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  • 特開-複座平衡弁 図1
  • 特開-複座平衡弁 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173823
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】複座平衡弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/44 20060101AFI20221115BHJP
   F16T 1/22 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F16K1/44 A
F16T1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079782
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直也
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA02
3H052BA26
3H052CA12
3H052CD02
(57)【要約】
【課題】上下の弁体の同時着座による寸法誤差の発生を防ぐとともに、シール性の向上を実現できる複座平衡弁を提供する。
【解決手段】複座平衡弁2は、弁棒23と、流体F2の流出路13を形成するホルダ18と、弁棒23の軸心方向AXに離間した位置に取り付けられて流出路13への流体F2の流入を制御する第1および第2の弁体28,29と、ホルダ18に設けられて第1および第2の弁体28,29がそれぞれ着座する第1および第2の弁座30,31とを備えている。第1および第2の弁体28,29の一方の弁体28が、弁棒23の軸心方向AXに移動可能に弁棒23に支持されている。弁棒23における第1および第2の弁体28,29の間に、一方の弁体28に閉弁方向の力を付与する閉弁力付与部材60が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁棒と、
流体の流出路を形成するホルダと、
前記弁棒の軸心方向に離間した位置に取り付けられて前記流出路への流体の流入を制御する第1および第2の弁体と、
前記ホルダに設けられて前記第1および第2の弁体がそれぞれ着座する第1および第2の弁座と、を備え、
前記第1および第2の弁体の一方の弁体が、前記弁棒の軸心方向に移動可能に前記弁棒に支持され、
前記弁棒における前記第1および第2の弁体の間に、前記一方の弁体に閉弁方向の力を付与する閉弁力付与部材が設けられている複座平衡弁。
【請求項2】
請求項1に記載の複座平衡弁において、前記閉弁力付与部材が、圧縮コイルばねである複座平衡弁。
【請求項3】
蒸気および復水を含んだ流体が上部から流入するトラップ室と、
前記トラップ室の下部に開口し前記復水を排出する排出孔と、
前記トラップ室内に配置されて前記復水の浮力により上下移動するフロートと、
前記トラップ室に配置された請求項1または2に記載の複座平衡弁と、を備え、
前記フロートがその上下移動に連動して前記複座平衡弁の前記弁棒を軸心方向に移動させるように前記弁棒に連結されているフロート式蒸気トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁棒の軸心方向に離間した位置に取り付けられた一対の弁体により、対応する一対の弁座を開閉する複座平衡弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述のような一対の弁体と弁座を備えた複座平衡弁は、一対の弁体に流体から作用する力が互いに打ち消されて平衡となることにより、小さな操作力で弁開閉が可能となる。このような複座平衡弁は、例えば、蒸気配管から蒸気を漏れないようにトラップして復水(ドレン)のみを排出するフロート式蒸気トラップなどに主に採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6340232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示す従来の複座平衡弁100では、上下2つの弁体102,104と弁棒106(軸シャフト部)は固定されており、組立時に、2か所の弁体102,104と弁口108,110の寸法誤差が発生しないよう遊びが無い状態で微調整されている。
【0005】
