(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173805
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】不透明化する積層造形用歯科用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/16 20200101AFI20221115BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20221115BHJP
A61K 6/76 20200101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K6/16
A61K6/62
A61K6/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079734
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】今堀 文生
(72)【発明者】
【氏名】藤村 英史
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA13
4C089BD01
4C089BE08
(57)【要約】
【課題】光造形に用いられる積層造形用歯科用硬化性組成物において、造形前はある程度の透明性を有し、造形後に不透明性が上がる組成物を得ることを目的とする
【解決手段】本発明は(a)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、(b)光重合開始剤 0.1~10重量部、(c)非重合性ポリマー5~30重量部、(d)微粒子フィラー 1.0~10重量部を含み、
(a)ラジカル重合性モノマーは、屈折率が1.45~1.57であり、(c)非重合性ポリマーは、平均分子量が2000~5000g/molであり、(d)微粒子フィラーは、平均1次粒子径が0.001~1μmであることを特徴とする積層造形用歯科用硬化性組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して
(b)光重合開始剤 0.1~10重量部、
(c)非重合性ポリマー5~30重量部
(d)微粒子フィラー 1.0~10重量部を含み、
(a)ラジカル重合性モノマーは、屈折率が1.45~1.57であり、
(c)非重合性ポリマーは、平均分子量が2000~5000g/molであり、
(d)微粒子フィラーは、平均1次粒子径が0.001~1μmである
ことを特徴とする積層造形用歯科用硬化性組成物。
【請求項2】
硬化前後でコントラスト比が増加する請求項1に記載の積層造形用歯科用硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置により造形物を作製する際に、好適に用いることができる積層造形用歯科用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、歯科医療の分野においてラジカル重合性モノマーを主成分とした硬化性組成物が、多くの治療方法で利用されている。従来は、歯科医師または歯科技工士の手作業により、硬化性組成物を用いた歯科修復物が作製されていた。しかし近年は、歯科医療の分野にも急速にデジタル化が進んでおり、積層造形装置を用いた積層造形技術が普及し始めている。これより、歯科分野に適した積層造形用歯科用硬化性組成物が求められている。
【0003】
この積層造形の方式は、光硬化性組成物に光照射し、硬化体を作製する、「光造形」と呼ばれる方法の一つである。この積層造形の方式は、形状パターンの光を照射して硬化層を形成させ、これを連続的に行うことで硬化層を積層させ、所望する硬化体を得るものである。
この積層造形の方式に使用される光硬化性組成物は、照射される光により速やかに硬化し、光を照射していない部分は硬化しないことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光造形に用いる組成物は、光エネルギーにより硬化するため、ある程度の透明性を有することが求められる。不透明性が高い場合、組成物の内部に光エネルギーが到達できないため、光造形することが困難となる。一方で歯科用組成物には、その用途に応じて不透明性が必要となる。本発明は、光造形に用いられる積層造形用歯科用硬化性組成物において、造形前はある程度の透明性を有し、造形後に不透明性が上がる組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は(a)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、(b)光重合開始剤 0.1~10重量部、(c)非重合性ポリマー5~30重量部、(d)微粒子フィラー 1.0~10重量部を含み、
(a)ラジカル重合性モノマーは、屈折率が1.45~1.57であり、(c)非重合性ポリマーは、平均分子量が2000~5000g/molであり、(d)微粒子フィラーは、平均1次粒子径が0.001~1μmである積層造形用歯科用硬化性組成物である。
さらに硬化前後でコントラスト比が増加する積層造形用歯科用硬化性組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、積層造形用歯科用硬化性組成物に非重合性ポリマー及び微粒子フィラーを配合することで、硬化前は透明性を有し、硬化後において不透明化が促進され、遮光性と白色着色の効果が高まるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物は、3Dプリンタを用いて歯科用硬化体を得るための材料である。本発明で用いる3Dプリンタは、積層造形を行う3Dプリンタである。
具体的には光造形型(SLA、DLP)3Dプリンタである。
【0009】
歯科用硬化体とは、歯科医療において口腔内外で用いられる補綴装置、機器、器具類を意味する。
器機、器具類とは、模型、スプリント歯科用模型、スプリント、マウスガード、ナイトガード、サージカルガイド、鋳造用キャストレジン、トレー、などを挙げることができる。
補綴装置とは、インレー、オンレー、クラウン、ブリッジ、デンチャー、試適用デンチャーなどを挙げることができる。最も試適用デンチャーが好ましい。
【0010】
本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物に用いる成分(a)ラジカル重合性モノマーは、1種以上の単官能もしくは多官能(メタ)アクリレートまたはそれらの混合物であることが好ましい。単官能(メタ)アクリレートとは、ラジカル重合性基を1個有する化合物を意味し、多官能(メタ)アクリレートとは、2個以上のラジカル重合性基を有する化合物を意味する。
