(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173821
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】紡糸用ノズル
(51)【国際特許分類】
D01D 4/02 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
D01D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079779
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】久保 有輝
(72)【発明者】
【氏名】新福 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀和
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA02
4L045BA03
4L045CB11
(57)【要約】
【課題】ホール数を増やしても、フィラメントの切断とフィラメント間の融着が生じ難い紡糸用ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル面1を複数に区画したブロック部7に複数のホールを有する紡糸用ノズル100において、ブロック部7は、ノズル面1の中央5からノズル面1の外周に向かうにしたがってその幅が大きくなる形状であって、中央5を基準として周方向に間隔をおいて存在し、ブロック部7は、外周縁から中央5に向かって凹入する凹入部分11を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面を複数に区画したブロック部に複数のホールを有する紡糸用ノズルにおいて、
前記ブロック部は、前記ノズル面の中央から当該ノズル面の外周に向かうにしたがってその幅が大きくなる形状であって、前記中央を基準として周方向に間隔をおいて存在し、
前記ブロック部は、外周縁から前記中央に向かって凹入する凹入部分を有する
紡糸用ノズル。
【請求項2】
前記ホールは、前記中央を中心する複数の同心円上であって前記ブロック部内に位置する仮想円弧上に形成され、
前記凹入部分の長さは、前記外周縁と前記中央との間の長さに対して0.65倍以下である
請求項1に記載の紡糸用ノズル。
【請求項3】
前記周方向に隣接するブロック部の間隔が、1.5mm以上である
請求項1又は2に記載の紡糸用ノズル。
【請求項4】
前記周方向に隣接するブロック部の間隔が、1.5mm以上であり、
前記凹入部分の周方向の幅は、前記ブロック部の間隔よりも小さく、0.95mm以上である
請求項1又は2に記載の紡糸用ノズル。
【請求項5】
前記ノズル面に存在する前記ホールの合計数が、18,000個以上である
請求項1~4の何れか1項に記載の紡糸用ノズル。
【請求項6】
前記ブロック部の数が30個以上である
請求項1~5の何れか1項に記載の紡糸用ノズル。
【請求項7】
前記仮想円弧上に形成されている前記ホールの最小のピッチが0.35mm以上である
請求項1~6の何れか1項に記載の紡糸用ノズル。
【請求項8】
前記紡糸用ノズルは、炭素繊維用のアクリル繊維を紡糸するためのノズルである
請求項1~7の何れか1項に記載の紡糸用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学繊維を紡糸法により製造するためのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系繊維などの化学繊維の製造方法は様々あるが、重合体を含む紡糸原液を紡糸用ノズルの吐出孔(以降、ホールともいう)を通して押し出す、湿式紡糸法、乾式紡糸法などの紡糸方法が工業的に実用化されている。中でも、生産性の観点から湿式紡糸法が一般的に使用されている。この湿式紡糸法は、紡糸原液である重合体溶液を溶剤と水の混合液である凝固液に吐出・凝固して繊維を形成する方法であり、紡糸原液を紡糸ノズルから直接凝固液中に吐出させる狭義の湿式紡糸法と紡糸原液を紡糸ノズルから一旦気相部(通常は、空気中)に吐出させる乾湿式紡糸法などがある。
このような紡糸法において、紡糸原液は紡糸ノズルから吐出され、繊維状に形成された単繊維(フィラメント)の集合体である繊維束となって引き取られるが、紡糸ノズルの吐出孔密度を増加させ、繊維束の構成本数が増加すると、吐出孔群の外周部と中央部で、凝固速度に差異が発生しやすくなり、デニール(繊度)の斑や凝固斑が起こりやすくなる。また、紡糸ノズルの吐出孔密度を増加すると、生産性の向上の観点からは効果を有するが、フィラメント同士の融着が起こりやすくなったり、フィラメントの切断、所謂、単糸切れが多くなったりするという問題があった。