また、上下の弁体102,104が蒸気トラップ112の内圧から受ける力は、打ち消し合う方向に設計されており、それによって内圧による閉弁方向の力を受けず小さな力で開弁ができる。しかしながら、このようなメリットと同時に、内圧による閉弁荷重を受けないことで、閉弁力が弱くシール性が不足するというデメリットもある。このため、複座平衡弁は閉弁時に弁漏れが発生しやすいという欠点がある。
【0006】
本発明は、上下の弁体の同時着座による寸法誤差の発生を防ぐとともに、シール性の向上を実現できる複座平衡弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の複座平衡弁は、弁棒と、流体の流出路を形成するホルダと、前記弁棒の軸心方向に離間した位置に取り付けられて前記流出路への流体の流入を制御する第1および第2の弁体と、前記ホルダに設けられて前記第1および第2の弁体がそれぞれ着座する第1および第2の弁座とを備えている。前記第1および第2の弁体の一方の弁体が、前記弁棒の軸心方向に移動可能に前記弁棒に支持されている。前記弁棒における前記第1および第2の弁体の間に、前記一方の弁体に閉弁方向の力を付与する閉弁力付与部材が設けられている。閉弁力付与部材は、例えば、圧縮コイルばねである。また、本発明の複座平衡弁は、例えば、レバーフロート式の蒸気トラップに用いられる。
【0008】
この構成によれば、一方の弁体に閉弁方向の力を付与する閉弁力付与部材が設けられているので、一方の弁体が弁座に押し付けられるから、閉弁時に第1および第2の弁体の着座寸法誤差の発生がなくなる。また、弁体を弁座に押し付ける方向に力が働くことで、シール性が向上して流体の漏れを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弁装置によれば、上下の弁体の同時着座による寸法誤差の発生を防ぐとともに、シール性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る複座平衡弁を備えたフロート式蒸気トラップを示す縦断面図である.。
図2】同複座平衡弁の拡大断面図である。
図3】従来の複座平衡弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る複座平衡弁2を備えたフロート式蒸気トラップを示す縦断面図である。このフロート式蒸気トラップ1は、トラップボディ3のフランジ部3aと側壁カバー4のフランジ部4aとがガスケット8を介在してボルト9とナット10の締結により互いに結合されて筐体が構成され、この筐体の内部にトラップ室11が形成されている。
【0012】
トラップボディ3の上部には、蒸気および復水を含む高温の1次側流体F1をトラップ室11内に上部から流入させる流入孔12が設けられている。側壁カバー4には、トラップ室11内の下部から複座平衡弁2の流出路13を通って送られてきた復水F2を排出する排出孔14が設けられている。
【0013】
トラップ室11における底面近傍で側壁カバー4に近接する位置に、複座平衡弁2が配置されている。すなわち、複座平衡弁2は、流体の一種である復水F2の流出路13を形成するホルダ18を有し、流出路13が側壁カバー4の排出孔14に連通した状態でガスケット15を介在して側壁カバー4に固定されている。詳細には、ホルダ18のフランジ部(図示せず)がボルト(図示せず)の締結により側壁カバー4に固定されている。これにより、複座平衡弁2がトラップ室11内に配置されている。
【0014】
複座平衡弁2のホルダ18の上面に、上下方向に延びる取付部材19が固定されている。この取付部材19の上端近傍箇所に、支点ピン20回りに回動自在にレバー21の基端部が連結されている。このレバー21の先端部に、例えば、ボール型のフロート22が装着されている。
【0015】
複座平衡弁2は、上下方向に移動可能に設けられた弁棒23を有しており、この弁棒23の上端部が連結ピン24および後述する連結軸54を介してレバー21の基端部近傍に連結されている。フロート22は、トラップ室11内に溜まった復水F2の水位に応じてその浮力により上下移動する。弁棒23は、フロート22の上下移動に連動して軸心方向AX、つまり上下方向に移動する。この弁棒23の上下移動により、複座平衡弁2が後述するように開閉動作を行う。
【0016】
