173755
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】スノーボード用ビンディング
(51)【国際特許分類】
   A63C 10/28 20120101AFI20221115BHJP
【FI】
A63C10/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079654
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】金井 琢
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 慎也
(57)【要約】
【課題】スノーボードの操作性を維持しつつ、撓みに対する高い追従性を備えたスノーボード用ビンディングを提供する。
【解決手段】スノーボード50に対して使用者のブーツを固定するためのビンディング10であって、スノーボード50と密接する当接面12bを備えたベースプレート12を有し、当接面12bの外縁部には、ベースプレート12とスノーボード50との間に隙間を形成する切欠き部12aが設けられ、切欠き部12aには、伸縮性を持ち、ベースプレート12よりも軟質な部材により構成されるスペーサ20を配置し、無負荷状態におけるスペーサ20は、当接面12bを基準とした切欠き部12aの高さを超える厚みを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スノーボードに対して使用者のブーツを固定するためのビンディングであって、
前記スノーボードと密接する当接面を備えたベースプレートを有し、
前記当接面の外縁部には、前記ベースプレートと前記スノーボードとの間に隙間を形成する切欠き部が設けられ、
前記切欠き部には、伸縮性を持ち、前記ベースプレートよりも軟質な部材により構成されるスペーサを配置し、
無負荷状態における前記スペーサは、前記当接面を基準とした前記切欠き部の高さを超える厚みを有することを特徴とするスノーボード用ビンディング。
【請求項2】
前記スペーサを平面視した際の平面形状を前記切欠き部を平面視した際の平面形状よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のスノーボード用ビンディング。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記ベースプレートにおける踵部分の両サイドに、幅方向に離間させた状態で設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスノーボード用ビンディング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スノーボードの特性に合致したスノーボード用ビンディングに関する。
【背景技術】
【0002】
スノーボードは、使用者の体重移動により、板面の幅方向端部に位置するエッジを立てる事により操作が成される。このため、スノーボードに使用者が履くブーツを固定するビンディングとスノーボードの上面とは、強固に固定されている事が操作性の向上を図る上で望ましいとされている。
【0003】
しかし近年では、ジャンプや回転など、スノーボード自体の柔軟性を活かしたトリックを行う使用者も多くなりつつあり、ビンディングによるスノーボードの押え込みを軽減し、スノーボードに生じる撓みを活かすことと操作性の向上とを両立させたいという要望が増えてきている。
【0004】
本願出願人は、特許文献1に開示しているようなビンディングを提案している。具体的には、ビンディング本体には高い強度を持たせた上で、その裏面とスノーボードを固定可能とし、つま先部分と踵部分に切欠きを設けるようにしている。そして、この切欠きにビンディング本体よりも柔らかい素材により構成したスペーサを配置し、スノーボードとビンディング本体との隙間を埋める構成としている。
【0005】
このような構成のビンディングによれば、スノーボードの操作性を維持しつつ、スノーボードがビンディング側に撓んだ際には、スペーサが押しつぶされる事により、当該撓みを活かす事も可能となる。このような解決手段が講じられると、従来着目されていなかった方向の撓み、すなわちスノーボードがビンディングから離間する方向に撓んだ場合、についても着目されるようになってきた。
【0006】
