(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173789
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】オイルダンパシステム
(51)【国際特許分類】
F16F 15/023 20060101AFI20221115BHJP
F16F 9/48 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F16F15/023 A
F16F9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079705
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】510235198
【氏名又は名称】有限会社シズメテック
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】鎭目 武治
(72)【発明者】
【氏名】井上 範夫
(72)【発明者】
【氏名】五十子 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】舟木 秀尊
(72)【発明者】
【氏名】小山 慶樹
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AC04
3J048BE03
3J048CB21
3J048EA38
3J069AA54
3J069EE01
3J069EE57
(57)【要約】
【課題】減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、その改善を図ることが可能なオイルダンパシステムを提供する。
【解決手段】ユニフロー型のオイルダンパ4のピストンロッド9の伸縮ストローク量を伝達する伝達部材18と、ピストンロッドに超過伸縮ストロークが生じたときに、伸長作動される制御用ピストンロッド22を有する一対の制御用シリンダユニット19とを備え、伝達部材は軸体で形成され、オイルダンパの外側シリンダ5上には、伝達部材がスライド自在に挿入される中空筒状に形成され、伝達部材を覆いかつ伝達部材のスライドをガイドする保護管47が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シリンダが振動入力側及び振動減衰対象側の一方に連結され、ピストンロッドが振動入力側及び振動減衰対象側の他方に連結されると共に、ピストンの移動で内側シリンダから流出する作動油の流出圧を、調圧バネで付勢される弁体が当該流体圧で開放されることによって調圧しエネルギ吸収する調圧バルブユニットを有するユニフロー型のオイルダンパと、
上記ピストンを移動させる上記ピストンロッドの伸縮ストローク量を伝達する伝達部材と、
上記ピストンロッドの伸縮ストローク方向に沿ってそれぞれ設けられ、制御用油が充満されたシリンダケースと、制御用ピストンロッドの伸長作動で該シリンダケース内の制御用油を吐出ポートから吐出する制御用ピストンとを有し、該ピストンロッドに、所定伸縮ストローク量を超える超過伸長ストロークまたは超過収縮ストロークが生じたときに、上記伝達部材によって、それら超過伸長ストローク量または超過収縮ストローク量で該制御用ピストンロッドが伸長作動されて、該吐出ポートから制御用油をそれぞれ吐出する一対の制御用シリンダユニットと、
該一対の制御用シリンダユニットの上記吐出ポート同士を連通する連通部を有すると共に、該連通部と上記調圧バルブユニットの導入ポートとを接続する制御用油流通系とを備え、
上記調圧バルブユニットは、上記導入ポートを有するバルブボディと、該バルブボディ内に設けられた上記調圧バネと、該バルブボディ内に設けられ、該調圧バネのバネ力に抗する作動油の流出圧で開弁される上記弁体と、該バルブボディ内に設けられ、該導入ポートから導入される制御用油の油圧で該調圧バネを縮めるように移動されるバネ座とを含み、
上記制御用油流通系に、上記連通部と上記調圧バルブユニットの上記導入ポートとの間に配置して設けられ、上記バネ座から制御用油の油圧が作用されて、いずれか一方の上記制御用シリンダユニットからの制御用油の油圧が開弁圧を超えるとき、制御用油を該導入ポートへ導入し、開弁圧以下のとき、該連通部を介して、制御用油をいずれか他方の上記制御用シリンダユニットの上記吐出ポートに流入させるチェック弁とを備え、
超過伸長ストローク量または超過収縮ストローク量に応じて上記調圧バネのバネ力が変化され、
上記伝達部材は、基端が上記ピストンロッドに取り付けられ、作動部を有する先端が該ピストンロッドの伸縮ストロークで上記外側シリンダ上を移動する軸体で形成され、
上記外側シリンダ上には、上記伝達部材がスライド自在に挿入される中空筒状に形成され、該伝達部材を覆いかつ該伝達部材のスライドをガイドする保護管が設けられることを特徴とするオイルダンパシステム。
【請求項2】
前記一対の制御用ピストンロッドの突出先端にはそれぞれ、前記伝達部材の前記作動部が係合されて該制御用ピストンロッドを伸長ストロークさせる受動部が設けられ、
上記保護管には、上記各制御用ピストンロッドの伸長ストローク方向にスリットが形成され、
上記受動部には、上記スリットを介して上記保護管内に突出され、当該受動部を上記作動部に係合可能とする突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルダンパシステム。
【請求項3】
前記伝達部材の前記基端から前記保護管にわたって、該伝達部材を外部から覆うカバーが設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のオイルダンパシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、その改善を図ることが可能なオイルダンパシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動入力側と振動減衰対象側との間、例えば地盤上に免震支承で支持された建物に作用する地震動を減衰するために、地盤と建物との間に設けられ、地震エネルギを吸収するオイルダンパが知られている。
【0003】