図2は、図1の複座平衡弁2の拡大断面図である。複座平衡弁2は、弁棒23の軸心方向AXに離間した位置に取り付けられた第1および第2の弁体28、29と、ホルダ18に設けられて第1および第2の弁体28,29がそれぞれ着座する第1および第2の弁座30,31とを備えている。本実施形態では、図2の上側の弁体を第1の弁体28とし、下側の弁体を第2の弁体29とする。第1および第2の弁体28,29が第1および第2の弁座30,31にそれぞれ着座することで、流出路13への流体の流入を制御している。
【0017】
詳細には、第1の弁体28は、ホルダ18の内側に位置して第1の弁座30の弁口33から流出路13への復水F2の流入量を制御する内接型である。一方、第2の弁体29は、ホルダ18の外側に位置して第2の弁座31の弁口34から流出路13への復水F2の流入量を制御する外接型である。
【0018】
ホルダ18は図2の左側に開口した角筒形である。この左側の開口を介して、ボルダ18の内部の流出路13が排出孔14に連通している。ホルダ18の周壁の上側に第1の弁座30の弁口33が形成され、下側に第2の弁座31の弁口34が形成されている。これらの弁口33,34を介して流出路13がトラップ室11に連通している。
【0019】
詳細には、ホルダ18の上壁に貫通孔18aが形成されており、この貫通孔18aに環状の第1弁座部材41が装着されている。第1弁座部材41は、例えば、嵌合または螺子による螺合でホルダ18に取り付けられており、第1弁座部材41の中空孔が第1の弁座30の弁口33を構成している。第1弁座部材41の下面が、第1の弁座30を構成している。
【0020】
ホルダ18の下壁に貫通孔18bが形成されており、この貫通孔18bに環状の第2弁座部材42が装着されている。第2弁座部材42は、例えば、嵌合または螺子による螺合でホルダ18に取り付けられており、第2弁座部材42の中空孔が第2の弁座31の弁口34を構成している。第2弁座部材42の下面が、第2の弁座31を構成している。
【0021】
弁棒23における各弁体28,29の上方で近傍箇所に、軸保持部材43が取り付けられている。軸保持部材43は、ホルダ18の弁座取付孔18a、18bに摺動自在に嵌合した状態で弁棒23に取り付けられている。
【0022】
軸保持部材43は、弁棒23を挿通させる筒状の弁座カラー44と、弁座カラー44の外周面から放射状に径方向外方に延びる複数のバー部材46とを有している。本実施形態では、バー部材46は、周方向に90°の等間隔に4つ設けられている。ただし、バー部材46の数は、これに限定されない。各バー部材46の先端部は、第1および第2弁座部材41,42の内面に接触、または僅かな間隙で近接している。これにより、弁軸23の径方向位置が決定される。
【0023】
上側の弁座カラー44は、径方向に延びる連結ピン45により弁棒23に固定されている。本実施形態では、連結ピン45は、上下方向に並んで2つ設けられている。ただし、連結ピン45の数はこれに限定されない。下側の弁座カラー44は、弁棒23の外周面に嵌合されている。したがって、各弁座カラー44,44は、弁棒23と一体に上下方向に移動する。
【0024】
弁棒23の上端部に、有底円筒状の連結部材49が固定されている。この連結部材49に、前記連結軸54が、その下端部が有底円筒状の連結部材49内に遊嵌された状態で取り付けられている。これにより、フロート22の作動時のぶれが吸収される。詳細には、連結部材49の周壁の対向箇所に架け渡された軸支ピン50が連結軸54に挿通され、連結軸54が軸支ピン50回りに回動可能に連結部材49に連結されている。連結部材49は、上側の弁座カラー44に連なっている。連結部材49と上側の弁座カラー44は一体に形成されてもよく、別体であってもよい。
【0025】
弁棒23は、上側の弁座カラー44に挿通される上側シャフト部23aと、下側の弁座カラー44に挿通される下側シャフト部23bと、両シャフト部材23a,23bの間の中間シャフト部23cとを有している。各シャフト部23a,23b,23cは不可分一体に形成されている。
【0026】
上側シャフト部23aの下端部に、第1の弁体28が弁棒23に対して軸心方向AXに移動可能に支持されている。詳細には、第1の弁体28は、弁棒23と同芯の短い円柱形状で、内部の中空孔に上側シャフト部23aが挿通されている。第1の弁体28における第1の弁座30に対向する上面28aは、軸心AX方向の下方に向かって径方向外側に傾斜している。第1の弁体28の上面28aは閉弁時に第1の弁座30に当接する。
【0027】