【0011】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n―ブリル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、(3-フェノキシフェニル)メチルエステル-2-(メタ)アクリレートエトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等があげられる。
【0012】
多官能性の(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリルオキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)クリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの、(a)ラジカル重合性モノマーは重量部換算の基準成分となる。
【0014】
本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物に用いる成分(b) 光重合開始剤として、以下の化合物が例示される。アセトフェノン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム一水和物、アニソイン、p-アニシル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、(±) -カンファーキノン、2-クロロチオキサントン、フェロセン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジベンゾスベレノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、リチウムフェニル(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸塩、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、9,10-フェナントレンキノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、9,10-フェナントレンキノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、らがあり、好ましくはジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、等が挙げられる。
また、本発明の成分(b) 光重合開始剤配合量の配合量は0.1~10重量部であり、好ましくは1~5重量部である。さらに好ましくは2~4重量部である。
【0015】
本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物に用いる成分(c)非重合性ポリマーは重合性基を持たないポリマーである。(c)非重合性ポリマーは平均分子量の範囲は2000~5000g/molであり、3000~5000 g/molが好ましい。
(c)非重合性ポリマーの具体的な例としてはポリエーテルが例示される。最も好ましい(c)非重合性ポリマーはポリプロピレングリコールである。
(a)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、(c)非重合性ポリマーの配合量は、5~30重量部であり、好ましい配合量は10~30重量部であり、さらに好ましくは10~20重量部である。
また、(c)非重合性ポリマーがポリプロピレングリコールである場合、平均分子量の範囲は2000~5000g/molであることが好ましく、3000~5000 g/molが更に好ましい。ポリプロピレングリコールの平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された値である。
【0016】
本発明による成分(d)微粒子フィラーは、歯科用材料に用いられている公知の微粒子フィラーが制限なく使用される。(d)微粒子フィラーを配合することにより、組成物を均質化する効果があり、硬化前後の透明性の向上を促進する。具体的な(d)微粒子フィラーは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、その他の金属酸化物、またこれらの複合酸化物、ガラス組成物などがある。より好ましくはシリカ、アルミナ、ジルコニア、これらの複合酸化物である。微粒子フィラーの平均1次粒子径は0.001~1μmである。微粒子フィラーの1次粒子径が0.001μmを下回ると比表面積の増加によりラジカル重合性モノマーに配合することが困難となる。粒子フィラーの1次粒子径が1μmを超えると組成物中で沈降を生じ、硬化物表面の滑らかさが低下することとなる。
本発明の成分(d)微粒子フィラーの配合量は0.1~10重量部であり、好ましくは2.5~5重量部である。(d)微粒子フィラーの配合量の0.1重量部を下回ると硬化前後の透明性の向上が少なくなる。(d)微粒子フィラーの配合量の10重量部を超えると組成物の硬化前透明性が損なわれ、粘度が上昇し積層造形が困難となる。
【0017】
本発明には、歯科用材料に用いられている公知の着色材を用いることができる。着色材としては、染料、顔料のいずれもが使用可能である。好ましくは染料である。(a)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、着色剤の配合量は、0.001~1重量部である。
染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、OIL BLACK 803、OIL BLACK 860、OIL BLACK BS、OIL BLACK HBB、OIL BLACK NO5、OIL BLUE 2N、OIL BLUE 613、OIL BROWN BB、OIL GREEN 502、OIL GREEN 530、OIL ORANGE 201、OIL ORANGE PS、OIL PINK 312、OIL RED 330、OIL RED 5B、OIL RED OG、OIL RED RR、OIL SCARLET 308、OIL SCARLET 318、OIL YELLOW 105、OIL YELLOW 107、OIL YELLOW 129、OIL YELLOW 136、OIL YELLOW 3G、OIL YELLOW GG-S[オリエント化学(株)製]等が挙げられる。これらの染料は単独または複数を組み合わせて用いることができる。