従来、スノーボードがビンディングから離間する方向の撓みには過度な抑え込みが働かないため、自由な撓みが与えられる。しかし、撓みによってスノーボードとビンディングとの間に隙間が生じた場合、この隙間に雪などが介入してしまう虞がある。こうした隙間に対して雪が介入して固着すると、スノーボードの操作性にも変化が生じる可能性があると共に、スペーサの機能も十分に発揮する事ができなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-143167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、上記問題を解決し、スノーボードの操作性を維持しつつ、撓みに対する高い追従性を備えたスノーボード用ビンディングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るスノーボード用ビンディングは、スノーボードに対して使用者のブーツを固定するためのビンディングであって、前記スノーボードと密接する当接面を備えたベースプレートを有し、前記当接面の外縁部には、前記ベースプレートと前記スノーボードとの間に隙間を形成する切欠き部が設けられ、前記切欠き部には、伸縮性を持ち、前記ベースプレートよりも軟質な部材により構成されるスペーサを配置し、無負荷状態における前記スペーサは、前記当接面を基準とした前記切欠き部の高さを超える厚みを有することを特徴とする。
【0010】
また、上記特徴を有するスノーボード用ビンディングでは、前記スペーサを平面視した際の平面形状を前記切欠き部を平面視した際の平面形状よりも大きくするようにしても良い。このような特徴を有する事によれば、ベースプレートとスペーサとの間に隙間が生じ難くなり、雪の入り込みや固着に伴うトラブルを防ぐ事ができる。
【0011】
さらに、上記特徴を有するスノーボード用ビンディングにおける前記切欠き部は、前記ベースプレートにおける踵部分の両サイドに、幅方向に離間させた状態で設けられているようにすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、踵部分におけるベースプレートの当接面を確保することができる。よって、スノーボードのエッジに対する力の伝達が確実なものとなり、滑走時の操作性を良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有するスノーボード用ビンディングによれば、スノーボードの操作性を維持しつつ、撓みに対する高い追従性を備えたスノーボード用ビンディングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るスノーボード用ビンディングにおける裏面側構造を示す平面図である。
図2】実施形態に係るスノーボード用ビンディングにおけるスペーサを取り外した状態の裏面側構造を示す平面図である。
図3】実施形態に係るスノーボード用ビンディングを踵側から見た場合の構成を示す側面図である。
図4】実施形態に係るスノーボード用ビンディングをつま先側から踵側にかけて切断した場合の断面構造を示す図である。
図5】実施形態に係るスノーボード用ビンディングをスノーボードに固定した状態で、つま先側から踵側にかけて切断した場合の断面構造を示す図である。
図6】切欠き部と、この切欠き部よりも平面視形状が大きいスペーサの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のスノーボード用ビンディングに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上で好適な形態の一部に過ぎず、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0015】
[構成]
本実施形態に係るビンディング10は、スノーボード50(図3参照)に対して使用者のブーツ(不図示)を固定するための要素であり、その基本的構成は一般的なビンディングと同様である。すなわち、ベースプレート12を有し、ヒールカップ14やハイバック16(図3参照)、図示しないアンクルストラップ、及び同じく図示しないトゥーストラップ等を付帯させることができるものであれば良い。本実施形態に係るビンディング10の特徴的な構成は、ベースプレート12におけるスノーボード50との当接面にある。
【0016】
本実施形態に係るベースプレート12は、センターディスク18を介してスノーボード50に固定されるものであり、当接面12bに切欠き部12aが設けられている。切欠き部12aは、スノーボード50との当接面12b側の外縁部に設けられ、外見上、ベースプレート12が凹状にえぐり取られている状態となる。このため、切欠き部12aが形成されている部位に関しては、ベースプレート12とスノーボード50との間に隙間が形成されることとなる。
【0017】
図2に示す形態では、切欠き部12aは、ベースプレート12における踵側外縁部の両サイドに離間した状態で設けられている。踵側のセンター外縁部に硬質なベースプレート12の当接面12bを残す事で、スノーボード50のエッジに対する力の伝達を確実に成されることとなり、高い操作性の維持を図る事ができる。
【0018】