下側シャフト部23bの下端部に、第2の弁体29が支持されている。詳細には、第2の弁体29は、弁棒23と同芯の短い円柱形状で、内部の中空孔に下側シャフト部23bが挿通され、連結ピン52により取り付けられている。つまり、第2の弁体29は、下側シャフト部23bに固定されている。第2の弁体29における第2の弁座31に対向する上面29aは、軸心AX方向の下方に向かって径方向外側に傾斜している。第2の弁体29の上面29aは第2の弁座31に当接している。第2の弁体29の下面は、下側シャフト部23bの下端面と面一となっており、トラップ室11内に位置している。下側シャフト部23bの上端部に、残余の部分よりも拡径された大径部56が形成されている。
【0028】
中間シャフト部23cは、上側シャフト部23aよりも大径で、下側シャフト部23bの大径部56よりも小径に設定されている。中間シャフト部23cに、閉弁力付与部材60が設けられている。閉弁力付与部材60は、第1の弁体28(一方の弁体)に閉弁方向(図2の上方)の力を付与する。本実施形態では、閉弁力付与部材60として、中間シャフト部23cの外周に巻き付けられた圧縮コイルばね60が用いられている。下側シャフト部23bの大径部56が、ばね受け部となる。ただし、閉弁力付与部材60は圧縮コイルばねに限定されない。
【0029】
圧縮コイルばね60は、その下端60aが下側シャフト部23aの大径部56の上端面56aに当接し、上端60bが第1の弁体28の下面28bに当接している。
【0030】
つぎに、本実施形態の複座平衡弁2を備えたフロート式蒸気トラップ1の作用について説明する。図1に示すように、トラップ室11には流入孔12から蒸気および復水を含んだ1次側流体F1が流入する。弁棒23はトラップ室11内の復水Fから受ける浮力により上下位置が定まる。トラップ室11内の復水Fの滞留量が少ないときにはフロート22が下方位置に移動する。これに伴い、レバー21が支点ピン20を支点に図の時計回りに回動し、レバー21の回動により連結ピン24を介して弁棒23が引き上げられる。その結果、第1の弁体28が第1の弁座30に着座するとともに、第2の弁体29が第2の弁座31に着座する。
【0031】
このとき、図2に示す圧縮コイルばね60により、第1の弁体28が第1の弁座30に押し付けられるから、閉弁時に第1および第2の弁体28,29の着座寸法誤差の発生がなくなる。また、第1の弁座30に押し付ける方向に力Fr1が働くことで、第1の弁体28のシール性が向上して復水F2の漏れを抑制できる。一方、第2の弁体29は、トラップ室内11の内圧Fr2により第2の弁座31に押し付けられるから、シール性が確保されて復水F2の漏れを抑制できる。
【0032】
図1に示すトラップ室11内の復水Fの水位が上昇すると、この上昇に伴う浮力によりフロート22も上昇する。これにより、レバー21が反時計回りに回動し、連結ピン24を介して弁棒23を押し下げる。そのため、複座平衡弁2は、弁棒23に固定されている第1および第2の弁体28,29が同時に押し下げられ、第2の弁体29が第2の弁座31から離座して開弁状態になるとともに、第1の弁体28が第1の弁座30から離座して開弁状態になる。開弁状態では、上下の軸保持部材43のバー部材46,46(図2)内の周方向の空間を通って、復水F2が流出路13内に円滑に流入し、排出孔14から排出される。
【0033】
復水F2が排出されると、トラップ室11内の復水Fの水位が下降し、これに伴いフロート22も下降する。その結果、第1の弁体28が第1の弁座30に着座するとともに、第2の弁体29が第2の弁座31に着座して閉弁状態となる。以降、同様の動作が繰り返される。
【0034】
上記構成によれば、図2に示すように、第1の弁体28に閉弁方向の力Fr1を付与する閉弁力付与部材60が設けられているので、第1の弁体28が第1の弁座30に押し付けられるから、閉弁時に第1および第2の弁体28,29の着座寸法誤差の発生がなくなる。また、第1の弁座30に押し付ける方向に力Fr1が働くことで、第1の弁体28のシール性が向上して復水F2の漏れを抑制できる。
【0035】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。閉弁力付与部材60は、圧縮コイルばねに限定されず、例えば、板ばね、皿ばね、バイメタル、形状記憶ばね等であってもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
2 複座平衡弁
11 トラップ室
13 流出路
14 排出孔
18 ホルダ
22 フロート
23 弁棒
28 第1の弁体(一方の弁体)
29 第2の弁体
30 第1の弁座
31 第2の弁座
60 圧縮コイルばね(閉弁力付与部材)
AX 軸心方向
F2 復水(流体)
図1
図2
図3