この種のオイルダンパとして、特許文献1が知られている。特許文献1の「免震装置用のオイルダンパ」は、免震支承との併用により免震装置を構成し、地震時における基礎と上部建物との相対変位を抑制するために、地震の揺れのエネルギーを吸収し、減衰させる免震装置用のオイルダンパであって、前記基礎および前記上部建物の一方に連結された第1シリンダと、当該第1シリンダ内に摺動自在に設けられ、当該第1シリンダ内を左右2つの油室に仕切る第1ピストンと、押圧部を有し、前記第1ピストンと一体に設けられ、前記基礎および前記上部建物の他方に連結されたピストンロッドとを有する第1油圧シリンダと、当該第1油圧シリンダの外部において前記2つの油室を互いに連通する連通路と、当該連通路の途中に設けられ、当該連通路を開閉する弁体と、移動自在のバネ座と、当該弁体とバネ座の間に設けられ、前記弁体を閉弁側に付勢するスプリングとを有し、前記第1油圧シリンダの前記第1ピストンが変位するのに伴い、前記第1シリンダの前記油室から供給された油圧により前記弁体が開弁することによって、減衰力を発生させる減衰バルブと、当該減衰バルブの前記バネ座の背面側に連通する第2シリンダと、当該第2シリンダ内に摺動自在に設けられた第2ピストンと、係合部を有し、前記第2ピストンと一体の第2ピストンロッドとを有し、前記第1ピストンの変位が所定値に達したときに、前記係合部が前記第1ピストンロッドの前記押圧部で押圧されることによって作動し、前記第2シリンダ内から前記バネ座の背面側に油圧を導入することにより、前記バネ座を介して前記スプリングを圧縮させ、当該スプリングのバネ力を増大させることによって、減衰力を増強する第2油圧シリンダと、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に開示されているオイルダンパは、第1ピストンの変位が所定値に達したときに、第2油圧シリンダの第2シリンダ内から、減衰バルブのバネ座の背面側に油圧を導入して、第1油圧シリンダと連通する連通路を開閉するための弁体を付勢するスプリングのバネ力を増大し、減衰力を増強するようにしていて、地震動で生じる第1ピストンロッドのストロークに応じて減衰性能を変化させることができる優れた装置である。
【0006】
そして、当該装置に対し、さらに種々の改善を施すことが好ましく、その改良案の案出が望まれていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、その改善を図ることが可能なオイルダンパシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるオイルダンパシステムは、外側シリンダが振動入力側及び振動減衰対象側の一方に連結され、ピストンロッドが振動入力側及び振動減衰対象側の他方に連結されると共に、ピストンの移動で内側シリンダから流出する作動油の流出圧を、調圧バネで付勢される弁体が当該流体圧で開放されることによって調圧しエネルギ吸収する調圧バルブユニットを有するユニフロー型のオイルダンパと、上記ピストンを移動させる上記ピストンロッドの伸縮ストローク量を伝達する伝達部材と、上記ピストンロッドの伸縮ストローク方向に沿ってそれぞれ設けられ、制御用油が充満されたシリンダケースと、制御用ピストンロッドの伸長作動で該シリンダケース内の制御用油を吐出ポートから吐出する制御用ピストンとを有し、該ピストンロッドに、所定伸縮ストローク量を超える超過伸長ストロークまたは超過収縮ストロークが生じたときに、上記伝達部材によって、それら超過伸長ストローク量または超過収縮ストローク量で該制御用ピストンロッドが伸長作動されて、該吐出ポートから制御用油をそれぞれ吐出する一対の制御用シリンダユニットと、該一対の制御用シリンダユニットの上記吐出ポート同士を連通する連通部を有すると共に、該連通部と上記調圧バルブユニットの導入ポートとを接続する制御用油流通系とを備え、上記調圧バルブユニットは、上記導入ポートを有するバルブボディと、該バルブボディ内に設けられた上記調圧バネと、該バルブボディ内に設けられ、該調圧バネのバネ力に抗する作動油の流出圧で開弁される上記弁体と、該バルブボディ内に設けられ、該導入ポートから導入される制御用油の油圧で該調圧バネを縮めるように移動されるバネ座とを含み、上記制御用油流通系に、上記連通部と上記調圧バルブユニットの上記導入ポートとの間に配置して設けられ、上記バネ座から制御用油の油圧が作用されて、いずれか一方の上記制御用シリンダユニットからの制御用油の油圧が開弁圧を超えるとき、制御用油を該導入ポートへ導入し、開弁圧以下のとき、該連通部を介して、制御用油をいずれか他方の上記制御用シリンダユニットの上記吐出ポートに流入させるチェック弁とを備え、超過伸長ストローク量または超過収縮ストローク量に応じて上記調圧バネのバネ力が変化され、上記伝達部材は、基端が上記ピストンロッドに取り付けられ、作動部を有する先端が該ピストンロッドの伸縮ストロークで上記外側シリンダ上を移動する軸体で形成され、上記外側シリンダ上には、上記伝達部材がスライド自在に挿入される中空筒状に形成され、該伝達部材を覆いかつ該伝達部材のスライドをガイドする保護管が設けられることを特徴とする。
【0009】
前記一対の制御用ピストンロッドの突出先端にはそれぞれ、前記伝達部材の前記作動部が係合されて該制御用ピストンロッドを伸長ストロークさせる受動部が設けられ、上記保護管には、上記各制御用ピストンロッドの伸長ストローク方向にスリットが形成され、上記受動部には、上記スリットを介して上記保護管内に突出され、当該受動部を上記作動部に係合可能とする突起が設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記伝達部材の前記基端から前記保護管にわたって、該伝達部材を外部から覆うカバーが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるオイルダンパシステムにあっては、減衰性能を変化させるようにしたオイルダンパを対象として、伝達部材の支持構造を改善して、伝達部材を保護できると共に、伝達部材のスライドを案内することができ、伝達部材によるピストンロッドの伸縮ストローク量の伝達を確実化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかるオイルダンパシステムの好適な一実施形態の油圧回路を説明する説明図である。
【
図2】
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における平面図である。
【
図3】
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における側面図である。
【
図4】
図1のオイルダンパシステムに備えられる調圧バルブユニットを説明する断面図である。
【
図5】
図1のオイルダンパシステムに備えられる制御用シリンダユニットを説明する断面図である。
【
図6】
図1のオイルダンパシステムに備えられるオイルダンパの取付部及び伝達部材基端のピストンロッドへの取付状態を説明する説明図である。
【
図7】
図6に示した伝達部材基端のピストンロッドへの取付状態の他の例を説明する説明図である。
【
図10】
図1のオイルダンパシステムに備えられる保護管を説明する、
図2中、C-C線矢視図である。
【
図11】
図10に示した保護管を説明する、一部破断側面図である。
【
図12】
図1のオイルダンパシステムに備えられる台座の吊り具への接合部を説明する説明図である。
【
図13】
図12に示した台座に固定部材が接合された様子を説明する説明図である。
【
図14】
図13に示した固定部材をボルト接合する多数のボルト穴を台座に形成した様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかるオイルダンパシステムの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかるオイルダンパシステムの油圧回路を説明する説明図である。