このような問題を解決するため、これまで種々の検討がなされ、例えば、紡糸用ノズルとして、「円形ノズルの円中心から外周にかけて形成された複数の略扇形穿孔領域と、前記複数の略扇形穿孔領域の間に形成された複数の非穿孔領域とからなる湿式紡糸用円形ノズルであって、前記扇形穿孔領域には円形ノズルの円中心を中心とする互いに等間隔離間する同心円上に所定間隔で穿設された吐出孔を有し、前記非穿孔領域は円形ノズルの外周から中心にかけて略同一幅に形成されてなることを特徴とする湿式紡糸用円形ノズル」が提案されている(特許文献1)。
特許文献1のノズルを利用することで、デニール斑や凝固斑等の少ない高品位の繊維を生産性良く製造することができる。
しかしながら、近年、さらに、生産性を高めるためにホール(上記の吐出孔である)数を増やしたいという要望があるが、単に、ホール数を増やすと、フィラメントの切断、所謂、単糸切れが多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ホール数を増やしても、フィラメントの切断が生じ難い紡糸用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る紡糸用ノズルは、ノズル面を複数に区画したブロック部に複数のホールを有する紡糸用ノズルにおいて、前記ブロック部は、前記ノズル面の中央から当該ノズル面の外周に向かうにしたがってその幅が大きくなる形状であって、前記中央を基準として周方向に間隔をおいて存在し、前記ブロック部は、外周縁から前記中央に向かって凹入する凹入部分を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紡糸用ノズルによれば、ホール数を増やしても、フィラメントの切断を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の紡糸用ノズルを内部から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
実施形態の一態様に係る第1の紡糸用ノズルは、ノズル面を複数に区画したブロック部に複数のホールを有する紡糸用ノズルにおいて、前記ブロック部は、前記ノズル面の中央から当該ノズル面の外周に向かうにしたがってその幅が大きくなる形状であって、前記中央を基準として周方向に間隔をおいて存在し、前記ブロック部は、外周縁から前記中央に向かって凹入する凹入部分を有する。これにより、ホール数を増やしても、フィラメントの切断を抑えることができる。また、凹入部分を設けることでフィラメント間の融着も抑制することができる。
実施形態に係る別態様に係る第2の紡糸用ノズルは、第1の紡糸用ノズルにおいて、前記ホールは、前記中央を中心する複数の同心円上であって前記ブロック部内に位置する仮想円弧上に形成され、前記凹入部分の長さは、前記外周縁と前記中央との間の長さに対して0.65倍以下である。
実施形態に係る別態様に係る第3の紡糸用ノズルは、第1又は第2の紡糸用ノズルにおいて、前記周方向に隣接するブロック部の間隔が、1.5mm以上である。
実施形態に係る別態様に係る第4の紡糸用ノズルは、第1又は第2の紡糸用ノズルにおいて、前記周方向に隣接するブロック部の間隔が、1.5mm以上であり、前記凹入部分の周方向の幅は、前記ブロック部の間隔よりも小さく、0.95mm以上である。
実施形態に係る別態様に係る第5の紡糸用ノズルは、第1~第4の紡糸用ノズルにおいて、前記ノズル面に存在する前記ホールの合計数が、18,000個以上である。
実施形態に係る別態様に係る第6の紡糸用ノズルは、第1~第5の紡糸用ノズルにおいて、前記ブロック部の数が30個以上である。
実施形態に係る別態様に係る第6の紡糸用ノズルは、第1~第5の紡糸用ノズルにおいて、前記仮想円弧上に形成されている前記ホールの最小のピッチが0.35mm以上である。
【0009】
<実施形態>
実施形態で説明する紡糸用ノズルは、中心から径方向の外側に向かうにしたがって周方向の寸法が大きくなる扇状、三角形状、これらに似た形状のブロック部が設けられ、そのブロック部にホールが形成されているが、そのブロック部中にホールの無い凹入部分を設けることで、ホール数を増やしてもフィラメントの切断が生じ難く、且つフィラメント間の融着の無い高品位な繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
1.全体構成
紡糸用ノズル(以下、単に「ノズル」とする)について
図1及び
図2を用いて説明する。