切欠き部12aには、それぞれスペーサ20が配置されている。スペーサ20は、伸縮性を持ち、ベースプレート12を構成する部材よりも軟質な部材により構成されている。また、使用環境、すなわち氷点下においても柔軟性(伸縮性)を維持する事ができる素材であることが望ましい。構成部材について具体的には、発泡ウレタンや発泡TPE(ThermoPlastic Elastomer)、エチレン酢酸ビニル(EVA:Ethylene-vinyl acetate)などを上げることができる。
【0019】
スペーサ単体での厚みH1は、当接面12bを基準とした切欠き部の高さ(深さ)H0よりも大きくなるように構成されている(図3参照)。
このような構成のスペーサ20は、ベースプレート12に取り付けた状態では図4に示すように、ベースプレート12の当接面12bから突出した状態となる。一方、スペーサ20を取り付けたベースプレート12をスノーボード50に固定すると、図5に示すように、ベースプレート12を固定する際の締め付け力によりスペーサ20が圧縮される。これにより、スペーサ20におけるスノーボード50との当接面20aは、ベースプレート12の当接面12bと同一平面上に位置することとなる。
【0020】
[作用・効果]
上記のような構成のビンディング10をスノーボード50に固定した場合、硬質部材により構成されているベースプレート12の当接面12bが接触している踵部分のセンターや、つま先部分では、スノーボード50を確実に抑え込み、力の伝達を成すことができる。よって、滑走時の高い操作性を維持することができる。
【0021】
一方、スペーサ20を配置している切欠き部12aでは、スノーボード50の抑え込みは、切欠き部12aの開始点、すなわちベースプレート12を裏面側から平面視した際(図2に示す状態)、その外縁部よりも内側で成されることとなる。このため、スノーボード50の撓みに対する追従性を高めることができる。また、切欠き部12aには、スペーサ20を配置しているため、切欠き部12aにダンピング性を持たせることができる。このため、スノーボード50に撓みが生じた場合に、ベースプレート12の当接面12bと切欠き部12aとの境界部に過度な負荷を生じさせ、スノーボード50が損傷することを防ぐことができる。
【0022】
また、無負荷状態におけるスペーサ20の厚みH1を切欠き部12aの高さH0よりも大きくなるように構成し、ベースプレート12をスノーボード50に取り付けた状態では、圧縮されるように構成されている。このため、スノーボード50がベースプレート12と離間する側に撓んだ場合には、部材の復元力により膨張し、スノーボード50とスペーサ20との間に隙間が生じないように働くこととなる。これにより、スノーボード50がベースプレート12と離間する方向に撓んだ場合であっても、スノーボード50とベースプレート12との間に隙間が生じなくなり、当該隙間に対する雪の入り込み、及び固着などによる操作性の悪化やトラブルを防ぐことができる。
【0023】
[変形例]
上記実施形態では、スペーサ20は、単に切欠き部12aに嵌め込むものであるように説明している。しかしながら、スペーサ20は図6に示すように、平面視した際、切欠き部12aの平面視形状よりも大きくなるように構成しても良い(図6においては、破線で示す範囲がスペーサ20の平面視形状を示す)。スペーサ20をこのような構成とする場合、スペーサ20は、切欠き部12aに対して圧入する構成となる。
【0024】
このような構成のスペーサ20を採用した場合、スペーサ20とベースプレート12との間に隙間が生じにくくなる。よって、滑走時における隙間への雪の入り込みや固着の発生をより防ぐことができるようになる。
【0025】
また、切欠き部12aに配置するスペーサ20は、切欠き部12aごとに、その厚みH1や、素材、あるいは硬度などを変えるようにしても良い。このような構成とすることで、より使用者の目的(使用形態)に合わせたビンディング10とすることができるからである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記実施形態では、踵部分における両サイドに切欠き部12aを設け、この切欠き部12aにスペーサ20を配置する構成としていた。しかしながら、切欠き部12aは、つま先部分にも設け、ここにスペーサ20を配置するようにしても良い。なお、つま先部分に切欠き部12aを設ける場合にも、踵部分と同様に、センターにベースプレート12の当接面12bを残し、操作性の維持を図るようにすると良い。
【符号の説明】
【0027】
10………ビンディング、12………ベースプレート、12a………切欠き部、12b………当接面、14………ヒールカップ、16………ハイバック、18………センターディスク、20………スペーサ、20a………当接面、50………スノーボード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6