図2は、
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における平面視を示す図である。
図3は、
図1のオイルダンパシステムの装置構成を示す、設置状態における側面視を示す図である。
図2が設置状態の側面視であり、
図3が設置状態の平面視であってもよい。
【0015】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、振動入力側と振動減衰対象側との間、例えば地震エネルギを吸収するために地盤2あるいは地盤2と一体に動く建物3の基礎と当該基礎上に免震支承で支持された建物3との間に設けられる。しかしながら、本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、振動減衰を目的として、どのような振動伝達系に設けてもよいことはもちろんである。
【0016】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、ユニフロー型のオイルダンパ4を主体として構成される。
【0017】
ユニフロー型のオイルダンパ4自体は知られていて、外側シリンダ5と、外側シリンダ5の内部に設けられ、自由表面を保って作動油Fが貯留される作動油貯室6と、外側シリンダ5の内部に設けられる内側シリンダ7と、内側シリンダ7内部に液密状態でスライド自在に設けられると共に、当該内側シリンダ7内部を2つの第1油圧室R1及び第2油圧室R2に仕切るピストン8と、ピストン8に一体に連結され、内側シリンダ7を貫通して外側シリンダ5の外方へ液密状態で突出され、スライド自在に作動されるピストンロッド9と、第1油圧室R1と作動油貯室6の間に設けられ、エネルギ吸収作用を発生する調圧バルブユニット10と、作動油貯室6と第2油圧室R2との間に設けられ、作動油Fを作動油貯室6から第2油圧室R2へのみ流通させ、逆流を遮断するダンパ用第1チェック弁11と、ピストン8に設けられ、作動油Fを第2油圧室R2から第1油圧室R1へのみ流通させ、逆流を遮断するダンパ用第2チェック弁12とを備えて構成されている。
【0018】
ピストン8の受圧面積は、ピストンロッド9が連結される第1油圧室R1側が第2油圧室R2側の半分に設定される。
【0019】
調圧バルブユニット10は、
図4に示すように、内側シリンダ7の第1油圧室R1と連通される作動油流入ポートP1及び作動油貯室6と連通される作動油流出ポートP2を有するバルブボディ13と、バルブボディ13内に移動自在に設けられ、移動されて作動油流入ポートP1を開閉する弁体14と、バルブボディ13内に、弁体14とは反対側に配置して、当該バルブボディ13に対し液密状態で移動自在に設けられたバネ座15と、バルブボディ13内に、バネ座15と弁体14との間に挟んで設けられ、バネ座15に支持されて弁体14を付勢する調圧バネ16とから構成される。
【0020】
すなわち、調圧バネ16の一端に弁体14が配置され、調圧バネ16の他端にバネ座15が配置される。
【0021】
調圧バルブユニット10では、調圧バネ16は弁体14を作動油流入ポートP1へ向けて付勢し、当該調圧バネ16の付勢力で弁体14が作動油流入ポートP1を閉じることにより、第1油圧室R1と作動油貯室6とが遮断され、他方、調圧バネ16の付勢力に抗して弁体14が作動油流入ポートP1を開くことにより、当該作動油流入ポートP1と作動油流出ポートP2とが連通され、これにより、第1油圧室R1と作動油貯室6とが連通される。
【0022】
調圧バルブユニット10のバルブボディ13にはさらに、バネ座15の背面(調圧バネ16の設置側とは反対側)に面して、後述する導入ポートP3が設けられる。
【0023】
ユニフロー型のオイルダンパ4の作動は、ピストンロッド9が外側シリンダ5から伸長方向に引き出されてピストン8が内側シリンダ7の第1油圧室R1を狭めるように移動すると、第1油圧室R1から作動油Fが調圧バルブユニット10に向かって流出する。
【0024】
第1油圧室R1から流出する作動油Fの流出圧が作動油流入ポートP1に作用し、調圧バネ16で付勢されている弁体14を、調圧バネ16のバネ力に抗して移動して、これにより作動油流入ポートP1が開かれる。
【0025】
作動油流入ポートP1が開かれると、作動油Fは、調圧バルブユニット10のバルブボディ13内を、当該バルブボディ13の内面と弁体14との隙間を通って、作動油流出ポートP2へ向かって流れ、さらに、作動油流出ポートP2から作動油貯室6へと向かって流れる。
【0026】
第1油圧室R1からの作動油Fの流出圧による弁体14の開放動作が調圧バネ16によって制限されることにより、オイルダンパ4のエネルギ吸収作用が発揮される。
【0027】
第1油圧室R1が狭められて作動油Fが第1油圧室R1から流出するとき、広げられる第2油圧室R2には、作動油貯室6からダンパ用第1チェック弁11を介して作動油Fが流入する。
【0028】
他方、ピストンロッド9が外側シリンダ5へ向けて収縮方向に引き込まれてピストン8が内側シリンダ7の第1油圧室R1を広げるように移動し、これに伴って第2油圧室R2が狭められると、ダンパ用第1チェック弁11が閉じられていることから、そしてまた上述したように、ピストン8の第2油圧室R2側の受圧面積が第1油圧室R1側の受圧面積の2倍であることから、圧力が高まった第2油圧室R2の作動油Fが、ピストンロッド9の伸長時の2倍の量で、ピストン8のダンパ用第2チェック弁12を通じて第1油圧室R1へ送り込まれ、その量の半分の作動油Fはさらに、第1油圧室R1から押し出されて調圧バルブユニット10に向かって流出する。第1油圧室R1では、第2油圧室R2からの2倍の量の作動油Fの流入により、その量の半分の作動油Fが補充されて常に充満される。
【0029】
ピストンロッド9の収縮動作時も、伸長動作時と同様に、第1油圧室R1から流出する作動油Fの流出圧が作動油流入ポートP1に作用し、調圧バネ16で付勢されている弁体14を、調圧バネ16のバネ力に抗して移動して、これにより作動油流入ポートP1が開かれる。
【0030】
作動油流入ポートP1が開かれると、作動油Fは、調圧バルブユニット10のバルブボディ13内を作動油流出ポートP2へ向かって流れ、さらに、作動油流出ポートP2から作動油貯室6へと向かって流れる。
【0031】
ピストンロッド9の収縮動作時も、第1油圧室R1からの作動油Fの流出圧による弁体14の開放動作が調圧バネ16によって制限されることにより、オイルダンパ4のエネルギ吸収作用が発揮される。
【0032】
ピストンロッド9の伸長動作時も、収縮動作時も、ピストン8のスライド量が同じであれば、調圧バルブユニット10に流入する作動油Fの量は同じなので、エネルギ吸収量は同じになる。
【0033】
このようにユニフロー型のオイルダンパ4では、作動油Fは、第1油圧室R1からのみ流出し、また、第2油圧室R2へのみ流入するように、一方向に流れる。
【0034】
なお、第1油圧室R1と作動油貯室6との間には、ピストンロッド9の高速作動時に、第1油圧室R1の作動油Fの油圧を開放制御するリリーフ弁17が設けられている。