ノズル100は、ノズル面1と、ノズル面1に設けられた紡糸用の多数のホール3とを有している。なお、
図1は、紡糸原液が貯留されている側から見た図である。なお、紡糸原液が貯留されている側を内側又は裏側といい、貯留されていない側を外側又は表側という。
ノズル面1は例えば円形状をしている。多数のホール3は、ノズル面1を複数に区分して構成されたブロック部7に設けられている。なお、以下、周方向及び径方向は、円形状のノズル面1の中心5を基準とし、ここでの中心5は、ノズル面1の中央の一例に相当する。ノズル面3に存在するホール3の合計数は、18,000個以上であることが好ましく、より好ましくは24,000~50,000個である。
【0011】
ブロック部7は、ノズル面1と直交する方向であって裏側から見ると、ノズル面1の中央を基準として周方向に間隔を置いて存在する。ブロック部7は、中央、つまり中心5から径方向の外側(外周側)に向かうにしたがって周方向の寸法(幅)が大きくなる扇状、三角形状、これらに似た形状をしている。なお、ブロック部7の形状は、後述の凹入部分11がない場合の形状であるが、凹入部分の有無に関係なく、ブロック部の形状とする。
複数のブロック部7は、周方向に区画部9を挟んで存在する。換言すると、複数のブロック部7は、周方向に間隔を空けて設けられ、当該間隔の空いた部分が区画部9である。ここでの区画部9は、その幅が一定であり、複数のブロック部7は、周方向に等間隔をおいて(等ピッチで)存在する。複数のブロック部7は、中心5に対して点対称になるように、又は、中心5を通る仮想線に対して線対称となるように設けられている。各区画部9は中心5側から径方向の外方へ一直線状に延び、全体として中心5から放射状に伸びている。
【0012】
ブロック部7は、裏側から見ると、そのブロック部7の外周縁(正確には、凹入部分11がないとした場合の外周縁である)から中央(ここでは中心5である)に向かって凹入する凹入部分11を有している。凹入部分11にはホール3が設けられていない。なお、凹入部分11は、ブロック部7の外周形状を構成するものであり、ノズル面1の厚み方向に凹入するような溝を意味しない。
凹入部分11は直線状をしている。凹入部分11は、区画部9よりも長さが短く、区画部9よりも幅が狭い。
【0013】
2.ホールの配置
1つのブロック部7に設けられるホール3の配置について
図2を用いて説明する。
複数のホール3は、隣接するホール3から吐出される紡糸同士が融着しない又は融着し難いように配置されている。ホール3のピッチは、複数種類あり、中心5からの距離によって決定されている。なお、ホール3のピッチは、ホール3の形状や直径、紡糸原液の粘度、紡糸原液の吐出速度や温度等によって決定されてものであり、一義的に定義できないが、0.35mm以上が好ましい。
複数のホール3は、ノズル面1の中心5を中心とする複数の同心円上であってブロック部7内の仮想円弧13上に設けられている。中心5から離れるほど各仮想円弧13の長さ(周方向に隣接する区画部9の間隔である)が大きくなり、仮想円弧上に形成されるホール3の個数が多くなる。
発明者らの検討によると、仮想円弧13上に配されたホール3が多くなると、当該ホール3と、当該ホール3に近接(隣接)する他のホール3とから吐出された紡糸同士が融着しやすいことが判明している。なお、このような融着を抑制するために、融着が発生しやすい領域に凹入部分11を設けているともいえる。
【0014】
融着が発生しやすい領域は、中心5からの距離、ホール3の形状や大きさ、ノズル面1の主面とホール3との境界部分の形状(面取りCの大きさやR加工の半径等である)、紡糸原液の粘度、吐出速度や温度等に依存するものであり、具体的な数字で定義することは困難である。
発明者の検討では、扇状、三角形(二等辺三角形)状、又はこれらに似た形状のブロック部7の周縁から10~20mm離れた領域で融着が発生しやすいことが判明している。また、10~20mmをホール数で置き換えると、ホール3の直径によっても異なるが、周縁から8個以上離れる領域で発生しやすい。つまり、仮想円弧上に15個以上ある領域である。
【0015】
3.凹入部分及び区画部
(1)区画部
区画部9の幅(周方向の長さ)は、1~2mmであり、好ましくは、1~1.5mmである。幅は、ホール3の直径に対して12~35倍であり、好ましくは、ホール3の直径に対して12~25倍である。
(2)凹入部分
凹入部分11の長さ(径方向の長さ)は、5~25mmであり、好ましくは、10~20mmである。凹入部分11の長さは、径方向における、中心5とブロック部7の最外縁との距離に対して0.05~0.65倍である。好ましくは、距離に対して、0.1~0.65倍であり、より好ましくは、距離に対して、0.2~0.6倍である。