【0018】
顔料を使用する場合は沈殿を発生させない様に注意が必要である。顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別される。無機顔料の例としては、黄鉛、亜鉛鉛、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。
【0019】
有機顔料の例としては、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独または複数を組み合わせて用いることができる。
【実施例0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例又は比較例に用いた各成分を略号とともに以下に説明する。
実施例で用いた各成分とその略称は以下の通り、
(a)ラジカル重合性モノマー:
BPE-100:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、屈折率1.532(新中村化学工業)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート、屈折率1.459(新中村化学工業)
(b)光重合開始材:
TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(東京化成工業)
(c)非重合性ポリマー:
PPG400:ポリプロピレングリコール、平均分子量400(シグマアルドリッチ)
PPG2000:ポリプロピレングリコール、平均分子量2000(シグマアルドリッチ)
PPG2700:ポリプロピレングリコール、平均分子量2700(シグマアルドリッチ)
PPG4000:ポリプロピレングリコール、平均分子量4000(シグマアルドリッチ)
(d)微粒子フィラー:
SiO2:アエロジル R-972、平均1次粒子径16nm(日本アエロジル)
SiO2:アエロジルOX-50、平均1次粒子径16-40nm(日本アエロジル)
【0021】
(積層造形用歯科用硬化性組成物のコントラスト比の測定方法)
調製した積層造形用歯科用硬化性組成物を、透明ガラス板上に設置した直径15mm、厚さ1mmのスペースをもつリング金型に充填し、その上に別の透明ガラス板を置いて挟み込んだ。
これを分光測色計CM-5(コニカミノルタ製)で白バックおよび黒バック条件での測色Y値を測定した。測色Y値よりコントラスト比(コントラスト比=黒バックY値/白バックY値)を算出した。測定結果を「組成物のコントラスト比」という。
【0022】
(積層造形用歯科用硬化性組成物の硬化体のコントラスト比の測定方法)
積層造形装置(DWP-80S:DGSHAPE)により、調製した積層造形用歯科用硬化性組成物を直径15mm、厚さ1mmの試験片に造形した。この試験片を分光測色計CM-5(コニカミノルタ製)で白バックおよび黒バックの測色Y値を測定した。測色Y値よりコントラスト比(コントラスト比=黒バックY値/白バックY値)を算出した。測定結果を「硬化体のコントラスト比」という。
【0023】
(硬化前後のコントラスト比の増加の評価方法)
硬化前後のコントラスト比の評価は以下の計算式で行った。
(硬化前後のコントラスト比の増加量)=(硬化体のコントラスト比)-(組成物のコントラスト比)
評価A: 硬化前後のコントラスト比の増加量が0.41以上。
評価B: 硬化前後のコントラスト比の増加量が0.31から0.40。
評価C: 硬化前後のコントラスト比の増加量が0.21から0.30。
評価D: 硬化前後のコントラスト比の増加量が0.11から0.20。
評価E: 硬化前後のコントラスト比の増加量が0.06から0.10。
評価F: 硬化前後のコントラスト比の増加量が0から0.05。
【0024】
(組成物の曲げ強さの測定方法)
積層造形装置(DWP-80S:DGSHAPE)により、調製した積層造形用歯科用硬化性組成物を2.0mm×2.0mm×25mmの試験片に造形した。この試験片を万能試験機インストロン5567型(インストロン製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/mm、支点間距離20mmの条件で3点曲げ試験を行った。
(曲げ強度低下率の評価方法)
曲げ強度低下率の評価は以下の計算式で行った。
(曲げ強さ低下率の評価方法)
=1-(硬化物の曲げ強さ)/(成分(a)と成分(b)のみの硬化体の曲げ強さ)
評価A: 曲げ強さ低下率が15%以下。
評価B: 曲げ強さ低下率が16%から30%。
評価C: 曲げ強さ低下率が31%から45%。
評価D: 曲げ強さ低下率が46%から60%。
評価E: 曲げ強さ低下率が61%から75%。
評価F: 曲げ強さ低下率が76%以上。
【0025】
(造形性の評価方法)
調整した積層造形用歯科用硬化性組成物を、積層造形装置(DGSHAPE社製 DWP-80S)を用いて厚さφ15×t1.0 mmの試験片5枚を造形した。その際、照射時間は10秒/層の条件で試験片を造形した。
試験片の全てが造形可能であった場合を「A」、3~4枚造形できていた場合には「B」とし、造形物が2枚以下の場合を「C」とした。
【表1】
【0026】
総合評価結果:
表1に示す通り、本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物における下記組成範囲にある歯科用組成物を用いた実施例は、硬化体のC比に増加がみられ、かつ造形性に優れていた。
本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物における組成範囲は(a)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、(b)光重合開始剤 0.1~10重量部、(c)非重合性ポリマー5~30重量部、(d)微粒子フィラー 1.0~10重量部を含み、(a)ラジカル重合性モノマーは、屈折率が1.45~1.57であり、(c)非重合性ポリマーは、平均分子量が2000~5000g/molであり、(d)微粒子フィラーは、平均1次粒子径が0.001~1μmである。一方、本発明の積層造形用歯科用硬化性組成物における組成範囲に無い比較例1および比較例2では光重合開始剤量が適切でなく、造形性が劣っていた。また、比較例3、比較例4および比較例5では選択する非重合性ポリマーの平均分子量または配合量が適切でなく、硬化体のC比の増加量や造形性が劣っていた。比較例6では非重合性ポリマーを含まず、硬化体のC比が増加しなかった。比較例7では粘性が高くなり、積層不良が発生した。比較例8では組成物のC比が増加せず、また造形性も劣っていた。