【0035】
オイルダンパ4は、外側シリンダ5が振動入力側及び振動減衰対象側の一方、例えば地盤2に連結される。オイルダンパ4はまた、ピストンロッド9が振動入力側及び振動減衰対象側の他方、例えば建物3に連結される。
【0036】
オイルダンパ4は、地震によって地盤2と建物3との間に相対変位が生じると、その相対変位量に応じたストローク量で、ピストンロッド9が伸縮ストロークする。
【0037】
本明細書中、「ピストンロッド9の伸縮ストローク」とは、ピストン8の往復移動を伴って、ピストンロッド9が外側シリンダ5及び内側シリンダ7から外方へ突出する方向に引き出されたり、それらの内方へ没入する方向に押し込まれたりして、オイルダンパ4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に長くなったり、短くなったりする長さの変化をいう。同様に、「ピストンロッド9の伸長ストローク」とは、オイルダンパ4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に長くなる長さの変化を、「ピストンロッド9の収縮ストローク」とは、オイルダンパ4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に短くなる長さの変化をいう。
【0038】
また、ピストンロッド9の「伸長」とは、ピストン8の往復移動を伴って、ピストンロッド9が外側シリンダ5及び内側シリンダ7から外方へ突出する方向に引き出され、オイルダンパ4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に長くなること、ピストンロッド9の「収縮」とは、ピストンロッド9が外側シリンダ5及び内側シリンダ7の内方へ没入する方向に押し込まれ、オイルダンパ4の長さ寸法がピストンロッド9の長さ方向に短くなることを言う。
【0039】
オイルダンパ4には、
図1~
図3に示すように、ピストン8を移動させるピストンロッド9の伸縮ストローク量を伝達する伝達部材18が設けられる。
【0040】
伝達部材18は、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向に長い軸体で形成される。伝達部材18は、長さ方向の一端である基端18aが、後述する取付構造によって、ピストンロッド9に取り付けられ、長さ方向の他端である先端18bが、後述する支持構造によって、外側シリンダ5の外側で移動自在に支持される。
【0041】
基端18aがピストンロッド9に取り付けられる伝達部材18は、オイルダンパ4の外側でピストンロッド9の伸縮動作に従ってスライドし、ピストンロッド9が伸長ストロークすると、当該伸長ストローク方向へ同じ移動量で先端18bが移動され、ピストンロッド9が収縮ストロークすると、当該収縮ストローク方向へ同じ移動量で先端18bが移動される。
【0042】
オイルダンパ4の外側シリンダ5の外側には、伝達部材18を挟んでその両側それぞれに、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向に沿って、一対の制御用シリンダユニット19,19が設けられる。
【0043】
一方の制御用シリンダユニット19は、ピストンロッド9の伸長ストロークに対して、他方の制御用シリンダユニット19は、収縮ストロークに対して作動するように備えられる。
【0044】
これら制御用リンダユニット19,19は共に、
図5に示すように、制御用油fが充満されたシリンダケース20と、シリンダケース20内に液密状態でスライド自在に設けられた制御用ピストン21と、ピストン21に一端が連結され、他端がシリンダケース20外方へ液密状態でスライド自在に突出され、制御用シリンダユニット19を伸長・収縮作動させる制御用ピストンロッド22と、シリンダケース20内に設けられ、制御用ピストン21を、制御用ピストンロッド22が収縮する方向へ付勢するスプリング23と、シリンダケース20に設けられ、スプリング23に抗する制御用ピストンロッド22の伸長作動でスライドされる制御用ピストン21によって昇圧されるシリンダケース20内から制御用油fを吐出させる吐出ポートP4とから構成される。
【0045】
本明細書中、「制御用ピストンロッド22が伸長するあるいは収縮する」とは、制御用ピストン21の往復移動を伴って、制御用ピストンロッド22がシリンダケース20から外方へ突出する方向に引き出されたり、それらの内方へ没入する方向に押し込まれたりして、制御用シリンダユニット19の長さ寸法が制御用ピストンロッド22の長さ方向に長くなったり、短くなったりする長さの変化をいう。
【0046】
スプリング23は、制御用ピストンロッド22をゆっくりと収縮作動させる弱いスプリング力に設定される。
【0047】
伝達部材18の先端18bには、作動部24が設けられると共に、伝達部材18両側のこれら一対の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22には、その突出方向の突出先端に、作動部24が係脱自在に係合される受動部25が設けられる。
【0048】
一対の制御用シリンダユニット19,19は、
図1及び
図2に示すように、それらの制御用ピストンロッド22,22の伸長方向が正反対となるように、かつピストンロッド9の伸縮ストローク方向でそれらの受動部25、25の間に伝達部材18の作動部24が位置するように設置される。
【0049】
さらに、これら制御用シリンダユニット19,19の受動部25,25は共に、オイルダンパ4のピストンロッド9が伸縮ストローク方向に中立位置にあり、かつ、制御用ピストンロッド22,22がスプリング23,23によって収縮状態とされているとき(言い換えれば、オイルダンパ4が非作動状態のとき)に、作動部24に対して、ピストンロッド9に設定される所定伸縮ストローク量分の距離が隔てられる。
【0050】
所定伸縮ストローク量とは、
図1に示すように、ピストンロッドの上記中立位置Nを基準として、伸長ストローク方向と収縮ストローク方向とにそれぞれ等しく設定された伸長ストローク量S及び収縮ストローク量Sを言う。
【0051】
すなわち、作動部24と各受動部25,25それぞれとは、等しく、ピストンロッド9の所定ストローク量S分の距離だけ離されている。
【0052】
ピストンロッド9が所定ストローク量S以内で伸縮ストロークされるときには、伝達部材18の作動部24はそれに従って移動されるが、作動部24はいずれの制御用シリンダユニット19の受動部25にも係合されず、制御用シリンダユニット19は作動されない。
【0053】
ピストンロッド9に、所定伸縮ストローク量Sを超える、例えば超過伸長ストロークが生じると、作動部24は、一方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22の受動部25に係合する。
【0054】
そして受動部25は、所定伸縮ストローク量Sを超えた分の超過伸長ストローク量で制御用ピストンロッド22を伸長動作させる。