凹入部分11の長さは、ホール3の直径に対して、100~1000倍、好ましくは、150~800倍が好ましい。凹入部分11の長さは、ホール3の最小ピッチに対して、10~150倍、好ましくは、20~100倍が好ましい。
【0016】
凹入部分11の幅(周方向の寸法)は、0.5~1.5mmであり、好ましくは、0.7~1.3mmである。凹入部分11の幅は、区画部9の幅に対して、0.3~0.8倍であり、好ましくは、0.4~0.7倍である。なお、区画部9の幅が一定でない場合は、区画部9の面積を区画部9の径方向の長さで割った値を幅とし、凹入部分11の幅が一定でない場合は、凹入部分11の面積を凹入部分11の径方向の長さで割った値を幅とする。
凹入部分11の幅は、ホール3の直径に対して、10~20倍であり、好ましくは、13~17倍である。凹入部分11の幅は、ホール3の最小ピッチに対して、2~3倍であり、好ましくは、2.2~2.7倍である。
(3)まとめ
区画部9と凹入部分11とを上記のような寸法や比率にすることで、単糸切れを抑制できる。また、融着を抑制しつつノズル面1に多くのホール3を設けることもできる。
【0017】
<実施例>
【0018】
紡糸原液は、例えば、60質量%の塩化亜鉛水溶液を溶媒として用い、これにアクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%の共重合体を濃度7質量%に溶解させている。この紡糸原液を6℃の塩化亜鉛25質量%水溶液(凝固液である)に吐出することで凝固させた。この凝固糸を15~95℃の水中で洗浄しながら合計2.9倍の多段延伸を行い、得られた繊維をアミノシリコンの水分散液中(8g/L)で処理した。その後、70~150℃のサクションドラム乾燥機で水分率が1質量%以下になるまで乾燥緻密化を行った。次いで、90℃の熱水浴を通した後、0.75MPa(ゲージ圧)の飽和水蒸気中で5倍の再延伸を行って、前駆体繊維束を製造した。
【0019】
製造した前駆体繊維束に対して、融着数と単糸切れ数を測定した。
融着数は、長さ9mの繊維束を3mごとに長さ3mmに切断して試料を得た。この試料をアセトン10mlに投入した後、超音波を1分間照射した。光学顕微鏡を用いて、倍率20倍で前記繊維束を分散させたアセトン溶液を観察し、融着繊維の本数を数えた。なお、融着数が5個以下であれば、融着数が少ないと評価している。
単糸切れ数は、長さ5mの繊維束を長さ1mずつに切断して、目視にて切れている単糸を数えることで測定している。なお、単糸切れ数は、1個以下であれば、単糸切れ数が少ないと評価している。
【0020】
<実施例1>
使用したノズル100は、円形状をし、全ホール数36,000個である。ブロック部7の形状は扇状をしている。ブロック部数は60個であり、1個のブロック部7に、直径が0.06mmのホール3が600個設けられている。最小のホール3のピッチ(最小ホール間ピッチ)は、0.40mmである。1個のブロック内のホール密度は、7.1個/mm2であった。
周方向に隣接するブロック部7の間隔である区画部9の幅は、1.5mmであり、凹入部分11の幅は0.95mmであり、ブロック部7の外周縁から中心5に向かう凹入部分11の長さは、ノズル100の中心5からブロック部7の最外縁までの長さに対して0.2倍である。
本ノズル100を用いて前駆体繊維を製造した結果、融着数が「1」であり、単糸切れ数は、「0.8」であった。
このように、ホール数を18,000個以上の「36,000」個としても、融着の発生や単糸切れを抑えたノズル100が得られた。
なお、ノズル100の仕様及び評価結果を表1にまとめている。
【0021】
<実施例2>
使用したノズル100は、ホール径0.07mmであり、ブロックの形状、凹入部分11の構成等は実施例1と同じである。
実施例2では、融着数が「1」であり、単糸切れ数は、「1.0」であった。
このように、ホール数を18,000個以上の「36,000」個としても、融着の発生や単糸切れを抑えたノズル100が得られた。
なお、ノズル100の仕様及び評価結果を表1にまとめている。
【0022】
<実施例3>
使用したノズル100は、凹入部分11の幅は1.00mmであり、凹入部分11の長さは、ノズル100の中心5からブロック部7の最外縁までの長さに対して0.6倍である。また、1個のブロック内のホール密度は、7.3個/mm2であった。
実施例3では、融着数が「1」であり、単糸切れ数は、「0.9」であった。
このように、ホール数を18,000個以上の「36,000」個としても、融着の発生や単糸切れを抑えたノズル100が得られた。
なお、ノズル100の仕様及び評価結果を表1にまとめている。
【0023】