【0055】
伸長動作される制御用ピストンロッド22により,スプリング23に抗して制御用ピストン21がスライドされ、シリンダケース20の吐出ポートP4から、超過伸長ストローク分の制御用油fが吐出される。
【0056】
伸縮ストロークを繰り返すピストンロッド9が収縮ストロークに移行すると、伝達部材18の作動部24は、係合により制御用ピストンロッド22を伸長動作させた受動部25から離脱する。
【0057】
再度の伸長ストロークで、超過伸長ストローク量が前回の超過伸長ストローク量相当の場合、その間に伸長動作されていた制御用ピストンロッド22は、弱いスプリング力のスプリング23できわめてゆっくりと収縮方向に押される程度で、ほぼ同じ位置を保っていて制御用油fの吐出が生じない一方、超過伸長ストローク量が前回の超過伸長ストロークを超えて増した場合には、作動部24が受動部25に再度係合して、増した分の超過伸長ストローク量で再び制御用ピストンロッド22を伸長動作させ、制御用シリンダユニット19から、超過伸長ストロークが増した分の制御用油fが吐出される。
【0058】
ピストンロッド9に、所定伸縮ストローク量を超える超過収縮ストロークが生じると、伝達部材18の作動部24により他方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22が上記と同様にして伸長動作され、シリンダケース20の吐出ポートP4から、超過収縮ストローク分、そしてまた超過収縮ストロークが増した分の制御用油fが吐出ポートP4から吐出される。
【0059】
このように制御用シリンダユニット19は、オイルダンパ4のピストンロッド9の伸縮ストローク量が所定伸縮ストローク量Sを超えたとき、最初は、当該所定伸縮ストローク量Sに対してそれを超えたときの超過伸縮ストローク量分の制御用油fを吐出し、その後は、前回の超過伸縮ストロークを超えて増した分の超過伸縮ストローク量分の制御用油fを吐出することを繰り返す。
【0060】
すなわち、一対の制御用シリンダユニット19,19は共に、所定伸縮ストローク量Sを超えた後、超過伸縮ストローク量が増していくたびに、制御用油fを増した分だけ吐出する。
【0061】
伸長動作される制御用ピストンロッド22は、例えば地震が終息してオイルダンパ4が動作を終え非作動状態となる(ピストンロッド9が伸縮ストローク方向の中立位置Nに戻る)ときに、スプリング23によってゆっくりと収縮方向へ付勢されて元の位置に戻されるが、他方で、スプリング力を弱くしているため、オイルダンパ4の作動中は、作動部24によって伸長作動されてシリンダケース20から引き出された制御用ピストンロッド22の引き出し位置は維持され、吐出された制御用油fがスプリング23の作用によって吐出ポートP4に向けて流れ込むことはない。
【0062】
図1~
図3に示すように、一対の制御用シリンダユニット19,19と調圧バルブユニット10との間には、制御用油流通系26が設けられる。
【0063】
制御用油流通系26は配管システムで構成され、一対の制御用シリンダユニット19,19の吐出ポートP4,P4同士を連通する連通部27を有すると共に、当該連通部27と調圧バルブユニット10の導入ポートP3とを接続する。
【0064】
制御用油流通系26には、連通部27と調圧バルブユニット10の導入ポートP3との間に配置して、チェック弁28が設けられる。
【0065】
チェック弁28は、制御用油fが連通部27から導入ポートP3へ向かって流入するのを許容し、逆流を阻止する。
【0066】
そして、導入ポートP3からバルブボディ13内に流入される制御用油fによってバネ座15の背面に油圧が生じ、この油圧がチェック弁28に背面圧として作用される。
【0067】
すなわち、チェック弁28を備えた制御用油流通系26では、各吐出ポートP4,P4から吐出される制御用油fは、これら一対の吐出ポートP4,P4同士の間で行き来するように流れたり、チェック弁28を介し、導入ポートP3を通じて、調圧バルブユニット10内のバネ座15の背面に流れ込み、当該バネ座15の背面に、調圧バネ16のバネ力を変化させる油圧を生じさせる。
【0068】
オイルダンパ4のピストンロッド9は、伸長と収縮を交互に繰り返し、これにより、一対の制御用シリンダユニット19,19の制御用ピストンロッド22,22も、通常交互に伸長作動されて、各吐出ポートP4,P4から交互に間欠的に制御用油fが吐出される。
【0069】
チェック弁28は、伸長作動中のいずれか一方の制御用シリンダユニット19の吐出ポートP4から吐出されて、連通部27を通じて作用する制御用油fの油圧がその開弁圧を超えたときに、制御用油fを導入ポートP3へ導入し、他方、当該制御用油fの油圧がその開弁圧以下のときには、制御用油fが導入ポートP3へ流入するのを阻止する。
【0070】
チェック弁28で流通が阻止された制御用油fは、連通部27を通じて、伸長動作されていない他方の制御用シリンダユニット19の吐出ポートP4に流入される。
【0071】
超過伸長ストローク量及び超過収縮ストローク量が発生し、その後それらストローク量が順次増すたびに交互に伸長作動される一対の制御用シリンダユニット19,19によって発生する制御用油fの油圧が繰り返しチェック弁28に作用し、チェック弁28は、開弁圧を超える度に、制御用油fを調圧バルブユニット10の導入ポートP3へ流入させる。
【0072】
これにより、調圧バルブユニット10のバルブボディ13内では、導入ポートP3からバネ座15の背面に導入され、その量が次第に増えていく制御用油fにより、調圧バネ16が弁体14との間で順次に収縮されていき、この収縮によって弁体14を付勢する当該調圧バネ16のバネ力が大きくなるように変化される。
【0073】
すなわち、バネ座15は、導入ポートP3から導入される制御用油fの油圧で調圧バネ16を縮めるように移動され、これによって、超過伸長ストローク量や超過収縮ストローク量に応じた調圧バネ16のバネ力の変化が生じる。
【0074】
制御用油流通系26には、
図1に示すように、制御用油fを一対の制御用シリンダユニット19,19へ戻すために、チェック弁28をバイパスするバイパス路29が設けられ、このバイパス路29には、チェック弁28と並列に、開閉自在かつ開度調整自在な絞り機能を有するリターンバルブ(例えば、ニードルバルブ)30が設けられる。
【0075】
このリターンバルブ30は、例えば地震が終息してオイルダンパ4が動作を終え非作動状態となる(ピストンロッド9が伸縮ストローク方向の中立位置Nに戻る)ときに、調圧バルブユニット10に送り込まれた制御用油fを、導入ポートP3から連通部27を介して、一対の制御用シリンダユニット19,19の吐出ポートP4,P4へ順次に戻すようになっている。
【0076】
他方、リターンバルブ30は、オイルダンパ4の作動中は、バネ座15背面からの制御用油fの流出を制限する。
【0077】
なお、
図1中、31は、制御用油流通系26内の油圧を表示する油圧計であり、32は、制御用油fのドレン用開閉弁である。
【0078】
本実施形態に係るオイルダンパシステム1の作動について説明する。オイルダンパ4は、ピストンロッド9が伸縮ストローク方向で中立位置Nにあるようにして、地盤2と建物3の間にセットされる。
【0079】
例えば地震が発生してオイルダンパ4が作動を開始したとき、ピストンロッド9の伸縮ストロークに超過伸長ストロークまたは超過収縮ストロークが生じないときは、一対の制御用シリンダユニット19,19が作動されることはなく、オイルダンパ4は、調圧バルブユニット10の弁体14が、調圧バネ16にセットされた初期バネ特性で作動油Fの流出圧に対し開閉されて、地震エネルギを吸収する。
【0080】
ピストンロッド9に所定の伸縮ストローク量Sを超える超過伸縮ストローク量が生じると、伝達部材18の作動部24により制御用シリンダユニット19,19が作動される。
【0081】
最初の超過伸長ストロークまたは超過収縮ストロークのいずれかにより、いずれか一方の制御用シリンダユニット19の制御用ピストンロッド22が伸長動作されて制御用油fが吐出ポートP4からチェック弁28を介して調圧バルブユニット10のバネ座15の背面に導入されると、調圧バネ16が縮められ、これにより、調圧バルブユニット10は、初期バネ特性よりも大きなバネ力に変更された調圧バネ16のバネ特性により、作動油Fの流出圧に対して弁体14を開閉することとなり、地震エネルギの吸収作用が増大する。
【0082】
最初の超過伸縮ストローク量以内であって、それを超える超過伸縮ストロークが生じないときには、一対の制御用ピストンロッド19,19が伝達部材18で伸長作動されても、チェック弁28は閉じた状態を保持し、一対の制御用シリンダユニット19,19から吐出される制御用油fは、制御用油流通系26の連通部27を通じて、それら制御用シリンダユニット19,19の吐出ポートP4,P4間を行き来する。
【0083】
他方、前回の超過伸縮ストローク量を超えて増した分の超過伸長ストローク量及び超過収縮ストローク量が生じると、その度に一対の各制御用シリンダユニット19,19から吐出される制御用油fの油圧でチェック弁28が開かれ、そのたびに制御用油fが調圧バルブユニット10に導入され、調圧バネ16のバネ力がどんどん大きく変更されていく。
【0084】
従って、地震によって生じるピストンロッド19の伸縮ストローク量が大きくなればなるほど、調圧バルブユニット10の調圧バネ16のバネ力を大きくして、エネルギ吸収性能を大きく変化させていくことができる。
【0085】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1は、チェック弁28一つで調圧バルブユニット10の調圧バネ16のバネ力をコントロールすることができ、背景技術の、多数の弁を必要とする油圧回路構成に比し、シンプルで、かつ高い作動信頼性を確保することができる。
【0086】
超過伸長ストローク量及び超過収縮ストローク量が同じ場合には、調圧バルブユニット10への制御用油fの導入がなされずバネ力が増大されないようにしているため、背景技術が、同じ場合でもバネ力が増大されてしまってそれをコントロールする回路が必要であるのとは異なり、調圧バネ16のバネ力が強くなり過ぎるという不具合が生じることがなく、調圧バネ16のバネ力を的確かつ円滑に制御することができる。
【0087】
制御用油流通系26に、チェック弁28をバイパスするバイパス路29を設け、バイパス路29に、チェック弁28と並列に、調圧バルブユニット10の導入ポートP4から制御用油fを、連通部27を介して一対の制御用シリンダユニット19,19の吐出ポートP4,P4へ順次に戻すためのリターンバルブ30を設けたので、地震終息後など、オイルダンパ4及び一対の制御用シリンダユニット19,19を、円滑に作動前の中立状態に復帰させることができる。
【0088】
各制御用シリンダユニット19は、制御用油fが充満されたシリンダケース20と、制御用ピストンロッド22の伸長作動でシリンダケース20内の制御用油fを吐出ポートP4から吐出する制御用ピストン21と、シリンダケース20内に設けられ、制御用ピストンロッド22を収縮方向へ付勢するスプリング23とを含み、スプリング23が制御用ピストンロッド22をゆっくりと収縮作動させる弱いスプリング力に設定されているので、オイルダンパ4が動作を終えたときには(必要に応じて、リターンバルブ30の開閉や開度を調整する)、制御用ピストンロッド19を元の位置に戻すことができると共に、他方で、オイルダンパ4の作動中は、制御用ピストンロッド22を引き出し位置に維持できて、超過伸縮ストロークの発生に即座に応答させることができる。
【0089】
《制御用シリンダユニット19,19のレイアウトの改善》
図2及び
図3に示すように、一対の制御用シリンダユニット19,19は上述したように、外側シリンダ5の外側に、当該外側シリンダ5の外側に作動部24が達する軸体の伝達部材18を挟んで配置され、かつ、それらの制御用ピストンロッド22,22の伸長方向が反対向きで、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向でそれらの受動部25,25の間に伝達部材18の作動部24が位置するように設置される。
【0090】
一対の制御用シリンダユニット19,19はさらに、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向(オイルダンパ4の外側シリンダ5の長さ方向)と交差する方向、例えば外側シリンダ5の幅方向(径方向)については、それらのシリンダケース20,20同士が伝達部材18を挟んで相互に向かい合って、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向に沿って互いに平行に配置される。
【0091】
さらに詳細には、一対の制御用シリンダユニット19,19は、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向について、それらのシリンダケース20,20がその長さ方向(制御用ピストンロッド22,22の伸長ストローク方向)で相互にオーバーラップするように配置される。
【0092】
本実施形態にかかるオイルダンパシステム1では、一対の制御用シリンダユニット19,19のレイアウトについて、直列ではなく、並列に配置するようにしたので、両ロッド型のオイルダンパよりも長さ寸法が短いユニフロー型のオイルダンパ4に対し、省スペースで設備することができる。
【0093】
一対の制御用シリンダユニット19,19を作動する伝達部材18が軸体であって、当該伝達部材18を挟む配置で一対の制御用シリンダユニット19,19を設けたので、外側シリンダ5の幅方向(周方向)についても、一対の制御用シリンダユニット19,19を設備するのに必要なスペースを狭めることができる。
【0094】