<比較例1>
使用したノズル100は、直径、形状、全ホール数、ホール3の直径、ブロック数、区画部9の幅は、実施例1と同じであるが、最小のホール3のピッチが0.46mmであり、凹入部分11を有していない。また、1個のブロック内のホール密度は、5.1個/mm2であった。
比較例1では、融着数が「1」であり、単糸切れ数は、「3」であった。
このように凹入部分11を有しない場合、ホール数を18,000個以上の「36,000」個とすると、融着の発生は抑えることができたが、単糸切れを抑えることができなかった。
なお、ノズル100の仕様及び評価結果を表1にまとめている。
【0024】
<比較例2>
使用したノズル100は、直径、形状、全ホール数、ホール3の直径は、実施例1と同じであるが、最小のホール3のピッチが0.39mm、ブロック数が120個、区画部9の幅が0.95mmであり、凹入部分11を有していない。また、1個のブロック内のホール密度は、7.4個/mm2であった。
比較例2では、融着数が「1」であり、単糸切れ数は、「3」であった。
このように凹入部分11を有しない場合、ホール数を18,000個以上の「36,000」個とすると、融着の発生は抑えることができたが、単糸切れを抑えることができなかった。
なお、ノズル100の仕様及び評価結果を表1にまとめている。
【0025】
<比較例3>
使用したノズル100は、直径、形状、全ホール数、ホール3の直径、ブロック数、区画部9の幅は、実施例1と同じであるが、最小のホール3のピッチが0.35mmであり、凹入部分11を有していない。また、1個のブロック内のホール密度は、15個/mm2であった。
比較例2では、融着数が「10」であり、単糸切れ数は、「10」であった。
このように凹入部分11を有しない場合、ホール数を18,000個以上の「36,000」個とすると、融着の発生及び単糸切れを抑えることができなかった。
なお、ノズル100の仕様及び評価結果を表1にまとめている。
【0026】
【0027】
<まとめ>
(1)ホール数
実施例1~3と比較例1~3とは、同じホール数であったが、凹入部分11をブロック部7に有する実施例1~は、比較例1~3よりも単糸切れ数が少ない。このことから、ホール数が18,000個以上の場合、ブロック部7に凹入部分11を設けることで、単糸切れを抑制できることが分かる。
(2)ホール密度
参考例1の3.5個/mm2では、単糸切れ数が非常に少ないのに対し、比較例1では、5.1個/mm2と参考例1に近い密度であるにもかかわらず、単糸切れ数が参考例1よりも多くなった。
実施例1~3は、比較例1のホール密度よりも高いが、単糸切れ数が少なかった。
このことから、ホール密度が4個/mm2以上になると、単糸切れが発生しやすく、実施例1~3のように凹入部分11を設けると、単糸切れを抑制できることが分かる。
【0028】
<<変形例>>
以上、実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限られない。例えば、以下で説明する変形例と実施形態の何れかを適宜組み合わせてもよいし、複数の変形例を適宜組み合わせてもよい。
(1)ノズル100は、円形状であってもよいし、正方形状等の正多角形、楕円形状、長円形状等の他の形状であってもよい。ノズル100の大きさ(例えば、円形状の場合の直径である)は、特に説明していないが、ホール数、ホールの直径、ホール間ピッチ等により決定される。
(2)ホールの直径は、一定であってもよいし、異なってもよい。ホールの形状は、円形状であってもよいし、正方形状等の正多角形状、楕円形状等の他の形状であってもよい。ホールのピッチは、一定であってもよいし、異なってもよい。
(3)凹入部分11は、裏側から見たときに、ブロック部7において外周縁から中央に向かい、ブロック部7の外周形状を構成しているが、例えば、外周形状を構成すると共に、ノズル面1の厚み方向に凹入するような溝や突出する突条を形成することで、裏側から見たときに凹入形状を構成してもよい。また、ブロック部は、ノズル面において、ブロック部以外の部分と面一であってもよいし、面一でなくてもよい。
凹入部分11は、1つのブロック部7に対して1本存在したが、複数本あってもよい。
(4)ノズルは、炭素繊維用の前駆体繊維を製造するためのノズルであったが、アクリル繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維を製造するためのノズルであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 ノズル面
3 ホール
5 中心(中央)
7 ブロック部
9 区画部
11 凹入部分
100 ノズル