突出先端に受動部25を有する制御用ピストンロッド22,22の伸長作動方向を反対向きにし、シリンダケース20,20の長さ方向にオーバーラップさせて並列に設けた一対の制御用シリンダユニット19,19に対し、伝達部材18の作動部24を、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向に沿って、一対の制御用ピストンロッド19,19の受動部25,25の間に配置するようにしたので、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向に作動する制御用ピストンロッド22,22の伸長ストロークに要する必要スペースを、一対のシリンダケース20,20のオーバーラップ分、短縮することができ、これによっても外側シリンダ5に一対の制御用シリンダユニット19,19を設置するのに必要な長さを短縮することができる。
【0095】
《伝達部材18のピストンロッド9への取付構造の改善》
図6を参照して伝達部材18の基端18aのピストンロッド9への取付状態を説明すると、ピストンロッド9の伸長ストローク方向先端部9aには、後述する端部金物38がネジ結合される。
【0096】
端部金物38には、これとピストンロッド9とのネジ結合の緩み防止を兼ねて、当該端部金物38に螺合貫通してピストンロッド9に押し付けられるねじ部分を有する取付座35が設けられる。取付座35には、これに支持させて球面滑り軸受36が設けられ、この球面滑り軸受36に伝達部材18の基端18aが離脱可能に連結される。
【0097】
従って、伝達部材18は、その基端18aが球面滑り軸受36を介して、ピストンロッド9に取り付けられる。
【0098】
球面滑り軸受36は、球体を球面座で包囲して構成される周知のものであって、伝達部材18に、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向のみに力が伝達され、それ以外の方向から負荷が加わらないように、伝達部材18に対するピストンロッド9の種々の動きを緩衝・吸収する。
【0099】
さらに、伝達部材18の基端18aと球面滑り軸受36との間に、過度な負荷が加わったときには、伝達部材18は、球面滑り軸受36から離脱され、ピストンロッド9に対する取り付けが解除される。
【0100】
伝達部材18を、球面滑り軸受36に離脱可能に連結してピストンロッド9に取り付けるようにしたので、伝達部材18が容易に損傷を受けることを防いで、ピストンロッド9の伸縮ストロークを適切に制御用シリンダユニット19に伝達することができる。
【0101】
図7及び
図8には、伝達部材18のピストンロッド9への取付構造の他の例が示されている。
【0102】
ピストンロッド9には、その外周を包囲して周方向に滑り自在に設けられる環状滑り部材33と、環状滑り部材33をピストンロッド9に保持するために、当該環状滑り部材33をピストンロッド9の伸縮ストローク方向(長さ方向)両側から挟み込む係止鍔部34aがそれぞれピストンロッド9の周方向全周にわたって形成された一対の環状リング34,34とが設けられる。
【0103】
環状滑り部材33には、これに固定して、ピストンロッド9に対して滑り自在に取付座35が設けられ、この取付座35に支持させて、球面滑り軸受36が設けられ、この球面滑り軸受36に伝達部材18の基端18aが離脱可能に連結される。
【0104】
従って、伝達部材18は、その基端18aが球面滑り軸受36及び環状滑り部材33を介して、ピストンロッド9に取り付けられる。
【0105】
環状滑り部材33は、ピストンロッド9の外周に対して滑って、ピストンロッド9をねじるねじれ回転が生じても、このねじれ回転が取付座35や伝達部材18に作用するのを阻止する。
【0106】
球面滑り軸受36は、
図6の例と同様であって、伝達部材18に、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向のみに力が伝達され、それ以外の方向から負荷が加わらないように、伝達部材18に対するピストンロッド9の種々の動きを緩衝・吸収する。
【0107】
また、上記と同様に、伝達部材18の基端18aと球面滑り軸受36との間に、過度な負荷が加わったときには、伝達部材18は、球面滑り軸受36から離脱され、ピストンロッド9に対する取り付けが解除される。
【0108】
伝達部材18を、球面滑り軸受36に離脱可能に連結してピストンロッド9に取り付け、また、環状滑り部材33を介してピストンロッド9に取り付けるようにしたので、伝達部材18が容易に損傷を受けることを防いで、ピストンロッド9の伸縮ストロークを適切に制御用シリンダユニット19に伝達することができる。
【0109】
《オイルダンパ4の取付部37の改善》
オイルダンパ4は上述したように、例えば地盤2及び建物3に連結して設けられるもので、
図2及び
図3に示すように、それら対象物への取付部37が、オイルダンパ4のピストンロッド9及び外側シリンダ5に備えられる。
【0110】
図6及び
図9には、ピストンロッド9の取付部37の詳細が拡大図で示されている。外側シリンダ5の取付部37も同様の構造を備える。
【0111】
図示するように、取付部37は、ピストンロッド9の伸長ストローク方向先端部9aや外側シリンダ5の端部に設けられる端部金物38と、建物3等に連結するための連結ブラケット39と、これら連結ブラケット39と端部金物38との間に設けられる球面滑り軸受40とから構成される。
【0112】
取付部37の球面滑り軸受40も周知のものであって、端部金物38に装着されたクレビス41に対し、連結ブラケット39に装着された球体部42付きの軸体ピン43を嵌合し、これにより、軸体ピン43の軸方向(Z軸方向)、ピストンロッド9や外側シリンダ5の長さ方向(Y軸方向)、並びにピストンロッド9や外側シリンダ5の幅方向(周方向)(X軸方向)の各軸回りの傾動が許容される。
【0113】
球面滑り軸受40は、オイルダンパ4が、連結対象である建物3等に対して振れ動くことなどを許容し、これにより、オイルダンパ4の建物3等に対する連結をフレキシブルに保持できて、オイルダンパ4を常に適切に作動させることができる。
【0114】
《伝達部材18の支持構造の改善》
図2,
図3,
図10及び
図11には、伝達部材18の支持構造が示されている。オイルダンパ4の外側シリンダ5には、その長さ方向(ピストンロッド9の伸縮ストローク方向)両端部5a,5bそれぞれに、アイボルト44を有する吊り具45が設けられる。
【0115】
これら一対の吊り具45には、それらの間に掛け渡して、上述した一対の制御用シリンダユニット19を搭載するために、平板状の台座46が接合して設けられる。
【0116】
一対の制御用シリンダユニット19に挟まれてそれらの間に配置される伝達部材18も、外側シリンダ5の位置では、台座46上に移動自在に支持される。
【0117】
台座46上には、中空筒状の保護管47が設けられる。保護管47は、ピストンロッド9の伸縮ストローク方向に長く形成される。
【0118】
保護管47は、その両端部47aが、一対の吊り具45の位置において、取付ブラケット48を介して台座46に取り付けられる。
【0119】
この保護管47内には、作動部24を含めて伝達部材18がスライド自在に挿入される。図示例にあっては、伝達部材18の先端18bに設けられる作動部24は、保護管47の内面に沿って摺動される円板状に形成されている。
【0120】
保護管47は、伝達部材18を外部から覆い、かつ伝達部材18がピストンロッド9の伸縮ストローク方向から逸れないように、そのスライド方向をガイドするようになっている。
【0121】
保護管47には、一対の制御用シリンダユニット19,19に面するその両側面に、保護管47の内外を連通するスリット49が、少なくとも制御用ピストンロッド22,22の伸長ストローク以上の長さで長く形成される。
【0122】
一対の制御用ピストンロッド22,22の突出先端にそれぞれ設けられ、作動部24に係合されてこれら制御用ピストンロッド22,22を伸長ストロークさせる上記受動部25には、これらをそれぞれ作動部24に係合可能とする突起50が設けられる。
【0123】
各突起50は、スライドする作動部24に当接可能に、スリット49に挿通されて、保護管47内方へ突出される。図示例では、突起50は、円板状に形成された受動部25から外方へ向けて形成されている。
【0124】
突起50が作動部24に当接されることにより、受動部25が作動部24に係合され、これにより、ピストンロッド9の超過伸縮ストローク量で制御用ピストンロッド22が伸長作動される。
【0125】
図2及び
図3に示すように、伝達部材18の基端18aがピストンロッド9に取付支持される取付座35の位置から保護管47の取付ブラケット48にわたり、伝達部材18を外部から覆うカバーとして、ピストンロッド9の伸縮ストロークに応じて伸縮自在なベローズ51が設けられる。
【0126】
作動部24を含む伝達部材18がスライド自在に挿入される保護管4を設けていて、当該保護管47で伝達部材18を覆うことで、伝達部材18に塵埃等が付着したり汚損されたりするのを防止でき、伝達部材18を円滑にスライド移動させることができる。
【0127】
また、保護管47により伝達部材18のスライドを案内するようにしたので、伝達部材18のスライド方向がピストンロッド9の伸縮ストローク方向から逸脱することを防止でき、伝達部材18によりピストンロッド9の伸縮ストロークを適切に伝達することができる。
【0128】
保護管47にスリット49を形成すると共に、一対の制御用ピストンロッド19の受動部25に、スリット49を介して保護管47内に突出されて作動部24に当接される突起50を設けたので、保護管47を備えた場合であっても、作動部24に受動部25を係合可能として、ピストンロッド9の超過伸縮ストローク量を制御用ピストンロッド22に確実に伝達することができる。
【0129】
ベローズ51を設けて、伝達部材18の基端18aから保護管47にわたって伝達部材18を外部から覆うようにしたので、保護管47から露出されている伝達部材18に塵埃や湿気、水分等が付着するのを防止でき、伝達部材18のスライドによるピストンロッド9の伸縮ストローク量の伝達を確実にすることができる。
【0130】
《制御用シリンダユニット19の設置構造の改善》
図2及び
図3に示すように、一対の制御用シリンダユニット19,19は、保護管47を含め、上記台座46に搭載され、当該台座46の取り付け取り外しだけでオイルダンパ4の外側シリンダ5に対する着脱が自在な制御用モジュールとして構成される。
【0131】
台座46は、
図12に示すように、破断可能な接合具、例えばシアボルト52で吊り具45に取り付けられる。シアボルト52は、大きなせん断力が作用すると破断が生じる周知の接合具である。
【0132】
図示例は、伝達部材18が挿入される保護管47を台座46に取り付ける取付ブラケット48位置における台座46と吊り具45との接合部分を示していて、シアボルト52により、取付ブラケット48と台座46と吊り具45とを一括して接合するようにしている。
【0133】
シアボルト52が破断することにより、伝達部材18が、吊り具45及び台座46から外れるようになっている。
【0134】
図2,
図3及び
図13に示すように、台座46には、一対の制御用シリンダユニット19を保持するための固定部材53がボルト接合して設けられる。
【0135】
固定部材53は、一対の制御用シリンダユニット19及び保護管47が貫通されるブロック体が、これら一対の制御用シリンダユニット19及び保護管47を一連に横切る分断ラインLで分割されると共に、一連のボルト挿通穴54が両側に一対形成された一対のブロック片55で構成され、これらブロック片55がボルト締結されて、制御用シリンダユニット19及び保護管47を保持するようになっている。
【0136】
一対の制御用シリンダユニット19等をこれら一対のブロック片55で挟み、台座46に形成されたボルト穴56を介してボルト挿通穴54へ挿通されたボルト57にナット58を締結することで、一対の制御用シリンダユニット19等が台座46にボルト接合して設けられる。
【0137】
図示例では、一対の制御用シリンダユニット19及び保護管47は、外側シリンダ5の長さ方向へ間隔を隔てて設けられた3つの固定部材53で台座46にボルト接合されている。
【0138】
台座46には
図14に示すように、固定部材53の接合位置を変更可能とするために、固定部材53をボルト接合するボルト穴56が外側シリンダ5の長さ方向に一定のピッチで多数形成される。
【0139】
一対の制御用シリンダユニット19及び保護管47を搭載する台座46を設け、この台座46を外側シリンダ5の吊り具45に接合するようにしたので、これら一対の制御用シリンダユニット19等を、当該台座46の取り付け取り外しだけでオイルダンパ4の外側シリンダ5に対する着脱が自在な制御用モジュールとすることができ、本実施形態にかかるオイルダンパシステム1の組立性・メンテナンス性を向上することができる。
【0140】
台座46は、破断可能なシアボルト52で吊り具45に取り付けられるので、大きなせん断力が制御用モジュールに作用したときに、保護管47や制御用シリンダユニット19を保護できて、これらに損傷が及ぶことを防止することができる。
【0141】
台座46には、一対の制御用シリンダユニット19等を保持する固定部材53のボルト接合位置を変更可能とするために、固定部材53をボルト接合するボルト穴56が多数形成されているので、制御用シリンダユニット19等を、望ましい位置に利便性良好に設置することができる。
【符号の説明】
【0142】
1 オイルダンパシステム
2 地盤
3 建物
4 ユニフロー型のオイルダンパ
5 外側シリンダ
7 内側シリンダ
8 ピストン
9 ピストンロッド
10 調圧バルブユニット
13 バルブボディ
14 弁体
15 バネ座
16 調圧バネ
18 伝達部材
18a 伝達部材の基端
18b 伝達部材の先端
19 制御用シリンダユニット
20 シリンダケース
21 制御用ピストン
22 制御用ピストンロッド
23 スプリング
24 作動部
25 受動部
26 制御用油流通系
27 連通部
28 チェック弁
29 バイパス路
30 ニードル弁
33 環状滑り部材
36 球面滑り軸受
40 球面滑り軸受
45 吊り具
46 台座
47 保護管
49 スリット
50 突起
51 ベローズ
52 シアボルト
53 固定部材
56 ボルト穴
F 作動油
f 制御用油
P3 導入ポート
P4 吐出ポート
S 所定伸縮ストローク量